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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】培養筋細胞から形成される乾燥食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/206 20160101AFI20220118BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20220118BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20220118BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20220118BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220118BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20220118BHJP
【FI】
A23L29/206
A23L29/231
A23L13/00 Z
A23L17/00 Z
A23L5/00 B
C12N5/077
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020006766
(22)【出願日】2020-01-20
(62)【分割の表示】P 2016550702の分割
【原出願日】2015-02-05
(65)【公開番号】P2020096598
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】61/936,064
(32)【優先日】2014-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521265863
【氏名又は名称】フォーク アンド グード インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マルガ フランソワーズ シュザンヌ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-115259(JP,A)
【文献】特表2008-513006(JP,A)
【文献】国際公開第2013/016547(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0121006(US,A1)
【文献】特表2007-508822(JP,A)
【文献】特開平09-000172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/20-29/206
A23L 29/231-29/30
A23L 13/00-17/00
A23L 5/00-5/30
C12N 5/071
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用の脱水食品であって、
培養動物筋細胞と植物由来のハイドロゲルとの混合物
を含み、培養動物筋細胞と植物由来のハイドロゲルとの混合物は、脱水された前記ハイドロゲルのマトリックスの範囲内で離散した培養動物筋細胞を有する脱水されたシート材料として形成され、前記脱水食品が脱水食品の全体の5%未満の水分含量を有する、脱水食品。
【請求項2】
香味剤をさらに含む、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルがシート材料全体に分布する、請求項1に記載の食品。
【請求項4】
前記培養動物筋細胞が、シート材料全体に分布し、かつ前記培養動物筋細胞が、約5~30μmの間の脱水後の直径を有する、請求項1に記載の食品。
【請求項5】
培養動物筋細胞が、牛肉、子牛肉、豚肉、鶏肉または魚肉のうちの1つ以上に由来する、請求項1に記載の食品。
【請求項6】
培養動物筋細胞が、骨格ミオサイト、衛星細胞、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の食品。
【請求項7】
植物由来のハイドロゲルがペクチンを含む、請求項1に記載の食品。
【請求項8】
植物由来のハイドロゲルが低メチル(LM)エステル化ペクチンを含む、請求項1に記載の食品。
【請求項9】
スナックチップとして構成される食用の脱水食品であって、
脱水された培養動物筋細胞および植物由来の多糖を含むシート材料として形成される食用の本体と、
香味剤と
を含み、培養動物筋細胞および植物由来の多糖が、前記植物由来の多糖のマトリックスの範囲内で離散した培養動物筋細胞を有するシート材料全体に分布し、前記脱水食品が脱水食品の全体の5%未満の水分含量を有する、脱水食品。
【請求項10】
食用の本体が直径及び厚さを有し、更に前記直径が前記厚さの10倍超である、請求項9に記載の食品。
【請求項11】
培養動物筋細胞が、牛肉、子牛肉、豚肉、鶏肉または魚肉のうちの1つ以上に由来する、請求項9に記載の食品。
【請求項12】
培養動物筋細胞が、骨格ミオサイト、衛星細胞、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を含む、請求項9に記載の食品。
【請求項13】
植物由来の多糖がペクチンを含む、請求項9に記載の食品。
【請求項14】
植物由来の多糖が低メチル(LM)エステル化ペクチンを含む、請求項9に記載の食品。
【請求項15】
食用の脱水食品を形成する方法であって、
培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて前記ハイドロゲルのマトリックスの範囲内で離散した培養筋細胞の混合物を形成することと、
混合物を脱水する直前に該混合物を凝固して脱水食品の全体の5%未満の水分含量を有する食用のシート材料を形成することと
を含む方法。
【請求項16】
香味剤を前記混合物に添加することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
植物由来のハイドロゲルが、表面上に培養筋細胞を増殖させた食用のマイクロキャリアを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
培養筋細胞を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することが、培養骨格ミオサイト、衛星細胞、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
培養筋細胞を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することが、培養筋細胞、植物由来のハイドロゲルならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせること、及び植物由来のハイドロゲルをゲル化させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
培養筋細胞を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することが、培養筋細胞、植物由来のハイドロゲル、香味剤、ならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
組織培養チェンバーから培養細胞を回収すること、および植物由来のハイドロゲルと組み合わせる前に細胞を洗浄することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
表面上に混合物を塗布すること、および脱水する前に植物由来のハイドロゲルをゲル化させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
脱水することが、混合物を脱水してもろいチップを形成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
食用の食品を脱水したスナックチップに形成する方法であって、
培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて前記ハイドロゲルのマトリックスの範囲内で離散した培養筋細胞の混合物を形成することと、
表面上に混合物を塗布することと、
混合物を凝固させることと、
混合物を直後に脱水して脱水したチップの全体の5%未満の水分含量を有するチップを形成することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は2014年2月5日に出願された米国仮特許出願第61/936,064号(「DRIED FOOD PRODUCTS FORMED FROM CULTURED MUSCLE CELLS」という名称)の優先権を主張する。
本特許出願は、2014年9月15日に出願された米国特許出願第14/486,850号(「EDIBLE AND ANIMAL-PRODUCT-FREE MICROCARRIERS FOR ENGINEERED MEAT」)、「ENGINEERED COMESTIBLE MEAT」という名称の、2013年11月27日に出願された米国特許出願第14/092,801号(2012年7月26日に出願された米国特許第8,703,216号の継続である)、および「SPHERICAL MULTICELLULAR AGGREGATES WITH ENDOGENOUS EXTRACELLULAR MATRIX」という名称の、2013年9月9日に出願されたPCT出願第PCT/US2013/058684号のうちの1つ以上の(またはすべて)に関するものであってもよい。これらの特許および特許出願の各々の内容全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
参照による組み込み
個々の出版物または特許出願は、参照によって組み込まれることが詳細におよび個々に示されたように、本明細書に記載のすべての出版物および特許出願は、同程度に、内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
培養細胞および担体(例えばハイドロゲル)の脱水混合物から形成される食用の(例えば、ヒトの摂取に適した)食品、ならびにそれらを製造し使用して、設計された食肉製品を形成する方法を本明細書に記載する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの体は、成長および維持のためにタンパク質を必要とする。水を除いて、タンパク質は体で最も豊富な分子である。米国およびカナダの食事摂取基準ガイドラインによると、19~70歳の男性が欠乏を避けるために、1日につき56グラムのタンパク質を摂取する必要があるのに対して、19~70歳の女性は1日につき46グラムのタンパク質を摂取する必要がある。しかしこの推奨は、疾患がなく座っていることの多い人に対してである。タンパク質欠乏は、結果として知能低下または精神遅滞に導くだけでなく、クワシオルコルのような疾患の罹患率の原因となる可能性がある。タンパク質欠乏は、開発途上国、特に戦争、飢饉および人口過剰の影響を受ける国において深刻な問題である。食肉のようなタンパク質の動物源は、多くの場合、適切な割合で全必須アミノ酸を完全に補う供与源である。
食肉の栄養上の利点は、環境劣化に関連する可能性によって抑制される。「Livestock’s Long Shadow--Environmental Issues and Options」という名称の、国際連合食糧農業機関(FAO)の2006年の報告によると、畜産は世界的な環境劣化の最も大きな要因のうちの1つであり、食品のための飼育動物の現代の手法は、大気および水質汚染、土地の劣化、気候変化および生物多様性の損失の広範囲にわたる原因となる。食肉およびタンパク質の他の動物源の生産および消費も、熱帯多雨林の消滅および種絶滅と関連する。したがって、生きた動物から生産される食肉の代替物に対する需要を解決する必要がある。
【0004】
チップ(例えば、チップ、クリスプ、パフ、クラッカー、ジャーキーなど)のような食品は、米国において人気のあるスナック食品である。市販のチップは、一般的に多量の脂肪およびナトリウムを含み、高カロリー摂取を意味する。過剰摂取は、結果として高血圧のような健康リスクを高める場合がある。例えば、ポテトチップは高いカロリー値を含み、一般的に1オンスにつき150~160カロリー(それらの90~99は脂肪から)である。従来の揚げチップに対してより健康的な代替物として宣伝される焼きポテトチップは、一般的に120カロリーを含み、それらのうちの18カロリーが、この同じ1人前の分量の脂肪に由来する。受動的なライフスタイルと組み合わせた場合、高いカロリー摂取量は肥満、高血圧および末梢血管疾患の原因となる可能性がある。さらに、従来のポテトチップは、一般に高レベルのナトリウムを含み、2,000カロリーの食事に基づくと1日の推奨値の7%~8%にわたる量であり、一般に1オンスは15個未満のチップから成ることを考慮すると、驚くべき量である。高レベルのナトリウムは、伝えられるところでは、高血圧のような状態の発現の原因となり、結果として心臓発作のリスクを高める場合がある。揚げポテトチップは多くの場合、多量の脂肪および飽和脂肪を含み、1人前あたり10~11グラムの脂肪、3グラムの飽和脂肪(2,000カロリーの食事に基づくと1日の推奨値の15%~17%までを意味する)である。高脂肪の摂取は、動脈でのプラークの付着の原因となり、心臓発作および脳卒中の傾向を増やすので、高脂肪含量は深刻な健康リスクをもたらす可能性がある。同様に、定期的に過剰な脂肪を摂取することは、糖尿病および肥満の危険性を増す場合がある。
【0005】
特にタンパク質、繊維およびカルシウムが高く、脂肪が低い、幅広い人気のあるチップに似ているスナック食品が必要である。いわゆる「ミートチップ」が過去に提案されたが、このような製品は高価で、香味が欠けていることがわかり、潜在的にタンパク質が高いこれらの製品は、ナトリウムおよび脂肪も高く、これらが従来のチップに対する妥当な代替物となることを妨げた。また、重要なことに、このような「ミートチップ」は、大部分の市販の食肉と同様に飼育され、屠殺される動物から製造された。上記のように、このことは両方とも環境的に問題があるが、消費者に対して道徳的および倫理的問題を提起する可能性もある。
【0006】
例えば、ポテトチップまたは他の炭水化物ベースのスナックに似たサクサクした食肉ベースのスナックは、例えば、米国特許第3,497,363号に記載され、サクサクした揚げ食肉スナックはフリーズドライの食肉のスライスをたっぷりの油で揚げることによって形成されることを示唆する。フリーズドライは、チップのサクサクとした、かみ砕ける性質に重要であると言われている。フリーズドライは、工業規模では比較的費用が高くなる可能性があり、たっぷりの油で揚げると、チップの脂肪含量が増え、結果として高価で、高脂肪のスナックになる。米国特許第3,512,993号は、食肉またはシーフードを水ならびにジャガイモおよびトウモロコシデンプンの50/50の配合物と混合して、圧力下で調理され、スライスされた生地を形成することを提案する。得られたスライスを、摂食の前に乾燥し、たっぷりの油で揚げる。乾燥チップの「固い、角質の口当たり」の代わりに、揚げることでチップに薄片状の口当たりを与える。この製品は、脂肪(30~40%の脂肪含量が提案された)およびデンプンが多く、このことは、スナック食品からのカロリーおよび炭水化物の摂取を管理している人にとって、チップをより望ましくないものにしている。他者は、ソーセージスライスを乾燥させて、スライスを揚げなくてすむスナック食品を作る手法を仮定した。米国特許第6,383,549号ならびに米国特許出願公開第2003/0113433号および第2004/0039727号は、例えば、このような工程を提案する。しかし、これらの大部分は、安価なスナック食品の工業規模生産に十分に適さず、家庭規模のバッチまたは高価な特産品に限られている。
【0007】
上述の欠点に対処するチップとして形成される場合がある脱水食品を本明細書に記載する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、脱水されたハイドロゲル(例えば、ペクチンのような植物由来の多糖または多糖ベースのハイドロゲル)と組み合わせた(例えば、混合した)培養細胞から形成される食品に関する。本食品は、チップ、クラッカー、バー、シリアル、パスタ、ジャーキーなどを含むがこれに限定されない、従来の乾燥し優れたどの食品として形成してもよい。本明細書に記載する例は、食品および従来のチップと類似したチップに形成された食品を作る方法を例示するが、本明細書に記載する本発明も他の食品を形成するために適用されてもよい。得られた製品は、動物に危害を加えることなく作られ、タンパク質が多く、脂肪が少ないチップのようなスナック食品であってもよい。食品は、タンパク質、繊維およびカルシウムが豊富で、健康的で、グルテンを含まないスナックを提供する場合があり、脂肪、特に飽和脂肪を除去し、揚げたり焼いたりすることなく、従来のチップの口当たり(例えば、歯切れの良さおよび/または破砕性)に似ている場合がある。また、培養細胞から(例えば、動物の筋細胞から)チップのような食品を作る方法を本明細書に記載する。
【0009】
例えば、食用の脱水食品であって、植物由来のハイドロゲルと組み合わせた培養動物筋細胞、および香味剤を含み、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、脱水された材料シートとして形成される、脱水食品を本明細書に記載する。
一般に、培養細胞はハイドロゲルに混入され、次いで凝固またはゲル化させて、脱水される。細胞が凝集する場合があるので、混合物は均質(例えば、比較的均一な)なことも、均一でないこともある。混合された時、細胞は非接着であることも、例えば小さなクラスターまたは凝集塊で集まっていることもある。したがって、混合物は、後に脱水されるハイドロゲル中に分布する個々の細胞および/または細胞のクラスターを含んでもよい。最終的な食品で、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、材料シート全体に分布してもよい。
【0010】
香味剤を、食品の表面上にコートする、および/または食品中に入れてもよい(培養細胞およびハイドロゲルの混合物に含める)。香味剤を脱水前、脱水中、または脱水後に加えてもよい。
例えば、チップのようなスナック食品が本明細書に記載される。食用のスナックチップは、植物由来のハイドロゲルと組み合わせた培養動物筋細胞、および香味剤を含んでもよく、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、脱水された材料シートとして形成される。
【0011】
いかなる適切な培養動物筋細胞を用いてもよい。例えば、培養筋細胞(ミオサイト)は、牛肉、子牛肉、豚肉、鶏肉または魚肉(fish)のうちの1つ以上に由来してもよい。培養動物筋細胞は、骨格ミオサイト、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイト(またはそれらの混合物)のうちの1つ以上を含んでもよい。培養細胞は、いずれのミオサイトまたは大部分の培養ミオサイトであってもよい。例えば、食品の細胞成分は、70%を超えるミオサイト、80%を超えるミオサイト、85%を超えるミオサイト、90%を超えるミオサイト、95%を超えるミオサイト、98%を超えるミオサイト、99%を超えるミオサイトなどを有してよい。
【0012】
いかなる適切なハイドロゲル、特に植物由来の多糖を用いてもよい。例えば、植物由来の多糖は、ペクチンを含んでもよい。植物由来の多糖(多糖ベースのハイドロゲル)は、低メチル(LM)エステル化ペクチンであってよい。一般に、植物由来のハイドロゲルは、非動物源に由来するハイドロゲルである。例えば、植物由来のハイドロゲルを、植物源から抽出、精製、そうでなければ、入手した場合がある。植物由来のハイドロゲルは、植物の天然物であると同定されたハイドロゲルであってもよい。植物由来のハイドロゲルは植物源から同定されてもよいが、本明細書に記載される食品で用いられる植物由来のハイドロゲルの当面の供与源は合成物であってよく、例えば、植物由来のハイドロゲルは合成されるか、または精製されてよい。本明細書に記載されるどんな植物由来のハイドロゲルも、植物由来でないハイドロゲルと置き換えおよび/または混合してもよい。
例えば、本明細書に記載される食用の、脱水食品は、植物由来のハイドロゲルと組み合わせた培養動物筋細胞、および(任意選択で)香味剤を含んでもよく、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、脱水された材料シートとして形成される。
【0013】
約2μm~50μm(例えば、2μm~40μm、2μm~35μm、5μm~50μm、5μm~40μm、5μm~30μmなど)の間の直径で、断面の中に分布してもよい別々の筋細胞(培養筋細胞)を、材料シートの断面が有するように、食品の培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは材料シート全体に分布してもよい。培養筋細胞を形態学的に、および筋タンパク質マーカーの発現によって同定してもよく、それは、超微細構造的に見られる場合がある。例えば、材料シートの断面が脱水培養筋細胞のパターンを有するように、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、材料シート全体に分布してもよい。脱水後でさえ、培養筋細胞は比較的無傷である場合があり、培養細胞としての起源は、例えば、脱水された培養筋細胞中のアクチンおよびミオシンのような筋タンパク質のパターンを同定することによって、1つ以上のマーカーで確認される場合がある。したがって、脱水食品においてさえ、食品の断面は、培養細胞および植物由来のものの混合物を使用することから生じる、特徴的なパターンを示す。
【0014】
本明細書に記載されるどんな食品(「チップ」)も、表面上に培養動物筋細胞を増殖させた食用のマイクロキャリアも含んでもよい。
本明細書で用いられるように、食品という文脈における脱水または脱水されたという用語は、食品からの水の除去、特に食品の非脱水型と比較して、食品から大部分の水を除去することを指し、そのため食品の水分含量は、例えば、70%未満(例えば、65%、75%、80%、85%、90%、95%未満など)である。
一部のバリエーションでは、スナックチップとして構成される食用の脱水食品は、植物由来のハイドロゲル(例えば多糖)と組み合わせた培養動物筋細胞、および香味剤を含んでもよく、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、シート中に分布し、2~50μm(例えば、2~40μm、2~30μm、2~20μm、5~50μm、5~40μm、5~30μmなど)の間の直径の筋タンパク質のクラスターと共に脱水された材料シートに配置される。
本明細書に記載される食用の食品は、簡単に摂取される形に形成されるかまたは成形され、従来のスナック食品(例えば、ポテトチップ、スティック、プレッツェルなど)にも似ている場合がある。例えば、厚さ(または高さ)は通常、幅および長さ(例えば、横幅、直径など)のような表面の寸法より非常に小さい場合がある。一部のバリエーションでは、チップの食用の本体は、厚さの10倍超の直径(例えば、表面/シート直径)である場合がある。
【0015】
また、食用の食品を形成する方法が本明細書に記載される。例えば、食用の食品を形成する方法であって、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて混合物を形成すること、ならびに混合物を脱水して食用の材料シートを形成することを含む方法が本明細書に記載される。
例えば、方法を用いて食用スナック食品を形成してもよい。例えば、スナックチップを形成する方法は、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて混合物を形成すること、ならびに混合物を脱水してチップを形成することを含んでよい。
これらの方法のどれでも、香味剤を加えることを含んでもよい。香味剤は混合ステップの間に加えてもよく、または混合ステップの前に構成成分(例えば、培養細胞)のいずれかと共に混合してもよい。例えば、組み合わせるステップは、香味剤を筋細胞および植物由来のハイドロゲルの混合物に加えることを含んでもよい。香味剤を混合後に加えてもよい。例えば、香味剤を脱水前、脱水中、または脱水後に加えてもよい。香味剤を食品の表面上にコートしてもよい。
【0016】
一般に、組み合わせるステップは、培養骨格ミオサイト、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することを含んでもよい。上記のように、どんな適切な細胞型でも含んでもよい。
一部のバリエーションでは、追加の構成成分を、細胞およびハイドロゲルと混合してもよい。例えば、組み合わせることは、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせることを含んでもよい。塩化カルシウム溶液は、ハイドロゲルのゲル化を助け、カルシウムを食品に加える場合もあり、それは有益である可能性がある。例えば、組み合わせることは、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲル、香味剤、ならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせることを含んでもよい。
これらの方法のいずれも、組織培養チェンバーから培養細胞を回収するステップ、および植物由来のハイドロゲルと組み合わせる前に細胞を洗浄するステップを含んでよい。培養細胞は、すすぎおよび回転(例えば、遠心分離)を繰り返してペレット化し、洗浄溶液を除去することによって洗浄してもよい。一部のバリエーションでは、細胞を除去するか、および/または香味剤を含む溶液ですすいでもよい。
【0017】
本明細書に記載されるどの方法においても、混合する直前の細胞は、生きているか、死んでいるか、または死にかかっている場合がある。したがって、洗浄および/または混合は、最終的な食品の品質(例えば、食味、口当たり、栄養素含有量)に影響を及ぼすことなく、細胞生存率を低下させる場合がある。しかし、一部のバリエーションでは、脱水まで細胞を生かしておいてもよい。
本明細書に記載されるどの方法も、表面(例えば、型)上に混合物を塗布すること、および脱水する前に植物由来のハイドロゲルをゲル化させることも含んでもよい。脱水ステップを同一の表面(例えば、型)上で実行してもよく、または、異なる表面へ移動してもよい。どんな適切な型(被覆型を含む)でも、用いてもよい。例えば、型は平面(例えば、ホイル、ポリマー、紙など)である場合がある。一部のバリエーションでは、型を脱水装置用に適合させてもよい。例えば、型は、熱伝導性であるか、および/または通気性があるか、さもなければ透湿性であってもよい。
一部のバリエーションでは、スナックチップを形成する方法は、培養筋細胞、植物由来のハイドロゲル、および香味剤を組み合わせて混合物を形成すること、および混合物を脱水してもろい(例えば、砕けやすい)チップを形成することを含んでもよい。
【0018】
例えば、食用の食品を形成する方法は、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて混合物を形成すること、ならびに混合物を脱水して食用の材料シートを形成することを含んでもよい。植物由来のハイドロゲルを、表面上に培養筋細胞を増殖させた食用のマイクロキャリア(細胞付着モチーフを含むポリペチドも含んでもよい)として構成してもよい。あるいは、または、さらに、一部のバリエーションでは、組み合わせることは、食用のマイクロキャリア上で培養された培養筋細胞を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することを含む。
組み合わせることは、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせること、ならびに植物由来のハイドロゲルを凝固(例えば、ゲル化)ことさせることを含んでもよい。これらのどの方法も、表面上に混合物を塗布すること(注ぐ、コートする、噴霧するなど)、および脱水する前に植物由来のハイドロゲルをゲル化させることを含んでもよい。
【0019】
さらに、これらのどの方法においても、脱水することは、混合物を脱水してもろい(例えば、砕けやすい)チップを形成することを含んでもよい。
例えば、食用の食品を、スナックチップになるように形成する方法であって、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて混合物を形成すること、混合物を表面上に層状に塗布すること、混合物を凝固させること、ならびに混合物を脱水してチップを形成することを含む方法が本明細書に記載される。
【0020】
本発明の新規な特徴は、後続の特許請求の範囲で詳細に述べられる。本発明の特徴および利点のより優れた理解は、本発明の原理が用いられた実例となる実施形態を述べる以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A-1D】本明細書で記載される食品を形成するために組み合わせてもよい構成成分を例示する図である。図1Aは培養筋細胞(およそ5億個の細胞)のペレットを示し、図1Bでより詳細に示される。図1Cは香味をつけた野菜ブロス(香味剤を含む)を示し、図1Dはペクチンの4%溶液を示す。
図2A-2B】チップとして構成される食品の形成を例示する図である。図2Aにおいて、塩化カルシウム溶液と共に、図1A~1Dに例示される構成成分を組み合わせることによって食品を形成する。この混合物を型の上に塗布し、ゲル化させ、次いで脱水する。図2Bは、得られた脱水食品を例示する。
図3A1-2】本明細書で記載されるように、チップとして構成された食品の1つの形状の上面図および側面図をそれぞれ示す図である。
図3B1-2】薄い卵形のチップとして構成された食品の別の形状の上面図および側面図をそれぞれ示す図である。
図3C1-2】薄い三角形のチップとして構成された食品の別の形状の上面図および側面図をそれぞれ示す図である。
図4】本明細書で記載されるように、脱水チップの横断面を表す図である。切片を抗アルファ平滑筋アクチン(SMA)抗体を用いて染色した。SMAは、より暗く、いくぶん円形の(細胞状の)形に見える。組織構造はチップを形成している培養細胞内で筋タンパク質(例えば、アクチン)の特徴的分布を示し、動物ベースのハイドロゲルと混合された脱水培養筋細胞のパターンを示す。
図5】本明細書で記載される乾燥食品(チップ)の1つの例の組成分析を示し、タンパク質の高い割合(例えば、50%を超える)を示すテーブルである。組成は動物ベースのハイドロゲルの存在も示す可能性があり、この例では、脱水食品が脱水食品の全体の5%未満(例えば、この例では4.01%)の水分含量を有することも示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一般に、培養細胞から形成される食品、特に、由来する動物のさらなる加工を必要としないインビトロで増殖させた培養筋細胞(ミオサイト)が本明細書に記載される。培養細胞を、動物源に由来しない(例えば植物由来、酵母由来、単細胞由来など)培養培地を用いて増殖させてもよい。さらに、培養細胞をハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成し、混合物をゲル化させ、得られた混合物を脱水して食用の食品を形成することによって、本明細書で記載される食品を形成してもよい。食用の食品の形状および/または香味を操作して、チップ、クラッカー、バー、シリアル、パスタなどを含む形成された食品のタイプを決定してもよい。培養細胞とハイドロゲルを組み合わせ、脱水する前、間、または、後に1つ以上の香味剤および/または強化剤を加えてもよい。
【0023】
一般に、表面、溶液、バイオリアクターなどで培養することを含む、細胞を培養するどんな適切な方法でも用いてもよい。他の細胞型を用いてもよいが、培養細胞は一般的にヒト以外のミオサイトのような筋細胞である。細胞は適切ないかなる供与源に由来してもよい。例えば、適した細胞は、アンテロープ、クマ、ビーバー、バイソン、イノシシ、ラクダ、カリブー、ウシ、シカ、ゾウ、ヘラジカ、キツネ、キリン、ヤギ、ウサギ、ウマ、アイベックス、カンガルー、ライオン、ラマ、ムース、ペッカリー、ブタ、ウサギ、アザラシ、ヒツジ、リス、トラ、クジラ、ヤクおよびシマウマ、のような哺乳動物またはそれらの組合せに由来してよい。一部の実施形態において、適した細胞は、ニワトリ、アヒル、エミュー、ガチョウ、ライチョウ、ダチョウ、キジ、ハト、ウズラおよびシチメンチョウのような鳥類、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、カメ、ヘビ、ワニ、およびアリゲーターのような爬虫類、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、カタクチイワシ、スズキ、ナマズ、コイ、タラ、ウナギ、カレイ、フグ、ハタ、ハドック、オヒョウ、ニシン、サバ、シイラ、カジキ、ヒウチダイ、パーチ、カワカマス、ポラック、サケ、イワシ、サメ、フエダイ、ヒラメ、メカジキ、テラピア、マス、マグロ、およびウォールアイのような魚類、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、カニ、ザリガニ、ロブスター、エビ、および小エビのような甲殻類、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、アワビ、ハマグリ、コンチ、イガイ、カキ、ホタテガイ、およびカタツムリのような軟体動物、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、コウイカ、タコ、およびイカのような頭足類、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、アリ、ミツバチ、カブトムシ、チョウ、ゴキブリ、コオロギ、イトトンボ、トンボ、ハサミムシ、ノミ、ハエ、バッタ、カマキリ、カゲロウ、ガ、シミ、シロアリ、スズメバチ、のような昆虫、またはそれらの組合せに由来する。一部の実施形態において、適した細胞は、扁虫、条虫、吸虫、線虫、回虫、十二指腸虫、環形動物(例えば、ミミズ、多毛虫など)、のような非節足動物無脊椎動物(例えば、蠕虫)、またはそれらの組合せに由来する。培養細胞は、天然のままでも修飾(例えば、遺伝子導入)されてもよい。
【0024】
一般に、培養細胞を十分な密度になるまで増殖させ、回収し、食品混合物(ハイドロゲルを含む)の他の構成成分と組み合わせる前に洗浄してもよい。洗浄は培地を除去し、水(PBSのような緩衝溶液を含む)の中で実行してもよい。培養細胞を繰り返しペレット化し(例えば遠心分離によって)すすぐことで洗浄してもよい。一部のバリエーションでは、細胞をマイクロキャリアで、特に食用のマイクロキャリアで培養してもよい。後でさらに詳しく記載するように、食用のマイクロキャリアは、細胞付着モチーフを含むポリペチドも含んでよい食用の植物由来の多糖であってもよい。植物由来のハイドロゲルは、食用のマイクロキャリアなしで増殖させた細胞について本明細書で記載されるように、食用のマイクロキャリア上に増殖させた細胞と組み合わせて用いてもよいし、あるいは一部のバリエーションでは、追加のハイドロゲルを加えず、食用のマイクロキャリアおよび細胞だけを使用してチップを形成してもよい。
【0025】
上記のように、どんな適切なハイドロゲルでも用いてよい。一般に、ハイドロゲルは食用でなければならない(例えば、ヒトの摂取にとって安全)。ハイドロゲルは、ペクチンのような架橋できる多糖を含んでもよい。例えば、用いてもよい多糖の種類1つは、低メチル(LM)エステル化ペクチンであり、食品ですでに用いられている豊富な植物誘導体である。
【0026】
本明細書で記載される食品のどれでも、乾燥食品または脱水食品と呼んでもよい。
本明細書で記載される食品のどれでも、1つ以上の香味剤を含んでよい。「香味剤」という用語は、天然および人工の種類の両方を意味する場合がある。例えば、米国連邦規則集の21巻によって定義されるように、これは「天然香味剤」すなわち精油、オレオレジン、エッセンスまたはエキス、タンパク質加水分解物、蒸留物、またはロースト、加熱または酵素的分解の任意の製品、を含むことを意図し、スパイス、果物または果汁、野菜または野菜ジュース、食用酵母、ハーブ、樹皮、芽、根、葉または植物の任意の他の可食部、食肉、シーフード、鶏肉、卵、乳製品、またはそれらの発酵製品に由来する香味構成成分を含み、その食品における一次機能は、栄養的よりはむしろ、香味である(21 CFR 101.22)。
【0027】
香味剤は、特に上述の明細書を必ずしも満たすというわけではない天然香味剤の化学合成品である「人工香味剤」も含んでもよい。人工香味剤は、「天然香味剤」で見られる化合物を含んでもよい。
さらに、「香味剤」は、食味、香味芳香族化合物および感覚要因を与える薬剤を意味する一般用語である場合もある。食味は舌の上のレセプターを介して処理される感覚で、一般に塩味、甘味、酸味、および苦みを含む。香味芳香族化合物は、食物を噛み、咀嚼し、飲み、嚥下する間に発せられた香味揮発性物質で、嗅覚レセプターによって検知される。感覚要因は、香味の言語では、口で、舌の上で、または、鼻腔(または口/鼻腔のどこでも)で知覚される感覚をいう。これらの感覚は独立し、食味、塩味、甘味、酸味、および苦み、ならびに嗅覚によって知覚された無数の香味芳香族化合物とは異なる場合がある。これらの感覚をもたらす化合物は揮発性が異なるが、多くは気相間移動に影響されやすい。このような感覚要因は、「スモーク」香味の辛味、果物の渋味、ミントの冷たさ、またはトウガラシの熱さを含む。より詳しくは、香味剤は、商品の食味もしくは香り、または食味および香りの両方を増強または変化させる場合がある。この変化は、所望の食味もしくは香味を増強することか、または好ましくない食味または香りを覆い隠すことである場合がある。香味剤は、大部分の応用例で、無毒性で摂取可能であることを理解するべきである。
【0028】
香味剤は香味芳香族化合物を含んでもよいが、香味剤のいくつかの構成成分は嗅覚刺激的な特性を持たない。例えば、嗅覚刺激的な特性が不足している一方で、人工甘味剤を含む香味調味料、いくつかのスパイスおよび香辛料は、それでも本発明を実行する際の有用な香味剤である。ポテトチップ、コーンチップ、バーベキューチップ、チーズクラッカーならびになどのような代表例を含む包装されたスナック食品に香味をつけるためのあるスパイスまたはスパイスの混合物は、スパイシーなバーベキュー香味剤のような、固形または粒状のスパイスおよび調味料の、同種および異種の組合せで味つけしている場合がある。それらは香味剤(食味)強化特性を持ち、したがって、製造工程の香料として一般に食料品に加えられる他のスパイスと共に有用な香味剤である。
【0029】
以下は総合的なリストではないが、いくつかの感覚産生性香味剤を加えた、いくつかの一般の食味香味剤の代表者だけである。風味および感覚産生性香味剤の例は、人工甘味剤、グルタミン酸塩、グリシン塩、グアニル酸塩、イノシン酸塩、リボヌクレオチド塩、および酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ポリフェノールなどを含む有機酸を含む。
このリストは、一般の香味芳香族化合物の典型的なものだけである。特定の所望の香味をつくるために、組み合わせるかまたは単独で用いてもよい何千もの分子化合物がある。一般の香味芳香族化合物の2、3の代表例は、イソアミルアセテート(バナナ)、シンナムアルデヒド(シナモン)、エチルプロピオネート(果物の)、リモネン(オレンジ)、エチル-(E,Z)-2,4-デカジエノアート(西洋ナシ)、アリルヘキサノエート(パイナップル)、エチルマルトール(砂糖、綿菓子)、サリチル酸メチル(ヒメコウジ)、およびそれらの混合物を含む。
【0030】
本明細書で記載される食品のどれでも、1つ以上の強化剤も含んでもよい。強化剤は、どんな適切な微量栄養素でも含む、ビタミン、ミネラル、などであってよい。例は、必須微量元素、ビタミン、補助ビタミン、必須脂肪酸、必須アミノ酸、フォト栄養素、酵素などを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
上記のように、食品およびそれらを形成する方法のどれでも、どのような適切な形状因子へでも形成されてよい。例えば、食品はチップ(例えば、ポテトチップ、トルティーヤまたはクリスプの形状因子)として構成されてもよい。本明細書で用いられるように、チップは一般に、多くの場合揚げる、焼く、または乾燥することによってサクサクしたようになり、一般的にスナック、または、食事の一部として食べられる食品(一般的に、手で摂取する)の薄い一片を呼ぶ場合がある。
【実施例
【0031】
一つの例では、培養細胞から脱水食品を形成する方法は、高い動物タンパク質含量のチップを生産するのに適している。
食用チップは、動物細胞および植物由来の多糖のようなハイドロゲル溶液の混合物を脱水することによって調製される。用いてもよい多糖の1つの例は、低メチルエステル化ペクチンであり、食品ですでに用いられている豊富な植物誘導体である。チップの香味のために、特製の野菜ブロスおよび/または香辛料を加えてもよい。香味を強化し、歯切れの良さを得るために、混合物を型(例えば、羊皮紙紙型)に塗布し、例えば、食品脱水装置で脱水してもよい。
【0032】
図1A~1Dは、組み合わせて食品を形成してもよい構成成分を例示する。この例において各々のチップの組成物に入る内容物は、およそ5億個の細胞(図1Aおよび1Bにペレット化を示す)、800μLの香味をつけたブロス(図1C)、および300μLの植物由来のハイドロゲル4%溶液(図1Dに示す、この例のポリペチドペクチン)を含む。混合物を図2Aに示す羊皮紙紙型のような表面に塗布した後で、カルシウムの添加はペクチンをゲル化させることができる。ハイドロゲルを凝固させた後、脱水してもよい。脱水を60℃で19時間、行ってもよい。最終産物は、サクサクした、香味をつけたチップである(図2Bに示す)。
食品(本明細書ではチップ、食用のスナックチップ、培養細胞スナックチップ、などと呼ぶ場合がある)は、四角、長方形、三角形、卵形、円形などを含む、従来の「チップ」の形を含むどんな形でもよく、扁平、屈曲、またはカーブしていてもよい。形を、脱水工程(例えば、型の上で)によって形成してもよい。一旦脱水されると、形を支持体(成形面)から除去し、さらに加工してもよい。さらなる加工は、塩、砂糖などの追加、または食用のコーティングを含む、追加の香味を加えることを含んでもよい。
【0033】
例えば、図3A1~3C2は、本明細書で記載されるように形成してもよい培養細胞スナックチップの形の例を例示する。どんな適切なサイズおよび形でも、本明細書の例1に記載されるように形成してよい。本例では、形は平面であり(しかしカーブしている、または屈曲している)、より複雑な形を形成してもよい。例えば、図3A1は従来のうねをつけたポテトチップと類似した、いくぶん不規則に見えるうねの形を有するように形成された培養細胞スナックチップを示す。図3A2は、この形の側面図を示す。同様に、図3B1は卵形の培養細胞スナックチップを示し、一方図3B2はチップの側面図を示す。図3C1は、三角形で比較的薄い横断切片のチップを示す(図3C2)。すでに述べたように、培養細胞スナックチップを、手で容易に食べることができるサイズおよび厚さを含む、どんなサイズ(表面の直径、横幅、長さなど)および厚さで形成してもよい。例えば、培養細胞スナックチップは、約1cm~15cm(例えば、約2cm~10cmなど)の間のサイズ(例えば、平均または一部のバリエーションでは表面の直径の中央値)、および約0.1mm~10mm(例えば、0.5mm~5mm、0.5mm~4mm、0.5mm~3mm、0.5mm~2mmなど)の間の厚さであってもよい。
【0034】
培養筋細胞を、脱水する直前に植物由来のハイドロゲル溶液と組み合わせてもよく、またはハイドロゲルと共に培養してもよい。一部のバリエーションでは、上述のように、多糖で形成された食用のマイクロキャリア(細胞付着モチーフを含むポリペチドも含んでもよい)、および/またはなどの食用の原料の上で細胞を培養してもよい。細胞は、不死化筋細胞を含む樹立細胞株に由来する筋細胞であってもよく、または初代培養であってもよく、またはこれらの混合物であってもよい。
【0035】
例えば、インビトロ培養細胞を回収して食品を形成してもよい。例えば、上記に例示された試料チップでは、5億個の細胞収量の培養物を、CellStack培養器(すなわち、3000万個のウシ平滑筋細胞を接種し、5日間培養した)から取り出してもよい。細胞を遠心分離によってペレット化し、PBSですすぐことによって、細胞を洗浄してもよい。次いでPBSを除去することができる。この例では、800μLの特製ブロス(香辛料のきいた照り焼きソース)を細胞に加えてもよく、300μLの70℃に温めたペクチン溶液(蒸留水中4%)も加えてもよい。ボルテックスで撹拌することなどによって、細胞、ブロスおよびペクチン混合物を混合してもよい(例えば、Eppendorf combitipを用いて)。次いでおよそ50μL塩化カルシウム溶液(水中0.5M)を加え、混合物を再び混合した(例えば、ホモジナイズするためにEppendorf combitipを用いて)。いくらかの空気を、このステップで取り入れることができる。
【0036】
次いで、図2A~2Bに示すのと同様に、50μL塩化カルシウム溶液(水中0.5M)をスプレーされた羊皮紙紙型に、混合物を分布させてもよい。室温で、5分間、ペクチンをゲル化することができる。その後、60℃で19時間、型およびゲルを脱水装置に置き、食品を脱水して、チップを形成してもよい。次いでチップを型(羊皮紙)から取り出してもよい。
複数のチップを形成するために、この方法をスケールアップおよび/または自動化してもよい。すでに述べたように、他の食品を形成するために方法を修正してもよい。
【0037】
本明細書で記載した培養細胞スナックチップを形成する方法は、一般的に既存の食品とは構造的に別のチップになる。得られたチップの超微細特性を検討する場合、これは明らかである。例えば、培養細胞スナックチップの中の断面は、脱水ハイドロゲルのマトリックスの範囲内で脱水培養筋細胞を示す。培養筋細胞の同一性は、タンパク質マーカー(例えば、アクチン、ミオシンなど)を含むマーカーを特定するための染色によって確認される場合がある。例えば、図4に示す乾燥食用食品の断面において、超微細構造は、脱水ハイドロゲル内に分布する残存の細胞形(例えば、培養筋細胞)を示す。一般に、脱水チップにおいて、超微細構造は、動物タンパク質マーカーのような特異的なマーカーを発現する離散した脱水培養細胞(または細胞のクラスター)を示す場合がある。これらの細胞を、通常、植物由来のハイドロゲルと混合する。これらのチップを、動物タンパク質含有チップと呼んでもよい。視覚化は、植物由来のハイドロゲル内で培養細胞(または培養細胞の脱水残留物)の異なったパターンを示す場合がある。培養筋細胞は、脱水した製品においてまだ外見上わかる(および、かなり無傷である)場合がある。
【0038】
図4において、本明細書で記載されるように形成された乾燥チップの1つの例の断面は、平滑筋アクチン(アルファ平滑筋アクチン抗体との反応を介して検出される)を示す。脱水試料の離散した細胞状の形の本体のパターンは、チップを形成するために用いられる培養手順、すなわち培養細胞をハイドロゲルと混合し混合物をシート状に脱水する手順、に特有である。
チップスナックとして形成された食用の食品の組成物は、ハイドロゲルと混合され脱水された培養細胞から形成されていない他の食用の食品と比較して特有である場合もある。例えば、図5の表は、本明細書で記載されるように形成されたチップの栄養分析の結果を示し、それが高タンパク質含量(この例では、およそ70%)を有することを示すが、それは約40%~90%の間(例えば、約40%~80%の間、約45%~90%の間、約45%~80%の間、約50%~90%の間、約50%~80%の間、約60%~90%の間、約60%~80%の間、50%を超える、55%を超える、60%を超える、65%を超える、70%を超える、75%を超える、80%を超えるなど)であることが一般的である場合がある。
【0039】
食用のマイクロキャリア
上記のように、本明細書で記載される食品のいずれも、食用のマイクロキャリア(マイクロビーズを含む)上に増殖させた培養細胞を用いてもよい。食用のマイクロキャリアは畜産物を含まない原料または材料で形成される場合があり、原料または材料が非動物(植物を含む)源由来であることを意味する。食用のマイクロキャリアを、一般的に、食用の(栄養価が高いおよび/または大量に安全に消化できる)原料および細胞付着ドメインまたはモチーフを有する原料で形成してもよい。一部のバリエーションでは、食用のマイクロキャリアを、少なくとも部分的には、多糖の架橋構造および細胞付着モチーフ(例えばRGD)を含むポリペチドによって形成してもよい。特定の例として、食用のマイクロキャリアを、ペクチン(例えば、チオール修飾ペクチン、PTP)およびカルドシンのようなRGD含有ポリペチドを架橋させることによって形成してもよい。
本明細書で記載される食用のマイクロキャリアのどれでも、香味剤(香味を強化するための添加剤)、食用のマイクロキャリアの外観および/または栄養価を強化するための添加剤を含む追加の(補足的な)原料も含んでもよく、得られた食品(例えば、チップ)は食用のマイクロキャリアを用いて製造された。これらの添加剤(例えば、香味剤)を、脱水前または後に加えられる香味剤の代わりにまたは追加して用いてもよい。
【0040】
例えば、食用のマイクロキャリアは、食用のマイクロスポンジおよび/または食用のマイクロビーズを含んでもよい。これらのマイクロキャリアは多孔性(例えば、スポンジのような)であるか、または滑らかである場合がある。加工された食肉を形成するために用いられる食用のマイクロキャリアは、バイオリアクターで使用するためにマイクロビーズ/微小粒子に形成される場合があり、直径約3mm~約0.02mmの間(例えば、約2mm~約0.05mmの間、約1mm~0.1mmの間、約1mm~0.3mmの間など)である場合がある。例えば、マイクロビーズは直径約0.5mmである場合がある。サイズは、サイズの平均値もしくは中央値、またはサイズの最大値/最小値を表す場合がある。マイクロキャリアの形は、規則的(例えば、球形、円形など)または不規則的、例えば、球形、立方体などであってよく、これらの形のどれでも、多孔性であってよい。
【0041】
食用のマイクロキャリアを、食用のマイクロキャリアを形成する原料の成形、押出し、注射、注入などを含む任意の適切な工程によって作製してもよい。バイオリアクターと共に細胞培養技術で用いることができて、最終的な加工された食物製品(例えば、チップ)の重要な部分に残留することができる、食用の高多孔性マイクロキャリアを、食用の動物性材料を含まない原料(長期培養由来であるか、動物を殺さずに取り出すことができる培養動物細胞を含む)から形成してもよい。例えば、多糖およびポリペチドのような構成成分を架橋ハイドロゲル、架橋ハイドロゲルの凍結乾燥にして、凍結乾燥されたゲルを適切なサイズに成形する(例えば、切断する)ことによって、このような食用のマイクロキャリアを調製してもよい。
【0042】
食用のマイクロキャリアを形成する方法の1つの例は、マイクロキャリア、多糖およびポリペチドの主な構成成分を形成することを含む。例えば、用いてもよい多糖の1つの種類は、低メチル(LM)エステル化ペクチンであり、食品ですでに用いられている豊富な植物誘導体である。例えば、用いられるLMエステル化ペクチンを誘導して、100%食用に適して消化できるチオール修飾ペクチン(PTP)を形成してもよい。チオール官能基は、ニンニクおよびタマネギで見られる。用いてもよいポリペチドの1つの種類は、カルドシンを含む。カルドシンは、Cynara cardunculus L.から抽出される場合があり、細胞付着性を促進する細胞結合性RGDのモチーフを含むアスパラギン酸プロテイナーゼである。例えば、カルドシンはシステインを介して誘導体化して、そこに新しいチオール基を導入してもよい。カルドシンは食品産業、特にチーズ製造によりすでに用いられている。他のバリエーションでは、カルドシンを、合成ペプチドを含む別のポリペチドによって、食用に適するRGD配列で置換することができた(または付加した)。
【0043】
一部のバリエーションでは、PTPおよび誘導体化されたカルドシンを、酸化的ジスルフィド結合形成を介して架橋してもよい。この例では、PTP-カルドシンハイドロゲルは、高純度グルタチオン(GSH、例えば、健康食品店等級グルタチオンのような)の溶液に空気を吹き込むことによって得られた(酸化型)グルタチオンジスルフィド(GSSG)を用いて、穏やかな条件下で架橋させてもよい。追加の添加物(例えば、香料、栄養素、着色料など)を同様に加えてもよい。
次いでハイドロゲルを成形または形成してもよい。例えば、マクロスポンジ(1~5mm厚)を、型の中にハイドロゲル溶液を流し込むことによって形成し、一晩、空気中で架橋が続くようにし、次いで、凍結乾燥し、所望の寸法(組織工学用途には大きいスポンジ、バイオリアクター用途には約0.5mmの小断片)に切断してもよい。
【0044】
マイクロビーズの大規模生産のために、同軸気流ビーズ製造装置を使用してもよい。例えば、ビーズは修飾架橋ペクチンおよびカルドシンハイドロゲル(例えば、PTP-カルドシンハイドロゲル)で構成されていてもよい。1つのバリエーションでは、PTPおよびカルドシンのマイクロキャリアを形成する方法は、以下を含む場合があるステップによって実行してもよい。(1)シスタミンによるペクチンの誘導体化の二段階の修飾(例えば、10%、25%)、それに続く還元によってペクチン-チオプロピオニルアミド(PTP)を作製すること、(2)カルドシン(例えばカルドシンA)の誘導体化による新しいチオール基の導入、(3)スラブ型でPTPおよびチオール化したカルドシンと共にGSSGを架橋したハイドロゲルの作成(pH、濃度などはハイドロゲルを形成するために最適化してもよい。添加剤、例えば、着色料、栄養素なども含んでもよい)、ハイドロゲルを凍結乾燥してもよい、(4)Nisco同軸気流ビーズ発生器のようなビーズ発生器を用いてビーズを作製し、GSSGハイドロゲル球を凍結乾燥してマイクロキャリアを得ること。
【0045】
使用においては、食用の原料(例えば、チップ)を形成するために、マイクロキャリアを用いて大量に細胞、例えば平滑筋細胞、を培養してもよい。上記のように、一般的に、マイクロキャリア上で、衛星細胞などを含む筋細胞に加えて(または、その代わりに)他の細胞タイプも用いてもよい。
例えば、本明細書で記載されるマイクロキャリアに筋細胞(例えば、平滑筋細胞)を接種し、培養してもよい。特に、細胞およびマイクロキャリアを、バイオリアクターで培養してもよい。マイクロキャリアを分離する、または代わりに除去する必要なしに、得られた培養物を所望のレベルまで増殖させ、直接用いてチップを形成してもよい。先に記載したように、(ただ細胞およびハイドロゲルを組み合わせる代わりに)表面上に培養細胞を増殖させたマイクロキャリアをハイドロゲルと組合せ、脱水して、チップを形成してもよい。一部のバリエーションでは、ハイドロゲルを加えることなく脱水する前に、細胞を有するマイクロキャリアを型のような形成面上へ直接適用してもよく(例えば、注ぐ、スプレーするなど)、例えば、細胞および/またはマイクロキャリアが少なくとも部分的に融合できるように、表面のマイクロキャリアを培養してもよい。例えば、細胞を有するマイクロキャリアを、数時間(例えば、4時間、12時間、18時間、24時間、48時間、3日間など)表面で培養しても、すぐに脱水してもよい。
【0046】
一部のバリエーションでは、上記例1に示され、記載されたことと同様に、細胞(マイクロキャリア上において集密になるまで、を含む密度まで増殖させてもよい)を有するマイクロキャリアを、香味剤を含む添加剤、および、ハイドロゲル(例えば、植物由来の多糖)の溶液と共に加えてもよい。その後、混合物を脱水してもよい。
例えば、細胞がマイクロキャリア上で増殖し数を増やすことができる適切な時間(例えば、12時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間など)、細胞化されたマイクロキャリアを形成するためにバイオリアクターでインキュベート後、培養細胞を持つ食用のマイクロキャリアをチップに形成してもよい。一般に、細胞化されたマイクロキャリアは、細胞(例えば、筋細胞)がその表面上に付着し、増殖したマイクロキャリア(例えば、食用の、畜産物を含まない)である。上記のように、マイクロキャリア上の細胞は集密になるまで増殖させてもよいが、この必要があるわけではない。さらに、細胞はマイクロキャリアの表面上および/または表面内で融合してもよい。細胞化されたマイクロキャリアは、少なくとも部分的に融合してもよい。
これらの例では、食品の本体はマイクロキャリアも含んでもよく、それが視覚化されてもよい(例えば、倍率で)。
【0047】
例えば、食用のマイクロキャリアを用いたバリエーションでは、本明細書で記載されるチップを形成する方法は、懸濁液中の食用で畜産物を含まないマイクロキャリア上で複数の筋細胞を培養して、複数の細胞化されたマイクロキャリアを形成することを含んでもよい。細胞化されたマイクロキャリアを、植物由来のハイドロゲル、および一部のバリエーションでは香味剤のような添加物と混合してもよい。細胞化されたマイクロキャリアおよびハイドロゲル(追加の添加剤の有無のいずれか)の混合物は、次いで置かれる、注がれる、スプレーされる、またはそうでなければ脱水装置での使用に適した支持体(例えば、型または他の表面)上へ加えられてもよい。次いで上述のように、混合物を脱水してもよい。追加の香味剤/添加剤(例えば、塩など)を次いで加えてもよく、チップをさらに加工および/または包装してもよい。
【0048】
バイオリアクターを含む懸濁液で、細胞を、通常、本明細書で記載される食用のマイクロキャリアのいずれかと共に培養してもよい。例えば、細胞を食用のマイクロキャリアと共に培地に接種し、適切な食用のマイクロキャリア上で、接触し、付着し、増殖できるようにしてもよい。例えば、培養することは食用で畜産物を含まず、チオール修飾ペクチン(PTP)およびカルドシンのハイドロゲルを含むマイクロキャリア上で複数の筋細胞を培養することを含んでもよい。一部のバリエーションでは、培養することは、食用で畜産物を含まないマイクロキャリア上で複数の筋細胞を培養することを含み、畜産物を含まないマイクロキャリアは香味、香味促進剤、着色剤、着色促進剤および栄養促進剤を含む。
【0049】
一部のバリエーションでは、細胞化されたマイクロキャリアは、細胞で覆われている(例えば、50%を超える被覆、60%を超える被覆、70%を超える被覆、80%を超える被覆、90%を超える被覆、集密度まで被覆)。米国特許第8703216号に記載されているように、すでに内容全体を参照によって引用したものとし、使用する細胞は、特に筋細胞を含む1つ以上のタイプであってよい。適切な程度まで細胞で覆われたマイクロキャリア(例えば、>50%、>60%、>70%、>80%、>90%などの被覆)は、細胞化されたマイクロキャリアと呼んでもよい。
【0050】
本明細書で記載される食用のマイクロキャリアの使用が任意選択であるにもかかわらず、それは従来の方法で培養された細胞に勝るいくつかの利点を提供する場合がある。例えば、本明細書で記載される食用のチップに使われる細胞は、例えば、平滑筋細胞、衛星細胞、線維芽細胞、脂肪細胞始原細胞などを含んでもよく、一般的に付着依存性で、付着する表面を必要とする。現在の細胞培養方法は、細胞が付着し、増殖してもよい表面を提供するために、フラスコ、試験管および/またはプレート(例えば、cellStackまたはhyperflask)を用いてもよく、それは結果として手作業集約的工程になる場合があり、表面から細胞を分離するための酵素および細胞を得るための大量の培地を必要とする場合がある。多くの原料は単回使用であるので、廃棄物を生じ、細胞の拡張は一般的に、培養が進行するにつれて、より多い層数でより多くのプレートを接種することによって達成される。
【0051】
特にマイクロキャリアがマイクロポーラスまたはマクロポーラスであるならば、本明細書で記載されるマイクロキャリアは、細胞付着性に大きな表面積/体積を提供する場合がある。細胞拡張の最初のステップは、細胞およびマイクロキャリアを小型のバイオリアクターで混合することを含んでもよい。細胞は懸濁液で維持されるマイクロキャリア上に付着し、数を増やす。最大の増殖が達成されたらマイクロキャリアを回収してもよく、より大きな体積のバイオリアクターに接種するために用いることができ、または十分量増殖するならば直接用いてもよい。本明細書で記載されるマイクロキャリアは食用であるので、細胞をマイクロキャリアから分離する必要はなく、酵素の使用および細胞に損害を与える危険性を排除する。工程は時間効率的で、スケールアップが容易である。工業的バイオリアクターは、従来の細胞培養インキュベーターより少ない空間で、大容量(例えば、1000L超)を達成することができる。
【0052】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態だけを記載するためであり、本発明を限定することを意図しない。例えば、本明細書で用いられるように、前後関係を別途明白に指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」は複数形も含むことを意図する。本明細書で使われる場合、「含む」および/または「含んでいる」という用語は、定まった特徴、ステップ、操作、要素および/または構成成分の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成成分および/またはそれらのグループの存在または添加を排除しない、ということはさらに理解される。本明細書で用いられるように、「および/または」という用語は関連するリストされた項目の1つ以上のすべての組合せを含み、「/」と略してもよい。
本明細書の明細書および特許請求の範囲で用いられるように、例において用いられることを含み、特別に明記されない限り、たとえ用語が特別に現れなくても、すべての数字を、「約」または「およそ」という単語で始まるように読んでもよい。記載される値および/または位置が、値および/または位置の妥当な期待される範囲内にあるということを示すために、大きさおよび/または位置を記載する場合、「約」、または「およそ」というフレーズを使ってもよい。例えば、数値は、表示された値(または値の範囲)の+/-0.1%、表示された値(または値の範囲)の+/-1%、表示された値(または値の範囲)の+/-2%、表示された値(または値の範囲)の+/-5%、表示された値(または値の範囲)の+/-10%などの値であってもよい。本明細書で列挙されるどんな数値の範囲でも、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことを意図する。
【0053】
さまざまな実例となる実施形態が上述されるが、特許請求の範囲によって記載されるように、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、さまざまな実施形態に対して、多くの任意の変更を行ってもよい。例えば、さまざまな記載された方法ステップが実行される順序は、多くの場合、代替の実施形態に変わってもよく、他の代替の実施形態において、1つ以上の方法ステップは全く省略されてもよい。さまざまな装置およびシステムの実施形態の任意選択の特徴は、いくつかの実施形態には含まれるが、他の実施形態には含まれないということもある。したがって、前述の記載は主に典型的な目的のために提供され、特許請求の範囲に述べられたような本発明の範囲を制限するために解釈されてはならない。
【0054】
本明細書に含まれる例および説明は、説明のためであって、制限のためではなく、主題が行われてもよい特定の実施形態を示す。すでに述べたように、構造的および論理的な置換および変化が本開示の範囲を逸脱しないように、他の実施形態を利用し、特定の実施形態から他の実施形態を派生させてもよい。複数が実際に開示されるならば、発明の主題のこのような実施形態は、本明細書で、個々にまたは全体的に、単に便宜上、および、自発的に本出願の範囲をどんな単一の発明または発明の概念に制限することを意図せずに、「発明」という用語で呼ばれてもよい。したがって、特定の実施形態を本明細書で例示し、記載したが、同じ目的を達成することを見込んだどんな構成でも、示された特定の実施形態の代替とすることができる。本開示は、さまざまな実施形態のすべての改変またはバリエーションを包含することを意図する。上記の実施形態と本明細書で特に記載しなかった他の実施形態との組合せは、上記の説明を検討すれば、当業者にとって明らかである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕食用の脱水食品であって、
植物由来のハイドロゲルと組み合わせた培養動物筋細胞
を含み、培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルは、脱水されたシート材料として形成される、脱水食品。
〔2〕香味剤をさらに含む、前記〔1〕に記載の食品。
〔3〕培養動物筋細胞および植物由来のハイドロゲルがシート材料全体に分布する、前記〔1〕に記載の食品。
〔4〕直径が約5~30μmの間の脱水培養動物筋細胞がシート材料全体に分布する、前記〔1〕に記載の食品。
〔5〕培養動物筋細胞が、牛肉、子牛肉、豚肉、鶏肉または魚肉のうちの1つ以上に由来する、前記〔1〕に記載の食品。
〔6〕培養動物筋細胞が、骨格ミオサイト、衛星細胞、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を含む、前記〔1〕に記載の食品。
〔7〕植物由来のハイドロゲルがペクチンを含む、前記〔1〕に記載の食品。
〔8〕植物由来のハイドロゲルが低メチル(LM)エステル化ペクチンを含む、前記〔1〕に記載の食品。
〔9〕スナックチップとして構成される食用の脱水食品であって、
脱水された培養動物筋細胞および植物由来の多糖を含むシート材料として形成される食用の本体と、
香味剤と
を含み、培養動物筋細胞および植物由来の多糖がシート材料全体に分布する、脱水食品。
〔10〕食用の本体は直径が厚さの10倍超である、前記〔9〕に記載の食品。
〔11〕培養動物筋細胞が、牛肉、子牛肉、豚肉、鶏肉または魚肉のうちの1つ以上に由来する、前記〔9〕に記載の食品。
〔12〕培養動物筋細胞が、骨格ミオサイト、衛星細胞、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を含む、前記〔9〕に記載の食品。
〔13〕植物由来のハイドロゲルがペクチンを含む、前記〔9〕に記載の食品。
〔14〕植物由来の多糖が低メチル(LM)エステル化ペクチンを含む、前記〔9〕に記載の食品。
〔15〕食用の食品を形成する方法であって、
培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて混合物を形成することと、
混合物を脱水して食用のシート材料を形成することと
を含む方法。
〔16〕香味剤を添加することをさらに含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕植物由来のハイドロゲルが、表面上に培養筋細胞を増殖させた食用のマイクロキャリアを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔18〕組み合わせることが、食用のマイクロキャリア上に増殖させた培養筋細胞を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔19〕組み合わせることが、香味剤を筋細胞および植物由来のハイドロゲルの混合物に加えることを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔20〕組み合わせることが、培養骨格ミオサイト、衛星細胞、平滑ミオサイトおよび心臓ミオサイトのうちの1つ以上を植物由来のハイドロゲルと組み合わせて混合物を形成することを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔21〕組み合わせることが、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせること、ならびに植物由来のハイドロゲルをゲル化させることを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔22〕組み合わせることが、培養筋細胞および植物由来のハイドロゲル、香味剤、ならびに塩化カルシウム溶液を組み合わせることを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔23〕組織培養チェンバーから培養細胞を回収すること、および植物由来のハイドロゲルと組み合わせる前に細胞を洗浄することをさらに含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔24〕表面上に混合物を塗布すること、および脱水する前に植物由来のハイドロゲルをゲル化させることをさらに含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔25〕脱水することが、混合物を脱水してもろいチップを形成することを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔26〕食用の食品をスナックチップに形成する方法であって、
培養筋細胞および植物由来のハイドロゲルを組み合わせて混合物を形成することと、
表面上に混合物を塗布することと、
混合物を凝固させることと、
混合物を脱水してチップを形成することと
を含む方法。
図1A-1D】
図2A-2B】
図3A1-2】
図3B1-2】
図3C1-2】
図4
図5