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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】静電容量型近接センサ
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
H01H36/00 V
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020069102
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166150
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】新枦 雄介
(72)【発明者】
【氏名】栗熊 甫
(72)【発明者】
【氏名】張 雲偉
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-108884(JP,A)
【文献】特開2012-131473(JP,A)
【文献】特開2007-018839(JP,A)
【文献】特開2016-099284(JP,A)
【文献】特開2012-224263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の接近を該検出対象とセンサ電極の間の静電容量に基づいて検出する静電容量型近接センサであって、
前記センサ電極に対して前記検出対象と反対側に配されて接地されるグラウンド電極と、該センサ電極と該グラウンド電極の間に配される中間層とを備えており、
該中間層は、電気絶縁性のガード支持体と、該センサ電極と同電位とされる第一ガード電極および第二ガード電極とを備え、
該第一ガード電極が該ガード支持体における該センサ電極との対向面に配されていると共に、該第二ガード電極が該ガード支持体における該グラウンド電極との対向面に配されており、
該第一ガード電極と該第二ガード電極を相互に導通する導通部が該中間層に設けられている静電容量型近接センサ。
【請求項2】
前記ガード支持体における前記センサ電極との対向面の全面が前記第一ガード電極によって覆われていると共に、該ガード支持体における前記グラウンド電極との対向面の全面が前記第二ガード電極によって覆われている請求項1に記載の静電容量型近接センサ。
【請求項3】
前記検出対象の接近による前記センサ電極の静電容量の変化を検出する検出装置を備えており、該検出装置を収容する収容空所が前記ガード支持体の内部に設けられている請求項1又は2に記載の静電容量型近接センサ。
【請求項4】
前記第一ガード電極と前記第二ガード電極の少なくとも一方が前記導通部と一体形成されている請求項1~3の何れか一項に記載の静電容量型近接センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象の接近を静電容量の変化に基づいて検出する静電容量型近接センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検出対象の接近を電気的な手段によって検出する近接センサが知られている。また、近接センサは、検出原理の異なる複数種類があり、例えば、特開2003-202383号公報(特許文献1)に記載された物体検出装置のように、静電容量に基づいて検出する静電容量型近接センサも知られている。静電容量型近接センサは、導電体である人体などの検出対象がセンサ電極に接近する場合に、検出対象の接近を、検出対象とセンサ電極の間の静電容量の変化に基づいて、センサ電極から離れた位置において検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-202383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、静電容量型近接センサは、検出精度の向上を図るために、センサ電極の電気的な遮蔽を得るために設けられるグラウンド電極、グラウンド電極による静電容量を排除するためのガード電極等を備える場合がある。
【0005】
しかしながら、センサ電極とガード電極とグラウンド電極とが対向するように配置されると、センサ電極とガード電極の間の寄生容量と、ガード電極とグラウンド電極の間の寄生容量とが、検出に影響するほど大きくなるおそれがあった。
【0006】
本発明の解決課題は、寄生容量を低減することができる、新規な構造の静電容量型近接センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
上述した寄生容量を抑えるために、センサ電極とガード電極の間の第一誘電層およびガード電極とグラウンド電極の間の第二誘電層を、誘電率が低い空気等によって構成することが考えられる。しかし、センサ電極とグラウンド電極の間に位置するガード電極を電極単体で所定の位置に保持することは難しく、ガード電極は、一般的に電気絶縁性のガード支持体に固着されている。この場合に、第一誘電層と第二誘電層の少なくとも一方は、ガード支持体を含んで構成されることによって誘電率が増大し、センサ電極とグラウンド電極の間の寄生容量が大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、第一の態様は、検出対象の接近を該検出対象とセンサ電極の間の静電容量に基づいて検出する静電容量型近接センサであって、前記センサ電極に対して前記検出対象と反対側に配されて接地されるグラウンド電極と、該センサ電極と該グラウンド電極の間に配される中間層とを備えており、該中間層は、電気絶縁性のガード支持体と、該センサ電極と同電位とされる第一ガード電極および第二ガード電極とを備え、該第一ガード電極が該ガード支持体における該センサ電極との対向面に配されていると共に、該第二ガード電極が該ガード支持体における該グラウンド電極との対向面に配されており、該第一ガード電極と該第二ガード電極を相互に導通する導通部が該中間層に設けられているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた静電容量型近接センサによれば、中間層におけるガード支持体の両面に設けられた第一ガード電極と第二ガード電極が導通部によって相互に導通されている。それゆえ、センサ電極とグラウンド電極の間の寄生容量に対して、第一ガード電極と第二ガード電極によって各電極の対向方向において挟まれたガード支持体の誘電率の影響が低減される。その結果、例えばガード支持体を比較的に誘電率の高い合成樹脂等の材料によって形成したり、ガード支持体の厚さ寸法を大きくしたとしても、寄生容量の増大による検出精度の低下が抑制されることから、ガード支持体の設計自由度を大きく得ることができる。
【0011】
第二の態様は、第一の態様に記載された静電容量型近接センサにおいて、前記ガード支持体における前記センサ電極との対向面の全面が前記第一ガード電極によって覆われていると共に、該ガード支持体における前記グラウンド電極との対向面の全面が前記第二ガード電極によって覆われているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた静電容量型近接センサによれば、ガード支持体の両面が全体にわたって第一ガード電極と第二ガード電極によって覆われることにより、センサ電極とグラウンド電極の間に生じる寄生容量に対して、第一ガード電極と第二ガード電極によって挟まれたガード支持体の誘電率の影響が一層低減される。
【0013】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された静電容量型近接センサにおいて、前記検出対象の接近による前記センサ電極の静電容量の変化を検出する検出装置を備えており、該検出装置を収容する収容空所が前記ガード支持体の内部に設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた静電容量型近接センサによれば、寄生容量に対するガード支持体の影響が低減乃至回避されることから、寄生容量を抑えつつガード支持体を厚肉として、ガード支持体の内部に検出装置を収容する収容空所を設けることも可能になる。検出装置をガード支持体内部の収容空所に配することにより、静電容量型近接センサ全体の小型化が図られ得ると共に、検出対象の接近検出に対する検出装置によるノイズが、第一ガード電極による遮蔽によって低減される。
【0015】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された静電容量型近接センサにおいて、前記第一ガード電極と前記第二ガード電極の少なくとも一方が前記導通部と一体形成されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた静電容量型近接センサによれば、導通部が第一ガード電極と第二ガード電極の少なくとも一方に対して一体とされることにより、導通部をガード支持体に簡単に配することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、静電容量型近接センサにおいて、寄生容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態としての静電容量型近接センサを示す断面図であって、図2のI-I断面に相当する図
図2図1のII-II断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1,2には、本発明の第一の実施形態としての静電容量型近接センサ10が示されている。静電容量型近接センサ10は、検出対象Aの上方からの接近を静電容量に基づいて検出するセンサであって、表層12と裏層14と中間層16とを備えている。以下の説明において、原則として、上下方向とは図1中の上下方向を、左右方向とは図1中の左右方向を、前後方向とは図2中の上下方向を、それぞれ言う。なお、図中において、表層12、裏層14、中間層16、後述する第一誘電層38、第二誘電層40、各配線44,48,50等は、見易さのために厚さや太さが大きく示されている。
【0021】
表層12は、センサ支持体としての第一支持体18にセンサ電極20が重ね合わされた構造を有している。第一支持体18は、電気絶縁性の合成樹脂などによって形成されており、本実施形態では四角平板形状とされている。第一支持体18は、後述する検出対象Aの検出を有利に実現するために、誘電率の大きな材料によって形成されることが望ましい。センサ電極20は、銅や銀等の導電性金属或いは導電性金属を含む合金、合成樹脂に導電性フィラーを混合した導電性エラストマーなどの導電性材料によって形成されている。センサ電極20は、第一支持体18における下面の略全面を覆うように、第一支持体18に固着されている。センサ電極20は、板状や薄膜状であってよく、例えば、第一支持体18の下面に対して導電性材料が蒸着、メッキ、塗装等によって固着されることにより形成される。また、金属板、導電布、金属箔等によって形成されたセンサ電極20を第一支持体18の下面に貼り付けることにより、センサ電極20を第一支持体18の下面に設けることもできる。
【0022】
裏層14は、グラウンド支持体としての第二支持体22にグラウンド電極24が重ね合わされた構造を有している。第二支持体22は、電気絶縁性の合成樹脂などによって形成されており、本実施形態では四角平板形状とされている。グラウンド電極24は、センサ電極20と同様の導電性材料によって形成されている。グラウンド電極24は、第二支持体22における上面の略全面を覆うように、第二支持体22に固着されている。グラウンド電極24は、板状や薄膜状であってよく、例えば、センサ電極20と同様に、第二支持体22への蒸着、メッキ、塗装等によって、形成と同時に第二支持体22の上面に固着することができる。また、予め形成された金属板、導電布、金属箔等のグラウンド電極24が、第二支持体22の上面に貼り付けられるようにしてもよい。
【0023】
中間層16は、ガード支持体としての第三支持体26の上下両面に対して、第一ガード電極28aと第二ガード電極28bが重ね合わされた構造を有している。
【0024】
第三支持体26は、電気絶縁性の合成樹脂などによって形成されており、本実施形態では四角平板形状とされている。第三支持体26は、内部に収容空所30を備えている。本実施形態の収容空所30は、直方体形状の空所であって、第三支持体26の中央部分に設けられている。内部に収容空所30を備える第三支持体26は、例えば、別々に成形された複数の合成樹脂部材が、接着や機械的な係止等の手段によって固定される、或いは溶着によって一体化されることによって形成することができる。もっとも、収容空所30の形状や配置は、特に限定されるものではなく、例えば、第三支持体26の前端面に開放された状態で、第三支持体26における前端部に設けられていてもよい。
【0025】
第一,第二ガード電極28a,28bは、それぞれ板状や薄膜状とされており、センサ電極20と同様の導電性材料によって形成されている。第一ガード電極28aが第三支持体26の上面に固着されていると共に、第二ガード電極28bが第三支持体26の下面に固着されている。本実施形態では、第一ガード電極28aが第三支持体26の上面の全体を覆っていると共に、第二ガード電極28bが第三支持体26の下面の全体を覆っている。
【0026】
第一ガード電極28aと第二ガード電極28bは、一対の導通部32,32によって相互に接続されている。導通部32,32は、第一,第二ガード電極28a,28bと同様の導電性材料によって形成されており、第三支持体26の左右両面に固着されて、第一ガード電極28aと第二ガード電極28bの左右端部に連続して設けられている。要するに、四角板状とされた第三支持体26は、前後両面を除く表面が第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32とによって覆われている。これにより、第一ガード電極28aと第二ガード電極28bは、導通部32,32によって相互に導通されている。導通部32,32は、第一,第二ガード電極28a,28bとは別体であってもよいが、好適には第一,第二ガード電極28a,28bと同じ形成材料によって一体形成される。
【0027】
なお、第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32,32は、例えば、センサ電極20やグラウンド電極24と同様に、第三支持体26への蒸着、メッキ、塗装等によって、形成と同時に第三支持体26に固着することができる。また、予め形成された金属板、導電布、金属箔等を第三支持体26に貼り付けることによって、第三支持体26に固着された第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32,32を得るようにしてもよい。
【0028】
表層12と裏層14と中間層16は、上下方向において相互に所定の距離を隔てて略平行に配されている。また、表層12が裏層14よりも検出対象A側となる上側に配置されていると共に、中間層16が表層12と裏層14の対向面間に配置されている。表層12と裏層14と中間層16は、左右方向の端部が一対の連結部材34,34によって連結されている。連結部材34は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料によって形成されて、板状とされている。連結部材34は、左右方向の内側へ向けて突出する2つの凸部36,36を備えている。2つの凸部36,36は、上下方向に所定の距離だけ離れた位置に設けられており、それぞれ前後方向の全長にわたって連続して延びている。
【0029】
そして、表層12の左右方向の端部が上側の凸部36の上面に重ね合わされて固着され、裏層14の左右方向の端部が下側の凸部36の下面に重ね合わされて固着され、中間層16の左右方向の端部が上下の凸部36,36の間に差し入れられて固着される。これにより、表層12と裏層14と中間層16が連結部材34,34を介して相互に連結されている。そして、表層12と裏層14と中間層16は、連結部材34,34によって相互に位置決めされており、対向方向である上下方向において所定の距離を隔てて配置されている。
【0030】
裏層14のグラウンド電極24は、表層12のセンサ電極20に対して、検出対象Aのセンサ電極20に対する接近側と反対側である下方に配されている。また、中間層16の第一,第二ガード電極28a,28bは、センサ電極20とグラウンド電極24の間に配されている。そして、第一ガード電極28aが第三支持体26におけるセンサ電極20との対向面の全面を覆って配されていると共に、第二ガード電極28bが第三支持体26におけるグラウンド電極24との対向面の全面を覆って配されている。
【0031】
表層12と中間層16の間および中間層16と裏層14の間は、それぞれ空間とされている。そして、センサ電極20と第一ガード電極28aの上下方向の対向面間が、空気を誘電体とする第一誘電層38とされていると共に、第二ガード電極28bとグラウンド電極24の上下方向の対向面間が、空気を誘電体とする第二誘電層40とされている。
【0032】
また、第三支持体26の収容空所30には、検出装置としての検出基板42が配されている。検出基板42は、合成樹脂などの電気絶縁性の基板上に、後述するセンサ電極20と検出対象Aとの接近に伴う静電容量を検出する検出回路が設けられた構造を有している。検出回路は、例えば、センサ電極20および第一,第二ガード電極28a,28bへの電圧の印加、センサ電極20と検出対象Aとの接近によって生じる静電容量に応じた出力信号の受信等を実行する回路とされる。検出基板42は、第三支持体26の収容空所30に収容されていることにより、第三支持体26の表面を覆う第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32,32とによって囲まれている。
【0033】
センサ電極20は、検出基板42の検出回路に対して、センサ配線44を介して接続されている。センサ配線44は、導電性材料によって形成されており、一方の端部においてセンサ電極20に導通されていると共に、他方の端部において検出基板42の検出回路に導通されている。センサ配線44は、センサ電極20から第一ガード電極28aへ向けて下向きに延び出している。センサ配線44は、長さを短くするために直線的に延びていることが望ましいが、必要に応じて屈曲していてもよい。センサ配線44は、センサ電極20と一体形成されていてもよいが、例えば、センサ電極20とは別体のバスバーによって構成することも可能である。この場合には、例えば、バスバーの上端部分が、第一支持体18によって支持されると共に、センサ電極20に接触して導通される。センサ配線44によって検出基板42の検出回路に接続されたセンサ電極20には、検出回路から所定の検出用電圧が印加される。
【0034】
センサ配線44は、収容空所30の上壁部を貫通している。即ち、収容空所30の上壁部を構成する第三支持体26の一部と第一ガード電極28aには、厚さ方向である上下方向に貫通する第一配線挿通孔46が形成されており、センサ配線44が第一配線挿通孔46を貫通して配されている。第一配線挿通孔46は、矩形断面を有する孔であって、センサ配線44の断面よりも孔断面が大きくされている。これにより、センサ配線44は、第一配線挿通孔46への挿通部分において、第一ガード電極28aから離隔している。センサ配線44は、第一配線挿通孔46の略中央を貫通している。なお、第一配線挿通孔46の孔断面形状は、矩形以外の円形等であってもよい。
【0035】
第一ガード電極28aは、検出基板42の検出回路に対して、ガード配線48を介して接続されている。ガード配線48は、導電性材料によって形成されており、一方の端部において第一ガード電極28aに導通されていると共に、他方の端部において検出基板42の検出回路に導通されている。ガード配線48は、第一配線挿通孔46の周縁部において上下方向に延びている。ガード配線48は、第一ガード電極28aと一体形成されていてもよいが、センサ配線44と同様に、第一ガード電極28aとは別体のバスバー等によって構成されていてもよい。ガード配線48は、長さを短くするために直線的に延びていることが望ましいが、必要に応じて屈曲していてもよい。
【0036】
ガード配線48によって検出基板42の検出回路に接続された第一ガード電極28aは、検出回路から電圧が印加されて、センサ電極20と同電位に保たれるアクティブガード電極とされる。なお、センサ電極20と第一ガード電極28aは、実質的に同電位とされて、浮遊容量等による検知精度の低下を抑え得る電位が与えられるものであればよく、多少の電位の違いがあってもよい。
【0037】
さらに、中間層16において、第一ガード電極28aと第二ガード電極28bが導通部32,32を介して相互に導通されていることにより、第一ガード電極28aと第二ガード電極28bは常に同電位とされる。したがって、第二ガード電極28bは、第一ガード電極28aと同様に、センサ電極20と同電位に保たれる。なお、例えば、第二ガード電極28bに検出回路から電圧が印加されるようにしてもよいし、導通部32,32に検出回路から電圧が印加されるようにしてもよい。
【0038】
グラウンド電極24は、検出基板42の検出回路に対して、グラウンド配線50を介して接続されている。グラウンド配線50は、導電性材料によって形成されており、一方の端部においてグラウンド電極24に導通されていると共に、他方の端部において検出基板42の検出回路の接地端子に導通されている。これにより、グラウンド電極24は、基準電位に保たれている。グラウンド配線50は、グラウンド電極24から第二ガード電極28bへ向けて上向きに延び出している。グラウンド配線50は、長さを短くするために直線的に延びていることが望ましいが、必要に応じて屈曲していてもよい。グラウンド配線50は、グラウンド電極24と一体形成されていてもよいが、例えば、センサ配線44やガード配線48と同様に、グラウンド電極24とは別体のバスバー等によって構成されていてもよい。
【0039】
グラウンド配線50は、収容空所30の下壁部を貫通している。即ち、収容空所30の下壁部を構成する第三支持体26の一部と第二ガード電極28bには、厚さ方向である上下方向に貫通する第二配線挿通孔52が形成されており、グラウンド配線50が第二配線挿通孔52を貫通して配されている。第二配線挿通孔52は、矩形断面を有する孔であって、グラウンド配線50の断面よりも孔断面が大きくされている。これにより、グラウンド配線50は、第二配線挿通孔52への挿通部分において、第二ガード電極28bから離隔している。グラウンド配線50は、第二配線挿通孔52の略中央を貫通している。なお、第二配線挿通孔52の孔断面形状は、矩形以外の円形等であってもよい。
【0040】
静電容量型近接センサ10は、例えば、連結部材34,34が図示しない装着対象に固定されることにより、装着対象に取り付けられる。装着対象は、特に限定されないが、検出対象Aの接近や衝突を防ぐべき対象であって、例えば、産業用のロボットアーム,ロボット車両などが例示される。
【0041】
図1に二点鎖線で仮想的に示した人体等の検出対象Aが静電容量型近接センサ10に上方から接近すると、導電体である検出対象Aとセンサ電極20との間にコンデンサが構成される。そして、検出対象Aとセンサ電極20の間の静電容量に基づく検出信号が、センサ電極20から検出基板42の検出回路へ送信されることにより、静電容量型近接センサ10は、検出対象Aのセンサ電極20に対する接近をセンサ電極20から離れた位置において検出する。
【0042】
なお、静電容量型近接センサ10において検出対象Aの接近が検出された場合の応答は、特に限定されるものではないが、例えば、装着対象の移動を停止させる停止信号を発するなどして、検出対象Aと装着対象の衝突を回避するようにしてもよい。また、警告音や警告灯の点灯等の手段によって、周囲に接近の検出を報知するようにしてもよい。
【0043】
このような本実施形態に係る静電容量型近接センサ10は、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量が低減されている。すなわち、従来の静電容量型近接センサは、第三支持体26の上下一方の面にのみガード電極が設けられていたことから、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量に第三支持体26の誘電率が影響し、寄生容量が大きくなっていた。そこにおいて、本実施形態に係る静電容量型近接センサ10は、第三支持体26の上下両面に第一,第二ガード電極28a,28bが設けられていると共に、それら第一,第二ガード電極28a,28bが導通部32,32によって相互に導通されている。これにより、第一,第二ガード電極28a,28bの間に位置する第三支持体26は、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量に対する影響を抑えられる。それゆえ、第一,第二ガード電極28a,28bを支持する第三支持体26を設けつつ、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量を小さくすることができる。
【0044】
このように、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量に対する第三支持体26の誘電率の影響が低減されることにより、検出対象Aの接近検出に対する寄生容量の影響を抑えつつ、第三支持体26の設計自由度を大きくすることができる。それゆえ、第三支持体26の形成材料として誘電率の大きな材料を選択することも可能になる。
【0045】
センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量に対する第三支持体26の影響が低減されることにより、第三支持体26を比較的に厚肉とし、第三支持体26の内部に収容空所30を設けて、収容空所30に検出基板42を配することも可能になる。これによれば、検出基板42の配設スペースを外部に設ける必要がなくなって、静電容量型近接センサ10の小型化が図られると共に、検出基板42に接続される各配線44,48,50の長さが短くなることによって、ノイズの低減等も図られる。また、検出基板42が第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32,32によって囲まれた収容空所30に収容されることにより、検出基板42が発する電磁波等が検出対象Aの接近検出に及ぼす影響を低減することができる。
【0046】
本実施形態では、センサ電極20と第一ガード電極28aの間の第一誘電層38と、第二ガード電極28bとグラウンド電極24の間の第二誘電層40とが、何れも空気を誘電体としている。それゆえ、電気絶縁性の合成樹脂等を誘電体とする場合に比して、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量が小さくされている。
【0047】
本実施形態では、第三支持体26におけるセンサ電極20との対向面の全面が第一ガード電極28aによって覆われていると共に、第三支持体26におけるグラウンド電極24との対向面の全面が第二ガード電極28bによって覆われている。これにより、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量に対する第三支持体26の誘電率の影響が、より低減され、センサ電極20とグラウンド電極24の間の寄生容量がより小さくされて、検出対象Aの接近の検出精度の向上が図られ得る。
【0048】
第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32,32が同じ材料によって一体形成されていることにより、第一,第二ガード電極28a,28bと導通部32,32が第三支持体26の表面において容易に形成可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態の第一ガード電極28aは、第三支持体26におけるセンサ電極20との対向面である上面の全体を覆って設けられていたが、第一ガード電極28aは、第三支持体26の上面を部分的に覆って設けられていてもよい。同様に、第二ガード電極28bは、第三支持体26におけるグラウンド電極24との対向面である下面を部分的に覆って設けられていてもよい。例えば、第一ガード電極28aと第二ガード電極28bの少なくとも一方は、網目状とされ得る。
【0050】
前記実施形態の導通部32,32は、第一,第二ガード電極28a,28bの両方と一体形成されていたが、導通部32,32は、例えば、第一,第二ガード電極28a,28bの何れか一方とだけ一体形成されていてもよい。また、導通部32,32は、例えば、第一,第二ガード電極28a,28bの両方に対して別体として形成されて、第一,第二ガード電極28a,28bの少なくとも一方に対して接触によって導通されていてもよい。
【0051】
導通部32,32は、必ずしも左右一対が設けられる必要はなく、左右何れか一方だけでもよい。また、導通部32は、第三支持体26の左右両面と前後両面の全面を覆う環状とすることもできるし、第三支持体26の前後少なくとも一方の面だけに設けられて左右両面には設けられないようにもできる。また、第三支持体26の左右方向の端面に設けられる導通部32が、前後方向において部分的に設けられていてもよいし、第三支持体26の前後方向の端面に設けられる導通部32が、左右方向において部分的に設けられていてもよい。また、例えば、第三支持体26を貫通するスルーホールに導通部32を形成して、第三支持体26を貫通する導通部32を設けることも可能である。
【0052】
検出基板42は、各配線44,48,50を短くし、センサ電極20に対する遮蔽を確保する等の観点から、前記実施形態に示すように第三支持体26の収容空所30に配されることが望ましい。しかしながら、検出基板42は、例えば、センサ電極20とグラウンド電極24の対向間を外れた外部に配することも可能である。例えば、グラウンド電極24に固着される第二支持体22の内部に収容空所を設けて、検出基板42を当該収容空所に配することもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 静電容量型近接センサ
12 表層
14 裏層
16 中間層
18 第一支持体
20 センサ電極
22 第二支持体
24 グラウンド電極
26 第三支持体(ガード支持体)
28a 第一ガード電極
28b 第二ガード電極
30 収容空所
32 導通部
34 連結部材
36 凸部
38 第一誘電層
40 第二誘電層
42 検出基板
44 センサ配線
46 第一配線挿通孔
48 ガード配線
50 グラウンド配線
52 第二配線挿通孔
A 検出対象
図1
図2