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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】処置システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020070156
(22)【出願日】2020-04-09
(62)【分割の表示】P 2018537994の分割
【原出願日】2016-09-12
(65)【公開番号】P2020114485
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-04-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】津布久 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】河嵜 稔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 言
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/108295(WO,A1)
【文献】特開2006-288431(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給されることにより超音波振動を発生する超音波振動子と、
生体組織を把持する一対の把持片を備え、前記超音波振動子で発生した前記超音波振動を用いて処置を行うエンドエフェクタと、
前記一対の把持片の開閉を操作するハンドルと、
前記ハンドルの握り込み量及び前記一対の把持片による前記生体組織の把持力量の少なくとも一方を取得するセンサーと、
を備える超音波処置具と、
前記超音波振動子へ電力を供給する電源と、
前記電源から前記超音波振動子へ供給される電流を検出する検出回路と、
前記電源の出力が継続している時間に係る出力継続時間を計測する計時部と、
前記検出回路により検出された前記電流、前記センサーで取得された前記ハンドルの握り込み量、及び、前記センサーで取得された前記一対の把持片による前記把持力量のいずれかに係る特性パラメーターを取得する監視部と、
前記特性パラメーターに基づき時間閾値を設定する閾値設定部と、
計測された前記出力継続時間が設定された前記時間閾値を上回ったか否かについての判定結果に基づいて、前記電源からの出力を制御する出力制御部と、
を備えるエネルギー制御装置と、
を具備する処置システム
【請求項2】
告知部をさらに具備し、
前記出力制御部は、前記出力継続時間が前記時間閾値を上回ったとき、前記電源に前記超音波振動子への前記電力の出力を停止又は低減させること、及び、前記出力継続時間が前記時間閾値を上回ったことを前記告知部により告知することのうち少なくとも一方を行う、請求項1に記載の処置システム
【請求項3】
前記監視部は、前記超音波振動子へと供給される前記電流の電流値を前記特性パラメーターとして取得し、
前記閾値設定部は、
前記電流値が第2の閾値以上であり、かつ前記第2の閾値より大きい第1の閾値以下であるときの、前記時間閾値を標準値としたときに、
前記電流値が前記第2の閾値より小さいときは、前記時間閾値を前記標準値よりも長くするように設定し、
前記電流値が前記第1の閾値より大きいときは、前記時間閾値を前記標準値よりも短くするように設定する、
請求項1に記載の処置システム
【請求項4】
前記監視部は、前記超音波振動子へと供給される前記電流の電流値を前記特性パラメーターとして取得し、
前記閾値設定部は、前記電流値に対する関数に基づいて、前記時間閾値を設定する、
請求項1に記載の処置システム
【請求項5】
前記監視部は、前記センサーによって検出された前記ハンドルの前記握り込み量に相当する前記ハンドルの変位量を、前記特性パラメーターとして取得し、
前記閾値設定部は、
前記変位量が第2の閾値以上であり、かつ前記第2の閾値より大きい第1の閾値以下であるときの、前記時間閾値を標準値としたときに、
前記変位量が前記第2の閾値より小さいときは、前記時間閾値を前記標準値よりも長くするように設定し、
前記変位量が前記第1の閾値より大きいときは、前記時間閾値を前記標準値よりも短くするように設定する、
請求項1に記載の処置システム
【請求項6】
前記監視部は、前記センサーによって検出された前記ハンドルの前記握り込み量に相当する前記ハンドルの変位量を、前記特性パラメーターとして取得し、
前記閾値設定部は、前記変位量に対する関数に基づいて、前記時間閾値を設定する、
請求項1に記載の処置システム
【請求項7】
前記監視部は、前記センサーによって検出された前記一対の把持片による前記把持力量を、前記特性パラメーターとして取得し、
前記閾値設定部は、
前記把持力量が第2の閾値以上であり、かつ前記第2の閾値より大きい第1の閾値以下であるときの、前記時間閾値を標準値としたときに、
前記把持力量が前記第2の閾値より小さいときは、前記時間閾値を前記標準値よりも長くするように設定し、
前記把持力量が前記第1の閾値より大きいときは、前記時間閾値を前記標準値よりも短くするように設定する、
請求項1に記載の処置システム
【請求項8】
前記監視部は、前記センサーによって検出された前記一対の把持片による前記把持力量を、前記特性パラメーターとして取得し、
前記閾値設定部は、前記把持力量に対する関数に基づいて、前記時間閾値を設定する、
請求項1に記載の処置システム
【請求項9】
前記超音波処置具は、前記特性パラメーターと前記時間閾値との関係が記憶された記憶媒体を備え、
前記超音波処置具が前記エネルギー制御装置に接続されたとき、前記閾値設定部は、前記記憶媒体から前記特性パラメーターと前記時間閾値との関係を読み出して当該関係に基づいて前記時間閾値を設定する、
請求項1に記載の処置システム。
【請求項10】
前記超音波処置具は、識別情報が記憶されている第1の記憶媒体を備え、
前記エネルギー制御装置は、前記識別情報と、前記特性パラメーター及び前記時間閾値の関係との対応関係が記憶されている第2の記憶媒体を備え、
前記超音波処置具が前記エネルギー制御装置に接続されたとき、前記閾値設定部は、前記第1の記憶媒体から前記識別情報を読み出して、前記識別情報に対応した前記特性パラメーター及び前記時間閾値の関係を読み出し、当該関係に基づいて前記時間閾値を設定する、
請求項1に記載の処置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波処置具のためのエネルギー制御装置、及びそれを備える処置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の把持片で処置対象である生体組織を把持し、把持片の一方が超音波振動することで、把持された生体組織の凝固や切開等が行われる超音波処置具が知られている。このような超音波処置具において、処置が完了し、生体組織が切れ分かれているにもかかわらず、把持片の振動が継続することは好ましくない。一対の把持片が互いに直接接触した状態で把持片が振動すると、把持片が損傷するおそれがある。
【0003】
超音波処置具の一例が、国際公開第2015/122306号に開示されている。この文献に開示されている超音波処置具では、次のようにして処置の完了を検知する。すなわち、超音波処置具の超音波振動子の電気インピーダンスが取得される。このインピーダンスは、漸増し、その後漸減する。この超音波処置具は、インピーダンスの変動に基づいて、把持された生体組織の切れ分かれを検出し、出力を調整する。
【発明の概要】
【0004】
上述のように、超音波振動を用いて処置を行う超音波処置具の制御において、処置の完了を検知することは重要である。
【0005】
本発明は、処置の完了を適切に検知することができる超音波処置具のためのエネルギー制御装置を備える処置システムを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、処置システムは、電力が供給されることにより超音波振動を発生する超音波振動子と、生体組織を把持する一対の把持片を備え、前記超音波振動子で発生した前記超音波振動を用いて処置を行うエンドエフェクタと、前記一対の把持片の開閉を操作するハンドルと、前記ハンドルの握り込み量及び前記一対の把持片による前記生体組織の把持力量の少なくとも一方を取得するセンサーと、を備える超音波処置具と、前記超音波振動子へ電力を供給する電源と、前記電源から前記超音波振動子へ供給される電流を検出する検出回路と、前記電源の出力が継続している時間に係る出力継続時間を計測する計時部と、前記検出回路により検出された前記電流、前記センサーで取得された前記ハンドルの握り込み量、及び、前記センサーで取得された前記一対の把持片による前記把持力量のいずれかに係る特性パラメーターを取得する監視部と、前記特性パラメーターに基づき時間閾値を設定する閾値設定部と、計測された前記出力継続時間が設定された前記時間閾値を上回ったか否かについての判定結果に基づいて、前記電源からの出力を制御する出力制御部と、を備えるエネルギー制御装置と、を備える。
【0008】
本発明によれば、処置の完了を適切に検知することができる超音波処置具のためのエネルギー制御装置を備える処置システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る処置システムの概略の一例を示す図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係るエンドエフェクタと処置対象である組織とについて、エンドエフェクタの長手軸に対し垂直な断面の概略を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係るエンドエフェクタと処置対象である組織とについて、エンドエフェクタの長手軸に対し垂直な断面の概略を示す図であり、組織が切れ分かれた状態を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る処置システムの構成例の概略を示すブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る出力制御処理の一例の概略を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係る特性パラメーターの例と、特性パラメーターの値と第2の時間閾値との関係との一例を示す。
図6図6は、第2の実施形態に係る出力制御処理の一例の概略を示すフローチャートである。
図7図7は、第3の実施形態に係る出力制御処理の一例の概略を示すフローチャートである。
図8図8は、第3の実施形態に係る特性パラメーターの例と、特性パラメーターの値と第2の時間閾値との関係との一例を示す。
図9図9は、第4の実施形態に係る出力制御処理の一例の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、超音波振動を利用して生体組織の処置を行う処置システムに関する。
【0011】
〈処置システムの構成〉
図1は、処置システム1の概略を示す図である。図1に示すように、処置システム1は、超音波処置具2と、超音波処置具2に電力を供給するエネルギー制御装置3とを備える。
【0012】
超音波処置具2は、ハウジング5と、ハウジング5に連結されるシャフト6と、シャフト6の端部に設けられたエンドエフェクタ7とを備える。エンドエフェクタ7が設けられている側を先端側と称し、ハウジング5が設けられている側を基端側と称することにする。ハウジング5には、ユーザーが超音波処置具2を保持するグリップ11が設けられており、さらに、グリップ11に対して開閉するようにハンドル12が設けられている。
【0013】
ハウジング5の基端側には、超音波振動子ユニット8が設けられている。超音波振動子ユニット8は、少なくとも1つの圧電素子を含む超音波振動子13を有する。超音波振動子ユニット8は、ケーブル9を介してエネルギー制御装置3に取り外し可能に接続されている。エネルギー制御装置3から超音波振動子ユニット8の超音波振動子13に交流の電力が供給されることで、超音波振動子13は振動する。
【0014】
超音波振動子13には、ロッド部材14が接続されている。ロッド部材14は、ハウジング5及びシャフト6の内部を通り、エンドエフェクタ7にまで達している。すなわち、ロッド部材14の先端部は、エンドエフェクタ7の第1の把持片15を構成する。ロッド部材14は、例えばチタン合金等の振動伝達性の高い材料から形成される。超音波振動子13で発生した超音波振動は、ロッド部材14を伝わる。その結果、第1の把持片15は振動する。第1の把持片15は、任意に設計された当該振動系の共振に応じた周波数で振動する。この共振周波数は、これに限定されないが、例えば数十kHz程度であり、例えば46kHz以上48kHz以下(47kHz程度)でもよい。
【0015】
シャフト6の先端部には、第1の把持片15に対して開閉するように第2の把持片16が取付けられる。第2の把持片16とハンドル12とは、シャフト6の内部を通る可動部材17によって連結されている。ハンドル12をグリップ11に対して開く又は閉じることにより、可動部材17が先端側又は基端側へ移動し、第2の把持片16がシャフト6に対して回動して第1の把持片15に対して開いたり閉じたりする。このようにして、ハンドル12のグリップ11に対する開閉動作により、エンドエフェクタ7の第1の把持片15と第2の把持片16とが開閉する。エンドエフェクタ7は、一対の把持片である第1の把持片15及び第2の把持片16によって、処置対象である生体組織を把持するように構成されている。
【0016】
第2の把持片16は、パッド部材21と、パッド部材21が取付けられるホルダ部材22とを備える。パッド部材21は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂で形成される。第1の把持片15と第2の把持片16とが閉じた状態では、第2の把持片16のパッド部材21は第1の把持片15に接触し、第2の把持片16のその他の部位は第1の把持片15に接触しない。
【0017】
図2A及び図2Bは、超音波処置具2の使用時の第1の把持片15及び第2の把持片16のその長手軸に対し垂直な断面を示す図である。図2Aは、処置対象である組織O1を第1の把持片15及び第2の把持片16で挟んでいる状態を示す。超音波処置具2は、第1の把持片15及び第2の把持片16で組織O1を挟みながら、第1の把持片15が超音波振動することで、組織O1を凝固させながら切開することができる。図2Bは、組織が第1の組織片O2と第2の組織片O3とに切れ分かれた状態を示す。このとき、パッド部材21は第1の把持片15に接触している。
【0018】
図1に示すように、ハウジング5には、操作ボタン19が設けられている。操作ボタン19には、エネルギー制御装置3から超音波振動子ユニット8への電力の供給のオン/オフを切り換える操作が入力される。なお、操作ボタン19に代えて、又は操作ボタン19と共に、処置システム1には操作ボタン19と同様の機能を有するフットスイッチが設けられてもよい。
【0019】
図3は、エネルギー制御装置3から超音波処置具2への電力の供給に関連する処置システム1の構成例の概略を示す図である。
【0020】
上述のとおり、超音波処置具2には、超音波振動子13と、第1の把持片15と、第2の把持片16とが設けられている。超音波処置具2には、さらに、図3に示すように、スイッチ20と、記憶媒体25とが設けられている。超音波振動子13は、上述の超音波振動子ユニット8に設けられた振動源としての超音波振動子である。スイッチ20は、超音波処置具2のハウジング5の内部に設けられている。スイッチ20は、操作ボタン19で操作入力が行われることにより、オン状態とオフ状態とで切り換わる。さらに、記憶媒体25は、当該処置具に関する情報が記憶されている。また、超音波処置具2には、必要に応じて各種のセンサー28が設けられている。センサー28は、例えば、ハンドル12の変位量を示す握り込み量を検出するためのセンサーであってもよい。この握り込み量は、例えばグリップに11に対して最も開いた位置からのハンドル12の変位量で表される。また、センサー28は、第1の把持片15と第2の把持片16とによる処置対象である生体組織の把持力を示す組織把持力量を検出するためのセンサーであってもよい。
【0021】
エネルギー制御装置3は、処置システム1の動作を制御する制御回路40と、記憶媒体48とを備える。制御回路40は、例えば記憶媒体48に記憶されたプログラムに基づいて動作し、エネルギー制御装置3の各部の動作を制御する。記憶媒体48には、制御回路40で用いられる処理プログラム、制御回路40で行われる演算に用いられるパラメーター及びテーブル等が記憶されている。
【0022】
さらに、エネルギー制御装置3は、第1の電源51を備える。第1の電源51は、制御回路40の制御下で、超音波処置具2の超音波振動子13に超音波の周波数に対応する交流の電力を供給する。第1の電源51から供給された電力によって、超音波振動子13は、共振周波数で振動し、その結果、第1の把持片15が超音波領域の周波数で振動して第1の把持片15と接触する生体組織は処置される。
【0023】
また、エネルギー制御装置3は、第2の電源52を備えていてもよい。第2の電源52は、制御回路40の制御下で、第1の把持片15と第2の把持片16との間に所定の電圧を印加する。第2の電源52の出力が十分大きなエネルギーを有する高周波電力であるとき、第1の把持片15と第2の把持片16との間に把持された生体組織には高周波電流が流れ、この電流によって生体組織で発生するジュール熱によって、生体組織は処置されうる。また、第2の電源52は、第1の把持片15と第2の把持片16との間のインピーダンスが計測されうる程度の小さなエネルギーが出力されるように構成されていてもよい。
【0024】
エネルギー制御装置3は、第1の検出回路53を備える。第1の検出回路53は、電圧検出回路と電流検出回路とA/D変換器とを備える。第1の検出回路53は、第1の電源51に係る出力電圧及び出力電流を検出し、検出結果をデジタル信号として制御回路40へと伝達する。制御回路40は、第1の検出回路53によって検出された電圧値、電流値、それらから算出されたインピーダンス値等に基づいて、第1の電源51の出力を制御する。
【0025】
また、エネルギー制御装置3は、第2の検出回路54を備えてもよい。第2の検出回路54は、電圧検出回路と電流検出回路とA/D変換器とを備える。第2の検出回路54は、第2の電源52に係る出力電圧及び出力電流を検出し、検出結果をデジタル信号として制御回路40へと伝達する。制御回路40は、第2の検出回路54によって検出された電圧値及び電流値に基づいて、第1の把持片15と第2の把持片16との間に把持された生体組織のインピーダンス値を算出することができる。算出されたインピーダンス値は、第1の電源51及び第2の電源52の出力制御に用いられる。第2の検出回路54は、エンドエフェクタ7に把持された生体組織の処置を行うための高周波電力を出力している第2の電源52の出力に係る出力電圧及び出力電流を検出してもよい。また、第2の検出回路54は、エンドエフェクタ7に把持された生体組織のインピーダンスを計測するための弱い出力を行っている第2の電源52の出力に係る出力電圧及び出力電流を検出してもよい。
【0026】
エネルギー制御装置3は、さらに入力部62と、告知部64とを備える。入力部62は、ユーザーによるエネルギー制御装置3への入力を受け付ける部位である。入力部62は、例えばタッチパネル、ボタンスイッチ、又はキーボード等を含む。告知部64は、情報をユーザーに告知する部位である。告知部64は、例えばディスプレイ又はスピーカー等を含む。
【0027】
本実施形態に係るエネルギー制御装置3は、次のような動作を行う。すなわち、超音波処置具2のスイッチ20がオンにされたとき、これを検出して、超音波処置具2への電力の供給を開始する。その後、エネルギー制御装置3は、処置の継続時間すなわち電力の供給開始から供給が継続されている時間を計測し、所定の時間が経過したら、処置が完了したと判断して出力の停止、出力の低減、処置が完了した旨等の告知等を行う。制御回路40は、このようなエネルギー制御装置3の動作に係る演算を行う。
【0028】
制御回路40は、計時部41と、監視部42と、閾値設定部43と、出力制御部44とを備える。計時部41は、第1の電源51の出力が継続している時間に係る出力継続時間を計測する。本実施形態では、第1の電源51の出力開始からの出力の継続時間を出力継続時間として計測する。
【0029】
監視部42は、所定の特性パラメーターを監視する。特性パラメーターは、第1の電源51から超音波振動子13へと供給される電流であってもよい。この電流(超音波電流と称する)は、超音波振動子13の振動振幅、すなわち、第1の把持片15の振幅と相関を有する。また、特性パラメーターは、超音波処置具2のセンサー28で取得されたハンドル12の握り込み量であってもよい。また、特性パラメーターは、超音波処置具2のセンサー28で取得された、第1の把持片15と第2の把持片16とによる生体組織の把持力量であってもよい。また、特性パラメーターは、第2の検出回路54によって検出された電流値及び電圧値から算出される第1の把持片15と第2の把持片16との間のインピーダンス値、すなわち、生体組織に係るインピーダンス値の例えば初期値等であってもよい。
【0030】
閾値設定部43は、特性パラメーターに基づき計時部41で計測される時間に関する閾値である時間閾値を設定する。出力制御部44は、第1の電源51及び第2の電源52の出力を制御する。特に、出力制御部44は、計時部41で計測された出力継続時間が閾値設定部43で設定された時間閾値を上回ったとき、第1の電源51に超音波振動子13への電力の出力を停止させる。出力制御部44は、前記出力の停止に代えて、出力を低減させること、又は、告知部64を用いて出力継続時間が時間閾値を上回ったことをユーザーに告知すること等を行ってもよい。
【0031】
制御回路40はCentral Processing Unit(CPU)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)等の集積回路等を含む。制御回路40は、1つの集積回路等で構成されてもよいし、複数の集積回路等が組み合わされて構成されてもよい。これら集積回路の動作は、例えば記憶媒体48や集積回路内の記録領域に記録されたプログラムに従って行われる。
【0032】
〈処置システムの動作〉
本実施形態に係る処置システム1の動作について説明する。処置システム1を用いて生体組織等の処置対象を処置する際には、ユーザーは、グリップ11及びハンドル12を保持し、エンドエフェクタ7を腹腔等の体腔に挿入する。ユーザーは、第1の把持片15及び第2の把持片16の間に処置対象である生体組織等を配置し、ハンドル12をグリップ11に対して閉じる。その結果、第2の把持片16が第1の把持片15に対して閉じ、第1の把持片15と第2の把持片16との間で生体組織が把持される。
【0033】
この状態で、ユーザーは、操作ボタン19をオン状態にする。このとき、制御回路40は、スイッチ20がオンになったことを検出する。制御回路40の出力制御部44は、第1の電源51に出力を開始させる。第1の電源51は、制御回路40の制御下で、超音波振動子13に電力を供給する。その結果、超音波振動子13で超音波振動が発生し、発生した超音波振動がロッド部材14を介して第1の把持片15に伝達される。第1の把持片15及び第2の把持片16の間で処置対象である組織が把持された状態において、第1の把持片15が超音波振動すると、第1の把持片15と把持された組織との間に摩擦熱が発生する。摩擦熱によって生体組織のタンパク質が変性し、生体組織が凝固するとともに、生体組織は切開される。
【0034】
また、エネルギー制御装置3が高周波電力を出力する第2の電源52を有するとき、制御回路40は、第1の電源51とともに第2の電源52に電力を出力させてもよい。このとき、第2の電源52は、制御回路40の制御下で、第1の把持片15と第2の把持片16との間に高周波電圧を印加する。その結果、第1の把持片15と第2の把持片16との間に把持された生体組織には、高周波電流が流れる。この高周波電流によって、生体組織では、ジュール熱が発生する。この熱によっても、生体組織が凝固する。
【0035】
処置対象である組織が切断された状況では、図2Bに示すように、第1の把持片15と第2の把持片16とが接触した状態となる。この状態で第1の把持片15が超音波振動を続けると、第2の把持片16のパッド部材21等が損傷を受ける可能性がある。そこで、本実施形態において、制御回路40は、組織が切断される時間を推定し、処置を行っている時間すなわち第1の電源51での出力開始からの経過時間に基づいて、超音波振動子13への電力の供給を停止させたり、供給する電力を低下させたり、組織が切断されていると推測される旨などをユーザーに告知したりする。
【0036】
〈出力制御処理〉
制御回路40による出力の制御について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4に示す出力制御処理は、例えば、ユーザーによって操作ボタン19が押されたときに開始する。
【0037】
ステップS101において、制御回路40は、各種パラメーターの初期化を行う。例えば、処置の経過時間を表すパラメーターTは0に設定され、出力を低減させるタイミングを示す第2の時間閾値Tth2は、標準値であるTaveに設定される。
【0038】
ステップS102において、制御回路40の出力制御部44は、第1の電源51に出力を開始させる。第1の電源51は、制御回路40の制御下で、所定の電力を超音波振動子13に投入する。その結果、第1の把持片15は超音波領域の周波数で振動し、生体組織の処置が行われることになる。ステップS103において、制御回路40の計時部41は、処置の経過時間Tの計測を開始する。すなわち、パラメーターTのカウントアップを開始する。経過時間Tを用いて、第1の電源51での出力開始からの出力の継続時間が計測される。
【0039】
一般に処置を行う際には、第1の把持片15の温度は徐々に上昇するし、第1の把持片15と接触する生体組織の状態も変化するので、第1の把持片15の共振周波数は変化する。そこで、制御回路40は、まず、第1の電源51に出力周波数のスキャン動作を行わせ、その後、Phase Locked Loop(PLL)を用いた制御を開始して第1の電源51に電力を出力させる。すなわち、制御回路40の出力制御部44は、超音波振動子13を含む振動系の共振周波数近傍で、例えば高い周波数から低い周波数へと徐々に出力の周波数を変化させながら、第1の電源51に電力の出力を行わせる。制御回路40は、第1の検出回路53から、このときの電流及び電圧を取得し、電流及び電圧の位相が一致する周波数、すなわち、当該振動系の共振周波数を取得する。制御回路40は、取得した共振周波数を初期値として、その後もPLLを用いて、出力周波数を振動系の共振周波数に追従させる。以降、PLLを用いて第1の把持片15を共振周波数で振動させる。一般に、第1の把持片15の温度は徐々に上昇するので、振動系の共振周波数は徐々に低下することになる。
【0040】
ステップS104において、制御回路40は、経過時間Tが所定の第1の時間閾値Tth1を上回ったか否かを判定する。経過時間Tが所定の第1の時間閾値Tth1を上回っていないとき、ステップS104の処理を繰り返す。すなわち、経過時間Tが第1の時間閾値Tth1を超えるまで、処理は待機する。経過時間Tが第1の時間閾値Tth1を上回ったとき、処理はステップS105に進む。
【0041】
ステップS105において、制御回路40の監視部42は、特性パラメーターXを取得する。特性パラメーターXについては後述するが、例えば超音波振動子13への出力電流によって表される超音波振動子13又は第1の把持片15等の超音波振動の振幅、ハンドル12の握り込み量、エンドエフェクタ7による生体組織の把持力量、エンドエフェクタ7によって把持された生体組織の電気インピーダンスの初期値等である。
【0042】
第1の時間閾値Tth1によって規定される、特性パラメーターXの取得タイミングは、どのようなものであってもよい。例えば、PLL制御の開始後であってもよい。また、出力スイッチがオンになった直後であってもよい。
【0043】
ステップS106において、制御回路40の閾値設定部43は、特性パラメーターXの評価を行う。特性パラメーターXが所定の第2の閾値x2よりも小さいとき、処理はステップS107に進む。ステップS107において、制御回路40の閾値設定部43は、第2の時間閾値Tth2の値を標準値であるTaveよりも大きな値Tupに設定する。その後、処理はステップS110に進む。
【0044】
ステップS106において、特性パラメーターXが所定の第2の閾値x2以上であり、第2の閾値x2よりも大きい所定の第1の閾値x1以下であると判定されたとき、処理はステップS108に進む。ステップS108において、制御回路40の閾値設定部43は、第2の時間閾値Tth2の値を初期化時に設定した標準値であるTaveのままに設定する。その後、処理はステップS110に進む。
【0045】
ステップS106において、特性パラメーターXが所定の第1の閾値x1よりも大きいと判定されたとき、処理はステップS109に進む。ステップS109において、制御回路40の閾値設定部43は、第2の時間閾値Tth2の値を標準値であるTaveよりも小さな値Tdownに設定する。その後、処理はステップS110に進む。
【0046】
ステップS110において、制御回路40は、経過時間TがステップS107、ステップS108又はステップS109で設定された第2の時間閾値Tth2を上回ったか否かを判定する。経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回っていないとき、処理はステップS110を繰り返す。すなわち、経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を超えるまで、処置は続けられる。経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回ったとき、処理はステップS111に進む。
【0047】
ステップS111において、制御回路40の出力制御部44は、出力低減動作を行う。出力低減動作は、例えば、第1の電源51による電力の出力を停止させる動作である。また、出力低減動作は、例えば、第1の電源51による出力電力を低下させる動作であってもよい。また、出力低減動作は、告知部64を用いて、ユーザーに経過時間Tが第2の時間閾値Tth2に達したことを告知する動作であってもよい。この動作は、例えば、ディスプレイへの表示、スピーカーからの報知音の出力等でありうる。また、出力低減動作は、出力電力の停止又は低下と、告知との組み合わせであってもよい。ステップS111の処理の後、出力制御処理は終了する。
【0048】
特性パラメーターXの例について説明する。特性パラメーターXは、処置の状況を表すパラメーターであり、種々のパラメーターが特性パラメーターXとして採用されうる。図5は、特性パラメーターXの例と、特性パラメーターXの値と第2の時間閾値Tth2との関係とを示す。なお、特性パラメーターXの値と第2の時間閾値Tth2との関係は、例えば記憶媒体48に記憶されている。
【0049】
特性パラメーターXは、超音波振動子13又は第1の把持片15の超音波振動の振幅でありうる。この振幅は、超音波振動子13に供給される電流値と相関を有するため、特性パラメーターXは、超音波振動子13に供給される電流値であってもよい。超音波振動の振幅が大きい程、エンドエフェクタ7に把持された生体組織の処置は早く進行する。そこで、出力の継続時間の閾値である第2の時間閾値Tth2は、超音波振動の振幅が大きいほど短く設定され、超音波振動の振幅が小さいほど長く設定される。
【0050】
また、特性パラメーターXは、超音波処置具2のセンサー28で取得されたハンドル12の握り込み量でありうる。ハンドル12の握り込み量が大きいほど、生体組織はエンドエフェクタ7の第1の把持片15と第2の把持片16とに強く把持される。エンドエフェクタ7の把持が強いほど、処置は早く進行する。そこで、出力の継続時間の閾値である第2の時間閾値Tth2は、ハンドル12の握り込み量が大きいほど短く設定され、ハンドル12の握り込み量が小さいほど長く設定される。
【0051】
また、エンドエフェクタ7による生体組織の把持力量は、ハンドル12の握り込み量によって取得されるに限らず、超音波処置具2のセンサー28によって直接に取得されてもよい。すなわち、特性パラメーターXは、超音波処置具2のセンサー28で取得された、エンドエフェクタ7の第1の把持片15と第2の把持片16とによる生体組織の把持力量であってもよい。出力の継続時間の閾値である第2の時間閾値Tth2は、把持力量が大きいほど短く設定され、把持力量が小さいほど長く設定される。
【0052】
また、特性パラメーターXは、第2の検出回路54によって検出された電流値及び電圧値から算出される第1の把持片15と第2の把持片16との間のインピーダンス値、すなわち、エンドエフェクタ7に把持された生体組織のインピーダンスの値であってもよい。このインピーダンス値は、例えば初期値であってもよいし、変化するインピーダンス値の特徴を表す各種の値であってもよい。このインピーダンス値は、生体組織の水分含有量が多いほど、低くなる。生体組織の水分含有量が多いほど、処置に要する時間は長くなる。そこで、出力の継続時間の閾値である第2の時間閾値Tth2は、インピーダンス値が低いほど長く設定され、インピーダンス値が高いほど短く設定される。
【0053】
第2の時間閾値Tth2は、特性パラメーターXの値が、所定の第2の閾値x2より小さい、第2の閾値x2以上第1の閾値x1以下、又は第1の閾値x1より大きいのいずれかに応じて、それぞれ所定の値に設定されてもよい。また、特性パラメーターXの値が、所定の第2の閾値x2より小さい、第2の閾値x2以上第1の閾値x1以下、又は第1の閾値x1より大きいのいずれかに応じて、予め決められている特性パラメーターXと第2の時間閾値Tth2との関係に基づいて、第2の時間閾値Tth2は設定されてもよい。すなわち、例えば、特性パラメーターXの値が所定の第2の閾値x2より小さい場合であっても、特性パラメーターXの値に応じて第2の時間閾値Tth2が異なるように構成されていてもよい。また、上述の例では、特性パラメーターXの値に応じて3つの場合に場合分けしたが、4つ以上に場合分けしてもよい。
【0054】
上述の特性パラメーターXでは、いずれの場合にも、特性パラメーターXの値が大きいほど第2の時間閾値Tth2は小さい値に設定され、特性パラメーターXの値が小さいほど第2の時間閾値Tth2は大きい値に設定される傾向を有する。
【0055】
なお、特性パラメーターXは、上述の例に限らず、超音波処置具2による処置の状況を表し、処置時間に影響を与えるパラメーターであれば、どのようなパラメーターであってもよい。そのパラメーターに応じて処置時間が長くなるか短くなるかによって、第2の時間閾値Tth2が適切に設定される。
【0056】
〈処置システムの特長〉
本実施形態に係る処置システム1によれば、処置対象である生体組織の処置が終了し、組織が切り分かれたとき又はその直近に、第1の把持片15の超音波振動が停止又は低減され、あるいはその旨の告知等がされる。したがって、第1の把持片15と第2の把持片16のパッド部材21とが接触しながら第1の把持片15が超音波振動することが防止される。その結果、パッド部材21の摩耗や変形が抑制される。
【0057】
ここで、第1の把持片15の超音波振動を停止等させるか否かの判断は、処置開始からの経過時間に基づいてなされる。ここで、経過時間の判定閾値は、処置の状況を反映する特性パラメーターに基づいて設定される。処置の状況は、対象組織の種別又は特性などであったり、ユーザーの超音波処置具2の使い方であったりなどによって変化する。このような処置の状況に応じた判定閾値が設定されるので、本実施形態に係る処置システム1は、処置の状況に応じた適切な出力制御を行える。
【0058】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1の実施形態では、所定のタイミングで取得される1回の特性パラメーターXに基づいて、1回だけ第2の時間閾値Tth2が設定される。これに対して本実施形態では、繰り返し特性パラメーターXの値が取得され、得られた特性パラメーターXに基づいて、逐次に第2の時間閾値Tth2が設定される。その他の動作は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0059】
本実施形態に係る出力制御処理について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。ステップS201乃至ステップS210に係る処理は、図4を参照して説明した第1の実施形態に係る出力制御処理のステップS101乃至ステップS110に係る処理と同様である。簡単に説明すると以下のとおりである。
【0060】
ステップS201において、制御回路40は、各種パラメーターの初期化を行う。ステップS202において、制御回路40の出力制御部44は、第1の電源51に出力を開始させる。ステップS203において、制御回路40の計時部41は、処置の経過時間Tの計測を開始する。ステップS204において、制御回路40は、経過時間Tが所定の第1の時間閾値Tth1を上回ったか否かを判定し、経過時間Tが第1の時間閾値Tth1を上回ったとき、処理はステップS205に進む。
【0061】
ステップS205において、制御回路40は、特性パラメーターXを取得する。ステップS206において、制御回路40は、特性パラメーターXの評価を行う。特性パラメーターXが所定の第2の閾値x2よりも小さいとき、ステップS207において、制御回路40は、第2の時間閾値Tth2の値を標準値であるTaveよりも大きな値Tupに設定する。特性パラメーターXが所定の第2の閾値x2以上であり、第2の閾値x2よりも大きい所定の第1の閾値x1以下であると判定されたとき、ステップS208において、制御回路40は、第2の時間閾値Tth2の値を初期化時に設定した標準値であるTaveのままに設定する。特性パラメーターXが所定の第1の閾値x1よりも大きいとき、ステップS209において、制御回路40は、第2の時間閾値Tth2の値を標準値であるTaveよりも小さな値Tdownに設定する。
【0062】
ステップS210において、制御回路40は、経過時間Tが設定された第2の時間閾値Tth2を上回ったか否かを判定する。経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回っていないとき、処理はステップS211に進む。ステップS211において、制御回路40は、所定のインターバル期間ΔTだけ待機してタイミングを調整する。すなわち、経過時間TはT+ΔTとなる。ここで、ΔTは、例えば10マイクロ秒乃至10秒程度でありうる。
【0063】
ステップS211の処置の後、処理はステップS205に戻る。このように、経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を超えるまで、ステップS205乃至ステップS211の処理が繰り返し行われる。すなわち、制御回路40は、繰り返し特性パラメーターXを取得し、得られた特性パラメーターXに基づいて第2の時間閾値Tth2を再設定する。
【0064】
経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回ったとき、ステップS212において、制御回路40は、出力低減動作を行う。その後、出力制御処理は終了する。
【0065】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、処置中に刻々と変化する特性パラメーターXに応じて、超音波処置具2の出力を停止等させるタイミングを調整する第2の時間閾値Tth2が調整される。その結果、最適なタイミングで出力が停止等する出力低減動作が行われうる。
【0066】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1の実施形態では、特性パラメーターXの値と所定の閾値とを比較して、その大小に応じて第2の時間閾値Tth2が決定される。これに対して本実施形態では、第2の時間閾値Tth2は特性パラメーターXの関数として決定される。その他の動作は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0067】
本実施形態に係る出力制御処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。ステップS301乃至ステップS305に係る処理は、図4を参照して説明した第1の実施形態に係る出力制御処理のステップS101乃至ステップS105に係る処理と同様である。簡単に説明すると以下のとおりである。
【0068】
ステップS301において、制御回路40は、各種パラメーターの初期化を行う。ステップS302において、制御回路40の出力制御部44は、第1の電源51に出力を開始させる。ステップS303において、制御回路40の計時部41は、処置の経過時間Tの計測を開始する。ステップS304において、制御回路40は、経過時間Tが所定の第1の時間閾値Tth1を上回ったか否かを判定し、経過時間Tが第1の時間閾値Tth1を上回ったとき、処理はステップS305に進む。ステップS305において、制御回路40は、特性パラメーターXを取得する。
【0069】
ステップS306において、制御回路40は、特性パラメーターXに対する第2の時間閾値Tth2を示す関数Tth2=T(X)と、取得された特性パラメーターXとに基づいて、第2の時間閾値Tth2を決定する。
【0070】
特性パラメーターXの例と関数T(X)との関係の一例について図8に示す。特性パラメーターXは、第1の実施形態の場合と同様に、超音波の振幅(超音波振動子13に供給される電流値)、ハンドル12の握り込み量、エンドエフェクタ7による生体組織の把持力量、生体組織のインピーダンス値等である。特性パラメーターXが上述の例のいずれの場合であっても、関数T(X)は、負の関数である。関数T(X)は、n次関数であっても、指数関数であっても、対数関数であっても、その他の関数であってもよい。
【0071】
ステップS307において、制御回路40は、経過時間Tが設定された第2の時間閾値Tth2を上回ったか否かを判定する。制御回路40は、経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回っていないとき、処置を継続させ、経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回ったとき、ステップS308において、出力低減動作を行う。その後、出力制御処理は終了する。
【0072】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、関数T(X)と特性パラメーターXとに基づいて第2の時間閾値Tth2が適切に調整される。その結果、最適なタイミングで出力が停止等する出力低減動作がされうる。
【0073】
[第4の実施形態]
第4の実施形態について説明する。ここでは、第3の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第3の実施形態では、所定のタイミングで取得される1回の特性パラメーターXに基づいて、1回だけ第2の時間閾値Tth2が設定される。これに対して本実施形態では、第2の実施形態と同様に繰り返し特性パラメーターXの値が取得され、得られた特性パラメーターXに基づいて、逐次に第2の時間閾値Tth2が設定される。その他の動作は、第3の実施形態の場合と同様である。
【0074】
本実施形態に係る出力制御処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。ステップS401乃至ステップS407に係る処理は、図7を参照して説明した第3の実施形態に係る出力制御処理のステップS301乃至ステップS307に係る処理と同様である。簡単に説明すると以下のとおりである。
【0075】
ステップS401において、制御回路40は、各種パラメーターの初期化を行う。ステップS402において、制御回路40の出力制御部44は、第1の電源51に出力を開始させる。ステップS403において、制御回路40の計時部41は、処置の経過時間Tの計測を開始する。ステップS404において、制御回路40は、経過時間Tが所定の第1の時間閾値Tth1を上回ったか否かを判定し、経過時間Tが第1の時間閾値Tth1を上回ったとき、処理はステップS405に進む。ステップS405において、制御回路40は、特性パラメーターXを取得する。ステップS406において、制御回路40は、特性パラメーターXに対する第2の時間閾値Tth2を示す関数Tth2=T(X)と、取得された特性パラメーターXとに基づいて、第2の時間閾値Tth2を決定する。
【0076】
ステップS407において、制御回路40は、経過時間Tが設定された第2の時間閾値Tth2を上回ったか否かを判定する。経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回っていないとき、処理はステップS408に進む。ステップS408において、制御回路40は、所定のインターバル期間ΔTだけ待機してタイミングを調整する。すなわち、経過時間TはT+ΔTとなる。その後、処理はステップS405に戻る。このように、経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を超えるまで、制御回路40は、繰り返し特性パラメーターXを取得し、得られた特性パラメーターXに基づいて第2の時間閾値Tth2を再設定する。
【0077】
経過時間Tが第2の時間閾値Tth2を上回ったとき、ステップS409において、制御回路40は、出力低減動作を行う。その後、出力制御処理は終了する。
【0078】
本実施形態によっても第3の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、処置中に刻々と変化する特性パラメーターXに応じて、超音波処置具2の出力を停止等させるタイミングを調整する第2の時間閾値Tth2が調整される。その結果、最適なタイミングで出力が停止等する出力低減動作がされうる。
【0079】
[変形例]
上述の第1乃至第4の実施形態のいくつかの変形例について説明する。これらの変形例は、矛盾がない範囲内で互いに組み合わせて適用されてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、超音波処置具2の出力開始からの経過時間Tに応じて出力低減動作を行う例を示した。しかしながら、経過時間Tは出力開始から計測されなくてもよい。例えば、経過時間Tは、上述のPLL制御の開始から計測されてもよい。また、超音波振動子13の電気インピーダンスが取得され、このインピーダンスが極小値を示したとき又は極大値を示したときから経過時間Tが計測されてもよい。すなわち、第1の電源51の出力が継続している時間に係る出力継続時間が、経過時間Tとして計測されればよい。
【0081】
特性パラメーターXと第2の時間閾値Tth2との関係は、超音波処置具2の機種ごとに異なっていてもよい。そこで、この特性パラメーターXと第2の時間閾値Tth2との関係は、次のように決定されてもよい。すなわち、例えば超音波処置具2の記憶媒体25には、超音波処置具2の機種を表す識別情報が記憶されている。また、エネルギー制御装置3の記憶媒体48には、機種に対する特性パラメーターXと第2の時間閾値Tth2との関係が記憶されている。制御回路40は、超音波処置具2の記憶媒体25から機種の識別情報を読み出し、当該識別情報に対応する特性パラメーターXと第2の時間閾値Tth2との関係を用いる。なお、超音波処置具2の機種情報は、記憶媒体25に記憶されていなくても、例えば超音波処置具2の機種に応じて異なる抵抗器が超音波処置具2に設けられており、エネルギー制御装置3は、超音波処置具2との接続時にこの抵抗器の抵抗値を取得して、超音波処置具2の機種を判別してもよい。また、特性パラメーターXと第2の時間閾値Tth2との関係が超音波処置具2の記憶媒体25に記憶されており、制御回路40は、この情報を読み出して第2の時間閾値Tth2を設定してもよい。
【0082】
また、上述の実施形態に係る出力低減動作の種類又は出力低減動作の有無が、入力部62を介して入力されたユーザーの指示に基づいて切り換えられるように、エネルギー制御装置3は構成されていてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、第2の時間閾値Tth2が1つだけ設定される場合を示したが、第2の時間閾値Tth2は2つ以上設定されてもよい。例えば、経過時間Tが1つ目の第2の時間閾値Tth21よりも大きくなったとき、出力が低減させられ、経過時間Tが2つ目の第2の時間閾値Tth22よりも大きくなったとき、出力が停止させられるように、エネルギー制御装置3は構成されていてもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、特性パラメーターXとして1つのパラメーターが取得され、これに基づいて第2の時間閾値Tth2が決定される場合を示したが、これに限らない。特性パラメーターXとして複数のパラメーターが取得され、これらパラメーターの組み合わせによって第2の時間閾値Tth2が決定されてもよい。
【0085】
なお、上述の実施形態では、超音波処置具2は、第1の把持片15の超音波振動によって処置を行う器具として説明したが、これに限らない。エネルギー制御装置3が第2の電源52を有している場合、超音波処置具2には、超音波振動に加えて、第1の把持片15と第2の把持片16との間に高周波電圧を印加する高周波処置具としての機能が付加されてもよい。高周波処置具は、処置対象の組織に高周波電流を流すことによって、組織を流れる電流により発生するジュール熱で処置を行う。また、超音波処置具2は、第1の把持片15又は第2の把持片16にヒーターが設けられ、超音波振動と共にヒーターの熱によって処置対象の組織の処置を行う処置具であってもよい。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9