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特許7009549安全機能を有する静電容量型近接検出装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】安全機能を有する静電容量型近接検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/24 20060101AFI20220118BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20220118BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20220118BHJP
   H03K 17/945 20060101ALI20220118BHJP
   H03K 17/955 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01D5/24 D
B25J19/02
G01B7/00 103C
H03K17/945 B
H03K17/955 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020077042
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173614
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】山本 将大
(72)【発明者】
【氏名】川口 絢也
(72)【発明者】
【氏名】栗熊 甫
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155712(JP,A)
【文献】特開2009-276279(JP,A)
【文献】特開2010-181260(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043443(WO,A1)
【文献】特開2019-075780(JP,A)
【文献】国際公開第2019/154914(WO,A1)
【文献】特開2010-223794(JP,A)
【文献】特開2003-202383(JP,A)
【文献】特開2014-122853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/24
B25J 19/02
G01B 7/00
H03K 17/945
H03K 17/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の近接を検出するための1つのセンサ電極と、
複数系統のうち1つの系統を前記センサ電極に接続するように切り替えるスイッチと、
前記複数系統のうちの第一系統を構成し、前記スイッチにより前記センサ電極に接続された状態において前記センサ電極により検出された第一信号を取得し、前記第一信号に基づいて前記センサ電極と前記検出対象との間の第一静電容量を検出する第一系統検出回路と、
前記第一系統検出回路により検出された前記第一静電容量に基づいて対象機器に対する処理を行う第一系統処理装置と、
前記複数系統のうちの第二系統を構成し、前記スイッチにより前記センサ電極に接続された状態において前記第一信号とは異なるタイミングにて前記センサ電極により検出された第二信号を取得し、前記第二信号に基づいて前記センサ電極と前記検出対象との間の第二静電容量を検出する第二系統検出回路と、
前記第二系統検出回路により検出された前記第二静電容量に基づいて前記対象機器に対する処理を行う第二系統処理装置と、
前記センサ電極が正常である場合に前記第一静電容量と前記第二静電容量とが同一値となるタイミングにおいて前記第一系統検出回路が検出した前記第一静電容量前記第二系統検出回路が検出した前記第二静電容量との差、もしくは、前記第一静電容量および前記第二静電容量のそれぞれと基準容量との比較結果に基づいて、前記センサ電極の診断を行う診断回路と、
を備える、安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項2】
前記スイッチは、前記複数系統のうちの各系統を前記センサ電極に順次接続するように順次切り替える請求項1に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項3】
前記診断回路は、
前記スイッチにより前記センサ電極と前記第一系統検出回路とが接続されている間に、前記第二系統検出回路が検出した前記第二静電容量を用いて前記センサ電極の診断を行い、
前記スイッチにより前記センサ電極と前記第二系統検出回路とが接続されている間に、前記第一系統検出回路が検出した前記第一静電容量を用いて前記センサ電極の診断を行う、請求項2に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項4】
前記スイッチは、
前記センサ電極と前記第一系統検出回路とを接続し、且つ、前記第二系統検出回路と別機器とを接続する状態と、
前記センサ電極と前記第二系統検出回路とを接続し、且つ、前記第一系統検出回路と前記別機器とを接続する状態と、
を切り替える、請求項2に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項5】
前記診断回路は、
前記スイッチにより前記センサ電極と前記第一系統検出回路とが接続されている間に、前記別機器から情報を取得し、且つ、前記別機器から取得した前記情報を用いて前記センサ電極の診断を行い、
前記スイッチにより前記センサ電極と前記第二系統検出回路とが接続されている間に、前記別機器から情報を取得し、且つ、前記別機器から取得した前記情報を用いて前記センサ電極の診断を行う、請求項4に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項6】
前記別機器は、外部装置と通信を行う通信装置である、請求項4又は5に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項7】
前記別機器は、前記検出対象の近接に影響を受けない基準状態における前記センサ電極の基準信号を前記基準容量として出力可能な基準器である、請求項4又は5に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項8】
前記診断回路は、前記第一静電容量と前記第二静電容量との差が所定値より大きい場合に、前記センサ電極の異常と判断する、請求項1-7の何れか1項に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項9】
前記静電容量型近接検出装置は、さらに、
前記検出対象の近接に影響を受けない基準状態における前記センサ電極の基準信号を前記基準容量として出力可能な基準器を備え、
前記診断回路は、前記第一静電容量と前記基準信号とを比較すること、且つ、前記第二静電容量と前記基準信号とを比較することにより、前記センサ電極の診断を行う、請求項1-7の何れか1項に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項10】
前記基準器は、固定の静電容量を有するキャパシタである、請求項9に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項11】
前記センサ電極と前記検出対象との間の静電容量は、環境依存を有しており、
前記診断回路は、前記第一静電容量と前記基準信号との比較、および、前記第二静電容量と前記基準信号との比較において、前記環境依存による補正値を考慮して前記センサ電極の診断を行う、請求項10に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項12】
前記第一系統検出回路は、前記第一静電容量と前記基準信号との比較において、前記環境依存による補正値を考慮して、前記検出対象の近接を検出し、
前記第二系統検出回路は、前記第二静電容量と前記基準信号との比較において、前記環境依存による補正値を考慮して、前記検出対象の近接を検出する、請求項11に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項13】
前記基準器は、前記センサ電極と同一環境に配置され、且つ、静電容量が前記センサ電極と同一環境依存を有する基準電極である、請求項9に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項14】
前記基準器である前記基準電極は、前記センサ電極よりも小さな面積を有する、請求項13に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項15】
前記第一系統検出回路は、前記第一静電容量と前記基準信号との比較結果に基づいて前記検出対象の近接を検出し、
前記第二系統検出回路は、前記第二静電容量と前記基準信号との比較結果に基づいて、前記検出対象の近接を検出する、請求項13又は14に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【請求項16】
前記センサ電極は、人協働ロボットに配置され、
前記第一系統検出回路および前記第二系統検出回路は、前記センサ電極と前記検出対象としての人との間の静電容量を検出する、請求項1-15の何れか1項に記載の安全機能を有する静電容量型近接検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全機能を有する静電容量型近接検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人協働ロボットに近接センサを設け、ロボットと人との距離を検出することが記載されている。近接センサの例として、超音波センサ、光学センサ、静電容量センサ、電波センサがあげられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/131237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人協働ロボット等においては、高い安全性が要求される。そこで、ロボットと人との距離を正確に把握することが求められる。そして、検出装置の安全性を高くするために、検出を複数系統で行うことが考えられる。つまり、第一系統と第二系統のそれぞれにおいて、センサ電極と検出回路とを備える。
【0005】
第一系統と第二系統の何れにおいても、検出対象である人は同一の対象であるため、第一系統のセンサ電極と第二系統のセンサ電極とは、近くに設置されることになる。この場合、第一系統のセンサ電極と第二系統のセンサ電極とに、同じタイミングで励起電圧を印加すると、相互に干渉し合うため、それぞれのセンサ電極と検出対象との間の静電容量を高精度に検出することができない。
【0006】
仮に、第一系統のセンサ電極と第二系統のセンサ電極に、異なるタイミングで励起電圧を印加することで、相互に干渉することは解決できる。しかし、第一系統のセンサ電極と第二系統のセンサ電極とが、いわゆるキャパシタの一対の電極を構成する可能性がある。そのため、一方のセンサ電極に励起電圧を印加したときに、一方のセンサ電極から他方のセンサ電極へ電荷が移動する可能性がある。その結果、センサ電極と検出対象との間の静電容量を高精度に検出することができない。
【0007】
このように、安全機能を有するようにするために複数系統を構成しようとすると、検出対象との静電容量を高精度に検出することが容易ではない。本発明は、安全機能として複数系統を有するようにしつつ、検出対象との静電容量を高精度に検出することができる、安全機能を有する静電容量型近接検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る安全機能を有する静電容量型近接検出装置は、検出対象の近接を検出するための1つのセンサ電極と、複数系統のうち1つの系統を前記センサ電極に接続するように切り替えるスイッチと、前記複数系統のうちの第一系統を構成し、前記スイッチにより前記センサ電極に接続された状態において前記センサ電極により検出された第一信号を取得し、前記第一信号に基づいて前記センサ電極と前記検出対象との間の第一静電容量を検出する第一系統検出回路と、前記第一系統検出回路により検出された前記第一静電容量に基づいて対象機器に対する処理を行う第一系統処理装置と、前記複数系統のうちの第二系統を構成し、前記スイッチにより前記センサ電極に接続された状態において前記第一信号とは異なるタイミングにて前記センサ電極により検出された第二信号を取得し、前記第二信号に基づいて前記センサ電極と前記検出対象との間の第二静電容量を検出する第二系統検出回路と、前記第二系統検出回路により検出された前記第二静電容量に基づいて前記対象機器に対する処理を行う第二系統処理装置と、前記センサ電極が正常である場合に前記第一静電容量と前記第二静電容量とが同一値となるタイミングにおいて前記第一系統検出回路が検出した前記第一静電容量前記第二系統検出回路が検出した前記第二静電容量との差、もしくは、前記第一静電容量および前記第二静電容量のそれぞれと基準容量との比較結果に基づいて、前記センサ電極の診断を行う診断回路とを備える。
【0009】
本発明に係る静電容量型近接検出装置は、第一系統検出回路および第一系統処理装置により第一系統を構成し、第二系統検出回路および第二系統処理装置により第二系統を構成する。そして、センサ電極が、第一系統と第二系統とにおいて共有されている。センサ電極を共有とすることにより、励起電圧が相互干渉することや、他のセンサ電極に電荷が移動することを防止することができる。従って、高精度に、センサ電極と検出対象との間の静電容量を検出することができる。
【0010】
また、センサ電極を共有しているものの、検出回路および処理装置は、第一系統と第二系統とにおいて独立している。従って、高い安全性を有する。さらに、静電容量型近接検出装置は、診断回路を備えている。診断回路は、第一系統検出回路が検出した第一静電容量、および、第二系統検出回路が検出した第二静電容量に基づいて、センサ電極の診断を行う。従って、センサ電極の異常を検出することができ、高い安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】静電容量型近接検出装置の適用例を示す図である。
図2】第一例の静電容量型近接検出装置の構成図である。
図3】第一例における第一系統の処理と第二系統の処理のタイムチャートである。
図4】診断回路による第一診断処理を示すフローチャートである。
図5】診断回路による第二診断処理を示すフローチャートである。
図6】第二例の静電容量型近接検出装置の構成図である。
図7】第二例における第一系統の処理と第二系統の処理のタイムチャートである。
図8】第三例の静電容量型近接検出装置の構成図である。
図9】第三例における第一系統の処理と第二系統の処理のタイムチャートである。
図10】第四例の静電容量型近接検出装置の構成図である。
図11】第四例における第一系統の処理と第二系統の処理のタイムチャートである。
図12】第一例の基準器の適用例を示し、補正前の静電容量を示す図である。
図13】第一例の基準器の適用例を示し、補正後の静電容量を示す図である。
図14】第一例の基準器の適用例を示し、補正後の静電容量を用いた検出対象の近接の検出の態様を示す図である。
図15】第一例の基準器の適用例を示し、補正後の静電容量を用いた診断を示す図である。
図16】第一例の基準器を用いた第一診断を示すフローチャートである。
図17】第一例の基準器を用いた第二診断を示すフローチャートである。
図18】第二例の基準器の適用例を示し、各静電容量を示す図である。
図19】第二例の基準器の適用例を示し、環境S1において、検出対象の近接の検出の態様を示す図である。
図20】第二例の基準器の適用例を示し、環境S2において、検出対象の近接の検出の態様を示す図である。
図21】第二例の基準器の適用例を示し、センサ電極の診断を行う際の各静電容量を示す図である。
図22】第二例の基準器の適用例を示し、環境S1において、診断を示す図である。
図23】第二例の基準器を用いた第一診断を示すフローチャートである。
図24】第二例の基準器を用いた第二診断を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.静電容量型近接検出装置1の適用例)
静電容量型近接検出装置1(以下、「検出装置」と称する)の適用例について図1を参照して説明する。検出装置1は、例えば、人協働ロボット2に配置され、検出対象3の一例である人が人協働ロボット2に近接したことを検出する装置として適用できる。そして、検出対象3である人が人協働ロボット2に対して所定距離以内に近接していると判定された場合には、人協働ロボット2を停止させたり、警告を発したりすることができる。
【0013】
ここで、人協働ロボット2と検出対象3との所定距離は、タッチパネルと人の指との距離に比べて極めて遠い。そのため、対象とする人協働ロボット2と検出対象3との間の静電容量Cxは、非常に小さい。つまり、検出装置1は、検出対象3である人の近接を、極めて小さな静電容量Cxの変化に基づいて検出することができる装置である。
【0014】
また、検出装置1の検出対象3は、人の他に、導電体であれば、全てを対象とできる。例えば、検出装置1の検出対象3をロボットとし、検出装置1の設置対象を他のロボットとして、検出装置1は、ロボット同士の近接を検出する装置としても適用できる。
【0015】
また、検出装置1を設置する対象は、人協働ロボット2の他に、任意の位置に設置することができる。例えば、検出装置1を、検出対象3である人の侵入禁止エリアに設置することで、人の侵入を検出することもできる。
【0016】
図1に示す人協働ロボット2は、任意の作業を行うためのシリアルリンク型ロボットである。人協働ロボット2は、複数の関節を有しており、先端に作業ユニットを備える。例えば、人協働ロボット2は、搬送対象物(図示せず)を搬送するロボットであって、先端に搬送対象物を把持するハンドを有する。ただし、人協働ロボット2は、上記構成に限られず、任意の構成とすることができる。
【0017】
検出装置1は、図1に示すように、センサ本体10と、回路ユニット20とを備える。センサ本体10は、人協働ロボット2の表面に設置されている。例えば、センサ本体10は、人協働ロボット2における作業ユニット付近(先端付近)に設置されている。センサ本体10は、人協働ロボット2の円筒外周部を構成する枠体に塗装やメッキにより形成されたものや、金属などの導電体により形成された枠体そのものとすることができる。なお、枠体とは別体に形成された部材とし、枠体に張り付けるようにしてもよい。回路ユニット20は、センサ本体10に電気的に接続されており、静電容量Cxを取得する。回路ユニット20は、例えば、センサ本体10に励起電圧を印加すると共に、励起電圧を印加した際に流れる電流を検出することで、静電容量Cxの相当値を取得する。
【0018】
(2.第一例の静電容量型近接検出装置1)
(2-1.検出装置1の構成)
第一例の検出装置1の構成について図2を参照して説明する。検出装置1は、センサ本体10と回路ユニット20とを備える。センサ本体10は、1つのセンサ電極11および1つのグランド電極12を備える。
【0019】
センサ電極11は、面状(平面、曲面を含む)に形成されており、検出対象3(例えば、人)の近接を検出するための電極である。センサ電極11の表面、すなわち検出対象3側の面には、絶縁層(図示せず)を備える。センサ電極11と検出対象3との間の静電容量Cxである。
【0020】
グランド電極12は、センサ電極11から距離を有してセンサ電極11に対向可能な形状に形成されており、センサ電極11における検出対象3とは反対側に配置されている。グランド電極12は、例えば、面状に形成されている場合には、センサ電極11と同等の大きさに形成されている。また、センサ電極11が筒状に形成されている場合には、グランド電極12は、筒の中心軸を構成する芯材とすることもできる。グランド電極12は、接地されている。センサ電極11とグランド電極12との間には、絶縁層(図示せず)を備える。
【0021】
なお、センサ本体10は、センサ電極11とグランド電極12との間に、アクティブガード電極(シールド電極とも称する)を配置してもよい。この場合、アクティブガード電極にセンサ電極11と同一の励起電圧を印加することにより、センサ電極11とグランド電極12との寄生容量を0(ゼロ)とみなすことができる。従って、センサ電極11における電荷の移動が検出対象3のみに影響を受けることになり、検出対象の近接を高精度に検出することができる。
【0022】
回路ユニット20は、第一系統検出回路21、第一系統処理装置22、第二系統検出回路23、第二系統処理装置24、スイッチ25、診断回路26を備える。ここで、第一系統検出回路21と第一系統処理装置22とが、複数系統のうちの第一系統を構成する。第二系統検出回路23と第二系統処理装置24とが、複数系統のうちの第二系統を構成する。このように、検出装置1は、複数系統を有することによって、安全機能を有する構成となる。
【0023】
第一系統検出回路21は、センサ電極11に接続された状態においてセンサ電極11により検出された第一信号を取得する。例えば、第一系統検出回路21は、センサ電極11に矩形の励起電圧を印加し、励起電圧を印加したときにセンサ電極11に流れる電流を第一信号として取得する。そして、第一系統検出回路21は、第一信号に基づいてセンサ電極11と検出対象3との間の第一静電容量Cx1を検出する。第一静電容量Cx1は、第一系統における静電容量Cxである。
【0024】
第一系統処理装置22は、第一系統検出回路21により検出された第一静電容量Cx1に基づいて対象機器に対する処理を行う。例えば、第一静電容量Cx1が、人協働ロボット2から所定距離内に検出対象3である人が近接したことに相当する静電容量Cxである場合に、第一系統処理装置22は、人協働ロボット2の動作を停止させたり、警告音を発したりするための信号を、対象機器に出力する。
【0025】
ここで、対象機器は、例えば、人協働ロボット2における関節を駆動するアクチュエータ、警告音を発するためのスピーカ装置、状態を表示するための表示装置などである。そして、第一系統処理装置22は、アクチュエータに対して所定の駆動を行うための駆動信号を出力したり、スピーカ装置に対して警告音を発するための駆動信号を出力したり、表示装置に対して状態を表示させる信号を出力したりする。
【0026】
第二系統検出回路23は、第一系統検出回路21が接続されるセンサ電極11に接続可能である。第二系統検出回路23は、第一系統検出回路21とは独立して動作する。第二系統検出回路23は、センサ電極11に接続された状態において、第一信号とは異なるタイミングにてセンサ電極11により検出された第二信号を取得する。
【0027】
例えば、第二系統検出回路23は、第一系統検出回路21とは異なるタイミングにてセンサ電極11に矩形の励起電圧を印加し、励起電圧を印加したときにセンサ電極11に流れる電流を第二信号として取得する。そして、第二系統検出回路23は、第二信号に基づいてセンサ電極11と検出対象3との間の第二静電容量Cx2を検出する。第二静電容量Cx2は、第二系統における静電容量Cxである。
【0028】
第二系統処理装置24は、第二系統検出回路23により検出された第二静電容量Cx2に基づいて対象機器に対する処理を行う。第二系統処理装置24による処理は、タイミングが異なるのみで、実質的に、第一系統処理装置22による処理と同一である。
【0029】
スイッチ25は、複数系統のうちセンサ電極11に接続する系統を順次切り替える。具体的には、スイッチ25は、センサ電極11と第一系統検出回路21とを接続するa側と、センサ電極11と第二系統検出回路23とを接続するb側とを切り替える。つまり、センサ電極11と接続される検出回路は、第一系統検出回路21と第二系統検出回路23の何れか一方となり、両者が同時に接続されることはない。従って、第一系統検出回路21と第二系統検出回路23とは、センサ電極11に接続されるタイミングが異なる。
【0030】
ここで、第一系統検出回路21は、スイッチ25がa側のときにセンサ電極11に接続された状態となり、当該状態においてセンサ電極11により検出された第一信号を取得する。ただし、第一系統検出回路21は、センサ電極11と接続されている間の任意のタイミングにて第一信号を取得することができる。従って、図3において、第一系統検出回路21が第一信号を取得している時間は、スイッチ25がa側に接続されている時間の一部としている。
【0031】
また、第二系統検出回路23は、スイッチ25がb側のときにセンサ電極11に接続された状態となり、当該状態においてセンサ電極11により検出された第二信号を取得する。ただし、第二系統検出回路23は、センサ電極11と接続されている間の任意のタイミングにて第二信号を取得することができる。従って、図3において、第二系統検出回路23が第一信号を取得している時間は、スイッチ25がb側に接続されている時間の一部としている。
【0032】
診断回路26は、第一系統検出回路21が検出した第一静電容量Cx1、および、第二系統検出回路23が検出した第二静電容量Cx2に基づいて、センサ電極11の診断を行う。診断回路26は、第一系統検出回路21の内部診断を行う。また、診断回路26は、第二系統検出回路23の内部診断も行う。
【0033】
ここで、センサ電極11、第一系統検出回路21および第二系統検出回路23が正常である場合には、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2は、同一値となる。一方、第一系統検出回路21が第一信号を取得した時点においてセンサ電極11が正常で、その後に、第二系統検出回路23が第二信号を取得した時点においてセンサ電極11が異常になると、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2とは異なる値となる。つまり、診断回路26は、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2とが異なる場合に、センサ電極11を異常と診断する。
【0034】
例えば、診断回路26は、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2との差が、所定値より大きい場合に、センサ電極11の異常と判断する。ここで、第一静電容量Cx1は第一信号の大きさに対応し、第二静電容量Cx2は第二信号の大きさに対応する。従って、診断回路26は、第一信号と第二信号との差が所定値より大きい場合に、センサ電極11の異常を判断してもよい。
【0035】
ただし、検出対象3である人の近接の前後においても、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2とが異なる値となる。そこで、人の近接による静電容量の変化を予め把握しておくことで、センサ電極11の異常と検出対象3である人の近接とを区別することができる。
【0036】
また、第一系統検出回路21と第二系統検出回路23の一方が正常で、他方が異常である場合にも、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2とは異なる値となる。この場合、時間が経過したとしても、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2とは異なる値のままとなる。従って、診断回路26は、第一静電容量Cx1と第二静電容量Cx2とが、継続して異なる値となることで、第一系統検出回路21と第二系統検出回路23の一方の異常を診断できる。
【0037】
なお、上述したように、診断回路26は、検出対象3である人の近接と、センサ電極11の異常とを区別することができる。ただし、診断回路26は、両者を区別することなく、両者共に異常状態であると診断して、第一系統処理装置22または第二系統処理装置24によって人協働ロボット2を停止させることも可能である。
【0038】
(2-2.検出装置1の動作)
検出装置1の動作について図3図5を参照して説明する。スイッチ25がa側に接続されると、センサ電極11が第一系統検出回路21に接続される。そうすることで、図3に示すように、第一系統検出回路21が、第一静電容量Cx1を検出する(S1a)。スイッチ25がa側に接続されている間、診断回路26は、第一系統検出回路21が今回のS1aにて検出した第一静電容量Cx1を用いて第二診断を行うことができる。さらに、スイッチ25がa側に接続されている間、診断回路26は、前に検出した第二静電容量Cx2を用いた第二診断を行う(S2b)。
【0039】
続いて、スイッチ25がb側に切り替わることで、第二系統検出回路23が、センサ電極11に接続され、第二静電容量Cx2を検出する(S2a)。スイッチ25がb側に接続されている間、診断回路26は、第二系統検出回路23が今回のS2aにて検出した第二静電容量Cx2を用いて第二診断を行うことができる。さらに、スイッチ25がb側に接続されている間、診断回路26は、S1aで検出した第一静電容量Cx1を用いて第一診断を行う(S1b)。
【0040】
図4に示すように、診断回路26における第一診断は、第一系統検出回路21の内部診断を行う(S1)。続いて、診断回路26は、今回検出した第一静電容量Cx1と既に検出していた第二静電容量Cx2とを比較することで、センサ電極11の診断を行う(S2)。そして、第一診断を終了する。ただし、診断回路26は、内部診断と比較診断の順序を逆にすることもできる。
【0041】
図5に示すように、診断回路26における第二診断は、第二系統検出回路23の内部診断を行う(S3)。続いて、診断回路26は、今回検出した第二静電容量Cx2と既に検出していた第一静電容量Cx1とを比較することで、センサ電極11の診断を行う(S4)。そして、第二診断を終了する。ただし、診断回路26は、内部診断と比較診断の順序を逆にすることもできる。
【0042】
ここで、診断回路26は、第一系統検出回路21および第二系統検出回路23とは別構成として説明した。これに限定されず、診断回路26の一部機能は、第一系統検出回路21に組み込まれるようにしてもよく、他の一部機能は、第二系統検出回路23に組み込まれるようにしてもよい。
【0043】
(2-3.効果)
検出装置1は、第一系統検出回路21および第一系統処理装置22により第一系統を構成し、第二系統検出回路23および第二系統処理装置24により第二系統を構成する。そして、センサ電極11が、第一系統と第二系統とにおいて共有されている。センサ電極11を共有とすることにより、励起電圧が相互干渉することや、他のセンサ電極に電荷が移動することを防止することができる。従って、高精度に、センサ電極11と検出対象3との間の静電容量Cxを検出することができる。
【0044】
特に、スイッチ25を用いることにより、センサ電極11と第一系統検出回路21とが接続されている場合に、センサ電極11と第二系統検出回路23とは接続されていない状態とできる。また、その逆も同様である。従って、スイッチ25の動作を上記のように制御することにより、センサ電極11における電荷が、検出しない側の系統に移動することを防止できる。すなわち、第一系統検出回路21がセンサ電極11から第一信号を取得する際に、センサ電極11の電荷が、第二系統検出回路23に移動することを防止できる。また、その逆も同様である。
【0045】
また、センサ電極11を共有しているものの、検出回路21,23および処理装置22,24は、第一系統と第二系統とにおいて独立している。従って、高い安全性を有する。さらに、検出装置1は、診断回路26を備えている。診断回路26は、第一系統検出回路21が検出した第一静電容量Cx1、および、第二系統検出回路23が検出した第二静電容量Cx2に基づいて、センサ電極11の診断を行う。従って、センサ電極11の異常を検出することができ、高い安全性を確保できる。
【0046】
さらに、診断回路26による第一診断の少なくとも一部は、第二系統検出回路23がセンサ電極11に接続されているときに行っている。上述したように、第二系統検出回路23がセンサ電極11に接続されているときには、第一系統検出回路21はセンサ電極11に接続していないため、センサ電極11から第一信号を取得することはできない。そこで、当該時間を有効利用するために、診断回路26は、当該時間に、第一診断を行うこととしている。また、診断回路26による第二診断の少なくとも一部は、第一系統検出回路21がセンサ電極11に接続されているときに行っている。この場合も同様に、時間の有効利用を図ることができる。
【0047】
(3.第二例の静電容量型近接検出装置1a)
(3-1.第二例の検出装置1aの構成)
第二例の検出装置1aの構成について図6を参照して説明する。第二例の検出装置1aは、第一例の検出装置1に対して、スイッチ25のみ相違する。
【0048】
スイッチ25は、複数系統のうちセンサ電極11に接続する系統を順次切り替える。具体的には、スイッチ25は、センサ電極11と第一系統検出回路21との接続のON/OFFを切り替える第一スイッチ25aと、センサ電極11と第二系統検出回路23との接続のON/OFFを切り替える第二スイッチ25bとを備える。
【0049】
第一スイッチ25aがONのときには、第二スイッチ25bはOFFとなる。第二スイッチ25bがONのときには、第一スイッチ25aはOFFとなる。つまり、第一スイッチ25aと第二スイッチ25bが、同時にONとなることはない。従って、第一スイッチ25aがONになるタイミングと、第二スイッチ25bがONになるタイミングとは、異なる。
【0050】
ここで、第一系統検出回路21は、第一スイッチ25aがONのときにセンサ電極11に接続された状態となり、当該状態においてセンサ電極11により検出された第一信号を取得する。また、第二系統検出回路23は、第二スイッチ25bがONのときにセンサ電極11に接続された状態となり、当該状態においてセンサ電極11により検出された第二信号を取得する。
【0051】
(3-2.第二例の検出装置1aの動作)
第二例の検出装置1aの動作について図7を参照して説明する。第一スイッチ25aがONとなり、センサ電極11が第一系統検出回路21に接続される。そうすることで、第一系統検出回路21が、第一静電容量Cx1を検出する(S1a)。この間、第二スイッチ25bがOFFとなり、診断回路26が、診断処理を行う(S2b)。
【0052】
続いて、第一スイッチ25aがOFFになり、且つ、第二スイッチ25bがONとなる。そうすることで、第二系統検出回路23が、センサ電極11に接続され、第二静電容量Cx2を検出する(S2a)。この間、診断回路26は、S1aで検出した第一静電容量Cx1を用いて第一診断を行う(S1b)。
【0053】
続いて、第二系統において、第二スイッチ25bがOFFになることで、第一スイッチ25aおよび第二スイッチ25bがOFFとなる。このとき、診断回路26は、第一系統においては、第一診断を継続する。一方、診断回路26は、第二系統において、第二診断を行う。
【0054】
(4.第三例の静電容量型近接検出装置4)
(4-1.第三例の検出装置4の構成)
第三例の検出装置4の構成について図8を参照して説明する。検出装置4は、センサ本体10、回路ユニット30、および、外部装置40を備える。第三例の検出装置4において、第一例の検出装置1と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
回路ユニット30は、第一系統検出回路21、第一系統処理装置22、第二系統検出回路23、第二系統処理装置24、通信装置31、スイッチ32、診断回路33を備える。第一系統検出回路21、第一系統処理装置22、第二系統検出回路23、第二系統処理装置24は、第一例と同一である。
【0056】
通信装置31は、外部装置40と通信を行う。ここで、外部装置40は、ホストコンピュータ、人協働ロボット2の制御装置、ライトカーテンなどの周辺のセンサ、診断回路33において診断するための基準器などとすることができる。通信装置31が通信可能な外部装置40は、目的に応じて、1または複数を設定することができる。
【0057】
スイッチ32は、第一スイッチ32aと第二スイッチ32bとを備える。第一スイッチ32aは、センサ電極11と第一系統検出回路21とを接続する状態と、第一系統検出回路21と別機器としての通信装置31とを接続する状態とを切り替える。第二スイッチ32bは、センサ電極11と第二系統検出回路23とを接続する状態と、第二系統検出回路23と別機器としての通信装置31とを接続する状態とを切り替える。
【0058】
ここで、第一スイッチ32aがセンサ電極11と第一系統検出回路21とを接続している状態においては、第二スイッチ32bはセンサ電極11と第二系統検出回路23とを接続する状態にはならない。その逆も同様である。
【0059】
つまり、スイッチ32は、センサ電極11と第一系統検出回路21とを接続し、且つ、第二系統検出回路23と別機器としての通信装置31を接続する状態と、センサ電極11と第二系統検出回路23とを接続し、且つ、第一系統検出回路21と別機器としての通信装置31とを接続する状態とを切り替える。
【0060】
診断回路33は、第一例と同様に、第一系統検出回路21が検出した第一静電容量Cx1、および、第二系統検出回路23が検出した第二静電容量Cx2に基づいて、センサ電極11の診断を行う。この診断は、第一スイッチ32aによりセンサ電極11と第一系統検出回路21とが接続されている間、または、第二スイッチ32bによりセンサ電極11と第二系統検出回路23とが接続されている間に行われる。
【0061】
さらに、診断回路33は、第一スイッチ32aによりセンサ電極11と第一系統検出回路21とが接続されている間に、通信装置31から情報を取得し、且つ、通信装置31から取得した情報を用いてセンサ電極11の診断を行う。例えば、診断回路33は、通信装置31から取得した情報として、ホストコンピュータから取得した情報、人協働ロボット2の制御状態、周辺のセンサ情報などを考慮して、上記におけるセンサ電極11の診断が行われる。
【0062】
また、診断回路33は、第二スイッチ32bによりセンサ電極11と第二系統検出回路23とが接続されている間に、通信装置31から情報を取得し、且つ、通信装置31から取得した情報を用いてセンサ電極11の診断を行う。
【0063】
(4-2.検出装置4の動作)
検出装置4の動作について図9を参照して説明する。第一スイッチ32aがa側に接続し、センサ電極11と第一系統検出回路21とを接続させる。そうすることで、第一系統検出回路21が、第一静電容量Cx1を検出する(S11a)。この間、第二スイッチ32bは、b側に接続し、通信装置31と第二系統検出回路23とを接続させる。
【0064】
続いて、第一スイッチ32aがb側に接続し、且つ、第二スイッチ32bがa側に接続する。そうすることで、第二系統検出回路23が、センサ電極11に接続され、第二静電容量Cx2を検出する。このとき、第一系統検出回路21は、通信装置31に接続されることで、通信装置31から情報を取得する(S11b)。その後、診断回路33が、S11aで検出した第一静電容量Cx1、以前に検出した第二静電容量Cx2、S11bで通信装置31から取得した情報を用いて第一診断を行う(S11c)。
【0065】
第二系統においては、第二系統検出回路23が第二静電容量Cx2を検出した後に、第二スイッチ32bがb側に切り替えられる。第二系統検出回路23は、通信装置31に接続されることで、通信装置31から情報を取得する(S12b)。その後、診断回路33が、S11aで検出した第一静電容量Cx1、S12aで検出した第二静電容量Cx2、S12bで通信装置31から取得した情報を用いて第二診断を行う(S12c)。
【0066】
第三例においては、スイッチ32が、センサ電極11と接続する状態と、通信装置31と接続する状態とを切り替えている。従って、第一系統検出回路21は、センサ電極11に接続されていない状態において、通信装置31を介して外部装置40の情報を取得することができると共に、第一診断を行うことができる。
【0067】
そして、第一系統検出回路21が通信装置31に接続されている状態、および、診断回路33が第一診断を行っている状態において、第二系統検出回路23が、センサ電極11に接続され、第二静電容量Cx2を検出している。従って、第二静電容量Cx2の検出が行われている最中に、通信装置31から情報を取得すると共に、第一診断が行われている。その結果、時間の有効利用を図ることができる。
【0068】
(5.第四例の静電容量型近接検出装置5)
(5-1.第四例の検出装置5の構成)
第四例の検出装置5の構成について図10を参照して説明する。検出装置5は、センサ本体10および回路ユニット50を備える。第四例の検出装置5において、第一例と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
回路ユニット50は、第一系統検出回路21、第一系統処理装置22、第二系統検出回路23、第二系統処理装置24、別機器としての基準器51、スイッチ52、診断回路53を備える。第一系統検出回路21、第一系統処理装置22、第二系統検出回路23、第二系統処理装置24は、第一例と同一である。なお、第三例における外部装置40を、本例における基準器51に置換することも可能である。
【0070】
基準器51は、検出対象3の近接に影響を受けない基準状態におけるセンサ電極11の基準信号を出力可能である。基準信号は、第一系統検出回路21および第二系統検出回路23において静電容量Cxを用いた検出対象3の近接を判断する際に用いられる。さらに、基準信号は、診断回路53において第一静電容量Cx1または第二静電容量Cx2と比較することにより、センサ電極11の診断に用いられる。
【0071】
基準信号は、基準状態においてセンサ電極11が出力する信号と同一値としてもよいし、センサ電極11が出力する信号とは異なる値であって、センサ電極11が出力する信号に対して相関を有する値としてもよい。
【0072】
スイッチ52は、第一スイッチ52aと第二スイッチ52bとを備える。第一スイッチ52aは、センサ電極11と第一系統検出回路21とを接続する状態と、第一系統検出回路21と別機器としての基準器51とを接続する状態とを切り替える。第二スイッチ52bは、センサ電極11と第二系統検出回路23とを接続する状態と、第二系統検出回路23と別機器としての基準器51とを接続する状態とを切り替える。
【0073】
ここで、第一スイッチ52aがセンサ電極11と第一系統検出回路21とを接続している状態においては、第二スイッチ52bはセンサ電極11と第二系統検出回路23とを接続する状態にはならない。その逆も同様である。
【0074】
つまり、スイッチ52は、センサ電極11と第一系統検出回路21とを接続し、且つ、第二系統検出回路23と別機器としての基準器51を接続する状態と、センサ電極11と第二系統検出回路23とを接続し、且つ、第一系統検出回路21と別機器としての基準器51とを接続する状態とを切り替える。
【0075】
診断回路53は、第一系統検出回路21が検出した第一静電容量Cx1と、基準器51から取得した基準信号とを比較することにより、センサ電極11の診断を行う。この診断は、センサ電極11と第二系統検出回路23とが接続されている間に行われる。また、診断回路53は、第二系統検出回路23が検出した第二静電容量Cx2と、基準器51から取得した基準信号とを比較することにより、センサ電極11の診断を行う。この診断は、センサ電極11と第一系統検出回路21とが接続されている間に行われる。
【0076】
さらに、診断回路53は、第一例と同様に、第一系統検出回路21が検出した第一静電容量Cx1と第二系統検出回路23が検出した第二静電容量Cx2とを比較することにより、センサ電極11、第一系統検出回路21、第二系統検出回路23の診断を行うこともできる。
【0077】
(5-2.第四例の検出装置5の動作)
第四例の検出装置5の動作について図11を参照して説明する。本例における検出装置5の動作は、第三例の検出装置4の動作と同様である。ただし、第三例における通信装置31から情報を取得することを、第四例においては、基準器51から基準信号を取得することに置換した内容となる。
【0078】
そして、第一診断において、第一静電容量Cx1と基準信号とを比較して、センサ電極11の診断を行う(S11c)。第一診断は、第二系統検出回路23が第二静電容量Cx2を検出しているときに行われる。また、第二診断において、第二静電容量Cx2と基準信号とを比較して、センサ電極11の診断を行う(S12c)。第二診断は、第二系統検出回路23が第二静電容量Cx2を検出しているときに行われる。また、第一診断と第二診断が、同じタイミングにおいて行われるようにしてもよい。
【0079】
(5-3.第四例の変形例)
上記の第四例の検出装置5においては、基準器51は、スイッチ52を介して、第一系統検出回路21および第二系統検出回路23に基準信号を出力可能であるとした。ただし、検出装置5が、スイッチ52を有しない構成であって、基準器51が、スイッチ52を介さずに直接、第一系統検出回路21および第二系統検出回路23に基準信号を出力可能としてもよい。
【0080】
(6.基準器51の適用例)
(6-1.第一例の基準器51)
第四例の検出装置5およびその変形例において、基準器51は、検出対象3の近接に影響を受けない基準状態におけるセンサ電極11の基準信号を記憶しており、基準信号を出力可能である。
【0081】
第一例の基準器51について、図12図17を参照して説明する。基準器51は、固定の静電容量を有するキャパシタである。このキャパシタは、外部環境の影響を受けないように筐体に収容されている。従って、基準器51が出力する基準信号Cthは、環境依存を有していない。つまり、基準信号Cthは、周囲の温度や湿度に依存しない。図12に示すように、環境変化に対して、基準器51の基準信号Cthは、一定値である。
【0082】
一方、センサ電極11と検出対象3との間の静電容量Cxは、環境依存を有している。従って、第一静電容量Cx1および第二静電容量Cx2は、環境依存を有している。図12に示すように、検出対象3が近接していない場合に、センサ電極11の出力信号から得られた静電容量C0は、環境変化に伴って変化する。同様に、検出対象3が近接した場合に、センサ電極11の出力信号から得られた静電容量C1も、環境変化に伴って変化する。
【0083】
例えば、環境Sにおいて、センサ電極11に異常がなく、検出対象3が近接していない場合には、基準信号Cthと検出された静電容量C0との差が、ΔC0となる。環境Sにおいて、センサ電極11に異常がなく、検出対象3が近接した場合には、基準信号Cthと検出された静電容量C1との差が、ΔC1となる。ただし、環境Sが変化すれば、ΔC0、ΔC1は、変化する。
【0084】
そこで、図13に示すように、環境依存がない状態とするために、検出された静電容量を補正する。センサ電極11に異常がなく、検出対象3が近接していない場合には、検出された静電容量は、C0aとなる。センサ電極11に異常がなく、検出対象3が近接した場合には、検出された静電容量は、C1aとなる。
【0085】
検出対象3である人が近接した前後において、補正後の静電容量は、図14に示すようになる。補正後の静電容量は、近接前においては、C0aとなり、近接後においては、C1aとなる。従って、第一系統検出回路21は、第一静電容量Cx1と基準信号Cthとの比較において、環境依存による補正値を考慮して、検出対象3の近接を検出する。また、第二系統検出回路23は、第二静電容量Cx2と基準信号Cthとの比較において、環境依存による補正値を考慮して、検出対象の近接を検出する。これにより、より高精度に判定できる。
【0086】
また、図15に示すように、診断回路53は、補正後の静電容量C0aと基準信号Cthとを比較することにより、センサ電極11の診断を行う。つまり、基準信号Cthからの差がΔCth以内であれば、センサ電極11は正常と判断され、ΔChtを超えれば、センサ電極11は異常と判断される。このように、第一静電容量Cx1と基準信号Cthとの比較、および、第二静電容量Cx2と基準信号Cthとの比較において、環境依存による補正値を考慮してセンサ電極11の診断を行っている。従って、環境に関わりなく、センサ電極11の診断を高精度に行うことができる。
【0087】
ここで、診断回路53における第一診断は、例えば、図16に示すように行われる。まず、第一診断は、第一系統検出回路21の内部診断を行う(S11)。続いて、環境依存による補正値を考慮して、第一静電容量Cx1の補正を行う(S12)。続いて、第一静電容量Cx1の補正値と基準信号Cthとを比較することにより、センサ電極11の診断を行う(S13)。診断回路53における第二診断は、例えば、図17に示すように行われる。まず、第二診断は、第二系統検出回路23の内部診断を行う(S14)。続いて、環境依存による補正値を考慮して、第二静電容量Cx2の補正を行う(S15)。続いて、第二静電容量Cx2の補正値と基準信号Cthとを比較することにより、センサ電極11の診断を行う(S16)。なお、内部診断と比較診断とは、順序を逆にすることもできる。
【0088】
(6-2.第二例の基準器51)
第四例の検出装置5およびその変形例において、基準器51は、検出対象3の近接に影響を受けない基準状態におけるセンサ電極11の基準信号を出力可能である。
【0089】
第二の基準器51について、図18図24を参照して説明する。基準器51は、センサ電極11と同一環境に配置されており、静電容量がセンサ電極11と同一環境依存を有する基準電極である。従って、図18に示すように、基準器51が出力する基準信号Cthは、環境依存を有する。基準信号Cth、検出対象3が近接していない場合に検出された静電容量C0、および、検出対象3が近接した場合に検出された静電容量C1は、相関を有する。例えば、これらは、環境の変化に対して、同一の変化をする。
【0090】
図19および図20に示すように、環境S1、S2において、検出された静電容量は、検出対象3の近接前においては、C0となり、近接後においては、C1となり、基準信号は、Cthとなる。ただし、環境S1におけるC0,C1,Cthと、環境S2におけるC0,C1,Cthとは、異なる値である。しかし、C0とC1の差ΔC0、および、C1とCthとの差ΔC1は、同一である。従って、環境の変化に対して、基準信号Cthも、静電容量C0,C1も変化する。
【0091】
つまり、第一系統検出回路21は、補正をすることなく、第一静電容量Cx1と基準信号Cthとの比較結果に基づいて検出対象3の近接を検出することができる。また、第二系統検出回路23は、補正をすることなく、第二静電容量Cx2と基準信号Cthとの比較結果に基づいて、検出対象3の近接を検出することができる。従って、補正することなく、高精度に検出対象3の近接の検出が可能となる。
【0092】
ここで、基準器51である基準電極は、センサ電極11よりも小さな面積を有するようにしている。センサ電極11は、大きな面積を有するほど、検出精度が向上する。一方、基準器51は、検出精度が要求されるものではない。そこで、基準器51の基準電極を、センサ電極11よりも小さくすることができる。従って、基準器51の配置の自由度が高くなる。
【0093】
また、図21および図22に示すように、診断回路53は、検出された静電容量C0と基準信号Cthとを比較することにより、センサ電極11の診断を行う。つまり、基準信号Cthからの差がΔCth以内であれば、センサ電極11は正常と判断され、ΔChtを超えれば、センサ電極11は異常と判断される。このように、第一静電容量Cx1と基準信号Cthとの比較、および、第二静電容量Cx2と基準信号Cthとの比較において、環境が変化したとしても、補正をすることなく、センサ電極11の診断を行うことができる。このように、基準器51を環境依存を有するようにすることで、環境に関わりなく、センサ電極11の診断を高精度に行うことができる。
【0094】
ここで、診断回路53における第一診断は、例えば、図23に示すように行われる。まず、第一診断は、第一系統検出回路21の内部診断を行う(S21)。続いて、補正をすることなく、第一静電容量Cx1と基準信号Cthとを比較することにより、センサ電極11の診断を行う(S22)。診断回路53における第二診断は、例えば、図24に示すように行われる。まず、第二診断は、第二系統検出回路23の内部診断を行う(S23)。続いて、補正をすることなく、第二静電容量Cx2と基準信号Cthとを比較することにより、センサ電極11の診断を行う(S24)。なお、内部診断と比較診断とは、順序を逆にすることもできる。
【符号の説明】
【0095】
1,1a,4,5:静電容量型近接検出装置、 2:人協働ロボット、 3:検出対象、 10:センサ本体、 11:センサ電極、 12:グランド電極、 20,30,50:回路ユニット、 21:第一系統検出回路、 22:第一系統処理装置、 23:第二系統検出回路、 24:第二系統処理装置、 25,32,52:スイッチ、 25a,32a,52a:第一スイッチ、 25b,32b,52b:第二スイッチ、 26,33,53:診断回路、 31:通信装置、 40:外部装置、 51:基準器、 Cx:静電容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24