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特許7009562(メタ)アクリレート添加剤を調製するための方法、ポリオレフィンの耐たるみ性を改善する方法、及び耐たるみ性ポリオレフィン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート添加剤を調製するための方法、ポリオレフィンの耐たるみ性を改善する方法、及び耐たるみ性ポリオレフィン
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20220118BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20220118BHJP
   C08F 6/24 20060101ALI20220118BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220118BHJP
   C08F 4/34 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L51/06
C08F6/24
C08F265/06
C08F4/34
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020110300
(22)【出願日】2020-06-26
(62)【分割の表示】P 2017525800の分割
【原出願日】2015-11-29
(65)【公開番号】P2020164879
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】62/088,732
(32)【優先日】2014-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エイ・クルース
(72)【発明者】
【氏名】モーリス・シー・ウィルス
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-120715(JP,A)
【文献】特開2002-265504(JP,A)
【文献】特開2001-302966(JP,A)
【文献】特開2000-191708(JP,A)
【文献】特開2004-217782(JP,A)
【文献】特開2004-107375(JP,A)
【文献】特開平09-222608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 4/34
C08L 23/00
C08L 51/06
C08F 2/20
C08F 6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系ポリマーのたるみ耐性を改質する方法であって、
1つ以上のオレフィン系ポリマーに、1つ以上のコア/シェルポリマーを含むコア/シェルポリマー組成物を加えることを含み、
前記オレフィン系ポリマーに加えられる前記コア/シェルポリマーの量は、前記オレフィン系ポリマーと前記コア/シェルポリマーとの合計重量に基づいて、1~5重量%であり、
前記コア/シェルポリマー組成物が、
水、ポリ(N-ビニルピロリドン)を含む1つ以上の安定化剤、及び1つ以上の界面活性剤を組み合わせることによって水相を調製する工程と、
1つ以上のフリーラジカル開始剤、ラジカル重合を受けることが可能な1つ以上のモノマー、1つ以上の架橋モノマー及び/またはグラフト架橋モノマー、ならびにステアリルメタクリレートを組み合わせることによって油相を調製する工程であって、前記フリーラジカル開始剤は、優先的に油相中に分配することが可能である工程と、
前記水相及び油相を組み合わせて混合し、1~10ミクロンサイズの範囲の油滴を有する懸濁液を形成する工程と、
前記懸濁液の温度を上げて、コアポリマーを形成する第1の重合を達成する工程と、
前記第1の重合中の温度を維持しながら、ラジカル重合が可能な1つ以上のモノマーを含む溶液を加えて、第2の重合を達成する工程と、
任意で前記第2の重合の温度を調節する工程と、
流動助剤を加えてコア/シェルポリマー懸濁液を形成する工程と、
前記コア/シェルポリマー懸濁液を噴霧乾燥して、コア/シェルポリマーの自由流動性粉末を形成する工程とを含む方法によって形成される、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のフリーラジカル開始剤がt-ブチルペルオクトエートである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のオレフィン系ポリマーと、
つ以上のコア/シェルポリマーを含むコア/シェルポリマー組成物と、を含む、改善されたたるみ耐性を有するオレフィン系ポリマー組成物であって、
前記オレフィン系ポリマー組成物に含まれる前記コア/シェルポリマーの量は、前記オレフィン系ポリマーと前記コア/シェルポリマーとの合計重量に基づいて、1~5重量%であり、
前記コア/シェルポリマー組成物が、
水、ポリ(N-ビニルピロリドン)を含む1つ以上の安定化剤、及び1つ以上の界面活性剤を組み合わせることによって水相を調製する工程と、
1つ以上のフリーラジカル開始剤、ラジカル重合を受けることが可能な1つ以上のモノマー、1つ以上の架橋モノマー及び/またはグラフト架橋モノマー、ならびにステアリルメタクリレートを組み合わせることによって油相を調製する工程であって、前記フリーラジカル開始剤は、優先的に油相中に分配することが可能である工程と、
前記水相及び油相を組み合わせて混合し、1~10ミクロンサイズの範囲の油滴を有する懸濁液を形成する工程と、
前記懸濁液の温度を上げて、コアポリマーを形成する第1の重合を達成する工程と、
前記第1の重合中の温度を維持しながら、ラジカル重合が可能な1つ以上のモノマーを含む溶液を加えて、第2の重合を達成する工程と、
任意で前記第2の重合の温度を調節する工程と、
流動助剤を加えてコア/シェルポリマー懸濁液を形成する工程と、
前記コア/シェルポリマー懸濁液を噴霧乾燥して、コア/シェルポリマーの自由流動性粉末を形成する工程とを含む方法によって形成される、オレフィン系ポリマー組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のフリーラジカル開始剤がt-ブチルペルオクトエートである、請求項3記載のオレフィン系ポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(メタ)アクリレート添加剤を調製する方法、ポリオレフィンの耐たるみ性を改善する方法、及び耐たるみ性ポリオレフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)は、それぞれの結晶融点を超えた融点で溶融処理される。ポリオレフィンの溶融強度が低すぎる場合、熱成形及びブロー成形などの溶融処理プロセスにおいて、困難が生じる場合がある。低溶融強度は、たるみまたは垂れとして呈される。
【0003】
たるみとは、溶融弾性及び溶融強度の両方に関する代理測定である。良好な耐たるみ性は、プラスチックにおける熱成形性の向上に通じる(J.L.Throne,Technology of Thermoforming,Hanser-Gardner Publications,Inc., Cincinnati OH,1996)。溶融強度を生成するために、いくつかの取組みが何年にもわたって開発されてきた。ポリプロピレンに放射線照射することにより、長鎖分岐を導入し、結果として高溶融強度を得ることが商業化された。この方法は、放射線照射プロセスの徹底した制御を伴い、望ましくないゲルの生成をもたらす可能性がある。有機過酸化物を用いたLLDPEの処理は、高溶融強度を有するポリオレフィンを得るための別の経路であるが、放射線照射の場合のように、そのプロセスは、所望の効果を生成するためには厳密に制御する必要がある化学反応を含む。
【0004】
あるいは、アクリルポリマー及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に基づく市販製品である、三菱レイヨンのA-3000などの添加剤が溶融強度を改善するために使用されてきた。デュポンのBOOSTERの場合のように化学改質したLLDPEは、ポリオレフィンにおける溶融強度を向上させるための添加剤を使用した取組みの別例である。溶融強度を改善するための添加剤として長鎖のアクリルモノマーが使用されてきたが、このような添加剤を得るための合成経路は煩雑である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、(メタ)アクリレート添加剤を調製するための方法、ポリオレフィンの耐たるみ性を改善する方法、及び耐たるみ性ポリオレフィンに関する。
【0006】
一実施形態では、本開示は、(メタ)アクリレートを調製するための方法であって、水、1つ以上の安定化剤、及び1つ以上の界面活性剤を組み合わせることによって水相を調製することと、1つ以上のフリーラジカル開始剤、ラジカル重合を受けることが可能な1つ以上のモノマー、1つ以上の架橋モノマー及び/またはグラフト架橋モノマー、ステアリルメタクリレート及び/またはラウリルメタクリレートを組み合わせることによって油相を調製することであって、フリーラジカル開始剤は、優先的に油相中に分配することが可能である、調製することと、水相及び油相を組み合わせて混合し、1~10ミクロンサイズの範囲の油滴を有する懸濁液を形成することと、懸濁液の温度を上げて、コアポリマーを形成する第1の重合を達成することと、を含む方法を提供する。
【0007】
発明の詳細な説明
本開示は、(メタ)アクリレート添加剤を調製する方法、ポリオレフィンの耐たるみ性を改善する方法、及び耐たるみ性ポリオレフィンを提供する。
【0008】
ポリオレフィンまたはオレフィン系ポリマーは、1つ以上のオレフィンモノマー由来の50重量%超の単位を有するポリマーを意味する。
【0009】
ポリエチレンまたはエチレン系ポリマーは、エチレンモノマー由来の50重量%超の単位を有するポリマーを意味する。
【0010】
(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレート、またはアクリレート及びメタクリレートの組合せを意味する。例えば、用語メチル(メタ)アクリレートは、単独でメチルメタクリレート、単独でメチルアクリレート、またはメチルメタクリレート及びメチルアクリレートの組合せを意味してよい。
【0011】
第1の態様では、本開示は、ポリオレフィン用の(メタ)アクリレート添加剤を調製するための方法であって、水、1つ以上の安定化剤、及び1つ以上の界面活性剤を組み合わせることによって水相を調製することと、1つ以上のフリーラジカル開始剤、ラジカル重合を受けることが可能な1つ以上のモノマー、1つ以上の架橋モノマー及び/またはグラフト架橋モノマー、ならびにステアリルメタクリレート及び/またはラウリルメタクリレートを組み合わせることによって油相を調製することであって、前記フリーラジカル開始剤は、優先的に油相中に分配することが可能である、調製することと、水相及び油相を組み合わせて混合し、1~10ミクロンサイズの範囲の油滴を有する懸濁液を形成することと、懸濁液の温度を上げて、コアポリマーを形成する第1の重合を達成することと、を含む方法を提供する。
【0012】
水相は水、1つ以上の安定化剤、及び1つ以上の界面活性剤を含む。1つ以上の安定化剤は、乳化重合の技術分野で有用であるような薬剤のいずれかでよい。そうした安定化剤の例は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエステル、及びポリ(N-ビニルピロリドン)などの、水溶性ポリマーまたは立体安定化剤を含む。1つ以上の界面活性剤の例は、DISPONIL FES-32などのアニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0013】
油相は、1つ以上のフリーラジカル開始剤、ラジカル重合を受けることが可能な1つ以上のモノマー、1つ以上の架橋モノマー及び/またはグラフト架橋モノマー、ならびにステアリルメタクリレート及び/またはラウリルメタクリレートを含み、前記フリーラジカル開始剤は優先的に油相中に分配することが可能である。「優先的に油相中に分配すること」とは、水溶性を超える油溶性を有することを意味する。優先的に油相中に分配するフリーラジカル開始剤の例は、過酸化ラウロイル及びt-ブチルペルオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾ化合物(官能基を有する化合物R-N=N-R’で、R及びR’はアリールまたはアルキルのいずれでもあり得る)、過酸化物、ペルオキシエステル、及びヒドロペルオキシドを含むが、これらに限定されない。ラジカル重合を受けることが可能な1つ以上のモノマーの例は、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、及びベンジルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、及びアリール(メタ)アクリレートを含むが、これらに限定されない。1つ以上の架橋モノマー及び/またはグラフト架橋モノマーの例は、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート,トリアリルトリメリテート、(ポリ)アルキレングリコール、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、異なる反応性の非共役二重結合を2つ以上有するアリルメタクリレート、ジアリルマレアート、及びアリルアクリルオキシプロピオネートなどのグラフト架橋モノマー、ならびにこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0014】
水相及び油相を組み合わせて混合し、1~10ミクロンサイズの範囲の油滴を有する懸濁液を形成することは、例えば、高速ロータステータを用いるなどのバッチ混合や、高せん断での連続添加混合などを含む、いずれかの許容される手段によって達成されてよい。1~10ミクロンの全範囲が本明細書に含まれ開示される。例えば、油滴サイズは、1、3、5、7、または9ミクロンの下限から、2、4、6、8、または10ミクロンの上限の範囲に及び得る。例えば、油滴サイズは、1~10ミクロン、または選択的に1~5ミクロン、または選択的に5~10ミクロン、または選択的に4~8ミクロン、または選択的に3~7ミクロンの範囲に及び得る。
【0015】
水相及び油相を組み合わせることに続いて、懸濁液の温度を上げ、コアポリマーを形成する第1の重合を達成する。フリーラジカル開示剤は優先的に油滴中に分配するため、油滴において重合が優先的に起こる。特定の実施形態では、懸濁液の温度を65~100℃の温度に上昇させる。65~100℃の全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に含まれ開示される。例えば、上昇させる懸濁液の温度は65、76、85、または95℃の下限から、70、80、90、または100℃の上限の範囲に及んでよい。例えば、懸濁液は65~100℃、または選択的に65~85℃、または選択的に80~100℃、または選択的に75~95℃の温度に上昇させてよい。
【0016】
本開示は、本明細書に開示される任意の実施形態による方法をさらに提供するものであるが、ただしステアリルメタクリレート及び/またはラウリルメタクリレートの総重量の少なくとも90重量%が、第1の重合中に形成されるポリマー中に組み込まれる。少なくとも90重量%の全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に含まれ開示される。例えば、第1の重合中のステアリルメタクリレート及び/またはラウリルメタクリレート量は少なくとも90重量%、または選択的に少なくとも92重量%、または選択的に94重量%、または選択的に少なくとも96重量%であり得る。
【0017】
本開示は、本明細書に開示される任意の実施形態による方法をさらに提供するものであるが、ただし第1の重合中の温度を維持しながら、ラジカル重合が可能な1つ以上のモノマーを含む溶液を加えて第2の重合を達成することと、任意で第2の重合の温度を調節する。この追加ステップに加えられるラジカル重合が可能な1つ以上のモノマーは、油相の形成に加えられるラジカル重合が可能なモノマーと同じまたは異なってよい。温度は、第2の重合のために任意で調節してよい。温度を上方または下方に調節し、第2の重合を達成してよい。特定の実施形態では、懸濁液の温度を40~125℃の温度に調節する。40~125℃の全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に含まれ開示される。例えば温度は40、60、80、100、または120℃の下限から、45、65、85、105、または125℃の上限の温度範囲に及んで調節してよい。例えば、温度は40~125℃、または選択的に40~65℃、または選択的に50~75℃、または選択的に75~125℃、または選択的に85~125℃に調節してよい。
【0018】
ポリオレフィンまたはオレフィン系ポリマーは、1つ以上のオレフィンモノマー由来の50重量%超の単位を有するポリマーを意味する。オレフィン系ポリマーは、全密度範囲のポリエチレン及びポリプロピレンを含むが、これらに限定されない。ポリエチレンは、エチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマーなどのエチレンコポリマー、ならびにエチレン由来(50重量%超)及び少なくとも2つの他のモノマー由来の単位を有するエチレン共重合体を含む。ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、及びプロピレン/エチレンコポリマーなどのプロピレンコポリマー、ならびにプロピレン由来(50重量%超)及び少なくとも2つの他のモノマー由来の単位を有するプロピレン共重体を含む。
【0019】
本開示は、本明細書に開示される任意の実施形態による方法をさらに提供するものであるが、ただし第1の重合中の温度を維持しながら、ラジカル重合が可能な1つ以上のモノマーを含む溶液を加えて第2の重合を達成することと、任意で第2の重合の温度を調節することと、流動助剤を加えてコア/シェルポリマー懸濁液を形成することをさらに含むことと、コア/シェルポリマー懸濁液を噴霧乾燥してコア/シェルポリマーの自由流動性粉末を形成する。いずれかの適切な流動助剤を使用してよい。流動助剤は、粉末形状(1マイクロメータ~1mmの平均粒径)の硬質物質である。流動助剤の物質は、硬質ポリマー(80℃以上または95℃以上のガラス転移温度)または(例えば、シリカなどの)ミネラルでよい。
【0020】
本開示はさらに、本明細書に開示されるいずれかの実施形態に従ってコアポリマーを1~5重量%、及び/または本明細書に開示されるいずれかの実施形態に従ってコア/シェルポリマーを、1つ以上のポリオレフィンに加えることを含む、オレフィン系ポリマーの耐たるみ性を改質する方法を提供する。1~5重量%の全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に開示され含まれる。例えば、オレフィン系ポリマーに加えるコアポリマー及び/またはコア/シェルポリマー量は、オレフィン系ポリマーならびにコアポリマー及び/またはコア/シェルポリマーを組み合わせた重量に基づき、1、2、3、または4重量%の下限から、2、3、4、または5重量%の上限の範囲に及んでよい。例えば、コアポリマー及び/またはコア/シェルポリマー量は、1~5重量%、または選択的に1~2.5重量%、または選択的に2.5~5重量%、または選択的に2.2~3.8重量%の範囲に及んでよい。
【0021】
本開示はさらに、1つ以上のオレフィン系ポリマーを含む改善された耐たるみ性を有するポリオレフィン、及び本明細書に開示されるいずれかの実施形態に従って1つ以上のコアポリマー、及び/または本明細書に開示されるいずれかの実施形態に従って1つ以上のコア/シェルポリマーを提供する。特定の実施形態では、改善された耐たるみ性を有するポリオレフィンは、本明細書に開示されるいずれかの実施形態に従って1つ以上のコアポリマー、及び/または本明細書に開示されるいずれかの実施形態、請求項8に従って1つ以上のコア/シェルポリマーがない状態の1つ以上のオレフィン系ポリマーよりも優れた耐たるみ性を有する。
【実施例
【0022】
以下の実施例は本発明を例示するものであるが、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0023】
本発明のマイクロビーズ例1の調製
55,000ダルトンの数平均分子量を有するポリ(N-ビニルピロリドン)(安定化剤)(Sigma-Aldrich Corp.(米国ミズーリ州セントルイス)から市販で得られたもの)10部を脱イオン水468.31部に溶解することにより、水相を調製した。4ヒドロキシTEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)(水相のフリーラジカル阻害剤)の5%水溶液0.5部、DREWPLUS 4281シリコーン消泡剤(Ashland,Inc.(米国ケンタッキー州コビントン)から市販されている)0.025部、及びDISPONIL FES-32(BASF(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)から市販されている脂肪エーテル硫酸塩アニオン性界面活性剤)の30%溶液3.33部も水相に加えた。油相を、メタクリル酸(MAA)3.75部、ステアリルメタクリレート(SMA)371.06部、アリルメタクリレート(ALMA)0.188部、及びAldrich-Sigma.から市販されているLuperox LP(フリーラジカル開始剤である過酸化ラウリル)10.31部を組み合わせることによって調製した。水相及び油相の両方は、個別に均一溶液を形成する。水相及び油相を組合せ、高速ロータステータ混合機(Cyclone I.Q SENTRYマイクロプロセッサ)において、15,000RPMで6分間乳化した。MALVERN光散乱粒子サイズ計器からの測定で油相の平均液滴サイズは約2ミクロンであった。次に、混合物を熱電対、加熱マントル、冷却管、及び機械的攪拌器を備えた2リットルの4首丸底フラスコに加えた。反応混合物を1時間85℃に加熱し、重合を達成した。NMRによる測定で、SMAモノマーの変換は99%であった。次に、メタクリル酸1.25部、メチルメタクリレート(MMA)122.5部、及びブチルアクリレート(BA)1.25部を含む溶液を、85℃で15分にわたり滴下で反応混合物に加えた。追加で45分後に、反応を60℃まで冷却した。以下の試薬、硫酸第一鉄0.022部、t-アミルヒドロペルオキシド0.29部、及びヒドロキシルメタンスルフェン酸0.32部、ナトリウム塩を順に加えた。残差モノマーを、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(MMA=94ppm、BA<10ppm)により測定した。25℃で、40%MMA系(75℃超のガラス転移温度)アクリルラテックス250部を、次の噴霧乾燥によるマイクロビーズの分離のために流動助剤として加えた。噴霧乾燥した後、自由流動性粉末が得られた。MMA及びMAAは、The Dow Chemical Companyから市販されている。
【0024】
本発明のマイクロビーズ例2を、ALMAをSMAと加えなかったことを除いて、上記に記載されるように調製した。
【0025】
本発明のマイクロビーズ例3を、ラウリルメタクリレート(LMA)をSMAの代わりに使用したことを除いて、上記に記載されるように調製した。
【0026】
本発明のマイクロビーズ例1及び2を、The Dow Chemical Companyから市販されている線状低密度ポリエチレン(LLDPE)であるELITE 5400Gに、表1に示すように様々な濃度で加えた。得られた改質したLLDPEに、たるみ試験を施し、結果を表1に示した。表1はさらに、いかなる修飾剤もない場合(比較例1)、及びLMA-1を加えた(0.05重量%ALMAを有する)噴霧乾燥したラウリルメタクリレートエマルションポリマー(比較例2~4)のLLDPE 5400Gのたるみ試験結果を示す。LMA-1を、以下の手順に従って生成した。
【0027】
LMAを有する従来のエマルションポリマーをコア段階として、開始剤として過硫酸ナトリウム、及びアニオン性界面活性剤としてDISPONIL FES-32を用いてスチレン及びMMAシェルを調製した。DISPONIL FES-32は脂肪族アルコールポリグリコールエーテルスルフェート、Na塩であり、BASF(テキサス州フリーポート)から市販されている。LMA対シェルの比は典型的に、モノマー重量で70//30である。最終ラテックス固体は典型的に、約200nmの平均粒子サイズを有し、約48%である。LMA段階は、約750,000~1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する分岐状だが、未架橋状態のポリマー構造が得られる約0.05%ALMAを含む。ラテックスは、噴霧乾燥により粉末に分離される。
【0028】
実施例を生成するために使用されたLMAは、ROCRYL 320であり、The Dow Chemical Companyから市販されている。実施例を生成するために使用されたSMAは、Sigma-Aldrich Corporation(米国ミズーリ州セントルイス)から市販されている。実施例を生成するために使用されたALMAは、Sigma-Aldrich Corp.から市販されている。
【0029】
表1は、下記の表で示すように、改質剤を有する及び有さないELITE 5400Gのたるみ結果を提供する。
【0030】
【表1】
【0031】
追加の本発明のマイクロビーズ例を、ラウリルペルオキシドの代わりにtーブチルペルオキシド(tBPO)を開始剤として使用したことを除いて、上記に記載された手順に従って調製した。tBPO開始剤(TRIGONOX 21S)は、AkzoNobel(オランダ、アムステルダム)から得た。特に、本発明のマイクロビーズ例4はALMAなしでSMAを用いて作られ、本発明のマイクロビーズ例5はSMA、0.033重量%ALMAを用いて作られ、本発明のマイクロビーズ例6はSMA、0.067重量%ALMAを用いて作られ、及び本発明のマイクロビーズ例7はSMA、0.1重量%ALMAを用いて作られた。本発明のマイクロビーズ例4~7を、The Dow Chemical Companyから市販されている高密度ポリエチレン(HDPE)であるCONTINUUM DGDA 2490NTにそれぞれ5重量%及び10重量%で加えた。次に、改質した高密度ポリエチレンに、改質したたるみ試験を施し、結果を表2に示した。表2はさらに、Bulk SMA/tBPOを用いて改質した高密度ポリエチレンに対するたるみ試験を提供する。Bulk SMA/tBPOを、SMA/tBPOの溶液を85℃で純水中に送給することによって調製した。重合塊となったものを分離させるためには、フラスコを壊して真空オーブン中で乾燥させなければならない。
【0032】
【表2】
【0033】
本発明のマイクロビーズ例4は、ELITE 5400Gにおける改質剤としても試験され、改質したLLDPEのたるみを試験した。たるみ試験の結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
試験方法
試験方法は以下のものを含む。
【0036】
たるみ試験
鋼棒からぶら下がっているバタフライクリップで、試料の上部0.5インチを留めることによって、140℃の温度に設定したBlue M対流式オーブン中に、1mm(0.04インチ)×0.5インチ×5インチの大きさの(LLDPEの)試験片をつるした。試験片の底が定規の0インチの印に合うように(下向きがプラス方向で)、インチの目盛が付いた定規を試験片に近づけてセットした。オーブン扉ののぞき窓から観察することにより、試験片の伸び(たるみ)を計測するためにストップウォッチを使用した。記録した
データは、伸びに対する時間であった。HDPEの場合では、14グラムの重量を試験片の底に留め、オーブンの設定温度は160℃であった。ぶら下げている重量は、単純に14グラムの重量があるバタフライクリップであり、試験片の下部0.5インチに取り付けた。
【0037】
耐たるみ性試験のために、(改質剤を有する及び有さない)ポリマーを粉砕し、成形し、0.5×5×0.04インチの試験片に切り分けた。耐たるみ性試験片に切り分けるシートの調製の粉砕及び形成条件は以下の通りである。ポリエチレンペレットを改質剤(総量150グラム)とブレンドし、電動2ロール粉砕器(COLLIN Mill Type # WW 150p)で溶融処理した。26RPMの速度で前ロール粉砕器、及び21RPMの速度で後ロール粉砕器を備える粉砕器の温度を150℃に設定した。ポリマーブレンドを、合計5分間溶融処理した。次いで、試料を1mm(0.04インチ)×8.5インチ×10インチの型に置き、150℃で3分間、15トンでRELIABLEプレス機でプレスし、次に2分間、45トンでプレスした。追加で3~4分間、45トン下で冷却を行った。試料を、1mm(0.04インチ)×0.5インチ×5インチの大きさの試験片に切り分けた。
【0038】
本発明は、その精神及び本質的な属性から逸脱することなく他の形態で実施されてもよく、したがって発明の範囲を示すものとして、前述の明細書よりもむしろ添付された特許請求の範囲を参照すべきである。