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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】張力調整装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/20 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B66B23/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020120802
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 晃正
(72)【発明者】
【氏名】首藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】木村 修一
(72)【発明者】
【氏名】川西 洋司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直也
(72)【発明者】
【氏名】宮川 祥一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲治
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001490(JP,A)
【文献】実公昭48-020236(JP,Y1)
【文献】実開昭63-180688(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客を搬送する乗客コンベアに設けた無端状の移動手すりに配置され、前記移動手すりの張力を調整する張力調整装置であって、
躯体に固定した基板と、
前記移動手すりに当接するローラと、
前記ローラを水平方向に突設して支持すると共に前記基板に対して上下方向に移動可能なローラ支持部材と、
前記ローラ支持部材を下方に向けて所定の付勢力で付勢する付勢部材と、
前記基板に設けた被係止部と前記ローラ支持部材に設けた係止部とを有し、前記係止部が前記被係止部に係止することで前記ローラ支持部材の移動を制限するロック機構と、を備え、
前記ローラ支持部材は、前記係止部と前記ローラとの間に前記係止部が前記基板側に向けて揺動可能な揺動支点を有し、前記移動手すりが駆動を停止しているときには前記ローラ支持部材は上下方向に移動自在であり、移動手すりの運転中には前記ローラ支持部材が前記ローラから前記付勢部材の付勢力を超える上向き力を受けて、前記揺動支点回りの回転モーメントが生じたときに前記ローラ支持部材が前記揺動支点に対して揺動して前記係止部が前記被係止部に係止する張力調整装置。
【請求項2】
前記付勢部材の付勢力の作用点は、前記揺動支点と、前記ローラが前記移動手すりから受ける反力の作用点との間に位置する請求項1に記載の張力調整装置。
【請求項3】
前記被係止部は、上下方向に並んで設けた複数の凹部であり、前記係止部は、前記凹部に入り込む爪部である請求項1又は2に記載の張力調整装置。
【請求項4】
前記揺動支点は、前記基板と前記ローラ支持部材との間に設けたスペーサである請求項1~3のいずれか一項に記載の張力調整装置。
【請求項5】
前記基板は、前記ローラ支持部材を貫通する案内軸を有し、前記案内軸は前記スペーサを貫通して設けてある請求項4に記載の張力調整装置。
【請求項6】
前記基板には、前記揺動支点の上方に前記ローラ支持部材を水平方向に押圧するロック解除用付勢部材が設けられており、前記ロック解除用付勢部材は前記ロック機構をその係止位置から解除位置に付勢する請求項1~5のいずれか一項に記載の張力調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動手すりの張力を調整する張力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エスカレータやオートロード等のような乗客コンベアにおいて、移動手すりの張力を調整する張力調整装置が公知である。
かかる張力調整装置では、移動手すりに常時押圧力を付与して張力を付与し、所定の張力範囲を超えると報知するものがある。そして、所定の張力範囲を超えた場合には、張力調整装置を設定し直すようなメンテナンスをしている。
一方、乗客が手を乗せる際に加わる荷重やいたずら等で、移動手すりに走行方向に反した逆向きの力が作用すると、急激な衝撃力(反力)となって張力調整装置に損傷をあたえるおそれがあった。張力調整装置が損傷すると、メンテナンスが必要になる。
また、移動手すりに付与する押圧力が小さすぎると、移動手すりにたるみが生じて、屈曲が生じたり、動手すりを案内する案内レールと擦れて、激しく摩耗するという不都合がある。
したがって、張力調整装置の押圧力の設定のし直しや張力調整装置の損傷によるメンテナンスには手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-8388号公報
【文献】実開昭63-180688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような事情から、最適な押圧力を長期間維持し続けることができ且つ駆動中に急激な衝撃力が作用したときには損傷を防止できる移動手すりの張力調整装置が望まれている。
【0005】
そこで、最適な押圧力を長期間維持し続けることができ且つ駆動中に急激な衝撃力が作用したときには損傷を防止できる移動手すりの張力調整装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る移動手すりの張力調整装置は、乗客を搬送する乗客コンベアに設けた無端状の移動手すりに配置され、前記移動手すりの張力を調整する張力調整装置であって、躯体に固定した基板と、前記移動手すりに当接するローラと、前記ローラを水平方向に突設して支持すると共に前記基板に対して上下方向に移動可能なローラ支持部材と、前記ローラ支持部材を下方に向けて所定の付勢力で付勢する付勢部材と、前記基板に設けた被係止部と前記ローラ支持部材に設けた係止部とを有し、前記係止部が前記被係止部に係止することで前記ローラ支持部材の移動を制限するロック機構と、を備え、前記ローラ支持部材は、前記係止部と前記ローラとの間に前記係止部が前記基板側に向けて揺動可能な揺動支点を有し、前記移動手すりが駆動を停止しているときには前記ローラ支持部材は上下方向に移動自在であり、移動手すりの運転中には前記ローラ支持部材が前記ローラから前記付勢部材の付勢力を超える上向き力を受けて、前記揺動支点回りの回転モーメントが生じたときに前記ローラ支持部材が前記揺動支点に対して揺動して前記係止部が前記被係止部に係止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態にかかる乗客コンベアにおいて、移動手すりの駆動装置全体を概略的に示す縦断面である。
図2図1に示す張力調整装置の正面図である。
図3図2に示す張力調整装置を斜め下から見た斜視図である。
図4図2に示す張力調整装置のロック機構及びその周囲部を拡大して示す斜視図である。
図5図2に示すA-A断面図である。
図6】張力調整装置の作用を説明する断面図であり、(a)はロック機構がロックするときの図であり、(b)はロック機構がロックを解除するときの図である。
図7】第2実施形態にかかる張力調整装置であって、ロック機構及びその周囲を示す断面図である。
図8】被係止部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る張力調整装置及び乗客コンベアについて説明するが、まず、図1図6を参照して、第1実施形態にかかる張力調整装置7を備える乗客コンベアについて説明する。
乗客コンベアは、エスカレータであり、例えば、建物の上階と下階との間に傾斜して設置されている。
図1に示すように、移動手すり駆動装置1では、無端状の移動手すり3が乗客コンベアのステップ(図示せず)の移動と同期して循環駆動されている。
【0009】
移動手すり駆動装置1において、移動手すり3は、駆動装置5aに巻き掛けられ、駆動プーリ5bと押し付けローラ5cにより挟まれている。駆動プーリ5bを所定の方向に回転させることで、駆動プーリ5bと移動手すり3の間の摩擦力で移動手すり3は走行する。
移動手すり3は、横断面がC字形状となっており、ゴム製の本体と、本体に一体に設けられた帆布を備えており、本体には、鋼材製の芯線が埋め込まれている。乗客が移動手すり3を持つことができるようにC字形状の開口部が下を向いて移動手すり3が走行する部分を往路側と称している。また、移動手すり3が反転し、開口部が上を向いて移動手すり3が走行する部分を帰路側と称している。
移動手すり3は案内レール(図示せず)に沿って駆動される。図1では、X部から図の反時計回りにY部までの往路側に、案内レールが設置されている。
駆動装置5aの前後(移動手すり3の走行方向の前後、以下同じ)には、駆動下部案内ローラ5dと、駆動上部案内ローラ5eが設置されており、移動手すり3が駆動装置5aに入る際に、急角度で屈曲することなくスムーズに変形するようになっている。移動手すり3の帰路側の下部には、たるみ取り部5fが設けられている。たるみ取り部5fには手すり3の張力を調整する張力調整装置7が設けられ、移動手すり3に、図1の下方向に押圧力を付加することで、移動手すり3に適切な張力を与え、たるみを吸収する。
たるみ取り部5fの前後には、たるみ取り下部案内ローラ5gと、たるみ取り上部案内ローラ5hが設置されており、移動手すり3がたるみ取り部5fに入る際に、スムーズに変形するようになっている。
尚、移動手すり3の帰路側で、下側乗降デッキ5jと上側乗降デッキ5kとの間はカバー6で覆ってある。
【0010】
次に、第1実施形態にかかる張力調整装置7について説明する。
図2及び図3に示すように、張力調整装置7は、基板9と、移動手すり3に当接するローラ13、13と、基板9に対して上下動可能であり各ローラ13を支持するローラ支持部材15と、基板9に対してローラ支持部材15を所定の押圧力で押圧する付勢部材19、19と、ローラ支持部材15の移動を制限するロック機構17、17とを備えている。
【0011】
基板9は、トラス部材(躯体:図示せず)に固定ボルト11、11で固定してある。
図5に示すように、この基板9には、ローラ支持部材15を貫通する案内軸9aが基板9の表面から水平方向に突設して設けられている。本実施形態では、案内軸9aは、移動手すり3の移動方向(図1の左右方向)に間隔を空けて合計2つ設けてある。各案内軸9aには、ローラ支持部材15から突設した部分にナット12を装着して、ローラ支持部材15を基板9とナット12で挟んである。
また、図2及び図3に示すように、基板9には、付勢部材19の一端部(上端部)を支持する付勢部材一端支持部9b、9bと、ローラ支持部材15の移動を案内する案内部9c、9cとが一体に形成されている。付勢部材一端支持部9b、9bと案内部9c、9cとは、ローラ13、13の突設方向(水平方向)突設されており、付勢部材一端支持部9b、9bは基板9の上端側で、移動手すり3の移動方向(図2の左右方向)に間隔を空けて合計2つ設けてある。案内部9c、9cは、基板9において、移動手すり3の移動方向(図2の左右方向)の各左右端側に設けてある。
【0012】
ローラ13、13は、移動手すり3の移動方向(図2の左右方向)に並んで設けてあり、各ローラ13は、同じ構成であり、図5に示すように、それぞれ支持軸13aをローラ支持部材15から水平方向に突設してローラ支持部材15に固定されている。
各ローラ13の回転軸13bにおいて、その水平方向の中央部13cは、移動手すり3から受ける力の作用点となっている。
【0013】
図2及び図3に示すように、ローラ支持部材15には、基板9の各案内軸9aを挿通すると共に各案内軸9aが相対的に上下方向に移動自在な案内軸用長孔15b、15bと、固定ボルト11、11との干渉を防止する固定ボルト用長孔15c、15cとが形成されている。
また、ローラ支持部材15には、上述した各付勢部材19の他端(下端)を支持する付勢部材他端支持部15d、15dが設けられている。
ローラ支持部材15には、基板9の各案内部9c、9cに対向する被案内部15f、15fが形成されている。各被案内部15fと案内部9cとの間には、滑り板21が介在されている。
【0014】
図5に示すように、ローラ支持部材15の裏面において、基板9とローラ支持部材15との間には、スペーサ22が設けてあり、基板9とローラ支持部材15との間に隙間hを形成している。スペーサ22には上述した各案内軸9aが貫通してあり、スペーサ22がローラ支持部材15の揺動支点Pとなっている。スペーサ22は、2つの皿ばね22a、22bをそれぞれ、半径の小さい側の端を突き合わせて構成されている。
スペーサ22は案内軸9aに対応して2箇所(図1参照)設けてあることで、ローラ支持部材15は隙間hに対してスペーサ22を揺動支点Pとしており、揺動支点Pの上と下とでローラ支持部材15が基板9に接近し又は離れる方向(矢印M参照)に揺動自在になっている。
【0015】
図2及び図3に示すように、各付勢部材19は、コイルバネであり、上端19aを基板9の付勢部材一端支持部9bに当接してあり、下端19bをローラ支持部材15の付勢部材他端支持部15dに当接してあり、基板9に対してローラ支持部材15を所定の押圧力で常時下方に向けて付勢している。
各付勢部材19は、ローラ13、13への荷重が、案内軸用長孔15bのストローク間でほぼ一定となるように、できるだけ小さいバネ定数のものを圧縮した状態で使用している。
尚、各付勢部材19の外周面は、カバー23で覆ってある。
【0016】
図4及び図5に示すように、各ロック機構17、17は、基板9に設けた被係止部17aと、ローラ支持部材15に設けた係止部17bとで構成してあり、係止部17bが被係止部17aに係止してローラ支持部材15の移動を制限するものである。
被係止部17aは、周面にネジ溝24を形成した丸棒であり、基板9に溶接により固定されている。
係止部17bは、縦断面が略コ字形状の本体26を有し、本体26の下端がローラ支持部材15にネジ25で固定してあり、本体26の上端には、被係止部17a側に突設した爪27が形成されている。係止部17bでは、爪27が被係止部17aのネジ溝24に係脱するようになっている。
【0017】
本実施形態にかかる張力調整装置7の作用について説明する。
まず、図5を参照して、各部の力の作用について説明する。
付勢部材19は、基板9に対して下方の付勢力F1をローラ支持部材15に作用する。F1は,水平方向では揺動支点Pから距離L1だけ離れているが、上下方向では揺動支点Pと略同じ位置にある付勢部材他端支持部15dからローラ支持部材15に作用するので、揺動支点Pに対する回転モーメントは小さく、略下方向きの力として作用する。
一方、ローラ13が移動手すり3から受ける反力F2は、水平方向では揺動支点Pから距離L2だけ離れており、上下方向では揺動支点Pから距離Hだけ離れた位置で作用する上向きの力であり、揺動支点Pに対して回転モーメントとして作用する。
また、水平方向において、付勢部材19の付勢力F1は、揺動支点Pとローラ13の反力F2との間で作用している。
【0018】
(移動手すり3を下降運転する場合)
図1に示すように、乗客コンベアの移動手すり3を下降運転する場合、乗客コンベアの移動手すり3には、張力調整装置7により、常時荷重を加えて、移動手すり3に所定の範囲の張力に保持している。
具体的には、図2に示すように、付勢部材19により、付勢力F1で基板9に対してローラ支持部材15を押圧することで、ローラ13が移動手すり3に張力を付与している。ローラ13による押圧力は、使用する付勢部材19としてのばねの自由長を十分長いものにすれば移動手すり3の伸縮(経時劣化等による伸縮)に対しほぼ一定の荷重を加えることができる。
尚、ロック機構17では、係止部17bは被係止部17aから離れた位置にあり、解除状態になっている。したがって、ローラ支持部材15は上下動自在な状態である。
【0019】
移動手すり3に通常の伸縮がある場合には、ローラ13と共にローラ支持部材15が基板9に対して上方又は下方に移動して、移動手すり3に一定の張力を付与する。
一方、移動手すりの運転中において、乗客等により移動手すり3を介して張力調整装置7に過負荷が作用した場合、例えば、乗客コンベアに乗客が乗るときや降りるときに、過剰に移動手すり3にしがみついたり、移動手すり3を引張るなどのいたずら等により、移動手すり3に急激な過負荷が作用することがある。
この場合、図6(a)に参照されるように、ローラ13は、移動手すり3から、付勢部材19が付与する付勢力F1を超える反力F2を受け、ローラ支持部材15に対して反力F2を作用する。
【0020】
図6(a)に示すように、反力F2は揺動支点Pに対して回転モーメントとして作用するので(図5参照)、ローラ支持部材15は、下端側が基板9から離れ且つ上端側を基板9に押し付けるように、揺動する。
これにより、ロック機構17では、係止部17bを被係止部17aに向けて押し込む力F3が作用し、ローラ支持部材15の上端に設けた係止部17bの爪27が、基板9の上端に固定した被係止部17aのネジ溝24に嵌り込み、ローラ支持部材15の上下移動がロックされる。
【0021】
その後、図6(b)に示すように、移動手すり3に作用した急激な過負荷がなくなり、又は移動手すり3の駆動が停止されると、ローラ13からの反力F2が解除され、ローラ支持部材15は、付勢部材19の付勢力F1を受けると、付勢力F1は揺動支点Pから水平方向の距離L1(図5参照)だけ離れているので、付勢力F1のわずかな回転モーメントが作用し、係止部17bが被係止部17aから離れる力F4が作用して、ロック機構17が解除され、移動手すり3に付勢部材19により付勢力を付与する初期状態に復帰する。
【0022】
(移動手すり3を上昇運転する場合)
図1において、移動手すりを矢印と反対に運転する場合、往路側で移動手すり3に急激な過負荷が作用した場合、張力調整装置7では移動手すり3には、緩む方向の力が作用するから、図6(a)に示す運転中では、ローラ13に作用する反力は負の反力(F2と反対方向又は0の力)となり、ロック機構17は作用しない。しかし、この場合には、駆動上部案内ローラ5eで著しいたるみ(図1に示す破線参照)が生じることがないので、問題ない。
【0023】
第1実施形態の効果について説明する。
図5に示すように、第1実施形態によれば、ローラ支持部材15は、基板9に対して上下動自在に設けてあり、付勢部材19がローラ支持部材15を下方に向けて所定の付勢力F1で付勢しているので、ローラ支持部材15に支持されているローラ13が移動手すりに、所定の張力を付与することができる。
図6(a)に示すように、ローラ13が移動手すり3から付勢部材19の付勢力F1を超える反力F2を受けると、ローラ支持部材15は、係止部17bとローラ13との間に設けた揺動支点Pに対して揺動し、係止部17bが基板9に設けた被係止部17aに係止して、ロック機構17が作動することで、ローラ支持部材15が上方に移動するのが阻止される。これにより、ローラ支持部材15及びローラ13が必要以上に移動することで生じる、張力調整装置7の損傷や、駆動上部案内ローラ5e付近で生じるたるみ(図1に示す破線参照)による移動手すり3の損傷を防止できる。
このように、本実施形態に係る張力調整装置によれば、最適な押圧力を長期間維持し続けることができ且つ駆動中に急激な衝撃力が作用したときに損傷を防止できる。
【0024】
図5に示すように、付勢部材19の付勢力F1の作用点は、揺動支点Pと、ローラ13が移動手すり3から受ける反力F2の作用点との間に位置しているので、反力F2を揺動支点Pに対する回転モーメントとしてローラ支持部材15を揺動し、係止部17bを被係止部17aに係止してロック機構17をロックし、反力F2が解除された場合には、付勢力F1が揺動支点Pに作用する回転モーメントで係止部17bを被係止部17aから外して、自動的にロック機構17のロックを解除できる。
被係止部17aは、上下方向に並んで設けた複数の凹部をネジ溝24で形成し、係止部17bは、ネジ溝24に入り込む爪27としているので、ロック機構17に汎用品を使用でき、構成を簡易にできる。
揺動支点Pは、スペーサ22で構成しているので、構成が簡易であると共に、更に実施形態では、スペーサ22は2枚の皿ばねを重ねて使用しているので、構成及び製造が容易である。
基板9は、ローラ支持部材15を貫通する案内部9cを有し、案内部9cはスペーサ22を貫通して設けているので、ローラ支持部材15の揺動を簡易に案内できる。
【0025】
以下に本発明の他の実施形態を説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した第1実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では第1実施形態と主に異なる点を説明する。
図7を参照して第2実施形態について説明する。
この第2実施形態では、張力調整装置7において、基板9には、揺動支点Pの上方に揺動したローラ支持部材15を押圧する付勢部材31が設けてあり、ロック機構17をその係止位置(ロック位置)から解除する位置に付勢する。
【0026】
この第2実施形態によれば、ロック機構17において、図6(a)に示すように、ローラ13に移動手すり3からの反力F2が作用して、ローラ支持部材15の揺動により係止部17bが被係止部17aに係止した後、図6(b)に示すように、反力F2が解除されると、図7に示すように、付勢部材31により強制的にローラ支持部材15が揺動前の初期位置に戻るので、ロック機構17を確実に解除することができる。
【0027】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、ロック機構17の被係止部17aは、ネジ溝24に限らず、図8に示すように、矩形の凹凸34としても良い。
また、被係止部17aは丸棒に限らず、四角柱で係止部17bに対向する面にのみ凹凸を形成するものであっても良い。
【符号の説明】
【0028】
1…乗客コンベア、3…移動手すり、7…張力調整装置、9…基板、13…ローラ、15…ローラ支持部材、17…ロック機構、17a…被係止部、17b…係止部、19…付勢部材、22…スペーサ、P…揺動支点、F1…付勢部材の付勢力、F2…移動手すりの反力。
【要約】
【課題】最適な押圧力を長期間維持し続けることができ且つ駆動中に急激な衝撃力が作用したときには損傷を防止できる移動手すりの張力調整装置を提供する。
【解決手段】張力調整装置は、躯体に固定した基板と、移動手すりに当接するローラと、ローラを水平方向に突設して支持すると共に基板に対して上下方向に移動自在なローラ支持部材と、ローラ支持部材を下方に向けて所定の付勢力で付勢する付勢部材と、基板に設けた被係止部とローラ支持部材に設けた係止部とを有するロック機構と、を備えている。ローラ支持部材は、係止部とローラとの間に係止部が基板側に向けて揺動可能な揺動支点を有し、ローラ支持部材がローラから付勢部材の付勢力を超える上方の力を受けたときにローラ支持部材が揺動支点に対して揺動して係止部が被係止部に係止して、ローラ支持部材の移動をロックする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8