(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】樹脂被覆金属部材の切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/16 20060101AFI20220118BHJP
B23D 15/08 20060101ALI20220118BHJP
B21F 11/00 20060101ALI20220118BHJP
B26D 1/04 20060101ALI20220118BHJP
B26D 1/30 20060101ALI20220118BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B26D3/16 Z
B23D15/08 D
B21F11/00 F
B26D1/04 Z
B26D1/30 501B
A61M25/00 500
(21)【出願番号】P 2020149530
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305022598
【氏名又は名称】株式会社日立メタルプレシジョン
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀一
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107096(JP,A)
【文献】特許第6269405(JP,B2)
【文献】特公平8-331(JP,B2)
【文献】実開昭56-83318(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/16
B23D 15/08
B21F 11/00
B26D 1/04
B26D 1/30
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部が樹脂部で被覆された樹脂被覆金属部材をワークとする切断装置であって、
5度以上40度以下の刃先角を備えた直線状の第1刃先と、片刃で60度以上90度未満の刃先角を備えた直線状の第2刃先と、を有する可動刃物と、
片刃で60度以上90度以下の刃先角を備えた直線状の固定刃先を有する固定刃物と、
前記可動刃物に設けられた係止部に当接可能な支軸部と、
前記可動刃物の移動を案内する案内部と、
前記ワークが設置されるワーク受け部と、を備え、
前記第1刃先は前記固定刃先から離間する向きに5度以上30度以下の傾き角を有するように構成され、
前記第2刃先と前記固定刃先とは互いが対向するように構成され、
前記ワークの切断は、前記可動刃物が前記ワークに向かって移動して前記係止部が前記支軸部に当接するまでの第1切断プロセスと、前記可動刃物が前記支軸部を回転軸として前記固定刃物に近接する向きに回転する第2切断プロセスとにより行われ、
前記第1切断プロセスにおいて前記第1刃先による前記ワークの樹脂部の切断が開始され、前記第2切断プロセスにおいて前記第2刃先と前記固定刃先との噛み合いによる前記ワークの切断が終了する、
樹脂被覆金属部材の切断装置。
【請求項2】
前記ワーク受け部において、前記ワークを、前記可動刃物の前記第1刃先の当接による揺動が可能となるように設置する、請求項1に記載の樹脂被覆金属部材の切断装置。
【請求項3】
前記ワークは、前記金属部が螺旋状の金属帯材である、請求項1または2に記載の樹脂被覆金属部材の切断装置。
【請求項4】
前記ワーク受け部において、前記ワークを、前記金属帯材の螺旋の隙間の延在方向と前記固定刃先の延在方向とが合致するように位置決めする、請求項3に記載の樹脂被覆金属部材の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆金属部材の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂被覆金属部材の切断装置として、たとえば、特許文献1に記載の医療用薄肉チューブの切断装置が知られている。この切断装置は、ワークとなる薄肉チューブを横切りするものである。ワークは一対のローラと円形カッタとの間に配置される。ワークの横切りは、一対のローラでワークを回転させながら、円形カッタ(刃物)をワークに押し付けることによって行われる。この切断装置は、ワークの中空部分に芯棒を挿入することによって、ワークの潰れが防止される。また、この切断装置は、ワークと円形カッタの切断刃の両方を回転させることによって、ワークの切断面におけるバリの発生が防止される。ワークとなる薄肉チューブは、たとえば、外径が5mm~15mm、肉厚が0.1mm~2.0mmであり、その材質はポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルなどの半硬質樹脂である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、金属質の芯材に樹脂が被覆された薄肉チューブ(樹脂被覆金属チューブ)が提供されるようになった。たとえば、樹脂被覆金属チューブは、薄肉の金属帯材を螺旋状に形成した芯材が、樹脂で被覆されている。たとえば、樹脂被覆金属チューブは、上記芯材の内周側と外周側の両方が、同質の樹脂で被覆されている。たとえば、樹脂被覆金属チューブは、上記芯材の内周側と外周側の両方が、互いに異質の樹脂で被覆されている。このような金属質の芯材を有する樹脂被覆金属チューブは十分に高強度化されているため、従来の薄肉チューブ(特許文献1参照)と比べて、横切りがより難しくなった。また、従来の切断装置(特許文献1参照)の場合、ワークを構成する単一の材質(半硬質樹脂)に適する刃物を選定すれば切断面の焼けや毛羽立ちの発生などの不具合が防止できた。しかし、上記した樹脂被覆金属チューブの場合、硬質の芯材(金属部)と軟質の被覆樹脂(樹脂部)が共存することに起因して、従来の単一の材質からなる薄肉チューブと比べて、横切りが特段に難しくなった。
【0005】
たとえば、ワークとなる樹脂被覆金属チューブを横切りする場合、硬質の金属部を確実に切断するには、硬質の金属部に適する刃物を選定する必要がある。ワークの切断に際して、刃物とワークとの間に摩擦が発生するが、このとき発生する摩擦熱は、一般的に、切断対象の材質に適さない刃物の方が大きいと考えられる。つまり、ワークの切断に際して発生する摩擦熱は、硬質の金属部に適する刃物を用いたことに起因して、樹脂部の方がより多く発生すると考えられる。そのため、硬質の金属部に適する刃物を用いた場合、ワークの樹脂部の切断面に焼けや毛羽立ちが発生するおそれがある。一方、軟質の樹脂部に適する刃物を選定すれば、樹脂部の焼けや毛羽立ちの発生は防止できると考えられる。しかし、ワークの金属部の切断に際して、軟質の樹脂部に適する刃物を用いたことに起因して、刃物が損傷する、金属部が切断できない、または金属部の切断面にバリ(金属バリ)が発生するなどの不具合が発生するおそれがある。なお、金属バリは、脱落せずに樹脂部の切断面に食い込んで残存し、あるいは、脱落して樹脂部の表面に食い込んで残存し、樹脂被覆金属チューブの品質不良の原因となる。
【0006】
この発明の目的は、上記した樹脂被覆金属チューブなどの樹脂被覆金属部材を横切りにする場合に、樹脂部の焼けや毛羽立ちおよび金属バリの発生を防止し、高品質の樹脂被覆金属部材を作製できる、簡易な構成の切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、ワークとなる樹脂被覆金属チューブを横切りしたときの挙動などを詳細に検討し、ワークを構成する金属部および樹脂部のそれぞれに適する刃物形状および切断方法を選択する思想を導入することによって、上記課題が解決できることを見出し、この発明に想到することができた。
【0008】
この発明に係る切断装置は、金属部が樹脂部で被覆された樹脂被覆金属部材をワークとする切断装置であって、5度以上40度以下の刃先角を備えた直線状の第1刃先と、片刃で60度以上90度未満の刃先角を備えた直線状の第2刃先と、を有する可動刃物と、片刃で60度以上90度以下の刃先角を備えた直線状の固定刃先を有する固定刃物と、前記可動刃物に設けられた係止部に当接可能な支軸部と、前記可動刃物の移動を案内する案内部と、前記ワークが設置されるワーク受け部と、を備え、前記第1刃先は前記固定刃先から離間する向きに5度以上30度以下の傾き角を有するように構成され、前記第2刃先と前記固定刃先とは互いが対向するように構成され、前記ワークの切断は、前記可動刃物が前記ワークに向かって移動して前記係止部が前記支軸部に当接するまでの第1切断プロセスと、前記可動刃物が前記支軸部を回転軸として前記固定刃物に近接する向きに回転する第2切断プロセスとにより行われ、前記第1切断プロセスにおいて前記第1刃先による前記ワークの樹脂部の切断が開始され、前記第2切断プロセスにおいて前記第2刃先と前記固定刃先との噛み合いによる前記ワークの切断が終了する。
【0009】
この発明に係る切断装置は、前記ワーク受け部において、前記ワークを、前記可動刃物の前記第1刃先の当接による揺動が可能となるように設置することが好ましい。
【0010】
この発明に係る切断装置は、前記ワークは、前記金属部が螺旋状の金属帯材であってよい。この場合、この発明に係る切断装置は、前記ワーク受け部において、前記ワークを、前記金属帯材の螺旋の隙間の延在方向と前記固定刃先の延在方向とが合致するように位置決めすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、上記した樹脂被覆金属チューブなどの樹脂被覆金属部材を横切りにする場合に、樹脂部の焼けや毛羽立ちおよび金属バリの発生を防止し、高品質の樹脂被覆金属部材を作製できる、簡易な構成の切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】樹脂被覆金属部材の一例であって、端面(切断面)が円筒形状の樹脂被覆金属チューブを模式的に示す図である。
【
図2】樹脂被覆金属部材の一例であって、端面(切断面)が四角形状の樹脂被覆金属平線を模式的に示す図である。
【
図3】この発明に係る切断装置の実施形態の一例であって、
図1に示すワークWを切断対象とし、可動刃物が待機位置(X2側)に停止している状態を示す図である。
【
図4】
図3に示す切断装置をX1側から見た図であって、部分的に断面を含む図である。
【
図5】
図3に示す可動刃物の第1刃先の断面を部分的に拡大して示す図である。
【
図6】
図3に示す可動刃物の第2刃先および固定刃物の固定刃先のそれぞれの断面を、部分的に拡大して示す図である。
【
図7】第1切断プロセスを説明するために示す図であって、可動刃物が待機位置(X2側)からワークWに向かって移動(X1側に移動)し、可動刃物の第1刃先がワークWの樹脂部分の切断を開始した状態を示す図である。
【
図8】第1切断プロセスを説明するために示す図であって、可動刃物がさらにX1側に移動した状態を示す図である。
【
図9】第2切断プロセスを説明するために示す図であって、可動刃物がZ1側に向うように回転し、可動刃物の第2刃先と固定刃物の固定刃先とが噛み合って、ワークWの切断が終了した状態を示す図である。
【
図10】
図2に示すワークWを切断対象とし、第1切断プロセスにおいて、可動刃物が
図8に示す場合と同様な位置に達した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る切断装置は、金属部が樹脂部で被覆された樹脂被覆金属部材をワークとする切断装置であって、ワークの横切りが可能である。
【0014】
この発明に係る切断装置は、5度以上40度以下の刃先角を備えた直線状の第1刃先と、片刃で60度以上90度未満の刃先角を備えた直線状の第2刃先と、を有する可動刃物を備える。
【0015】
この発明に係る切断装置は、片刃で60度以上90度以下の刃先角を備えた直線状の固定刃先を有する固定刃物を備える。
【0016】
この発明に係る切断装置は、可動刃物に設けられた係止部に当接可能な支軸部と、可動刃物の移動を案内する案内部と、ワークが設置されるワーク受け部と、を備える。
【0017】
可動刃物の第1刃先は、固定刃物の固定刃先から離間する向きに、5度以上30度以下の傾き角を有するように構成されている。
【0018】
可動刃物の第2刃先と、固定刃物の固定刃先とは、互いが対向するように構成されている。
【0019】
この発明に係る切断装置によるワークの切断は、可動刃物がワークに向かって移動して係止部が支軸部に当接するまでの第1切断プロセスと、可動刃物が支軸部を回転軸として固定刃物に近接する向きに回転する第2切断プロセスとにより行われ、第1切断プロセスにおいて第1刃先によるワークの樹脂部の切断が開始され、第2切断プロセスにおいて第2刃先と固定刃先との噛み合いによるワークの切断が終了する。
【0020】
以下、この発明に係る切断装置の実施形態の一例を、切断対象となる樹脂被覆金属部材の具体例を挙げて、適宜図面を参照して説明する。なお、この発明に係る切断装置および切断対象は、ここに例示する構成に限定するものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解することが相当である。また、特段の断りがない限り、この発明に係る樹脂被覆金属部材の切断装置の実施形態を「切断装置」と称し、切断対象となる樹脂被覆金属部材を「ワーク」と称する。また、切断装置やワークを構成する各部の呼称および各部に付す符号は、特段の断りがない限り、共用する。
【0021】
まず、この発明に係る切断装置のワークとなる樹脂被覆金属部材の具体例を、
図1および
図2に示す。
【0022】
図1に示すワークWは、樹脂被覆金属部材の一例であって、端面(切断面)が円筒形状の樹脂被覆金属チューブ(薄肉チューブ)である。このワークWは、芯材Wmと、この芯材Wmを被覆する樹脂部Wpとにより構成されている。樹脂部Wpは、第1樹脂部Wp1と、第2樹脂部Wp2とにより構成されている。このワークWは、たとえば、0.1mm以上2mm以下の肉厚である。このワークWは、たとえば、1.5mm以上15mm以下の外径である。このワークWは、たとえば、医療用カテーテルワーヤーのガイドチューブ、電気配線用や通信用などのノイズ対策や防湿対策のための外装チューブなどとして使用されるものであってよい。なお、このワークWは、後述する
図3から
図9に示すワークWに対応する。
【0023】
芯材Wmは、ワークWを構成する金属部である。芯材Wmは、ばね用ステンレス鋼などからなる金属帯材が螺旋状に形成されたものである。芯材Wmの螺旋形状は、たとえば、1.5mm超15mm未満の外径で、0.5mm以上5mm以下のピッチである。なお、このピッチに適する厚さの可動刃物10、たとえば、ワークWと接触する部位のY方向の寸法(厚さ)が0.5mm以上5mm以下の可動刃物10を用いることが好ましい。芯材Wmとなる金属帯材は、たとえば、0.01mm以上1.8mm以下の厚さで、0.5mm以上3mm以下の幅である。
【0024】
樹脂部Wpは、ワークWを構成する樹脂部である。樹脂部Wpは、ワークWを構成する金属部(芯材Wm)の表面を被覆している。樹脂部Wpは、熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部Wp1と、熱可塑性樹脂からなる第2樹脂部Wp2とで構成されている。第1樹脂部Wp1は、たとえば、0.02mm以上1mm以下の肉厚である。第2樹脂部Wp2は、たとえば、0.02mm以上1mm以下の肉厚である。第1樹脂部Wp1および第2樹脂部Wp2は、同材質であってもよいし、異材質であってもよい。第1樹脂部Wp1および第2樹脂部Wp2の材質は、それぞれ、たとえば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PA(ポリアミド)またはPTFE(ポリテトラフルオロチレン)などのフッ素樹脂などであってよい。
【0025】
また、
図2に示すワークWは、樹脂被覆金属部材の一例であって、端面(切断面)が四角形状の樹脂被覆金属平線である。このワークWは、芯材Wmと、この芯材Wmを被覆する樹脂部Wpとにより構成されている。樹脂部Wpは、第1樹脂部Wp1と、第2樹脂部Wp2とにより構成されている。このワークWは、たとえば、0.1mm以上5mm以下の肉厚である。このワークWは、たとえば、0.5mm以上15mm以下の幅である。このワークWは、たとえば、電気配線用や通信用などの平線として使用されるものであってよい。なお、このワークWは、後述する
図10に示すワークWに対応する。
【0026】
芯材Wmは、ワークWを構成する金属部である。芯材Wmは、ばね用ステンレス鋼などからなる金属帯材である。芯材Wmとなる金属帯材は、たとえば、0.03mm以上5mm未満の厚さで、0.3mm以上15mm未満の幅である。
【0027】
樹脂部Wpは、ワークWを構成する樹脂部である。樹脂部Wpは、ワークWを構成する金属部(芯材Wm)の表面を被覆している。樹脂部Wpは、熱可塑性樹脂からなる第1樹脂部Wp1と、熱可塑性樹脂からなる第2樹脂部Wp2とで構成されている。第1樹脂部Wp1は、たとえば、0.02mm以上1mm以下の肉厚である。第2樹脂部Wp2は、たとえば、0.02mm以上1mm以下の肉厚である。第1樹脂部Wp1および第2樹脂部Wp2は、同材質であってもよいし、異材質であってもよい。第1樹脂部Wp1および第2樹脂部Wp2の材質は、それぞれ、たとえば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PA(ポリアミド)またはPTFE(ポリテトラフルオロチレン)などのフッ素樹脂などであってよい。
【0028】
次に、この発明に係る切断装置の実施形態の一例を、
図3から
図9に示す。
【0029】
図3から
図9に示す切断装置1は、金属部が樹脂部で被覆された樹脂被覆金属部材をワークWとする樹脂被覆金属部材の切断装置である。この切断装置1は、ワークWの横切りが可能である。なお、ここでいう「横切り」とは、ワークWの長手方向と交差する方向に切断することを意図する。
【0030】
この切断装置1は、5度以上40度以下の刃先角を備えた直線状の第1刃先11と、片刃で60度以上90度未満の刃先角を備えた直線状の第2刃先12と、を有する可動刃物10を備える。この切断装置1は、片刃で60度以上90度以下の刃先角を備えた直線状の固定刃先21を有する固定刃物20を備える。この切断装置1は、可動刃物10に設けられた係止部13に当接可能な支軸部32と、可動刃物10の移動を案内する案内部31と、ワークWが設置されるワーク受け部33と、を備える。
【0031】
切断装置1において、可動刃物10の第1刃先11は、固定刃物20の固定刃先21から離間する向き(Z2方向)に、5度以上30度以下の傾き角α(
図8参照)を有して直線状に構成されている。可動刃物10の第1刃先11は、所定の刃先角γ1(
図5参照)を備え、その直線状の刃先線11a(
図5参照)がZ1側に配置される。第1刃先11の刃先角γ1は、5度以上40度以下に構成される。たとえば、ワークWが比較的軟質である場合、第1刃先11が鋭利であるほど、すなわち刃先角γ1が小さくなるほど、その第1刃先11に加える荷重が比較的小さくてもワークWへの切り込み性や食い込み性が良好になる。この観点から、この発明では、可動刃物10の第1刃先11の刃先角γ1を40度以下とする。これにより、後述する第1切断プロセスにおいて、可動刃物10のX1側への移動による第1刃先11の樹脂部Wpへの切り込みや食い込みを容易かつ滑らかにすることができる。その結果、ワークWの横切りにおける樹脂部Wpでの摩擦熱が小さくなり、樹脂部Wpにおける焼けや毛羽立ちの発生を抑制することができる。
【0032】
また、ワークWの樹脂部Wpへの切り込み性や食い込み性を高めるには、第1刃先11がカミソリ刃のように極鋭利であるほど、すなわち刃先角γ1がより小さいほど、有利である。しかし、刃先角γ1が過度に小さいと第1刃先11の機械的強さが低下し、機械的強さの不足に起因して第1刃先11の損傷が発生するおそれがある。この観点から、この発明では、可動刃物10の第1刃先11の刃先角γ1を5度以上とする。
【0033】
可動刃物10の第1刃先11の刃先形態は、5度以上40度以下の刃先角γ1を備えている限り、両刃でも片刃でも構わない。なお、両刃である第1刃先11は、第1刃先11を構成する可動刃物10のY1側の側面がY1側に傾き、Y2側の側面がY2側に傾き、いずれの側面もZ方向に対して平行にならないように配置される。また、片刃である第1刃先11は、第1刃先11を構成する可動刃物10のY1側の側面が、Y1側に傾くか、またはY2側の側面がY2側に傾くか、いずれか一方の側面がZ方向に対して平行になるように配置される。両刃の刃先角は、同等の機械的強さを有する片刃の刃先角よりも小さくなる。この観点から、可動刃物10の第1刃先11の刃先形態を両刃とし、より小さい刃先角を備える第1刃先11によって、ワークWの樹脂部Wpへの切り込み性や食い込み性を高めることが好ましい。
【0034】
切断装置1において、可動刃物10の第2刃先12は、直線状の刃先線12a(
図6参照)を有し、Z方向において、固定刃物20の固定刃先21に対して、互いが対向するように構成されている。可動刃物10の第2刃先12は、片刃で所定の刃先角γ2(
図6参照)を備え、その刃先線12aがZ1側に配置される。可動刃物10の第2刃先12は、片刃である。片刃である可動刃物10は、第2刃先12を構成する可動刃物10のY1側の側面が、Z方向に対して平行になるように配置される。これにより、片刃である第2刃先12は、後述する第2切断プロセルにおいて可動刃物10がZ1方向へ回転した際に、第2刃先12を構成する可動刃物10のY1側の側面が固定刃先21に衝突することがない。
【0035】
可動刃物10の第2刃先12は、片刃で、刃先角γ2が60度以上90度未満に構成される。片刃である第2刃先12の刃先角γ2が90度以上であると、後述する第2切断プロセスにおいて第2刃先12と固定刃物20の固定刃先21とが噛み合う前に第2刃先12を構成する可動刃物10のZ1側の側面がワークWに当接するため、ワークWを潰すおそれがある。この観点から、この発明では、片刃である第2刃先12の刃先角γ2を90度未満とする。なお、この発明では、可動刃物10の第2刃先12の刃先角γ2の上限を90度未満としているが、第2刃先12の刃先角γ2を90度からどの程度小さく設定するかは、ワークWの外径や厚さを考慮して決めればよい。
【0036】
また、第2刃先12の刃先角γ2が60度以上であると、第2刃先12の機械的強さを十分に高くすることができるため、第2刃先12と固定刃先21との噛み合いによって硬質の芯材Wm(金属部)へ加える荷重(切断力)を大きくすることができる。この切断力が大きいほど硬質の芯材Wmの切断性(切れ味)が向上する。この観点から、この発明では、可動刃物10の第2刃先11の刃先角γ2を60度以上とする。
【0037】
これにより、後述する第2切断プロセスにおいて、第2刃先12の芯材Wmへの切り込みを確実かつ滑らかにすることができるし、第2刃先12と固定刃先21との噛み合いを確実かつ滑らかにすることができる。その結果、ワークWの横切りにおける芯材Wm(金属部)からの金属バリの発生を抑制することができるし、第2刃先12による芯材Wmの潰れの発生も抑制ことができる。
【0038】
切断装置1において、固定刃物20の固定刃先21は、直線状の刃先線21a(
図6参照)を有し、可動刃物10の直線状の第2刃先12と互いが対向するように配置され、可動刃物10の第2刃先12との噛み合いが可能に構成されている。なお、固定刃物20の固定刃先21に対して、可動刃物10の第1刃先11は固定刃先21から離間する向き(Z2方向)に傾いている。固定刃物20の固定刃先21は、片刃で、60度以上90度以下の刃先角γ3(
図6参照)を備える。固定刃物20の固定刃先21は、片刃である。片刃である固定刃物20は、固定刃先21を構成する固定刃物20のY2側の側面が、Z方向に対して平行になるように、またはY1側に少し傾くように、配置される。これにより、片刃である固定刃先21は、後述する第2切断プロセルにおいて可動刃物10がZ1方向へ回転した際に、第2刃先12を構成する可動刃物10のY1側の側面に衝突することがない。
【0039】
固定刃物10の固定刃先21は、片刃で、刃先角γ3が60度以上90度以下に構成される。片刃である固定刃先21の刃先角γ3が90度を超えると、後述する第2切断プロセスにおいて固定刃先21と可動刃物10の第2刃先12とが噛み合う前に固定刃先21を構成する固定刃物20のZ2側の側面がワークWに当接するため、ワークWを潰すおそれがある。この観点から、この発明では、片刃である固定刃先21の刃先角γ3を90度以下とする。
【0040】
また、固定刃先21の刃先角γ3が60度以上であると、固定刃先21の機械的強さを十分に高くすることができるため、固定刃先21と第2刃先12との噛み合いによって硬質の芯材Wm(金属部)へ加える荷重(切断力)を大きくすることができる。この切断力が大きいほど硬質の芯材Wmの切断性(切れ味)が向上する。この観点から、この発明では、固定刃物20の固定刃先21の刃先角γ3を60度以上とする。
【0041】
切断装置1において、係止部13は可動刃物10に設けられ、支軸部32および案内部31は可動刃物10以外に設けられる。係止部13は、可動刃物10に固定され、可動刃物10のX方向への移動によってX方向へ移動する。案内部31は、可動刃物10以外に固定され、可動刃物10のX方向への移動を滑らかに案内する。支軸部32は、可動刃物10以外に固定され、可動刃物10のX方向への移動中に係止部13に当接する。係止部13の支軸部32への当接により、可動刃物10のX方向への移動が停止する。係止部13および支軸部32は、それぞれ、互いが当接する部位を有する。たとえば、係止部13に円弧状の凹面を有する部位を設けるとともに、支軸部32に係止部13の凹面の形状に対応する円弧状の凸面を有する部位を設けることにより、互いを滑らかに当接させることができる。また、係止部13および支軸部32は、それぞれ、互いが当接した状態でのY軸回りの回転(揺動)を可能にする部位を有する。たとえば、
図3に示すように、係止部13の凹面を半円状に構成し、支軸部32の凸面を係止部13の凹面の半径に対応する半径を有する円筒状に構成することにより、係止部13および支軸部32は、それぞれ、互いが当接した状態でのY軸回りの滑らかな回転(揺動)が可能になる。
【0042】
切断装置1において、ワーク受け部33(
図4参照)には、ワークWが設置される。ワーク受け部33において、ワークWは、所定の位置での切断(横切り)が可能となるように、適切に位置決めされる。なお、ワークWの外回りが円形状の場合(
図1参照)、ワーク受け部33において、可動刃物10のX方向への移動により第1刃先11がワークWに当接した際にワークWの揺動を可能とするように、ワークWを設置することが好ましい。たとえば、ワーク受け部33のワークWを載置する部位に、ワークWの円形状の外回りに対応するように、ワークWの円形状の凸面の曲率半径よりも少し小さい曲率半径を有する円形状の凹面を含む溝部を設けることが好ましい。このような構成を有する溝部がワーク受け部33に設けられていると、その溝部においてワークWを位置決めすることにより、可動刃物10の第1刃先11がワークWに当接した際にワークWを溝部の中で揺動させることができる。これにより、可動刃物10の第1刃先11のワークWへの当接またはワークWの樹脂部Wpへの食い込みに起因して発生しやすい、ワークWの切断面の樹脂部Wpの焼けや毛羽立ちの発生を抑制する効果を高めることができる。
【0043】
また、ワークWの芯材Wmが螺旋状の場合(
図1参照)、ワーク受け部33において、ワークWを、芯材Wmを構成する金属帯材の螺旋の隙間の延在方向と、固定刃物20の固定刃先21の延在方向(X方向)とが合致するように位置決めすることが好ましい。たとえば、ワーク受け部33にXYテーブルなどの移動装置を組み込めば、ワークWのX方向およびY方向への移動調整が容易である。これにより、ワーク受け部33において、芯材Wmを構成する金属帯材の螺旋の隙間の延在方向を固定刃物20の固定刃先21の延在方向(X方向)に合致させたワークWの位置決めを容易に行うことができる。この場合、たとえば、人が拡大鏡で確認しながらXYテーブルを操作する移動装置であってよい。あるいは、たとえば、CCDカメラなどの撮像機器と、その撮像データの処理装置と、その処理データに基づくXYテーブルの移動制御装置などを備えて、XYテーブルを自動的に操作する移動装置であってよい。
【0044】
次に、
図3および
図9に示す切断装置1を用いた、
図1に示すワークWの切断プロセスについて説明する。
【0045】
切断装置1によるワークWの切断は、第1切断プロセスと第2切断プロセスとで構成される。
【0046】
切断装置1の第1切断プロセスは、可動刃物10がワークWに向かって移動し、すなわちX1方向へ移動し、可動刃物10に設けられた係止部13が可動刃物10以外に設けられた支軸部32に当接するまでのプロセスである。第1切断プロセスでは、可動刃物10の第1刃先11によるワークWの樹脂部Wpの切断が開始される。第1切断プロセスにおいて、可動刃物10が
図3に示す待機位置から
図8に示す位置までX1方向に移動する間に、可動刃物10の第1刃先11がワークWの外側の樹脂部Wp2に当接し、さらに樹脂部Wp2に切り込む。このとき、可動刃物10の適切な刃先角γ1および適切な傾き角αを有する第1刃先11は、ワークWの樹脂部Wpに焼けや毛羽立ちを発生させることなく、またワークWの金属部(芯材Wm)に金属バリを発生させることなく、ワークWに滑らかに切り込み、ワークWを滑らかに切断することができる。
【0047】
なお、ワーク受け部33において、ワークWを、芯材Wmを構成する金属帯材の螺旋の隙間の延在方向と、固定刃物20の固定刃先21の延在方向(X方向)とが合致するように位置決めしておくと、ワークWの樹脂部Wp2に切り込んだ第1刃先11が金属帯材の螺旋の隙間に滑らかに入り込むことができる。このように位置決めされたワークWであると、可動刃物10の第1刃先11は、ワークWの樹脂部Wp2に切り込んだ後に芯材Wpに当接することなく、ワークWの樹脂部Wp2を滑らかに切り進むことができる。なお、可動刃物10の第1刃先11が金属帯材の螺旋の隙間に入り込まない場合でも、適切な刃先角γ1(
図5参照)と適切な傾き角α(
図8参照)を有する第1刃先11は、ワークWの樹脂部Wp2に切り込んだ後に芯材Wmを切断しつつ樹脂部Wp2を切り進むことができる。
【0048】
ワークWは、上記した第1切断プロセスにおいて、X1方向へ移動した可動刃物10の第1刃先11によって、Z1側の一部の樹脂部Wp1、芯材Wmおよび樹脂部Wp2を残して切断される。
【0049】
続く、切断装置1の第2切断プロセスは、係止部13が支軸部32に当接したためにX1方向へ移動を停止した可動刃物10が、支軸部32を回転軸として固定刃物20に近接する向きに回転する、すなわちZ1方向に回転するプロセスである。第2切断プロセスでは、可動刃物10の第2刃先12と固定刃物20の固定刃先21との噛み合いにより、ワークWの切断が終了する。つまり、第2切断プロセスでは、上記した第1切断プロセスにおいて切り残されたワークWのZ1側の一部の樹脂部Wp1、芯材Wmおよび樹脂部Wp2を切断し、ワークWの切断が終了する。
【0050】
第2切断プロセスにおいて、可動刃物10が
図8に示す状態から
図9に示す状態になるまで、支軸部32を回転軸として点P回りにZ1方向に回転(揺動)する間に、可動刃物10の第2刃先12が固定刃物の固定刃先21と噛み合うことによって、ワークWのZ1側の一部の樹脂部Wp1、芯材Wmおよび樹脂部Wp2を切断する。このとき、可動刃物10の片刃で適切な刃先角γ2を有する第2刃先12と、固定刃物10の片刃で適切な刃先角γ3を有する固定刃先21とが、滑らかに噛み合って、この噛み合いの間に、ワークWの樹脂部Wpに焼けや毛羽立ちを発生させることなく、またワークWの金属部(芯材Wm)に金属バリを発生させることなく、ワークWを滑らかに切り進みつつ完全に切断することができる。
【0051】
第2切断プロセス終了後、可動刃物10は、支軸部を回転軸として点P回りにZ2方向に回転(揺動)して
図8に示す状態に戻り、さらに、X2方向へ移動して
図3に示す待機位置へ戻る。これにより、切断装置1によるワークWの切断プロセスが完了する。
【0052】
次に、切断装置1を用いた、
図2に示すワークWの切断プロセスについて説明する。なお、便宜上、
図2に示すワークW(樹脂被覆金属平線)を「平線W」とし、
図1に示すワークW(樹脂被覆金属チューブ)を「チューブW」とする。
【0053】
切断装置1による平線Wの切断は、チューブWの場合と実質的に同様であって、上記したチューブWの第1切断プロセスおよび第2切断プロセスで構成される。平線Wの場合、
図10に示すように、第1切断プロセスにおいて、可動刃物10の第1刃先11が、平線Wの上側(Z2側)の樹脂部Wp1に当接し、樹脂部Wp1を切り進む。この第1切断プロセスによって、平線Wの樹脂部Wp1の大部分が切断され、樹脂部Wp1には焼けや毛羽立ちが発生することがない。なお、平線Wの第1切断プロセスにおける
図10に示す状態は、チューブWの第1切断プロセスにおける
図8に示す状態に対応する。
【0054】
続いて、切断装置1による平線Wの切断は、チューブWの場合と同様に第2切断プロセスが行われる。第2切断プロセスにおいて、可動刃物10の第2刃先12と固定刃物20の固定刃先21とが噛み合うことにより、平線Wの樹脂部Wp1の切り残し部分と金属部(芯材Wm)と下側(Z1側)の樹脂部Wp2とが切断され、金属部(芯材Wm)から金属バリが発生することなく、また樹脂部Wp2には焼けや毛羽立ちが発生することがない。これにより、平線Wの切断が終了する。この後、可動刃物10が
図3に示す待機状態に戻り、平線Wの切断が完了する。
【0055】
切断装置1において、可動刃物10の第1刃先11は、5度以上40度以下の刃先角γ1(
図5参照)を備えた直線状の刃先である。第1刃先11の刃先角γ1は、好ましくは25度以下(5度以上)、より好ましくは15度以下(5度以上)とする。第1刃先11の刃先角γ1が25度以下(5度以上)、より好ましくは15度以下(5度以上)であると、第1刃先11の刃幅がより狭隘になる。そのため、第1刃先11によるワークWの樹脂部Wpへの切り込み幅がより狭隘になって、第1刃先11による樹脂部Wpへの切り込みがより滑らかになる。これにより、ワークWの樹脂部Wp(特に外側の樹脂部Wp2)の焼けや毛羽立ちの発生の抑制効果をより高めることができる。
【0056】
切断装置1において、可動刃物10の第1刃先11は、固定刃物20の固定刃先21から離間する向き(Z2方向)に、5度以上30度以下の傾き角α(
図8参照)を有する。第1刃先11の傾き角αは、好ましくは、25度以下(5度以上)とする。第1刃先11の傾き角αが25度以下(5度以上)であると、第1刃先11の刃先線の延在方向がよりX方向に近づき、第1刃先11がワークWの樹脂部Wpへ当接する角度(剪断角)がより小さくなる。そのため、第1刃先11が樹脂部Wpへ切り込む力をより小さくすることができる。なお、第1刃先11の傾き角αが大きいほど、第1刃先11の刃先線の延在方向がZ方向に近づくため、上記剪断角が大きくなる。これにより、ワークWの樹脂部Wp(特に外側の樹脂部Wp2)の焼けや毛羽立ちの発生の抑制効果をより高めることができる。
【0057】
切断装置1において、可動刃物10の第2刃先12は、片刃で60度以上90度未満の刃先角γ2(
図6参照)を備えた直線状の刃先である。第2刃先12の刃先角γ2は、好ましくは、87度以下(60度以上)とする。第2刃先12の刃先角γ2が87度以下(60度以上)であると、第2刃先12の刃幅がより狭隘になる。そのため、第2刃先12によるワークWの樹脂部Wpおよび金属部(芯材Wm)への切り込み幅がより狭隘になって、第2刃先12による樹脂部Wpおよび金属部(芯材Wm)への切り込みがより滑らかになる。これにより、ワークWの樹脂部Wpにおける焼けや毛羽立ちの発生、およびワークWの金属部(芯材Wm)における金属バリの発生の抑制効果をより高めることができる。なお、ワークWへの切り込みは可動刃物10の第2刃先12の刃先角γ2が小さいほど滑らかになるが、後述する第2刃先12と固定刃物20の固定刃先21とのクリアランスを適切に調整することによって、ワークWの滑らかな切断が可能になる。
【0058】
切断装置1において、固定刃物20の固定刃先21は、片刃で60度以上90度以下の刃先角γ3(
図6参照)を備えた直線状の刃先である。固定刃先21の刃先角γ3は、好ましくは70度以上(90度未満)、より好ましくは80度以上(90度未満)とする。固定刃先21の刃先角γ3が70度以上(90度未満)、より好ましくは80度以上(90度未満)であると、固定刃先21の機械的強さがより高まる。そのため、固定刃先21と第2刃先12との噛み合いによるワークWの樹脂部Wpおよび金属部(芯材Wm)の切断をより安定に行うことができる。これにより、ワークWの樹脂部Wpにおける焼けや毛羽立ちの発生、およびワークWの金属部(芯材Wm)における金属バリの発生の抑制効果をより高めることができる。
【0059】
切断装置1において、可動刃物10の第2刃先12と固定刃物20の固定刃先21は、互いの片刃を構成する刃先線同士が対向し、互いの刃先線が滑らかに噛み合うように構成されている。なお、可動刃物10の第2刃先12と固定刃物20の固定刃先21との噛み合いのクリアランスは、ワークWの金属部の切断性を高める観点で、0mm(実質的にクリアランスがない非圧接状態)が良いが、クリアランスの調整が難しくなる。そのため、クリアランスを僅かにプラス側に調整するのが良く、たとえば、0mm以上+0.01mm以下(実質的にクリアランスがある状態)が好ましく、より好ましくは0mm以上+0.005mm以下(クリアランスがより小さい状態)である。なお、クリアランスをマイナス側に調整すると刃先同士が圧接状態になるため、刃先同士の噛み合いに不具合を生じるおそれがある。第2刃先12と固定刃先21との噛み合いのクリアランスは、ワークWの大きさや材質などの諸条件を考慮し、必要に応じて上記範囲内に調整すればよい。
【符号の説明】
【0060】
1 切断装置
10 可動刃物
11 第1刃先
11a 刃先線
12 第2刃先
12a 刃先線
13 係止部
20 固定刃物
21 固定刃先
21a 刃先線
30 装置ベース
31 案内部
32 支軸部
33 ワーク受け部
W ワーク
Wm 芯材(金属帯材)
Wp 樹脂部
Wp1 第1樹脂部
Wp2 第2樹脂部
P 点
θ 回転角
γ1 刃先角(第1刃先)
γ2 刃先角(第2刃先)
γ3 刃先角(固定刃先)
α 傾き角
【要約】 (修正有)
【課題】樹脂被覆金属部材(ワーク)の樹脂部の焼けや毛羽立ちおよび金属バリの発生を防止し、高品質の樹脂被覆金属部材を作製できる、簡易な切断装置を提供する。
【解決手段】所定の刃先角を備えた第1刃先11および第2刃先12を有する可動刃物10と、片刃で所定の刃先角を備えた固定刃先21を有する固定刃物20と、可動刃物の係止部に当接可能な支軸部32と、可動刃物の移動を案内する案内部31と、ワーク受け部を備え、第1刃先は固定刃先から離間する向きに所定の傾き角で構成され、第2刃先と固定刃先は互いが対向して構成され、ワークWの切断は、可動刃物が移動して係止部13が支軸部に当接するまでの第1切断プロセスと、可動刃物が支軸部を回転軸として固定刃物に近接する向きに回転する第2切断プロセスとで行われる。
【選択図】
図3