(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ゼラチン精製
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20220118BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C07K14/78
C07K1/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020163957
(22)【出願日】2020-09-29
(62)【分割の表示】P 2017528968の分割
【原出願日】2015-11-26
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521037385
【氏名又は名称】ルスロ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Rousselot BV
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフ・フーベルトゥス・オライフェ
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・フェルハウウェン
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ステフェンス
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231225(JP,A)
【文献】特開2005-289841(JP,A)
【文献】特表2003-516730(JP,A)
【文献】特開平07-069923(JP,A)
【文献】特開平01-156910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0168635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80,000Daを超える平均分子量を有するゼラチン由来分子を含み、リポ多糖含量が、2EU/g未満であるA型のゼラチンであって、
前記ゼラチンが、ゼラチンおよびリポ多糖を含む水性媒体からのリポ多糖の除去方法により得られ、前記方法が、
1)少なくとも2w/w%のゼラチン、およびリポ多糖を含む、水性媒体を供し、
2)0.01~1.5w/w%のミセル形成界面活性剤を水性媒体に添加し、
3)工程2)の媒体を固体吸着剤と接触させ、
4)工程3)の固体吸着剤を媒体から分離し、
5)ゼラチンを含む水性媒体を回収する、工程を含み、
ここに、工程1)~5)の各々が、68℃以下の温度で実施され、前記温度がミセル形成界面活性剤の曇点未満であり、少なくとも工程2)および3)が、少なくとも35℃の温度で実施され、
前記ミセル形成界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、エトキシ化界面活性剤であって、アルキルフェノールエトキシレートであり、前記アルキルフェノールエトキシレートが式C
xH
2x+1-C
6H
4-O-(C
2H
4O)
nH(式中、xは4~12であり、nは7.5~14である)で表され
、
前記方法が、いずれの分画分子量ろ過を用いる工程も含まず、かつ
前記A型のゼラチンが第4級アンモニア塩を含まないことを特徴とする、前記ゼラチン。
【請求項2】
100,000Daを超える平均分子量を有するゼラチン由来分子を含み、リポ多糖含量が、2EU/g未満である、ゼラチンであって、
前記ゼラチンが、ゼラチンおよびリポ多糖を含む水性媒体からのリポ多糖の除去方法により得られ、前記方法が、
1)少なくとも2w/w%のゼラチン、およびリポ多糖を含む、水性媒体を供し、
2)0.01~1.5w/w%のミセル形成界面活性剤を水性媒体に添加し、
3)工程2)の媒体を固体吸着剤と接触させ、
4)工程3)の固体吸着剤を媒体から分離し、
5)ゼラチンを含む水性媒体を回収する、工程を含み、
ここに、工程1)~5)の各々が、68℃以下の温度で実施され、前記温度がミセル形成界面活性剤の曇点未満であり、少なくとも工程2)および3)が、少なくとも35℃の温度で実施され、
前記ミセル形成界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、エトキシ化界面活性剤であって、アルキルフェノールエトキシレートであり、前記アルキルフェノールエトキシレートが式C
xH
2x+1-C
6H
4-O-(C
2H
4O)
nH(式中、xは4~12であり、nは7.5~14である)で表され
、
前記方法が、いずれの分画分子量ろ過を用いる工程も含まず、かつ
前記ゼラチンが第4級アンモニア塩を含まないことを特徴とする、前記ゼラチン。
【請求項3】
さらに、アセトンおよび/またはアルコールを含まない、請求項1または2記載のゼラチン。
【請求項4】
工程1)~5)の各々が、65℃以下の温度で実施される、および/または
工程1)~5)の各々が、少なくとも30℃の温度で実施される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1記載のゼラチン。
【請求項5】
工程1)における水性媒体が、少なくとも8w/w%の溶解したゼラチンを含む、および/または前記水性媒体が、37w/w%以下の溶解したゼラチンを含む請求項1~4のいずれか1記載のゼラチン。
【請求項6】
120,000Daを超える平均分子量を有する請求項1~5のいずれか1記載のゼラチン。
【請求項7】
200,000Daを超える平均分子量を有する請求項1~6のいずれか1記載のゼラチン。
【請求項8】
リポ多糖含量が、1EU/g未満である、請求項1~7のいずれか1記載のゼラチン。
【請求項9】
7を超える、好ましくは8を超える等電点を有する請求項1~8のいずれかに記載のゼラチン。
【請求項10】
ゼラチンがA型のゼラチンである請求項2記載のゼラチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチンおよびリポ多糖を含む水性媒体からのリポ多糖の除去方法、ならびに低リポ多糖含量を有するゼラチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、コラーゲンから得られる水溶性タンパク質の混合物である。ゼラチンは、例えば、皮膚、腱、靭帯、骨などの水抽出によって得たコラーゲンの酸性もしくはアルカリ性条件下での部分加水分解により、または酵素加水分解により、得られる。酸処理によって得たゼラチンは、A型ゼラチンと呼ばれ、他方、B型ゼラチンはアルカリ系プロセスから得られる。
【0003】
ゼラチンは、均一なタンパク質分子を構成しておらず、200~250kDa以下の平均分子量を有する不定長さのタンパク質分子を不定量で含む。したがって、ゼラチンの分子量分布は、しばしば重大かつ重要なゼラチン特性、例えば、粘度およびブルーム値またはゲル強度を担うかまたはそれらを決定する重要なパラメータである。
【0004】
ゼラチンは、室温において熱可逆性ゲルを形成し、熱水に溶解する。ゼラチンは一般的に、多様な産業、例えば、食品、医薬品および化粧品用途において、とりわけ例えば、フルーツガムおよびゼラチンデザート中のゲル化剤および品質改良剤として使用されているが、医学分野での例えば、血漿の代用物およびゼラチン系移植片についての用途もある。
【0005】
分子量は、とりわけ様々な抽出温度および条件によって、変動する。その結果、ブルームおよび粘度もまた変動する。温度は、ゼラチン調製、例えば、ゼラチンを食品、医薬品、技術的用途および医学的用途に適用できる前の精製条件において重要なパラメータであり、しばしば注意深い制御を必要とする。ゼラチンの使用に関して、ゲル化特性および粘度が重要な用途では60℃の温度が最大の取り扱い温度であると考えられており、但しゲル化能および/または粘度のいくらかの減損を許容する状況下では、限られた時間、例えば、5または10分間~30または45分間で例えば、62℃または65℃までの温度が許容可能である場合がある。65℃を超える、特に70℃を超える温度では、ゼラチンの望ましくない加水分解、すなわち、タンパク質分子のより小さいペプチドへの分解が起こり、結果としてゲル強度が低下し、またはゲル化能が低下しさえする。したがって、いわゆる「加水分解ゼラチン」は、70kDa以下、通常は20kDa以下、通常は100~15000Daの平均分子量を有するペプチド分子へのゼラチンの加水分解によって生じるペプチド調製物である。比較的小さい分子のため、加水分解ゼラチンはゼリー化特性を有さない。加水分解ゼラチンは、例えば、局所用クリーム中の質感調節剤(texture conditioner)および保湿剤として使用され、また、グリシン、プロリンおよびヒドロキシプロリンの含量が高いために栄養製品にも使用され、健康効果と関連付けられているが、生物医学用途にも使用することができる。それは、コラーゲンをまずゼラチンへと加水分解し、次いでさらに非ゲル化加水分解物へと加水分解することから、「加水分解コラーゲン」とも呼ばれる。
【0006】
ゼラチンの分子量分布は、通常、サイズ排除HPLC(高速液体クロマトグラフィー)技術によって測定され、溶出画分をUV吸収によって検出し、測定データを、適切なソフトウェア、当該技術分野において知られた全ての技術(例えば、Olijveら、Journal of Colloid and Interface Science (2001) 243、476-482を参照)によって評価する。平均分子量が70kDaより低い、例えば、20kDaより低い加水分解ゼラチンについては、同じ方法を用いることができるが、高分解能を得るためにはTSKgel2000SWXL(東ソー・バイオサイエンス、日本)などの分離カラムを使用することが好ましい(Zhangら、Food Hydrocolloids 23 (2009) 2001-2007)。
【0007】
ゼラチンの粘度(動的粘度)は、通常、ゼラチンの6.67w/w%溶液が60℃で標準フローピペット中を通る流動時間を測定することによって測定される(本明細書中で「GME10」とも呼ぶGME Monograph Standardized Methods for the testing of Edible Gelatin、バージョン10、2014(GME、ブリュッセル、ベルギー)の第2.4.2章、81~86頁を参照されたい)。
【0008】
6.67w/w%のゼラチンゲルのゲル強度は、標準的な装置(GME10参照)、例えば、QTS 25テキスチャーアナライザー(Brookfield Viscometers)またはテキスチャーアナライザーTA-XT2(Stable Micro Systems Ltd.、ロンドン、英国)によって決定することができ、ブルーム数(本明細書では「ブルーム値」ともいう、GME10参照)によって表示される。
【0009】
ゼラチン調製プロセスでは原材料が細菌によって汚染されることが多く、その結果、一般的なゼラチン調製物はリポ多糖(LPS)を含んでいる可能性がある。
【0010】
リポ多糖は、グラム陰性細菌の外膜に見出され、潜在的な毒素である。リポ多糖が細菌によって分泌されず膜構造体の一部であることから、LPSは「内毒素」としても知られている。したがって、リポ多糖は主に、細菌細胞の死滅および溶菌後に遊離する。
【0011】
LPSは、不定の多糖鎖と、脂質部分である脂質Aとから構成される。LPS分子は約10kDaの大きさであるが、水性媒体中では1000kDa以下の分子量を有する「ミセル」とも呼ばれる大きな凝集体を形成することができる。
【0012】
LPSは大部分の哺乳動物にとって有毒であり、動物宿主は広範な非特異的病態生理学的反応、例えば、発熱、頻脈、臓器機能不全、さらには死さえもをしばしば被ることになる。
【0013】
ある種のLPS含量は、多数のゼラチン用途において許容され得るが、(例えば、ゼラチンベースの血漿代用物、装置および移植片のような)医療目的のためなどの特定用途には、内毒素レベルが20EU/g未満であることが好ましく、10EU/gまたはさらに少ないことが好ましい。例えば、米国食品医薬品局(FDA)の政府規制は、心血管系および/またはリンパ系に接触する製品について最大0.5EU/mlまたは最大20EU/装置を許可している。脳脊髄液に接触する装置については、限界が0.06EU/mlまたは2.15EU/装置(約2EU/gゼラチン)でさえある。眼内環境に直接的または間接的に接触する装置についてはさらに低い内毒素限界が適用される場合がある。
【0014】
リムルスアッセイ(LAL)は、サブピコグラム量のLPSを測定するための当該技術分野においてよく知られた生物学的アッセイである。カブトガニ変形細胞溶解物(LAL)は、カブトガニであるLimulus polyphemusからの血球(変形細胞)の水抽出物である。LALは、細菌内毒素またはリポ多糖(LPS)(それはグラム陰性細菌の膜成分である)と反応する。この反応はLAL試験の基礎であり、これは細菌内毒素の検出および定量に用いられる。US-FDA、USP 2011、<85>章で承認されている、LPSレベルを定量するための推奨されたLAL法は、例えば、米国Charles Riverからの発色Endosafe法である。その他の承認および推奨されている方法は、Hyglos GmbH(ドイツ)からのEndoZyme組換え因子C法である。前記方法はいずれも、類似または同一の測定値をもたらし、したがって互換的に用いることができる。
【0015】
当該技術分野において、トリトンのごとき洗浄剤を用いてタンパク質溶液からLPS含量を低下させる方法が、例えば、HirayamaおよびSakata、Journal of Chromatography B、781 (2002) 419-432頁に記載されている。洗浄剤がミセルから内毒素モノマーを遊離させ、そのモノマーが吸着剤によって吸着されることが記載されている。しかしながら、HirayamaおよびSakataは、タンパク質含有溶液から内毒素を除去する場合に非選択的吸着剤、例えば、活性炭およびアニオン交換剤を使用することについて注意をしている、というのも、内毒素だけでなくタンパク質も前記の非選択的吸着剤に結合する傾向にあるからである。
【0016】
国際公開第2009/154440号には、アルギン酸塩水溶液またはゼラチン水溶液のごときLPS含有生体高分子材料中のLPS含量を低下させる方法が記載されている。国際公開第2009/154440号における方法は、前記溶液中での界面活性剤および固体吸着剤の使用、ならびに界面活性剤の曇点を超えるまでの前記溶液の温度における増加に依拠するものであり、その結果、界面活性剤の溶解度の低下および凝集がもたらされ、それにより、凝集した界面活性剤ならびに吸着剤に結合したLPSとの双方を、精製生体高分子を含む水相から遠心分離によって除去する、3相抽出プロセスがもたらされる。このためには、凝集体を吸着剤に吸着したLPSと一緒に遠心分離によって除去できるように界面活性剤を凝集させるべく、生体高分子、界面活性剤、吸着剤およびLPSを含む溶液の温度がその条件において界面活性剤の曇点温度を超えるような条件に溶液をもたらすことが非常に重要である。
【0017】
したがって、国際公開第2009/154440号には、トリトンX-114(23℃の曇点を有する)および固体吸着剤を含むアルギン酸塩水溶液を曇点のすぐ下の温度で調製し、続いて70℃に、すなわち、前記曇点よりも十分に高く加熱して、界面活性剤の凝集体を形成することが記載されている。遠心分離によって凝集体および吸着剤の双方が沈殿し、結果的にLPS含量の減少したアルギン酸塩水相がもたらされた。また、トリトンX-100(68~69℃の曇点を有する)および、吸着剤としての活性炭を再度曇点温度のすぐ下で含み、続いて90℃に加熱して相分離、すなわち、界面活性剤の凝集体の形成を誘導する、ゼラチン溶液の調製が記載されている。遠心分離により、凝集した界面活性剤および活性炭がLPSと結合して沈殿した。しかしながら、トリトンX-100の曇点を超えて、すなわち、70℃以上、本事例においては90℃で加熱することは、ゼラチンのかなりの加水分解ならびに、機能性、例えば、粘度およびゲル強度の本質的低下をもたらす。かかる高温では、ゼラチンのメイラード反応のためにゼラチンの望ましくない変色も起こり得る。国際公開第2009/154440号の教示では、ゼラチンは加熱工程によって破壊されてゼラチン加水分解物を生成し、すなわち、ゲル化できない。さらに、遠心分離工程は前記方法の産業的適用を難しくする。
【0018】
特開第2005-289841号には、内毒素含量の低いB型ゼラチンの製造方法が記載されている。その方法は、動物組織をpH12で少なくとも5日間、水酸化カルシウムおよび第4級アンモニウム塩の溶液で処理することを含む。かかる塩基性条件ではゼラチンの脱アミノ化が起こる結果、等電点が5~6に低下し、すなわち、B型のゼラチンのみを得ることができる。その後、ゼラチン溶液を酸でpH約4.5~5に中和し、少なくとも65℃の温度での抽出によりゼラチンを得る。こうして得られたゼラチンは、さらに0.2マイクロメートルの膜を介する濾過によって滅菌して、5EU/g未満の内毒素を含有することができる。しかしながら、この方法は、濾過工程で使用する膜の孔径のために、200KDaを超える分子量を有する大きなゼラチン分子には適していない。
【0019】
特開第2004-300077号には、コラーゲンタンパク質をpH10~12で塩基性アルコールおよび/またはアセトンによる処理に付し、それによって前記タンパク質に含まれる内毒素を分解することを含む、コラーゲンタンパク質から内毒素を除去する方法が記載されている。得られた1000EU/g未満のLPSを有するタンパク質は、沈殿によって回収される。かかる高pH値では、脱アミノ化の結果としてタンパク質の等電点が約5~6に低下する。
【0020】
欧州特許第1829946号には、100,000Da以下の平均分子量を有するゼラチン溶液を限外濾過に付することによってゼラチンの内毒素含量を低減する方法が記載されている。この文献には、300,000のカットオフを有する膜の使用が可能であることが記載されているが、かかる大きさのゼラチンは、溶液の粘度のために、効率的にこのように処理することができない。かかるゼラチンの極めて薄い溶液のみが限外濾過に付することができ、その方法を非常に非効率的で費用の掛かるものにしている。限外濾過に関しては100,000Da以下の平均分子量を有するゼラチンのみが、限外濾過に適することが示され、記載されている。
【0021】
国際公開第2012/031916号には、コラーゲンを溶解させずにコラーゲンを水性のアルカリ、酸および酸化剤で処理することを含む、不溶性コラーゲンの内毒素含量を10EU/g未満に低減する方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、ゼラチンおよびリポ多糖を含む水性媒体からのリポ多糖の除去方法、ならびに低リポ多糖含量を有するゼラチンに関する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、今や驚くべきことに、LPSの効率的な除去を可能にするために界面活性剤の不溶性凝集体を形成させる必要なく、ゼラチンについての非加水分解条件下でトリトンX-100のごときミセル形成界面活性剤を用いて、限外濾過または遠心分離の工程を必要とせずに水性ゼラチン調製物からLPSを非常に効果的に除去できることを見出した。ミセル形成界面活性剤を前記界面活性剤の曇点未満の条件下で用いてゼラチン溶液からのLPS除去を達成することができ、前記の曇点抽出技術に比べてさらに改善したLPSの低減がもたらされる、ということが今や見出された。いずれの説明にも拘束されることを望まず、活性炭のごとき固体吸着剤による界面活性剤およびLPSの効果的な吸着は、驚くべきことに界面活性剤の不溶性凝集体の形成に依存せず、それによって、界面活性剤を媒体中のLPSと相互作用させる工程の後に界面活性剤の曇点よりも高く昇温することを不要にし、それによって、より穏やかな条件下でのLPSの除去を可能にする、と考えられる。したがって、LPS除去前のゼラチンと比較して粘度のごときゼラチンの特性を実質的に損なわずに保ちながら非加水分解条件下でゼラチンからLPSを除去するのに適する方法を提供する。
【0024】
この目的のために、本発明は、ゼラチンおよびリポ多糖を含む水性媒体からのリポ多糖の除去方法であって、
1)少なくとも2w/w%のゼラチン、およびリポ多糖を含む、水性媒体を供し、
2)0.01~1.5w/w%のミセル形成界面活性剤を水性媒体に添加し、
3)工程2)の媒体を固体吸着剤と接触させ、
4)工程3)の固体吸着剤を媒体から分離し、
5)ゼラチンを含む水性媒体を回収する、工程を含み、
ここに、工程1)~5)の各々が、68℃以下の温度で実施され、前記温度がミセル形成界面活性剤の曇点未満であり、少なくとも工程2)および3)が、少なくとも30℃の温度で実施されることを特徴とする該方法を提供する。
【0025】
用語「水性媒体」は、水、(水が主として存在している)水混和性溶媒および水の混合物および、水またはかかる混合物を溶媒とするいずれかの溶液を包含することを意図している。しかしながら、媒体は水混和性溶媒を含まないことが好ましい。水性媒体は、いずれかの種類のゼラチン、例えば、ウシ、ブタ、家禽または魚を起源とする、例えば、A型またはB型のゼラチンを含むことができる。LPSを除去すべきゼラチンのブルーム、分子量および粘度の値に制限はない。特にゼラチンは、例えば、ゼラチンと溶媒(例えば、水)とを約30~60分間、ゼラチンの加水分解を回避するために室温または高温、好ましくは68℃以下、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下で混合してゼラチンを膨潤させることによって水性媒体に溶解し、その結果、媒体がゼラチン溶液になる。60~68℃またはそれ以下では、ゼラチンの熱加水分解および可能性のある望ましくない化学反応が回避され、その結果、ブルーム値、平均分子量および粘度などのゼラチンの特性および機能性が、工程1)で提供されるゼラチンに比べて損なわれずに留まる。本明細書において機能性は、本発明の方法の結果としてゼラチンの分子量が最大でも15%、好ましくは最大でも10%、最も好ましくは最大でも5%低下していない場合に、損なわれずに留まると定義される。
【0026】
様々な温度で種々の工程を実施することは大いに十分可能であるが、各工程は最高68℃で実施される。
【0027】
ゼラチンを溶解させるために媒体を68℃を超えて加熱することはできるが、かかる工程は特許請求の範囲に記載の方法に先立って行われることが注目される。しかしながら、機能性を低下させないためにはゼラチンを、水性溶媒、特に、水を68℃を超えるまで加熱せず本明細書に記載の温度を超えるまで加熱しなかった水溶液として、提供することが好ましい。
【0028】
前記媒体にミセル形成界面活性剤が添加され、その結果としてLPSはモノマー化し、前記モノマーは界面活性剤と相互作用して界面活性剤およびLPSのミセル複合体を形成すると考えられる。
【0029】
ミセル形成界面活性剤は、当該技術分野において知られ、例えば、国際公開第2009/15440号に記載されており、その内容をここに出典明示して本明細書の一部とみなす。ミセル形成界面活性剤は、溶液中にミセル(可溶性凝集体)を形成することができる。この目的のためにいわゆる臨界ミセル濃度(CMC)は、それより高い濃度においてミセルが形成され、かつその系に添加した追加の界面活性剤が全てミセルになる、界面活性剤の濃度として定義される。CMCでは、界面に存在する界面活性剤とミセル状態にある界面活性剤との平衡が存在する。前記CMCは温度依存性であり、非イオン性界面活性剤について、温度を下げるとCMC値が増大する(M.J. Schick J. Phys. Chem.、1963、67 (9) 1796-1799)。さらに、温度の上昇は界面活性剤の溶解度の低下をもたらし、界面活性剤がほとんど例外なく不溶性凝集体として存在して、溶液が不透明になるかまたは濁る。これが起こる温度は、いわゆる曇点である。塩濃度の増加は、曇点の低下をもたらす。例えば、1w/w%のトリトンX-100溶液の曇点は、9~23%の(NH4)2SO4または16~25%(すなわち、2.74~4.27M)のNaClの添加によって68℃から室温へと低下する(ArnoldおよびLinke、BioTechniques、43(2007)、427-440)。また、アルコールを用いて曇点を下げることもできる(GuおよびGalera-Gomez;Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 147(1999)365-370)。
【0030】
したがって、本明細書において、用語「曇点」は、界面活性剤が媒体中で不溶性凝集体を形成する温度を示すことを意図する。前記温度は、媒体の条件、例えば、塩濃度に依存する。特定の条件を与えない場合、本明細書において曇点は、1w/w%の水溶液が不溶性凝集体を形成する温度として定義される。したがって、温度が界面活性剤の曇点未満であると記載しているならば、前記温度は68~69℃(すなわち、1w/w%のトリトンX-100溶液について)であり、しかしながら、16~25w/w%のNaCl溶液の場合には前記曇点は室温である。本発明によれば、方法の工程の温度が曇点未満に留まることが方法に重要であり、すなわち、温度は、界面活性剤が溶液の濁りまたは不透明性をもたらさないような温度でなければならない。
【0031】
曇点は、界面活性剤の添加なしで溶液の吸光度を620nmで測定して、想定量の界面活性剤を添加したときに吸光度が増大するか否かを調べることにより、所与の状況下で都合良く決定することができる。曇点を超えると吸光度が増大する。吸光度の測定は、GME2014(96~99頁)の2.4.5章の手順に従って実施することができる。
【0032】
驚くべきことに、曇点を超える温度に上げる必要はないことが見出された。さらに驚くべきことに、工程1)~5)は、ミセル形成界面活性剤の曇点未満の温度で実施するとより効率的である。
【0033】
本発明の場合、前記に説明したような高温での不溶性凝集体の形成は必要でなく、界面活性剤がミセル、すなわち、可溶性凝集体を形成することで十分である。
【0034】
好ましくは、ミセル形成界面活性剤は効率的なLPS除去のためにCMCと等しいかまたはそれを超える濃度で存在し、その結果、吸着剤と結合できる可溶性凝集体が形成される。トリトンX-100の場合、CMCは0.015w/w%である。
【0035】
LPSと界面活性剤との双方が混合した凝集体を溶液中に存在させながら、すなわち、不溶性凝集体を形成する必要なく、界面活性剤の可溶性凝集体とLPSおよびそのモノマーとを固着させることのできる固体吸着剤に、媒体を接触させる。これは、粒子状吸着剤を媒体に添加することによって、または例えば、前記吸着剤を含むフィルタ要素に媒体を通すこと、もしくは媒体を、外面上に吸着剤を有する担体と共に保温することによって、行うことができる。当業者は、水性媒体を固体吸着剤と接触させて吸着剤を媒体から分離する適切な方法を認識している。吸着剤を粒子として媒体に添加する場合には前記分離は例えば、遠心分離または濾過を含み、産業適用性の観点からは濾過が好ましい。好ましい実施形態では吸着剤をフィルタ内に存在させることができ、媒体を前記フィルタまたは一連のかかるフィルタに通し、その一方で場合によっては濾液の収率を最適化すべくフィルタを洗浄することができる。このように、前記の工程3)、4)および5)を1回の濾過工程に組み合わせることができる。別法としては、吸着剤で被覆したロッドまたはビーズのごときより大きな物体を前記媒体中に浸漬して、LPS-界面活性剤複合体の吸着剤への結合を可能にすることができ、その後に媒体から除去することができる。吸着剤をカラム内に堆積させることもでき、そのカラムにゼラチン溶液を通過させて界面活性剤およびLPSを除去することができる。
【0036】
少なくとも工程2)および3)、すなわち、界面活性剤を添加する工程および吸着剤と接触させる工程、好ましくは全工程1)~5)は、少なくとも30℃、すなわち、ゼラチンの融解温度よりも高い温度で実施される。水性媒体が自由流動性の溶液であること、すなわち、測定可能な動的粘度値を有する(すなわち、G''支配的挙動を有する)ことは、好都合である。様々なゼラチンについて粘度およびゲル化温度は異なるものの、ゼラチン溶液は自由流動性であり、少なくとも30℃の温度で十分に処理可能である。自由流動性の溶液は、媒体と吸着剤との最適な接触を可能にするためおよび媒体から吸着剤を確実に適切に分離するために吸着剤と接触させる場合に、好都合である。
【0037】
水性媒体を回収し、必要に応じて例えば、前記のごときLALアッセイを用いてLPS計数を決定できる。
【0038】
ゼラチンの平均分子量は好ましくは1500Da~250kDaの範囲内、またはさらに高い、例えば、300kDaもしくは275kDaであり、この範囲内のいずれかの値を、より小さい範囲を定義するための上限または下限、例えば、2000Da、4000Da、5000Da、15kDaまたは20kDaの下限、および例えば、200kDa、180kDaまたは170kDaの上限とすることができる。例えば、中程度または高いブルーム値のゼラチンを想定する場合、平均分子量は120kDaを超える。ゼラチン加水分解物を想定する場合、平均分子量は70または80kDa未満であり得る。
【0039】
ミセル形成界面活性剤はカチオン性またはアニオン性界面活性剤のごときイオン性界面活性剤とすることができるが、界面活性剤は好ましくは非イオン性界面活性剤である、というのも、かかる界面活性剤はイオン性界面活性剤に比べてより低い濃度でミセルを形成する傾向にあるからである。さらに、イオン性界面活性剤は、イオン結合によってゼラチンと相互作用でき、除去するのがより困難である。好ましくは、ミセル形成非イオン性界面活性剤はエトキシ化界面活性剤、好ましくはアルキルフェノールエトキシレートであり、アルキルフェノールエトキシレートは好ましくは式CxH2x-1-C6H4-O-(C2H4O)nHにより表され、式中、xは4~12であり、nは7.5~14であり、Xは好ましくは8であり、nは好ましくは8~13、より好ましくは8.5~12.5、最も好ましくは9~12であり、特に、トリトンX-100、トリトンX-102またはそれらの混合物である。トリトンX-100およびトリトンX-102を用いて魅力的な結果が得られることが見出された。nの値が高いほど、溶解度が高く曇点が高い界面活性剤が得られるであろうが、かかる長い界面活性剤はLPS除去に対する効果が低いようである。他方、その他の適する非イオン性界面活性剤は、nが3~40であるノニルフェノキシポリエトキシエタノールC15H24O(C2H4O)n、例えば、ノノキシノール-4、ノノキシノール-15およびノノキシノール-30、またはC12~C18脂肪酸のポリエチレングリコールソルビタンモノエステル、例えば、TWEENを含む。CHAPSO(3-([3-コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシル-1-プロパンスルホネートはもう一つの好適な非イオン性界面活性剤である。
【0040】
固体吸着剤は、界面活性剤に結合でき好ましくはLPSにも結合できる当業者に知られたいずれかの適切な吸着剤、例えば、疎水性吸着剤であり得る。吸着剤は好ましくは不溶性であり、適切な吸着剤は、粘土、例えば、(活性化)珪藻土または粘土、フィロケイ酸アルミニウムのごときフィロケイ酸塩、スメクタイト鉱物および、疎水性吸着剤、例えば、活性炭、例えば、Norit SX-PlusもしくはNorit ROX 0.8(Cabot、オランダ)または3M ZetaCarbonフィルタカートリッジ(3M、米国)、例えば、タイプR55SもしくはR30L3Sなどを含む。1以上の吸着剤の混合物を適用することもできる。固体吸着剤は、例えば、ゼラチンを含有する水性媒体に添加することができ、吸着剤に界面活性剤を結合させ好ましくはLPSも結合させた後、吸着剤を例えば、濾過、沈降または遠心分離などによって除去することができる。接触工程は、界面活性剤の適切な吸着を可能にするのに十分な時間行われ、結果的に界面活性剤と、界面活性剤に結合し場合によっては吸着剤にも結合したLPSとが双方とも除去される。好ましくは吸着剤を5分~1時間、より好ましくは10~30分間、水性媒体と接触させる。より長い期間が可能であるが、プロセス効率および、特に60℃または65℃を超える温度を用いる場合のより高リスクのゼラチン加水分解の観点からはあまり望ましくない。5分より短い期間が可能であるが、所望の界面活性剤除去に達するためにはより長期間保温する場合に比べてより多くの吸着剤を使用する必要があり得る。魅力的な実施形態において、吸着工程は、工程2)で実施するのと同様の方法で工程5の回収媒体を再び固体吸着剤と接触させることにより、少なくとも1回繰り返すことができる。
【0041】
好ましくは工程1)~5)の各々は、65℃以下、より好ましくは62℃以下、さらにより好ましくは60℃以下の温度で実施される。前記のごとく、界面活性剤の効率的な吸着および水性媒体からのLPSの除去をもたらすために68℃を超える温度に上げる必要はない。驚くべきことに、65℃、62℃、60℃、58℃または55℃というより低い温度においてさえ効率的な界面活性剤の除去が得られることも見出された。また、様々な温度、但し使用する界面活性剤の曇点よりも高くかつ30℃~68℃の範囲内で、種々の工程を実施することができる。ゼラチンの機能性の維持の観点から、好ましい温度は55℃~65℃、例えば、57℃~60℃または58℃である。
【0042】
少なくとも工程2)および3)、好ましくは全工程1)~5)は、好ましくは少なくとも35℃、より好ましくは少なくとも40℃、さらにより好ましくは少なくとも45℃、少なくとも50℃、最も好ましくは少なくとも55℃の温度で実施される。温度が高いほどゼラチン溶液は液体状であり、すなわち、粘性が低く、それは、溶液の取り扱いおよび吸着剤との接触を向上させる。
【0043】
媒体のpHは、好ましくは3.5~9.0、より好ましくは3.5~8.0、4.0~8.0、4.0~6.0、さらにより好ましくは4.5~5.5である。pHが3.5~4より低いとゼラチンは、特にゼラチンの融点を超える温度において、加水分解の影響を受けやすくなる。したがって、媒体のpHはこれらのpH値よりも高いことが好ましい。
【0044】
ゼラチンを、その機能性を著しく損なうことなく低いpHで保温または保持できるが、それは温度および保温時間に依存する、ということは当業者に知られている。機能性を損なわないためには、pHが低ければ低いほど、温度を低くしなければならず、かつ/または保温時間を短くしなければならない。しかしながら、当業者であれば、ゼラチンの加水分解を回避するためにpH、時間および温度に関する適切な条件を決定できるであろう。非常に驚くべきことに、低pHで方法を実施するとさらにより効率的にLPSが除去されることが見出された。もちろん、方法を低pHで、すなわち、例えば、58℃、60℃または65℃を超えない適度な温度で方法を実施することによって、実施する場合、ゼラチンの加水分解を回避するために注意を払わなければならない。このためには、ゼラチンを含む水性媒体のpHは、方法工程全体に亘って好ましくは4.0~6.0、より好ましくは4.5~5.5である。かかるpHでは、温度は約57~58℃であることが好ましい。方法の間、媒体がかかる低pHにある合計時間は、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらにより好ましくは30分以下である。
【0045】
工程1)の水性媒体は、いずれのゼラチン濃度を含んでもよい。好ましい実施形態において、工程1)の水性媒体は、少なくとも2w/w%、好ましくは少なくとも8w/w%、より好ましくは少なくとも12w/w%の溶解したゼラチン、さらにより好ましくは少なくとも20w/w%のゼラチンを含む。水性媒体は、ゼラチン分子のサイズに依存して30w/w%以下またはさらに高い、例えば、37w/w%の溶解したゼラチンを含んでもよい。低ゼラチン濃度を持つ水性媒体は、高ゼラチン濃度を有する媒体よりもゲル化温度が低く、より低い温度で方法を実施することを可能にし、それは、低pHで保温を実施すべき場合に好都合となり得る。水性媒体は30~37%を超えると、適切な処理、特に吸着剤の接触および除去を行うには粘性になりすぎる可能性がある。ゼラチン加水分解物のごとき大きさが比較的小さいゼラチンを使用する場合にのみ、濃度を約40w/w%まで高めることができる。かかる高濃度ゼラチン溶液の粘度を低減するために温度を上げることは、望ましくないゼラチン加水分解ならびに分子量、粘度およびブルーム値の低下をもたらし得る。
【0046】
工程2)において、ゼラチン-対-添加する非イオン性界面活性剤の重量比率は、好ましくは2000:1以下、より好ましくは500:1以下、さらにより好ましくは250:1以下、最も好ましくは50:1以下である。ゼラチン-対-添加する非イオン性界面活性剤の重量比率は、好ましくは50~5:1である。重量比率がより高い、すなわち、相対的により多くのゼラチンが存在する場合、全てのLPSが界面活性剤に結合するわけではなくなる。他方、比率がより低いと、ゼラチンの収率が損なわれ(imparted)かねなく、または高レベルの界面活性剤における吸収が最適以下となる。かかる場合、最適な界面活性剤除去のためにはより多くの回数での吸着が必要となり得る。しかしながら、LPSは吸着剤(特に、活性炭の場合)に対してより強く結合する傾向があり、1回の工程でできるだけ多くの界面活性剤を除去するために通常は界面活性剤に比べて過剰の吸着剤を使用することが選択される。
【0047】
方法の工程2)では、界面活性剤が好ましくは0.015~1.0w/w%、より好ましくは0.020~0.50w/w%の濃度まで添加され、媒体中でLPSと結合させた後でのその適切な除去が可能であり、効率的プロセス能力のための高ゼラチン含量が依然として可能である。界面活性剤の適切な濃度は、ゼラチン中のLPS含量に適合させることもできる。出発ゼラチン材料が既に比較的低いLPS含量を有するならば、(CMC値を大きく超えない)比較的低い濃度の界面活性剤が必要とでき、これは、界面活性剤の除去をより容易なものにする。
【0048】
方法の工程2)は、界面活性剤へのLPSの適切な結合を可能にするために、好ましくは界面活性剤の添加後少なくとも1分間、より好ましくは2分~1時間、さらにより好ましくは5~30分間、最も好ましくは15~30分間、媒体を保温することを含む。特に60℃を超える余りも長い保温は、ゼラチン加水分解および機能性(ブルーム、粘度)低下のリスクを増大させることになる。
【0049】
界面活性剤および媒体からのLPSの最適な除去をもたらすために、工程3)および4)は好ましくは、工程2)の後に得られた媒体を、固体吸着剤を含む1以上のフィルタ要素に通すことを含む。活性炭を含むフィルタシステム、例えば、3M ZetaCarbonカートリッジフィルタのタイプR55SまたはR30L3S(3M、米国)が非常に適していることが判明した。必要に応じてゼラチンを濾液から例えば、単離によってさらに回収することができる。かかる濾過工程は、内毒素含量の低いゼラチンの想定形態での回収に既に備えている、すなわち、更なる回収工程を必要としないものであってもよい。その場合、工程3)、4)および5)は、工程2)の後に得られた媒体を、固体吸着剤を含む1以上のフィルタ要素に通すことを含む。
【0050】
もう一つの実施形態において、方法の工程3)では、固体吸着剤を界面活性剤に対する重量比率で好ましくは少なくとも2.5:1、より好ましくは少なくとも3.0:1、最も好ましくは少なくとも3.5:1で媒体に添加する。好ましくは、固体吸着剤を0.1~3w/w%、好ましくは0.5~1w/w%の濃度で媒体に添加する。フィルタ要素またはフィルタシステムを使用する場合には、同様の量の吸着剤をフィルタシステムに使用することが好ましくなり得る。
【0051】
回収工程5)は好ましくは固体吸着剤を媒体から分離する濾過を含む。この実施形態は、ゼラチンおよび界面活性剤を含む水性媒体に吸着材料を、例えば、粒子材料として混合する場合に好都合である。余り好ましくはないが、前記のごとく吸着剤を遠心分離すること、または担体などに結合させることもできる。前記のごとく、吸着材料を含むフィルタ要素を使用することによって濾過工程を工程3)および4)と組み合わせることもできる。
【0052】
本発明によれば、塩の存在は本発明を実行するのに必要でないため、低塩条件で作用させることが可能である。例えば、本発明の方法で使用するための想定界面活性剤の曇点を下げるために、塩を含むことは可能であるが、これは必要なことではない。これに対し、方法工程の条件は使用する界面活性剤の曇点未満で実施されることになるため、曇点を低下させる必要がない。さらに、界面活性剤の曇点に影響を及ぼすために必要な高い塩濃度は、最終的な精製ゼラチンにおいて好ましくなく、その機能性に影響し得る。
【0053】
したがって、本発明の魅力的な実施形態では、工程1)~5)の間、水性媒体は、100mM以下、好ましくは80、70、60または50mM以下、最も好ましくは40、30または20mM以下の塩含量を有する。したがって、いずれの脱塩工程を含む必要もなく、塩含量が低く内毒素含量が低いゼラチン溶液を提供することが可能である。このためには、工程5)の回収媒体は好ましくは100mM以下、より好ましくは80、70、60または50mM以下、最も好ましくは40、30、20mM以下の塩含量を有する。
【0054】
本発明の方法は遠心分離工程を必要とせずに低内毒素含量を有するゼラチンをもたらすため、本発明の方法は遠心分離工程を含まないことが好ましい。かかる遠心分離工程は、内毒素含量の低いゼラチンの大規模な回収を困難で費用の掛かるものにする。本発明の方法は例えば、濾過によって低内毒素ゼラチンを提供できるため、遠心分離工程を回避することが好ましい。
【0055】
本発明の方法は、面倒な限外濾過工程を必要とせずに低内毒素含量を有するゼラチンをもたらすため、本発明の方法は限外濾過工程を含まないことが好ましい。これは、費用対効果の観点から有益であるばかりでなく、限外濾過膜をゼラチンが通過しない100kDa以上、例えば、150kDaまたは200kDaまたは250kDa以上の平均分子量を有する大きなサイズのゼラチン、例えば、高ブルームゼラチンを得ることも可能である。
【0056】
さらに、限外濾過を用いた場合の収率は著しく低い。もう一つの実施形態において、工程1)~5)の間、水溶液は実質的にアセトンを含まず、好ましくはいずれのケトンも含まない。当該技術分野で知られた方法とは対照的に、本発明の方法は、事実上望ましくない汚染物質であるいずれのケトンの添加も必要としない。もう一つの実施形態において、水溶液は、アルコール、特にエタノールを実質的に含まない。
【0057】
特定の実施形態において、方法はさらに、水性媒体を酸化剤と共に保温することを含む。驚くべきことに、特許請求した方法の間、特に工程1)、2)または3)のいずれかの間、好ましくは工程2)の間、酸化剤を媒体に添加すると、LPS含量をさらに低減できることが見出された。
【0058】
酸化剤は、過酸化水素および過酢酸ならびにそれらの混合物から選択されることが好ましい。過酸化水素が最も好ましい。
【0059】
酸化剤は、0.5~2.5w/w%の濃度で添加することが好ましい。
【0060】
特許請求した方法において、工程1)の水性媒体は、1000EU/gゼラチン乾燥重量またはそれ未満のリポ多糖含量を有することが好ましい。LPS含量がより高い場合には、例えば、全血からの内毒素除去について欧州特許第0739630号またはより一般的には前記のHirayamaおよびSakataによって記載されるごとく、例えば、イオン交換クロマトグラフィー工程によって媒体を前処理することができる。より高いLPS含量を有するゼラチン調製物から出発し、反復工程2)および3)において新鮮な材料を用いて工程2)~5)を繰り返すことによって本発明の方法を実施することも可能である。工程5)の水性媒体は、次いで、必要に応じて新たな工程における前記媒体を提供するために使用することができる。
【0061】
工程1)の出発材料が1500~1000EU/g未満のLPS含量を有するならば、記載の5工程1回で、ゼラチン1グラム当たりリポ多糖を100未満、50未満、20未満、10未満、5未満、さらには2未満、さらには1未満のEU(EU/g)で含む精製ゼラチンを得ることができる。本発明による方法は、記載の5工程1回で、工程1)の出発材料中のLPS含量に比べて多くとも50分の1のLPS、好ましくは多くとも100分の1、より好ましくは多くとも150分の1、さらにより好ましくは多くとも200分の1、最も好ましくは多くとも250分の1のLPSを含む精製ゼラチンを提供する。用語EUは、当該技術分野において知られており、「内毒素単位」を示す。1EUは、100pgの大腸菌リポ多糖とおおよそ等価であり、約104~105個の細菌に存在する量である。本明細書において、用語EU/gは、単位ゼラチン乾燥重量当たりのEU計数を示す。
【0062】
また、本発明は、実質的に第4級アンモニウム塩(slats)を含まず、100,000Daを超える、最も好ましくは120,000Daを超える分子量を有するゼラチン由来分子を含み、リポ多糖含量が、100EU/g未満、より好ましくは50EU/g未満、さらにより好ましくは20EU/g未満、さらにより好ましくは10EU/g未満、さらにより好ましくは5EU/g未満、さらにより好ましくは2EU/g未満、最も好ましくは1EU/g未満である、本発明の方法によって得ることのできるゼラチンに関する。本発明がなされて初めて、かかる低内毒素ゼラチンを調製することが可能となった。公知の限外濾過法はゼラチン分子の大きさが100,000Da以下であるゼラチンを提供するため、かかるゼラチンは、100kDaを超える分子量を有するゼラチン由来分子を含まない。かかるゼラチンはせいぜい低ブルームゼラチンまたは加水分解物である。高濃度の第4級アンモニウム塩による処理によってのみ、B型の低内毒素ゼラチンを得ることが可能であることが示されている。しかしながら、塩の存在は、ゼラチンの機能性に影響し得る。他方、本発明は、第4級アンモニウム塩を使用する必要なく、高分子量の低内毒素ゼラチンをも提供する。「ゼラチン由来分子」なる用語は、例えば、当該技術分野において知られるごとくゼラチンの調製のために処理された原料中のコラーゲン基質の一部であった、タンパク質およびペプチド分子を包含することを意図する。
【0063】
もう一つの実施形態において、本発明は、リポ多糖含量が2EU/g未満、好ましくは1EU/g未満である、本発明の方法によって得ることのできるゼラチンを提供する。かかる低いLPS含量を有するゼラチン、例えば、A型およびB型の双方のゼラチンは、本発明の方法によって得ることができ、他方、当該技術分野における方法はより高いLPS含量をもたらす。
【0064】
特定の実施形態において、本発明は、100,000Daを超える、最も好ましくは120,000Daを超える分子量を有するゼラチン由来分子を含み、リポ多糖含量が100EU/g未満、より好ましくは50EU/g未満、さらにより好ましくは20EU/g未満、さらにより好ましくは10EU/g未満、さらにより好ましくは5EU/g未満、さらにより好ましくは2EU/g未満、最も好ましくは1EU/g未満である、本発明の方法によって得ることのできるA型の、すなわち、等電点が7を超える、好ましくは8を超えるゼラチンに関する。当該技術分野では、かかる低内毒素含量を有するA型ゼラチンのみが、限外濾過により調製され、結果として100kDaより小さいゼラチン分子となる。他方、本発明は、より大きなゼラチン分子を含みながらなおも内毒素含量が非常に低いA型ゼラチンを初めて提供する。
【0065】
本発明のゼラチンは、好ましくは、平均分子量が1500Da~250,000Da、より好ましくは2000~200,000Da、さらにより好ましくは5000~180,000Da、最も好ましくは20,000Da~170,000Daである。ゼラチンは、好ましくは、平均分子量が80,000Daを超える、好ましくは100,000Daを超える、最も好ましくは120,000Daを超える。
【0066】
魅力的な実施形態において、ゼラチンは実質的にアセトンを含まず、好ましくはいずれのケトンも含まない。さらに、ゼラチンは、アルコール、特に塩基性アルコールを実質的に含まないことが好ましく、また、第4級アンモニウム塩を実質的に含まないことが好ましい。
【0067】
さらに別の実施形態において、本発明は、少なくとも2w/w%の本発明のゼラチンを含む水性媒体であって、100mM以下、好ましくは50mM以下、最も好ましくは20mM以下の塩含量を有する、媒体に関する。水性媒体は、アセトンおよび/もしくは第4級アンモニウム塩、ならびに/またはアルコール、特に塩基性アルコールを、実質的に含まないことが好ましい。水性媒体は好ましくは、少なくとも6w/w%、好ましくは少なくとも10w/w%、より好ましくは少なくとも15e/e%、最も好ましくは少なくとも20w/w%のゼラチンを含む。
【0068】
これより、本発明を非限定的な実施例および図によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、25℃でのゲル化水溶液の表面張力に対する界面活性剤濃度の効果を示すグラフである。トリトンX-100のCMCは、水中での前記CMCに等しく0.015~0.018であると見出される。
【
図2】
図2は、溶液からトリトンX-100界面活性剤を除去する吸着剤の比率の関数としてゼラチン水溶液の表面張力を示すグラフである。
【
図3】
図3は、精製に対しての用いた様々なトリトン種のポリオキシエチレン部分の長さの効果を示すグラフである。X軸は、C
8H
15-C
6H
4-O-(C
2H
4O)
nHの数字nを表し、Y軸は、精製後におけるLPSを含有するゼラチン中のLPS含量をEU/gで示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
実施例
様々な実施例で用いたゼラチンの全体的な概要をテーブル1にリストする。
【0071】
ゼラチン特性を測定する分析方法は、GME10に記載されている。
【0072】
トリトンX100のごとき界面活性剤がLAL分析結果を隠しかねないため、実施例において界面活性剤の除去をモニタリングした。詳細については実施例4を参照されたい。
【0073】
特記しない限りは、混合は、ドイツのIKA WerkeからのR015型出力の水浴混合器と長さ4~5cmの標準的な磁気撹拌バーとを用いて750rpmの速度で実施した。
【0074】
特記しない限りは、示したゼラチンの重量には10~13w/w%の含水量が含まれる。
【0075】
実施例1
様々なLPS含量のゼラチン水溶液からの内毒素精製
水700mlと共に、約1000EU/gゼラチン~約34,000EU/gゼラチンで変化させた様々な初期LPS含量を有するゼラチンバッチ1、3、4、5、6および8、15、16および17を50g計量することによって、6.66w/w%のゼラチン溶液を調製した(テーブル1.1参照)。テーブル1に示すゼラチンは、10.3~12.6w/w%の含水量を有する。したがって、乾燥物基準での実際のゼラチン含量は87.5~89.7%である。
【0076】
混合物を周囲温度で30分間保持してゼラチンを膨潤/水和させた。その後、速度750rpmで30~45分間の定常的混合下、最高60℃まで温度を上げることによってゼラチンを溶かした。ゼラチン溶液のpHは5.2~5.6であると測定され、さらなるpH調整は行わなかった。試料を採取し、初期LPS含量を測定した。米国のCharles RiverからのEndosafe LAL法と、Hyglos GmbH(ドイツ)からのEndoZyme組換え因子C法とを双方とも用いて精製前後のゼラチン中のLPSレベルを分析した。
【0077】
製造業者の指示に従って双方の方法を用いてLPS含量を決定した。
【0078】
LPS分析のために、1000mgのゼラチンをパイロジェンフリーの脱イオン水40.0mlに溶解させた。LPS分析を行う前に、溶液を55℃にて30~45分間加熱し、40℃に調節し、適切に希釈することによってゼラチンを完全に溶解させた。
【0079】
次に、1.4g(0.18w/w%)のトリトンX100(Carl-Roth、ドイツ、製品番号3051.4)をゼラチン溶液に添加し、そのゼラチン-トリトン(Trion)X100溶液を、速度750rpmの定常的混合下で75℃にて30分間置いた。
【0080】
【0081】
その後、最低5.0gの活性炭(Norit SX-Plus、キャボット、オランダ)を添加し(0.7w/w%)、続いて60℃でさらに30分間混合(500~1000rpm)した。次に、溶液を0.45μmフィルタ(Phenex RC 26mm、0.45μm(Phenomenex、オランダ))で濾過して活性炭を除去し、精製溶液を直接LPS分析するために40℃に冷却するかまたは、-20℃で凍結させてChrist Alpha 2-4LD Plus凍結乾燥機(MartinChrist、ドイツ)を用いて凍結乾燥させた。凍結乾燥真空条件:0.04mbarおよび-87℃で少なくとも24~48時間、溶液が約4~6%の含水量に乾燥するまで。内毒素分析前に水分補正は行わなかった。
【0082】
Phenex 0.45μmフィルタでの初期(未精製)ゼラチン溶液の濾過は、ゼラチン中の初期LPSレベルに影響しないかまたは当該レベルを低減しなかった。
【0083】
テーブル1.2のデータから、非常に効率的なLPS除去が出発材料から得ることができると分かる。内毒素含量がわずか2EU/g以下であるゼラチンを得るためには、1500EU/g以下の内毒素を有するゼラチン溶液から出発することが好ましい。
【0084】
【0085】
実施例2:
界面活性剤濃度の変更
ほぼ同じ平均分子量および粘度を有するゼラチンバッチ1、2および15を用いて、3種の6.66w/w%のゼラチン溶液を実施例1に記載のごとく調製した(テーブル1参照)。様々な量のトリトンX100(Carl-Roth、製品番号3051.4)を溶液に添加し(テーブル3参照)、続いて最高60℃で30分間混合した。その後、試験2-3-4-5に5.0g(0.7w/w%)の活性炭(Norit SX-Plus)を添加した。その後、最高60℃にて30分間500~1000rpmで混合し、0.45μmフィルタ(Phenex RC 26mm、0.45μm)を用いて実施例1に記載のごとく除去した。全てのトリトンX100が精製ゼラチン溶液から除去されることを保証するために、試験6については活性炭量をそれぞれ20gに増加させた。表面張力分析は、トリトンX100濃度がCMCよりも低い値に低下したことを実際に裏付けた。
【0086】
精製後、ゼラチンを-20℃で保存し、実施例1に記載のごとく凍結乾燥させた。凍結乾燥ゼラチンをLALによるLPSの分析に用いた。
【0087】
テーブル2は、そのCMCを上回るトリトン濃度が内毒素除去に有益であると示されることを示す。
【0088】
【0089】
実施例3
LPS精製剤としての珪藻土
6.66w/w%のゼラチン1および9の溶液600mlをpH5.5で調製し、実施例1に記載のごとくトリトンX100で処理した。最高温度60℃での30分間の保温工程後、活性炭に代えて、予め脱イオン水で洗浄した珪藻土(Claracel CBL)70gを添加し、続いて4時間50℃で連続混合した。4時間後、濾過(Whatman Glass microfiber グレードGF/C、直径55mm、2mm。Schleicher & Schuell、ドイツ)により珪藻土を除去した。濾過したゼラチン溶液を-20℃で一晩保存し、続いて凍結乾燥させた(凍結乾燥条件については実施例1参照)。未精製の6.67%のゼラチン1および9の試料もまた-20%で保存して凍結乾燥させた。精製後および未精製の凍結乾燥ゼラチン試料についてLPS含量を分析した(テーブル3参照)。
【0090】
珪藻土を吸着剤として用いてかなりの量の内毒素をゼラチンから除去することができる。しかしながら、LPS精製は、活性炭を使用する場合に比べていくぶん効率が低い(ゼラチン1参照)。しかしながら、予備精製工程で珪藻土を適用することも可能である。
【0091】
【0092】
実施例4:
吸着剤量の変更
吸着剤による界面活性剤の除去効率は、ゼラチンを含む媒体に界面活性剤を添加する前に試料の表面張力を測定することによって分析し、吸着剤による処理およびその除去後に測定した表面張力と比較する。表面張力は、界面活性剤(例えば、トリトンX100)の存在下で低下する。
図1は、1w/w%のゼラチン溶液の65~67mN/mの初期表面張力が、溶液の重量に基づいて0.001w/w%のトリトン濃度から始まって著しく低下することを示す。トリトンX100の臨界ミセル濃度は0.014~0.0.18w/w%である。
【0093】
表面張力は、Digidrop(GBX、フランス)接触角/表面張力分析機器を用いて分析した。針直径は0.81mmであり、滴形成速度は0.384μl/秒であった。最大滴体積は9.900μlである。表面張力はds/deの式を用いて計算した。
【0094】
多量の界面活性剤を使用する場合、前記界面活性剤を溶液から除去するためにはそれに対応してより多量の吸着剤が必要となり得る。第1回目の吸着で除去されなかったいずれの残留界面活性剤も除去するために、純粋なゼラチンに等しい65~67mN/mの表面張力値が得られるまで吸着工程を繰り返すことも可能である。
【0095】
水700ml中の50g、60gおよび100gのゼラチン7(テーブル1参照)の溶液を実施例1に記載のごとく調製し、結果としてそれぞれ6.66、8.0および12.5w/w%のゼラチン濃度を得た。添加したトリトンX100(Carl-Roth)の量は、6.67%ゼラチン溶液については1.4g(0.18w/w%)、8%ゼラチン溶液については1.7g(0.216w/w%、および12.5%のゼラチン溶液については2.8g(0.36w/w%)であった。混合は、500~1000rpmの速度にて60℃で行った。
【0096】
トリトンX100濃度の増加に伴って、添加する活性炭(Norit SX-Plus)の量を変化させ、また増加させた(テーブル4参照)。活性炭の添加後、混合物をさらに30分間60℃で速度500~1000rpmにて混合した。最後に溶液を、0.45μmフィルタ(Phenex RC 26mm、0.45μm)を用いて実施例1と同じように濾過した。濾過した溶液を用いて表面張力を測定した(テーブル4参照)。テーブル4および
図2から、活性炭:トリトンX100の重量比率が2.5以上であると、界面活性剤を添加しない初期ゼラチン溶液に近い表面張力になることが分かる。3以上、特に3.5以上の重量比率では表面張力が初期ゼラチン溶液のものと等しく、界面活性剤が実質的に完全に除去されたことを示している。より高い(3.5を超える)活性炭:トリトン比率は、トリトンX100のさらにより効率的な低減をもたらす。
図2も参照されたい。
【0097】
【0098】
実施例5
温度変更、LPS除去と機能性とに対する影響
実施例2に記載したのと同じ試験をゼラチン1に対して実施した。5.5の値へのpH調節を行った。トリトンX100の添加後、溶液を60℃で15分間混合し、その後に温度をテーブル5にリストした温度に調節し、続いて500~1000rpmでさらに最大30分間混合した。トリトンX100の2つの異なる濃度、0.18および0.026w/w%を用いた。
【0099】
その後、実施例1に従って、活性炭による処理および溶液濾過を実施した。LPS分析に加えて、処理後のゼラチンの機能性の指標として溶液の粘度およびゼラチンの平均分子量の分析も行った。
【0100】
粘度は、GME10に記載の方法に従って分析した。分子量分布は、前記のOlijveらに従って測定した。
【0101】
前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。
【0102】
【0103】
90℃の温度にてゼラチンが加水分解され、その機能性を失うことが明確に分かる。粘度は4.4mPasの初期値から0.8mPasに低下し、平均分子量は130から46kDaに低下し、すなわち、65%の分子量低下である。80℃の温度でも同様に分子量および粘度の低下が著しい。しかしながら、65℃以下(トリトンX100の曇点未満)の温度では、著しい加水分解が防止され、機能性が維持され、そして驚くべきことに、非常に効率的なLPS除去が認められ、それは、高温での場合に比べて、等しいかまたは、トリトンX100の濃度が低いときにわずかにより良好でありさえする。
【0104】
実施例6
pHおよび温度の変更、LPS除去および機能性に対する影響
この実施例は、実施例5に記載のごとく実施した。ゼラチン1、2、3、7、8および10を精製に用いた。温度に加えて精製溶液のpHも調節および変更した。トリトンX100(0.026および0.18w/w%)の添加後、温度をテーブル6.1に示すごとく57.5℃~90℃に調節し、続いて500~1000rpmで30分間混合した。その後、5.0グラムの活性炭(Norit SX-Plus)を添加し、溶液をさらに15~30分間500~1000rpmで混合した。次に、先の実施例に記載のごとく0.45μmフィルタを用いて溶液を濾過した。前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。テーブル6.1において、ゼラチン7についてpH4.5にpH調節して温度変更を実行した。より低いpH値ではゼラチン加水分解に関して温度がはるかに非常に重要になるであろう。内毒素(LPS)分析に加えて、可能なゼラチン加水分解およびゼラチン特性の低下を観察するために分子量および粘度値も、精製後に測定した。粘度および分子量分布の分析は、実施例5で言及した方法を用いて測定した。
【0105】
【0106】
65℃を超える、特に80℃および90℃の温度、ならびに4.5の低pHは、用いた試験条件下での分子量および粘度の低下に導くことが認められる(テーブル6.1参照)。したがって、ゼラチンは、方法の工程の間、15分間以下で65℃以下に保持することが好ましい。最も好ましくは、方法の工程の間、pHが4.5以下、例えば、4.0であるならば、温度は60℃を超えない。
【0107】
テーブル6.1の結果を確認するために、57.5℃の温度、すなわち、ゼラチンが加水分解する温度(60℃)未満および超える温度でゼラチン2、3および7を用いてより広範囲のpH範囲を試験した。
【0108】
適用したpH範囲をテーブル6.2にリストする。ゼラチン溶液のpH調整は、トリトンX100添加前に、0.1Mの塩酸(シグマアルドリッチ、258148-500ML)または0.1MのNaOH(シグマアルドリッチ、米国、221465-500G)を用いて行った。塩酸に代えてその他の酸、例えば、硫酸(シグマアルドリッチ)もまたpHを下げるために使用できる。pH調節後の塩化物濃度は50mM未満と観測されるはずであり、その濃度は、使用する界面活性剤の曇点に影響しない濃度である。
【0109】
ゼラチン溶液調製ならびに、トリトンX100(0.18w/w%)、活性炭(5グラム 0.7w/w%)の添加、ゼラチン試料の混合および濾過は、先の実施例に記載の方法と同様であった。前記のごときLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。57.5℃でのLPS精製結果ならびに精製後に測定した分子量および粘度をテーブル6.2に示す。
【0110】
57.5℃でのpHの変更は、ミセル水相の相分離をもたらさなかった。
【0111】
【0112】
4.5を超えるpH値では、57.5℃でのpHの変更は分子量および粘度の限界のある低下をもたらす(テーブル6.2参照)。分子量/粘度の低下のない有意なLPS精製は、4.5~5.6のpH値において得られる。特にゼラチン7がそうである。
【0113】
分子量および粘度の低下なしでの精製効率を比較するために、種々のゼラチン(1、2、3、7、8、10)を57.5℃の温度でpH4.5および5.5で試験した(テーブル6.3)。ゼラチン溶液の調製は前記のごとく実施した。必要に応じて、0.1Mの塩酸(シグマアルドリッチ、258148-500ML)または0.1MのNaOH(シグマアルドリッチ、米国、221465-500G)でpHを4.5および5.5に調節した。塩酸に代えて、その他の酸、例えば、硫酸(シグマアルドリッチ)もまた用いることもできる。
【0114】
トリトンX100の用いた濃度は0.18w/w%であり、最低5gの活性炭を混和した。先の実施例に記載したごとく、LPS分析前にゼラチン溶液を濾過した。前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。
【0115】
4.5のpH値では、5.5に比較してLPS精製の改善が明らかである。初期LPS値が高いほど、より低いpHで改善されるLPS精製の影響が大きいようである。より低pHは、低LPSレベル(<20EU/g)を必要とする場合に好ましい。57.5℃で試験したゼラチンについて、pH4.5と5.5との間で分子量分布に著しい変化は認められなかった(値を示さず)。
【0116】
【0117】
実施例7
界面活性剤の曇点を超えるまたは未満でのLPS除去
目的は、曇点を超える条件と比較した、用いる界面活性剤の曇点よりも低い条件でのゼラチン溶液からのLPS除去を測定することであった。条件を類似したままに保つために、トリトンX-100(曇点68℃)およびトリトンX-114(シグマアルドリッチ、曇点23℃)を界面活性剤として用いると同時に57.5℃の温度条件を用いた。
【0118】
ゼラチン7を用いて、先の実施例に記載のごとくゼラチン溶液を調製した。適用したpHは4.7であった。トリトンX-100、トリトンX-114またはそれらの混合物を0.18w/w%の濃度で界面活性剤として用いた。水性ゼラチン媒体に界面活性剤を添加した後、温度を57.5℃に調節し、続いて15~30分間混合した。活性炭を少なくとも5グラム(0.7w/w%)の量で添加し、さらなる混合を15~30分間行った。濾過後、先の実験で記載のごとく、LPS分析前にゼラチンを前記のごとく凍結乾燥させた。
【0119】
結果をテーブル7に示す。トリトンX-100をその曇点を超える温度、すなわち、75℃の温度で用いる場合には依然として27EU/gのLPSを含有しているゼラチン溶液が得られ、それに比べて方法を57.5℃、すなわち、前記曇点未満で実施した場合にはわずか15EU/gであることが分かる。これは、方法を界面活性剤の曇点未満で実施する場合にはLPS除去がより効率的であることを意味する。さらに、75℃ではゼラチンの著しい加水分解が起こり、その結果、粘度および機能性の望ましくない低下がもたらされる(例えば、実施例6参照)。75℃では粘度が5.8mPasから約4.9mPasに低下したが、他方、57.5℃では粘度が5.8mPasのままであった。57.5℃でのトリトンX-114の使用は、依然として114~150EU/gのLPSを有しているゼラチン溶液をもたらし、75℃、すなわち、各界面活性剤の曇点を超える条件でのトリトンX-100に比べてトリトンX-100がより良好なLPS除去をもたらすことを示した。同じ温度(57.5℃、すなわち、トリトンX-100の曇点未満であるがトリトンX-114の曇点を超える)では、LPS除去の差がさらにより目立っている。
【0120】
混合実験から、トリトンX-114に比べてトリトンX-100の相対量が多いほどLPS除去がより良好であることは明らかである。
【0121】
【0122】
実施例8
LPS除去に対するゼラチン濃度の効果
ゼラチン7を用いて、ゼラチン濃度を6.66w/w%から10w/w%および15w/w%まで変化させて実施例1に記載の試験を行った(テーブル8参照)。トリトンX100の濃度は、ゼラチン濃度と等しい割合で増加させた。6.67%のゼラチン濃度には1.4g(0.18w/w%)のトリトンX100を適用した。10w/w%のゼラチン溶液では2.1g(0.27w/w%)、15w/w%のゼラチン溶液では3.2g(0.40w/w%)のトリトンX100を用いた。トリトンX100に合わせて、添加する活性炭の量も、6.66%のゼラチン溶液における5g(0.7w/w%)から、10%(w/w)および15%(w/w)のゼラチン溶液についてそれぞれ7.5g(1.05w/w%)および11.3g(1.6w/w%)へと増加させた。種々の精製工程の間、混合は500~1000rpmで15~30分間行った。ブフナー漏斗を用いる、2μmフィルタ(Whatman(登録商標)Glass microfiber filters グレードGF/C、直径55mm、2μm(Schleicher & Schuell)での濾過を用いてゼラチンを濾過した。前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。
【0123】
ゼラチン濃度が高い程、活性炭を除去するための濾過工程は多くの労力を要する。LPS/LAL分析に影響し得る、残存している可能な痕跡量のトリトンX100を確認するために、前記実施例4に記載のごとく表面張力測定を実施した。表面張力の結果は、トリトンX100を含有しない元来のゼラチンに等しい/近い。
【0124】
【0125】
LPS精製はゼラチン濃度によりほとんど影響されない。高い15w/w%のゼラチン溶液でも効果的な精製を測定した。
【0126】
実施例9:
様々なトリトンの比較
ゼラチンバッチ5を用いて、実施例1に記載のごとき6.66w/w%ゼラチン溶液を調製した。0.18w/w%の様々なトリトン種をゼラチン溶液に添加し、続いて55℃で30分間混合した。その後、5.0g(0.7w/w%)の活性炭(Norit SX-Plus)を添加し、55℃で30分間500~1000rpmで混合し、0.45μmフィルタ(Phenex RC 26mm、0.45μm)を用いて実施例1に記載のごとく除去した。精製後、ゼラチンを-20℃で保存し、実施例1に記載のごとく凍結乾燥させた。精製および未精製の液体ゼラチン試料を-20℃で保存し、LPS分析前に凍結乾燥させた。
【0127】
式C8H15-C6H4-O-(C2H4O)nHを有し、式中、nが8~13であるトリトン種では、20EU以下の低LPS含量を達成できることが分かった。精製ゼラチンは、精製前の初期ゼラチンと同程度の分子量および粘度を有していた。
【0128】
【0129】
図3は、トリトンX100、トリトンX102、トリトンX114およびトリトンX165をゼラチンの精製に用いる場合のグラフを示す。グラフは、n値が8~13、具体的には8.5~12.5にある場合に約20EU/g以下のより良好な精製が得られることを示している。トリトンX-114(nが7.5)とトリトン-X165(nが16)との双方の使用もまたゼラチン含有LPS中のLPS含量のレベルを低下させたものの、8~13の「n」値を有するトリトン、例えば、トリトンX-100およびトリトンX-102で得られたレベルには達しなかったことが注目される。
【0130】
実施例10:
B型骨ゼラチンの精製
試験条件は先に記載の実施例に等しい。
6.66%(w/w)ゼラチン12、13および14溶液を調製し、温度を57.5℃に保った。ゼラチン溶液のpHは調節しなかった。トリトンX100を0.18w/w%の濃度まで添加し、30分間混合した。その後、5.0g(0.7w/w%)の量の活性炭を添加し、続いてさらに15分間混合した。最後に、前記のごとくゼラチン溶液を濾過した。温度は57.5℃に保った。濾過したゼラチン溶液のLPSレベルを直接測定するか、または最初に-20℃で凍結させた後、先の実施例に記載のごとく凍結乾燥させた。
【0131】
トリトンX100精製方法は、B型ゼラチンを20EU/g未満のレベルまで精製するのにも非常に有効である。出発ゼラチン中のLPSレベルが低い程、低い精製LPSレベルが得られる。
【0132】
【0133】
実施例11:
様々なpH値でのB型骨ゼラチンの精製
条件は、実施例10で用いた条件に等しかった。ゼラチン12溶液を調製し、0.1Mの塩酸または0.1Mの水酸化ナトリウム(いずれもシグマアルドリッチからのもの)のいずれかを用いてpHを4~6の値に調節した。前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。
【0134】
【0135】
pH効果が認められる。特に6.0未満の値では、LPS精製の改善が認められた。
【0136】
実施例12:
A型魚ゼラチンの精製
試験条件は、実施例10および11について記載のごとくであった。
【0137】
57.5℃で6.66%(w/w)のゼラチン11溶液を調製し、トリトンX100を0.18w/w%の濃度まで添加した。その後、5.0gの量の活性炭を添加し、続いてさらに15分間混合した。最後に、前記のごとく溶液を濾過した。温度は57.5℃に保った。ゼラチン溶液のpHは調節せず、5.7に保った。前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。
【0138】
【0139】
トリトンX100精製は、高LPS含有魚ゼラチンを精製するのに非常に効果的である。魚ゼラチン溶液のpHを4.5~5.5に下げることによってA型魚ゼラチンの精製レベルをさらに向上させることができると分かった。工程2)~5)の反復によるさらなる精製を実施して、初期の高LPSレベルの結果として<20/<10/<5EU/gのレベルを得ることができる。
【0140】
実施例13:
様々な活性炭除去方法
先の実施例で言及したごとくゼラチン7溶液を調製した。
【0141】
トリトンX100濃度0.18w/w%を適用した。溶液を750rpmで30分間、57.5℃で混合した。次に、5グラム(0.7w/w%)の活性炭を添加し、続いてさらに15~30分間57.5℃で混合した。保温後、活性炭を3つの異なる方法で除去した:
1.先の実施例に記載のごとき0.45μmフィルタでの濾過
2.ブフナー漏斗を用いる、2μmフィルタ(Whatman(登録商標)Glass microfiber filters グレードGF/C、直径55mm、2μm(Schleicher & Schuell)での濾過。より大きなフィルタ孔は、処理に有益である。
3.ブフナー漏斗を用いる、非活性化珪藻土(Clarcel CBL、Ceca Chemicals、フランス、またはシグマアルドリッチD3877、シグマアルドリッチ、米国)での濾過。0.18w/w%のトリトンX100および0.7w/w%の活性炭を含有する6.67%ゼラチン溶液125グラム当たり、7.5~10グラムの珪藻土を用いた。珪藻土は、例えば、ゼラチン製造プロセスで用いる、よく知られた濾過助剤である。
【0142】
前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。
【0143】
テーブル13で言及する濾過したゼラチン溶液の表面張力は6.6~67mN/mであり、未処理ゼラチン対照溶液と等しかった(データ示さず)。
【0144】
3つの濾過方法は全て、活性炭ならびに吸着されたトリトンX100およびLPSを効果的に除去するために用いることができる。その結果は、珪藻土での濾過が0.45μmおよび2μmのフィルタに比べてより効果的であることを示唆しており、珪藻土によるさらなるLPS精製を示唆している。
【0145】
【0146】
もう一つの実験では、活性炭をゼラチン溶液に導入せずに、ゼラチンと界面活性剤との双方を含む水性媒体をR55S型の3M ZetaCarbonフィルタカートリッジ(3M、米国)に通し、結果として前記の方法2に比べてLPS除去が改善した。また、フィルタを通した後の溶液の表面張力は、未処理ゼラチン対照溶液と等しく6.6~67mN/mであり、界面活性剤が実質的に完全にフィルタ内に残っていることを示していた(実施例4も参照)。表面張力が対照溶液と類似していない場合には、2つまたは所望によりそれより多いフィルタカートリッジを直列で使用することができる。R55Sフィルタに代えてR30L3S型のフィルタ(3M、米国)を用いる場合、同様の結果が見出した。
【0147】
実施例14
トリトンX100、酸化およびトリトンX100-酸化併用の効果
6.66%のゼラチン1およびゼラチン10の3つの異なる溶液を、実施例1に記載のごとき方法により調製した。1つの溶液にはトリトンX100を0.18w/w%の濃度まで添加した。第2の溶液にはH2O2を1.5w/w%の濃度まで添加した。第3の溶液には、トリトンX100およびH2O2をそれぞれ0.18w/w%および1.5%w/w%の濃度まで添加した。溶液のpHは調節せず、ゼラチン1およびゼラチン10についてそれぞれ5.5および5.3であった。混合および保温を57.5℃で30分間行った。最低5グラム(0.7w/w%)の活性炭をゼラチン溶液に加え、続いてさらに15~30分間混合した。その後、実施例1に記載のごとく0.45μmフィルタ(Phenex RC 26mm、0.45μm)を用いてゼラチン溶液を濾過した。前記のごとくLPS分析前にゼラチンを凍結乾燥させた。残存H2O2は、GME10に記載の方法を用いて分析して<20ppmであり、LAL分析法との干渉が起こらないことを確認した。
【0148】
【0149】
前記のHirayamaおよびSakata、米国特許第8133269号ならびに国際公開第2012031916号から、H2O2がゼラチン中のLPSを低減または不活性化させることが知られている。しかしながら、本発明者らは今や、トリトンX100とH2O2との驚くべき相乗効果を認めている。
【0150】
実施例15:
ゼラチンおよびトリトンX100の変更、ならびにLPS精製に対する効果
様々な濃度のゼラチンを溶解させたゼラチン溶液を、速度750rpmおよび温度55~57.5℃で30分間の定常混合下で、様々な濃度のトリトンX-100にて混合した。次いでその混合物を、R55型の2つの3M ZetaCarbonフィルタカートリッジで濾過した。濾液を直接的LPS分析のために回収するかまたは、-20℃で凍結させてChrist Alpha 2-4LD Plus凍結乾燥機(MartinChrist、ドイツ)を用いて凍結乾燥させる。凍結乾燥真空条件:溶液が約4~6%の含水量に乾燥するまで、0.04mbarおよび-87℃で少なくとも24~48時間。内毒素分析前に水分補正は行わなかった。
【0151】