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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】仮設足場用階段枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/10 20060101AFI20220118BHJP
   E04G 1/30 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
E04G5/10 B
E04G1/30 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020192316
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2021-09-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501415659
【氏名又は名称】JFE機材フォーミング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 潔
(72)【発明者】
【氏名】中島 篤人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 研二
(72)【発明者】
【氏名】三宅 英徳
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-090676(JP,A)
【文献】特開平11-159125(JP,A)
【文献】実開昭63-198745(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/10
E04G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された一対の支持材と、該支持材の相互間に固定保持され、該支持材の長手方向に間隔をおいて配置される複数枚の踏板とを備え、少なくとも仮設足場の下層階と中層階との間および該中層階と上層階との間に連続的に架け渡すことにより、該下層階から該上層階に至るまでの行き来を可能とする仮設足場用階段枠であって、
前記支持材は、その上端部に、仮設足場を構成する横架材に引っ掛かり可能な上つかみ金具を有し、その下端部に、仮設足場を構成する横架材に引っ掛かり可能な下つかみ金具を有し、
該上つかみ金具および該下つかみ金具がそれぞれ各横架材に引っ掛かった架け渡し姿勢において、最上段に位置する踏板から上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯に至るまでの垂直距離を(X)、最下段に位置する踏板から下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯に至るまでの垂直距離を(Y)、最下段に位置する踏板と該最下段に位置する踏板の次に位置する踏板の蹴上げ寸法を(B)、該上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該上つかみ金具の最上端に至るまでの垂直距離を(h1)、下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から支持材の下端部に形成された切り欠き部の端面に至るまでの垂直距離を(h2)、前記仮設足場に組み合わされるフラットタイプの床付き布わくのつかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該フラットタイプの床付き布わくの床板面に至るまでの垂直距離を(h3)とした場合に、
A=X+Y
|A-B|≦10mm
h2>h3≧h1-5mm
Y>X
の条件を満足することを特徴とする仮設足場用階段枠。
【請求項2】
前記支持材の下端部における端面に直交する直線に対して平行で、かつ、前記下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該下つかみ金具が固定保持された前記支持材の下端部の端面に至るまでの寸法を下つかみ金具の長さを(L1)とし、該支持材の上端部の端面に直交する直線に対して平行で、かつ、前記上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該上つかみ金具が固定保持された前記支持材の上端部の端面に至るまでの寸法を上つかみ金具の長さを(L2)とした場合に、下つかみ金具の長さ(L1)は、上つかみ金具の長さ(L2)よりも長いことを特徴とする請求項1に記載した仮設足場用階段枠。
【請求項3】
前記上つかみ金具および前記下つかみ金具は、下側に向けて開放され、その内側に横架材を位置させて該横架材に引っ掛ける凹部を有し、前記支持材は、ウエブと該ウエブの上端、下端にそれぞれつながるフランジを有するC型断面をなすチャンネル部材からなり、
上つかみ金具の凹部は、横架材の軸芯が該ウエブのウエブ高さの中心を通る直線に交差した状態で横架材に引っ掛かるものであり、下つかみ金具の凹部は、横架材の軸芯が該ウエブのウエブ高さの中心を通る直線よりも下方に位置して引っ掛かるものであることを特徴とする請求項1または2に記載した仮設足場用階段枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場や土木工事現場で構築される仮設足場の階段枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場や土木工事現場において使用される工事用の仮設足場は、複数本の支柱と、これらの支柱を相互につなぐ複数本の横架材と、横架材の相互間に差し渡され、作業床や通路を形成する複数枚の床付き布わくとを適宜組み合わせることによって構築されている。
【0003】
仮設足場の床付き布わくは、建築物等の高さに沿い所定の間隔をおいて設けられた複数階層のそれぞれに設置されるものであって、各階層への移動にはその相互間に設置された階段枠が利用されている。
【0004】
仮設足場の階段枠は、互いに平行に配置された一対の支持材と、該支持材の相互間に固定保持され、該支持材の長手方向に間隔をおいて配置される複数枚の踏板とを備えたもので構成されており、支持材の上端部に設けられた一対のつかみ金具を仮設足場の横架材に引っ掛け、支持材の下端部を床付き布わくの床板に設置、固定する、例えば特許文献1のような階段枠が知られている。
【0005】
ところで、かかる階段枠は、取り付け、取り外し作業に手間がかかり、仮設足場の効率的な構築が行えないことから、支持材の上端部、下端部の何れにもつかみ金具が設けられた引っ掛けタイプの階段枠を使用するニーズが高いところ、この種の階段枠にあっては、床付き布わくの相互間において不可避的に形成される隙間を無くすことを可能とした、特許文献2に開示のようなフラットタイプの床付き布わくを用いて仮設足場が構築されている場合に、階段枠の支持材の下端部が床付き布わくの床板に干渉して下側に位置するつかみ金具が浮いてしまい横架材に引っ掛けることができない不具合を有していた。
【0006】
図8(a)(b)は、フラットタイプの床付き布わくと、床付き布わくの相互間において隙間が不可避的に形成される通常の床付き布わくの要部の側面を示した図である。
【0007】
フラットタイプの床付き布わくの床板面は、つかみ金具の上端と同じ高さに設定されることが好ましく、少なくとも、つかみ金具の上端から5mm低い高さ以上に設計する必要がある。現在商品化されている上記2種の床付き布わくは、図9に示すように、床体面の高さの差δHが、実測値で約19mm程度であり(従来の床付き布わくは仮想線で表示)、この結果、図10図11に示すように、フラットタイプの床付き布わくでは、通常の床付き布わくに比べて床面高さが高くなり、支持材の下端と床付き布わくの床面とが干渉し階段枠の下端部に設けられたつかみ金具を横架材に正しくセットすることができなかったのである。
【0008】
かかる不具合を解消するには、支持材の長さを干渉しない程度に短くするとともに、それに合わせて最下段の踏板の取り付け位置を変更することが有効であるものの、階段枠を、下層階から中層階、中層階から上層階へと連続的に架け渡す図12に示すような使用形態にあっては、階段枠の連結部位における踏板のピッチが他の踏板相互間のピッチと大きく異なることがあり、下側に位置する階段枠から上側に位置する階段枠に移行する際、あるいは、上側に位置する階段枠から下側に位置する階段枠に移行する際に、躓きやすくなるという問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5170557号公報
【文献】特許第6683877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、フラットタイプの床付き布わくを用いて構築された仮設足場においても容易に適用可能であり、かつ、階段枠を連続的に架け渡す使用形態において生じていた階段枠の連結部位での躓きを回避することができる階段枠を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、互いに平行に配置された一対の支持材と、該支持材の相互間に固定保持され、該支持材の長手方向に間隔を置いて配置される複数枚の踏板とを備え、少なくとも仮設足場の下層階と中層階および該中層階と上昇階との相互間に連続的に架け渡すことにより、該下層階から該上層階に至るまでの行き来を可能とする仮設足場用階段枠であって、
該支持材は、その上端部に、仮設足場を構成する横架材に引っ掛かり可能な上つかみ金具を有し、その下端部に、仮設足場を構成する横架材に引っ掛かり可能な下つかみ金具を有し、
該上つかみ金具および該下つかみ金具がそれぞれ各横架材に引っ掛かった架け渡し姿勢において、最上段に位置する踏板から上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯に至るまでの垂直距離をX、最下段に位置する踏板から下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯に至るまでの垂直距離をY、最下段に位置する踏板と該最下段に位置する踏板の次に位置する踏板の蹴上げ寸法をB、該上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該上つかみ金具の最上端に至るまでの垂直距離をh1、該下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から支持材の下端部に形成された切欠き部の端面に至るまでの垂直距離をh2、前記仮設足場に組み合わされるフラットタイプの床付き布わくのつかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該フラットタイプの床付き布わくの床板面に至るまでの垂直距離をh3とした場合に、
A=X+Y
|A-B|≦10mm
h2>h3≧h1-5mm
Y>X
の条件を満足することを特徴とする仮設足場用階段枠である。
【0012】
上記の構成からなる仮設足場用階段枠において、支持材の下端部の端面に直交する直線に対して平行で、かつ、下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該下つかみ金具が固定保持された支持材の下端部の端面に至るまでの寸法を下つかみ金具の長さを(L1)とし、該支持材の上端部の端面に直交する直線に対して平行で、かつ、上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該上つかみ金具が固定保持された支持材の上端部に端面に至るまでの寸法を上つかみ金具の長さを(L2)とした場合に、下つかみ金具の長さ(L1)は、上つかみ金具の長さ(L2)よりも長くするのが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、上つかみ金具および下つかみ金具は、下側に向けて開放され、その内側に横架材を位置させて該横架材に引っ掛ける凹部を有し、支持材は、ウエブと該ウエブの上端、下端にそれぞれつながるフランジを有するC型断面をなすチャンネル部材からなり、
上つかみ金具の凹部は、横架材の軸芯が該ウエブのウエブ高さの中心を通る直線に交差した状態で横架材に引っ掛かるものであり、下つかみ金具の凹部は、横架材の軸芯が該ウエブのウエブ高さの中心を通る直線よりも下方に位置して引っ掛かるものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フラットタイプの床付き布わくを用いて構築された仮設足場への適用が可能であるとともに、複数の階段枠を連続的に架け渡す使用形態において生じていた連結部位での踏板ピッチの変動を抑制して仮設足場における各層階へのスムーズな登り降りが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にしたがう階段枠の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)はその側面図であり、(b)は、その正面図である。
図2】本発明にしたがう階段枠を2本、仮設足場の下層階から中層階、中層階から上層階へ連続的に架け渡した状態の要部を側面について示した図である。
図3図2の正面を示した図である。
図4】(a)は、上つかみ金具の要部を拡大して示した図であり、(b)は、下つかみ金具の要部を拡大して示した図である。
図5】本発明に従う階段枠の他の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)はその側面図であり、(b)は、その正面図である。
図6】(a)は、上つかみ金具の要部を拡大して示した図であり、(b)は、下つかみ金具の要部を拡大して示した図である。
図7】フラットタイプの床付き布わくと階段枠の下つかみ金具の位置関係を示した図である。
図8】(a)は、フラットタイプの床付き布わくの要部の側面を示した図であり、(b)は、従来の床付き布わくの要部の側面を示した図である。
図9】フラットタイプの床付き布わくと従来の床付き布わくとの床板面のレベルを比較した要部の側面を示した図である。
図10】フラットタイプの床付き布わくと階段枠の下つかみ金具の位置関係を示した図である。
図11】通常の床付き布わくと階段枠の下つかみ金具の位置関係を示した図である。
図12】階段枠を仮設足場に連続的に架け渡した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1(a)(b)は、本発明にしたがう階段枠の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、階段枠の側面を示した図、(b)は、階段枠の正面図である。また、図2は、本発明にしたがう階段枠を、仮設足場の下層階から中層階、中層階から上層階へ連続的に架け渡した状態の要部を側面について示した図であり、図3は、図2の正面を示した図である。
【0017】
図1~3における符号1は、互いに平行に配置された一対の支持材、2a~2hは、支持材1の相互間に固定保持され、該支持材1の長手方向に間隔をおいて配置される踏板、3は、支持材1の上端部に設けられ、仮設足場を構成する横架材S1(単管パイプ等)に引っ掛かり可能な上つかみ金具、4は、支持材1下端部に設けられ仮設足場を構成する横架材S2に引っ掛かり可能な下つかみ金具である。なお、上掲図1~3において示した階段枠は、上つかみ金具3および下つかみ金具4を横架材S1、S2に引っ掛けた架け渡し姿勢(水平面とのなす角度が44°程度)で表示している。
【0018】
支持材1としては、ウエブ1aと、該ウエブ1aの上端、下端につながるフランジ1bを有するC型断面をなすアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなるチャンネル部材を用いることができ、上つかみ金具3、下つかみ金具4は、下側に向けて開放され、その内側に横架材S1、S2を位置させて該横架材S1、S2を引っ掛ける凹部3a、4aを有し、支持材1のウエブ1aのウエブ高さHの中心位置(H/2)でそれらの基部3b、4bがボルト、ナット、あるいは溶接等によりウエブ1aに固定されるものが用いられている。踏板2a~2hは、支持材1と同様にアルミニウムあるいはアルミニウム合金にて構成され、上つかみ金具3、下つかみ金具4については、SS400等の一般構造用鋼材にて構成される。
【0019】
本発明は、3種の対応策によって課題の解決を図ったものである。まず、第1の対応策としては、図2に示すように、上つかみ金具3および下つかみ金具4がそれぞれ各横架材S1、S2に引っ掛かけた架け渡し姿勢において、最上段に位置する踏板2hから上つかみ金具3が引っ掛かる横架材S1の軸芯S1′に至るまでの垂直距離をX、最下段に位置する踏板2aから下つかみ金具4が引っ掛かる横架材S2の軸芯S2′に至るまでの垂直距離をY、最下段に位置する踏板2aと最下段に位置する踏板2aの次に位置する踏板2bの蹴上げ寸法をB、上つかみ金具3が引っ掛かる横架材S1の軸芯S1′から上つかみ金具3の最上端に至るまでの垂直距離をh1、下つかみ金具4が引っ掛かる横架材S2の軸芯S2′から支持材1の下端部に形成された下端部(切り欠き部)1cの端面に至るまでの垂直距離をh2、前記仮設足場に組み合わされるフラットタイプの床付き布わくのつかみ金具が引っ掛かる横架材S1の軸芯S1′から該フラットタイプの床付き布わくの床板面に至るまでの垂直距離をh3とした場合に、
A=X+Y
|A-B|≦10mm
h2>h3≧h1-5mm
Y>X
の条件を満足するものとする。ここで、上記A、B、X、Y、h1、h2、h3の単位はmmである。
【0020】
上記の条件は、階段枠の最下段に位置する踏板2aとその下に位置する横架材S2との間隔を大きくすると同時に、階段枠の最上段に位置する踏板2hとその上に位置する横架材S1の間隔を短くすることにより、階段枠を、下層階から中層階、中層階から上昇階へと連続的に架け渡す使用形態においても躓きを起こさないための条件である。なお、一般社団法人仮設工業会が発行している「仮設機材認定基準とその解説(第8版)」の第248頁の「4.構 造」の項目dには、連続使用タイプの階段枠は、連続して取り付けたときに、下の層の階段枠の最上段の踏板と上の層の階段枠の最下段の踏板までの蹴上げ寸法が各段の蹴上げ寸法とほぼ一致するものであること、と記載されているが、本発明の発明者らの知見によれば、|A-B|≦10mmであれば躓きを起こすおそれがないことが明らかとなったため、本発明では、これを妥当な範囲とすることとして設定したものである。
【0021】
また、本発明においては、h2>h3≧h1-5mmとしたが、これは、階段枠や床付き布わくのつかみ金具の上端から最大5mm低い高さに設計されるフラットタイプの床付き布わくの床板面と階段枠の支持材1の下端部との干渉を回避するための条件である。ただし、h3は、前記仮設足場に組み合わされるフラットタイプの床付き布わくのつかみ金具が引っ掛かる横架材S1の軸芯S1′から該フラットタイプの床付き布わくの床板面に至るまでの垂直距離とする。本発明では、図2に示すように、寸法Bは、階段枠の段数で決定されるため、寸法AもB+10mmを上限として制約を受けることになる。このため、本発明においては、寸法Xと寸法Yの分配を変更することとした。
【0022】
上記の構成によれば、フラットタイプの床付き布わくを用いた仮設足場に適用した場合であっても、支持材1の下端部が床付き布わくの床面に干渉することがなく階段枠の確実な取り付けが可能であり、かつ、階段枠を仮設足場の横架材S1、S2に連続的に架け渡しても、階段枠の連結部位において不可避的に発生していた踏板のピッチの変動を極力抑制することができる。
【0023】
次に、第2の対応策として、本発明では、下つかみ金具4の長さL1を、支持材1の下端部の端面に直交する直線に対して平行で、かつ、下つかみ金具4が引っ掛かる横架材S2の軸芯S2′から下つかみ金具が固定保持された支持材1の下端部の端面に至るまでの寸法とし、上つかみ金具3の長さL2を、支持材1の上端部の端面に直交する直線に対して平行で、かつ、上つかみ金具3が引っ掛かる横架材S1の軸芯S1′から該上つかみ金具3が固定保持された支持材1の上端部の端面に至るまでの寸法とした場合に、好ましくは、下つかみ金具4の長さL1は、上つかみ金具3の長さL2よりも長くする。これにより、支持材1の下端部1cから横架材S1の軸芯S1′までの垂直距離h2を大きくすることが、すなわち、支持材1の下端部1cと床付き布わくの床面との間に十分な隙間を形成することができる。
【0024】
従来の床付き布わくにおいては、下つかみ金具4の長さと上つかみ金具3の長さを変更する特段の理由はないが、本発明における第1の対応策としてY>Xとした条件のものでは、下つかみ金具4は、寸法Yを大きくすると、長さの長いつかみ金具に設計する必要があり、仮に両つかみ金具を同じ長さとするならば、上つかみ金具3の本体もしくは固定ボルトと最上段の踏板2hの固定ボルトが干渉し設計の自由度が制約される。これを避けるために、本発明では、下つかみ金具4の長さL1を、上つかみ金具3の長さL2よりも長い長さを有するものとするのとした。
【0025】
図4(a)(b)は、上つかみ金具3、下つかみ金具4の要部をそれぞれ拡大して示した図である。本発明の第3の対応策としては、上つかみ金具3の凹部3aは、横架材S1の軸芯S1′が支持材1のウエブ1aのウエブ高さHの中心(H/2)を通る直線Mに一致した状態で横架材Sに引っ掛かるものとするのが好ましく、下つかみ金具4の凹部4aは、横架材S2の軸芯S2′が直線Mよりも下方に位置して引っ掛かるものとするのが好ましく、このような構成を採用することにより支持材1の下端部と床付き布枠の床面との間の隙間を少しでも大きくすることができる。
【0026】
横架材S2の軸芯S2′が直線Mよりも下方に位置して下つかみ金具4の凹部4aを横架材S2に引っ掛かるためには、該凹部4aの引っ掛かり深さを浅くすればよい。
【0027】
第1の対応策においては、つかみ金具の長さについては言及していないが、両つかみ金具3、4の長さが同じであると仮定するならば、上つかみ金具3の基部3bもしくは固定ボルトと最上段の踏板2hの固定ボルトが干渉することが懸念されるものの、上つかみ金具3や下つかみ金具4を固定するボルトの間隔を、図6に示すように短くするか、あるいは、固定ボルトの取り付け位置を直線Mに沿ってずらす等の対応をとることにより第1の対応策の実現可能性が担保されることになる。
【0028】
図7は、つかみ金具の上端と床板面のレベルを一致させたフラットタイプの床付き布わくを試作し、その床付き布わくに、本発明にしたがう階段枠(X=92mm、Y=138mm、h2=45mm、h1=40mm、B=224mm、(h1-5)=35mm)を取り付けた状態を要部について示した図である。本発明にしたがう階段枠においては、支持材1の下端部1cと床付き布わくの床面とが干渉しないことが明らかである。
【0029】
上掲図1~3では、踏板2a~2hを8枚設置した8段式の階段枠について示したが、本発明に従う階段枠は、図5(a)(b)に示すような7段式の階段枠とすることもできる。
【0030】
フラットタイプの床付き布わくを用いて仮設足場を構築するべく、支持材1の長さが2432mmになる8段式の階段枠を適用する場合においては、階段枠の支持材1の下端部と床付き布わくの床板面との干渉を避けるためには、通常、寸法Aを235mm程度、寸法Bを223mm程度に設定することになるが、寸法Aと寸法Bとの差は、10mmを超えることとなり階段枠の連結部位においては、躓き等の不具合が発生することが懸念される。しかしながら、本発明にしたがう階段枠においては、寸法Aを230mm程度、寸法Bを224mm程度に設定することが可能であり、その差(A-B)が極めて小さく、階段枠の連結部における躓きを効果的に回避し得る。
【0031】
寸法Aが230mm程度、寸法Bが224mm程度に設定された8段式の階段枠では、下つかみ金具4の長さL1は、72mm程度に、また、上つかみ金具3の長さL2は、62mm程度に設定される。
【0032】
下つかみ金具4の長さL1は、上つかみ金具3の長さL2より最低でも5mm以上、好ましくは、10mm以上長くするのが望ましく、その上限については、35mm程度とするのがよい。下つかみ金具4の長さL1、上つかみ金具3の長さL2の関係を倍率で表示した場合、下つかみ金具4の長さL1は、上つかみ金具3の長さL2の1.1~1.5倍程度とするのが好ましい。
【0033】
本発明にしたがう階段枠においては、支持材1の長さが2432mmになる7段式の階段枠を構成するべく、下つかみ金具4の長さL1を72mm程度、上つかみ金具3の長さL2を62mmとした場合、寸法Aは、257mmに、また、寸法Bは、257mmに設定される。
【0034】
なお、本発明にしたがう階段枠は、フラットタイプの床付き布わくを使用せず、通常の床付き布わくを用いて構築された仮設足場に適用することができるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、フラットタイプの床付き布わくを用いて構築された仮設足場への適用が可能であり、かつ、躓き等の不具合を発生させることなしにスムーズの登り、降りの可能な階段枠を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 支持材
1a ウエブ
1b フランジ
1c 下端部(切り欠き部)
2a~2h 踏板
3 上つかみ金具
3a 凹部
3b 基部
4 下つかみ金具
4a 凹部
4b 基部
S1 横架材
S1′ 軸芯
S2 横架材
S2′ 軸芯
【要約】
【課題】フラットタイプの床付き布わくを用いた仮設足場への適用を可能とし、躓き等の不具合を発生させずにスムーズな登り降りの可能な階段枠を提案する。
【解決手段】仮設足場用階段枠において、上つかみ金具および下つかみ金具が各横架材に引っ掛かった架け渡し姿勢で、最上段に位置する踏板から上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯までの垂直距離を(X)、最下段に位置する踏板から下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯までの垂直距離を(Y)、最下段に位置する踏板と該最下段に位置する踏板の次に位置する踏板の蹴上げ寸法を(B)、上つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から該上つかみ金具の最上端までの垂直距離を(h1)、下つかみ金具が引っ掛かる横架材の軸芯から支持材の下端部に形成された切り欠き部の端面までの垂直距離を(h2)とした場合に、A=X+Y、|A-B|≦10mm、h2>h1-5mm、Y>Xの条件を満足するよう構成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12