(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】エソメプラゾール及び炭酸水素ナトリウムを含む薬剤学的製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/10 20060101AFI20220118BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20220118BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220118BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K33/10
A61K9/24
A61K31/4439
A61K47/32
A61P1/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020535112
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2019001183
(87)【国際公開番号】W WO2019147094
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2018-0010987
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518208484
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジョン ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン スー
(72)【発明者】
【氏名】パク シン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジョン レ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0076494(KR,A)
【文献】特表平11-501950(JP,A)
【文献】特表2007-526319(JP,A)
【文献】特表2006-505566(JP,A)
【文献】特表2008-500365(JP,A)
【文献】特表2011-530569(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101036633(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103784414(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む第1層と、
コーティング剤としてポリビニルアルコールを含む第2層と、
制酸剤として炭酸水素ナトリウムを含む第3層
と、
コーティング剤としてポリビニルアルコールを含む第4層とを含むことを特徴とする、薬剤学的製剤。
【請求項2】
前記第2層及び第4層のコーティング剤は、オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩1重量に対して0.1~7重量で含まれることを特徴とする、請求項
1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項3】
前記第2層及び第4層のコーティング剤は、オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩1重量に対して0.5~5重量で含まれることを特徴とする、請求項
2に記載の薬剤学的製剤。
【請求項4】
前記オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩がエソメプラゾールであることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項5】
前記オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩がエソメプラゾールマグネシウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項6】
オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩及び炭酸水素ナトリウムを含む薬剤学的製剤
の製造方法であって、
コアにオメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩を含むコーティング液で1次コーティングして、1次コーティング物を製造する段階と、
前記1次コーティング物をポリビニルアルコールを含む2次コーティング液でコーティングして、2次コーティング物を製造する段階と、
前記2次コーティング物を炭酸水素ナトリウムとともに打錠して打錠物を製造する段階と、
前記打錠物をポリビニルアルコールを含む3次コーティング液でコーティングする段階と、を含む、製剤の製造方法。
【請求項7】
エソメプラゾールマグネシウム三水和物をエソメプラゾール含量基準で20mg又は40mg、及び炭酸水素ナトリウム800mgを含む薬剤学的製剤
の製造方法であって、
コアにエソメプラゾールマグネシウム三水和物を含むコーティング液で1次コーティングして、1次コーティング物を製造する段階と、
前記1次コーティング物をポリビニルアルコールを含む2次コーティング液でコーティングして、2次コーティング物を製造する段階と、
前記2次コーティング物を炭酸水素ナトリウムとともに打錠して打錠物を製造する段階と、
前記打錠物をポリビニルアルコールを含む3次コーティング液でコーティングする段階と、を含む製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含む安定な薬剤学的製剤、及びその製造方法に関する。具体的には、本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムが直接接触することを抑制することにより、柔軟物質の生成を減少させて安定な製剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
オメプラゾール(omeprazole)の化学名は、5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)メチル]スルフィニル-1H-ベンゾイミダゾールである。オメプラゾールは、2つの異性体、すなわち、R-異性体及びS-異性体として存在する。S-異性体がR-異性体に比べて、治療効果及び副作用の面で遥かに優れていることが知られている。前記S-異性体は、(S)-5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジニル)-メチル]スルフィニル-1H-ベンゾイミダゾールであり、エソメプラゾール(esomeprazole)と一般的に呼ばれている。
【0003】
エソメプラゾールは、消化不良、消化性潰瘍疾患(peptic ulcer disease)、胃食道逆流疾患(gastroesopHageal reflux disease)、及びゾリンジャー・エリソン症候群(Zollinger-Ellison syndrome)などの治療に使用される代表的なプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor;PPI)である。
【0004】
オメプラゾール、特にエソメプラゾールは、酸性及び中性媒質において分解や変形されやすいことが当業界によく知られており、より具体的には、pH値が3以下である水溶液中でエソメプラゾールの分解半減期は、10分未満であると知られている。したがって、エソメプラゾールの分解は、酸性化合物によって促進され、水分、熱、有機溶媒、及び光によっても影響を受ける。
【0005】
したがって、安定したエソメプラゾール製剤に関する多くの要求があり、安定性の問題点を解決するため、大韓民国特許第384960号には、エソメプラゾールマグネシウム塩を含むペレットを製造した後、これを腸溶コーティングした後、賦形剤を添加して錠剤として製剤化する方法が開示されている。前記方法によって製造された製剤は、ネキシウム(登録商標)(Nexium(登録商標))という商品名で現在市販されている。
【0006】
しかし、ネキシウムのような腸溶コーティング錠の場合、胃で即刻の吸収が発生せず、腸で溶解及び吸収されるように設計されたため、胃酸関連疾患のように、投与後即刻の治療効果が要求される疾患の治療に適していない。
【0007】
大韓民国特許第1104349号には、酸化マグネシウムとポビドンで固体分散体剤形を製造することにより、オメプラゾールの安定性及び物性の問題点を改善した腸溶コーティング錠及びカプセル剤が開示されている。
【0008】
大韓民国特許公告第10-1996-0003605号には、オメプラゾールを有効成分とし、安定化成分としてベータ-シクロデキストリン及び水酸化ナトリウムを添加して固体分散体剤形を製造する方法が開示されている。しかしながら、前記特許に記載された発明は、人体に有害な水酸化ナトリウムを使用するという問題点がある。固体分散体を製造する過程は、有効成分であるオメプラゾールを溶媒に溶解させる過程を含むため、この過程の間、オメプラゾールを安定化させるため、水酸化ナトリウムのような特殊な安定化剤を必要とする。
【0009】
このような問題点を解決するため、大韓民国特許第679767号は、オメプラゾールの炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)のような緩衝剤を使用する方法を開示する。
【0010】
しかし、多量の炭酸水素ナトリウムを使用する場合、オメプラゾールの効能を減少させ、副作用を誘発するという短所を持つ。具体的に、多量の炭酸水素ナトリウムを投与する場合、胃の膨張によって重篤な患者に苦痛を加重させることができ、炭酸水素ナトリウムの吸収は、げっぷを誘発し得るが、げっぷが胃酸の上向き移動を誘発して胃食道逆流疾患を悪化させる可能性がある。また、高血圧や心不全のような症状を持つ患者は、高血圧の症状を誘発し得るナトリウム(sodium)の摂取を抑制しなければならないため、このような症状を持つ患者に多量の炭酸水素ナトリウムを投与することは、適していない。また、様々な合併症を持つ患者に多量の炭酸水素ナトリウムの投与は、代謝性アルカリ血症をもたらすおそれがある。また、前記胃と尿のpHを変化させる緩衝剤は、薬物の吸収、分布、及び代謝過程に影響を与えることができるので、多量の炭酸水素ナトリウムをオメプラゾールとともに使用するにあたって、様々な注意が必要である。
【0011】
また、オメプラゾール、又はその鏡像異性体と炭酸水素ナトリウムは、配合安定性が良くないので、互いに接触する場合、柔軟物質が増加するという問題点が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、低pHで不安定なオメプラゾール、又はその鏡像異性体の安定化のため、胃内のpHを増加させる制酸剤(antiacid)として炭酸水素ナトリウムを含む製剤を開発した。しかし、オメプラゾール、又はその鏡像異性体と炭酸水素ナトリウムを同時に含むことにより発生可能な配合安定性の問題を解決するため、様々なコーティング剤を適用した結果、ポリビニルアルコールが最も適していることを、長い期間の実験及び研究によって確認することにより、本発明を完成した。
【0013】
また、ポリビニルアルコールは、オメプラゾール、又はその鏡像異性体と炭酸水素ナトリウムの接触を抑制して製剤の安定性を改善させるだけでなく、錠剤の外部をコーティングして製剤の安定性をさらに向上させることを確認して、安定性が非常に優れた製剤を開発するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含み、コーティング剤としてポリビニルアルコールをさらに含む薬剤学的製剤に関する。
【0015】
オメプラゾールの鏡像異性体は、S-異性体又はR-異性体であってもよいが、S-異性体であるエソメプラゾールが好ましい。
【0016】
本発明の「薬剤学的に許容可能な塩」は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウムなどの金属塩又はアンモニウム塩などであってもよいが、、これに制限されるものではない。これらの中で、マグネシウム塩が好ましい。
【0017】
前記オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩は、その溶媒化物であってもよく、溶媒化物は、一水和物、二水和物、三水和物などの水和物を含み、無定形または結晶形であってもよい。
【0018】
炭酸水素ナトリウムは、低pHで不安定なオメプラゾール又はその鏡像異性体を安定化するための制酸剤(antiacid)として使用されてもよい。
【0019】
本発明のコーティング剤は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩と炭酸水素ナトリウムの直接接触を分離及び/又は抑制して配合安定性を改善する役割を果たす。
【0020】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩を含む第1層と、コーティング剤としてポリビニルアルコールを含む第2層と、制酸剤として炭酸水素ナトリウムを含む第3層と、を含むことを特徴とする薬剤学的製剤に関する。
【0021】
また、本発明のコーティング剤は、製剤の外部をコーティングして安定性を改善させる役割も果たす。
【0022】
また、本発明は、コーティング剤としてポリビニルアルコールを含む第4層をさらに含む薬学的製剤に関する。
【0023】
前記第2層及び第4層のコーティング剤は、オメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩1重量に対して、0.1~7重量、好ましくは、0.5~5重量であってもよい。
【0024】
本発明の薬剤学的製剤は、下記の段階で製造されてもよい。
【0025】
コアにオメプラゾール、その鏡像異性体又は薬剤学的に許容可能な塩を含むコーティング液で1次コーティングして、1次コーティング物を製造する段階と、
【0026】
前記1次コーティング物をポリビニルアルコールを含む2次コーティング液でコーティングして、2次コーティング物を製造する段階と、
【0027】
前記2次コーティング物を炭酸水素ナトリウムとともに打錠して打錠物を製造する段階と、
【0028】
前記打錠物をポリビニルアルコールを含む3次コーティング液でコーティングする段階。
【0029】
より具体的には、本発明は、エソメプラゾールマグネシウム三水和物をエソメプラゾール含量基準で20mg又は40mg、及び炭酸水素ナトリウム800mgを含む薬剤学的製剤に関するもので、下記の段階で製造されてもよい。
【0030】
コアにエソメプラゾールマグネシウム三水和物を含むコーティング液で1次コーティングして、1次コーティング物を製造する段階と、
【0031】
前記1次コーティング物をポリビニルアルコールを含む2次コーティング液でコーティングして、2次コーティング物を製造する段階と、
【0032】
前記2次コーティング物を炭酸水素ナトリウムとともに打錠して打錠物を製造する段階と、
【0033】
前記打錠物をポリビニルアルコールを含む3次コーティング液でコーティングする段階。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、オメプラゾール、その鏡像異性体又はその薬剤学的に許容可能な塩、及び炭酸水素ナトリウムを含む安定性が改善された薬剤学的製剤に関する。本発明の薬剤学的製剤は、オメプラゾールと炭酸水素ナトリウムの接触を抑制して配合安定性を改善し、打錠された錠剤をコーティングすることにより、製剤の安定性をさらに改善した。
【0035】
本発明の製剤は、単層錠剤に製造されることにより、製造方法が容易で、優れた安定性を有するだけでなく、胃で即ち溶出及び吸収されて優れた溶出率及び生体利用率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明に対する理解を助けるための例示の目的で提供されたものであるのみであり、本発明の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0037】
[実施例1]
PVA(ポリビニルアルコール)をコーティング剤として含むエソメプラゾール錠剤の製造
PVAを含むエソメプラゾール錠剤を下記の方法で製造した。
【0038】
1.1次コーティング
精製水とヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させた後、アルギニン、シメチコン、精製水、エソメプラゾールマグネシウム三水和物(22.3mg;エソメプラゾール含量基準20.00mg)、酸化マグネシウム及びタルクを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に球形白糖を入れて、前記コーティング液を噴霧して1次コーティング物を製造した。
【0039】
2.2次コーティング
精製水にポリビニルアルコール(7.4mg;錠剤の全重量に対して0.7重量%)、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリロカプレート、及びラウリル硫酸ナトリウムを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に前記1次コーティング物を入れて、コーティング液を噴霧して2次コーティング物を製造した。
【0040】
3.混合及び打錠
混合機に前記2次コーティング物、炭酸水素ナトリウム(800mg)、コポビドン、クロスポビドンを入れて混合した後、フマル酸ステアリルナトリウムを入れて滑沢して顆粒を製造した。製造した顆粒を打錠した。
【0041】
4.3次コーティング
精製水にポリビニルアルコール(15.5mg;錠剤の全重量に対して1.5重量%)、タルク、酸化チタン、グリセロールモノカプリルロカプレート、ラウリル硫酸ナトリウム、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及び黄色酸化鉄を入れてコーティング液を製造した。コーティング機に前記打錠物を入れてコーティング液を噴霧、コーティング、及び乾燥して最終のコーティング錠剤を得た。
【0042】
[比較例1]
ヒドロキシプロピルメチルセルロースをコーティング剤として含むエソメプラゾール錠剤の製造
前記実施例1の製造方法において2次コーティング及び3次コーティングのコーティング剤としてポリビニルアルコールの代わりに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、下記の方法で製造した。
【0043】
1.1次コーティング
精製水にヒドロキシプロピルセルロースを入れて溶解させた後、シメチコン、エソメプラゾールマグネシウム三水和物、酸化マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、及びTween80を入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に球形白糖を入れて、前記コーティング液を噴霧して1次コーティング物を製造した。
【0044】
2.2次コーティング
精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、水酸化ナトリウム、シメチコン、及びタルクを入れて分散させてコーティング液を製造した。流動層顆粒コーティング機に前記コーティング物を入れて、コーティング液を噴霧して2次コーティング物を製造した。
【0045】
3.混合及び打錠
混合機に前記2次コーティング物、炭酸水素ナトリウム、コポビドン、及びクロスポビドンを入れて混合した後、フマル酸ステアリルナトリウムを入れて顆粒を製造した。前記顆粒を打錠した。
【0046】
4.3次コーティング
精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、及び黒色酸化鉄を入れてコーティング液を製造した。コーティング機に前記打錠物を入れてコーティング液を噴霧、コーティング、及び乾燥して最終のコーティング錠剤を得た。
【0047】
[比較例2及び3]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びポリビニルアルコール(PVA)をコーティング剤として含むエソメプラゾール錠剤の製造
【0048】
実施例1の錠剤の製造方法において2次コーティング剤としてPVAの代わりにHPMCを使用して比較例2の錠剤を製造し、3次コーティング剤としてPVAの代わりにHPMCを使用して比較例3の錠剤を製造した。
【0049】
実施例1、及び比較例1~3の製造に使用されたコーティング剤の種類を下記表1に示した。
【0050】
【0051】
[試験例1]
柔軟物質実験
実施例1及び比較例1~3の錠剤に対して安定性を確認するため、加速試験を行い、柔軟物質を分析試験条件で測定した。
【0052】
<柔軟物質の分析試験>
1)検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:305nm)
2)カラム:Phenomenex Luna C18(4.6×150mm、3μm)又はこれと同等のカラム
3)注入量:50μL
4)流量:1.0mL/分
5)カラム温度:30℃付近の一定温度
6)サンプル温度:4℃付近の一定温度
7)移動相:
【0053】
移動相A-pH8.7緩衝液、アセトニトリル及びメタノールの混合液(7:2:1)をn-ブチルアミンでpH8.7となるように調整した液
移動相B-pH8.7緩衝液とアセトニトリルの混合液(2:8)
【0054】
【0055】
前記pH8.7緩衝液は、過塩素酸ナトリウム(NaCl04)0.71g及びn-ブチルアミン5mLを1Lの容量フラスコに入れて精製水で標線した液を過塩素酸(HClO4)でpH8.7となるように調整した液である。
【0056】
柔軟物質の試験結果を下記の表2~4に示した。
【0057】
【0058】
前記表2に示すように、実施例1の錠剤のオメプラゾールスルホンの含量が最も少ないので、安定性が最も優れていることが分かる。加速3ヶ月の場合、比較例1~3は、実施例1に比べて2倍以上のオメプラゾールスルホン柔軟物質の含量を有することが分かる。
【0059】
また、第2層及び第3層のすべてのコーティング剤としてPVAの代わりにHPMCを使用した比較例1は、第2層又は第3層のいずれかのコーティング剤としてPVAを用いた比較例2及び3よりも劣っている安定性を示すことを確認した。
【0060】
【0061】
前記表3に示すように、実施例1の錠剤は、その他の個々の柔軟物質の含量が最も少ないので、安定性が最も優れていることが分かる。加速1ヶ月及び3ヶ月の場合、比較例1~3は、実施例1に比べてほぼ3倍~5倍のその他の個々の柔軟物質の含量を有することが分かる。加速3ヶ月の場合、比較例1~3は、柔軟物質基準0.2%以下の含量を超えて安定性の要件を満たしていないことを確認した。
【0062】
また、第2層及び第3層のすべてのコーティング剤としてPVAの代わりにHPMCを使用した比較例1は、第2層又は第3層のいずれかのコーティング剤としてPVAを用いた比較例2及び3よりも劣っている安定性を示すことを確認した。
【0063】
【0064】
前記表4に示すように、実施例1の錠剤は、総柔軟物質の含量が最も少ないので、安定性が最も優れていることが分かる。
【0065】
結果として、実施例1の錠剤は、比較例1~3の錠剤に比べて、個々の柔軟物質及び総柔軟物質の含量において格段に優れた安定性を示すことが分かる。
【0066】
また、オメプラゾールと炭酸水素ナトリウムの接触を遮断するため、ポリビニルアルコールをコーティング剤として使用し、製剤の外部をコーティングするために、ポリビニルアルコールをコーティング剤として使用するとき、安定性が最も優れていることが分かる。