(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ホースクランプ
(51)【国際特許分類】
F16L 33/02 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
F16L33/02
(21)【出願番号】P 2020535769
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2019030778
(87)【国際公開番号】W WO2020031981
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】P 2018149573
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袖山 健
(72)【発明者】
【氏名】濱田 遼介
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-25592(JP,A)
【文献】実開昭49-118423(JP,U)
【文献】国際公開第2017/145311(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/063906(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/095990(WO,A1)
【文献】特開平10-318474(JP,A)
【文献】実開昭62-184281(JP,U)
【文献】米国特許第5819376(US,A)
【文献】米国特許第6038744(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に湾曲されてなり、ホースの外周を囲むように装着される板バネ本体と、該板バネ本体の周方向両端部に設けられた一対のツマミ部とを有し、前記板バネ本体は、前記一対のツマミ部が離反した状態で縮径し、前記一対のツマミ部を近接させたときに拡径するように構成されており、
前記板バネ本体は、前記ホースの周方向に沿って所定長さで延びる基部と、この基部の周方向一端側で且つ軸方向一側から延びる第1腕部と、前記基部の周方向他端側で且つ軸方向他側から延びる第2腕部とを有しており、
前記第1腕部及び前記第2腕部の延出方向先端側に、第1オーバーラップ部及び第2オーバーラップ部がそれぞれ形成されており、前記板バネ本体が縮径した状態で、前記第1オーバーラップ部及び前記第2オーバラップ部は、前記板バネ本体の周方向に重なり合い、かつ、前記板バネ本体を径方向から見たときに、前記板バネ本体の軸方向に重ならないように構成されており、
前記一対のツマミ部は、前記第1腕部及び前記第2腕部の延出方向先端から、前記板バネ本体の径方向外方に向けて屈曲して延びており、
前記一対のツマミ部を周方向に近接させ且つ軸方向に近接させた状態で、前記一対のツマミ部の対向する面に、前記板バネ本体を拡径状態に保持する、係合部がそれぞれ設けられており、
各係合部は、前記板バネ本体を径方向から見たときに、前記第1腕部及び前記第2腕部の、両オーバーラップ部の対向する側縁部よりも、反対側の側縁部寄りの位置となるように、各ツマミ部に設けられており、
一方のツマミ部に設けられた一方の係合部は、一方のツマミ部の、他方のツマミ部に対向する面に設けられた凹部又は貫通孔を有しており、
他方のツマミ部に設けられた他方の係合部は、他方のツマミ部の、一方のツマミ部に対向する面に設けられ、前記一方の係合部の凹部又は貫通孔に係脱する、凸部を有しており、
少なくとも一方のツマミ部の、他方のツマミ部に近接する一側部には、切欠き部が設けられており、
前記切欠き部を設けた一方のツマミ部には、前記切欠き部と、前記凹部又は前記貫通孔とを連通させる、開口が設けられており、
他方のツマミ部に設けられた前記凸部は、前記板バネ本体を拡径させて各係合部を互いに係合させる際に、前記開口を通過して前記凹部又は前記貫通孔内に入り込むように構成されていることを特徴とするホースクランプ。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記一対のツマミ部にそれぞれ設けられており、
前記板バネ本体を拡径させる際に、前記切欠き部どうしが互いに入り込んで、前記一対のツマミ部に設けた各係合部が互いに係合するように構成されている請求項1記載のホースクランプ。
【請求項5】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の配管どうしを、ホースを用いて接続する際に用いられるホースクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の配管どうしを、ホースを用いて接続する際には、パイプ状をなす配管の端部外周に可撓性のホースを被せ、このホース外周を更にホースクランプによって締付けることによって、配管にホースを固定する方法が広く用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、略円筒状に屈曲形成されたホースバンド本体と、このホースバンド本体の両端に設けられた第1つまみ片,第2つまみ片とを有する、ホースバンドが記載されている。前記ホースバンド本体の両側には、点対称の位置に、ほぼ同じ幅で形成された幅狭部がそれぞれ設けられており、一方の幅狭部の内側に、親指状に内方へ延びる、第1係止爪が突出形成されており、他方の幅狭部の内側に、小指状に内方へ延びる、第2係止爪が突出形成されている(段落0011参照)。そして、第1係止爪と第2係止爪とを係合させることで、ホースバンド本体が拡径状態となり、第1係止爪と第2係止爪との係合を解除することで、ホースバンド本体が縮径状態となり、ホースが締付け固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のホースバンドでは、ホース外周を囲むホースバンド本体の、両側に設けた各幅狭部の内側から、第1係止爪及び第2係止爪がそれぞれ突出しているため、両係止爪どうしが係合した状態では、一方の幅狭部の内側と、他方の幅狭部の内側との間に、比較的大きな隙間が形成されるようになっている(特許文献1の
図7参照)。これらの幅狭部の内側どうしの隙間は、両係止爪どうしの係合を解除して、ホースバンド本体を縮径させた状態でも維持される。その結果、金属製のホースバンドにより締付け圧力が大きく作用する部分(ホースバンド本体及び一対の幅狭部で締付け固定される部分)と、締付け圧力が作用しない部分(幅狭部の内側どうしの隙間部分)とが生じ、ホースバンドによる面圧が不連続となり、締付け圧力が作用しない部分で、ホースとパイプとの締付け固定力が低下して、ホースとパイプとのシール性が低下するおそれがあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ホースクランプを縮径させた状態において、ホースと、それに接続される配管やパイプ等との、シール性を向上させることができる、ホースクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、環状に湾曲されてなり、ホースの外周を囲むように装着される板バネ本体と、該板バネ本体の周方向両端部に設けられた一対のツマミ部とを有し、前記板バネ本体は、前記一対のツマミ部が離反した状態で縮径し、前記一対のツマミ部を近接させたときに拡径するように構成されており、前記板バネ本体は、前記ホースの周方向に沿って所定長さで延びる基部と、この基部の周方向一端側で且つ軸方向一側から延びる第1腕部と、前記基部の周方向他端側で且つ軸方向他側から延びる第2腕部とを有しており、前記第1腕部及び前記第2腕部の延出方向先端側に、第1オーバーラップ部及び第2オーバーラップ部がそれぞれ形成されており、前記板バネ本体が縮径した状態で、前記第1オーバーラップ部及び前記第2オーバラップ部は、前記板バネ本体の周方向に重なり合い、かつ、前記板バネ本体を径方向から見たときに、前記板バネ本体の軸方向に重ならないように構成されており、前記一対のツマミ部は、前記第1腕部及び前記第2腕部の延出方向先端から、前記板バネ本体の径方向外方に向けて屈曲して延びており、前記一対のツマミ部を周方向に近接させ且つ軸方向に近接させた状態で、前記一対のツマミ部の対向する面に、前記板バネ本体を拡径状態に保持する、係合部がそれぞれ設けられており、各係合部は、前記板バネ本体を径方向から見たときに、前記第1腕部及び前記第2腕部の、両オーバーラップ部の対向する側縁部よりも、反対側の側縁部寄りの位置となるように、各ツマミ部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホースクランプによれば、一対のツマミ部に、板バネ本体を拡径状態に維持する係合部を設け、板バネ本体の両腕部には係合部が存在しない構造にすると共に、各係合部は、両腕部の両オーバーラップ部の対向する側縁部よりも、反対側の側縁部寄りの位置となるように、各ツマミ部に設けられており、係合部をオーバーラップ部の対向する側縁部から出っ張らない構造とすることができるので、板バネ本体の縮径時において、両腕部に設けた両オーバーラップ部を、板バネ本体の軸方向に近接して配置させて、両オーバーラップ部の、対向する内側縁部どうしの隙間を小さくすることでき、ホースクランプで締付け固定するホースとパイプ等とのシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るホースクランプの第1実施形態を示しており、縮径状態での斜視図である。
【
図2】
図1とは異なる方向から見た場合の、同ホースクランプの縮径状態での斜視図である。
【
図3】同ホースクランプの拡径状態の斜視図である。
【
図5】同ホースクランプの縮径状態における正面図である。
【
図6】同ホースクランプの縮径状態における平面図である。
【
図7】同ホースクランプの拡径状態における斜視図である。
【
図8】(a)は
図7のA矢示における斜視図、(b)は
図7のB矢示における斜視図である。
【
図9】同ホースクランプの拡径状態における正面図である。
【
図10】同ホースクランプの拡径状態における平面図である。
【
図11】
図9のD-D矢示線における断面図である。
【
図12】同ホースクランプの拡径状態における側面図である。
【
図13】同ホースクランプを縮径状態から拡径させる際の状態を示す、平面説明図である。
【
図14】同ホースクランプにおいて、一対のツマミ部の他形状を説明するための、斜視図である。
【
図15】本発明に係るホースクランプの第2実施形態を示しており、拡径状態での要部拡大斜視図である。
【
図16】(a)は同ホースクランプの第1ツマミ部の要部拡大平面図、(b)は同ホースクランプの第2ツマミ部の要部拡大平面図である。
【
図17】本発明に係るホースクランプの第3実施形態を示しており、拡径状態での要部拡大斜視図である。
【
図18】(a)は同ホースクランプの第1ツマミ部の要部拡大平面図、(b)は同ホースクランプの第2ツマミ部の要部拡大平面図である。
【
図19】本発明に係るホースクランプの第4実施形態を示しており、拡径状態での要部拡大斜視図である。
【
図20】(a)は同ホースクランプの第1ツマミ部の要部拡大平面図、(b)は同ホースクランプの第2ツマミ部の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~14を参照して、本発明に係るホースクランプの、第1実施形態について説明する。
【0011】
例えば、自動車等の内部では各種の配管が配設されているが、これらの配管どうしを連結するため、ゴム等の材質からなる可撓性のホースが採用されている。
図1に示すように、本発明のホースクランプ10(以下、「クランプ10」という)は、パイプやチューブ等の配管1の一端部に被せられたホース5の外周に配置されて、該ホース5の外周を締付けて、配管1にホース5を固定するために用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、この実施形態におけるクランプ10は、
図4に示すような帯状の金属板を所定形状に打抜き、かつ、屈曲させることにより形成されるものであって、環状に湾曲されてなり、ホース5の外周を囲むように装着される板バネ本体20と、この板バネ本体20の周方向一端部に設けられた第1ツマミ部40と、同板バネ本体20の周方向他端部に設けられた第2ツマミ部50とを有している。なお、板バネ本体20と、一対のツマミ部40,50とは、ステンレスやバネ鋼材等の金属材料によって、一体形成されている。
【0013】
図1~
図4に示すように、板バネ本体20は、ホース5の周方向に沿って所定長さで延びる基部21と、この基部21の周方向E(
図4参照)の一端側で且つ軸方向F(
図4参照)の一側から延びる第1腕部23と、基部21の周方向Eの他端側で且つ軸方向Fの他側から延びる第2腕部25とを有している。いわば、両腕部23,25は、基部21の中心C(
図4参照)に対して、点対称となる位置に設けられている。なお、上記基部21の軸方向Fとは、基部21の周方向Eに直交する方向であり(幅方向ともいえる)、クランプ10により締付け固定するホース5や配管1の軸心に沿った方向と同じ方向を意味する。また、上記の周方向E及び軸方向Fは、板バネ本体20や、一対のツマミ部40,50においても同様である。
【0014】
そして、上記板バネ本体20は、
図1,
図2,
図5等に示すように、一対のツマミ部40,50が離反した状態で縮径した自由状態となり、
図3や
図9等に示すように、一対のツマミ部40,50を近接させたときに弾性力に抗して拡径するように構成されている。
【0015】
また、
図4に示すように、第1腕部23及び第2腕部25は、基部21の側縁部21aから中心線L(基部21の軸方向Fの中央に沿った線)までの長さよりも幅狭で、かつ、一定幅で延びている。更に、両腕部23,25は、同一幅で基部21から延出している。なお、
図4に示すように、各腕部23,25の外側縁部23a,25aは、基部21の両側縁部21a,21aに対して、段差や切欠き等がないように直線状に連続している(面一となっている)。
【0016】
更に、基部21の、周方向Eの一端側で且つ軸方向Fの他側、及び、周方向Eの他端側で且つ軸方向Fの一側には、基部21を次第に幅狭とするテーパ部22が形成されており、基部21から両腕部23,25に至る応力分布の急激な変化を緩和するようになっている。
【0017】
なお、この実施形態における両腕部23,25は同一幅で形成されているが、例えば、一方の腕部を、他方の腕部に対して幅狭又は幅広に形成してもよく、両腕部が、基部の板幅(軸方向Fに沿った長さ)の範囲内で設けられていればよい。
【0018】
また、第1腕部23及び第2腕部25の延出方向先端側に、第1オーバーラップ部27及び第2オーバーラップ部29がそれぞれ形成されている。そして、
図5に示すように、板バネ本体20が縮径した自由状態で、第1オーバーラップ部27及び第2オーバーラップ部29は、板バネ本体20を軸方向F(
図1参照)から見たときに、第1腕部23及び第2腕部25の延出方向先端側が、板バネ本体20の周方向Eに重なり合い、かつ、
図6に示すように、板バネ本体20を径方向R(
図5参照)から見たときに、板バネ本体20の軸方向Fに重ならないように構成されている。なお、径方向とは、クランプの径方向外方からクランプの軸心に向う方向、又は、クランプの軸心からクランプの径方向外方に向う方向を意味する。
【0019】
また、板バネ本体20が縮径した自由状態では、
図6に示すように、板バネ本体20の周方向に重なり且つ軸方向Fに重ならない両オーバーラップ部27,29は、その内側縁部27a,29a(本発明における「対向する側縁部」)どうしが対向するように、板バネ本体20の軸方向Fに位置ずれし且つ隣接して配置されるようになっている。なお、各オーバーラップ部27,29の内側縁部27a,29aとは、各オーバーラップ部27,29の、板バネ本体20の軸方向Fの中央に近接する側縁部を意味する。また、この実施形態では、基部21から一定幅で延びる両オーバーラップ部27,29の、対向する内側縁部27a,29aは互いに平行に配置されることとなり、これらの内側縁部27a,29aの間に、一定幅の隙間Sが板バネ本体20の周方向Eに沿って形成されるようになっている。なお、各オーバーラップ部27,29の内側縁部27a,29aとは、軸方向Fにおいて反対側の側縁部を、外側縁部27b,29bとする。
【0020】
また、板バネ本体20の周方向両端部に設けられた一対のツマミ部40,50は、第1腕部23及び第2腕部25の延出方向先端から、板バネ本体20の径方向外方に向けて屈曲して延びている。なお、一対のツマミ部40,50は、図示しないプライヤやペンチ等の工具や、クランプ拡径装置等によって、摘まれる部分である。
【0021】
図1、
図5、
図9等に示すように、この実施形態における第1ツマミ部40は、第1腕部23の延出方向先端から、板バネ本体20の径方向外方(外径方向)に向けて立ち上がるように、所定角度で屈曲して延びる屈曲部41と、該屈曲部41の先端から、板バネ本体20の径方向内方(内径方向)に向けて折り返すように屈曲されてなる操作部43とを有している。
【0022】
また、
図6に示すように、前記操作部43は、その先端部43aが、第2ツマミ部50を設けた第2腕部25側へ向けて、板バネ本体20の軸方向Fに沿って延びている。この操作部43は、板バネ本体20が縮径した自由状態では、板バネ本体20の板幅に収まり(
図6参照)、板バネ本体20が拡径した状態では、
図10や
図12に示すように、板バネ本体20の軸方向Fの一側縁部から突出する、長さで設けられている。
【0023】
また、
図4や
図6に示すように、屈曲部41の、第2ツマミ部50に近接する一側部、すなわち、軸方向Fにおける内側部には、切欠き部44が設けられている。更に、第1ツマミ部40の、軸方向Fにおける内側部(第2ツマミ部50に近接する一側部)には、前記切欠き部44から、第1腕部23の延出方向先端に向けて次第に幅広とする、傾斜部45が形成されている。
【0024】
一方、この実施形態における第2ツマミ部50は、
図1、
図5、
図9等に示すように、第2腕部25の延出方向先端から、板バネ本体20の径方向外方に向けて立ち上がるように、所定角度で屈曲して延びる屈曲部51と、該屈曲部51の先端から、板バネ本体20の径方向内方に向けて折り返すように屈曲されてなる操作部53とを有している。
【0025】
また、
図4や
図6に示すように、屈曲部51の、第1ツマミ部40に近接する一側部、すなわち、軸方向Fにおける内側部には、切欠き部54が設けられている。更に、第2ツマミ部50の、軸方向Fにおける内側部(第1ツマミ部40に近接する一側部)には、前記切欠き部54から、第2腕部25の延出方向先端に向けて次第に幅広とする、傾斜部55が形成されている。
【0026】
なお、一対のツマミ部としては、上記形状に限定されるものではない。例えば、
図14に示すように、各ツマミ部40,50の操作部43A,53Aを、屈曲部41,51に対して折り返すように屈曲させずに、屈曲部41,51からそのまま延ばした形状としてもよく、プライヤやペンチ等の工具などによって摘むことが可能であればよい。
【0027】
また、
図1,
図5,
図6に示すように、一対のツマミ部40,50が周方向Eに離反して、板バネ本体20が縮径した自由状態から、一対のツマミ部40,50を板バネ本体20の周方向Eに近接移動させ、かつ、板バネ本体20の軸方向Fに互いに近接移動させて撓み変形させると、
図3及び
図7~9に示すように、第1ツマミ部40の屈曲部41の面47(第1腕部23の外周面に近接する外面とは、反対側の内面)と、第2ツマミ部50の屈曲部51の面57(第2腕部25の外周面に近接する外面とは、反対側の内面)とが、所定範囲で互いに対向して配置されるようになっている。
【0028】
そして、上述したように、一対のツマミ部40,50を周方向Eに近接させ且つ軸方向Fに近接させた状態で、一対のツマミ部40,50の対向する面47,57(以下、単に「対向面47」,「対向面57」ともいう)に、板バネ本体20を拡径状態に保持する、係合部がそれぞれ設けられている。
【0029】
この実施形態では、一対のツマミ部40,50における係合部は、
図8(a),(b)に示すように、凹部60,60をそれぞれ有しており、これらの凹部60,60の周縁部が、相手側の凹部60に係脱する凸部62をなしており、凹凸嵌合する構造となっている(
図11参照)。
図2を併せて参照すると、第1ツマミ部40の対向面47、及び、第2ツマミ部50の対向面57に、略四角形の凹状をなした凹部60が、各ツマミ部40,50を貫通しないように所定深さで、それぞれ設けられている。また、各凹部60の、内側縁部27a側の周縁部が、各ツマミ部40,50の屈曲部41,51の延出方向に沿って凸状に延びる、凸部62をなしている。更に、各凸部62は、各ツマミ部40,50の対向面47,57からは、出っ張らないようになっている。
【0030】
また、各係合部(凹部60や凸部62)は、
図6に示すように、板バネ本体20を径方向Rから見たときに、第1腕部23及び第2腕部25の、両オーバーラップ部27,27の対向する内側縁部27a,27aよりも、軸方向Fにおいて反対側の外側縁部27b,29b寄りの位置となるように、各ツマミ部40,50に設けられている。更に、板バネ本体20が縮径した自由状態で、両ツマミ部40,50に設けた各係合部(凹部60や凸部62)は、板バネ本体20の軸方向Fに互いに位置ずれして形成されている(
図6参照)。
【0031】
そして、板バネ本体20を拡径した状態に保持すべく、
図6の矢印E1,E1に示すように、一対のツマミ部40,50を板バネ本体20の周方向Eに近接させて、
図13に示すように板バネ本体20を拡径させ、かつ、その状態から
図13の矢印F1,F1に示すように、板バネ本体20の軸方向Fに互いに近接するように幅寄せして撓み変形させて、両ツマミ部40,50の凹部60と凸部62とを軸方向Fに重ね合わせる。すると、第1ツマミ部40の凹部60内に、第2ツマミ部50の凸部62が、開口64を通過して入り込むと共に、第2ツマミ部50の凹部60内に、第1ツマミ部40の凸部62が、開口64を通過して入り込む。その結果、
図11に示すように、各凹部60の内周縁に各凸部62がそれぞれ係合すると共に、凹部60内に凸部62が入り込むことで、凸部62が凹部60から抜け出ないように保持されて、凹部60と凸部62とによる凹凸嵌合がなされて、板バネ本体20が弾性復元力に抗して拡径した状態に保持されるようになっている。
【0032】
なお、このクランプ10においては、板バネ本体20を拡径した状態に保持するための係合部を、板バネ本体20に設けず、板バネ本体20に屈曲形成された一対のツマミ部40,50に設けたので、一対のツマミ部40,50の係合部どうしを係合させて、板バネ本体20が拡径保持された状態で、
図9に示すように、板バネ本体20を軸方向Fから見たときに、板バネ本体20の一対の腕部23,25は、周方向Eで重ならないように構成されている。
【0033】
また、両ツマミ部40,50の各係合部は、板バネ本体20の軸方向Fに互いに位置ずれして形成され、これらを軸方向Fに近接させて撓み変形させた状態で係合させるようになっているので、
図11の矢印F2,F2に示すように、各ツマミ部40,50が互いに軸方向Fに離れる方向に弾性復元力が作用するため、各凹部60の、オーバーラップ部27,29の内側縁部27a,29a側の内周縁に、各凸部62が係合するようになっている。
【0034】
なお、この実施形態においては、一対のツマミ部40,50を周方向Eに近接させて板バネ本体20を拡径させ、かつ、板バネ本体20の軸方向Fに互いに近接させて、各係合部を係合させる際に、両ツマミ部40,50の軸方向Fにおける内側部に、切欠き部44,54がそれぞれ設けられているので、
図7や
図10に示すように、切欠き部44,54どうしが互いに入り込んだ状態で、各係合部が互いに係合するようになっている。
【0035】
また、板バネ本体20が拡径保持された状態から縮径させる際には、両ツマミ部40,50の操作部43,53をプライヤやペンチ等の工具で摘んで、両ツマミ部40,50を周方向Eに近接させる。すると、第1ツマミ部40側の開口64を、第2ツマミ部50側の凸部62が通過して、第1ツマミ部40側の凹部60から抜け出ると共に、第2ツマミ部50側の開口64を、第1ツマミ部40側の凸部62が通過して、第2ツマミ部50側の凹部60から抜け出て、両係合部どうしの係合が解除される。このとき、両ツマミ部40,50に設けた各係合部は、板バネ本体20の軸方向Fに互いに位置ずれして形成され、両ツマミ部40,50を軸方向Fに近接させて撓み変形させた状態で係合させているので、両係合部の係合を解除すると、両ツマミ部40,50の弾性復元力によって、両係合部どうしが軸方向Fに重ならない位置となり、この状態で、そのままプライヤやペンチ等の工具を開いて、両ツマミ部40,50を周方向Eに離反させることで、板バネ本体20を縮径させることが可能となる。
【0036】
なお、この実施形態においては、第1ツマミ部40及び第2ツマミ部50に、傾斜部45,55がそれぞれ形成されているので、上述したように、板バネ本体20を拡径保持状態から縮径させるべく、両ツマミ部40,50の操作部43,53をプライヤやペンチ等の工具で摘んで、両ツマミ部40,50を周方向Eに近接させる際に、第1ツマミ部40の傾斜部45に、第2ツマミ部50の屈曲部51が当接して、第2ツマミ部50を、その撓み方向とは反対方向に誘導すると共に(
図10の矢印F2参照)、第2ツマミ部50の傾斜部55に、第1ツマミ部40の屈曲部41が当接して、第1ツマミ部40を、その撓み方向とは反対方向に誘導するようになっている(
図10の矢印F2参照)。このような構成を採用したことで、板バネ本体20を拡径保持状態から縮径させる際の、作業性を向上させることができる。特に、凹部60内から凸部62を抜き出した後に、再び、凸部62が凹部60に入り込んでしまうことを抑制でき、クランプ10の縮径作業性を高める。
【0037】
なお、この実施形態における係合部としては、凹部60や凸部62等を有するものとしたが、凹部ではなく、例えば、ツマミ部を貫通する貫通孔等とした構造としてもよく、また、一方のツマミ部のみに凹部や貫通孔を設けて、他方のツマミ部に凸部を設けた構造としてもよく(これらの構造については後述の実施形態で説明する)、両ツマミ部に設けた係合部どうしが互いに係合可能で、板バネ本体の拡径状態を保持できる構造であれば、特に限定はされない。
【0038】
次に、上記構成からなるクランプ10を用いて、ゴム等の材質からなる可撓性のホース5を、パイプ等の配管1に締め付け固定する際の手順について説明する。
【0039】
まず、
図1や
図2に示すように、一対のツマミ部40,50が周方向Eに離反して、板バネ本体20が縮径した状態から、両ツマミ部40,50をプライヤやペンチ等の工具を摘んで周方向Eに近接させて、板バネ本体20を拡径させると共に(
図13参照)、この状態から更に軸方向Fに近接させて(
図13の矢印F1参照)撓み変形させ、両ツマミ部40,50の凹部60及び凸部62どうしを軸方向Fに重ねる。すると、両ツマミ部40,50の切欠き部44,54どうしが互いに入り込むと共に、両ツマミ部40,50の凹部60内に、相手側のツマミ部40,50の凸部62,62が、開口64,64を通過してそれぞれ入り込んで、各凹部60の内周縁に各凸部62がそれぞれ係合する(
図11参照)。その結果、
図3や
図7に示すように、板バネ本体20を拡径した状態に保持することができる。
【0040】
次いで、配管1の一端部外周に装着されたホース5の外周に、拡径状態のクランプ10を配置した後、両ツマミ部40,50の操作部43,53を適当な工具で摘んで、両ツマミ部40,50を周方向Eに近接させる。すると、両ツマミ部40,50の開口64から、相手側のツマミ部40,50の凸部62が通過して、両ツマミ部40,50の凹部60,60内から、相手側のツマミ部40,50の凸部62,62がそれぞれ抜け出るので、両係合部どうしの係合が解除される。それと共に、両ツマミ部40,50の傾斜部45,55によって、相手側のツマミ部40,50の屈曲部41,51が当接して、両ツマミ部40,50が撓み方向とは反対方向にそれぞれ誘導され(
図10の矢印F2,F2参照)、両ツマミ部40,50の係合部どうしが軸方向Fに重ならない位置となる。この状態で、両ツマミ部40,50を周方向Eに離反させることで、板バネ本体20が縮径するので、
図1や
図2に示すように、ホース5を締め付けて配管1に固定することができる。
【0041】
そして、このクランプ10においては、一対のツマミ部40,50に、板バネ本体20を拡径状態に保持する係合部(ここでは凹部60及び凸部62)を設けたので、板バネ本体20の両腕部23,25には係合部が存在しない構造にすることができると共に、係合部は、両オーバーラップ部27,27の対向する内側縁部27a,27aよりも、軸方向Fにおいて反対側の外側縁部27b,29b寄りの位置となるように、各ツマミ部40,50に設けられているので、係合部をオーバーラップ部27,29の内側縁部27a,29aから、板バネ本体20の軸方向Fに出っ張らない構造とすることができる。そのため、
図6に示すように、板バネ本体20の縮径時において、両腕部23,25に両オーバーラップ部27,29を、板バネ本体20の軸方向Fに近接して配置させて、両オーバーラップ部27,29の、対向する内側縁部27a,29aどうしの隙間Sをなるべく小さくすることができる。その結果、クランプ10で締付け固定するホース5と配管1とのシール性を向上させることができる。
【0042】
また、この実施形態においては、一方のツマミ部(ここでは両方のツマミ部40,50)の係合部は、凹部60を有しており、他方のツマミ部(相手側のツマミ部50,40)に設けられた他方の係合部は、前記凹部60に係脱する凸部62を有している。そのため、一方のツマミ部の凹部に他方のツマミ部の凸部を係合させる、ここでは、第1ツマミ部40の凹部60に第2ツマミ部50の凸部62を係合させるか、第2ツマミ部50の凹部60に第1ツマミ部40の凸部62を係合させることで、板バネ本体20を拡径した状態に保持することができる。このとき、凹部60に凸部62が入り込むので、凹部60から凸部62を外れにくくすることができ、板バネ本体20の拡径状態をより確実に保持することができる。また、凹部60は、プレス成型や内抜き成形で形成することができるので、係合部を切り起こしで形成する場合等と比べて、係合部の形成が容易となる。なお、係合部が凹部ではなく貫通孔を有する場合であっても、上記効果と同様の効果を得ることができる。
【0043】
更に、この実施形態においては、少なくとも一方のツマミ部(ここでは両方のツマミ部40,50)に、切欠き部44,54と、凹部60とを連通させる、開口64が設けられており、板バネ本体20を拡径させるべく各係合部を互いに係合させる際に、他方のツマミ部(ここでは両方のツマミ部40,50)の凸部62が、開口64を通過して凹部60内に入り込むように構成されている。そのため、他方のツマミ部側に設けた凸部62を、同ツマミ部の厚さ方向表面から突出しない凸形状とすることができ、凸部62を容易に形成することができる。なお、開口64がない場合に、凹部60に凸部62を入り込ませようとすると、凸部62を、ツマミ部の厚さ方向表面から突出する構成としなければならず、凸部62の成形が困難となる。また、係合部が凹部ではなく貫通孔を有する場合であっても、上記効果と同様の効果を得ることができる。
【0044】
更に、この実施形態においては、切欠き部44,54は、一対のツマミ部40,50にそれぞれ設けられており、板バネ本体20を拡径させる際に、切欠き部44,54どうしが互いに入り込んで、一対のツマミ部40,50に設けた各係合部が互いに係合するように構成されている。そのため、
図13に示すように、一対のツマミ部40,50を周方向Eに近接させて、板バネ本体20を拡径させた状態で、更に
図13の矢印F1,F1に示すように、一対のツマミ部40,50を軸方向Fに近接移動させる際の、一対のツマミ部40,50の移動量を増大させることができる。その結果、一対のツマミ部40,50や、両腕部23,25の撓み変形量を増大させることができるため、両係合部どうしの係合を解除して、板バネ本体20を縮径させる際に、スムーズに縮径させることができる。
【0045】
更に、この実施形態においては、一対のツマミ部40,50の各係合部は、凹部60,60をそれぞれ有しており、各凹部60の周縁部が凸部62をなしている。そのため、板バネ本体20が縮径した状態から、一対のツマミ部40,50を周方向Eに近接させて板バネ本体20を拡径させた状態で、一対のツマミ部40,50を軸方向Fに近接移動させて、一対のツマミ部40,50の係合部どうしを互いに係合させる際に、一方の係合部の凸部62が他方の係合部の凹部60に入り込むと共に、一方の係合部の凹部60に他方の係合部の凸部62が入り込んで、
図11に示すように、両係合部の凹部60及び凸部62が互いに凹凸嵌合するので、板バネ本体20を拡径した状態に保持するための、保持力をより高めることができる。
【0046】
図15及び
図16には、本発明に係るホースクランプの、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この実施形態のホースクランプ10A(以下、「クランプ10A」という)は、一対のツマミ部40,50に設けた係合部の構造が、前記実施形態と異なっている。
【0048】
すなわち、
図15や
図16(a)に示すように、第1ツマミ部40側の係合部は、第1ツマミ部40の板厚を貫通してなる貫通孔66を有しており、一方、第2ツマミ部50側の係合部は、前記実施形態と同様の凹部60を有している(
図16(b)参照)。また、第1ツマミ部40の貫通孔66と切欠き部44とは、開口64によって連通されている。更に、第1ツマミ部40側の貫通孔66の周縁部が、第2ツマミ部50側の凹部60に係脱する、凸部62Aをなしている。
【0049】
そして、この実施形態においては、第1ツマミ部40の凸部62Aを第2ツマミ部50の凹部60に係合させることで、板バネ本体20を拡径状態に保持することができる(
図15参照)。一方、第2ツマミ部50の凹部60内から第1ツマミ部40の凸部62Aを抜き出すことで、板バネ本体20を縮径させることができる。
【0050】
図17及び
図18には、本発明に係るホースクランプの、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0051】
この実施形態のホースクランプ10B(以下、「クランプ10B」という)は、一対のツマミ部40,50に設けた係合部の構造が、前記実施形態と異なっている。
【0052】
すなわち、
図17や
図18(a),(b)に示すように、両ツマミ部40,50の係合部は、各ツマミ部40,50を貫通する貫通孔66をそれぞれ有しており、その周縁部が凸部62,62をなしている。そして、両ツマミ部40,50の凸部62,62が、開口64,64を通過して、相手側のツマミ部50,40の貫通孔66,66内にそれぞれ入り込んで、凸部62,62どうしが互いに係合することで、板バネ本体20を拡径状態に保持することができる(
図17参照)。一方、両ツマミ部40,50の貫通孔66,66から、相手側のツマミ部50,40の凸部62,62をそれぞれ抜き出すことで、板バネ本体20を縮径させることができる。
【0053】
図19及び
図20には、本発明に係るホースクランプの、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この実施形態のホースクランプ10C(以下、「クランプ10C」という)は、一対のツマミ部40,50に設けた係合部の構造が、前記実施形態と異なっている。
【0055】
すなわち、
図19や
図20(a)に示すように、第1ツマミ部40側の係合部は、第1ツマミ部40の板厚を貫通してなる貫通孔66を有しており、一方、第2ツマミ部50側の係合部は、凹部60Cを有している。ただし、この凹部60Cには、前記第1,第2実施形態における凹部60のように、切欠き部54と連通させる開口64を有しない形状となっている。また、第1ツマミ部40側の貫通孔66の周縁部は、第2ツマミ部50側の凹部60Cに係脱する、凸部62Cをなしている。この凸部62Cは、前記第2実施形態における凸部62Aと比べて短いものとなっている。
【0056】
そして、この実施形態においては、第1ツマミ部40の凸部62Cを第2ツマミ部50の凹部60Cに係合させることで、板バネ本体20を拡径状態に保持することができる(
図19参照)。一方、第2ツマミ部50の凹部60C内から第1ツマミ部40の凸部62Cを抜き出すことで、板バネ本体20を縮径させることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10,10A,10B,10C ホースクランプ(クランプ)
20 板バネ本体
21 基部
23 第1腕部
25 第2腕部
27 第1オーバーラップ部
27a 内側縁部
27b 外側縁部
29 第2オーバーラップ部
29a 内側縁部
29b 外側縁部
40 第1ツマミ部
44 切欠き部
47 対向面
50 第2ツマミ部
54 切欠き部
57 対向面
60,60C 凹部
62,62A,62C 凸部
64 開口
66 貫通孔