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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】抗-VISTA抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220118BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220118BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220118BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220118BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220118BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220118BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61K39/395 T
A61K39/395 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020542518
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 KR2018012494
(87)【国際公開番号】W WO2019078699
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0136632
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520138564
【氏名又は名称】ファーマブシン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンエ
(72)【発明者】
【氏名】ビュン サン スン
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジュン ミン
(72)【発明者】
【氏名】アン スンホ
(72)【発明者】
【氏名】オ クンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ ウォン スプ
(72)【発明者】
【氏名】パク ミ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ド-ユン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジン-サン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/207717(WO,A1)
【文献】特表2017-502667(JP,A)
【文献】国際公開第2017/181109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号7の重鎖CDR1、配列番号8の重鎖CDR2及び配列番号9の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号10の軽鎖CDR1、配列番号11の軽鎖CDR2及び配列番号12の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号13の重鎖CDR1、配列番号14の重鎖CDR2及び配列番号15の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号16の軽鎖CDR1、配列番号17の軽鎖CDR2及び配列番号18の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号19の重鎖CDR1、配列番号20の重鎖CDR2及び配列番号21の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号22の軽鎖CDR1、配列番号23の軽鎖CDR2及び配列番号24の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号33の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号35の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号36の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号37の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号38の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号39の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、 配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、VISTA(V-domain Ig Suppressor of T-cell Activation)に結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号25、27、29、31及び49から構成される群から選ばれる重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号26、28、30、32、41~48及び50から構成される群から選ばれる軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸。
【請求項5】
請求項の核酸を含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項の発現ベクターで形質転換された細胞。
【請求項7】
次の段階を含むVISTAに結合する抗体又はその抗原結合断片の製造方法:
(a)請求項の細胞を培養する段階;及び
(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項の抗体又はその抗原結合断片を含む、PD-1抗体又はPD-L1抗体との併用投与用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗-VISTA抗体又はその抗原結合断片、これをコードする核酸、該核酸を含むベクター、該ベクターで形質転換された細胞、前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法、これを含む自己免疫疾患の予防又は治療用組成物、及びPD-1抗体又はPD-L1抗体との併用投与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫システムは、外部から侵入する病原菌などに対抗するために細胞と組織が関与するネットワークシステムである。反復的に露出される非自己抗原(non-self antigen)に対応するための兔疫体系には、大きく、抗体を用いたB-細胞反応(B-cell response)、細胞を媒介に作動するT-細胞反応(T-cell response)がある。それらの他に、病源体に対して即時反応できる体系もあるが、大食細胞(macrophage)、NK細胞(NK cell)及び好中球(neutrophil)などの細胞が抗原を除去することに直接関与する。免疫システムは、自己抗原(self antigen)に対しては免疫システムが作動しないようにクローン選別(clonal selection)などが個体発達の初期に作動する。しかし、免疫システムが自己抗原に対して作動することもあるが、これは疾患の原因になる。
【0003】
リウマチ関節炎はこのような自己免疫疾患の代表疾患である。腫瘍においてもこのような免疫回避機序が作動するということが、様々な研究から明らかになった。これらは免疫細胞の活性を抑制又は増加させることによって抗原に対する免疫を抑制又は増加させることがある。これらの因子に関与する物質を免疫チェックポイント(immune checkpoint)と呼ぶ。最近ではこのような腫瘍に対する免疫抑制機能を妨害したり免疫活性に関与する因子などをより強化したりすることによって腫瘍を治療しようとする様々な試みがなされている。
【0004】
2010年に免疫チェックポイントであるCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4)に対する遮断抗体が悪性黒色腫患者に初めて適用されて約20%の患者で明確な治療効果が立証され、陰性的免疫調節(negative immune regulator)機能を有する免疫チェックポイントを標的する治療抗体を用いてその作用を抑制させることによって抗癌免疫反応を亢進させ、癌を治療する新しい治療概念が台頭してきた。
【0005】
次に開発された抗-PD-1又は抗-PD-L1抗体は、抗-CTLA-4抗体に比べてより優れた効果を示し、特にCTLA-4抗体治療中に患者に現れる深刻な副作用が著しく減り、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、膀胱癌において非常に積極的に用いられている。
【0006】
特に、今までの抗癌免疫療法は、従来の癌治療法、すなわち、手術、抗癌剤、放射線治療などに失敗した患者に対して間欠的に選択されたが、副作用の減った抗―PD-1/PD-L1抗体の開発によって一次治療様式(modality)として選択されており、既存の治療法に反応しない、様々な癌腫、例えば胃癌、肝癌などへも治療の範囲を広げ、積極的に臨床試験を進めている。
【0007】
PD-1標的治療剤は、T-細胞の免疫調節を活性化させる機序を有しており、PD-L1はPD-1のリガンドであり、腫瘍細胞で発現するPD-L1に結合してT-細胞による免疫抑制を妨害することによって抗癌活性を示す。このような活性をより極大化するためには、PD-1/PD-L1とは重複しない免疫抑制機序の組成物が必要である。それらの物質と既存治療剤との併用治療は腫瘍患者の治療効能を改善する上で非常に有用な手段になるだろう。
【0008】
VISTA(V-domain-containing Ig Suppressor of T-cell Activation)は、最近に明らかになった免疫チェックポイント物質であり、T-細胞の活性を直接抑制するものと知られている。VISTAの発現は、造血母細胞(hemotopoietic compartment)で発現し続くが、中でも、骨髄性(myeloid)系列細胞で最も発現し、CD4、CD8T細胞及びFoxp3CD4調節T細胞(Foxp3CD4 regulatory T cells)では相対的に発現量が低いと知られている。T細胞を含む大部分の免疫細胞で発現するが、骨髄性(myeloid)細胞で最も発現すると知られている。したがって、VISTAを抑制する分子はPD-1又はPD-L1と異なる標的点を有しており、このことから、PD-1/PD-L1治療剤との併用治療における効能拡大が期待できる。
【0009】
構造的には細胞外免疫グロブリンV(IgV)ドメイン(extracellular immunoglobulin V(IgV)domain)を有している点でTIMファミリーに類似しているといえ、ヒトとマウスのVISTAアミノ酸配列は約90%の相同性があることが明らかになった。実験によれば、VISTAの細胞外ドメインが抗体重鎖のFc部位と結合した形態のVISTA-FcやVISTA全アミノ酸配列を発現しているAPCs(antigen presenting cell)がリガンドとして作用し、VISTAによってT細胞増殖(T-cell proliferation)とサイトカイン(cytokine)の発現を抑制すると知られている。また、VISTA特異的な抗体の場合、自己免疫脳脊髓炎(autoimmune encephalomyelitis)モデルにおいて疾患の重症度を増加させることもあれば、抗腫瘍免疫活性を高めることもあると知られている(Le Mercier I,et al.,2014)。
【0010】
このようなVISTAの免疫抑制活性を用いて腫瘍抑制治療剤としての開発も可能であるが、VISTAが有する本来の免疫抑制活性をさらに高めることによってGvHD(Graft versus Host Disease)及び自己免疫疾患の治療剤として使用することもできる。マウスVISTAに対する抗体が、野生型T-細胞(wild type T-cell)によって誘導されるGvHDを抑制できることが究明されたのがその例に当たるといえよう(Files,DB et al.,2011)。これは、エピトープ(epitope)によって抗体の活性がアゴニスト(agonist)又はアンタゴニスト(antagonist)として働き得るということを示す。したがって、VISTAに対する抗体を選別するとき、2つの機能を有する抗体を選別できることが期待できる。
【0011】
このような技術的背景下で、本出願の発明者らは抗-VISTA抗体を開発するために努力した。その結果、本発明者らは、VISTAに目的の結合力を示す抗-VISTA抗体を開発し、このような抗-VISTA抗体が目的の免疫抗癌剤又は自己免疫疾患治療剤の役割を果たし得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、VISTAに対する新規抗体又はその抗原結合断片を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記核酸を含むベクター、前記ベクターで形質転換された細胞及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む腫瘍又は自己免疫疾患の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む、PD-1抗体又はPD-L1抗体と併用投与するための組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明は、配列番号1、7、13及び19から構成される群から選ばれる重鎖CDR1、
配列番号2、8、14及び20から構成される群から選ばれる重鎖CDR2、及び
配列番号3、9、15及び21から構成される群から選ばれる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに
配列番号4、10、16及び22から構成される群から選ばれる軽鎖CDR1、
配列番号5、11、17及び23から構成される群から選ばれる軽鎖CDR2、及び
配列番号6、12、18、24、34~40から構成される群から選ばれる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む、VISTA(V-domain Ig Suppressor of T-cell Activation)に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0019】
本発明はまた、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0020】
本発明はまた、前記ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0021】
本発明はまた、次の段階を含む前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する:(a)前記細胞を培養する段階;及び(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階である。
【0022】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む、腫瘍又は自己免疫疾患の予防又は治療用組成物を提供する。本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片を腫瘍又は自己免疫疾患の患者に投与する段階を含む、腫瘍又は自己免疫疾患の予防又は治療方法を提供する。本発明はさらに、前記抗体又はその抗原結合断片のVISTAの免疫抑制機序妨害用途及びこれを用いた腫瘍の予防又は治療用途、若しくは前記抗体又はその抗原結合断片のVISTAの免疫抑制能を増加させる用途及びこれによる自己免疫疾患の予防又は治療用途を提供する。
【0023】
本発明はさらに、前記抗体又はその抗原結合断片を含む、PD-1抗体又はPD-L1抗体との併用投与用組成物を提供する。本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片をPD-1抗体又はPD-L1抗体と共に患者に投与する段階を含む腫瘍の予防又は治療方法を提供する。本発明はさらに、腫瘍治療において前記抗体又はその抗原結合断片をPD-1抗体又はPD-L1抗体と併用投与するための用途を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る抗-VISTA抗体又はその抗原結合断片は、VISTAに目的する結合力を示し、目的する癌/腫瘍又は自己免疫疾患の予防又は治療に有用である。本発明によれば、既存の免疫チェックポイントを標的とする治療剤と異なる標的ポイントを有する治療剤を開発することによって、腫瘍の治療において既存治療剤との併用治療及び単独治療法を提供することができ、免疫活性を抑制するチェックポイントの活性を強化することによって新しい免疫抑制治療法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】VISTAを発現しているCHO-K1細胞に単クローンscFvファージを反応させてVISTA発現細胞と単クローンscFvファージが結合するか否かを確認した結果である。
図2】選別された抗-VISTA抗体とヒト及びマウスVISTA抗原の交差反応性(cross reactivity)が存在するか否かを確認するためのELISA測定結果である。
図3】ヒト及びマウスVISTAを発現しているCHO-K1細胞への選別された抗-VISTA抗体の結合力を確認した結果である。
図4】ヒト末梢血液allo-MLR反応で生産されたIFN-γをELISA方法で測定した結果である。
図5】抗-VISTA抗体投与群で有意の体重減少があることを示す結果である。
図6】抗-VISTA抗体投与群で有意の腫瘍重さの減少があることを示す結果である。
図7】最適化抗-VISTA抗体の機能を評価するために、混合リンパ球反応試験法(mixed Lymphocyte Reaction,MLR)によって有効に細胞が増殖することを示す結果である。
図8】最適化抗-VISTA抗体の機能を評価するために、混合リンパ球反応試験法(mixed Lymphocyte Reaction,MLR)によってサイトカイン分泌が増加することを確認した結果である。
図9】最適化抗-VISTA抗体投与群で有意の体重減少があることを示す結果である。
図10】最適化抗-VISTA抗体投与群で有意の腫瘍重さの減少があることを示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特に定義しない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家にとって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法は、当該技術分野でよく知られており、通常使われるものである。
【0027】
本発明は一観点において、配列番号1、7、13及び19から構成される群から選ばれる重鎖CDR1、
配列番号2、8、14及び20から構成される群から選ばれる重鎖CDR2、及び
配列番号3、9、15及び21から構成される群から選ばれる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに
配列番号4、10、16及び22から構成される群から選ばれる軽鎖CDR1、
配列番号5、11、17及び23から構成される群から選ばれる軽鎖CDR2、及び
配列番号6、12、18、24、34~40から構成される群から選ばれる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む、VISTA(V-domain Ig Suppressor of T-cell Activation)に結合する抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0028】
本明細書で使われる用語、“抗体(antibody)”は、VISTAに特異的に結合する抗-VISTA抗体を意味する。本発明の範囲にはVISTAに特異的に結合する完全な抗体の形態だけでなく、前記抗体分子の抗原結合断片も含まれる。
【0029】
完全な抗体は、2本の全長軽鎖及び2本の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖の定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0030】
抗体の抗原結合断片又は抗体断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうちFabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域及び重鎖の最初の定常領域(CH1)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有する点でFabと異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域だけを有する最小の抗体断片であり、Fv断片を生成する組換え技術は、PCT国際公開特許出願WO88/10649、WO88/106630、WO88/07085、WO88/07086及びWO88/09344に開示されている。二本鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されており、一本鎖Fv(single-chain Fv,scFv)は一般にペプチドリンカーによって重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域が共有結合で連結されるか、或いはC-末端で直接連結されて二本鎖Fvと同様にダイマーのような構造をなし得る。このような抗体断片はタンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインで制限切断すればFabが得られ、ペブシンで切断すればF(ab’)2断片が得られる。)、遺伝子組換え技術によって作製することもできる。
【0031】
一実施例において、本発明に係る抗体は、Fv形態(例えば、scFv)であるか、完全な抗体形態である。また、重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)又はエプシロン(ε)のいずれか一イソタイプから選ばれ得る。例えば、定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)又はガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域はカッパ又はラムダ型であり得る。
【0032】
本明細書で使われる用語、“重鎖”は、抗原に特異性を付与するための十分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH及び3個の定常領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む全長重鎖及びその断片のいずれをも意味する。また、本明細書で使われる用語、“軽鎖”は、抗原に特異性を付与するための十分の可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び定常領域ドメインCLを含む全長軽鎖及びその断片のいずれをも意味する。
【0033】
本発明の抗体は、単クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFV)、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド-結合Fv(sdFV)及び抗-イディオタイプ(抗-Id)抗体、又はこれらの抗体のエピトープ-結合断片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記単クローン抗体は、実質的に同質的抗体集団から得た抗体、すなわち、集団を占めている個々の抗体が、微量で存在し得る可能な天然発生的突然変異以外は同一であるものを指す。単クローン抗体は高度に特異的であるため、単一抗原部位に対抗して誘導される。典型的に、個別の決定因子(エピトープ)に対して指示された個別の抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体製剤とは違い、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一決定因子に対して指示される。
【0035】
“エピトープ”は、抗体が特異的に結合できるタンパク質決定部位(determinant)を意味する。エピトープは通常、化学的に活性である表面分子群、例えばアミノ酸又は糖側鎖で構成され、一般に、特定の3次元の構造的特徴だけでなく、特定の電荷特性も有する。立体的エピトープ及び非立体的エピトープは変性溶媒の存在下で前者に対する結合は消失するが、後者に対しては消失しないという点で区別される。
【0036】
前記“ヒト化”形態の非-ヒト(例:ネズミ科(murine))抗体は、非-ヒト免疫グロブリンから由来した最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化抗体は、受容者の超可変領域からの残基を、目的する特異性、親和性及び能力を保有している非-ヒト種(供与者抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ又は非-ヒト霊長類の超可変領域からの残基に置き換えたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。
【0037】
前記“ヒト抗体”は、ヒト免疫グロブリンから由来する分子であり、相補性決定領域、構造領域を含む抗体を構成する全てのアミノ酸配列全体がヒトの免疫グロブリンで構成されているものを意味する。
【0038】
前記ヒト抗体には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特別な種から由来するか、特別な抗体分類又は亜分類に属する抗体内の相応する配列と同一又は相同性である反面、残りの鎖は他の種から由来するか、他の抗体分類又は亜分類に属する抗体内の相応する配列と同一又は相同性である、“キメラ”抗体(免疫グロブリン)の他に、目的する生物学的活性を示す前記抗体の断片も含まれる。
【0039】
本願におけるような“抗体可変ドメイン”とは、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)、及び骨格領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖部分のことを指す。VHは重鎖の可変ドメインを指す。VLは軽鎖の可変ドメインを指す。
【0040】
“相補性決定領域”(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)とは、抗原結合のために必要な、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは典型的に、CDR1、CDR2及びCDR3として確認された3個のCDR領域を有する。
【0041】
本発明において、前記VISTAに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2、及び配列番号6の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号33の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号34の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号35の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号36の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号37の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号38の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号39の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4の軽鎖CDR1、配列番号5の軽鎖CDR2及び配列番号40の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号7の重鎖CDR1、配列番号8の重鎖CDR2及び配列番号9の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号10の軽鎖CDR1、配列番号11の軽鎖CDR2及び配列番号12の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、
配列番号13の重鎖CDR1、配列番号14の重鎖CDR2及び配列番号15の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号16の軽鎖CDR1、配列番号17の軽鎖CDR2及び配列番号18の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域、又は
配列番号19の重鎖CDR1、配列番号20の重鎖CDR2及び配列番号21の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、配列番号22の軽鎖CDR1、配列番号23の軽鎖CDR2及び配列番号24の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0042】
“骨格領域”(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは典型的に、FR1、FR2、FR3及びFR4として確認された4個のFRを有する。
【0043】
“Fv”断片は、完全な抗体認識及び結合部位を含有する抗体断片である。このような領域は、1個の重鎖可変ドメインと1個の軽鎖可変ドメインが、例えばscFvで堅固に事実上共有的に連合した二量体からなる。
【0044】
“Fab”断片は、軽鎖の可変及び定常ドメインと、重鎖の可変及び第1定常ドメイン(CH1)を含有する。F(ab’)2抗体断片は一般に、それらの間にヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端近傍に共有的に連結される一対のFab断片を含む。
【0045】
“一本鎖Fv”又は“scFv”抗体断片は抗体のVH及びVLドメインを含むが、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖内に存在する。Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために目的の構造を形成できるようにするVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含むことができる。
【0046】
VISTA抗体は一本鎖又は二本鎖を含むことができる。機能的に、VISTA抗体の結合親和性は10-5M~10-12M範囲内にある。例えば、VISTA抗体の結合親和性は、10-6M~10-12M、10-7M~10-12M、10-8M~10-12M、10-9M~10-12M、10-5M~10-11M、10-6M~10-11M、10-7M~10-11M、10-8M~10-11M、10-9M~10-11M、10-10M~10-11M、10-5M~10-10M、10-6M~10-10M、10-7M~10-10M、10-8M~10-10M、10-9M~10-10M、10-5M~10-9M、10-6M~10-9M、10-7M~10-9M、10-8M~10-9M、10-5M~10-8M、10-6M~10-8M、10-7M~10-8M、10-5M~10-7M、10-6M~10-7M又は10-5M~10-6Mである。
【0047】
前記VISTAに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号25、27、29、31及び49から構成される群から選ばれる重鎖可変領域を含むことができる。また、前記VISTAに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号26、28、30、32、41~48、及び50から構成される群から選ばれる軽鎖可変領域を含むことができる。
【0048】
本発明に係る具体的実施例において、配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号42の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号43の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号44の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号45の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号46の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号47の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号48の軽鎖可変領域;
配列番号25の重鎖可変領域及び配列番号50の軽鎖可変領域;
配列番号49の重鎖可変領域及び配列番号48の軽鎖可変領域;
配列番号49の重鎖可変領域及び配列番号50の軽鎖可変領域;
配列番号27の重鎖可変領域及び配列番号28の軽鎖可変領域;
配列番号29の重鎖可変領域及び配列番号30の軽鎖可変領域;又は
配列番号31の重鎖可変領域及び配列番号32の軽鎖可変領域を含むことができる。
【0049】
“ファージディスプレイ”は、変異体ポリペプチドをファージ、例えば繊維状ファージ粒子の表面上に外皮タンパク質の少なくとも一部との融合タンパク質としてディスプレイする技術である。ファージディスプレイの有用性は、無作為化タンパク質変異体の大きいライブラリーを対象にして、標的抗原と高親和度で結合する配列を迅速且つ効率よく分類できるという事実にある。ペプチド及びタンパク質ライブラリーをファージ上にディスプレイすることは、特異的結合特性を有するポリペプチドを探るために数百万個のポリペプチドをスクリーニングするのに用いられてきた。
【0050】
ファージディスプレイ技術は、特定リガンド(例:抗原)と結合する新規タンパク質を生成及び選別するための強力な道具を提供した。ファージディスプレイ技術を用いて、タンパク質変異体の大きなライブラリーを生成させ、標的抗原と高親和性で結合する配列を迅速に分類することができる。変異体ポリペプチドを暗号化する核酸をウイルス性外皮タンパク質、例えば遺伝子IIIタンパク質又は遺伝子VIIIタンパク質を暗号化する核酸配列と融合させる。タンパク質又はポリペプチドを暗号化する核酸配列を遺伝子IIIタンパク質の一部を暗号化する核酸配列と融合させた一価ファージディスプレイシステムが開発された。一価ファージディスプレイシステムでは、遺伝子融合物が低レベルで発現し、野生型遺伝子IIIタンパク質も発現するので、粒子感染性が維持される。
【0051】
繊維状ファージ表面上におけるペプチドの発現とE.coliの周辺細胞質における機能性抗体断片の発現を立証することが、抗体ファージディスプレイライブラリーを開発する上で重要である。抗体又は抗原結合性ポリペプチドのライブラリーは、数多くの方式、例えば、無作為DNA配列を挿入することによって単一遺伝子を変更させる方法又は関連遺伝子系列をクローニングする方法で製造した。ライブラリーを対象にして、目的する特徴を伴う抗体又は抗原結合性タンパク質の発現に関してスクリーニングすることができる。
【0052】
ファージディスプレイ技術は、目的する特徴を持つ抗体を製造するための通常のハイブリドーマ及び組換え方法に比べていくつかの利点を有する。このような技術は、動物を使用しなくとも短時間で様々な配列を持つ大きい抗体ライブラリーを生成可能にする。ハイブリドーマの製造やヒト化抗体の製造は数ヵ月の期間を要することがある。また、免疫が一切要求されないため、ファージ抗体ライブラリーは、毒性又は低抗原性の抗原に対しても抗体を生成させることができる。また、ファージ抗体ライブラリーを用いて新規の治療的抗体を生成及び確認することができる。
【0053】
ファージディスプレイライブラリーを用いて免疫させた、非-免疫させたヒト、生殖細胞系配列、又は未感作B細胞Igレパートリー(repertory)からヒト抗体を生成させる技術を用いることができる。各種リンパ系組織を使用して、未感作又は非免疫抗原結合性ライブラリーを製造することができる。
ファージディスプレイライブラリーから高親和性抗体を確認及び分離し得る技術は、治療用新規抗体分離に重要である。ライブラリーから高親和性抗体を分離することは、ライブラリーの大きさ、細菌性細胞中における生産効率及びライブラリーの多様性に左右され得る。ライブラリーの大きさは抗体又は抗原結合性タンパク質の不適切なフォールディングと停止コドンの存在による非効率的生産によって減少する。細菌性細胞における発現は抗体又は抗原結合性ドメインが適切にフォールディングされない場合には抑制され得る。発現は可変/定常界面の表面又は選別されたCDR残基における残基を交互に突然変異させることによって改善させることができる。骨格領域の配列は、細菌性細胞において抗体ファージライブラリーを生成させる場合に適切なフォールディングを提供するための一つの要素である。
【0054】
高親和性抗体分離において抗体又は抗原結合性タンパク質の様々なライブラリーを生成させることが重要である。CDR3領域はそれらがしばしば抗原結合に参加することが明らかになった。重鎖上のCDR3領域は大きさ、配列及び構造的立体形態面において非常に多様であり、これを用いて様々なライブラリーを製造することができる。
本発明に係る具体的実施例において、抗-VISTA抗体クローン1B8の親和度増進のために抗体最適化を行い、また、1B8の軽鎖CDR3と重鎖CDR3に無作為変異を導入し、変異体scFvファージライブラリーを用いてバイオパンニングした結果、配列番号33~40で構成された群から選ばれる一つ以上の軽鎖可変領域CDR3を含む8種の最適化クローンが得られた。
【0055】
また、各位置において20個のアミノ酸を全て用いて可変重鎖及び軽鎖のCDR領域を無作為化することによって多様性を発生させることができる。20個のアミノ酸を全て使用すれば、多様性の大きい変異体抗体配列が生成され、新規の抗体を確認する機会が増加し得る。
【0056】
本発明の抗体又は抗体断片は、VISTAを特異的に認識し得る範囲内で、本明細書に記載された本発明の抗-VISTA抗体の配列だけでなく、その生物学的均等物も含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他生物学的特性をより一層改善させるために抗体のアミノ酸配列に更なる変化を与えることができる。このような変形は例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてなされる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、模様及び種類に対する分析によって、アルギニン、リシン及びヒスチジンはいずれも陽電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシン及びセリンは類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは類似の模様を有することがわかる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは生物学的に機能均等物であるといえる。
【0057】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の抗体又はこれをコードする核酸分子は、配列番号に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。前記の実質的な同一性は、前述した本発明の配列と任意の他の配列をできるだけ対応するようにアラインし、当業界において通常利用されるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、最小で90%の相同性、最も好ましくは最小で95%の相同性、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は当業界に公知である。NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)はNBCIなどから接近可能であり、インターネット上でblastp、blastm、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLASTはwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/から接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_ help.htmlで確認することができる。
【0058】
これに基づいて、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、明細書に記載の明示された配列又は全体に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有し得る。このような相同性は、当業界に公知である方法による配列比較及び/又は整列によって決定され得る。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLAST又はBLAST 2.0)、手動整列、肉眼検査を用いて本発明の核酸又はタンパク質のパーセント配列相同性を決定することができる。
【0059】
本発明は他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸に関する。
【0060】
本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を分離して抗体又はその抗原結合断片を組換え的に生産することができる。核酸を分離し、それを複製可能なベクター内に挿入してさらにクローニングしたり(DNAの増幅)又はさらに発現させる。これに基づいて、本発明はさらに他の観点において前記核酸を含むベクターに関する。
【0061】
“核酸”はDNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸において基本構成単位であるヌクレオチドは自然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸の配列は修飾され得る。前記修飾はヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0062】
前記抗体を暗号化するDNAは通常の過程を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖を暗号化するDNAと特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いて)容易に分離又は合成する。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分には一般に、次の一つ以上が含まれるが、それに制限されない:信号配列、複製起点、一つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、及び転写終結配列。
【0063】
本明細書で使われる用語、“ベクター”は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であり、プラスミドベクター;コスミドベクター;バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ-関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。前記ベクターにおいて抗体をコードする核酸はプロモーターと作動的に連結されている。
“作動的に連結”は、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との機能的な結合を意味し、これによって前記調節配列は前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節するようになる。
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させ得る強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボゾーム結合座及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例:メタロチオネインプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)のプロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)を利用することができ、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
場合によって、ベクターはそれから発現する抗体の精製を容易にするために他の配列と融合されてもよい。融合される配列は、例えばグルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)及び6x His(hexahistidine;Qiagen,USA)などがある。
前記ベクターは選択標識として当業界において通常利用される抗生剤耐性遺伝子を含み、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲネチシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
本発明はさらに他の観点において、前記言及されたベクターで形質転換された細胞に関する。本発明の抗体を生成させるために使われた細胞は原核生物、酵母又は高等真核生物細胞であり得るが、これに制限されるものではない。
エスケリチアコライ(Escherichia coli)、バチルスサブチリス及びバチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカスカルノーサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を利用することができる。
ただし、動物細胞への関心が最も高く、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、又はHT1080であり得るが、これに制限されるものではない。
本発明はさらに他の観点において、(a)前記細胞を培養する段階;及び(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階を含む前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法に関する。
前記細胞は、各種培地で培養することができる。市販用の培地はいずれも制限なく培養培地として使用することができる。当業者に公知であるその他全ての必須補充物が適度の濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞と共に既に使用されており、これは当業者にとって明らかであろう。
前記抗体又はその抗原結合断片の回収は、例えば遠心分離又は限外ろ過によって不純物を除去し、その結果を例えば親和クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。更なるその他精製技術、例えば陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどを用いることができる。
【0064】
本発明はさらに他の観点において、前記抗体を有効成分として含む腫瘍の予防又は治療用組成物に関する。前記抗体は、IgG又は可変領域を含む断片、すなわちScFv、Fabであり得る。また、重鎖の可変領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4であり得る。
【0065】
本発明は、例えば、(a)本発明に係るVISTAに対する抗体又はその抗原結合断片の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む腫瘍の予防又は治療用薬剤学的組成物であり得る。また、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片を腫瘍患者に投与する段階を含む腫瘍の予防又は治療方法であり得る。さらに、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片のVISTAの免疫抑制機序妨害用途及びこれを用いた腫瘍の予防又は治療用途であり得る。
【0066】
前記組成物に適用される疾患である腫瘍は、典型的に免疫治療療法に反応する腫瘍又は癌、及び今まで免疫療法に関連していない腫瘍又は癌を含む。治療用に好ましい腫瘍又は癌の非制限的例は、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、透明細胞癌腫)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応前立腺癌腫)、膵臓腺癌腫、乳癌、結腸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、食道癌、頭頸部扁平細胞癌腫、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、甲状腺癌、膠芽細胞腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、及びその他新生物癌腫を含む。さらに、本発明は、本発明の抗体を用いて治療できる不応又は再発癌を含む。
【0067】
本発明はさらに他の観点において、前記抗体を有効成分として含む腫瘍の予防又は治療用組成物に関する。前記抗体は、IgG又は可変領域を含む断片、すなわちScFv、Fabであり得る。また、重鎖の可変領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4であり得る。
【0068】
本発明は、例えば、(a)本発明に係るVISTAに対する抗体又はその抗原結合断片の薬剤学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む自己免疫疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物であり得る。また、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片を自己免疫疾患患者に投与する段階を含む自己免疫疾患の予防又は治療方法であり得る。さらに、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片のVISTAの免疫抑制能を増加させる用途及びこれによる自己免疫疾患の予防又は治療用途であり得る。
【0069】
前記自己免疫疾患は、例えば、白血病;慢性疲労症候群;移植片対宿主病(Graft-versus-host disease,GVHD);痛覚過敏;炎症性腸疾患;神経炎症性疾患;大脳虚血を含む虚血/再灌流損傷、それぞれ神経変性を招くこともある外傷、てんかん、出血又は発作の結果としての脳損傷;糖尿病、例えば、1型若年性糖尿病;多発性硬化症;眼疾患;疼痛;膵臓炎;肺線維症;リウマチ性疾患、例えば、リウマチ様関節炎、骨関節炎、若年性(リウマチ様)関節炎、血清反応陰性多発性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群及び反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、全身性硬化症、脈管炎、大脳脈管炎、シェーグレン症候群、リウマチ性発熱、多軟骨炎及び多発性筋肉痛、リウマチ性及び巨大細胞動脈炎;敗血症性ショック;放射線療法による副作用;全身性紅斑性ループス;側頭下顎骨関節疾患;甲状腺炎などであり得る。
【0070】
”予防”は、本発明に係る組成物の投与によって癌又は自己免疫疾患を抑制させたり進行を遅延させる全ての行為を意味し、”治療”は、癌の発展の抑制、癌の軽減又は癌の除去、又は自己免疫疾患の抑制、自己免疫疾患の軽減又は自己免疫疾患の除去を意味する。
【0071】
場合によって、前記抗体以外の他の抗癌治療剤を併用することによって腫瘍細胞を効果的に標的化し、抗-腫瘍T細胞活性を増加させて、腫瘍細胞を標的化する免疫反応を増大させることができる。その他、抗-新生物剤又は免疫原性製剤[(例えば、弱化した癌細胞、腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド及び炭水化物分子を含む)、抗原伝達細胞、例えば、腫瘍由来抗原又は核酸でパルスされた樹状細胞、免疫刺激サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、及び免疫刺激サイトカインを暗号化する遺伝子で形質感染された細胞(例えば、GM-CSFを含むが、これに制限されない。)];標準癌治療療法(例えば、化学治療療法、放射線治療療法又は手術);又はその他抗体(VEGF、EGFR、Her2/neu、VEGF受容体、その他成長因子受容体、CD20、CD40、CTLA-4、OX-40、4-IBB、及びICOSを含むが、これに制限されない。)と共に使用可能である。
【0072】
具体的に、前記抗体又はその抗原結合断片を含む、PD-1抗体又はPD-L1抗体との併用投与用組成物である。また、本発明は、前記抗体又はその抗原結合断片をPD-1抗体又はPD-L1抗体と共に患者に投与する段階を含む腫瘍の予防又は治療方法に関する。さらに、本発明は、腫瘍の予防又は治療において前記抗体又はその抗原結合断片の、PD-1抗体又はPD-L1抗体と併用投与するための用途に関する。
【0073】
前記抗体又はその抗原結合断片とPD-1抗体又はPD-L1抗体は、同時に投与することができる。また、前記抗体又はその抗原結合断片とPD-1抗体又はPD-L1抗体は一定の時間間隔をおいて個別に投与することもできる。前記抗体又はその抗原結合断片投与の前又は後にPD-1抗体又はPD-L1抗体を別途に投与することができる。
【0074】
前記組成物は、上述した本発明の抗-VISTA抗体又はその抗原結合断片を有効成分として用いるので、この両者に共通する内容は記載を省略する。
【0075】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は製剤時に通常使用されるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の組成物は前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合には静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与できる。
経口投与時に、タンパク質又はペプチドが消化されることから、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化する必要がある。また、薬剤学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動し得る任意の装置によって投与することができる。
【0076】
本発明に係る組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練し医師は所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。例えば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.0001~100mg/kgである。本明細書で使う用語“薬剤学的有効量”は、癌又は自己免疫疾患を予防又は治療するに十分な量を意味する。
【0077】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造したり、又は多用量容器内に内入させて製造することができる。このとき、剤形はオイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であってもよく、エキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、また、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【実施例
【0078】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されるものと解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0079】
実施例1.VISTAに結合する抗体の選別
VISTAに結合する抗体を選別するための抗体ライブラリー及びライブラリーの準備は、韓国公開特許第10-2008-0109417号のような自体のヒト未感作scFv(human naive ScFv)ライブラリーを用いた。96ウェル免疫プレートに抗原(hVISTA-Fc,RND systems.Cat.No 7126-B7)を2μl/mlで100μlずつウェルに入れ、4℃で一晩置く。翌日、抗原コーティングプレート(coating plate)はPBSで3回洗浄した後、2%BSA遮断バッファ(blocking buffer)200μlを入れて室温で2時間反応させる。2xYT-TET(テトラサイクリン10μg/ml)成長培地(growth medium)2mlにXL1-Blueストック(stock)50μlを入れて37℃、200rpmで2時間程度育てた後に13mlをさらに添加し、OD600が0.5になるまで育てる。遮断(blocking)し、2時間が経つと1XPBSで3回洗浄する。洗浄した各ウェルにファージライブラリーグループ(phage library group)を合わせてファージライブラリー量と4%BSA量を同一に混ぜた後に200μlずつ添加し、室温で30分間ロッキング(rocking)した後、2時間反応させる。ファージライブラリー反応が終わると、上澄液を捨て、0.05%PBSTで5回洗浄し、PBSで5回洗浄した後、各ウェルに100mM TEA(trimethylamine)100μlを入れて室温で10分間振り動かす。10分経過すると、各ウェルに1Mトリス(pH7.5)50μlを入れて混ぜる。上澄液(supernatant)はOD6000.5になったXL1-blue 10mlに入れて37℃で30分間感染(infection)させる。感染が終わると、100μlはアウトプットタイター(output titer)として使用し、残りは7,000rpm、10分間遠心分離する。上澄液を捨て、沈殿物はラージスクエアプレート(large square plate:CM 34μg/ml+1%グルコース)にスプレッド(spreading)して30℃で一晩インキュベーション(overningt incubation)する。アウトプットタイターとして残した100μlは、1/10、1/100、1/1000に希釈(dilution)し、CMプレートにスプレッドして37℃で一晩置く。翌日、スクエアプレートに育ったコロニー(colony)は2xYT培地50mlを入れた後、ループ(loop)を用いてかき集めた後に7000rpm、10分間遠心分離し、上澄液を捨て、沈殿液(precipitate)に対して1次パンニングストック(panning stock)を作り、2xYT培養培地(growth media:CM 34μg/ml+1%グルコース)100mlを500ml三角フラスコに入れた後、OD6000.2となるように細胞を入れ、200rpm、37℃でOD6000.5になるまで育てる。OD600値が0.5になるまで細胞を培養した後、ヘルパーファージ(helper phage:M13KO7ミュータント)を細胞の20倍になるように入れる。ヘルパーファージを入れて37℃、30分感染(infection)させた後、7000rpm、10分遠心分離する。上澄液を捨て、細胞は2xYT培地(CM 34μg/ml+Kan. 70μg/ml+1mM IPTG+5mM MgCl)100mlに入れ替えた後、200rpm、30℃で一晩置く。翌日、育った細胞は7000rpm、10分、遠心分離し、同一方法でもう1回遠心分離する。集めた上澄液は、上澄液の1/5(v/v)20% PEG/2.5m NaClを入れてアイス(ice)で1時間沈殿させる。沈殿させた後、7000rpm、1時間遠心分離する。上澄液を捨て、PBS 3mlで沈殿液(precipitate)を溶かした後、0.45μmフィルター(filter)に濾過した後に4℃で保管し、これを次のパンニング(panning)過程で使用する。この過程を3~4回反復し、抗原に結合する抗体をELISAを行って確認した。
【0080】
実施例2.単クローンScFvファージELISA
パンニング(panning)過程が終わると、最後のラウンド細胞ストック(round cell stock)をCM寒天プレート(agar plate)に200~500個のコロニーが形成され得るように希釈して敷いた後、37℃で一晩置く。翌日、コロニー(colony)が育つと、96ウェルディーププレート(96 well deep plate)に2xYT培地(CM 34μg/ml+1%グルコース)200μlを入れ、各ウェルにコロニーを一つずつ入れた後37℃、3000rpmで一晩置く。翌日、新しい96ウェルディーププレートに2xYT培地(CM 34μg/ml+1%グルコース)200μlを入れ、各ウェルに、前日に育てた細胞を20mlずつ入れた後、37℃、3000rpm、1時間10分育てる。残りの細胞は、50%グリセロールを100μlずつ添加して-70℃で保管する。細胞が育つと、ヘルパーファージ1μlと2xYT培地19μlを混ぜた後、各ウェルに20μlずつ添加後に37℃で30分インキュベーションする。インキュベーションが終わると、3000rpm、10分遠心分離する。上澄液を捨て、2xYT培地(CM 34μg/ml+Kan. 70μg/ml+1mM IPTG+5mM MgCl)200μlを入れてメガグロー(megagrow)で30℃、3000rpmで一晩置く。
【0081】
96ウェル免疫プレートに、Ag(hVISTA-Fc,mVISTA-Fc)を1μg/ml作って100μl/wellずつ入れて4℃で一晩置く。翌日、前日に育てた細胞は3000rpm、10分遠心分離して4℃で保管する。敷いておいたAgは0.05%PBSTで3回洗浄し、2%BSA遮断バッファ(blocking buffer)200μlずつ入れた後、25℃、2時間インキュベーションする。遮断(blocking)が終わると、0.05%PBSTで3回洗浄する。各ウェルに、4% BSA 50μlとダウン(down)して4℃で保管したファージ50μlとを混ぜた後、室温で1時間振り動かして反応させる。ファージ結合(phage binding)が終わると、0.05%PBSTで3回洗浄し、HRP-接合マウス抗-M13抗体1:3000(HRP-conjugated mouse anti-M13 Ab)(#GE27-9421-01)を100μlずつ入れた後、25℃で1時間反応させる。反応が終わると、0.05%PBSTで3回洗浄し、TMB(#BD TMB substrate reagent set 555214)を100μlずつ入れて3~5分間発色させた後、停止溶液(stop solution)を50μlずつ入れてELISAリーダ(ELISA reader)で分析する。
【0082】
【表1】
【0083】
選別された抗体は、次の表2の通りである。
【0084】
【表2A】
【表2B】
【0085】
【表3】
【0086】
実施例3.VISTA発現CHO-K1細胞への抗-VISTA ScFVファージ結合
選別された抗体がVISTAを発現している細胞に結合するか否かを確認するために、ヒトVISTA及びマウスVISTAを発現するCHO-K1細胞を作製した。作製された細胞をFACSバッファ(2% FBS、0.05%アジ化ナトリウム含有PBS)に4×10cells/mlにして96ウェルディーププレートに50μlずつ入れた後、ファージインキュベーション(phage incubation)したファージ上澄液を50μlずつ入れて室温で1時間インキュベーションする。インキュベーションが終わると、各ウェルにFACSバッファを400μlずつ添加した後、2000rpm、5分間遠心分離する。上澄液を捨て、anti-M13抗体(1:1000)を100μlずつ入れた後、4℃で1時間反応させる。反応が終わると、各ウェルにFACSバッファを400μlずつ添加した後、2000rpm、5分間遠心分離する。上澄液を捨て、抗-マウスIgG-PE抗体(1:500)を100μlずつ入れた後、4℃で1時間反応させる。反応が終わると、各ウェルにFACSバッファを400μlずつ添加した後、2000rpm、5分間遠心分離する。上澄液を捨て、FACSバッファを200μlずつ入れた後、FACS(Beckton Dickinson,FACSCalibur)を用いて分析した。その結果を図1に示した。
【0087】
図1に見られるように、選別された抗体はいずれも、ヒトVISTAを過発現させるように製造されたCHO-K1細胞に結合することが確認された。陰性対照群として使用された6A6は結合しなく、陽性対照群として使用されたVISTA抗体(rnd systems #FAB71261A)は予想通り細胞によく結合した。
【0088】
実施例4.抗VISTA IgG発現
選別したscFvファージのIgG形態への転換は、分子生物学的手法を用いて行った。選別したE.Coliクローンからファージミド(Phagemid)を抽出し、制限酵素Sfi I(R0123,New England Biolabs,US)で二重切断して重鎖可変領域DNA断片を確保し、重鎖定常領域を含むベクターpIgGHD-6A6HvyをSfi I処理後に可変領域DNA断片を挿入した。同一の方法でファージミドを制限酵素BstX I(R0113,New England Biolabs)で二重切断して軽鎖可変領域DNA断片を確保し、軽鎖定常領域を含むpIgGLD-6A6LgtベクターをBstX Iで二重切断後に可変領域DNA断片を挿入してIgG形態のDNAクローニングを完了した。
【0089】
IgGの一時発現は、Expi293F発現システムキット(Expi293F expression system kit:Thermo Fisher Scientific,US)を使用した。キットに含まれたExpi293細胞を専用培地を用いて、37℃、5% CO環境下で125rpmオービタルシェーカー上に浮遊培養した。3日ごとに3×10cells/mlになるように継代培養し、発現ベクター導入時には3×10cells/mlになるように細胞数を調整して使用した。遺伝子導入は、専用試薬であるExpifectamineを使用し、細胞懸濁液1ml当たり発現ベクターDNA 1μgとExpifectamine 2.7μlを含有するLipid-DNA複合体を作製、細胞懸濁液に添加し、導入16~18時間後にエンハンサー(Enhancer)1/2を添加して発現を誘導した。その後、同一条件で3~4日間培養後、援心分離してIgG含有上澄液を取った。
【0090】
実施例5.抗-PD-L1抗体の精製
取得した上澄液をProtein Aカラム(GE Healthcare)に注入し、親和力クロマトグラフィーを用いてIgGを精製した。カラムを20mM Tris-HCl、50mM NaCl、5mM EDTA(pH7.0)に平衡化した後、上澄液を注入し、50mM Tris-HCl、500mM NaCl、5mM EDTA、0.2% polysorbate 20(pH7.0)溶液で洗浄した後、50mM NaCl、0.1M glycine-HCl(pH3.5)で溶出後に1Mトリスで中和した。溶出したタンパク質は、MWCO 10,000 spectra/por dialysis membrane(Spectrum Labs,US)を用いた透析過程によってPBSに溶媒を入れ替えた。その後、Vivaspin(Sartorius,DE)を用いて必要濃度に濃縮し、分注後に-80℃で保管した。
【0091】
精製後、各抗体は非還元及び還元LDSサンプルバッファ(Non-reducing及びReducing LDS sample buffer:Thermo Fisher Scientific)に処理し、NuPAGE System(Thermo Fisher Scientific)を用いて電気泳動した。その結果、50kDaの重鎖及び25kDaの軽鎖を含む合計分子量約150kDaのIgGを得た。
【0092】
実施例6.抗-VISTA抗体の抗原への結合力
選別された抗体の抗原に対する結合力をOctet(Fortebio)を用いて測定した。そのために抗体をバイオセンサー(biosensor)に固定(immobilize)した後、様々な濃度の抗原を96ウェルに入れて測定した。
【0093】
【表4】
【0094】
実施例7.抗-VISTA抗体のヒト及びマウスVISTAに対する交差反応性(cross reactivity)
ELISA assay:96ウェルプレートに、Ag(ヒトVISTA-Fc、マウスVISTA-Fc)をそれぞれ1μg/ml作って100μl/wellずつ入れ、4℃で一晩置く。翌日、敷いておいたAgは、0.05%PBSTで3回洗浄し、2% BSA遮断バッファ(blocking buffer)200μlずつ入れた後、25℃で2時間インキュベーションする。遮断(blocking)が終わると、0.05%PBSTで3回洗浄する。各抗体を1μg/ml作って100μl/wellずつ入れて25℃で1時間インキュベーションする。インキュベーションが終わると、0.05%PBSTで3回洗浄し、goat anti-human IgG(kappa)peroxidase conjugated 1:2000(bethyl lab #A80-115P)を100μlずつ入れた後、25℃で30分インキュベーションした。インキュベーションが終わると、0.05%PBSTで3回洗浄し、TMB(BD TMB substrate reagent set #555214)を100μlずつ入れて3~5分発色させた後、停止溶液(stop solution)50μlずつ入れ、ELISAリーダ(ELISA reader)で分析する。その結果を図2に示した。
【0095】
図2に示すように、選別された抗体はいずれも、ヒトVISTAに結合し、そのうち、2C12抗体はヒトVISTAの他にマウスVISTAにもよく結合することを確認した。
【0096】
FACS assay:CHO-K1細胞からヒト及びマウスVISTA過発現を確認するために、FACSバッファ(2% FBS、0.05%アジ化ナトリウム含有PBS)に5×10/ml(5×10cells/100μl/FACS tube)作り、選別された抗体は2μg/ml作って、FACSチューブに細胞と抗体をそれぞれ100μlずつ入れた後、4℃で30分インキュベーションする。インキュベーションが終わると、各チューブにFACSバッファ2mlずつ添加した後、1500rpm、5分間遠心分離する。上澄液を捨て、Goat anti-human IgG-Fc PE conjugated(A80-248PE)1:500作って各チューブに100μlずつ入れた後、4℃で20分間反応させる。陽性対照群(positive control)はhVISTA過発現(overexpression)細胞(サンプルと同量)にAPC-conjuagted anti-hVISTA(R&D #71261A)5μlを入れ、マウスはmVISTA過発現細胞(サンプルと同量)にAPC-conjugated anti-mVISTA(Biolegend #143710)1μlを入れた後、4℃で20分間反応させる。反応が終わると、各ウェルにFACSバッファ2mlずつ添加した後、1500rpm、5分間遠心分離する。上澄液を捨て、FACSバッファ200μlずつ入れた後、BD FACSCaliburを用いて分析する。その結果を図3に示した。
【0097】
図3に見られるように、VISTAを過発現するように製造されたCHO-K1細胞に選別されたanti-VISTAを処理した時、ELISAと同様に、選別された抗体はいずれもヒトVISTAが表面に発現するCHO-K1と結合し、2C12抗体は、マウスVISTAが表面に発現するCHO-K1とも結合した。
【0098】
実施例8.抗-VISTA抗体のAllo-MLR assay
ヒトの末梢血液50mlを供与者から採取し、2mM EDTA含有PBSで3倍希釈する。新しい50mlチューブにフィコールパック(ficoll-paque:GE#17-1440-03)15mlを入れ、希釈された血液30mlを徐々に乗せた後、2,000rpmで40分間遠心分離する。PBMCs層を回収して50mlチューブに移し、洗浄バッファ(2% FBSと10mM HEPESを含むRPMI1640培地)を満たし、1,600rpmで10分間遠心分離することによって細胞を洗浄する。遠心分離後、上澄液を捨て、反復して洗浄する。遠心分離後に残った細胞ペレット(pellets)は50mlの洗浄バッファで溶かして単一細胞にした後、細胞ストレーナー(strainer:40um)を用いて死んだ細胞の塊りを除去する。Allo-MLRの応答者(responder)として使用する細胞(供与者A或いはB)は、4×10cells/ml濃度でMLR培地(10% FBS、10mM HEPES、1mMピルベート、NEAA(100X)、2mM L-グルタミン、1%抗生物質(antibiotics)、10-5M β-MEを含むRPMI1640培地)に希釈する。刺激剤(stimulator)として使用する細胞(供与者B或いはA)は、ミトマイシンC(mitomycin C:MMC)を処理して細胞増殖を抑制する。詳細な方法は次の通りである。刺激剤(stimulator)として使用する細胞を50mlチューブに4×10cells/ml濃度でMLR培地に希釈した後、MMCを25μg/mlになるように添加して37℃で30分反応させる。反応が終わった後に洗浄バッファを50mlチューブに一杯満たした後、1200rpm、10分間遠心分離して洗浄する。この過程を4回反復してMMCを完全に除去する。最後に4×10cells/ml濃度になるようにMLR培地に希釈する。準備した細胞はそれぞれ2×10cells/well(50μl)になるように96ウェル細胞培養プレートに分注する。分析する抗体を、最終濃度30μg/mlと10μg/mlとなるように50μlを添加する。各抗体の濃度別に3ウェルずつ試験する。そして、37℃、COインキュベーター(incubator)で5日間培養した後、50μlの細胞培養上澄液はIFN-γ生産量測定のために別に保管し、残りの細胞は細胞増殖を分析する。細胞増殖は、allo-MLR後に残っている細胞で生成されるATPの量を測定することによって分析する。詳細な方法は次の通りである。100μl(細胞培養液と同量)のCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega)溶液を培養された細胞に添加して室温で10分間反応させることによって細胞を溶解させる。光度計(luminometer)で細胞生存度(viability)を測定する。その結果を図4に示した。
【0099】
図4に見られるように、非特異的抗体(whole IgG)を処理した群に比べてより多くのインターフェロン-ガンマの発現を誘導することはcompetitor(陽性対照群)と1B8クローンであり、他のクローンはいずれもwhole IgGに比べて低いインターフェロン-ガンマ発現を誘導した。すなわち、これらのクローンは、インターフェロン-ガンマの発現を抑制するクローンである。このうち、2C12、1A12、3C5は優れたインターフェロン-ガンマの発現抑制能を示した。
【0100】
実施例9.抗-VISTA抗体の抗腫瘍活性
抗-VISTA抗体の抗腫瘍活性を評価するためにヒト由来乳癌細胞株であるMDA-MB-231乳房脂肪(mammary fat)をパッド(pad)に移植したNSGマウスにおいてヒトPBMCとJNJ61610588、pembrolizumab、抗-VISTA mAb 1B8治療剤の微静脈投与による抗癌薬効を評価しようとした。実験は、韓国生命工学研究院実験動物資源センターと共同で行った。
【0101】
ヒト由来乳癌細胞株MDA-MB-231(breast cancer cell line)を解凍(thawing)した後、COインキュベーター(Forma,USA)内で温度37℃、CO濃度5%にして培養した。培養最終日に全ての癌細胞を回収して計数し、無血清培地(serum-free media)を用いて細胞濃度を3×10cells/mlに調節した。このように調節された細胞培養液を、マウス乳房脂肪パッドの左/右2カ所にそれぞれ0.1ml(3×10cells/mouse)ずつ注入した。
【0102】
癌細胞移植後、群別平均腫瘍サイズが46.9mmに到達した時、Aタイプ(各群の1番マウス)、Bタイプ(各群の2番マウス)、Cタイプ(各群の3番マウス)、Dタイプ(各群の4番マウス)、Eタイプ(各群の5番マウス)及びFタイプ(各群の6番マウス)のPBMC(4×10cells/ml)をマウス当たり0.16ml(0.64×10cells/mouse)ずつ微静脈経路で注入した。
【0103】
PBMC分離は、ヒトの末梢血液50mlを供与者から採取し、2mM EDTA含有PBSで3倍希釈後に、新しい50mlチューブにフィコールパック(ficoll-paque:GE #17-1440-03)15mlを入れ、希釈された血液30mlを徐々に乗せた後、2,000rpmで40分間遠心分離した。PBMCs層を回収して50mlチューブに移し、洗浄バッファ(2% FBSと10mM HEPESを含むRPMI1640培地)を満たして1,600rpmで10分間遠心分離することによって細胞を洗浄した。遠心分離後に上澄液を捨て、4回反復して洗浄した。遠心分離後に残った細胞ペレット(pellets)は50mlの洗浄バッファで溶かして単一細胞にした後、最後に2×10cells/ml濃度になるようにPBS培地に希釈した。
【0104】
マウス群構成及び投与は、PBMC注入後に薬物投与を開始し、1群PBMC+human whole IgG(control)、2群PBMC+competitor(JNJ 61610588)、3群PBMC+pembrolizumab、4群PBMC+anti VISTA mAb(1B8)、5群PBMC+pembrolizumab+anti VISTA mAb(1B8)の各群に5mg/kgで微静脈投与した。
【0105】
PBMC注入後に薬物を投与し始め、2回/週の投与スケジュールでマウス当たり0.2mlずつ、合計7回微静脈投与した。
【0106】
全ての動物に対して投与開始時及び試験期間中の投与直前に一般症状観察及び体重変化、腫瘍大きさ変化を測定した。
【0107】
腫瘍サイズの変化は、癌細胞移植後に群別平均腫瘍サイズが46.9mmに到達して25日目まで総12回、個体別にバーニアキャリパー(vernier caliper)を用いて左/右腫瘍の3方向を測定した後、長さ×幅×高さ/2の計算式で表現した。
【0108】
薬物投与開始25日目に群当たり健康なマウスを3匹選抜して眼窩静脈から採血(EDTA tube)した後、COガスを用いてマウスを致死させた後、脾臓(spleen)を摘出してPBSに固定し、腫瘍は右側と左側に分けて分離して化学てんびん(chemical balance)に重さを測定した後、写真撮影後にそれぞれ液体窒素とホルマリンに固定した。
【0109】
その結果、試験期間中にいずれの投与群からも特異な一般症状は観察されなかったが、溶媒対照群(PBMC+PBS)2番マウスとPBMC+Anti-VISTA mAb 1B8投与群5番マウスがそれぞれ、day17と、day21から最終日までにおいて初期体重に比べて体重減少を示した(表5及び図5)。
【0110】
【表5】
【0111】
薬物投与開始後25日目にMDA-MB-231腫瘍(tumor)を切除してその重さを測定した結果、溶媒対照群(PBMC+human whole IgG)と比較して、PBMC+JNJ61610588(5mg/kg)、PBMC+pembrolizumab(5mg/kg)、PBMC+Anti-VISTA mAb 1B8(5mg/kg)及びPBMC+pembrolizumab+Anti-VISTA mAb1B8(5+5mg/kg)投与群においてそれぞれ、18.9%(p<0.05)、32.9%(p<0.001)、37.8%(p<0.001)及び60.6%(p<0.001)の統計的に有意な腫瘍重さ減少があった(表6、図6)。
【0112】
【表6】
【0113】
実施例10.親和度増進のための変異体の作製及び選別
抗-VISTA抗体クローン1B8の親和度増進のために抗体最適化を行った。1B8の元のDNA配列を80%保存してランダム化(randomize)させるソフト-ランダム化(soft-randomization)法を用いて、1B8の軽鎖CDR3と重鎖CDR3に無作為変異を導入したプライマーを作製した。これを用いたPCRによって、変異の導入された1B8の軽鎖可変領域、ME4の重鎖可変領域コードDNA断片を確保した。このDNA断片をそれぞれ1B8 scFvファージファージミドの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域と置換し、1B8軽鎖CDR3変異体scFvファージライブラリー及び重鎖CDR3変異体scFvファージDNAライブラリーをそれぞれ作製した。
【0114】
変異体scFvファージDNAライブラリーをフェノール-クロロホルム精製後に電気穿孔法を用いて大腸菌株XL-1 Blueに形質転換した。形質転換効率分析及びDNA配列分析によって多様性が確保されたことを確認した後、500ml規模で培養してファージ発現を誘導し、PEG-沈殿法を用いて1B8軽鎖CDR3変異体scFvファージライブラリーを作製した。
【0115】
各変異体scFvファージライブラリーを用いて実施例1で提示した方法によってバイオパンニングを実施した。その後、選別過程では結合を維持する能力の定量的評価指標としてscFvの解離速度定数kdisを測定した。その結果、選別された最適化クローン7種は1B8の重鎖可変領域を維持した。選別された最適化クローン7種に対する解離速度定数測定結果(表7)とアミノ酸配列(表8及び表9)を示した。
【0116】
最適化抗-VISTA抗体の7種の解離速度定数測定の結果、最も良い抗-VISTA.H2のCDR3部分のN((Aps)をY(Tyr)に置換してPMC-309.3.3配列を確保し、PMC-309.3.3の配列をIMGTソフトウェア(http://imgt.cines.fr/IMGT_vquest/share/textes/)を用いてヒトジャームライン(germline)塩基配列と比較分析した結果、重鎖可変領域はIGHV1-69*06から由来したことが分かった。ジャームライングループのIGHV1-69*06のアミノ酸配列と比較した結果、骨格領域(framework region,FR)のアミノ酸の4個の残基が置換されたものと分析された。これに基づいて、抗原結合性は維持しながらフォルディング効率を高めるために、FR部分を置換して効率を高めたPMC309.3.4を生産した。PMC309.3.4の具体的配列は、表10に示す通りである。
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
実施例11.最適化された抗-VISTA抗体の物理化学的特成分析
各最適化scFvファージクローンをIgG形態に変換した。具体的な形態変換のためのDNAクローニング及び生産、精製方法は、実施例4及び実施例5に提示したのと同じ方法を用いた。
【0122】
そのうち、生産性に劣るクローンは排除し、最適化された抗-VISTA抗体の結合強度を評価するためにオクテット(Octet)を使用し、実験は、実施例6で提示したのと同じ方法で測定した(表11)。表11によれば、最適化によってヒトVISTAに対する結合力が大きく上昇したことが確認できた。
【0123】
【表11】
【0124】
実施例12.最適化された抗-VISTA抗体のAllo-MLR assay
最適化された抗体の機能評価のためにin vitro上で末梢血液に含まれている免疫細胞の反応性を測定するために、混合リンパ球反応試験法(mixed Lymphocyte Reaction,MLR)を、実施例8で提示したのと同じ方法で行い、細胞の増殖とサイトカイン(IFN-γ)誘導を確認した。
【0125】
その結果を図7及び図8に示した。図7及び図8によれば、PMC-309.3.3薬物が比較群に比べて非常に優れており、濃度依存的細胞の増殖とサイトカイン分泌が増加することを確認した。
【0126】
実施例13.最適化抗-VISTA抗体の抗腫瘍活性
抗-VISTA抗体の抗腫瘍活性を評価するために、ヒト由来乳癌細胞株であるMDA-MB-231乳房脂肪(mammary fat)をパッド(pad)に移植したNSGマウスにおいて実施例7に提示されたのと同じ方法を行い、ヒトPBMCとJNJ61610588、PMC-309.3.3、anti-VISTA3.4を含めて軽鎖可変領域を交換した薬物(PMC-309.3.4W、PMC-309.3.4SA)に対する微静脈投与による抗癌薬効を評価した。
【0127】
その結果、表12、表13、図9及び図10に見られるように、混合リンパ反応における結果と一致するPMC-309.3.3が最も高い抗癌活性を示した。
【0128】
【表12】
【0129】
【表13】
【0130】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に述べてきたが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施の態様に過ぎず、それらに本発明の範囲が制限されない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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