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7009679電気スズ及び電気スズ合金メッキ浴、当該メッキ浴を用いた電着物の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】電気スズ及び電気スズ合金メッキ浴、当該メッキ浴を用いた電着物の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/32 20060101AFI20220118BHJP
   C25D 3/56 20060101ALI20220118BHJP
   C25D 3/60 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C25D3/32
C25D3/56 C
C25D3/60
H01L21/92 604B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2015149883
(22)【出願日】2015-07-29
(65)【公開番号】P2017031447
(43)【公開日】2017-02-09
【審査請求日】2018-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2019-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092439
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 博隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴大
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】幡部 賢
(72)【発明者】
【氏名】伊内 祥哉
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-021693(JP,A)
【文献】特開2009-185358(JP,A)
【文献】特開平11-001792(JP,A)
【文献】特開平10-102276(JP,A)
【文献】特開昭62-270791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00- 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一スズ塩と、第一スズ塩及び亜鉛、ニッケル、ビスマス、コバルト、インジウム、アンチモン、金、銅から選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかの可溶性塩と、
(B)酸又はその塩と、
(C)下記の一般式(1)で表わされる架橋式芳香族化合物
Za-Xa-Y-Xb-Zb …(1)
(上式(1)において、Xa及びXbは芳香環及び複素環を表わし、XaとXbは同一又は異なっても良い。;Yは直鎖又は分岐状のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、これらの一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖、酸素原子、イミノ結合又は4級アンモニウム結合を形成する窒素原子のいずれかを表す。;Za及びZbは水素、C1~C18アルキル基、C1~C18アルコキシ基、ハロゲン、スルホン酸(塩)基、アミド基、アミノ基、4級アンモニウム塩基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを表す。Za、Zbは夫々1~4個であり、ZaとZbは同一又は異なっても良い。但し、スズと合金を形成する金属が銅、アンチモンである場合は、Za及びZbの上記官能基群から水酸基とC1~C18アルコキシ基を除く。
とを含有する電気スズ及びスズ合金メッキ浴。
【請求項2】
さらに、下記の化合物(a)~(c)より選ばれたスルフィド化合物、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ピロリン酸、ポリアミン、アミノアルコール及びこれらの塩より選ばれた錯化剤(D)の少なくとも一種
(a)次の式(a)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
Xn-R1-S-(CH2CH2S)m-R2-Xn …(a)
(式(a)中、R1,R2はC2~C4アルキレンである;XはOH、SO3H、SO3M(Mはアルカリ金属、アンモニア又はアミン)、NRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)、CONRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)より選択され、R1,R2を構成するアルキレン鎖の中のいずれの炭素原子に結合しても良い;mは1~2の整数である;nは1~4の整数である。)
(b)次の式(b)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
H-(OA)n-S-(OA)n-H …(b)
(式(b)中、Aはエチレン又はプロピレン(エチレン又はプロピレン鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合しても良い);nは1~25の整数である。)
(c)分子中にモノ、ジ又はトリスルフィド結合を1個、或は繰り返し有するとともに、当該結合の両翼に位置して脂肪族、脂環、芳香環、複素環より選ばれた原子団のうちの、少なくとも一方に1個以上の塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド化合物
を含有することを特徴とする請求項1に記載の電気スズ及びスズ合金メッキ浴。
【請求項3】
(A)第一スズ塩及び銀塩よりなる可溶性塩の混合物と、
(B)酸又はその塩と、
(C)下記の一般式(1)で表わされる架橋式芳香族化合物と、
Za-Xa-Y-Xb-Zb …(1)
(上式(1)において、Xa及びXbは芳香環及び複素環を表わし、XaとXbは同一又は異なっても良い。;Yは直鎖又は分岐状のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、これらの一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖、酸素原子、イミノ結合又は4級アンモニウム結合を形成する窒素原子のいずれかを表す。;Za及びZbは水素、C1~C18アルキル基、C1~C18アルコキシ基、ハロゲン、スルホン酸(塩)基、アミド基、アミノ基、4級アンモニウム塩基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを表す。Za、Zbは夫々1~4個であり、ZaとZbは同一又は異なっても良い。)
(D)下記の化合物(a)~(c)より選ばれたスルフィド化合物、ポリアミン及びその塩より選ばれた錯化剤の少なくとも一種と
(a)次の式(a)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
Xn-R1-S-(CH2CH2S)m-R2-Xn …(a)
(式(a)中、R1,R2はC2~C4アルキレンである;XはOH、SO3H、SO3M(Mはアルカリ金属、アンモニア又はアミン)、NRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)、CONRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)より選択され、R1,R2を構成するアルキレン鎖の中のいずれの炭素原子に結合しても良い;mは1~2の整数である;nは1~4の整数である。)
(b)次の式(b)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
H-(OA)n-S-(OA)n-H …(b)
(式(b)中、Aはエチレン又はプロピレン(エチレン又はプロピレン鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合しても良い);nは1~25の整数である。)
(c)分子中にモノ、ジ又はトリスルフィド結合を1個、或は繰り返し有するとともに、当該結合の両翼に位置して脂肪族、脂環、芳香環、複素環より選ばれた原子団のうちの、少なくとも一方に1個以上の塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド化合物
を含有する電気スズ-銀合金メッキ浴。
【請求項4】
上記化合物(C)において、Yがアルキレン鎖、アルケニレン鎖、酸素原子、窒素原子であり、Xa及びXbがベンゼン環、ナフタレン環、チアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、チアジアゾール環、イミダゾリン環、イミダゾール環、チアゾリン環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピコリン環、フラザン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環よりなる群から選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気スズ及びスズ合金メッキ浴。
【請求項5】
上記化合物(C)が、ジピリジルアルカン、ジピリジルアルカンスルホン酸、ジピペリジルアルカン、ジピペリジルアルカンスルホン酸、ジピロールアルカン、ジピロールアルカンスルホン酸、ジイミダゾリルアルカン、ジイミダゾリルアルカンスルホン酸、ジトリアゾリルアルカン、ジトリアゾリルアルカンスルホン酸、ジアニリンアルカン、ジアニリンアルカンスルホン酸、ジフェニルアルカン、アミノジフェニルアルカン、ジフェニルアルカンスルホン酸、ヒドロキシジフェニルアルカン、ヒドロキシジフェニルアルカンスルホン酸、アミノジフェニルアルカンスルホン酸、ジナフチルアルカン、アミノジナフチルアルカン、ジナフチルアルカンスルホン酸、ヒドロキシジナフチルアルカンスルホン酸、アミノジナフチルアルカンスルホン酸、フェニルアルキルイミダゾール、フェニルアルキルピリジン、ジアミノスチルベン、ジアミノスチルベンスルホン酸、アルキルヒドロキシスチルベン、ジピリジルアミン、ジピリジルアミンスルホン酸、ジピペリジルアミン、ジピペリジルアミンスルホン酸、ジピロールアミン、ジピロールアミンスルホン酸、ジイミダゾリルアミン、ジイミダゾリルアミンスルホン酸、ジトリアゾリルアミン、ジトリアゾリルアミンスルホン酸、アニリンアミン、ジアニリンアミンスルホン酸、ジフェニルアミン、アミノジフェニルアミン、ジフェニルアミンスルホン酸、ヒドロキシジフェニルアミンスルホン酸、アミノジフェニルアミンスルホン酸、ジナフチルアミン、アミノジナフチルアミン、ジナフチルアミンスルホン酸、ヒドロキシジナフチルアミンスルホン酸、アミノジナフチルアミンスルホン酸、ジアルキルジフェニルアンモニウム塩、ジアルキルジナフチルアンモニウム塩、N,N,N′,N′-テトラアルキルジアミノジフェニルアミン、フェニルナフチルアミンスルホン酸、ジピリジルエーテル、ジピリジルエーテルスルホン酸、ジピペリジルエーテル、ジピペリジルエーテルスルホン酸、ジピロールエーテル、ジピロールエーテルスルホン酸、ジイミダゾリルエーテル、ジイミダゾリルエーテルスルホン酸、ジトリアゾリルエーテル、ジトリアゾリルエーテルスルホン酸、ジアニリンエーテル、ジアニリンエーテルスルホン酸、ジフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ヒドロキシジフェニルエーテル、アミノジフェニルエ―テル、アルキルアミノジフェニルエ―テル、カルボキシジフェニルエーテル、ジフェニルエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、ヒドロキシジフェニルエーテルスルホン酸、ジナフチルエーテル、アルキルジナフチルエーテル、ヒドロキシジナフチルエーテル、アミノジナフチルエ―テル、アルキルアミノジナフチルエ―テル、カルボキシジナフチルエーテル、ジナフチルエーテルスルホン酸、アルキルジナフチルエーテルスルホン酸、フェニルナフチルエーテル、アルキルフェニルナフチルエーテル、ヒドロキシフェニルナフチルエーテル、アミノフェニルナフチルエ―テル、アルキルアミノフェニルナフチルエ―テル、カルボキシフェニルナフチルエーテル、フェニルナフチルエーテルスルホン酸、アルキルフェニルナフチルエーテルスルホン酸、ヒドロキシフェニルナフチルエーテルスルホン酸、アルキルアミノニトロジフェニルエーテル、又はこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の電気スズ及びスズ合金メッキ浴。
【請求項6】
さらに、界面活性剤、酸化防止剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤より選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気スズ及びスズ合金メッキ浴。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項の電気メッキ浴を用いてスズ又はスズ合金を材質とする電着物を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気スズ及びスズ合金メッキ浴、当該メッキ浴を用いた電子部品の製造方法に関して、高さの均一性に優れた電着物を良好に形成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
電子部品に電気メッキを適用して電着物( 突起電極(バンプ)や電着皮膜など )を形成する場合を説明すると、例えば、半導体チップの搭載用基板では、軽薄短小に対応するため、現在、パッケージ基板面積を、基板に搭載する半導体チップとほぼ等しい程度に小型化したCSP(Chip Size/scale Package)型の半導体部品などがある。
基板と半導体チップを接続するには、半導体チップ側のパッド、或はランド、若しくは基板側のパッド、ランド、或いはビア胴体部にスズ又はスズ合金を充填して突起電極を形成し、この突起電極に半導体チップを装填している。
このスズ又はスズ合金材料の充填により突起電極を形成する場合、スズ系のハンダペーストやハンダボールを載置後、熱処理によって溶融させる方法や、電気メッキにより形成する方法があるが、コスト面や微細化で電気メッキ方式が適している。
【0003】
そこで、突起電極の形成に用いられる電気スズ又はスズ合金メッキ浴を挙げると、次の通りである。
(1)特許文献1
ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物とノニオン性界面活性剤などを含有するスズ-鉛合金メッキ浴を用いて、電気メッキにより基板上に突起電極を形成することで(請求項1、25~26、段落18)、突起電極の高さの均一性が増す(段落27)。
上記スズ-鉛合金メッキ浴にはノニオン性界面活性剤を含有可能である(請求項8)。
実施例1、4では、ビスフェノールFのエチレンオキシド(EO)付加物を含有するスズ-鉛合金メッキ浴が開示される(段落31、34)。
【0004】
(2)特許文献2~4
特許文献2~4には、半導体ウエハに突起電極を形成するための電気スズ-鉛合金メッキ浴が開示される。
特許文献2は気泡除去剤を含有する点を特徴とし、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの各種界面活性剤を含有可能とする(請求項17)。実施例7、20(段落40、53)には、ビスフェールAのEO付加物を含有するスズ-鉛合金メッキ浴が開示される。
特許文献3、4は特定のノニオン性界面活性剤やアルドールスルファニル誘導体を含有する点を特徴とする。
【0005】
(3)特許文献5
半導体素子上に突起電極を形成するための電気スズ-銀合金、スズ-銅合金、スズ-ビスマス合金メッキ浴が開示される(請求項1)。
実施例1~4には、ビスフェールAのEO付加物を含有するスズ-銀合金メッキ浴が開示される(段落50~53)。
【0006】
(4)特許文献6
基板上に突起電極を形成するための電気スズ及びスズ合金メッキ浴が開示され、可溶性スズ塩を所定以上の高純度にする点を特徴とする(請求項1)。
実施例5にはビスフェールFのEO付加物を含有するスズ-銀合金メッキ浴が、また、実施例8にはビスフェールFのEO付加物を含有するスズ-銅合金メッキ浴が夫々開示される(段落42、45)。
【0007】
(5)特許文献7
突起電極を形成するための電気スズ-銀合金メッキ浴が開示され、特定のチオ尿素誘導体、或いは特定のアルデヒド、ケトンを含有する点を特徴とする(請求項1~2)。
上記メッキ浴にはカチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩)を含有可能とする(請求項6~7、段落29)。
【0008】
(6)特許文献8~10
特許文献8~10は、突起電極、チップ部品、リードフレームなどの部品に、スズ-鉛合金メッキ皮膜の大体材料を形成するための電気メッキ浴である。
特許文献8は電気スズメッキ浴に関し、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの各種界面活性剤を含有可能とする(段落39~40)。
特許文献9は電気スズ-銅合金メッキ浴に関して、実施例3にはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含有する浴、実施例10にはビスフェールAのEO付加物を含有する浴が開示される(表1~2)。
【0009】
(7)特許文献11
突起電極の形成に適用することへの記載や示唆はないが、界面活性剤と所定のアルコール誘導体などを含有する電気スズ及びスズ合金メッキ浴が開示される。
上記界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などが挙げられ(段落18)、ノニオン性界面活性剤にはポリオキシアルキレンビスフェノールなどが例示され(段落19)、アニオン性界面活性剤には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸エステル塩などが例示される(段落21)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-290505号公報
【文献】特開平11-229174号公報
【文献】特開平08-269776号公報
【文献】特開平08-078424号公報
【文献】特開2015-045094号公報
【文献】特開2015-036449号公報
【文献】特表2009-510255号公報
【文献】特開2007-284733号公報
【文献】特開2002-080993号公報
【文献】特開2001-026898号公報
【文献】特許第3904333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板上に多数形成した突起電極上にLSI、ICなどのチップ部品を搭載する場合、チップ部品との接続を確実に担保するには、突起電極の形状、特に高さの均一性を確保することが重要である。この点は、ランド上に形成した突起電極を介して基板同士を接続する基板間接続についても同様である。
しかしながら、上記特許文献で示されたスズ又はスズ合金メッキ浴により突起電極を形成した場合、突起電極の数が増大すると、高さの均一性の確保は容易でないという実情があり、最近の電極数の増大、電極ピッチ、寸法の微小化の進展に伴って接続不良を起こす恐れが増している。
【0012】
このように、本発明は、電気スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて形成された突起電極、電着皮膜などの電着物に関して、高さの均一性に優れた電着物の形成を技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、芳香環、或は複素環同士をエーテル結合、アルキレン結合、イミノ結合などの特定種の結合で架橋した構造を基本骨格として具備した架橋式芳香族化合物をスズ又はスズ合金メッキ浴に含有して、電気メッキにより電着物(突起電極や電着皮膜)を形成すると、電着物の高さのバラツキが抑制され、当該高さの均一性が良好に担保できること、さらにスルフィド化合物などから選ばれた特定種の錯化剤を上記メッキ浴に併用すると、上記課題がさらに円滑に達成できることを見い出して、本発明を完成した。
【0014】
本発明1は、(A)第一スズ塩と、第一スズ塩及び亜鉛、ニッケル、ビスマス、コバルト、インジウム、アンチモン、金、銅から選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかの可溶性塩と、
(B)酸又はその塩と、
(C)下記の一般式(1)で表わされる架橋式芳香族化合物
Za-Xa-Y-Xb-Zb …(1)
(上式(1)において、Xa及びXbは芳香環及び複素環を表わし、XaとXbは同一又は異なっても良い。;Yは直鎖又は分岐状のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、これらの一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖、酸素原子、イミノ結合又は4級アンモニウム結合を形成する窒素原子のいずれかを表す。;Za及びZbは水素、C1~C18アルキル基、C1~C18アルコキシ基、ハロゲン、スルホン酸(塩)基、アミド基、アミノ基、4級アンモニウム塩基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを表す。Za、Zbは夫々1~4個であり、ZaとZbは同一又は異なっても良い。但し、スズと合金を形成する金属が銅、アンチモンである場合は、Za及びZbの上記官能基群から水酸基とC1~C18アルコキシ基を除く。
とを含有する電気スズ及びスズ合金メッキ浴である。
【0015】
本発明2は、上記本発明1において、さらに、下記の化合物(a)~(c)より選ばれたスルフィド化合物、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ピロリン酸、ポリアミン、アミノアルコール及びこれらの塩より選ばれた錯化剤(D)の少なくとも一種
(a)次の式(a)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
Xn-R1-S-(CH2CH2S)m-R2-Xn …(a)
(式(a)中、R1,R2はC2~C4アルキレンである;XはOH、SO3H、SO3M(Mはアルカリ金属、アンモニア又はアミン)、NRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)、CONRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)より選択され、R1,R2を構成するアルキレン鎖の中のいずれの炭素原子に結合しても良い;mは1~2の整数である;nは1~4の整数である。)
(b)次の式(b)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
H-(OA)n-S-(OA)n-H …(b)
(式(b)中、Aはエチレン又はプロピレン(エチレン又はプロピレン鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合しても良い);nは1~25の整数である。)
(c)分子中にモノ、ジ又はトリスルフィド結合を1個、或は繰り返し有するとともに、当該結合の両翼に位置して脂肪族、脂環、芳香環、複素環より選ばれた原子団のうちの、少なくとも一方に1個以上の塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド化合物
を含有することを特徴とする電気スズ及びスズ合金メッキ浴である。
【0016】
本発明3は、(A)第一スズ塩及び銀塩よりなる可溶性塩の混合物と、
(B)酸又はその塩と、
(C)下記の一般式(1)で表わされる架橋式芳香族化合物と、
Za-Xa-Y-Xb-Zb …(1)
(上式(1)において、Xa及びXbは芳香環及び複素環を表わし、XaとXbは同一又は異なっても良い。;Yは直鎖又は分岐状のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、これらの一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖、酸素原子、イミノ結合又は4級アンモニウム結合を形成する窒素原子のいずれかを表す。;Za及びZbは水素、C1~C18アルキル基、C1~C18アルコキシ基、ハロゲン、スルホン酸(塩)基、アミド基、アミノ基、4級アンモニウム塩基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかを表す。Za、Zbは夫々1~4個であり、ZaとZbは同一又は異なっても良い。)
(D)下記の化合物(a)~(c)より選ばれたスルフィド化合物、ポリアミン及びその塩より選ばれた錯化剤の少なくとも一種と
(a)次の式(a)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
Xn-R1-S-(CH2CH2S)m-R2-Xn …(a)
(式(a)中、R1,R2はC2~C4アルキレンである;XはOH、SO3H、SO3M(Mはアルカリ金属、アンモニア又はアミン)、NRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)、CONRaRb(Ra、Rbは水素、C1~C6アルキル)より選択され、R1,R2を構成するアルキレン鎖の中のいずれの炭素原子に結合しても良い;mは1~2の整数である;nは1~4の整数である。)
(b)次の式(b)で表わされる脂肪族スルフィド化合物
H-(OA)n-S-(OA)n-H …(b)
(式(b)中、Aはエチレン又はプロピレン(エチレン又はプロピレン鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合しても良い);nは1~25の整数である。)
(c)分子中にモノ、ジ又はトリスルフィド結合を1個、或は繰り返し有するとともに、当該結合の両翼に位置して脂肪族、脂環、芳香環、複素環より選ばれた原子団のうちの、少なくとも一方に1個以上の塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド化合物
を含有する電気スズ-銀合金メッキ浴である。
【0017】
本発明4は、上記本発明1~3のいずれかにおいて、上記化合物(C)において、Yがアルキレン鎖、アルケニレン鎖、酸素原子、窒素原子であり、Xa及びXbがベンゼン環、ナフタレン環、チアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、チアジアゾール環、イミダゾリン環、イミダゾール環、チアゾリン環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピコリン環、フラザン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環よりなる群から選ばれたいずれかであることを特徴とする電気スズ及びスズ合金メッキ浴である。
【0018】
本発明5は、上記本発明4において、上記化合物(C)が、ジピリジルアルカン、ジピリジルアルカンスルホン酸、ジピペリジルアルカン、ジピペリジルアルカンスルホン酸、ジピロールアルカン、ジピロールアルカンスルホン酸、ジイミダゾリルアルカン、ジイミダゾリルアルカンスルホン酸、ジトリアゾリルアルカン、ジトリアゾリルアルカンスルホン酸、ジアニリンアルカン、ジアニリンアルカンスルホン酸、ジフェニルアルカン、アミノジフェニルアルカン、ジフェニルアルカンスルホン酸、ヒドロキシジフェニルアルカン、ヒドロキシジフェニルアルカンスルホン酸、アミノジフェニルアルカンスルホン酸、ジナフチルアルカン、アミノジナフチルアルカン、ジナフチルアルカンスルホン酸、ヒドロキシジナフチルアルカンスルホン酸、アミノジナフチルアルカンスルホン酸、フェニルアルキルイミダゾール、フェニルアルキルピリジン、ジアミノスチルベン、ジアミノスチルベンスルホン酸、アルキルヒドロキシスチルベン、ジピリジルアミン、ジピリジルアミンスルホン酸、ジピペリジルアミン、ジピペリジルアミンスルホン酸、ジピロールアミン、ジピロールアミンスルホン酸、ジイミダゾリルアミン、ジイミダゾリルアミンスルホン酸、ジトリアゾリルアミン、ジトリアゾリルアミンスルホン酸、アニリンアミン、ジアニリンアミンスルホン酸、ジフェニルアミン、アミノジフェニルアミン、ジフェニルアミンスルホン酸、ヒドロキシジフェニルアミンスルホン酸、アミノジフェニルアミンスルホン酸、ジナフチルアミン、アミノジナフチルアミン、ジナフチルアミンスルホン酸、ヒドロキシジナフチルアミンスルホン酸、アミノジナフチルアミンスルホン酸、ジアルキルジフェニルアンモニウム塩、ジアルキルジナフチルアンモニウム塩、N,N,N′,N′-テトラアルキルジアミノジフェニルアミン、フェニルナフチルアミンスルホン酸、ジピリジルエーテル、ジピリジルエーテルスルホン酸、ジピペリジルエーテル、ジピペリジルエーテルスルホン酸、ジピロールエーテル、ジピロールエーテルスルホン酸、ジイミダゾリルエーテル、ジイミダゾリルエーテルスルホン酸、ジトリアゾリルエーテル、ジトリアゾリルエーテルスルホン酸、ジアニリンエーテル、ジアニリンエーテルスルホン酸、ジフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ヒドロキシジフェニルエーテル、アミノジフェニルエ―テル、アルキルアミノジフェニルエ―テル、カルボキシジフェニルエーテル、ジフェニルエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、ヒドロキシジフェニルエーテルスルホン酸、ジナフチルエーテル、アルキルジナフチルエーテル、ヒドロキシジナフチルエーテル、アミノジナフチルエ―テル、アルキルアミノジナフチルエ―テル、カルボキシジナフチルエーテル、ジナフチルエーテルスルホン酸、アルキルジナフチルエーテルスルホン酸、フェニルナフチルエーテル、アルキルフェニルナフチルエーテル、ヒドロキシフェニルナフチルエーテル、アミノフェニルナフチルエ―テル、アルキルアミノフェニルナフチルエ―テル、カルボキシフェニルナフチルエーテル、フェニルナフチルエーテルスルホン酸、アルキルフェニルナフチルエーテルスルホン酸、ヒドロキシフェニルナフチルエーテルスルホン酸、アルキルアミノニトロジフェニルエーテル、又はこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする電気スズ及びスズ合金めっき浴である。
【0019】
本発明6は、上記本発明1~5のいずれかにおいて、さらに、界面活性剤、酸化防止剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤より選ばれた添加剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする電気スズ及びスズ合金メッキ浴である。
【0020】
本発明7は、上記本発明1~6のいずれかの電気メッキ浴を用いてスズ又はスズ合金を材質とする電着物を形成する方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、芳香環、或は複素環同士をエーテル結合、アルキレン結合などから選ばれた特定種の結合で架橋した構造、例えば、ジフェニルエーテル構造を基本骨格として具備した架橋式芳香族化合物をスズ及びスズ合金メッキ浴に含有するため、電気メッキにより多数の電着物(突起電極や電着皮膜)を形成した場合、電着物の高さのバラツキが抑制され、もって、電着物の高さの均一性を良好に担保できる。
また、本発明のスズ及びスズ合金メッキ浴に、スルフィド化合物などの特定種の錯化剤を併用添加すると、メッキ浴の安定性の向上により電着物の高さの均一性がさらに増す。
従って、本発明のスズ及びスズ合金メッキ浴を各種電子部品に適用すると、多数の突起電極の高さを良好に均一化できる。一方、電着皮膜を形成した場合には、皮膜の厚みを良好に均一化できるとともに、例えば、基板へのビアホールなどへの充填に際してもボイドを発生させずに良好なスズ系材料を充填できる。
【0022】
尚、前記特許文献11の電気スズ及びスズ合金メッキ浴には界面活性剤を含有可能であり(段落18)、列挙されたノニオン性界面活性剤の一例としてポリオキシアルキレンビスフェノールが(段落19)、また、列挙されたアニオン性界面活性剤の一例としてアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩が夫々記載される(段落21)。
しかしながら、前述したように、当該特許文献11には、このスズ又はスズ合金メッキ浴を突起電極の形成に適用することへの記載や示唆は全くないうえ、実施例には、例えば、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩を含有する電気メッキ浴の具体的な記載はない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、第一に、芳香環、或は複素環同士をエーテル結合、アルキレン結合、アルキニレン結合、イミノ結合、4級アンモニウム結合などから選ばれた特定種の結合で架橋した構造を基本骨格として有する架橋式芳香族化合物Cを含有する電気スズ及びスズ合金(スズ-銀合金及びスズ-鉛合金は除く。また、スズと合金を形成する金属が銅、アンチモンである場合(即ち、スズ-銅系合金、スズ-アンチモン系合金の場合)には、架橋式芳香族化合物Cを表す一般式(1)の末端部位Za及びZbについては、水酸基とC1~C18アルコキシ基は除かれる。 )メッキ浴であり、第二に、上記架橋式芳香族化合物Cと所定のスルフィド化合物などから選択された錯化剤Dを併用した電気スズ-銀合金メッキ浴であり、第三に、当該電気メッキ浴を用いて電着物(突起電極、或いは電着皮膜)を形成する方法である。
【0024】
本発明の一方のスズメッキ浴は、 (A)可溶性第一スズ塩と、(B)酸又はその塩と、(C)架橋式芳香族化合物とを含有する。
他方、本発明のスズ合金メッキ浴は、(A)第一スズ塩及び亜鉛、ニッケル、ビスマス、コバルト、インジウム、アンチモン、金、銀、銅から選ばれた金属の塩の混合物とのいずれかの可溶性塩と、(B)酸又はその塩と、(C)架橋式芳香族化合物とを含有する。
【0025】
本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴は、上記架橋式芳香族化合物(C)を含有することに特徴があり、上述したように、当該化合物(C)は次の一般式(1)で表わされる。
Za-Xa-Y-Xb-Zb …(1)
一般式(1)において、Xa及びXbは芳香環、複素環を表わし、本発明の架橋式芳香族化合物(C)は当該芳香環を有する化合物と複素環を有する化合物を包含する概念である。上記芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などであり、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環である。
上記複素環は単環式複素環、縮合複素環を包含する概念であり、テトラゾール、トリアゾール、トリアジン、チアゾール、チアジアゾール、チアゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、キノリン、フラン、モルホリン、チオフェン、ピリジン、オキサゾール、オキサジアゾール、ピロール、ピラゾール、ピラジン、フラザン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、カルバゾール、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、ピロリン、ピコリン、イミダゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、チアントレンなどの各種環であり、好ましくはチアゾール、ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、チアジアゾール、イミダゾリン、イミダゾール、チアゾリン、トリアゾール、テトラゾール、ピコリン、フラザン、ピペリジン、ピペラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾールの各種環である。
【0026】
上記芳香環、複素環であるXa、Xbは同一又は異なっても良い。
例えば、XaとXbが共にベンゼン環でも良いし、Xaがベンゼン環でXbがナフタレン環でも良い。例えば、後述する実施例3のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムは前者の例、実施例1のアルキルフェニルナフチルエーテルジスルホン酸ナトリウムは後者の例である。
また、例えば、XaとXbが共にピリジン環でも良いし(実施例15のジピリジルエタン参照)、Xaがベンゼン環でXbがピリジン環でも良いし、Xaがピリジン環でXbがイミダゾール環でも良い。
【0027】
上記一般式(1)において、Yはいわゆる炭素結合、酸素結合、窒素結合から選択され、具体的には、直鎖又は分岐状のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、或はこれらの一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖、酸素原子、窒素原子のいずれかより選択される。
Yが酸素原子の場合、XaとXbを繋ぐエーテル結合を意味する。例えば、実施例1~12、16~19、31~34などに含まれる化合物Cであり、詳細には、実施例16のジアニリンエーテル、実施例3のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、実施例6のジアミノジフェニルエーテルなどである。
【0028】
Yが窒素原子の場合には、2~3級アミン構造、或は4級アンモニウム塩構造をとることができる。
上記2~3級アミン構造はXaとXbを繋ぐイミノ結合(即ち、窒素原子の2本の結合手はXaとXbを架橋し、残る1本の結合手には水素原子、或は、アルキル基が結合)を意味する。例えば、実施例26のジフェニルアミンジスルホン酸ナトリウム、実施例24のアルキルジアミノジフェニルアミンなどである。
また、上記4級アンモニウム塩構造は窒素原子の4本の結合手のうち、2本はXa、Xbの芳香環、複素環に結合し、他の2本は、例えば、共に水素やアルキル基(メチル、エチルなど)に結合し、この4級アンモニウム塩を形成する窒素原子にハロゲン、アルキルサルフェイトアニオン(RSO3-)などの対イオンが配位していることを意味する。例えば、実施例27のN-ジメチルジフェニルアンモニウムメチルサルフェイト、実施例3
9のジフェニルジメチルアンモニウムジスルホン酸ナトリウム・クロライドなどである。
【0029】
Yが炭素原子の場合、直鎖又は分岐状のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニレン鎖、これらの一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖から選ばれた結合を意味する。炭素数はC1~C16程度が好ましい。
アルキレン鎖の代表はポリメチレン鎖であり、モノメチレン鎖、ジメチレン鎖(エチレン鎖)、トリメチレン鎖(直鎖のプロピレン鎖)などが挙げられる。例えば、実施例15のジピリジルエタン、実施例42のベンジルフェニルジスルホン酸ナトリウムなどである。
アルケニレン鎖では炭素結合の中に1個又は複数個の二重結合を有し(実施例21のジアミノスチルベン参照)、同じく、アルキニレン鎖では1個又は複数個の三重結合を有する。Yが炭素原子の場合、アルキレン鎖、アルキニレン鎖が好ましく、C1~C4の直鎖アルキレン鎖、直鎖アルキニレン鎖がより好ましい。
上記アルキレン鎖、アルケニレン鎖、又はアルキニレン鎖の一部がカルボニルで置き換わった炭素鎖としては、フェニルブチロフェノンなどが例示できる。
【0030】
架橋構造部分であるYとしては、エーテル結合、アルキレン結合、アルキニレン結合、イミノ結合、4級アンモニウム塩構造が好ましく、エーテル結合、アルキレン結合、イミノ結合、4級アンモニウム塩構造がより好ましい。
【0031】
上記芳香環、複素環であるXa、Xbには、置換基Za、Zbが置換しても、無置換(即ち、Za及び/又はZbが水素)でも良い。
置換基がある場合の置換基Za、Zbは、C1~C18の直鎖若しくは分岐アルキル基、C1~C18の直鎖若しくは分岐アルコキシ基、ハロゲン、スルホン酸又はその塩基、アミド基、アミノ基、4級アンモニウム塩基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基のいずれかである。Za、Zbとしては、C1~C18の直鎖若しくは分岐アルキル基、スルホン酸(塩)基、水素(無置換の場合)、水酸基、アミド基、アミノ基、カルボキシル基が好ましく、スルホン酸(塩)基、C1~C18の直鎖アルキル基、水素、水酸基、アミノ基がより好ましい。但し、上述のように、スズ合金がスズ-銅系合金及びスズ-アンチモン系合金については、架橋式芳香族化合物Cを表す一般式(1)の末端に位置する置換基Za及びZbのうち、水酸基と C1~C18の(直鎖もしくは分岐)アルコキシ基は排除される。
上記C1~C18アルキル基は、例えば、ラウリル、パルミチル、ステアリルなどである。
上記4級アンモニウム塩基がベンゼン環に置換した例としては、実施例33の4,4′-ジメチルアンモニウムジフェニルエーテル・メチルサルフェイト、実施例29の4-ニトロソメチルエチルジフェニルアンモニウム・エチルサルフェイトなどがある。
また、ZaとZbは芳香環又は複素環に夫々1~4個結合する。ZaとZbは同一又は異なっても良い。例えば、ZaとZbに夫々1個づつ結合する場合には、ZaとZbが共にスルホン酸基であっても良いし、Zaがスルホン酸基で、Zbが水素又はアミノ基であっても良い。


【0032】
上記架橋式芳香族化合物(C)を例示すると、ジピリジルアルカン、ジピリジルアルカンスルホン酸、ジピペリジルアルカン、ジピペリジルアルカンジスルホン酸、ジピロールアルカン、ジピロールアルカンジスルホン酸、ジイミダゾリルアルカン、ジイミダゾリルアルカンスルホン酸、ジトリアゾリルアルカン、ジトリアゾリルアルカンスルホン酸、ジアニリンアルカン、ジアニリンアルカンスルホン酸、ジフェニルアルカン、アミノジフェニルアルカン、ジフェニルアルカンスルホン酸、ヒドロキシジフェニルアルカン、ヒドロキシジフェニルアルカンスルホン酸、アミノジフェニルアルカンスルホン酸、ジナフチルアルカン、アミノジナフチルアルカン、ジナフチルアルカンスルホン酸、ヒドロキシジナフチルアルカンスルホン酸、アミノジナフチルアルカンスルホン酸、フェニルアルキルイミダゾール、フェニルアルキルピリジン、ジアミノスチルベン、ジアミノスチルベンスルホン酸、アルキルヒドロキシスチルベン、ジピリジルアミン、ジピリジルアミンスルホン酸、ジピペリジルアミン、ジピペリジルアミンスルホン酸、ジピロールアミン、ジピロールアミンスルホン酸、ジイミダゾリルアミン、ジイミダゾリルアミンスルホン酸、ジトリアゾリルアミン、ジトリアゾリルアミンスルホン酸、アニリンアミン、ジアニリンアミンスルホン酸、ジフェニルアミン、アミノジフェニルアミン、ジフェニルアミンスルホン酸、ヒドロキシジフェニルアミンスルホン酸、アミノジフェニルアミンスルホン酸、ジナフチルアミン、アミノジナフチルアミン、ジナフチルアミンスルホン酸、ヒドロキシジナフチルアミンスルホン酸、アミノジナフチルアミンスルホン酸、ジアルキルジフェニルアンモニウム塩、ジアルキルジナフチルアンモニウム塩、N,N,N′,N′-テトラアルキルジアミノジフェニルアミン、フェニルナフチルアミンスルホン酸、ジピリジルエーテル、ジピリジルエーテルスルホン酸、ジピペリジルエーテル、ジピペリジルエーテルスルホン酸、ジピロールエーテル、ジピロールエーテルスルホン酸、ジイミダゾリルエーテル、ジイミダゾリルエーテルスルホン酸、ジトリアゾリルエーテル、ジトリアゾリルエーテルスルホン酸、ジアニリンエーテル、ジアニリンエーテルスルホン酸、ジフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ヒドロキシジフェニルエーテル、アミノジフェニルエ―テル、アルキルアミノジフェニルエ―テル、カルボキシジフェニルエーテル、ジフェニルエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、ヒドロキシジフェニルエーテルスルホン酸、ジナフチルエーテル、アルキルジナフチルエーテル、ヒドロキシジナフチルエーテル、アミノジナフチルエ―テル、アルキルアミノジナフチルエ―テル、カルボキシジナフチルエーテル、ジナフチルエーテルスルホン酸、アルキルジナフチルエーテルスルホン酸、フェニルナフチルエーテル、アルキルフェニルナフチルエーテル、ヒドロキシフェニルナフチルエーテル、アミノフェニルナフチルエ―テル、アルキルアミノフェニルナフチルエ―テル、カルボキシフェニルナフチルエーテル、フェニルナフチルエーテルスルホン酸、アルキルフェニルナフチルエーテルスルホン酸、ヒドロキシフェニルナフチルエーテルスルホン酸、ジアルキルアミノニトロジフェニルエーテル、又はこれらの塩である。
好ましくは、ジピロールアルカンジスルホン酸又はその塩、ヒドロキシジフェニルアルカン、ジフェニルアルカンスルホン酸又はその塩、ヒドロキシジフェニルアルカンスルホン酸又はその塩、アルキルアミノジフェニルエーテル、アミドジピリジルエーテルスルホン酸又はその塩、ジアミドジピリジルエーテルスルホン酸又はその塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸又はその塩、ジフェニルエーテルスルホン酸又はその塩、アルキルアミノジトリアゾリルエーテルスルホン酸又はその塩、アルキルフェニルナフチルエーテルスルホン酸又はその塩、ジアニリンエーテル、ジピリジルアルカン、ベンジルフェニルスルホン酸又はその塩、アミノスチルベン、ジフェニルアミンジスルホン酸又はその塩、ジアルキルジフェニルアンモニウム塩が好ましい。
【0033】
上記架橋式芳香族化合物(C)の構造は比較的複雑ではないため、市販品を入手することは容易である。
また、上記化合物(C)のうち、入手が難しいと思われるものについて、架橋形態ごとにその合成例を示すと次の通りである。
(1)エーテル結合を有する化合物
(a)4,4′-ジアミノジフェニルエーテルの合成例
先ず、濃硝酸に触媒として使用する濃硫酸を水冷しながら加え混酸を作った。この混酸にジフェニルエーテルを加え50~60℃で3時間撹拌し、ニトロ化を行った。反応終了後、アルカリ処理をした。減圧下溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、再結晶を行い、4,4′-ジニトロジフェニルエーテルを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
その後、4,4′-ジニトロジフェニルエーテルをエタノールと水に溶かし、鉄粉と塩化アンモニウムを加え100℃で撹拌しアミノ化を行った。反応終了後、沈殿物をろ過した後、減圧下溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、再結晶を行い、4,4′-ジアミノジフェニルエーテルを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
例えば、後述の実施例10で用いる化合物Cは当該化合物である。
(b)ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの合成例
先ず、発煙硫酸に20℃~30℃でジフェニルエーテルを少量ずつ添加した。115℃に反応温度を保ち24時間撹拌し、スルホニル化を行った。反応終了後、氷浴中でイオン交換水を少量ずつ滴下した。
その後、氷浴中で水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。次いで一晩静置し、沈殿物を吸引ろ過した。ろ物をイオン交換水で洗浄し水溶液としてジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
当該合成例に準拠すれば、例えば、後述の実施例18に示した化合物Cを容易に合成できる。
(c)4-フェノキシベンゾチアゾールの合成例
先ず、アセトリトリルとフェノールの混合溶液に80℃で2-クロロベンゾチアゾールを少量ずつ加え、一晩撹拌しエーテル化を行った。
反応終了後、減圧下溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、再結晶を行い、4-フェノキシベンゾチアゾールを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。尚、当該化合物はベンゾチアゾール環にフェノキシ基が結合したもので、換言すると、ベンゾチアゾール環とベンゼン環がエーテル結合で結ばれている。
【0034】
(2)アルキレン結合を有する化合物
下記の合成例(a)~(b)に準拠すれば、例えば、後述の実施例15、実施例23に示した化合物Cを容易に合成できる。
(a)4,4′-ジヒドロキシジフェニルプロパンの合成例
先ず、1,3-ジフェニルプロパン、dry-ジクロロメタン 、ジクロロメチルメチルエーテルの混合溶液に氷浴中で塩化アルミニウムを少量に分けて加え、ホルミル化を行った。反応終了後、反応混合物を氷水中に注ぎ込み、クロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、再結晶を行い4,4′-ジカルボキシアルデヒドジフェニルプロパンを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
その後、エタノール、水素化ホウ素ナトリウムを加え3時間半撹拌した。反応終了後、1%塩酸水溶液により中和して、水素化ホウ素ナトリウムをクエンチし、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去後、再結晶を行い、4,4′-ジヒドロキシジフェニルプロパンを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
(b)5,5′- tert-ブチル-2,2′-ジメチルビベンジルの合成例
先ず、4-tert-ブチルトルエン、ジクロロメタン、クロロメチルメチルエーテルを加えた。その混合溶液を撹拌しながら氷浴中で四塩化チタンを滴下した。その後、室温で反応を確認しながら撹拌し、フリーデル・クラフツアルキル化を行った。反応終了後、反応混合物を氷水中へ注ぎ込み塩化アルミニウムを潰した。その後、有機溶媒で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去し、減圧蒸留を行い4-tert-ブチルクロロキシレンを得た。構造確認は1H-NMRで行った。
その後、マグネシウムを加えた反応容器にヨウ素を一かけら加え撹拌させた。そこにdry-エーテルを注入し、この溶液にヨードメタンとdry-エーテルの混合溶液を自然還流する程度に滴下した。滴下後、60℃の油浴中で1時間半還流しGrignard試薬を調製した。放冷後、4-tert-ブチルクロロキシレンとdry-エーテルの混合溶液を徐々に滴下し、滴下後40℃の油浴で反応を確認しながら撹拌した。反応終了後放冷し、反応混合物を氷水中に注ぎ込み、10%塩酸を加えて弱酸性にした後、抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。
減圧下溶媒留去し、残渣を再結晶し、5,5′- tert-ブチル-2,2′-ジメチルビベンジルを得た。構造確認は1H-NMRで行った。
当該化合物は一方のベンジル基が他方のベンジル基のメチレン炭素原子に結合したもので、換言すると、エチレン鎖の両方の炭素原子にベンゼン環が夫々結合している。
【0035】
(3)イミノ結合を有する化合物
下記の合成例(a)~(b)に準拠すれば、例えば、後述の実施例24、実施例26に示した化合物Cを容易に合成できる。
(a)4,4′-ジカルボキシジフェニルアミンの合成例
先ず、ジフェニルアミン、dry-ジクロロメタン、ジクロロメチルメチルエーテルの混合溶液に氷浴中で塩化アルミニウムを少量に分けて加え、ホルミル化を行った。反応終了後、反応混合物を氷水中に注ぎ込み、クロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、再結晶を行い4,4′-ジカルボキシアルデヒドジフェニルアミンを得た。
その後、4,4′-ジカルボキシアルデヒドジフェニルアミンとエタノールの混合溶液中に過酸化水素水を加え50℃で一晩撹拌した。減圧下溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、再結晶を行い4,4′-ジカルボキシジフェニルアミンを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
(b)4-アニリノピリジンの合成例
先ず、4-アミノピリジンとクロロホルムの混合溶液に50℃以下でクロロベンゼンとクロロホルムの混合溶液を滴下した。その後、70℃で一晩撹拌した。反応終了後、イオン交換水を加えた。水相を抽出し、水浴中で水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、溶液をアルカリ性にした。
その後、ジクロロメタンを用い、抽出し有機相を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、4-アニリノピリジンを得た。
当該化合物は、ピリジン環の4位の炭素原子にアニリン環のアミノ基が結合しており、換言すると、イミノ基を介してピリジン環とベンゼン環が結合している。
【0036】
(4)4級アンモニウム結合を有する化合物
先ず、ジフェニルアミンに硫酸メチルを50℃以下でゆっくり滴下しメチル化を行った。その後、イオン交換水を加えた。水浴中で水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、溶液をアルカリ性にした。ジクロロメタンを用い、抽出し有機相を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去しN-メチルジフェニルアミンを得た。
その後、N-メチルジフェニルアミンに硫酸メチルを50℃以下でゆっくり滴下し再びメチル化を行い、構造確認を1H-NMRで行った後、イオン交換水を加え水溶液でN,N′-ジメチルジフェニルアンモニウムメチルサルフェイトを得た。構造確認は1H-NMRスペクトルで行った。
当該合成例に準拠すれば、例えば、後述の実施例27~29に示した化合物Cを容易に合成できる。
【0037】
上記架橋式芳香族化合物(C)は単用又は併用でき、スズ又はスズ合金メッキ浴に対する含有量は0.00001~200g/L、好ましくは0.001~100g/L、より好ましくは0.01~50g/Lである。適正範囲より少ないと突起電極の高さの均一性付与の効果が低下し、また、適正範囲を越えても、突起電極の高さの均一性付与の効果は低下したり、メッキ皮膜の外観不良を引き起こす恐れがあるうえ、コストの無駄である。
【0038】
本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴において、可溶性第一スズ塩(A)は、基本的に水中でSn2+を発生させる有機酸又は無機酸のスズ塩であり、具体的には、硫酸第一スズ、酢酸第一スズ、ホウフッ化第一スズ、スルファミン酸第一スズ、ピロリン酸第一スズ、塩化第一スズ、グルコン酸第一スズ、酒石酸第一スズ、酸化第一スズ、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2-ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸第一スズ、スルホコハク酸第一スズなどが挙げられる。
【0039】
本発明1の特定のスズ合金メッキ浴において、スズ合金を形成するスズの相手方の金属は亜鉛、ニッケル、ビスマス、コバルト、インジウム、アンチモン、金、銀、銅より選択される。
この相手方の金属の可溶性塩について述べれば、例えば、銀の可溶性塩としては、酢酸銀、硝酸銀、塩化銀、酸化銀、シアン化銀、シアン化銀カリウム、メタンスルホン酸銀、2-ヒドロキシエタンスルホン酸銀、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸銀などである。
銅の可溶性塩には、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、ピロリン酸銅、塩化銅、シアン化銅、ホウフッ化銅、スルファミン酸銅、メタンスルホン酸銅、2-ヒドロキシエタンスルホン酸銅、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸銅などがある。
ビスマスの可溶性塩には、硫酸ビスマス、グルコン酸ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、メタンスルホン酸ビスマス、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマスなどがある。
インジウムの可溶性塩には、スルファミン酸インジウム、硫酸インジウム、ホウフッ化インジウム、酸化インジウム、メタンスルホン酸インジウム、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸インジウムなどがある。
亜鉛の可溶性塩には、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、ピロリン酸亜鉛、シアン化亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛、2-ヒドロキシエタンスルホン酸亜鉛、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸亜鉛などがある。
アンチモンの可溶性塩には、ホウフッ化アンチモン、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム、ピロアンチモン酸カリウム、酒石酸アンチモン、メタンスルホン酸アンチモン、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸アンチモンなどがある。
ニッケルの可溶性塩には、硫酸ニッケル、ギ酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、ホウフッ化ニッケル、酢酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ニッケルなどがある。
コバルトの可溶性塩には、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、ホウフッ化コバルト、メタンスルホン酸コバルト、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸コバルトなどがある。
【0040】
上記金属の可溶性塩の浴中の総濃度は、一般に金属塩換算で1~200g/L、好ましくは10~150g/Lである。
また、可溶性第一スズ塩と、合金を形成する相手方の金属の可溶性塩との混合割合は、所望するスズ合金メッキ皮膜の組成比に応じて適宜調整すれば良い。
【0041】
本発明のスズ合金はスズと、亜鉛、ニッケル、ビスマス、コバルト、インジウム、アンチモン、金、銀、銅からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属との合金であり、具体的には、スズ-銀合金、スズ-銅合金、スズ-ビスマス、スズ-インジウム、スズ-亜鉛、スズ-アンチモン、スズ-ニッケル、スズ-金、スズ-コバルトの2成分系の合金を初め、スズ-銅-銀合金、スズ-銅-ビスマス合金、スズ-亜鉛-ニッケル、スズ-ビスマス-銀、スズ-インジウム-銀、スズ-ニッケル-コバルトなどの3成分系以上の合金を包含する。
浴管理の観点からは既述の2成分系のスズ合金が好ましい。
【0042】
本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴において、浴ベースとなる酸又はその塩(B)は、有機酸、無機酸、或はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などである。
上記有機酸としては、有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸としては、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などが挙げられる。この中では、硫酸浴を初め、スズの溶解性、排水処理の容易性などの見地から有機スルホン酸又はその塩の浴が好ましい。
上記酸又はその塩は単用又は併用でき、その含有量は0.1~10モル/L、好ましくは0.5~5モル/Lである。
【0043】
上記有機スルホン酸は、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、スルホコハク酸、芳香族スルホン酸などであり、アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1~11)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などが挙げられる。
【0044】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0~6、p=1~5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸(イセチオン酸)、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸(2-プロパノールスルホン酸)、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0045】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸などであり、具体的には、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン-4-スルホン酸などが挙げられる。
上記有機スルホン酸では、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-プロパノールスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸などが好ましい。
また、上記カルボン酸はモノカルボン酸、ポリカルボン酸、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸などをいう。
【0046】
本発明の電気スズ及びスズ合金メッキ浴には、さらに、特定のスルフィド化合物、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ピロリン酸及びこれらの塩、ポリアミン、アミノアルコールより選ばれた錯化剤(D)を含有することが好ましい。
この場合、本発明3のスズ-銀合金メッキ浴においては、上記成分(A)~(C)に加えて、上記特定のスルフィド化合物、ポリアミン及びその塩から選択した当該錯化剤(D)を含有することが必須要件である。但し、当該スズ-銀合金メッキ浴に、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸などの他の成分を含有することも有効であり、排除するものではない。
上記錯化剤Dは、第一に、スズ合金メッキ浴に対して、スズと合金を形成する相手方の銀、銅、亜鉛、ビスマスなどの各種金属イオンを浴中で安定にしてスズと共析化させる作用をする。また、第二に、本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴は酸性、中性(弱酸性を含む)などの任意のpH領域に適用可能であり、第一スズイオンは酸性では基本的に安定であるが、中性付近では白色沈澱が生じ易いため、当該錯化剤Dはこの中性付近でのSn2+を安定化させる作用をする。
上記錯化剤Dのうち、特定のスルフィド化合物はスズ-銀合金、スズ-銅合金、スズ-金合金、スズ-ビスマス合金などのスズ合金メッキ浴において、前記第一の作用が期待できる。
一方、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ピロリン酸、ポリアミン、アミノアルコール及びこれらの塩より選ばれた錯化剤Dは、スズ-亜鉛合金、スズ-ニッケル合金、スズ-コバルト合金、スズ-インジウム合金などのスズ合金メッキ浴においては上記第一の作用が、また、スズメッキ浴及び全てのスズ合金メッキ浴では上記第二の作用が期待できる。
但し、当該錯化剤(D)がオキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ピロリン酸及びこれらの塩である場合、メッキ浴のベース成分として用いる前記酸又はその塩(B)で、これらの錯化剤(D)を兼用することができる。換言すると、本発明の中性付近に調整されたメッキ浴では、浴中に含まれるオキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ピロリン酸又はこれらの塩などは、浴のベース成分であるとともに、錯化剤としても機能することになる。
例えば、後述する中性付近のメッキ浴である実施例21のグルコン酸、実施例24のグルコン酸塩、実施例31のクエン酸、実施例37のピロリン酸などがこの兼用例である。

【0047】
上記スルフィド化合物からなる錯化剤Dは、前述したように、化合物(a)~(c)から選ばれる。
但し、化合物(a)は次の式(a)で表わされる。
Xn-R1-S-(CH2CH2S)m-R2-Xn …(a)
また、化合物(b)は次の式(b)で表わされる。
H-(OA)n-S-(OA)n-H …(b)
このうち、上式(a)で表されるスルフィド化合物はチアアルカン型の脂肪族スルフィド化合物であり、3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール、3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジオール、4,7-ジチアデカン-1,10-ジオール、4,7-ジチアデカン-1,2,9,10-テトラオール、4,7,10-トリチアトリデカン-1,13-ジオール、4,7-ジチアデカン-1,10-ジスルホン酸、5,8-ジチアドデカン-1,12-ジスルホン酸、3,6-ジチアオクタン-1,8-ジスルホン酸、5,8,11-トリチアペンタデカン-1,15-ジスルホン酸、1,8-ジアミノ-3,6-ジチアオクタン、1,11-ビス(メチルアミノ)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,14-ビス(メチルアミノ)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン、1,10-ジアミノ-4,7-ジチアデカン、4,7-ジチアジエトキシエーテル、6,9-ジチアテトラデカン-6,9-ジエトキシ-1,14-ジオール又はこれらの塩(Na、K、アミン、アンモニウム)などが挙げられる。
好ましくは、3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール、4,7-ジチアデカン-1,10-ジオール、1,10-ジアミノ-4,7-ジチアデカン、3,6-ジチアオクタン-1,8-ジスルホン酸、1,8-ジアミノ-3,6-ジチアオクタン、4,7-ジチアデカン-1,2,9,10-テトラオールなどである。
【0048】
この場合、上式(a)において、R1、R2が共にエチレン、XがOH、付加数mが1の場合には、HO-CH2CH2-S-CH2CH2S-CH2CH2-OHで表わされる3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオールを意味する。
R1、R2が共にプロピレン、XがOH、付加数mが1の場合には、HO-CH2CH2CH2-S-CH2CH2S-CH2CH2CH2-OHで表わされる4,7-ジチアデカン-1,10-ジオール(後述の実施例5、9、14を参照)を意味する。
R1、R2が共にプロピレン、XがSO3Na、付加数mが2の場合には、NaO3S-CH2CH2CH2-S-(CH2CH2S)2-CH2CH2CH2-SO3Naで表わされる4,7,10-トリチアトリデカン-1,13-ジスルホン酸ナトリウムを意味する。
R1=R2=CH2CH2、X=NH2、m=1では、H2N-CH2CH2-S-CH2CH2-S-CH2CH2-NH2(1,8-ジアミノ-3,6-ジチアオクタン)となる。
R1=R2=CH2CH2、X=NHCH3、m=3では、CH3HN-CH2CH2-S-CH2CH2-S-CH2CH2-S-CH2CH2-S-CH2CH2-NHCH3(1,14-ビス(メチルアミノ)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカンとなる。
また、上式(a)では、R1,R2のC2~C4アルキレン鎖に結合するOH、SO3Hなどの置換基Xは、当該アルキレン鎖の中のいずれの炭素原子に結合しても良く、アルキレン鎖の末端に1個結合するのが一般的であるが、例えば、プロピレン鎖(即ち、式(a)のR1又はR2がC3アルキレン鎖)の1位と2位の各炭素原子にOH基が夫々1個、つまり計2個(即ち、式(a)のn=2)結合する構造の化合物も、式(a)で表わされるチアアルカン型の脂肪族スルフィド化合物に包含される。
【0049】
また、上式(b)で表されるスルフィド化合物はオキシアルキレン型の脂肪族スルフィド化合物であり、チオビス(ペンタエチレングリコール)、チオビス(ヘキサエチレングリコール)、チオビス(オクタエチレングリコール)、チオビス(デカエチレングリコール)、チオビス(ウンデカエチレングリコール)、チオビス(ドデカエチレングリコール)、チオビス(トリデカエチレングリコール)、チオビス(テトラデカエチレングリコール)、チオビス(ペンタデカエチレングリコール)、ジチオビス(ペンタデカエチレングリコール)、チオビス(エイコサエチレングリコール)、チオビス(トリアコンタエチレングリコール)、チオビス(トリグリセリン)などが挙げられる。
好ましくは、チオビス(ドデカエチレングリコール)、チオビス(ヘキサエチレングリコール)、チオビス(デカエチレングリコール)、チオビス(エイコサエチレングリコール)、ジチオビス(ペンタデカエチレングリコール)、チオビス(トリグリセリン)などである。
この一般式(b)では、Aはエチレン、プロピレンであり、オキシエチレン鎖とオキシプロピレン鎖の付加モル比に特段の制限はないが、オキシエチレン鎖のモル数はオキシプロピレン鎖のモル数に等しいか、オキシプロピレン鎖のモル数より多い方が好ましい。また、オキシアルキレンの付加数nは1~25の整数であるが、好ましくはn=3~25、より好ましくはn=10~20である。
一般式(b)において、Aがエチレン、付加数nが5の場合、H-(OCH2CH2)5-S-(CH2CH2O)5-Hで表わされるチオビス(ペンタエチレングリコール)を意味する。
また、Aがエチレン、付加数nが12の場合には、H-(OCH2CH2)12-S-(CH2CH2O)12-Hで表わされるチオビス(ドデカエチレングリコール)を意味する。
一方、 一般式(b)において、エチレン又はプロピレン鎖Aを構成する炭素原子に水酸基が結合した化合物の例には、チオビス(トリグリセリン)が挙げられる。
【0050】
上記スルフィド化合物(c)は芳香族スルフィド化合物であり、次の一般式(c1)で表わすことができる。
Ra-[(S)x- Rb]p-[(S)y-Rc]q … (c1)
(式(c1)中、x及びyは夫々1~4の整数を表す。;pは0又は1~100の整数を表す。;qは1~100の整数を表す。)
上記芳香族スルフィド化合物は、分子中にスルフィド、ジスルフィド結合などを1個、又は繰り返し有するとともに、当該結合の両翼原子団のうちの、少なくとも一方に1個以上の塩基性窒素原子を有する化合物である。
上記芳香族スルフィド化合物中の原子団を示すRa、Rcは、アラルキル、シクロアルキル、多環式シクロアルキル、アリール、多環式アリール、ヘテロ環式基、多環式ヘテロ環式基を表し、原子団Rbはアラルキレン、シクロアルキレン、多環式シクロアルキレン、アリレン、多環式アリレン、ヘテロ環式基、多環式ヘテロ環式基を表す。上記原子団の具体例を示すと、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、シクロペンタン環基、シクロヘキサン環基、ベンゼン環基、ナフタレン環基、フェナントレン環基、ピリジン環基、ピロール環基、ピラジン環基、ピリダジン環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基、イミダゾリン環基、イミダゾール環、チアゾリン環基、トリアゾール環、テトラゾール環基、ピコリン環基、フラザン環基、ピペリジン環基、ピペラジン環基、トリアジン環、モルホリン環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、キノリン環基、キノキサリン環基、プテリジン環基、フェナントロリン環基、フェナジン環基、インドリン環基、ペルヒドロインドリン環基などである。
イオウの結合数x、yは各1~4であるため、スルフィド系化合物はスルフィド化合物、ジスルフィド化合物、トリスルフィド化合物、テトラスルフィド化合物から成る。
【0051】
また、芳香族スルフィド化合物における原子団Rbの繰り返し数pは0~100、原子団Rcの繰り返し数qは1~100である。
但し、p=0の場合には、芳香族スルフィド化合物の末端に位置するRaとRcは結合して、置換された又は無置換の単環、或は多環を形成しても良い。また、p=1~100
の場合、RaとRb、RaとRb又はRbとRcが結合して置換された又は無置換の単環、或は多環を形成したり、RaとRb及びRbとRcが複合的に結合して置換された又は無置換の単環、或は多環を形成しても良い。
上記Ra、Rb、Rcは夫々置換基を有しても又は無置換でも良い。当該置換基の具体例を述べると、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6アルコキシC1~6アルキル、C1~6アルキルチオC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、アミノ、C1~6アルキルアミノ、C1~6ジアルキルアミノ、カルバモイル、ハロゲン、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシル、メルカプト、イミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルジチオ、アリールジチオ、アルキルトリチオ、アリールトリチオ、アルキルテトラチオ、アリールテトラチオ基などである。
【0052】
上記一般式(c1)に沿って上記芳香族スルフィド化合物を説明すると、p=0、Ra=Rc=ピリジン環(Pyと略す)、y=2、q=1では、Py-S-S-Py(ジピリジルジスルフィド)となり、ジスルフィド結合の両端のピリジン環に夫々塩基性窒素原子を有する。p=0、Ra=Rc=アニリン環(Anと略す)、y=1、q=1では、An-S-An(チオジアニリン)となり、モノスルフィド結合の両端のアニリン環(即ち、ベンゼン環に結合したアミノ基)に夫々塩基性窒素原子を有する。
Ra=Rc=ピリジン環(Pyと略す)、Rc=CH2CH2、x=y=1、p=3、q=1では、Py-SCH2CH2-SCH2CH2-SCH2CH2-S-Py(1,10-ジピリジル-1,4,7,10-テトラチアデカン)となり、分子両端のピリジン環に夫々塩基性窒素原子を有する。
【0053】
上記芳香族スルフィド化合物の具体例としては次の化合物が挙げられる。
即ち、2-エチルチオアニリン、ジチオジアニリン、2-(2-アミノエチルジチオ)ピリジン、2,2′-ジチアジアゾリルジスルフィド、5,5′-ジ(1,2,3-トリアゾリル)ジスルフィド、2,2′-ジピラジニルジスルフィド、2,2′-ジピリジルジスルフィド、2,2′-ジチオジアニリン、4,4′-ジピリジルジスルフィド、2,2′-ジアミノ-4,4′-ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2′-ジピリダジニルジスルフィド、5,5′-ジピリミジニルジスルフィド、2,2′-ジ(5-ジメチルアミノチアジアゾリル)ジスルフィド、5,5′-ジ(1-メチルテトラゾリル)ジスルフィド、2,2′-ジ(1-メチルピロリル)ジスルフィド、2-ピリジル-2-ヒドロキシフェニルジスルフィド、2,2′-ジピペリジルジスルフィド、2,2′-ジピリジルスルフィド、2,6-ジ(2-ピリジルジチオ)ピリジン、2,2′-ジピペラジニルジスルフィド、2,2′-ジ(3,5-ジヒドロキシピリミジニル)ジスルフィド、2,2′-ジキノリルジスルフィド、2,2′-ジ{6-(2-ピリジル)}ピリジルジスルフィド、2,2′-α-ピコリルジスルフィド、2,2′-ジ(8-ヒドロキシキノリル)ジスルフィド、)5,5′-ジイミダゾリルジスルフィド、2,2′-ジチアゾリルジスルフィド、2-ピリジル-2-アミノフェニルジスルフィド、2-ピリジル-2-キノリルジスルフィド、2,2′-ジチアゾリニルジスルフィド、2,2′-ジ(4,5-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジニル)ジスルフィド、2,2′-ジ(6-クロロピリジル)テトラスルフィド、2,2′-ジモルホリノジスルフィド、2,2′-ジ(8-メトキシキノリル)ジスルフィド、4,4′-ジ(3-メトキシカルボニルピリジル)ジスルフィド、2-ピリジル-4-メチルチオフェニルジスルフィド、2-ピペラジル-4-エトキシメチルフェニルジスルフィド、2,2′-ジ{6-(2-ピリジルジチオ)ピリジル}ジスルフィド、2,2′-ジキノキサリニルジスルフィド、2,2′-ジプテリジニルジスルフィド、3,3′-ジフラザニルジスルフィド、3,3′-ジフェナントロリニルジスルフィド、8,8′-ジキノリルジスルフィド、1,1′-ジフェナジニルジスルフィド、4,4′-ジ(3-カルボキシルピリジル)トリスルフィド、2,2′-ジチアゾリニルジスルフィド、2,2′-ジピコリルジスルフィド、ジメチルアミノジエチルジスルフィド、2,2′-ジペルヒドロインドリルジスルフィド、6,6′-ジイミダゾ[2,1-b]チアゾリルジスルフィド、2,2′-ジ(5-ニトロベンズイミダゾリル)ジスルフィド、2,4,6-トリス(2-ピリジルジチオ)-1,3,5-トリアジン、2-アミノエチル-2′-ヒドロキシエチルジスルフィド、ジ(2-ピリジルチオ)メタン、2,4,6-トリス(2-ピリジル)-1,3,5-トリチアン、5,5′-ジアミノ-2,11-ジチオ[3,3]パラシクロファン、2,3-ジチア-1,5-ジアザインダン、2,4,6-トリチア-3a,7a-ジアザインデン、1,10-ジ(2-ピリジル)-1,4,7,10-テトラチアデカンなどである。
好ましい芳香族スルフィド化合物には、2,2′-ジチオジアニリン、2,2′-ジピリジルジスルフィド、2,6-ジ(2-ピリジルジチオ)ピリジン、4,4′-ジピリジルジスルフィド、2,2′-ジピリジルスルフィド、1,1′-ジフェナジニルジスルフィド、2,2′-ジチアゾリニルジスルフィドなどが挙げられる。
【0054】
一方、上記オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ホスホン酸及びこれらの塩、ポリアミン、アミノアルコールより選ばれた錯化剤Dを例示すると、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコノヘプトラクトン、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)-N,N,N′,N′-テトラ酢酸、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、或はこれらの塩などである。
上記錯化剤Dのうちの好ましい化合物には、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、シュウ酸、マロン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0055】
上記脂肪族スルフィド化合物、芳香族スルフィド化合物、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸などから選ばれた本発明の錯化剤Dは単用又は併用できる。
上記脂肪族スルフィド化合物、芳香族スルフィド化合物からなる錯化剤Dのメッキ浴に対する含有量は0.01~300g/L、好ましくは0.1~200g/L、より好ましくは0.5~150g/Lである。例えば、含有する金、ビスマス、銀及び銅の総量に対して、通常、4~10倍モルで使用する。
上記オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸などの、スルフィド以外の化合物からなる錯化剤Dのメッキ浴に対する含有量は0.01~500g/Lが適しており、好ましくは0.1~400g/L、より好ましくは1~300g/Lである。
【0056】
本発明の電気スズ及びスズ合金メッキ浴には、さらに、界面活性剤、酸化防止剤、光沢剤、半光沢剤、平滑剤、安定剤、pH調整剤、導電性塩、防腐剤、消泡剤などの各種添加剤を含有できる。
上記界面活性剤は、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善を目的とし、通常のアニオン系、カチオン系、ノニオン系、或は両性などの各種界面活性剤が使用できる。特に、ノニオン性界面活性剤は実用的なスズ及びスズ合金皮膜の形成に重要である。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ~トリアルキルアミン塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1~C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1~C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1~C25アルキルナフトール、C1~C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1~C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2~300モル付加縮合させたもの、エチレンジアミンポリエトキシレート-ポリプロポキシレートブロックコポリマーなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
【0057】
上記平滑剤としては、β-ナフトール、β-ナフトール-6-スルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸、m-クロロベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、(o-、p-)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4-、2,6-)ジクロロベンズアルデヒド、(o-、p-)クロロベンズアルデヒド、1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、2(4)-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、2(4)-クロロ-1-ナフトアルデヒド、2(3)-チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)-フルアルデヒド、3-インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o-フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1-ベンジリデン-7-ヘプタナール、2,4-ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン-アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン-3,4、アセチルアセトン、3-クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4-(1-ナフチル)-3-ブテン-2-オン、4-(2-フリル)-3-ブテン-2-オン、4-(2-チオフェニル)-3-ブテン-2-オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4-、3,4-)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2-シンナミルチオフェン、2-(ω-ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン-1,3-ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o-、m-、p-)トルイジン、(o-、p-)アミノアニリン、アニリン、(o-、p-)クロロアニリン、(2,5-、3,4-)クロロメチルアニリン、N-モノメチルアニリン、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、N-フェニル-(α-、β-)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,3-ベンズトリアジン、イミダゾール、2-ビニルピリジン、インドール、キノリン、モノエタノールアミンとo-バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N-(3-ヒドロキシブチリデン)-p-スルファニル酸、N-ブチリデンスルファニル酸、N-シンナモイリデンスルファニル酸、2,4-ジアミノ-6-(2′-メチルイミダゾリル(1′))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-エチル-4-メチルイミダゾリル(1′))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル-1,3,5-トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0058】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、上記平滑剤とも多少重複するが、ベンズアルデヒド、o-クロロベンズアルデヒド、2,4,6-トリクロロベンズアルデヒド、m-クロロベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、3-アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン(ベンザルアセトン)、ピリジデンアセトン、フルフリリデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2-ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類、サッカリンなどが挙げられる。
【0059】
上記酸化防止剤は浴中のSn2+の酸化防止を目的としたもので、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドロキシナフタレンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。例えば、中性浴ではアスコルビン酸又はその塩などが好ましい。
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類なども有効である。
上記導電性塩としては、硫酸、塩酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸などのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられるが、上記pH調整剤で共用できる場合もある。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0060】
本発明7は、上記本発明の電気メッキ浴を用いてスズ又はスズ合金製の電着物を形成する方法である。電着物の代表例は突起電極(バンプ)であり、ウエハ、基板、或はリードフレームなどに形成される。本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴を用いて多数の突起電極を形成すると、突起電極の高さの均一性を良好に確保できる。
次いで、電着物の代表例は電着皮膜である。本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴を用いて多数の電着皮膜を形成すると、皮膜の厚みを良好に均一化でき、ビアホールの充填ではボイド(空隙)の発生を円滑に防止できる。
一方、この本発明7の形成方法により製造した電子部品には、ガラス基板、シリコン基板、サファイア基板、ウエハ、プリント配線板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルター、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線、太陽電池が挙げられる
例えば、本発明のメッキ浴の適用により、シリコン基板やウエハなどに突起電極を形成する方法は本発明7に属し、突起電極が形成された基板やウエハなどの上記電子部品は本発明7を適用した結果物を意味する。また、リードフレームや基板に電着皮膜を形成する方法も本発明7に属し、皮膜が形成されたリードフレームや基板などの上記電子部品は、同じく本発明7を適用した結果物である。
本発明のスズ又はスズ合金メッキ浴を用いた電気メッキでは、バレルメッキ、ラックメッキ、高速連続メッキ、ラックレスメッキ、カップメッキ、ディップメッキなどの各種メッキ方式が採用できる。
電気メッキの条件としては、浴温は0℃以上、好ましくは10~50℃程度であり、陰極電流密度は0.001~40A/dm2、好ましくは0.01~25A/dm2である。
当該電気メッキの後、析出したスズ又はスズ合金をリフローし、又はリフローしないで突起電極又は電着皮膜を形成する。
【実施例
【0061】
以下、本発明の電気スズ及びスズ合金メッキ浴の実施例、当該実施例で得られたメッキ浴を用いて電気メッキにより半導体基板に突起電極を形成した製造例、当該製造例で得られた多数の突起電極群について、高さの均一性の評価試験例を順次述べる。
本発明は上記実施例、製造例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0062】
《電気スズ及びスズ合金メッキ浴の実施例》
下記の実施例1~45のうち、実施例1~2、22、27はスズメッキ浴の例、実施例3~4、36はスズ-亜鉛合金メッキ浴の例、実施例5~16、28~29はスズ-銀合金メッキ浴の例、実施例17、20、25、32~33はスズ-銅合金メッキ浴の例、実施例18、23、26、34~35はスズ-ビスマス合金メッキ浴の例、実施例19、21、24、30~31はスズ-インジウム合金メッキ浴、実施例37~39はスズ-ニッケル合金メッキ浴の例、実施例40~41はスズ-金合金メッキ浴の例、実施例42~43はスズ-コバルト合金メッキ浴の例、実施例44~45はスズ-アンチモン合金メッキ浴の例である。
実施例7~8、15は架橋式複素環化合物、その他の実施例は全て架橋式芳香環化合物である。
また、メッキ浴に含有する本発明の架橋式芳香族化合物について、実施例15、20~23、42は炭素結合を有する例、実施例13、24、26、35~36、43はイミノ結合を有する例、実施例25、27~29、39、45は4級アンモニウム塩結合を有する例、その他の実施例は全てエーテル結合を有する例である。
【0063】
一方、比較例1~13のうち、比較例1は 本発明の架橋式芳香族化合物(エーテル結合を有する化合物)を含まないスズ浴のブランク例、 比較例2は 本発明の架橋式芳香族化合物(炭素結合を有する化合物)を含まないスズ浴のブランク例、 比較例3は 本発明の架橋式芳香族化合物(4級アンモニウム塩結合を有する化合物)を含まないスズ浴のブランク例、 比較例4は 本発明の架橋式芳香族化合物に代えてビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有するスズ浴の例である。
比較例5は本発明の架橋式芳香族化合物(エーテル結合を有する化合物)を含まないスズ-銀合金浴のブランク例であり、且つ、本発明の架橋式芳香族化合物に代えてビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有するスズ-銀合金浴の例でもある。比較例6は本発明の架橋式芳香族化合物(炭素結合を有する化合物)を含まないスズ-銀合金浴のブランク例、比較例7は本発明の架橋式芳香族化合物(イミノ結合を有する化合物)を含まないスズ-銀合金浴のブランク例、比較例8は本発明の架橋式芳香族化合物(4級アンモニウム塩結合を有する化合物)を含まないスズ-銀合金浴のブランク例である。比較例9は本発明の架橋式芳香族化合物(4級アンモニウム塩結合を有する化合物)に代えて4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤を含有するスズ-銀合金浴の例でもある。
比較例10は本発明の架橋式芳香族化合物(エーテル結合を有する化合物)を含まないスズ-銅合金浴のブランク例であり、且つ、本発明の架橋式芳香族化合物に代えてビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有するスズ-銅合金浴の例でもある。比較例11は
本発明の架橋式芳香族化合物(炭素結合を有する化合物)を含まないスズ-銅合金浴のブランク例である。
比較例12は本発明の架橋式芳香族化合物(エーテル結合を有する化合物)を含まないスズ-亜鉛合金浴のブランク例、比較例13は本発明の架橋式芳香族化合物(イミノ結合を有する化合物)を含まないスズ-亜鉛合金浴のブランク例である。
【0064】
(1)実施例1
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO13モル) 10g/L
カテコールスルホン酸 2.5g/L
アルキルフェニルナフチルエーテルジスルホン酸ナトリウム 2g/L
イソプロピルアルコール 5g/L
尚、上記イソプロピルアルコール(IPA)は本発明の架橋式芳香族化合物Cに属するアルキルフェニルナフチルエーテルジスルホン酸塩の溶剤であり、上記化合物CをIPAに溶解させたうえで、当該IPA溶液をメッキ浴に添加して上記組成とした(以下の実施例、比較例でも同じ)。
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0065】
(2)実施例2
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
エチレンジアミンポリエトキシレート
-ポリプロポキシレートブロックポリマー 10g/L
ラウリルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド 5g/L
カテコールスルホン酸 2.5g/L
メタクリル酸 1g/L
アルキルフェニルナフチルエーテルジスルホン酸ナトリウム 2g/L
イソプロピルアルコール 5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:5A/dm2
【0066】
(3)実施例3
下記の組成で電気スズ-亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
塩化亜鉛(Zn2+として) 30g/L
グルコン酸 100g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 50g/L
ポリ(ジアリルアミン)ポリマー 0.2g/L
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH5に調整)
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0067】
(4)実施例4
下記の組成で電気スズ-亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸亜鉛(Zn2+として) 60g/L
クエン酸 100g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
トリメチルベンジルアンモニウムクロライド 3g/L
ジピロールエーテル 1g/L
アンモニア水 適量(pH5に調整)
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0068】
(5)実施例5
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 85g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール 10g/L
α-ナフトールポリエトキシレート(EO13モル) 10g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
メタクリル酸 1g/L
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 10.5g/L
イソプロピルアルコール 3g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm2
【0069】
(6)実施例6
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール 10g/L
エチレンジアミンポリエトキシレート
-ポリプロポキシレートブロックコポリマー 8g/L
ハイドロキノン 0.5g/L
ジアミノジフェニルエーテルジスルホン酸 0.8g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0070】
(7)実施例7
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
4,7-ジチアデカン-1,10-ジオール 5g/L
グリセリンポリエトキシレート
-ポリプロポキシレートコポリマー 8g/L
レゾルシノールスルホン酸 2g/L
ベンザルアセトン 0.05g/L
ジトリアゾリルエーテルジスルホン酸アンモニウム 0.5g/L
イソプロピルアルコール 3g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:6A/dm2

【0071】
(8)実施例8
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオビス(トリグリセリン) 50g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO15モル) 8g/L
カテコール 2g/L
ベンゾイミダゾリルヒドロキシベンゾイミダゾリルエーテル 0.1g/L
イソプロピルアルコール 10g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:6A/dm2
【0072】
(9)実施例9
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.6g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
1,10-ジアミノ-4,7-ジチアデカン 10g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO10モル) 5g/L
アミノカテコール 2g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸 1g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:8A/dm2
【0073】
(10)実施例10
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
ヒドロキシエタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.5g/L
ヒドロキシエタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
4,7-ジチアデカン-1,2,9,10-テトラオール 7g/L
ビスフェノールEポリエトキシレート(EO15モル) 5g/L
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 2g/L
ジアミノジフェニルエーテル 0.5g/L
イソプロピルアルコール 10g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm2
【0074】
(11)実施例11
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 45g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
チオビス(ドデカエチレングリコール) 80g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 5g/L
ラウリルトリメチルアンモニウムサルフェート 5g/L
カテコール 2g/L
ジカルボキシジフェニルエーテル 1.5g/L
メタノール 3g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:4A/dm2
【0075】
(12)実施例12
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.5g/L
エタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
2,2′-ジチオジアニリン 15g/L
スチレン化フェノールポリエトキシレート(EO20モル) 10g/L
メチルハイドロキノン 1g/L
ジナフチルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.5g/L
イソプロピルアルコール 10g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:4A/dm2
【0076】
(13)実施例13
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオビス(デカエチレングリコール) 100g/L
エチレンジアミンポリエトキシレート
-ポリプロポキシレートブロックコポリマー 10g/L
ジメチルベンジルラウリルアンモニウムヒドロキシド 1g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
ジアミノジフェニルアミン 4g/L
イソプロピルアルコール 5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:6A/dm2
【0077】
(14)実施例14
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
4,7-ジチアデカン-1,10-ジオール 10g/L
チオグリコール 8g/L
β-ナフトールポリエトキシレート(EO20モル) 10g/L
ハイドロキノンスルホン酸 2g/L
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.5g/L
イソプロピルアルコール 3g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:6A/dm2
【0078】
(15)実施例15
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.0g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオビス(イコサエチレングリコール) 100g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO13モル) 12g/L
カテコールスルホン酸ナトリウム 2g/L
1,2-ジピリジルエタン 1g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:12A/dm2
【0079】
(16)実施例16
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 75g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ジチオビス(ペンタデカエチレングリコール) 70g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO15モル) 8g/L
スチレン化フェノールポリエトキシレート(EO20モル) 2g/L
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 2.5g/L
ジアニリンエーテル 2g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:6A/dm2
【0080】
(17)実施例17
下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
チオジグリコール 10g/L
ビスフェノールEポリエトキシレート(EO10モル) 5g/L
ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム 2g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 1g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0081】
(18)実施例18
下記の組成で電気スズ-ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 15g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
オクチルフェニルエーテルポリエトキシレート(EO20モル) 10g/L
カテコール 2g/L
チオジフェノール 0.2g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 1g/L
尚、上記チオジフェノールは析出したスズ-ビスマス合金をリフローする際のボイド抑制剤である(以下の実施例も同じ)。
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0082】
(19)実施例19
下記の組成で電気スズ-インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 2g/L
メタンスルホン酸インジウム(In3+として) 30g/L
クエン酸 200g/L
ポリ(ジアリルアミン)ポリマー 0.5g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH6に調整)
[メッキ条件]
浴温:55℃
陰極電流密度:1.6A/dm2
【0083】
(20)実施例20
下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 55g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 1.0g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオジグリコール 20g/L
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル 5g/L
4,4-(ジメチルエチレン)ジフェニルスルホン酸カリウム 1g/L
メチルカテコール 5g/L
メタノール 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0084】
(21)実施例21
下記の組成で電気スズ-インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 5g/L
メタンスルホン酸インジウム(In3+として) 35g/L
グルコン酸 250g/L
ポリオキシエチレンアルキルアミン 3.5g/L
ジアミノスチルベン 0.6g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH5に調整)
[メッキ条件]
浴温:45℃
陰極電流密度:1.5A/dm2
【0085】
(22)実施例22
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 85g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート 10g/L
ラウリルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド 5g/L
メトキシカテコール 3g/L
アルキルヒドロキシスチルベン 0.8g/L
イソプロピルアルコール 2g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:7A/dm2
【0086】
(23)実施例23
下記の組成で電気スズ-ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 40g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 150g/L
ポリビニルピロリドン 9g/L
クロロカテコール 1.5g/L
2,4-ジフェニル-4-メチルペンタン 0.4g/L
メタノール 5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:5A/dm2
【0087】
(24)実施例24
下記の組成で電気スズ-インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 10g/L
メタンスルホン酸インジウム(In3+として) 50g/L
グルコン酸ナトリウム 250g/L
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル 0.7g/L
アルキルジアミノジフェニルアミン 0.2g/L
アンモニア水 適量(pH6に調整)
[メッ
浴温:45℃
陰極電流密度:3.5A/dm2
【0088】
(25)実施例25
下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
チオジグリコール酸 8g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO10モル) 10g/L
N-ジメチルジフェニルアンモニウムメチルサルフェイト 0.5g/L
ピロガロール 2g/L
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:4A/dm2
【0089】
(26)実施例26
下記の組成で電気スズ-ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 90g/L
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 7g/L
メチルピロガロール 3g/L
ジフェニルアミンジスルホン酸ナトリウム 1g/L
[メッキ条件]
浴温:40℃
陰極電流密度:4.5A/dm2
【0090】
(27)実施例27
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレントリデシルエーテル 10g/L
カテコールスルホン酸 2.5g/L
N-ジメチルジフェニルアンモニウムメチルサルフェイト 2g/L
イソプロピルアルコール 5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0091】
(28)実施例28
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 85g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
ジピリジルジスルフィド 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 10g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
4-エチルアンモニウムエチルサルフェイト
-メチルエチルジフェニルアンモニウムエチルサルフェイト 1.5g/L
イソプロピルアルコール 3g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:10A/dm2
【0092】
(29)実施例29
下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 130g/L
3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール 10g/L
ポリオキシアルキレンフェニルエーテル 8g/L
ハイドロキノン 0.5g/L
4-ニトロソメチルエチルジフェニルアンモニウム
-エチルサルフェイト 0.8g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0093】
(30)実施例30
下記の組成で電気スズ-インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 2g/L
メタンスルホン酸インジウム(In3+として) 30g/L
クエン酸 200g/L
ポリ(ジアリルメチルアンモニウム
-メチルサルフェイト)ポリマー 0.5g/L
4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH6に調整)
[メッキ条件]
浴温:50℃
陰極電流密度:1.6A/dm2
【0094】
(31)実施例31
下記の組成で電気スズ-インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 2g/L
メタンスルホン酸インジウム(In3+として) 30g/L
クエン酸 200g/L
ポリ(ジアリルメチルアンモニウム
-エチルサルフェイト)ポリマー 0.5g/L
3,4,4′-トリアミノジフェニルエーテル 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH6に調整)
[メッキ条件]
浴温:55℃
陰極電流密度:1.6A/dm2
【0095】
(32)実施例32
下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
チオジグリコール 10g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO13モル) 5g/L
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム 1g/L
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0096】
(33)実施例33
下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
チオジグリコール 10g/L
ビスフェノールEポリエトキシレート(EO20モル) 5g/L
4,4′-ジメチルアンモニウムジフェニルエーテル
-メチルサルフェイト 1g/L
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0097】
(34)実施例34
下記の組成で電気スズ-ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 15g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
オクチルフェニルエーテルポリエトキシレート(EO20モル) 10g/L
カテコール 2g/L
チオジフェノール 0.2g/L
3,4′-ジ(メチルアミノ)-4-ニトロジフェニルエーテル 1g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0098】
(35)実施例35
下記の組成で電気スズ-ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 15g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
オクチルフェニルエーテルポリエトキシレート(EO20モル) 10g/L
カテコール 2g/L
チオジフェノール 0.2g/L
4-(ジメチルアミノ)-4′-ニトロソジフェニルアミン 1g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0099】
(36)実施例36
下記の組成で電気スズ-亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸亜鉛(Zn2+として) 60g/L
クエン酸 100g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
トリメチルベンジルアンモニウムクロライド 3g/L
N,N,N′,N′-テトラメチルジアミノジフェニルアミン 1g/L
アンモニウム水 適量(pH5に調整)
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0100】
(37)実施例37
下記の組成で電気スズ-ニッケル合金メッキ浴を建浴した。
塩化第一スズ(Sn2+として) 30g/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 60g/L
グリシン 75g/L
ピロリン酸 90g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.1g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH7に調整)
[メッキ条件]
浴温:55℃
陰極電流密度:1.5A/dm2
【0101】
(38)実施例38
下記の組成で電気スズ-ニッケル合金メッキ浴を建浴した。
塩化第一スズ(Sn2+として) 45g/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 60g/L
グリシン 30g/L
ピロリン酸 90g/L
カテコール 2g/L
ジナフチルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.1g/L
サッカリン 1g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH7に調整)
[メッキ条件]
浴温:55℃
陰極電流密度:1.5A/dm2
【0102】
(39)実施例39
下記の組成で電気スズ-ニッケル合金メッキ浴を建浴した。
塩化第一スズ(Sn2+として) 30g/L
塩化ニッケル(Ni2+として) 50g/L
グリシン 70g/L
ピロリン酸 60g/L
カテコール 1g/L
ジフェニルジメチルアンモニウム
-ジスルホン酸ナトリウム・クロライド 0.1g/L
サッカリン 1g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH7に調整)
[メッキ条件]
浴温:40℃
陰極電流密度:0.5A/dm2
【0103】
(40)実施例40
下記の組成で電気スズ-金合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 20g/L
メルカプトコハク酸金(Au+として) 10g/L
メルカプトコハク酸 30g/L
クエン酸 50g/L
ポリエチレングリコール 1g/L
ポリオキシエチレンやしアルコールエーテル 0.5g/L
カテコール 3g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.3g/L
水酸化カリウム 適量(pH8に調整)
[メッキ条件]
浴温:60℃
陰極電流密度:1A/dm2
【0104】
(41)実施例41
下記の組成で電気スズ-金合金メッキ浴を建浴した。
ピロリン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
シアン化金(Au+として) 8g/L
ピロリン酸カリウム 25g/L
ジフェニルアミンジスルホン酸ナトリウム 0.2g/L
水酸化カリウム 適量(pH8に調整)
[メッキ条件]
浴温:35℃
陰極電流密度:1A/dm2
【0105】
(42)実施例42
下記の組成で電気スズ-コバルト合金メッキ浴を建浴した。
塩化第一スズ(Sn2+として) 20g/L
塩化コバルト(Co2+として) 60g/L
グルコン酸ナトリウム 100g/L
ベンジルフェニルジスルホン酸ナトリウム 0.25g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH2.0に調整)
[メッキ条件]
浴温:50℃
陰極電流密度:1.5A/dm2
【0106】
(43)実施例43
下記の組成で電気スズ-コバルト合金メッキ浴を建浴した。
塩化第一スズ(Sn2+として) 20g/L
塩化コバルト(Co2+として) 60g/L
グルコン酸ナトリウム 60g/L
クエン酸 2g/L
2,2′-ジナフチルアミンジスルホン酸ナトリウム 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH2.0に調整)
[メッキ条件]
浴温:50℃
陰極電流密度:1.5A/dm2
【0107】
(44)実施例44
下記の組成で電気スズ-アンチモン合金メッキ浴を建浴した。
1-ヒドロキシエタン
-1,1-ジスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
1-ヒドロキシエタン
-1,1-ジスルホン酸アンチモン(Sb3+として) 8g/L
1-ヒドロキシエタン-1,1-ジスルホン酸(遊離酸として)150g/L
ラウリルフェニルエーテルポリエトキシレート(EO10モル) 0.1g/L
カテコール 3g/L
ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH2.0に調整)
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:1A/dm2
【0108】
(45)実施例45
下記の組成で電気スズ-アンチモン合金メッキ浴を建浴した。
1-ヒドロキシエタン
-1,1-ジスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
1-ヒドロキシエタン
-1,1-ジスルホン酸アンチモン(Sb3+として) 6g/L
1-ヒドロキシエタン-1,1-ジスルホン酸(遊離酸として)100g/L
β-ナフトールエーテルポリエトキシレート(EO10モル) 10g/L
カテコール 10g/L
ジフェニルジメチルアンモニウム
-ジスルホン酸ナトリウム・クロライド 0.1g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH2.3に調整)
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:1A/dm2
【0109】
(46)比較例1
前記実施例1を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO13モル) 10g/L
カテコールスルホン酸 2.5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0110】
(47)比較例2
前記実施例22を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 85g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート 10g/L
ラウリルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド 5g/L
メトキシカテコール 3g/L
イソプロピルアルコール 2g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:7A/dm2
【0111】
(48)比較例3
前記実施例27を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレントリデシルエーテル 10g/L
カテコールスルホン酸 2.5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0112】
(49)比較例4
前記実施例1を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物に代えてビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有した例である。
即ち、下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO13モル) 10g/L
カテコールスルホン酸 2.5g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0113】
(50)比較例5
前記実施例10を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
ヒドロキシエタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.5g/L
ヒドロキシエタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
ビス(2,3-ジヒドロキシプロピオチオ)エタン 7g/L
ビスフェノールEポリエトキシレート(EO15モル) 5g/L
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 2g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:10A/dm2
【0114】
(51)比較例6
前記実施例15を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.0g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオビス(イコサエチレングリコール) 100g/L
クミルフェノールポリエトキシレート(EO13モル) 12g/L
カテコールスルホン酸ナトリウム 2g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:12A/dm2
【0115】
(52)比較例7
前記実施例13を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオビス(ヘキサエチレングリコール) 150g/L
グリセリンポリエトキシレート
-ポリプロポキシレートコポリマー 10g/L
ジメチルベンジルラウリルアンモニウムヒドロキシド 1g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
[メッキ条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:6A/dm2
【0116】
(53)比較例8
前記実施例28を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 85g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
ジピリジルジスルフィド 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 10g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:10A/dm2
【0117】
(54)比較例9
前記実施例28を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物に代えて4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤を含有した例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 85g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.3g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 80g/L
ジピリジルジスルフィド 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 10g/L
トリメチルベンジルアンモニウムクロライド 3g/L
カテコールスルホン酸 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:10A/dm2
【0118】
(55)比較例10
前記実施例17を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/L
チオジグリコール 10g/L
ビスフェノールEポリエトキシレート(EO10モル) 5g/L
ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0119】
(56)比較例11
前記実施例20を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 55g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 1.0g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
チオジグリコール 20g/L
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル 5g/L
メチルカテコール 5g/L
メタノール 2g/L
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:3A/dm2
【0120】
(57)比較例12
前記実施例3を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
塩化亜鉛(Zn2+として) 30g/L
グルコン酸 100g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 50g/L
ポリ(ジアリルアミン)ポリマー 0.2g/L
水酸化ナトリウム 適量(pH5に調整)
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0121】
(58)比較例13
前記実施例36を基本として、本発明の架橋式芳香族化合物を含まない例である。
即ち、下記の組成で電気スズ-亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸亜鉛(Zn2+として) 60g/L
クエン酸 100g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
トリメチルベンジルアンモニウムクロライド 3g/L
アンモニウム水 適量(pH5に調整)
[メッキ条件]
浴温:25℃
陰極電流密度:2A/dm2
【0122】
そこで、上記実施例1~45及び比較例1~13の各電気スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて突起電極を多数形成し、突起電極の高さの均一性の評価試験を行った。
《電気メッキにより突起電極を形成した実施例》
電気メッキ(メッキ条件は各実施例及び比較例の末尾に記載した通り)により、基板上に、実施例1~45及び比較例1~13の各電気スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて突起電極群(5,000個程度)を形成した。
上記突起電極を構成するスズ又はスズ合金の電着皮膜について、実施例1~45では皮膜外観は均一であり、粒子も緻密であった。
一方、比較例では皮膜外観は概ね均一であったが、皮膜外観にムラが認められる場合があった。
【0123】
《突起電極の高さの均一性の評価試験例》
上記スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて、電気メッキによりシリコン基板上に形成した多数の突起電極について、下式(p)に示す通り、突起電極群の中の最大値と最小値の差の1/2の数値が、突起電極の高さの平均値に占める割合A(%)を算出して、突起電極の高さの均一性の優劣を定量評価した。
A={(H(Max)-H(Min))/2}/H(Av)×100 …(p)
H(Av) :突起電極群の高さの平均値
H(Max):突起電極群の中の高さの最大値
H(Min):突起電極群の中の高さの最小値
【0124】
下表はその試験結果である。
均一性 均一性 均一性
実施例1 4.2% 実施例21 4.6% 実施例41 6.5%
実施例2 3.6% 実施例22 4.1% 実施例42 6.5%
実施例3 2.0% 実施例23 1.3% 実施例43 6.5%
実施例4 2.5% 実施例24 4.6% 実施例44 6.0%
実施例5 4.2% 実施例25 1.7% 実施例45 6.0%
実施例6 2.1% 実施例26 1.9%
実施例7 1.9% 実施例27 4.9% 比較例1 12.1%
実施例8 4.3% 実施例28 4.8% 比較例2 9.5%
実施例9 3.5% 実施例29 3.7% 比較例3 15.3%
実施例10 4.8% 実施例30 5.2% 比較例4 10.8%
実施例11 1.5% 実施例31 5.1% 比較例5 12.8%
実施例12 2.2% 実施例32 3.4% 比較例6 9.3%
実施例13 3.8% 実施例33 2.9% 比較例7 14.4%
実施例14 2.0% 実施例34 3.2% 比較例8 17.5%
実施例15 4.5% 実施例35 2.6% 比較例9 11.8%
実施例16 4.0% 実施例36 3.5% 比較例10 9.9%
実施例17 1.6% 実施例37 6.5% 比較例11 9.8%
実施例18 1.0% 実施例38 5.8% 比較例12 10.0%
実施例19 4.6% 実施例39 5.2% 比較例13 10.4%
実施例20 2.2% 実施例40 6.3%
【0125】
《試験結果の評価》
(1)電気スズメッキ浴
先ず、電気スズメッキ浴において、比較例1はエーテル結合を有する本発明の架橋式芳香族化合物C、比較例2は炭素結合を有する化合物C、比較例3は4級アンモニウム塩結合を有する化合物Cを含まない各ブランク例であるが、これらの比較例1~3を、本発明の化合物Cを含有する実施例1~2、22、27(特に、実施例1、22、27)に対比すると、比較例の高さの均一性割合Aは9.5~15.3%であるのに対して、実施例の割合Aは3.6~4.9%であった。
ちなみに、本発明の架橋式芳香族化合物Cは、ベンゼン環同士を炭素結合で架橋した基本骨格を有する化合物を包含するが(一般式(1)のY=炭素結合、Xa、Xb=ベンゼン環)、当該化合物Cとビスフェノール型のノニオン性界面活性剤はこの基本骨格を有する点で共通する。
比較例4は本発明の架橋式芳香族化合物Cに代えて、上記ビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有したスズメッキ浴の例であるが、比較例4の均一性割合Aは10.8%であった。
また、本発明の化合物Cは、ベンゼン環が窒素原子に結合した4級アンモニウム塩の基本骨格を有する化合物を包含するが(一般式(1)のY=窒素結合のうちの4級アンモニウム塩結合、Xa、Xb=ベンゼン環)、当該化合物Cは、例えば、ベンザルコニウム塩(即ち、4級アンモニウム塩)型のカチオン性界面活性剤とこの基本骨格を有する点で共通する。
前記比較例1は本発明の化合物Cを含まないブランク例であるが、一方で、本発明の化合物Cに代えて、上記ベンザルコニウム塩型のカチオン性界面活性剤を含有したスズメッキ浴の例でもあり、比較例1の均一性割合Aは12.1%であった。
従って、電気スズメッキ浴では、実施例の均一性割合A(3.6~4.9%)は比較例1~4(9.5~15.3%)に比して顕著に小さく、高さのバラツキが抑制されて、突起電極の高さの均一性に優れることが分かる。
【0126】
(2)電気スズ-銀合金メッキ浴
電気スズ-銀合金メッキ浴において、比較例5はエーテル結合を有する本発明の架橋式芳香族化合物C、比較例6は炭素結合を有する化合物C、比較例7はイミノ結合を有する化合物C、比較例8は4級アンモニウム塩結合を有する化合物Cを含まない各ブランク例であるが、これらの比較例5~8を、本発明の化合物Cを含有する実施例5~16、28~29(特に、実施例10、13、15、28)に対比すると、比較例の高さの均一性割合Aは9.3~17.5%であるのに対して、実施例の割合Aは1.5~4.8%であった。
また、前記比較例5に含有されるビスフェノールE型のノニオン性界面活性剤は、ベンゼン環同士を炭素結合で架橋した構造の本発明の化合物Cと共通の基本骨格を有するため、上述の通り、当該比較例5は本発明の化合物Cを含まないブランク例であるが、一方で、本発明の化合物Cに代えて、上記ビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有したスズ-銀合金メッキ浴の例でもあり、この比較例5の均一性割合Aは12.8%であった。
さらに、比較例9に含有されるベンザルコニウム型のカチオン性界面活性剤は、ベンゼン環同士を4級アンモニウム塩の窒素結合で架橋した構造の本発明の化合物Cに対して、ベンゼン環具備の4級アンモニウム塩構造で共通するため、当該比較例9は、本発明の化合物Cに代えて、上記4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤を含有したスズ-銀合金メッキ浴の例であり、この比較例9の均一性割合Aは11.8%であった。
従って、電気スズ-銀合金メッキ浴では、実施例の均一性割合A(1.5~4.8%)は比較例5~9(9.3~17.5%)に比して顕著に小さく、突起電極の高さの均一性に優れることが分かる。
【0127】
(3)電気スズ-銅合金メッキ浴
電気スズ-銅合金メッキ浴において、比較例10はエーテル結合を有する本発明の架橋式芳香族化合物C、比較例11は炭素結合を有する化合物Cを含まない各ブランク例であるが、これらの比較例10~11を、本発明の化合物Cを含有する実施例17、20、25、32~33(特に、実施例17、20)に対比すると、比較例の高さの均一性割合Aは9.8~9.9%であるのに対して、実施例の割合Aは1.6~3.4%であった。
また、前記比較例10に含有されるビスフェノールE型のノニオン性界面活性剤は、ベンゼン環同士を炭素結合で架橋した構造の本発明の化合物Cと共通の基本骨格を有するため、上述の通り、当該比較例10は本発明の化合物Cを含まないブランク例であるが、一方で、本発明の化合物Cに代えて、上記ビスフェノール型のノニオン性界面活性剤を含有したスズ-銅合金メッキ浴の例でもあり、この比較例10の均一性割合Aは9.9%であった。
従って、電気スズ-銅合金メッキ浴では、実施例の均一性割合A(1.6~3.4%)は比較例10~11(9.8~9.9%)に比して顕著に小さく、突起電極の高さの均一性に優れることが分かる。
【0128】
(4)電気スズ-亜鉛合金メッキ浴
電気スズ-銅合金メッキ浴において、比較例12はエーテル結合を有する本発明の架橋式芳香族化合物C、比較例13はイミノ結合を有する化合物Cを含まない各ブランク例であるが、これらの比較例12~13を、本発明の化合物Cを含有する実施例3~4、36(特に実施例3、36)に対比すると、比較例の高さの均一性割合Aは10.0~10.4%であるのに対して、実施例の割合Aは2.0~3.5%であった。
また、比較例13に含有されるベンザルコニウム型のカチオン性界面活性剤は、ベンゼン環同士を4級アンモニウム塩型の窒素結合で架橋した構造の本発明の化合物Cと、ベンゼン環具備の4級アンモニウム塩構造で共通するため、当該比較例13は、本発明の化合物Cに代えて、上記4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤を含有したスズ-亜鉛合金メッキ浴の例であり、この比較例13の均一性割合Aは10.4%であった。
従って、電気スズ-亜鉛合金メッキ浴では、実施例の均一性割合A(2.0~3.5%)は比較例12~13(10.0~10.4%)に比して顕著に小さく、突起電極の高さの均一性に優れることが分かる。
【0129】
(5)電気スズ及びスズ合金メッキ浴の評価
上記(1)~(4)を総合すると、本発明の架橋式芳香族化合物Cを含有する実施例のスズ又はスズ合金メッキ浴は、本発明の化合物Cを含まないメッキ浴に対して、基板上に多数の突起電極を形成する場合に、突起電極の高さのバラツキを抑えて優れた均一性を確保できる点で、顕著な優位性を示すことが裏付けられた。
また、ベンゼン環同士を炭素結合で架橋した構造の本発明の化合物Cは、ビスフェノール型のノニオン性界面活性剤と基本骨格が共通するが、上記実施例と比較例の対比から分かるように、本発明の化合物Cに代えてこのビスフェノール型のノニオン性界面活性剤をメッキ浴に含有しても、突起電極の高さの均一性を確保できないため、優れた均一性を確保できる点で、本発明の化合物Cを含有するスズ及びスズ合金メッキ浴の優位性は明らかである。
さらに、ベンゼン環同士を4級アンモニウム塩の窒素結合で架橋した構造の本発明の化合物Cは、ベンザルコニウム型のカチオン性界面活性剤などとベンゼン環具備の4級アンモニウム塩構造で共通するが、上記実施例と比較例の対比から分かるように、突起電極の高さの均一性を良好に確保する面では、ベンザルコニウム塩などのカチオン性界面活性剤の含有では所期の目的は達成できず、本発明の化合物Cを含有するスズ及びスズ合金メッキ浴の優位性は明らかである。
【0130】
一方、実施例1~45について詳細に検討すると、本発明の架橋式芳香族化合物Cはスズメッキ浴、或は、スズ-銀合金、スズ-銅合金、スズ-亜鉛合金などを初めとする各種スズ合金メッキ浴のいずれに適用しても、突起電極の高さの均一性を良好に確保できる。
この場合、本発明の化合物Cはメッキ浴に対して添加剤レベルの少量添加で、有効性を発揮でき、浴種による有効性の差異はない。
実施例7~8、15は架橋式複素環化合物、その他の実施例は全て架橋式芳香環化合物であり、本発明の化合物Cが芳香環、複素環のいずれを具備しても、突起電極の高さの均一性を良好に確保でき、芳香環、複素環の間で有効性の差異はない。
また、本発明の化合物Cにおいて、芳香環、複素環の架橋構造は、アルキレン、アルキニレンなどの炭素結合(実施例15、20~23、42参照)、イミノ結合(実施例13、24、26、35~36、43参照)、4級アンモニウム塩結合(実施例25、27~29、39、45参照)、或は、エーテル結合(前記以外の全ての実施例参照)のいずれの場合でも、やはり突起電極の高さの均一性を良好に確保でき、エーテル結合、炭素結合、窒素結合から選択された架橋構造の間で有効性に差異はない。