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特許7009685化学療法支援装置及び化学療法支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】化学療法支援装置及び化学療法支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/17 20180101AFI20220118BHJP
【FI】
G16H20/17
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017156008
(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2019036065
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】507309275
【氏名又は名称】株式会社シー・エム・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】西田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】天根 賢一
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-155073(JP,A)
【文献】特開2012-003415(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に投与される抗癌剤の種類、標準投与量及び投与スケジュールを含むレジメンを示すレジメン情報、及び前記レジメン情報にて用いられる抗癌剤とは異なる他の抗癌剤との組み合わせを許容するか否かを示す重複情報を含むレジメンマスタ情報が格納された記憶手段と、
前記レジメン情報に基づいてレジメンオーダが作成されるときに、前記レジメン情報が規定する投与スケジュールの期間で、他の抗癌剤との組み合わせが発生すると、前記重複情報に基づいて重複を許容するか否かを判定するオーダ処理手段と
投与スケジュールの表示、変更を処理するスケジュール処理手段とを備え
前記スケジュール処理手段は、施行日移動が要求されると、注射のみの移動か、または注射と内服薬の両方の移動かを選択するボタンと、移動対象日以降の予定をシフトするか否かを選択するボタンとを表示手段に表示し、移動が指示されると、選択するボタンに基づいて投薬の施行日を移動先の施行日に移動させ、予定のシフトが指示されると、移動対象日以降の予定をシフトする化学療法支援装置。
【請求項2】
前記重複情報は、全部の他のレジメンとの重複を許容するか否か、又は選択的にレジメンとの重複を許容することを示す重複可否情報と、前記重複可否情報が選択的にレジメンとの重複を許容することを示す場合に、重複が許容されるレジメンを示す重複レジメン情報とを備えたものである請求項1記載の化学療法支援装置。
【請求項3】
コンピュータを、
患者に投与される抗癌剤の種類、標準投与量及び投与スケジュールを含むレジメンを示すレジメン情報、及び前記レジメン情報にて用いられる抗癌剤とは異なる他の抗癌剤との組み合わせを許容するか否かを示す重複情報を含むレジメンマスタ情報が格納された記憶手段、
前記レジメン情報に基づいてレジメンオーダが作成されるときに、前記レジメン情報が規定する投与スケジュールの期間で、他の抗癌剤との組み合わせが発生すると、前記重複情報に基づいて重複を許容するか否かを判定するオーダ処理手段
投与スケジュールの表示、変更などを処理するスケジュール処理手段として機能させ
前記スケジュール処理手段は、施行日移動が要求されると、注射のみの移動か、または注射と内服薬の両方の移動かを選択するボタンと、移動対象日以降の予定をシフトするか否かを選択するボタンを表示手段に表示し、移動が指示されると、選択するボタンに基づいて投薬の施行日を移動先の施行日に移動させ、予定のシフトが指示されると、移動対象日以降の予定をシフトする化学療法支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤を用いて癌治療を行う医師を支援する化学療法支援装置及び化学療法支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌治療は、抗癌剤を用いて行う化学療法が知られている。抗癌剤だけでなく薬剤は、投薬量を誤ると、直接的に身体へ影響を及ぼす。特に、抗癌剤は、身体へ過激に作用するため、投薬量は重要である。このような投薬量について、チェックする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の「薬剤投与量チェック装置及び薬剤投与量チェック方法」は、薬剤を投与する者の体重の投与予定データが入力部を通じて入力されると、制御部では、薬剤及びその薬剤投与量と、投与予定データと、データベースから呼び出した過去実績データとに基づいて、投与しようとしている薬剤の薬剤投与量がデータベースで記録された薬剤投与量の許容範囲以外であるか否かを判定し、薬剤投与量がデータベースに記録された薬剤投与量の許容範囲以外であると判定された時に、報知部により、「不適正」である旨の報知がされる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-181134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の薬剤投与量チェック装置では、投与量はチェックされるが、他の薬剤との併用については考慮されていない。
一方、化学療法においては、患者に投与される薬剤の種類、標準用量、投与スケジュールがレジメンマスタによって定められている。そして、このレジメンマスタを基本に患者に適した内容に変更して、レジメンオーダして治療にあたる。
しかし、医師がレジメンの内容全部を把握して、患者に対する投与スケジュールを組み立てるのは困難である。
【0006】
そこで本発明は、医師がレジメンを正確に把握していなくても、投与スケジュールを立案することが可能な化学療法支援装置及び化学療法支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化学療法支援装置は、患者に投与される抗癌剤の種類、標準投与量及び投与スケジュールを含むレジメンを示すレジメン情報、及び前記レジメン情報にて用いられる抗癌剤とは異なる他の抗癌剤との組み合わせを許容するか否かを示す重複情報を含むレジメンマスタ情報が格納された記憶手段と、前記レジメン情報に基づいてレジメンオーダが作成されるときに、前記レジメン情報が規定する投与スケジュールの期間で、他の抗癌剤との組み合わせが発生すると、前記重複情報に基づいて重複を許容するか否かを判定するオーダ処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の化学療法支援プログラムは、コンピュータを、患者に投与される抗癌剤の種類、標準投与量及び投与スケジュールを含むレジメンを示すレジメン情報、及び前記レジメン情報にて用いられる抗癌剤とは異なる他の抗癌剤との組み合わせを許容するか否かを示す重複情報を含むレジメンマスタ情報が格納された記憶手段、前記レジメン情報に基づいてレジメンオーダが作成されるときに、前記レジメン情報が規定する投与スケジュールの期間で、他の抗癌剤との組み合わせが発生すると、前記重複情報に基づいて重複を許容するか否かを判定するオーダ処理手段として機能させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、オーダ処理手段が、レジメン情報に基づいてレジメンオーダが作成されるときに、レジメン情報が規定する投与スケジュールの期間で、他の抗癌剤との組み合わせが発生すると、重複情報に基づいて重複を許容するか否かを判定するため、レジメン同士の重複が発生したときに、医師の記憶や経験に頼ることなく、正確に判断することができる。
【0010】
前記重複情報は、全部の他のレジメンとの重複を許容するか否か、又は選択的にレジメンとの重複を許容することを示す重複可否情報と、前記重複可否情報が選択的にレジメンとの重複を許容することを示す場合に、重複が許容されるレジメンを示す重複レジメン情報とを備えたものとすることができる。
【0011】
重複情報が、重複可否情報と重複レジメン情報とからなり、重複可否情報が、全部の他のレジメンとの重複を許容するか否か、又は選択的にレジメンとの重複を許容することを示すものであるため、オーダ処理手段は、他のレジメンとの重複が許容される又は許容されないだけでなく、レジメンによっては許容されることまでも判断することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レジメン同士の重複が発生したときに、医師の記憶や経験に頼ることなく、正確に判断することができるため、医師がレジメンを正確に把握していなくても、投与スケジュールを立案することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る化学療法支援システムの構成を示す図である。
図2図1に示す化学療法支援システムの化学療法支援装置として機能する処理サーバの構成を説明するための図である。
図3】レジメン一覧画面の一例を示す図である。
図4】レジメン確認画面の一例を示す図である。
図5】レジメンオーダ画面の一例を示す図である。
図6】投与率の上限値を超えたときに表示される警告メッセージ画面の一例を示す図である。
図7】投与スケジュール画面の一例を示す図である。
図8】オーダ登録確認画面の一例を示す図である。
図9】オーダ登録完了画面の一例を示す図である。
図10】コース履歴画面の一例を示す図である。
図11】レジメン確認画面の一例を示す図である。
図12図3に示すレジメン一覧画面から「Weeklyドセタキセル」が選択されたレジメン参照画面の一例を示す図である。
図13図3に示すレジメン一覧画面から「髄注」が選択されたレジメン参照画面の一例を示す図である。
図14図3に示すレジメン一覧画面から「リツキサン」が選択されたレジメン参照画面の一例を示す図である。
図15】記憶手段に格納されたレジメンマスタ情報に含まれる重複情報の一例を示す図である。
図16】重複が許容されないコース同士の重複が発生したときに表示される警告メッセージ画面の一例を示す図である。
図17】Day移動画面の一例を示す図である。
図18】オーダ参照画面の一例を示す図である。
図19】Day移動する際の確認画面の一例を示す図である。
図20】Day移動画面の一例を示す図である。
図21】オーダ参照画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る化学療法支援システムを図面に基づいて説明する。
図1に示す化学療法支援システム1は、化学療法支援装置として機能する処理サーバ2と、各医師が操作する複数の端末装置3とが、病院H内の電気通信回線の一例であるLANに通信可能に接続されたものである。このLANには、図示しない電子カルテシステムや、薬局にて薬剤師が操作する端末装置(図示せず)も接続されている。
なお、処理サーバ2と、端末装置3と、電子カルテシステムと、薬剤師が操作する端末装置とは、WANを介して接続されていてもよい。また、図1においては、中継装置であるハブやルータなどは図示していない。
【0015】
処理サーバ2は、化学療法プログラムが動作することで、化学療法支援装置として機能するコンピュータである。処理サーバ2は、端末装置3の操作に応じて、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)により画面データを端末装置3へ送信する。
端末装置3は、例えば、処理サーバ2からページデータとして送信される画面データを表示するブラウザが動作するコンピュータである。また、端末装置3は、入力手段を操作して入力された入力データを処理サーバ2へ送信する機能を備えている。
【0016】
ここで、処理サーバ2の構成について、図2に基づいて詳細に説明する。
処理サーバ2は、通信手段21と、オーダ処理手段22と、スケジュール処理手段23と、記憶手段24とを備えている。
通信手段21は、LANとのデータ通信を制御する機能を備えている。
オーダ処理手段22は、端末装置3からの要求に基づいて、記憶手段24に格納されたレジメンマスタ情報から作成されたレジメンを、薬局にて薬剤師が操作する端末装置(図示せず)にオーダする機能を備えている。
【0017】
スケジュール処理手段23は、投与スケジュールの表示、変更などを処理する機能を備えている。
記憶手段24には、化学療法プログラムや、化学療法プログラムが使用するデータなどが格納されている。また、記憶手段24には、薬剤の種類、薬剤の投与量、投与スケジュールなどを含むレジメンを示すレジメン情報と、後述する重複情報とを含むレジメンマスタ情報が格納される。
【0018】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る化学療法支援システムの動作及び使用状態を図面に基づいて説明する。
医師は、まず、新規のオーダを設定する。
新規のオーダの設定は、処理サーバ2のオーダ処理手段22が、端末装置3に送信したレジメン一覧画面P1(図3参照)から行うことができる。このレジメン一覧画面P1は、オーダ処理手段22が記憶手段24から読み込んでレジメンマスタ情報に基づいて生成される。
レジメン一覧画面P1は、画面の左上に位置する、「新規オーダ・オーダ履歴」と表示された新規履歴兼用ボタンB11又は「レジメン一覧」と表示された一覧表示ボタンB12が押下されることで、処理サーバ2から端末装置3へ送信される。
【0019】
このとき、レジメン一覧画面P1の上部には、電子カルテシステムから読み込んだ、患者の体格情報(身長、体重)が表示され、この体格情報に基づいた体表面積、標準体重が表示されている。本実施の形態では、図3に示すように、体表面積をDu Bois公式により算出したときに1.000m2となるように、便宜上、患者の身長を91.4cmとしている。
【0020】
また、レジメン一覧画面P1では、左側に大分類欄R11が表示され、右側に小分類欄R12が表示されている。大分類欄R11には、癌の種別の大分類である「乳がん」、「胃がん」、「結腸・直腸がん」及び「膵臓・胆道癌」が表示されている。医師が、この大分類のうち、「乳がん」を選択すると、大分類「乳がん」に属するレジメンの一覧が、小分類欄R12に表示される。医師は、この中から、例えば、レジメン名「Weeklyドセタキセル」を選択してハイライト表示させた後に、レジメン確認ボタンB13を押下したものとする。
【0021】
レジメン確認ボタンB13の押下が、処理サーバ2へ送信されると、オーダ処理手段22は、電子カルテシステムから患者に関する情報を記憶手段24から読み出して、図4に示すレジメン確認画面P2を、端末装置3へ送信する。
【0022】
レジメン確認画面P2では、体格情報選択欄R21には、電子カルテシステムから読み込んだ最新の患者の身長、体重及び体表面積と、前回コース時の身長、体重及び体表面積と、患者の身長から算出される標準体重とが表示されている。今回のオーダの設定は、コースが初回(第1コース)であるため前回コース時の体格情報は、表示されていない。
また、レジメン確認画面P2では、レジメンコメント表示欄R22に、「Weeklyドセタキセル」が、28日で1クール(コース)であり、1週間ごとの投薬を3週間続け(投薬期間)、残り1週間が休薬(休薬期間)であることが表示されている。また、レジメン確認画面P2では、レシピ表示欄R23に、抗癌剤であるドセタキセル点滴静注を、初日(Day1)と、8日目(Day8)と、15日日(Day15)に施行することが表示されている。
【0023】
医師は、端末装置3の入力手段を操作して、体格情報選択欄R21に表示された、いずれかの体格情報を選択する。
また、医師は、コース回指定欄R24にて、コース数を指定する。初回であれば、例えば、「今回のコースNo.「1」~「1」」のように、それぞれ「1」を指定することで、初回である1コース目を指定する。
医師は、体格情報の選択及びコース数の指定が完了すると、端末装置3の入力手段を操作してレジメンオーダボタンB2を押下する。
【0024】
レジメンオーダボタンB2の押下が端末装置3から処理サーバ2へ送信されると、オーダ処理手段22は、図5に示すレジメンオーダ画面P3を端末装置3へ送信する。
レジメンオーダ画面P3は、電子カルテシステムから読み込まれた患者の検査結果の詳細情報が上部に表示されると共に、薬剤の投与量などが設定できる画面である。
【0025】
レジメンオーダ画面P3には、コース開始日を指定する投与開始日設定欄R31と、レジメン確認画面P2(図4参照)と同様に、レシピ表示欄R32が表示されている。
このレシピ表示欄R32には、薬剤の用量に反映される用量設定部S31と、薬剤の投与量を単位「mg」により設定する投与量設定部S32とが表示されている。更に、レジメンオーダ画面P3には、レジメンマスタ情報に準拠した用量、投与量に設定とするレジメンマスタ準拠ボタンB31が表示されている。
【0026】
医師は、今回のコースの薬剤の用量を「パーセント」で用量設定部S31に設定したり、又は投与量を「mg」で投与量設定部S32に設定したりする。このとき、抗癌剤「ドセタキセル点滴静注」が用量100%で40mgであったところ、投与量45mgに変更したものとする。
投与量45mgは、患者の体表面積での用量100%における投与量40mgに対して約112.5%(投与率)となる。オーダ処理手段22は、記憶手段24に設定された投与率の上限値、例えば、105%を超えたと判断すると、図6に示すような投与率上限オーバーを示す警告メッセージ画面P31を表示する。
このように、投与率の上限を越えるような設定をしようとしても、処理サーバ2がチェックを行って阻止するため、医師の設定ミスを防止することができる。
【0027】
図5に示すレジメンオーダ画面P3での設定が終了すると、医師は、投与スケジュールボタンB32を押下する。
投与スケジュールボタンB32の押下が端末装置3から処理サーバ2へ送信されると、オーダ処理手段22は、図7に示す投与スケジュール画面P4を端末装置3へ送信する。
投与スケジュール画面P4には、レシピ詳細欄R41に、抗癌剤の他に、選択されたレジメンにて、点滴(注射)により投与される薬剤や、経口摂取により投与される薬剤が、施行日に対応して表示されている。また、投与される施行時間が施行日ごとに表示されている。
医師は、各レシピ(RpNo.001~RpNo.003)の内容を確認して、問題がなければオーダ登録ボタンB41を押下する。
【0028】
オーダ登録ボタンB41の押下が端末装置3から処理サーバ2へ送信されると、オーダ処理手段22は、医師に最終的な確認を取るためのオーダ登録確認画面P5(図8参照)を端末装置3へ送信する。
オーダ登録確認画面P5には、登録を許可するOKボタンB51と、元の図7に示す投与スケジュール画面P4へ戻るキャンセルボタンB52とが表示されている。
ここで、OKボタンB51が押下されることで、オーダ処理手段22は、オーダ登録された内容を、登録レジメン情報として、記憶手段24に格納すると共に、オーダ登録完了画面P6(図9参照)を端末装置3へ送信する。オーダ登録完了画面P6では、レジメン名「Weeklyドセタキセル」による第1コースがオーダされたことを示している。
また、オーダ処理手段22は、レジメン名「Weeklyドセタキセル」による第1コースがオーダされた登録レジメン情報を、レジメンオーダとして、薬剤部に所在する薬剤師が操作する端末装置(図示せず)へ送信する。
【0029】
次のコースを設定するときには、左上に位置する「新規オーダ・オーダ履歴」と表示された新規履歴兼用ボタンB11を押下する。この押下により、オーダ処理手段22は、記憶手段24に設定されたコース情報を読み出して、図10に示すコース履歴画面P7を端末装置3へ送信する。
【0030】
コース履歴画面P7では、レジメン名「Weeklyドセタキセル」による第1コースが、コース期間「2016年6月13日」から「2016年7月10日」に設定されていることが表示されている。
例えば、このレジメンの第2コースを設定するときには、医師は複写ボタンB71を押下する。この押下により、オーダ処理手段22は、第1コースを複写したコース情報が、図4に示すレジメン確認画面P2と同様にレジメン確認画面P8(図11参照)を端末装置3へ送信する。
【0031】
レジメン確認画面P8では、前コース(第1コース)が設定されているため、コース回指定欄R81には、「2」が当初から指定されている。
第1コースと同じ内容のレジメンを第2コースも登録するときには、レジメンオーダボタンB8を押下する。以降、レジメンオーダ画面P3(図5参照)、投与スケジュール画面P4(図7参照)、オーダ登録確認画面P5(図8参照)及びオーダ登録完了画面P6(図9参照)に従って、第1コースに引き続いて第2コースも設定することができる。
【0032】
図10に示すコース履歴画面P7にて、第2コースを新規のレジメンにてオーダしたい場合には、新規オーダボタンB72を押下する。
新規オーダボタンB72が押下されると、オーダ処理手段22は、図3に示すレジメン一覧画面P1を端末装置3へ送信することで、第1コースとは異なるレジメンよるオーダを新規に作成することができる。
【0033】
ここで、レジメン情報により規定されたコース同士の重複について説明する。
処理サーバ2の記憶手段24に格納されたレジメンマスタ情報には、レジメンのコース同士が重複したときに、重複を許容するか否かの設定が含まれている。これは、患者に投与される薬剤である抗癌剤同士の組み合わせにより決定される。
レジメンマスタ情報の内容は、図3に示すレジメン一覧画面P1から参照することができる。例えば、図3に示すレジメン一覧画面P1が表示された端末装置3にて、入力手段を操作してレジメンを選択後、レジメン参照ボタンB14を押下することで、図12に示すレジメン参照画面P9が処理サーバ2から端末装置3へ送信される。
【0034】
レジメン参照画面P9は、レジメン名「Weeklyドセタキセル」を選択したときの画面であり、レジメンマスタ情報にて規定される投与の情報を示している。そして、レジメン参照画面P9における重複設定表示部H91の「レジメン重複」を参照すると、「重複不可」と表示されている。従って、「Weeklyドセタキセル」は、いかなる他のレジメンのコース(投薬期間及び休薬期間)との重複も許容されてないことを示している。
【0035】
例えば、図13に示すレジメン参照画面P10は、レジメン名「髄注」を、「Weeklyドセタキセル」と同様の操作にて表示させたものである。このレジメン参照画面P10によると、レジメン名「髄注」は、重複設定表示部H91の「レジメン重複」を参照すると、「重複可」と表示されている。
従って、他のレジメンを登録した後に、投薬期間又は休薬期間に重なるようにレジメン名「髄注」のコース期間を設定しても、オーダ処理手段22は登録可能とする。
【0036】
更に、図14に示すレジメン参照画面P11は、レジメン名「リツキサン」を、「Weeklyドセタキセル」と同様の操作にて表示させたものである。このレジメン参照画面P11によると、レジメン名「リツキサン」は、重複設定表示部H91の「レジメン重複」を参照すると、「重複可(限定)」と表示されている。
「重複可(限定)」は、投薬期間及び休薬期間に重なるレジメンが限定されていることを示している。
重複が許容されるレジメンは、端末装置3の入力手段を操作して、重複設定表示部H91にオンマウスすることで、重複可能なレジメンのリストである重複可能レジメン表示部H92が表示される。
医師は、重複可能レジメン表示部H92が表示されることにより、重複が許容されるレジメンを事前に知ることができる。
【0037】
これは、記憶手段24に格納されたレジメンマスタ情報に含まれる重複情報によるものである。例えば、図15に示すように、重複情報は、レジメンに、重複可否情報と、重複レジメン情報とが関連付けられている。
重複可否情報は、レジメン情報にて用いられる抗癌剤とは異なる他の抗癌剤との組み合わせを許容するか否かを示す情報である。本実施の形態の重複可否情報は、他の全てのレジメンと重複することを許容する「重複可」と、重複が許容されない「重複不可」と、限られたレジメンであれば重複が許容される「限定」との3種類としている。
そして、重複可否情報が「限定」であれば、重複レジメン情報として、重複を許容するレジメンが格納される。
【0038】
オーダ処理手段22は、この重複情報を参照することで、図12から図14に示すように、重複設定表示部H91および重複可能レジメン表示部H92に、重複可、重複不可、重複が許容されたレジメンを表示することができる。
【0039】
例えば、図5に示すレジメン確認画面P3の投与開始日設定欄R31にて、他のレジメンと重複する期間を設定したときに、オーダ処理手段22は、重複情報を参照する。
そして、オーダ処理手段22は、「重複不可」又は「限定」で、かつ重複レジメン情報に、重複設定されようとしているレジメンが含まれていないことを条件に、期間が重複する旨の警告メッセージ画面P12(図16参照)を端末装置3へ送信する。
そうすることで、端末装置3を操作する医師は、警告メッセージ画面P12により、レジメンの重複が発生したこと、レジメンの重複が許容されていないことを認識することができるため、レジメン同士の重複が発生したときに、医師の記憶や経験に頼ることなく、正確に判断することができる。従って、レジメンを正確に把握していなくても、投与スケジュールを立案することが可能である。
【0040】
本実施の形態では、重複可否情報が、コース(投薬期間及び休薬期間)の重複を許容するか否か、又は重複を許容するレジメンを限定するかの3種類を識別するための情報(図15参照)であるが、投薬期間の重複の可否、休薬期間の重複の可否、重複を許容する場合に限定されるか否かなど、6つの状態を設定できるようにしてもよい。
【0041】
つまり、投薬期間の重複の可否であれば、全てのレジメンで投薬期間の重複可と、全てのレジメンで投薬期間の重複不可との2種類である。
また、休薬期間の重複の可否であれば、全てのレジメンで休薬期間の重複可と、全てのレジメンで休薬期間の重複不可との2種類である。
更に、重複を許容する場合に限定される場合には、投薬期間の重複を可とするレジメンがあること、休薬期間の重複を可とするレジメンがあることを示す2種類である。
このような重複可否情報とすることで、6つの状態を表すことができ、細かな設定を行うことができる。
【0042】
次に、登録されたレジメンは、図7に示す投与スケジュール画面P4からカレンダー形式に表示して、薬剤を投与する施行日を変更することができる。
投与スケジュール画面P4にて「Day移動」と表示された変更用ボタンB42を押下する。変更用ボタンB42が押下されると、処理サーバ2のスケジュール処理手段23が、登録された登録レジメン情報を記憶手段24から読み込み、コースの内容をカレンダー形式に表示したDay移動画面P13(図17参照)を端末装置3へ送信する。
【0043】
端末装置3に表示手段に表示されたカレンダー画面であるDay移動画面P13は、レジメンとして「Weeklyドセタキセル」の第1コースと第2コースとが登録されたものである。
このDay移動画面P13では、第1コースおよび第2コースの開始を示す旗を模したアイコンC1が表示されている。この旗を模したアイコンC1には、コースの番号を示す数字が表示されている。
また、Day移動画面P13では、1日目(Day1)と8日目(Day8)と15日目(Day15)に点滴を示す点滴バッグを模したアイコンC2が表示されている。このアイコンC2には、施行日を示す数字が表示されている。
更に、第1コースの終了を示すチェッカーフラッグを模したアイコンC3が表示されている。なお、図17においては第2コースの終了は8月であるためアイコンC3は表示されていない。
【0044】
このときのオーダ参照画面P14(図18参照)を参照すると、施行日表示欄R141の施行日の1日目、8日目および15日目に、患者が外来より注射(点滴)による治療を受けることが表示されている。
しかし、患者の都合によりに、治療を受ける日に通院できないことがある。例えば、患者が8日目に通院できないが、9日目であれば通院ができるというときには、医師は、図17に示すDay移動画面P13の8日目に表示されたアイコンC2をドラッグして、9日目(Day9)にドロップする。
【0045】
医師によるこの操作により、端末装置3から処理サーバ2へ、施行日移動が要求される。処理サーバ2では、スケジュール処理手段23が、図19に示す確認画面P15を端末装置3へ送信する。
確認画面P15では、日にちの移動として、注射(点滴)のみの移動か、または注射と処方(内服薬)の両方の移動かを選択するボタンB151,B152(ラジオボタン)と、移動対象日以降の予定をシフトするか否かを選択するボタンB153,B154(ラジオボタン)とが表示されている。
「Weeklyドセタキセル」は点滴のみであるため、医師は、注射(点滴)のみの移動を、ボタンB151を押下して指定する。また、医師は、移動対象日以降の予定をシフトしないため、ボタンB154を押下して指定する。そして、「移動する」と表示された移動ボタンB155を押下する。
【0046】
移動ボタンB155の押下が、端末装置3から処理サーバ2へ通知されると、スケジュール処理手段23が、移動前の施行日(8日目(Day8))が移動後の施行日(9日目(Day9)に移動したことを記憶手段24に格納する。そして、スケジュール処理手段23が、8日目(Day8)の点滴を示すアイコンC2が9日目(Day9)へ移動すると共に、アイコンC2と点滴を示す形状と施行日を示す数字は同じであるが、異なる色のアイコンC4が8日目(Day8)を表示したDay移動画面P16(図20参照)とする。
このとき、図21に示すオーダ参照画面P17を参照すると、施行日表示欄R171に、「Day8(9日日)」と表示され、Day8に施行予定であった注射(点滴)が9日目に変わっていることが認識できる。
【0047】
このように、Day移動画面P13,P16では、投薬の施行日を移動先の施行日に移動したいときに、ドラッグアンドドロップで簡単に移動させることができる。また、移動前の施行日に、施行日を移動したことを示すアイコンが履歴として残るため、移動前の施行日と移動後の施行日との両方を確認することができる。
また、オーダ参照画面P14,P17においても、移動後の施行日が、移動前の施行日の欄に表示され、移動前の施行日も履歴として残るため、移動前の施行日と移動後の施行日との両方を確認することができる。
【0048】
従って、医師は、移動後の施行日が、いつの施行日を移動したものかが、ひと目で判別することができる。
【0049】
図19に示す確認画面P15では、移動対象日以降の予定をシフトしないこととしたが、患者の容態に応じて移動対象日以降の予定をシフトしてもよい。
この場合、医師は、図19に示す確認画面P15にて、「以降のDay移動」について「する」と表示されたボタンB153を選択して、「移動する」と表示された移動ボタンB155を押下する。
そうすると、スケジュール処理手段23は、移動対象の施行日が含まれるコースの投薬期間だけでなく、投薬期間後の休薬期間も一緒に、後ろへシフトされるため、次のコースも順次シフトされる。
このように、移動対象の施行日を移動したときに、移動対象の施行日が含まれるコースがシフトされると共に、次のコースも順次シフトされることにより、移動対象の施行日の施行日、次のコースの施行日、コースの終了日など、医師が手計算に頼ることなく、投与スケジュールの変更が容易にできる。
【0050】
このとき、設定によっては、投薬期間はシフトするが、休薬期間はシフトしないようにすることもできる。そうすることで、次のコースを予定通りに施行することができる。
しかし、所定の休薬期間が必要なレジメンであれば、投薬期間はシフトするが、休薬期間はシフトしないようにすると、実質的には、移動対象の施行日が含まれるコースと、次のコースとが重複していることになる。
この場合、オーダ処理手段22がコース同士の重複を判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、抗癌剤を用いて癌治療を行う医師が所属する医療機関に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1 化学療法支援システム
2 処理サーバ
21 通信手段
22 オーダ処理手段
23 スケジュール処理手段
24 記憶手段
3 端末装置
H 病院
P1 レジメン一覧画面
R11 大分類欄
R12 小分類欄
B11 新規履歴兼用ボタン
B12 一覧表示ボタン
B13 レジメン確認ボタン
B14 レジメン参照ボタン
P2 レジメン確認画面
R21 体格情報選択欄
R22 レジメンコメント表示欄
R23レシピ表示欄
R24 コース回指定欄
B2 レジメンオーダボタン
P3 レジメンオーダ画面
R31 投与開始日設定欄
R32 レシピ表示欄
S31 用量設定部
S32 投与量設定部
B31 レジメンマスタ準拠ボタン
B32 投与スケジュールボタン
P31 警告メッセージ画面
P4 投与スケジュール画面
R41 レシピ詳細欄
B41 オーダ登録ボタン
B42 変更用ボタン
P5 オーダ登録確認画面
B51 OKボタン
B52 キャンセルボタン
P6 オーダ登録完了画面
P7 コース履歴画面
B71 複写ボタン
B72 新規オーダボタン
P8 レジメン確認画面
R81 コース回指定欄
B8 レジメンオーダボタン
P9,P10,P11 レジメン参照画面
H91 重複設定表示部
H92 重複可能レジメン表示部
P12 警告メッセージ画面
P13 Day移動画面
C1~C3 アイコン
P14 オーダ参照画面
R141 施行日表示欄
P15 確認画面
B151~B154 ボタン
B155 移動ボタン
P16 Day移動画面
P17 オーダ参照画面
R171 施行日表示欄
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図21