(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ジョイント具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/06 20060101AFI20220118BHJP
H02G 3/08 20060101ALI20220118BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H02G3/06 083
H02G3/08
H02G3/04 081
(21)【出願番号】P 2017219366
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000144267
【氏名又は名称】株式会社三桂製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】501314396
【氏名又は名称】古河樹脂加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175536
【氏名又は名称】高井 智之
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】小林 一生
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-055996(JP,U)
【文献】特開昭63-003606(JP,A)
【文献】米国特許第09705295(US,B1)
【文献】特開2010-213538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/06
H02G 3/08
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電路を挿通可能な導電路管が接続可能な筒状に形成される第一接続部と、
該第一接続部に連続し、且つ、設置面に設置された接続対象物に設けられた接続管部に接続可能な筒状に形成される第二接続部と、
を備え、
前記第一接続部に前記導電路管が接続されるとともに前記接続管部に前記第二接続部が接続されたときに前記導電路管が前記設置面に干渉しないように前記第一接続部の中心軸を前記第二接続部の中心軸より前記設置面から離して前記第一接続部が配置され
、
前記第一接続部と前記第二接続部とは、
それぞれ前記中心軸に直交して断面視したとき真円形となるように形成され、且つ、それぞれの前記中心軸が該中心軸それぞれに直交する同一の線分上に配置され、且つ、少なくとも前記線分に直交する方向における前記第二接続部の内径及び外径が前記第一接続部の内径及び外径よりも小さくなるように形成される
ことを特徴とするジョイント具。
【請求項2】
請求項1に記載のジョイント具において、
当該ジョイント具は、
前記第一接続部の中心軸が前記第二接続部の中心軸より前記設置面から離れて配置されていることを確認可能な中心軸配置確認手段を備える
ことを特徴とするジョイント具。
【請求項3】
請求項2に記載のジョイント具において、
前記中心軸配置確認手段は、
前記第一接続部の外周面に形成され、且つ、前記中心軸配置確認手段と前記第二接続部の中心軸とで前記第一接続部の中心軸を挟むような配置となるように設けてなる
ことを特徴とするジョイント具。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のジョイント具において、
当該ジョイント具は、
当該ジョイント具に前記導電路を挿通する際の該導電路の損傷を防止する導電路損傷防止手段を備える
ことを特徴とするジョイント具。
【請求項5】
請求項4に記載のジョイント具において、
前記導電路損傷防止手段は、
前記第一接続部の内周面のうち前記第二接続部と連続する側を該第二接続部側にいくにしたがって前記第一接続部の内径が小さくなるようなテーパー状に形成してなるテーパー部である
ことを特徴とするジョイント具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電路を挿通する導電路管の一端を接続対象物に接続するのに用いられるジョイント具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したようなジョイント具(その他、「アダプタ」ともよばれている)の技術としては、例えば、特許文献1に開示されているような技術が知られている。
【0003】
特許文献1の第4図に図示するように、配線器具用ボックス1(接続対象物)には、可撓管4(導電路管)に挿通された配線を引き込むための短管部5が設けられている。短管部5に対する可撓管4の接続には、アダプタ6が用いられている。アダプタ6は、可撓管4が接続される接続部8と、短管部5に嵌入される嵌入部7とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術では、可撓管4の折り曲げ等を最小限に抑えるため、短管部5は、造営材9側(配線器具用ボックス1の本体2の側面下端側)に配置されている。また、アダプタ6は、接続部8の径が短管部5の径よりも大きく形成されている。このようなアダプタ6と短管部5とを接続すると、接続部8が造営材9における配線機器用ボックス1の設置面に干渉してしまうというようなことがあった。このように、接続部8が設置面に干渉してしまうと、配線器具用ボックス1が設置面から浮き上がってしまうという問題点があった。
【0006】
また、上記の通り、配線器具用ボックス1が設置面から浮き上がってしまうことにより、配線器具用ボックス1を設置面に固定できないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、接続対象物が設置面から浮き上がることを防止するジョイント具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のジョイント具は、導電路を挿通可能な導電路管が接続可能な筒状に形成される第一接続部と、
該第一接続部に連続し、且つ、設置面に設置された接続対象物に設けられた接続管部に接続可能な筒状に形成される第二接続部と、
を備え、
前記第一接続部に前記導電路管が接続されるとともに前記接続管部に前記第二接続部が接続されたときに前記導電路管が前記設置面に干渉しないように前記第一接続部の中心軸を前記第二接続部の中心軸より前記設置面から離して前記第一接続部が配置され、
前記第一接続部と前記第二接続部とは、
それぞれ前記中心軸に直交して断面視したとき真円形となるように形成され、且つ、それぞれの前記中心軸が該中心軸それぞれに直交する同一の線分上に配置され、且つ、少なくとも前記線分に直交する方向における前記第二接続部の内径及び外径が前記第一接続部の内径及び外径よりも小さくなるように形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の本発明のジョイント具は、請求項1に記載のジョイント具において、当該ジョイント具は、前記第一接続部の中心軸が前記第二接続部の中心軸より前記設置面から離れて配置されていることを確認可能な中心軸配置確認手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の本発明のジョイント具は、請求項2に記載のジョイント具において、前記中心軸配置確認手段は、前記第一接続部の外周面に形成され、且つ、前記中心軸配置確認手段と前記第二接続部の中心軸とで前記第一接続部の中心軸を挟むような配置となるように設けてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の本発明のジョイント具は、請求項1、2又は3に記載のジョイント具において、当該ジョイント具は、当該ジョイント具に前記導電路を挿通する際の該導電路の損傷を防止する導電路損傷防止手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の本発明のジョイント具は、請求項4に記載のジョイント具において、前記導電路損傷防止手段は、前記第一接続部の内周面のうち前記第二接続部と連続する側を該第二接続部側にいくにしたがって前記第一接続部の内径が小さくなるようなテーパー状に形成してなるテーパー部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された本発明によれば、第一接続部の中心軸を第二接続部の中心軸より設置面から離して第一接続部が配置されることにより導電路管の設置面への干渉を無くすことができる。したがって、本発明によれば、設置面への導電路管の干渉を無くすことにより、接続対象物が設置面から浮き上がることを防止することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明によれば、接続対象物が設置面から浮き上がりることを防止することができることから、接続対象物を設置面に確実に固定することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載された本発明によれば、作業者は、中心軸配置確認手段にて第一接続部の中心軸が第二接続部の中心軸より設置面から離れて配置されていることを確認しながら、導電路管と接続対象物とをジョイント具にてジョイントすることができる。したがって、本発明によれば、設置面に導電路管が干渉しないように導電路管と接続対象物とをジョイントする際の作業性を向上することができるようになるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明によれば、第一接続部の中心軸が第二接続部の中心軸より設置面から離れて配置されていることを確認しながら上記ジョイントを行うことができることから、設置面に導電路管が、より確実に干渉しないように、導電路管と接続対象物とをジョイントすることができる。したがって、本発明によれば、接続対象物が設置面から浮き上がることを、より確実に防止することができるという効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載された本発明によれば、中心軸配置確認手段が第一接続部の外周面に形成されていることから、作業者は、中心軸配置確認手段を目視により容易に認識することができる。また、中心軸配置確認手段が、この中心軸配置確認手段と第二接続部の中心軸とで第一接続部の中心軸を挟むような配置となるように設けられることから、導電路管と接続対象物とをジョイントする際、中心軸配置確認手段を第二接続部の中心軸より設置面から離して配置することにより、中心軸配置確認手段と第二接続部の中心軸とに挟まれた第一接続部の中心軸を第二接続部の中心軸より設置面から離して配置することができる。このように、作業者は、導電路管と接続対象物とをジョイントする際、第一接続部の中心軸が第二接続部の中心軸より設置面から離れていることを容易且つ確実に確認することができる。したがって、本発明によれば、設置面に導電路管が干渉しないように導電路管と接続対象物とをジョイントする際の作業性を、さらに向上することができるようになるという効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載された本発明によれば、ジョイント具が導電路損傷防止手段を備えることから、ジョイント具に導電路を挿通する際に導電路が損傷してしまうようなことを無くすことができる。したがって、本発明によれば、ジョイント具に導電路を挿通する際の導電路の損傷を防止することができるようになるという効果を奏する。
【0019】
請求項5に記載された本発明によれば、テーパー部を、第一接続部の内周面のうち第二接続部と連続する側を第二接続部側にいくにしたがって第一接続部の内径が小さくなるようなテーパー状に形成することから、ジョイント具に導電路を挿通する際に、導電路がテーパー部に接触したとしても、導電路が損傷してしまうようなことを無くすことができる。したがって、本発明によれば、ジョイント具に導電路を挿通する際の導電路の損傷を、より確実に防止することができるようになるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、テーパー部は、上記のようなテーパー状であることから、ジョイント具に導電路を挿通する際に、導電路がテーパー部に接触したとしても、導電路がジョイント具内に引っ掛かってしまうというようなことを無くすことができる。このように、導電路の上記引っ掛かりが無くなることから、導電路の挿通をスムーズに行うことができるようになる。したがって、本発明によれば、ジョイント具に導電路を挿通する際の作業性を向上することができるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例に係るジョイント具と、ジョイント具にてジョイントされる導電路管と配線ボックスとを示す分解斜視図を示す図である。
【
図3】ジョイント具を示す上面図、正面図、及び、背面図である。
【
図5】比較例に係るジョイント具を示す断面図である。
【
図6】導電路管と配線ボックスとをジョイント具にてジョイントする前の状態を示す図である。
【
図7】導電路管と配線ボックスとをジョイント具にてジョイントした状態を示す図である。
【
図8】比較例(導電路管と配線ボックスとをジョイントした状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1-
図8を参照しながら、本発明の実施例に係るジョイント具について説明する。
【実施例】
【0023】
図1は本発明の実施例に係るジョイント具と、ジョイント具にてジョイントされる導電路管と配線ボックスとを示す分解斜視図、
図2はジョイント具を示す斜視図であって、(a)は前方から視たときを示す斜視図、(b)は後方から視たときを示す斜視図、
図3はジョイント具を示す図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は背面図、
図4は
図3(a)におけるA-A間の断面図、
図5は比較例に係るジョイント具を示す断面図、
図6は導電路管と配線ボックスとをジョイント具にてジョイントする前の状態を示す図、
図7は導電路管と配線ボックスとをジョイント具にてジョイントした状態を示す図、
図8は比較例を示す図であって、導電路管と配線ボックスとをジョイントした状態を示す図である。
なお、図中の矢印は、上下、前後の各方向を示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0024】
図1において、引用符号1は、本発明に係るジョイント具の実施例を示している。ジョイント具1は、導電路管2と配線ボックス3とをジョイントする部材であり、「アダプタ」ともよばれている。以下、まず、本発明に係るジョイント具1にてジョイントされる導電路管2と配線ボックス3とについて説明し、つぎに、本発明に係るジョイント具1について説明する。
【0025】
まず、導電路管2について説明する。
図1に図示する導電路管2は、導電路管本体4と、管継手5とを備えて構成されている。
図1に図示する導電路管本体4は、合成樹脂材料からなり、可撓性を有する管体である。導電路管本体4は、図示しない導電路を挿通可能に形成されている。
図1に図示する導電路管本体4は、この外周に山部4aと谷部4bとが交互に形成される。
【0026】
なお、導電路は、本実施例では、導体と、導体上に被覆される絶縁被覆とを備えて構成される電線を用いるものとするが、これに限定されるものではない。その他、導電路として、導体と、導体上に被覆される絶縁被覆と、絶縁被覆上に被覆されるシースを備えて構成されるケーブルを用いてもよいものとする。
【0027】
図1に図示する管継手5は、合成樹脂材料からなり、導電路管本体4の一端に回転自在に取り付けられている。このように、管継手5が導電路管本体4の一端に回転自在に取り付けられていることにより、導電路管本体4が可動した場合であっても導電路管本体4の捻れを吸収することができるようになっている。
図1に図示する管継手5は、管継手本体6と、図示しないチャックリング、締め付け部7とを備えて構成されている。
【0028】
図1に図示する管継手本体6は、円筒状に形成され、前端側に雄ねじ部8を備えるとともに、後端側に図示しない雄ねじ部を備えている。管継手本体6は、この外径が導電路管本体4の外径や後述する接続管部10(10a~10c)の外径よりも大きく形成されている。また、前端側の雄ねじ部8は、この外径が管継手本体6の外径よりも小さく形成されている。
【0029】
チャックリングは、円筒状に形成され、一端側が管継手本体6の内周面の後端側に係合可能に形成されるとともに、他端側が導電路管本体4の谷部4bに係合可能に形成されている。
【0030】
図1に図示する締め付け部7は、円筒状に形成され、内周面に図示しない雌ねじ部を備えている。雌ねじ部は、管継手本体6の後端側の雄ねじ部と螺合可能に形成されている。締め付け部7は、この外径が導電路管本体4の外径や接続管部10(10a~10c)の外径よりも大きく形成されている。
【0031】
つぎに、配線ボックス3について説明する。
図1に図示する配線ボックス3は、特許請求の範囲における「接続対象物」に相当するものである。配線ボックス3は、内部に導電路が挿通され導電路の配索方向を変換するための部材である。配線ボックス3は、設置面30(例えば、地面、壁面等)に設置され固定されている(
図7参照)。
【0032】
図1に図示する配線ボックス3は、本実施例では、金属材料からなり、配線ボックス本体9と、接続管部10(10a~10c)と、蓋部11(
図7参照)とを備えて構成されている。
【0033】
図1に図示する配線ボックス本体9は、有底円筒状に形成され、周壁12と、底壁13とを備えて構成されている。周壁12は、この上端に、ねじ螺合部16が形成されている。ねじ螺合部16には、ねじ螺合孔17が貫通形成されている。ねじ螺合孔17は、ねじ18(
図6及び
図7参照)が螺合可能に形成されている。
【0034】
図1に図示する配線ボックス本体9は、開口部14と、配線空間15とを有している。開口部14は、配線ボックス本体9の上面に点検用に形成されている。配線空間15は、開口部14に連通し導電路を配線する空間として形成されている。
【0035】
図1に図示する接続管部10(10a~10c)は、周壁12から、配線ボックス本体9の中心軸方向(
図1においては上下方向)に直交するように外側に向かって複数(本実施例では、三つ)突設されている。接続管部10(10a~10c)は、設置面30側(配線ボックス本体9の底壁13側)に配置されている(
図6及び
図7参照)。接続管部10(10a~10c)は、円筒状に形成され、内部が挿入部19として形成されている。挿入部19は、配線空間15と連通している。
【0036】
なお、本実施例では、接続管部10(10a~10c)が三つ設けられているが、これに限定されるものではない。その他、例えば、接続管部10を四つ設け且つ周壁12の周方向に略四等分となるように配置させてもよいものとする。
【0037】
図1に図示する接続管部10(10a~10c)は、この外面に、ビス螺合孔20が貫通形成されている。ビス螺合孔20は、ビス21が螺合可能に形成されている。
【0038】
なお、本実施例では、ビス21が一つ設けられているが、これに限定されるものではない。その他、例えば、接続管部10の径の大きく形成する場合は、複数設けてもよいものとする。
【0039】
つぎに、本発明に係るジョイント具1について説明する。
図1-
図4に図示するジョイント具1は、金属材料からなり、筒状に形成されている。ジョイント具1は、第一接続部22と、第二接続部23とを備えて構成されている。以下、ジョイント具1の各構成について説明する。
【0040】
まず、第一接続部22について説明する。
図1-
図4に図示する第一接続部22は、導電路を挿通可能な円筒状に形成されている。第一接続部22は、
図7に図示するように、導電路管2の管継手5が接続される部分として設けられている。
【0041】
第一接続部22は、後に詳細に説明するが、
図7に図示するように、第一接続部22に導電路管2の管継手5が接続されるとともに配線ボックス3の接続管部10に第二接続部23が接続されたときに、導電路管2を構成する導電路管本体4や管継手5が設置面30に干渉しないように、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交する方向(
図7においては上下方向)において、第一接続部22の中心軸X1を第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離して配置されている。
【0042】
図4に図示する第一接続部22は、この内周面24が、雌ねじ部25と、テーパー部26とを備えて構成されている。
【0043】
図4に図示する雌ねじ部25は、内周面24における第一接続部22の開放端側(前後方向の後端側)に設けられ、管継手本体6の雄ねじ部8が螺合可能に形成されている。
【0044】
図4に図示するテーパー部26は、特許請求の範囲における「導電路損傷防止手段」に相当するものであり、ジョイント具1(第一接続部22)に導電路を挿通する際の導電路の損傷を防止する部分として設けられている。
図4に図示するように、テーパー部26は、内周面24のうち第二接続部23と連続する側(前後方向の前端側)に形成されている。
【0045】
図4に図示するテーパー部26は、内周面24のうち第二接続部23と連続する側が第二接続部23側にいくにしたがって第一接続部22の内径(内周面24の径)が小さくなるようなテーパー状に形成されている。テーパー部26は、凹凸が無く(所謂「ざらざら」した状態ではなく)、滑らかな状態(所謂「つるつる」した状態)に形成されている。このように形成されたテーパー部26は、導電路に対する摩擦抵抗が小さくなっている。
【0046】
なお、テーパー部26は、
図4に図示するように、断面が平面状に形成されているが、これに限定されるものではない。その他、例えば、断面がジョイント具1の外側(上側)に凸となるような曲面状に形成されていてもよいものとする。また、断面がジョイント具1の内側(下側)に凸となるような曲面状に形成されていてもよいものとする。
【0047】
ここで、本発明に係るジョイント具1と、比較例に係るジョイント具100との比較について説明する。
【0048】
図4に図示するジョイント具1によれば、テーパー部26(導電路損傷防止手段)を、第二接続部23側にいくにしたがって第一接続部22の内径(内周面24の径)が小さくなるようなテーパー状に形成し、さらに、滑らかな状態(所謂「つるつる」した状態)に形成することから、ジョイント具1(第一接続部22)に導電路を挿通する際に、導電路がテーパー部26に接触したとしても、導電路が損傷してしまうようなことが無くなる。
【0049】
また、ジョイント具1によれば、テーパー部26は、上記のようなテーパー状であることから、ジョイント具1(第一接続部22)に導電路を挿通する際に、導電路がテーパー部に接触したとしても、導電路がジョイント具1内(内周面24)に引っ掛かってしまうというようなことが無くなる。このように、導電路の上記引っ掛かりが無くなることから、導電路の挿通をスムーズに行うことができるようになる。
【0050】
これに対し、
図5に図示する比較例に係るジョイント具100は、内周面124のうち第二接続部123と連続する側に垂直部125が形成されている。このようなジョイント具100によれば、垂直部125が第一接続部122の中心軸X3に直交するように形成されていることから、ジョイント具100(第一接続部122)に導電路を挿通する際に、導電路が垂直部125に接触すると、垂直部125に引っ掛かるか、垂直部125の下端の角部126に接触することにより、導電路が損傷してしまう。
【0051】
また、ジョイント具100によれば、垂直部125に導電路が引っ掛かることにより、導電路をスムーズに挿通し難くなり、導電路を挿通する際の作業性に悪影響を来してしまう。
【0052】
図1-
図4に図示する第一接続部22は、この外周面27に、中心軸配置確認手段28が形成されている。中心軸配置確認手段28は、
図7に図示するように、第一接続部22に導電路管2の管継手5が接続されるとともに配線ボックス3の接続管部10に第二接続部23が接続されたときに、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交する方向(
図7においては上下方向)において、第一接続部22の中心軸X1が第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離れて配置されていることを確認可能な表示部(所謂インジケーター)として形成されている。
【0053】
中心軸配置確認手段28は、
図3(b)及び
図3(c)に図示するように、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交する方向(
図3(b)及び
図3(c)においては上下方向)において、この中心軸配置確認手段28と第二接続部23の中心軸X2とで第一接続部22の中心軸X1を挟むような配置となるように設けられる。すなわち、
図3(b)及び
図3(c)に図示するように、中心軸配置確認手段28が第一接続部22の中心軸X1の上側に配置されるとともに第二接続部23の中心軸X2が第一接続部22の中心軸X1の下側に配置されている。
【0054】
中心軸配置確認手段28は、
図1-
図4に図示するように、外周面27の上側に配置されているが、より詳細に説明すると、外周面27において、第二接続部23の中心軸X2から最も離れた位置に配置されている。より具体的には、中心軸配置確認手段28は、
図3(b)及び
図3(c)に図示するように、線分Lと外周面27とが交差する位置に配置されている。ここで、
図3(b)及び
図3(c)に図示するように、線分Lは、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交し第一接続部22の中心軸X1と第二接続部23の中心軸X2とを繋ぐ線分である。
【0055】
なお、
図3(b)及び
図3(c)において、第一接続部22の中心軸X1と、第二接続部23の中心軸X2とは、ドットとして図示しているが、これらのドットは、説明の便宜上、図示するものであって、実際に見えるものではないものとする。
【0056】
中心軸配置確認手段28は、本実施例では、
図3(a)に図示するように、平面的に視ると略長円形となるように形成され、
図3(b)及び
図3(c)に図示するように、ジョイント具1の外側(上側)に向かって突設される突起として形成されている。
【0057】
なお、中心軸配置確認手段28の形状は、本実施例のような形状に限定されるものではない。その他、例えば、平面的に視ると円形、矩形、三角形等となるような形状の突起として形成されていてもよいものとする。また、例えば、平面的に視ると長円径、円形、矩形、三角形等となるように形成され、ジョイント具1の内側に向かって凹状となる溝部として形成されていてもよいものとする。
【0058】
つぎに、第二接続部23について説明する。
図1-
図4に図示する第二接続部23は、第一接続部22の前端に連続し、導電路を挿通可能な円筒状に形成されている。第二接続部23は、この内径及び外径が第一接続部22の内径及び外径よりも小さくなるように形成されている。
【0059】
第二接続部23は、配線ボックス3の接続管部10に接続可能に形成されている。第二接続部23は、挿入部19に挿入可能に形成されている。第二接続部23は、この外径が接続管部10(10a~10c)の挿入部19の内径より、僅かに小さくなるように形成されている。
【0060】
ここで、第一接続部22の中心軸X1と、第二接続部23の中心軸X2との配置について説明する。
【0061】
図4に図示する仮想線Bで囲むように、第一接続部22の中心軸X1と、第二接続部23の中心軸X2とは、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交する方向(
図4においては上下方向)において偏芯させて配置されている。
【0062】
ここで、「偏芯」とは、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交する方向において、第一接続部22の中心軸X1と、第二接続部23の中心軸X2とが、ずれていることをいう。
【0063】
つぎに、ジョイント具1にて導電路管2と配線ボックス3とをジョイントする作業手順について説明する。
【0064】
図6に図示するように、まず、あらかじめ、導電路管本体4の端末に管継手5を取り付け、導電路管2を組み立てるとともに、配線ボックス本体9と蓋部11とを、ねじ18で固定し、配線ボックス3を組み立てる。そして、配線ボックス3を設置面30に設置する。
【0065】
しかる後、
図6に図示する管継手5の雄ねじ部8を、ジョイント具1の第一接続部22における雌ねじ部25に螺合し、管継手5を介してジョイント具1の第一接続部22と導電路管2を構成する導電路管本体4とを接続する。
【0066】
しかる後、
図7に図示するように、第二接続部23を、配線ボックス3の接続管部10における挿入部19に挿入する。ここで、作業者は、中心軸配置確認手段28にて第一接続部22の中心軸X1が第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離れて配置されている(
図7においては、中心軸配置確認手段28が上下方向における上側に配置されている)ことを確認しながら挿入部19に第二接続部23を挿入する。
【0067】
このように、本実施例によれば、第一接続部22の中心軸X1が第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離れて配置されていることを確認しながら挿入部19に第二接続部23を挿入することができることから、
図7に図示する仮想線Cで囲むように、導電路管2を構成する導電路管本体4や管継手5が設置面30に干渉しないように導電路管2と配線ボックス3とのジョイントを行うことができる。
【0068】
また、本実施例によれば、中心軸配置確認手段28が第一接続部22の外周面27に形成されていることから、作業者は、中心軸配置確認手段28を目視により容易に認識することができる。また、中心軸配置確認手段28が、この中心軸配置確認手段28と第二接続部23の中心軸X2とで第一接続部22の中心軸X1を挟むような配置となるように設けられることから、導電路管2と配線ボックス3とをジョイントする際、中心軸配置確認手段28を第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離して配置することにより、
図7に図示するように、中心軸配置確認手段28と第二接続部23の中心軸X2とに挟まれた第一接続部22の中心軸X1を第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離して配置することができる。このように、作業者は、導電路管2と配線ボックス3とをジョイントする際、第一接続部22の中心軸X1が第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離れていることを容易且つ確実に確認することができる。
【0069】
挿入部19に第二接続部23を挿入した後、
図7に図示するビス21をビス螺合孔20に螺合する。第二接続部23を、ビス21にて挿入部19内に固定し、接続管部10と接続する。これにより、導電路管2と配線ボックス3とがジョイント具1にてジョイントされた状態となる。
【0070】
なお、導電路の配線は、特に図示しないが、例えば、接続管部10bと、接続管部10cとから挿通した導電路を、配線空間15内で集約して配線方向を変換し、接続管部10aに挿通するような配線状態を採用することができる(一例であるものとする)。
【0071】
以上により、ジョイント具1にて導電路管2と配線ボックス3とをジョイントする作業が完了する。
【0072】
つぎに、ジョイント具1にて導電路管2と配線ボックス3とをジョイントした状態における作用について説明する。
【0073】
図7に図示するように、第一接続部22の中心軸X1及び第二接続部23の中心軸X2に直交する方向(
図7においては上下方向)において、第一接続部22の中心軸X1を第二接続部23の中心軸X2より設置面30から離して配置されていることから、第一接続部22に導電路管2の管継手5が接続されるとともに配線ボックス3の接続管部10に第二接続部23が接続された状態において、
図7に図示する仮想線Cで囲むように、導電路管2を構成する導電路管本体4や管継手5が設置面30に干渉することが無い。
【0074】
これに対し、
図8に図示する比較例では、本発明に係るジョイント具1を用いることなく、導電路管202の管継手205が配線ボックス203の接続管部210に接続されている。ここで、接続管部210は、設置面300側(配線ボックス本体209の底壁213側)に配置されている。また、管継手205は、この外径が接続管部210の径よりも大きく形成されている。このような管継手205と接続管部210とをジョイントすると、
図8に図示する仮想線Dで囲むように、管継手205が設置面300に干渉してしまう。このように、管継手205が設置面300に干渉してしまうことにより、
図8に図示するように、配線ボックス203が設置面300から浮き上がってしまい、配線ボックス本体209の底壁213と設置面300との間に隙間200が生じてしまう。
【0075】
以上より、本発明に係るジョイント具1にて導電路管2と配線ボックス3とをジョイントすることにより、導電路管2を構成する導電路管本体4や管継手5が設置面30に干渉することが無いため、配線ボックス3が設置面30から浮き上がることが無い。
【0076】
つぎに、本実施例の効果について説明する。
以上、
図1-
図8を参照しながら説明してきたように、本実施例によれば、設置面への導電路管の干渉を無くすことにより、配線ボックス3(接続対象物)が設置面30から浮き上がることを防止することができるという効果を奏する。また、本実施例によれば、配線ボックス3が設置面30から浮き上がることを防止することができることから、配線ボックス3を設置面30に確実に固定することができるという効果を奏する。また、本実施例によれば、設置面30に導電路管2が干渉しないように導電路管2と配線ボックス3とをジョイントする際の作業性を向上することができるようになるという効果を奏する。また、本実施例によれば、ジョイント具1に導電路を挿通する際の導電路の損傷を防止することができるようになるという効果を奏する。また、本実施例によれば、ジョイント具1に導電路を挿通する際の作業性を向上することができるようになるという効果を奏する。
【0077】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0078】
上記説明では、実施例は、導電路管2を構成する導電路管本体4と管継手5とは、合成樹脂材料からなるものを採用しているが、これに限らず、金属材料からなるものを採用してもよいものとする。
【符号の説明】
【0079】
1…ジョイント具、 2…導電路管、 3…配線ボックス(接続対象物)、 4…導電路管本体、 4a…山部、 4b…谷部、 5…管継手、 6…管継手本体、 7…締め付け部、 8…雄ねじ部、 9…配線ボックス本体、 10(10a~10c)…接続管部、 11…蓋部、 12…周壁、 13…底壁、 14…開口部、 15…配線空間、 16…ねじ螺合部、 17…ねじ螺合孔、 18…ねじ、 19…挿入部、 20…ビス螺合孔、 21…ビス、 22…第一接続部、 23…第二接続部、 24…内周面、 25…雌ねじ部、 26…テーパー部(導電路損傷防止手段)、 27…外周面、 28…中心軸配置確認手段、 30…設置面、 L…線分、 X1…第一接続部の中心軸、 X2…第二接続部の中心軸