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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】照明装置用の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/40 20200101AFI20220119BHJP
   H05B 47/14 20200101ALI20220119BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20220119BHJP
【FI】
H05B45/40
H05B47/14
H05B47/155
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016252367
(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2018106929
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390025737
【氏名又は名称】株式会社新陽社
(73)【特許権者】
【識別番号】516131843
【氏名又は名称】ANP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 潤一
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-179279(JP,A)
【文献】特開2015-167213(JP,A)
【文献】特開2016-046228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極に、第1電流路と、第2電流路とがそれぞれ接続されており、
前記第1電流路では、常時点灯するLEDが直列に設けられており、当該LEDから電圧下位方向に向かって、第3電流路と第4電流路の2つに分岐し、
前記第3電流路では、直並列の接続が変換する第1のLEDが直列に設けられており、電圧下位方向に向かって、当該第1のLEDと、当該第1のLEDの直並列の接続を変換させるFETが直列に接続されて設けられ、
前記第4電流路では、直並列の接続が変換する第2のLEDの直並列の接続を変換させるFETが直列に設けられており、電圧下位方向に向かって、当該FETと、前記第2のLEDが直列に接続されて設けられ、
前記第3電流路に係る前記FETと、前記第4電流路に係る前記第2のLEDは接続され、2つに分岐していた前記第1電流路は1つに戻り、
1つに戻った前記第1電流路では、前記第1のLED及び前記第2のLEDに流す電流の量を決定する抵抗素子が直列に設けられると共に、1つに戻った前記第1電流路は、前記第2電流路に直列に設けられ、前記第1のLED及び前記第2のLEDに流す電流の量を決定するトランジスタと第5電流路によって接続され、
前記抵抗素子と、前記トランジスタは前記直流電源の負極に接続され、
前記第3電流路に係る前記FET及び前記第4電流路に係る前記FETは、前記トランジスタと接続され、
前記第3電流路に係る前記第1のLEDの合計インピーダンスと、前記第4電流路に係る前記第2のLEDの合計インピーダンスは等しく、
前記第3電流路に係る前記FETの合計インピーダンスと、前記第4電流路に係る前記FETの合計インピーダンスは等しいことを特徴とする、照明装置用の制御回路。
【請求項2】
前記第3電流路に係る前記LEDと前記FETの間と、前記第4電流路に係る前記FETと前記LEDの間を接続する第6電流路が更に設けられ、
前記第6電流路では、半導体整流素子が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の照明装置用の制御回路。
【請求項3】
前記第3電流路に係る前記第1のLED及び前記第4電流路に係る前記第2のLEDの数が、各1個であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明装置用の制御回路。
【請求項4】
1つに戻った前記第1電流路に更に、常時点灯するLEDが直列に設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の照明装置用の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源に直流電圧を用いる、直流を給電するシステムに特化した照明装置において、幅広い電源電圧に対応を可能な制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のLED(発光ダイオード)技術の進化に伴い、LED照明装置は、様々なものが使用されている。そのため、LED照明装置には、小型化、高効率化、低価格化等が要求されている。
【0003】
その中で、直流電圧を電源とするLED照明装置の電源供給元は、一つとは限らず、近年の省エネ意識の高まりにより、再生可能エネルギーである太陽光発電電力や、各種バッテリー電力等、多岐にわたる。
【0004】
これらの電源から出力される直流電圧の違いに対しては、電源変換ユニットを用いることで対応していた。しかし、電源変換ユニットを用いる構成は、変換によるロスが発生し、効率が低下する問題があった。
【0005】
また、電源変換ユニットの多くは、特定の周波数でスイッチングして、出力を一定に保つ構成である。この様な電源変換ユニットは、スイッチング動作により、電磁ノイズが発生するという大きなデメリットがあった。
【0006】
一方、電源変換ユニットを使用しない構成では、一定の範囲の直流電圧に対しては、LEDに流れる電流を一定に保つことは可能であるが、その範囲外の直流電圧の僅かな変動に対して、LEDに流れる電流が大きく変化してしまう。そのため、LED照明から出力される光の質が低下したり、LEDの寿命が短縮される。
【0007】
また、所定の値以下に、直流電圧が低下すると、LEDを点灯させるために必要な順(方向)電圧VFが足りなくなり、LEDが消灯してしまう。そのため、広範囲の電源電圧に対応させることができないという問題があった。
【0008】
従って、電源変換ユニットを用いることなく、幅広い電源電圧に対応可能なLED照明装置用の制御回路が望まれている。特許文献1及び2では、電源電圧の増減に合わせてLEDの点灯と消灯を制御することによって幅広い電源電圧に対応しながらLEDに流れる電流を一定に保つ構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-179279号公報
【文献】特開2016-46228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの特許文献1及び2の構成では、電源電圧が低下すると、一定電流を保ちながら電圧下位から上位へ順にLEDが消灯していくため、周囲の者が電源電圧の変動に気づいてしまうという問題があった。
【0011】
そこで、この発明は、上述の課題を解決するものとして、電源電圧の変動に応じて、LEDの直並列の接続を自動的に変換することにより、幅広い電源電圧の範囲に対応可能な照明装置用の制御回路を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、
直流電源の正極に、第1電流路と、第2電流路とがそれぞれ接続されており、
前記第1電流路では、常時点灯するLEDが直列に設けられており、当該LEDから電圧下位方向に向かって、第3電流路と第4電流路の2つに分岐し、
前記第3電流路では、直並列の接続が変換する第1のLEDが直列に設けられており、電圧下位方向に向かって、当該第1のLEDと、当該第1のLEDの直並列の接続を変換させるFETが直列に接続されて設けられ、
前記第4電流路では、直並列の接続が変換する第2のLEDの直並列の接続を変換させるFETが直列に設けられており、電圧下位方向に向かって、当該FETと、前記第2のLEDが直列に接続されて設けられ、
前記第3電流路に係る前記FETと、前記第4電流路に係る前記第2のLEDは接続され、2つに分岐していた前記第1電流路は1つに戻り、
1つに戻った前記第1電流路では、前記第1のLED及び前記第2のLEDに流す電流の量を決定する抵抗素子が直列に設けられると共に、1つに戻った前記第1電流路は、前記第2電流路に直列に設けられ、前記第1のLED及び前記第2のLEDに流す電流の量を決定するトランジスタと第5電流路によって接続され、
前記抵抗素子と、前記トランジスタは前記直流電源の負極に接続され、
前記第3電流路に係る前記FET及び前記第4電流路に係る前記FETは、前記トランジスタと接続され、
前記第3電流路に係る前記第1のLEDの合計インピーダンスと、前記第4電流路に係る前記第2のLEDの合計インピーダンスは等しく、
前記第3電流路に係る前記FETの合計インピーダンスと、前記第4電流路に係る前記FETの合計インピーダンスは等しい、照明装置用の制御回路とした。
また、請求項2の発明は、
前記第3電流路に係る前記LEDと前記FETの間と、前記第4電流路に係る前記FETと前記LEDの間を接続する第6電流路が更に設けられ、
前記第6電流路では、半導体整流素子が設けられている、請求項1に記載の照明装置用の制御回路とした。
【0014】
また、請求項3の発明は、
前記第3電流路に係る前記第1のLED及び前記第4電流路に係る前記第2のLEDの数が、各1個である、請求項1又は2に記載の照明装置用の制御回路とした。
【0015】
また、請求項4の発明は、
1つに戻った前記第1電流路に更に、常時点灯するLEDが直列に設けられている、請求項1~3のいずれかに記載の照明装置用の制御回路とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1~4の発明によれば、電源電圧の変動に応じて、LEDの直並列の接続を自動的に変換することにより、電源変換ユニットを用いることなく、幅広い電源電圧の範囲に対応可能である。
【0017】
また、電源変換ユニットを使用しない構成であるため、照明装置の小型化、高効率化、低価格化が実現できる。また、電磁ノイズが発生せず、病院や精密機械室等の電磁ノイズを嫌う環境でも使用可能である。さらに照明装置の故障リスクも低減できる。
【0018】
さらに、電源電圧の変動に応じて、LEDの直並列の接続を自動的に変換する構成であるため、ほとんどLEDが消灯することはなく、周囲の者が電源電圧の変動に気づきにくい。
【0019】
また特に、請求項3の発明のように、前記第3電流路及び前記第4電流路に、前記LED直並列変換部として設けられているLEDの数が各1個の場合には、当該1個分の順(方向)電圧に相当する電源電圧の変動に応じて、直並列の接続が変換され、分解能・感度が高い。
【0020】
また特に、請求項4の発明によれば、電源電圧が不足した際に、直列から並列に変換されるLED直並列変換部に係るLED(=流れる電流が半減する箇所)を分散できるため、照明装置の明るさの隔たりを少なくでき、便宜である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の概念構成図である。
図2】この発明の実施の形態例1の構成回路図である。
図3】この発明の実施の形態例1の構成回路図である。
図4】この発明の実施の形態例1の構成回路図である。
図5】この発明の実施の形態例1の構成回路図である。
図6】この発明の他の実施の形態例の構成回路図である。
図7】この発明の他の実施の形態例の構成回路図である。
図8】この発明の他の実施の形態例の構成回路図である。
図9】この発明の他の実施の形態例の構成回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、この発明の概念構成図である図1に基づいて説明する。この発明の照明装置用の制御回路は、直流電源50の電圧の印加によりLEDが常時点灯するLED常時点灯部51を設け、また、直流電源50の電圧値の変動によってLEDの直並列の接続が変換されるLED直並列変換部52を設け、また、電圧値の変動によって、LED直並列変換部52に係るLEDの直並列の接続を自動的に変換させるLED直並列制御部53を設け、さらに、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52に流す電流値を決定するLED電流値決定部54を設けた構成となっている。また、各部は電流路55を通じて接続されている。
【0023】
この照明装置用の制御回路では、直流電源50から印加される直流電圧によりLED常時点灯部51及びLED直並列変換部52に係るLEDは点灯しているが、直流電源50の変動等により直流電圧が変動すると、LED直並列制御部53が動作し、LED直並列変換部52の直並列の接続が変換される。従って、この制御回路を設けた照明装置では、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52に係る全てのLEDが点灯状態となり、周囲の者が電源電圧の変動に気付きにくい。
【0024】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1の照明装置用の制御回路Aの構成を図2に基づいて説明する。
【0025】
図2に示すように、直流電源1の正極に、電流路2(第1電流路の一例)と、電流路3(第2電流路の一例)とがそれぞれ接続されている。
【0026】
電流路2では、LEDから成る半導体発光素子LED1~3が同一極性方向に直列に接続されて設けられており、半導体発光素子LED3のカソード側から電圧下位方向に向かって、電流路21(第3電流路の一例)と電流路22(第4電流路の一例)の2つに分岐している。
【0027】
電流路21では、LEDから成る半導体発光素子LED4~6が同一極性方向に直列に接続されて設けられており、半導体発光素子LED6のカソードと、半導体制御素子FET(電界効果トランジスタ)2のドレインが直列に接続されている。また、電流路22では、半導体制御素子FET1のソースが、同一極性方向に直列に接続されて設けられている、LEDから成る半導体発光素子LED7~9のうち、半導体発光素子LED7のアノードと直列に接続されている。
【0028】
さらに、半導体発光素子LED6のカソードと半導体制御素子FET2のドレイン間の電流路21と、半導体制御素子FET1のソースと半導体発光素子LED7のアノード間の電流路22とを結ぶ電流路4に、ダイオードから成る半導体整流素子D1が設けられている。詳しくは、半導体整流素子D1のアノードが、半導体発光素子LED6のカソードと半導体制御素子FET2のドレイン間の電流路21に接続され、半導体整流素子D1のカソードが、半導体制御素子FET1のソースと半導体発光素子LED7のアノード間の電流路22に接続されている。この半導体整流素子D1は、順方向にしか電流を流さない特性を活かして、半導体制御素子FET1がONした際に、半導体制御素子FET1のソースから半導体制御素子FET2のドレインに電流が流れないように、電流を遮断する役割を果たす。このように半導体整流素子D1が設けられていることによって、半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2がONした際に、電流路21と電流路22にほぼ等しく電流が流れることになる。
【0029】
半導体制御素子FET2のソースと半導体発光素子LED9のカソードは接続され、電流路21と電流路22との2つに分岐していた電流路2は、ここで1つの電流路2に戻り、これより下の電圧下位方向には、抵抗素子R3が設けられている。
【0030】
一方、電流路3では、抵抗素子R4と半導体制御素子TR(トランジスタ)のコレクタが直列に接続されて設けられている。
【0031】
また、電流路2の抵抗素子R3と、電流路3の半導体制御素子TRのエミッタが直流電源1の負極(≒GND)に夫々接続されている。
【0032】
半導体制御素子FET1のゲートは、半導体制御素子TRのコレクタと、抵抗素子R1を介して接続され、半導体制御素子FET2のゲートは、半導体制御素子TRのコレクタと、抵抗素子R2を介して接続されている。また、半導体制御素子FET1のソースとゲート間には、半導体定電圧素子ZD1が設けられ、半導体制御素子FET2のソースとゲート間には、半導体定電圧素子ZD2が設けられている。これら半導体定電圧素子ZD1、ZD2は、ツェナーダイオードから成り、電流の変化に対し電圧が一定になるというツェナーダイオードの特性を活かして、ソースとゲート間に加わる電圧を制限する。そのため、サージ電流や静電気が発生した場合等に、半導体制御素子FET1、FET2を保護する役割を果たす。
【0033】
また、半導体制御素子FET2のソースと半導体発光素子LED9のカソードとの接続点と、抵抗素子R3との間と、半導体制御素子TRのベースとが接続された電流路5(第5電流路の一例)に、抵抗素子R3に近い順に、ツェナーダイオードから成る半導体定電圧素子ZD3及び抵抗素子R5が直列に接続されて設けられている。このように、印加される電圧に関わらず出力電圧が一定になる半導体定電圧素子ZD3が設けられていることによって、抵抗素子R3に印加される電圧を設定することができる。また、このように抵抗素子R5が設けられていることによって、半導体制御素子TRのベースに流れる電流を一定値以下に制限することができる。また、電流路5の半導体定電圧素子ZD3と抵抗素子R5との間と、抵抗素子R3と半導体制御素子TRとの間とを結ぶ電流路6に抵抗素子R6が設けられ、抵抗素子R6は直流電源1の負極(≒GND)に接続されている。
【0034】
次に、図1で説明したこの発明の概念構成と、図2で説明した照明装置用の制御回路Aの回路構成との対応関係について説明する。図1の直流電源50は、図2の直流電源1と対応する。また、図1のLED常時点灯部51は、図2の半導体発光素子LED1~3が対応する。また、図1のLED直並列変換部52は、図2の半導体発光素子LED4~6及び半導体発光素子LED7~9が対応する。また、図1のLED直並列制御部53は、図2の半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2が対応する。さらに、図1のLED電流値決定部54は、図2の半導体制御素子TR、半導体定電圧素子ZD3、抵抗素子R3が対応する。また、図1の電流路55は、図2の電流路2~6、電流路21及び電流路22が対応する。
【0035】
なお、LED常時点灯部51に相当する図2の半導体発光素子LED1~3は、半導体制御素子FET1を動作させるためのものである。詳しく説明する。半導体制御素子FET1のゲートの電位が、ソースの電位より高くないと、ゲートに電圧を印加しても、半導体制御素子FET1がONしないため、ドレインとソース間で電流が流れない。そのため、LED常時点灯部51を設けることによって、半導体制御素子FET1のソースの電位をゲートの電位に比して、ゲートとソース間閾値電圧分以上低下させ、半導体制御素子FET1が動作するようにする。
【0036】
また、LED直並列変換部52に相当する図2の半導体発光素子LED4~6及び半導体発光素子LED7~9は、2つのブロックに分けられるが、直流電圧の低下に伴い並列回路に接続が変換され、電流路が分かれた際に、各電流路に流れる電流の量を等しくするため、ブロック間相互の合計のインピーダンスが等しくなるように構成する。ブロック間相互の合計のインピーダンスが異なると、並列回路に接続が変換された際に、電流が均等に分かれなくなり、一方のブロックの半導体発光素子LEDが消灯することも考えられる。
【0037】
さらに、LED直並列制御部53に相当する図2の半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2についても、直流電圧の低下に伴い並列回路に接続が変換された際に流れる電流を等しくするため、相互のインピーダンスが等しくなるように構成する。
【0038】
また、LED電流値決定部54について、以下詳しく説明する。LED電流値決定部54が決定する「LED電流値」は、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52を流れる電流値である。そして、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52を流れた電流は、その殆どが抵抗素子R3へ流れる。従って、抵抗素子R3を流れる電流が、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52に流れる電流ということになる。抵抗素子R3は、抵抗値が変わらない固定抵抗器であるため、抵抗素子R3に印加される電圧(以降、「VR3」という)が一定であれば、抵抗素子R3を流れる電流も一定になる。
【0039】
VR3は、電流路5のZD3のツェナー電圧と、抵抗素子R5に印加される電圧(以降、「VR5」という)と、TRのベース・エミッタ間電圧(一般的には0.6V)で構成されるが、抵抗素子R5を流れる電流(=TRのベース電流)は小さいため、VR5は無視してよい大きさである。従って、VR3は、主としてTRのベース・エミッタ間電圧とZD3のツェナー電圧の合算値Bで決まる。一方で、VR3は、直流電源50の印加する電圧から、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52に印加された電圧を減算した減算値Cでも決まる。VR3が、合算値Bで決まるか、減算値Cで決まるかは、LED直並列変換部52に係る、半導体発光素子LED4~6及び半導体発光素子LED7~9が直列で接続されるか、並列で接続されるかということと、直流電源50によって印加される電圧値による。このことについては、以下で説明する照明装置用の制御回路Aの動作と併せて説明する。
【0040】
次に、照明装置用の制御回路Aの動作について図2~5を用いて説明する。直流電源1から十分な電圧が印加されている時は(例えば、29.3V以上)、半導体制御素子TRに十分なベース電流が流れ、半導体制御素子TRがONし、半導体制御素子TRのコレクタ電圧と、半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2のゲート電圧が0Vで等しくなるため、半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2はONしない。そのため、図3に示すように、半導体発光素子LED1~3を流れた電流は、電流路21の半導体発光素子LED4~6、半導体整流素子D1、電流路22の半導体発光素子LED7~9、抵抗素子R3を流れる。つまり、半導体発光素子LED4~6と半導体発光素子LED7~9は、直列に接続されたことになる。
【0041】
29.3Vより直流電源1から印加される電圧が大きくなると、減算値CによってVR3が決まり、直流電源1から印加される電圧の上昇とともに、VR3の値も上昇するので、LED電流値も増加する。
【0042】
直流電源1から印加される電圧が29.3Vの時は、VR3は、合算値B及び減算値Cのいずれかで決まり、いずれの値もVR3は3.56Vになる。
【0043】
直流電源1からの電圧が減少してくると(例えば、27.4V)、半導体制御素子TRのベース電流が少なくなり、半導体制御素子TRのコレクタ電流も少なくなる。そして、半導体制御素子TRがONしているものの、半導体制御素子TRのコレクタ電圧と、半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2のゲート電圧が等しくなる電圧値が上昇して、半導体制御素子FET2のソース電圧よりも高くなり、半導体制御素子FET2のゲート・ソース間閾値電圧を超えると、半導体制御素子FET2がONする。そのため、図4に示すように、半導体発光素子LED1~3を流れた電流は、電流路21の半導体発光素子LED4~6、半導体制御素子FET2、抵抗素子R3に流れる。一方、電流路22の半導体発光素子LED7~9は消灯する。
【0044】
29.3Vより直流電源1から印加される電圧が小さくなり、図4に示すように、半導体発光素子LED1~3を流れた電流は、電流路21の半導体発光素子LED4~6、半導体制御素子FET2、抵抗素子R3に流れる一方、電流路22の半導体発光素子LED7~9は消灯するようになると、合算値BによってVR3が決まり、VR3は3.56Vになる。
【0045】
そして、直流電源1からの電圧が不足した状態では(例えば、19.9V以下)、半導体制御素子TRのベース電流がさらに少なくなり、半導体制御素子TRのコレクタ電流も少なくなる。そして、半導体制御素子TRがONするものの、半導体制御素子TRのコレクタ電圧と、半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2のゲート電圧が等しくなる電圧値がさらに上昇して、半導体制御素子FET1のソース電圧よりも高くなり、半導体制御素子FET1のゲート・ソース間閾値電圧を超えると、半導体制御素子FET1がONする。又は、半導体制御素子TRがOFFして、半導体制御素子FET1がONする。そのため、図5に示すように、半導体発光素子LED1~3を流れた電流は、電流路21の半導体発光素子LED4~6と半導体制御素子FET2を流れるルートと、半導体制御素子FET1と半導体発光素子LED7~9を流れるルートに分かれる。つまり、半導体発光素子LED4~6と半導体発光素子LED7~9は、並列に接続されたことになる。なお、並列に接続された電流路21の半導体発光素子LED4~6及び半導体制御素子FET2の合計インピーダンスと、電流路22の半導体制御素子FET1及び半導体発光素子LED7~9の合計インピーダンスが等しいため、半導体発光素子LED4~6と半導体発光素子LED7~9を流れる電流の量は等しくなる。
【0046】
直流電源1から印加される電圧が19.9Vの時は、TRがOFFしているため、VR3は、減算値Cによって決まり、VR3は3.30Vとなる。半導体制御素子FET1と半導体制御素子FET2は完全にONしているので、半導体制御素子FET1及び半導体制御素子FET2のドレイン・ソース間電圧は約0Vとなり、減算値Cが適用できるからである。
【0047】
直流電源1から印加される電圧が19.9Vより小さくなると、VR3は、減算値Cによって決まり、LED常時点灯部51及びLED直並列変換部52に印加される電圧はあまり変わらないので、直流電源1から印加される電圧の減少分が、そのままVR3の減少分となり、LED電流値も減少する。
【0048】
なお、図2の照明装置用の制御回路Aのように、LED常時点灯部51に係る半導体発光素子LEDの数(半導体発光素子LED1~3の3個)と、LED直並列変換部52に係る、並列回路に接続が変換され、電流路が分かれた際の各ブロックの半導体発光素子LEDの数(半導体発光素子LED4~6、あるいは半導体発光素子LED7~9の3個)が1:1の割合の場合、直流電源1からの電圧が約2/3になると(直流電源1からの電圧が約1/3減少すると)、直列回路から並列回路に接続が変換される。
【0049】
また、上述した本実施形態では、照明装置用の制御回路Aの動作について、直流電源1からの電圧が減少・不足していく場合を例として説明した。しかし、照明装置用の制御回路Aは、直流電源1からの電圧が減少・不足していく場合のみに対応可能な構成ではなく、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDの直並列の接続を変換することにより、直流電源1によって印加される、幅広い電圧の範囲に対応可能な構成である。そのため、例えば、直流電源1からの電圧が不足し、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDが並列に接続されている状態から、電圧が増加し、十分な電圧が印加されている状態に移行した場合には、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDの接続は並列から直列に変換される。
【0050】
このような構成であることによって、直流電源50の電圧の変動に応じて、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDの直並列の接続を自動的に変換することにより、電源変換ユニットを用いることなく、幅広い電源電圧の範囲に対応可能である。また、直流電源50の電圧の変動に応じて、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDの直並列の接続を自動的に変換することにより、直流電源50から供給される電流の量がほぼ一定となる。
【0051】
また、電源変換ユニットを使用しない構成であるため、照明装置の小型化、高効率化、低価格化が実現できる。また、電磁ノイズが発生せず、病院や精密機械室等の電磁ノイズを嫌う環境でも使用可能である。さらに照明装置の故障リスクも低減できる。
【0052】
さらに、直流電源50の電圧の変動に応じて、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDの直並列の接続を自動的に変換する構成であるため、制御回路内のほとんどのLEDが消灯することはなく、周囲の者が電源電圧の変動に気づきにくい。
【0053】
(変形例)
本実施の形態例1では、LED直並列変換部52として、半導体発光素子LED4~6に係るブロックと、半導体発光素子LED7~9に係るブロックを2段に重ねる構成を示したが、この構成に限定されるものではない。LED常時点灯部51を設け、制御回路内の半導体制御素子FETの中で、最も電位が高い半導体制御素子FET1がONできれば、LED直並列変換部52内の半導体発光素子LEDに係るブロックは何段も直列に重ねることが可能である。例えば図6のように、LED直並列変換部52として、半導体発光素子LED4に係るブロック、半導体発光素子LED5に係るブロック、半導体発光素子LED6に係るブロック、半導体発光素子LED7に係るブロックを4段に重ねる構成としても良い。LED直並列変換部52内の半導体発光素子LEDに係るブロックを何段も直列に重ねることによって、直流電源電圧変動に対応可能な範囲が広がり、電源電圧の大きな変動に対して、対応できるようになり、便宜である。
【0054】
また、本実施の形態例1では、LED直並列変換部52内の半導体発光素子LEDに係る各ブロックにおいて、半導体発光素子LED4~6と半導体発光素子LED7~9というように3個のLEDを設ける構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、LED直並列変換部52内の各ブロックの半導体発光素子LEDの数を何個にしても良い。例えば図6のように、LED直並列変換部52内の各ブロックの半導体発光素子LEDの数を少数(例えば、1個)にしても良い。LED直並列変換部52内の各ブロックの半導体発光素子LEDの点灯に必要な順(方向)電圧値の合計が、直並列の接続が変換される電圧値となる。そのため、LED直並列変換部52内の各ブロックの半導体発光素子LEDの数が少数の場合には、半導体発光素子LED少数個分の順(方向)電圧に相当する電源電圧の変動に応じて、直並列の接続が変換され、分解能・感度が高い。一方、例えば、LED直並列変換部52内の各ブロックの半導体発光素子LEDの数が多数の場合には、半導体発光素子LED多数個分の順(方向)電圧に相当する電源電圧の変動に応じて、直並列の接続が変換され、電源電圧の大きな変化に合わせて、直並列の接続が変換されることとなる。
【0055】
更に、LED直並列変換部52内の各ブロックの半導体発光素子LEDの数が異なる構成としても良い。例えば図7のように、LED直並列変換部52内の各ブロックにおける半導体発光素子LEDの数を、1個(半導体発光素子LED4、5)、3個(半導体発光素子LED6~8、9~11)、2個(半導体発光素子LED12~13、14~15)としても良い。但し、電源電圧の不足に伴い、接続が直列から並列に変換され、電流路が分かれた際に、対応関係となる半導体発光素子LED(例えば、半導体発光素子LED4と5)については、インピーダンスを同一にするため、同じ数にする必要がある。
【0056】
本実施の形態例1では、LED常時点灯部51として半導体発光素子LED1~3を、半導体制御素子FET1がONできるように、半導体制御素子FET1よりも高い電位に設ける構成を示したが、この構成に限定されるものはなく、この位置のLED常時点灯部51以外に、別途1又は複数のLED常時点灯部51を設ける構成としても良い。例えば図8に示すように、半導体発光素子LED4~9からなるLED直並列変換部52と半導体発光素子LED12~15からなるLED直並列変換部52との間に、LED常時点灯部51として半導体発光素子LED10及び11を設ける構成としても良い。電源電圧が不足した際に、直列から並列に変換される箇所(=流れる電流が半減する箇所)を分散でき、照明装置の明るさの隔たりを少なくできるため、便宜である。
【0057】
本実施の形態例1では、電源電圧の不足に伴い、接続が直列から並列に変換された際に、電流路が2つに分かれる2並列の構成を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば図9に示すように、電流路が4つに分かれる4並列の構成としても良いし、8並列、16並列、32並列の構成としても良い。より小さな電源電圧でも、LED直並列変換部52に係る半導体発光素子LEDを点灯できるようになるため、便宜である。
【符号の説明】
【0058】
1:直流電源、2~6:電流路、
LED1~15:半導体発光素子、FET1~6:半導体制御素子、
D1~3:半導体整流素子、R1~10:抵抗素子、
TR:半導体制御素子、
ZD1~7:半導体定電圧素子、
50:直流電源、51:LED常時点灯部、
52:LED直並列変換部、53:LED直並列制御部、
54:LED電流値決定部、55:電流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9