(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】多層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/08 20060101AFI20220119BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220119BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B32B27/08
B32B27/30 B
B32B27/32 Z
B65D75/34
(21)【出願番号】P 2017065966
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2020-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】奥 慎太郎
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174251(JP,A)
【文献】特開平08-098871(JP,A)
【文献】特開2004-136662(JP,A)
【文献】特開2015-120267(JP,A)
【文献】特開平10-157033(JP,A)
【文献】特開2001-030425(JP,A)
【文献】プラスチックの見分け方,トピックス,一般財団法人 食品環境検査協会,2015年03月31日,p.1-3,https://www.jiafe.or.jp/merumaga/topics/20150331.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
67/00-79/02
81/18-81/30
81/38
85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを95質量%以上含む未延伸の第1フィルム層と、
スチレン-エチレン・ブタジエン-スチレンブロック共重合体を95質量%以上含む未延伸の第2フィルム層と、が交互に繰り返して積層された構成を有するバリア層を備えた多層フィルムであって、
前記第1フィルム層の1層当りの平均厚さが、500nm未満であり、
前記バリア層中の前記第1フィルム層の層数が、200~5000であり、
前記バリア層の厚さが10~500μmであり、
前記多層フィルムの面衝撃による厚さ当たりの貫通エネルギーが5.0~18.0J/mmである、多層フィルム。
【請求項2】
前記多層フィルムが、さらに一対の未延伸の樹脂層を備え、
前記バリア層が、前記一対の未延伸の樹脂層の間に、これら樹脂層に隣接して設けられている、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記一対の未延伸の樹脂層が、いずれも前記ポリプロピレンを含む樹脂層である、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記一対の未延伸の樹脂層の合計の厚さが、5~125μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の多層フィルムを備えた、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等は、販売の際に、包装袋や包装容器等の包装体よって包装されるのが一般的である。このような包装体には、内容物の保護等のため、様々な性能が要求されている。そのため、一部の包装体では、複合化(多層化)された多層フィルムが用いられている。
【0003】
包装体に用いられる多層フィルムは、包装体に内容物の保護等の機能を付与するために、耐衝撃性やガスバリア性が要求される。例えば、特許文献1には、耐衝撃性やガスバリア性を向上させる手段として、高分子材料で構成される多層フィルムを延伸することで、多層フィルム中の結晶を配向させる方法が開示されている。また、特許文献2には、実質的に延伸されていない多層フィルムを用いる包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007―283569号公報
【文献】特開2015-98333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、包装体の用途によっては、内容物を包装後の包装体には、透明度が高いこと、換言すると、ヘーズが小さいことが望まれる場合がある。また、内容物を保護するため、高い耐衝撃性を望まれる場合がある。
これに対して、特許文献1で開示されている包装体では、十分に小さいヘーズを実現できるかは定かではない。また、特許文献2に開示されている包装体では、層数が5~30であり、当該多層フィルムが被包装物の外延に沿って、伸展しやすく美麗に仕上がることの効果についての開示はあるが、十分な耐衝撃性を実現できるかは定かではない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性に優れた多層フィルムと、これを用いた包装体を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].ポリプロピレンを95質量%以上含む未延伸の第1フィルム層と、スチレン-エチレン・ブタジエン-スチレンブロック共重合体を95質量%以上含む未延伸の第2フィルム層と、が交互に繰り返して積層された構成を有するバリア層を備えた多層フィルムであって、前記第1フィルム層の1層当りの平均厚さが、500nm未満であり、前記バリア層中の前記第1フィルム層の層数が、200~5000であり、前記バリア層の厚さが10~500μmであり、前記多層フィルムの面衝撃による厚さ当たりの貫通エネルギーが5.0~18.0J/mmである、多層フィルム。
[2].前記多層フィルムが、さらに一対の未延伸の樹脂層を備え、前記バリア層が、前記未延伸の一対の樹脂層の間に、これら樹脂層に隣接して設けられている、[1]に記載の多層フィルム。
[3].前記未延伸の一対の樹脂層が、ポリプロピレンを含む樹脂層である、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4].前記未延伸の一対の樹脂層の合計の厚さが、5~125μmである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[5].[1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルムを備えた、包装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐衝撃性に優れた多層フィルムと、これを用いた包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の包装体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す包装体のI-I線における断面図である。
【
図4】本発明の包装体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図5】(a)は実施例1の多層フィルムと比較例1~3の単層フィルム又は多層フィルムの耐衝撃性試験の結果、(b)は貫通エネルギーをそれぞれ示す。
【
図6】(a)は実施例2の多層フィルムと比較例4~6の単層フィルム又は多層フィルムの耐衝撃性試験の結果、(b)は貫通エネルギーをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<多層フィルム>>
本発明の多層フィルムは、ポリプロピレンを含む未延伸の第1フィルム層と、ポリスチレン系樹脂を含む未延伸の第2フィルム層と、が交互に繰り返して積層された構成を有するバリア層を備えた多層フィルムであって、前記第1フィルム層の1層当りの平均厚さが、500nm未満であり、前記バリア層中の前記第1フィルム層の層数が、200~5000であり、前記多層フィルムの面衝撃による厚さ当たりの貫通エネルギーが5.0~18.0J/mmとなっている。
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0011】
図1は、本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す多層フィルム1は、一対の未延伸の樹脂層、すなわち第1樹脂層12及び第2樹脂層13を備え、第1樹脂層12と第2樹脂層13との間に、第1樹脂層12と第2樹脂層13とに隣接して、バリア層11を備えて、構成されている。
【0012】
<バリア層>
バリア層11は、第1フィルム層111と、第2フィルム層112と、が交互に繰り返して積層された構成を有する。
【0013】
[第1フィルム層]
第1フィルム層111は、未延伸のフィルム層であり、ポリプロピレンを含む。
第1フィルム層111は、ポリプロピレンのみを含んでいてもよいし、ポリプロピレン以外の成分を含んでいてもよい(すなわち、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外の成分と、からなるものでもよい)。
【0014】
第1フィルム層111の、ポリプロピレン以外の成分の含有量は、特に限定されず、例えば、前記成分の種類に応じて、適宜調節できる。
ただし通常は、第1フィルム層111の、ポリプロピレン以外の成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、1質量%以下、0.5質量%以下及び0.1質量%以下等のいずれかであってもよい。第1フィルム層111の、ポリプロピレン以外の成分の含有量の下限値は、特に限定されず、0質量%であってもよい。
換言すると、第1フィルム層111の、ポリプロピレンの含有量は、特に限定されないが、通常は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、99質量%以上、99.5質量%以上及び99.9質量%以上等のいずれかであってもよい。第1フィルム層111の、ポリプロピレンの含有量の上限値は、特に限定されず、前記含有量は100質量%であってもよい。
【0015】
第1フィルム層111が含むポリプロピレンはホモポリマーでもよいし、コモノマー(主としてエチレン)との共重合の形態において、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれでもよく、ブロックポリマーが好ましい。
【0016】
第1フィルム層111が含む、ポリプロピレン以外の成分は、樹脂成分であってもよいし、非樹脂成分であってもよい。
【0017】
ポリプロピレン以外の成分のうち、非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0018】
第1フィルム層111が含む、ポリプロピレン以外の成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0019】
バリア層11中の第1フィルム層111の層数は、200~5000であり、250~4500であることが好ましく、例えば、300~4000、450~3500、600~3000、750~2500、及び750~2000のいずれかであってもよい。
【0020】
第1フィルム層111の層数は、例えば、ミクロトームを用いて多層フィルム1を切断し、この切断によって生じた多層フィルム1の断面を、電子顕微鏡を用いて観察することにより、確認できる。また、後述する多層フィルムの製造方法から、断面を観察することなく、第1フィルム層の層数を算出することも可能である。
【0021】
第1フィルム層111の1層当りの平均厚さは、500nm未満であり、10nm以上500nm未満であることが好ましく、10~490nmであることがより好ましく、10~400nmであることがさらに好ましく、15~300nmであることが特に好ましく、例えば、15~250nm、15~200nm、15~150nm及び15~120nmのいずれかであってもよい。
なお、ここで「第1フィルム層111の1層当りの平均厚さ」とは、バリア層11中に存在するすべての第1フィルム層111の厚さの合計値を、バリア層11中に存在する第1フィルム層111の層数で除した値([バリア層11中に存在するすべての第1フィルム層111の厚さの合計値]/[バリア層11中に存在する第1フィルム層111の層数])を意味する。
【0022】
ポリプロピレン等の、第1フィルム層111を構成している樹脂は、非晶質化している(換言すると結晶化していない)ことが好ましい。第1フィルム層111がこのような状態であることで、多層フィルム1のヘーズがより小さくなる。
【0023】
[第2フィルム層]
第2フィルム層112は、未延伸のフィルム層であり、ポリスチレン系樹脂を含む。
第2フィルム層112は、ポリスチレン系樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、ポリスチレン系樹脂からなるものでもよい)し、第2のポリエステルと、ポリスチレン系樹脂以外の成分を含んでいてもよい(すなわち、ポリスチレン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂以外の成分と、からなるものでもよい)。
【0024】
第2フィルム層112の、ポリスチレン系樹脂以外の成分の含有量は、特に限定されず、例えば、前記成分の種類に応じて、適宜調節できる。
ただし通常は、第2フィルム層112の、ポリスチレン系樹脂以外の成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、1質量%以下、0.5質量%以下及び0.1質量%以下等のいずれかであってもよい。第2フィルム層112の、ポリスチレン系樹脂以外の成分の含有量の下限値は、特に限定されず、0質量%であってもよい。
換言すると、第2フィルム層112の、ポリスチレン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、通常は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、99質量%以上、99.5質量%以上及び99.9質量%以上等のいずれかであってもよい。第2フィルム層112の、ポリスチレン系樹脂の含有量の上限値は、特に限定されず、前記含有量は100質量%であってもよい。
【0025】
上記ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を必須の単量体(モノマー)成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリスチレン系樹脂は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。また、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。これらのうち、入手し易さ、材料価格などの観点から、スチレンが好ましい。なお、上記スチレン系単量体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記ポリスチレン系樹脂の具体例としては、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体、2種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体、スチレン-ジエン系共重合体、スチレン-重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体等の共重合体、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)などが挙げられる。これらのうち、スチレン-ジエン系共重合体が好ましい。なお、上記ポリスチレン系樹脂は、水素添加されたポリスチレン系樹脂(水添ポリスチレン系樹脂)であってもよい。
上記スチレン-ジエン系共重合体は、スチレン系単量体及びジエン(特に、共役ジエン)を必須の単量体成分として構成される共重合体である。共重合の形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。ジエンは、共役ジエンが好ましく、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。ジエンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記スチレン-ジエン系共重合体の具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン・イソプレン-スチレンブロック共重合体(SBIS)などが挙げられる。
上記水添ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、SBSやSISに水素を添加した水添スチレン-エチレン・ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)や水添スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
【0026】
第2フィルム層112が含むポリスチレン系樹脂は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0027】
第2フィルム層112が含む、ポリスチレン系樹脂以外の成分は、樹脂成分であってもよいし、非樹脂成分であってもよいが、樹脂成分である場合、ポリプロピレン以外の樹脂であることが好ましい。
ポリスチレン系樹脂以外の成分のうち、非樹脂成分としては、ポリプロピレン以外の成分としての前記添加剤が挙げられる。
【0028】
第2フィルム層112が含む、ポリスチレン系樹脂以外の成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0029】
バリア層11中の第2フィルム層112の層数は、200~5000であることが好ましく、250~4500であることがより好ましく、例えば、300~4000、450~3500、600~3000、750~2500、及び750~2000のいずれかであってもよい。
なお、第2フィルム層112の層数は、上述の第1フィルム層111の層数の場合と同じ方法で確認できる。
【0030】
バリア層11において、第1フィルム層111の層数と、第2フィルム層112の層数は、同じであってもよいし、1だけ異なっていても(第1フィルム層111の層数が、第2フィルム層112の層数よりも1だけ多いか、又は第2フィルム層112の層数が、第1フィルム層111の層数よりも1だけ多くても)よい。
例えば、バリア層11の層数は、400~10000であることが好ましい。
【0031】
第2フィルム層112の1層当りの平均厚さは、500nm未満であることが好ましく、10nm以上500nm未満であることがより好ましく、10~490nmであることがさらに好ましく、10~400nmであることが特に好ましく、15~300nmであることが最も好ましく、例えば、15~250nm、15~200nm、15~150nm及び15~120nmのいずれかであってもよい。
なお、ここで「第2フィルム層112の1層当りの平均厚さ」とは、バリア層11中に存在するすべての第2フィルム層112の厚さの合計値を、バリア層11中に存在する第2フィルム層112の層数で除した値([バリア層11中に存在するすべての第2フィルム層112の厚さの合計値]/[バリア層11中に存在する第2フィルム層112の層数])を意味する。
【0032】
多層フィルム1において併用するポリプロピレンとポリスチレン系樹脂との好ましい組み合わせとしては、例えば、ポリプロピレンとSEBSとの組み合わせ、ポリプロピレンとSEPSとの組み合わせ等が挙げられ、ポリプロピレンとSEBSとの組み合わせが好ましい。
【0033】
バリア層11の厚さ、換言すると、第1フィルム層111の厚さの合計値と、第2フィルム層112の厚さの合計値との和は、10~500μmであることが好ましく、15~400μmであることがより好ましく、20~300μmであることがさらに好ましく、25~250μmであることが特に好ましい。
【0034】
<第1樹脂層、第2樹脂層>
第1樹脂層12及び第2樹脂層13は、いずれも熱可塑性樹脂を含む外層であり、多層フィルム1において、第1樹脂層12が一方の最表層を構成し、第2樹脂層13が他方の最表層を構成している。
多層フィルム1においては、これら一対の樹脂層により、バリア層11が保護される。
【0035】
第1樹脂層12及び第2樹脂層13が含む前記熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、具体的なものとして、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0036】
第1樹脂層12及び第2樹脂層13が含む前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0037】
第1樹脂層12及び第2樹脂層13が含む熱可塑性樹脂は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
第1樹脂層12及び第2樹脂層13の含有成分(組成)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
好ましい多層フィルム1としては、例えば、第1樹脂層12及び第2樹脂層13が、いずれもポリプロピレンを含むものが挙げられる。
【0039】
第1樹脂層12及び第2樹脂層13の厚さは、いずれも2.5~62.5μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、7.5~37.5μmであることが特に好ましい。第1樹脂層12及び第2樹脂層13の厚さが前記下限値以上であることで、これら樹脂層を備えていることによる効果がより顕著に得られる。また、第1樹脂層12及び第2樹脂層13の厚さが前記上限値以下であることで、これら樹脂層の厚さが過剰にならず、例えば、多層フィルム1をより安価に製造できる。
第1樹脂層12及び第2樹脂層13の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
第1樹脂層12及び第2樹脂層13の合計の厚さは、5~125μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、15~75μmであることが特に好ましい。
【0041】
<他の層>
多層フィルム1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、バリア層11、第1樹脂層12及び第2樹脂層13以外に、他の層を備えていてもよい。
前記他の層は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
ただし、多層フィルム1は、例えば、
図1に示すように、第1樹脂層12及び第2樹脂層13が、いずれもバリア層11に直接接触して設けられていることが好ましい。
【0042】
本発明の多層フィルムは、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図1に示す多層フィルム1は、一対の樹脂層、すなわち第1樹脂層12及び第2樹脂層13を備えているが、本発明の多層フィルムは、これら一対の樹脂層を備えていなくてもよい。ただし、本発明の多層フィルムは、上述の効果が得られて有利である点では、前記一対の樹脂層を備えていることが好ましい。
【0043】
本発明の多層フィルムの耐衝撃性は、面衝撃による厚さ当たりの貫通エネルギーが5.0~18.0J/mmであり、6.0~14.0J/mmが好ましく、7.0~12.0J/mmがより好ましい。
【0044】
なお、本明細書において、「フィルムの面衝撃による厚さ当たりの貫通エネルギー」とは、幅100mm、長さ100mmのフィルムに、Φ10mmのストライカーを落下速度2.7m/秒でフィルムに衝突させ、フィルム貫通に必要な厚さ当たりのエネルギー量であって、JIS7124-2に準ずる方法で算出することができる。
【0045】
なお、本明細書において「フィルムのヘーズ」とは、JIS K 7136:2000に準拠して測定されたものを意味する。
【0046】
本発明の多層フィルムの各物性(例えば、耐衝撃性等)は、例えば、第1フィルム層、第2フィルム層等、多層フィルムを構成する各層の構成材料や厚さ等を調節することで、調節できる。
【0047】
<<多層フィルムの製造方法>>
本発明の多層フィルムは、例えば、以下の方法で製造できる。
すなわち、まず、最終的に第1フィルム層と第2フィルム層との積層構造を構成するための、複数層構造の第1積層フィルムを作製する。前記第1積層フィルムは、より具体的には、最終的に未延伸の第1フィルム層となるポリプロピレン含有層と、最終的に未延伸の第2フィルム層となるポリスチレン系樹脂含有層と、が交互に繰り返して積層された構成を有する。前記第1積層フィルムとしては、例えば、最外層の2層がいずれもポリプロピレン含有層であり、ポリスチレン系樹脂含有層の層数がポリプロピレン含有層の層数よりも1だけ少ない複数層構造のものや、これとは逆に、最外層の2層がいずれもポリスチレン系樹脂含有層であり、ポリプロピレン含有層の層数がポリスチレン系樹脂含有層の層数よりも1だけ少ない複数層構造のもの等が挙げられる。ただし、第1積層フィルムは、これらに限定されない。
【0048】
次いで、この第1積層フィルムを、その表面に対して垂直な方向に切断した後、得られた2枚の第1積層フィルム同士を、さらにこれらの厚さ方向において積層して第2積層フィルムを作製する。
次いで、この第2積層フィルムを、その表面に対して平行な方向において引き伸ばして拡張した後、第1積層フィルムの場合と同じ方法で、この拡張後の第2積層フィルムを切断、積層して第3積層フィルムを作製する。
以降、このような積層フィルムの拡張、切断及び積層を繰り返し行うことで、バリア層を作製する。例えば、前記第1積層フィルムとして、最外層の2層がいずれもポリプロピレン含有層であるものを用いた場合には、第1積層フィルム同士を積層して第2積層フィルムを作製したときに、重ね合わされた最外層の2層のポリプロピレン含有層は、第2積層フィルムにおいては見かけ上、1層のポリプロピレン含有層を形成する。これは、第2積層フィルム以降の積層フィルム及びバリア層の作製時も同様である。ただし、ここに示すバリア層は、本発明の多層フィルムにおける一例に過ぎない。
【0049】
以降、さらに、必要に応じて、作製した前記バリア層に対して、第1樹脂層、第2樹脂層等の他の層を積層することで、目的とする多層フィルムが得られる。
【0050】
前記第1積層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、原料となる樹脂等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、作製できる。
上述の製造方法における、これ以降の第1積層フィルムからの、目的とするバリア層の作製までは、マルチプライヤーを用いて行うことができる。
【0051】
本発明においては、上述のとおり、バリア層を作製し、必要に応じてバリア層に対して、第1樹脂層、第2樹脂層等の他の層を積層して、得られた最終的な積層構造物を、直ちに本発明の多層フィルムとしてもよい。
【0052】
<<包装体>>
本発明の包装体は、上述の本発明の多層フィルムを備えたものである。
本発明の包装体は、優れた水蒸気バリア性を有する本発明の多層フィルムを用いているため、優れた防湿性を有する。
本発明の包装体は、防湿性が求められる各種用途で用いるのに好適であり、例えば、食品や医薬品等を包装するための包装袋又は包装容器として好適である。
【0053】
図2は、本発明の包装体の一実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図3は、
図2に示す包装体のI-I線における断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0054】
ここに示す包装体10は、多層フィルム1と、カバーフィルム101と、を備えて構成されている。そして、多層フィルム1には、包装体10の収納部10aを構成する突出部1cが形成されている。
包装体10は、ブリスターパックとしてのPTPフィルム(包装容器)であり、収納部10aには、錠剤102を密封収納できる。
【0055】
多層フィルム1の一方の表面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)1bは、カバーフィルム101の一方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)101aに接着されている。ただし、多層フィルム1は、一部の領域において、その他方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)1a側に突出しており、この突出部1cにおける第2面1bは、カバーフィルム101の第1面101aには接着されておらず、多層フィルム1の前記第2面1bと、カバーフィルム101の第1面101aと、によって、収納部10aが形成されている。
【0056】
包装体10において、多層フィルム1は、ヘーズが十分に小さいため、多層フィルム1を介して、収納部10aに収容された錠剤102を明りょうに視認できる。
また、包装体10において、多層フィルム1は優れた防湿性を有しており、収納部10aに収容された錠剤102は、品質の劣化が抑制される。
さらに、包装体10において、多層フィルム1は優れた耐衝撃性を有しており、収納部10aに収容された錠剤102は、破砕が抑制される。
【0057】
カバーフィルム101の材質としては、例えば、アルミニウム等が挙げられる。
【0058】
多層フィルム1及びカバーフィルム101には、スリット10bが形成されている。スリット10bは任意の構成であり、必ずしも形成されていなくてもよいが、スリット10bが形成されていることで、錠剤102の収納部10aへの特定収容数ごとに、包装体10を容易に分割できるため、包装体10の利便性が向上する。
【0059】
ここでは、包装体10として、収納部10aの外形が円錐台状であるものを示しているが、収納部10aの外形は、これに限定されず、収納対象物である錠剤102の形状に応じて、任意に選択できる。例えば、収納部10aの外形は、包装体10を多層フィルム1側から見下ろすようにして平面視したときに、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形状であってもよいし、長円形状等であってもよい。
【0060】
また、ここでは、包装体10として、収納部10aを8個備えているものを示しているが、収納部10aの数はこれに限定されず、1個でもよいし、2個以上(ただし、8個である場合を除く)であってもよい。
【0061】
図4は、本発明の包装体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体20は、一対の多層フィルム1,1の第2面1b,1b同士の一部、より具体的には、周縁部近傍の領域同士が接着されて、構成されている。このように、包装体20には、一対の多層フィルムの周縁部近傍の領域同士が接着されていることにより、収納部20aが形成されている。収納部20aには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
包装体20は、例えば、食肉、加工肉、青果物等の食材;注射針、シリンジ、検査キット、カテーテル等の医療器具等を、収納部20aに収容するのに好適である。
【0062】
包装体20において、多層フィルム1は、ヘーズが十分に小さいため、多層フィルム1を介して、収納部20aに収容された保存対象物を明りょうに視認できる。
また、包装体20において、多層フィルム1は優れた防湿性を有しており、収納部20aに収容された保存対象物は、品質の劣化が抑制される。
さらに、包装体10において、多層フィルム1は優れた耐衝撃性を有しており、収納部20aに収容された保存対象物は、破砕が抑制される。
【0063】
<<包装体の製造方法>>
本発明の包装体は、前記多層フィルムを用い、目的とする収納部を形成するように、多層フィルム同士、又は多層フィルムと他のフィルム等とを貼り合わせることにより、製造できる。
【0064】
例えば、
図2及び3に示す包装体10は、公知のPTP包装機を用いて、製造できる。
より具体的には、まず、真空成形、圧空成形又はプラグ成形等により、多層フィルム1に突出部1cを成形する。
次いで、多層フィルム1の突出部1cに、保存対象物である錠剤102を充填した後、カバーフィルム101を多層フィルム1と重ね合せて、多層フィルム1とカバーフィルム101とを接着する。
次いで、必要に応じて、多層フィルム1及びカバーフィルム101に、ミシン刃又はハーフカット刃等を用いて、スリット10bを形成する。
以上により、包装体10が得られる。
【0065】
一方、
図4に示す包装体20は、例えば、収納部20aを形成するように、多層フィルム1の周縁部近傍の領域同士を接着することで、製造できる。
多層フィルム1同士の接着は、例えば、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
【実施例】
【0066】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
<多層フィルムの製造>
[実施例1]
ポリプロピレンとして(Y-400GP;プライムポリマー社製、以下PPと略記する)を、ポリスチレン系樹脂としてSEBS(タフテックH1062;旭化成ケミカルズ社製)を、それぞれ用意した。そして、押出機(株式会社サン・エヌ・ティー社製、「SNT40-28型番」)を用いて、PP及びSEBSをそれぞれ230℃の溶融状態とし、フィードブロックを用いて、最終的に未延伸の第1フィルム層となるPP層と、最終的に未延伸の第2フィルム層となるSEBS層と、が交互に繰り返して積層された構成を有し、最外層の2層がいずれもPP層であり、3層の前記PP層と2層の前記SEBS層とからなる、5層の溶融積層体(上述の第1積層フィルム)を作製した。
次いで、マルチプライヤーを用いて、得られた5層の溶融積層体を2枚に切断し、切断後のこれら2枚の溶融積層体をさらに積層して、9層の溶融積層体(上述の第2積層フィルム)を作製した。
次いで、得られた9層の溶融積層体を、その表面に対して平行な方向において引き伸ばして拡張した後、5層の溶融積層体(第1積層フィルム)の場合と同じ方法で、この拡張後の9層の溶融積層体を切断、積層して、17層の溶融積層体(上述の第3積層フィルム)を作製した。
以降、同様の手順により、溶融積層体の拡張、切断及び積層を繰り返し行って、未延伸の第1フィルム層と未延伸の第2フィルム層とが交互に繰り返して積層された構成を有し、1025層の前記第1フィルム層と1024層の前記第2フィルム層とからなる、2049層のバリア層を作製した。
【0068】
次いで、押出機を用いて、バリア層の作製に用いたものと同じPPを、230℃の溶融状態とし、第1樹脂層及び第2樹脂層を形成した。
【0069】
次いで、2049層のバリア層の一方の表面に、上記で得られた第1樹脂層を積層し、他方の表面に、上記で得られた第2樹脂層を積層することで、2051層の溶融積層体を作製した。さらに、ダイを用いて、この溶融積層体を共押出することにより、
図1に示す構造の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは150μmであり、そのうち、第1樹脂層及び第2樹脂層の厚さはいずれも15μmであり、バリア層の厚さは120μmであった。すなわち、第1フィルム層の層数は1025であり、第1フィルム層の1層当りの平均厚さは58.6nmであった。
【0070】
[比較例1]
前記PP、SEBS及びPPを、この順番で共押出成形することにより、3層構造、すなわち、PP層、SEBS層及びPP層がこの順に、これらの厚さ方向において積層された多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは150μmであり、PP層の1層当りの平均厚さと、SEBS層の厚さと、の比率は、ほぼ1:1であった。
【0071】
<単層フィルムの製造>
[比較例2]
前記PPを押出成形することにより、単層構造で未延伸のPP層からなる単層フィルムを作製した。
得られた単層フィルムの厚さは150μmであった。
【0072】
[比較例3]
前記PP(1質量部)と、前記SEBS(1質量部)と、を混合することで、樹脂組成物を調製した。
次いで、得られた樹脂組成物を押出成形することにより、SEBS及びPPの含有量がいずれも50質量%である、単層構造で未延伸の単層フィルムを作製した。
得られた単層フィルムの厚さは150μmであった。
【0073】
<多層フィルム及び単層フィルムの評価>
上記で得られた多層フィルム及び単層フィルムについて、下記項目の評価を下記方法で行った。結果を表1に示す。なお、厚さ当たりの貫通エネルギーは、測定された貫通エネルギー(厚さ150μmの総貫通エネルギー)より算出した。
【0074】
(ヘーズ)
JIS K 7136:2000に準拠して、多層フィルム、単層フィルムのヘーズ(%)を測定した。
(光線透過率)
JIS K 7375:2008に準拠して、多層フィルム、単層フィルムの光線透過率(%)を測定した。
【0075】
(ヤング率)
JIS K 7161:1994に準拠して、多層フィルム、単層フィルムのMD方向及びTD方向におけるヤング率(MPa)を測定した。
(引張強度)
JIS K 7161:1994に準拠して、多層フィルム、単層フィルムのMD方向及びTD方向における引張強度(MPa)を測定した。
(破断伸び)
JIS K 7161:1994に準拠して、多層フィルム、単層フィルムのMD方向及びTD方向における破断伸び(%)を測定した。
(引裂き強度)
JIS K 7128:1998に準拠して、多層フィルム、単層フィルムのMD方向及びTD方向における引裂き強度(N/cm)を測定した。
(耐衝撃性の評価)
作製したフィルムを幅100mm、長さ100mmにカットし、落錘衝撃試験機(インストロン製)にセットした。そして、Φ10mmのストライカーを落下速度2.7m/秒でフィルムに衝突させ、フィルム貫通に必要なエネルギー量を算出した。算出にはJIS7124-2に準ずる方法で実施した。
貫通エネルギーは以下の式により算出した。
まず、破壊時間までに、与えられる力積Pを、以下の式(1)により求めた。
【0076】
【0077】
次に、破壊までに、与えられる貫通エネルギーWを、以下の式(2)により求めた。
【0078】
【0079】
【0080】
上記結果及び
図5(b)から明らかなように、実施例1の多層フィルムは、PP層である第1フィルム層と、SEBS層である第2フィルム層と、が交互に繰り返して積層された多層構成のバリア層を備えており、貫通エネルギーが十分に高く、耐衝撃性に優れていた。これに対して、比較例2のPP層の単層フィルムは実施例1の多層フィルムよりも貫通エネルギーが低く、耐衝撃性が劣っていた。すなわち、実施例1の多層フィルムでは、PP層及びSEBS層の多層積層構成を有していることにより、PP層単層の場合よりも、耐衝撃性が高くなるという顕著な効果を示した。
【0081】
一方、比較例1の多層フィルムは、PP層、SEBS層及びPP層の3層構成を有しており、その貫通エネルギーは、比較例2の単層フィルムの貫通エネルギーと同等であり、耐衝撃性が劣っていた。このように、比較例1の多層フィルムの貫通エネルギーが、実施例1の多層フィルムの貫通エネルギーよりも低いのは、比較例1の多層フィルムが、実施例1の多層フィルムのような、薄層が多数積層された所謂ナノレイヤー構造を有していないためであると推測された。
また、比較例3の単層フィルムは、PP及びSEBSを含有する単層構成であり、その貫通エネルギーは、比較例2の単層フィルムの貫通エネルギー及び、比較例1のPP層、SEBS層及びPP層の3層構成を有している多層フィルムの貫通エネルギーよりも高かったが、実施例1の多層フィルムの貫通エネルギーよりも低く、実施例1の多層フィルムより耐衝撃性が劣っていた。
【0082】
また、耐衝撃性試験の結果、
図5(a)に示す通り、実施例1の多層フィルムは、比較例1~3の単層フィルム又は多層フィルムよりも、衝撃により破壊されるまでの時間が長く、耐衝撃性が明らかに高く、実施例1の多層フィルムでは、PP層及びSEBS層の多層積層構成を有していることにより、PP層単層(比較例2)及び、PP及びSEBSを含有する単層(比較例3)、及びPP層、SEBS層及びPP層の3層(比較例1)の場合よりも、耐衝撃性が顕著に高くなっていることを確認できた。
【0083】
<多層フィルムの製造>
[実施例2]
前記バリア層、第1樹脂層及び第2樹脂層の形成条件を変更して、第1樹脂層及び第2樹脂層の厚さがいずれも15μmに代わって30μmであり、バリア層の厚さが120μmに代わって240μmである点以外は、実施例1と同じである多層フィルムを得た。すなわち、得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、この多層フィルムにおいて、バリア層は2049層であり、第1フィルム層の層数は1025であり、第1フィルム層の1層当りの平均厚さは117.1nmであった。
【0084】
[比較例4]
前記PP、SEBS及びPPを、この順番で共押出成形することにより、3層構造、すなわち、PP層、SEBS層及びPP層がこの順に、これらの厚さ方向において積層された多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、PP層の1層当りの平均厚さと、SEBS層の厚さと、の比率は、ほぼ1:1であった。
【0085】
<単層フィルムの製造>
[比較例5]
比較例2の場合とは異なる条件で、前記PPを押出成形することにより、単層構造で未延伸のPP層からなる単層フィルムを作製した。
得られた単層フィルムの厚さは300μmであった。
【0086】
[比較例6]
前記PP(1質量部)と、前記SEBS(1質量部)と、を混合することで、樹脂組成物を調製した。
次いで、得られた樹脂組成物を押出成形することにより、SEBS及びPPの含有量がいずれも50質量%である、単層構造で未延伸の単層フィルムを作製した。
得られた単層フィルムの厚さは300μmであった。
【0087】
<多層フィルム及び単層フィルムの評価>
上記で得られた多層フィルム及び単層フィルムについて、上述の実施例1等の場合と同様に、ヘーズ、光線透過率、ヤング率、引張強度、破断伸び、引裂強度及び貫通エネルギーを測定した。厚さ当たりの貫通エネルギーは、測定された貫通エネルギー(厚さ300μmの総貫通エネルギー)より算出した。その結果を表2及び
図6(b)に示す。
【0088】
実施例2の多層フィルムは、実施例1の多層フィルムと同様に、PP層である第1フィルム層と、SEBS層である第2フィルム層と、が交互に繰り返して積層された多層構成のバリア層を備えており、貫通エネルギーが十分に低く、耐衝撃性が高かった。これに対して、比較例5のPP層の単層フィルムは、実施例2の多層フィルムよりも貫通エネルギーが低く、耐衝撃性が劣っていた。
また、耐衝撃性試験の結果、
図6(a)に示す通り、実施例2の多層フィルムは、比較例4~6の単層フィルム又は多層フィルムよりも、衝撃により破壊されるまでの時間が長く、耐衝撃性が明らかに高く、実施例2の多層フィルムでは、PP層及びSEBS層の多層積層構成を有していることにより、PP層単層(比較例5)、PP及びSEBSを含有する単層(比較例6)、及び、PP層、SEBS層及びPP層の3層(比較例5)の場合よりも、耐衝撃性が顕著に高くなっていることを確認できた。
【0089】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、食品や医薬品等の保存時に用いる包装体に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・多層フィルム
1a・・・多層フィルムの第1面
1b・・・多層フィルムの第2面
1c・・・多層フィルムの突出部
11・・・バリア層
111・・・第1フィルム層
112・・・第2フィルム層
12・・・第1樹脂層
13・・・第2樹脂層
10,20・・・包装体
10a,20a・・・包装体の収納部
10b・・・包装体のスリット
101・・・カバーフィルム
101a・・・カバーフィルムの第1面
102・・・錠剤