(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】制御プログラムの書き込み方法
(51)【国際特許分類】
B23P 21/00 20060101AFI20220119BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220119BHJP
B62D 65/14 20060101ALI20220119BHJP
G06F 8/61 20180101ALI20220119BHJP
【FI】
B23P21/00 303Z
B60R16/02 660U
B62D65/14 Z
G06F8/61
B23P21/00 307Z
(21)【出願番号】P 2017094846
(22)【出願日】2017-05-11
【審査請求日】2020-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】香川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】清水 健太
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-202594(JP,A)
【文献】特表2005-518952(JP,A)
【文献】特開平08-057725(JP,A)
【文献】米国特許第05927938(US,A)
【文献】特開2005-274541(JP,A)
【文献】特開平06-135540(JP,A)
【文献】米国特許第06429544(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 - 21/00
B60R 16/02
B62D 65/14
G06F 8/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御プログラムに基づいて制御を実行する制御装置に対して、書き込み装置を使用して前記制御プログラムを書き込む制御プログラムの書き込み方法であって、
前記書き込み装置は、前記制御装置に接続されることを契機として、前記制御装置に電力を供給するとともに、前記制御装置との間で行われる通信を利用して、搬送経路上で搬送しながら前記制御プログラムを前記制御装置へ書き込むものであり、
前記制御プログラムが書き込まれる前の前記制御装置を、前記書き込み装置による制御プログラムの書き込みの開始時の前記搬送経路上の位置である開始位置から、前記書き込み装置による制御プログラムの書き込みの終了時の搬送経路上の位置である終了位置へ搬送しながら、前記制御装置に前記制御プログラムを書き込む書き込み工程を有し、
前記書き込み工程では、前記制御装置を、前記開始位置を起点として、前記開始位置から前記終了位置への経路から離れる方向へ向けて搬送した後に方向転換し、前記経路に近接する方向へ向けて搬送することにより、前記終了位置へと搬送し、
前記書き込み工程の開始前に前記書き込み装置を前記制御装置に装着する装着工程と、
前記書き込み工程の終了後、前記書き込み装置を前記制御装置から取り外す取り外し工程と、
前記書き込み工程の終了後、充電装置が接続された状態の前記書き込み装置を、前記取り外し工程が行われる位置から前記装着工程が行われる位置へと戻す搬送工程と、を有し、
前記搬送工程では、前記充電装置により前記書き込み装置が充電されるとともに、前記書き込み装置から前記充電装置に対して前記制御装置への前記制御プログラムの書き込み状態を示すトレーサビリティ情報が送信される制御プログラムの書き込み方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の制御プログラムの書き込み方法において、
前記制御プログラムは、前記書き込み装置の外部に設けられる記憶装置に記憶されており、
前記書き込み装置は、前記記憶装置から前記制御プログラムを読み込み、読み込まれる前記制御プログラムを前記制御装置に書き込む制御プログラムの書き込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御プログラムの書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行性能、安全性、快適性などを追求するために、自動車を始めとする各種の車両には、各種の電子部品からなる電子制御装置(ECU)が搭載されている。これらのECUは、たとえば特許文献1に示すように、生産ライン上に設けられる書き込み装置を用いて、CAN通信によるECUへの制御プログラムの書き込みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両に各種の機能が実装されるのに伴い、ECUへの制御プログラムの書き込み量が多くなってきている。ECUへの書き込み量が増えるのに伴い、制御プログラムの書き込みに要する時間は増大する。ECUの生産ラインの各工程を滞りなく実行し続けるために、ECUの生産ライン上に設けられた複数の書き込み装置に、ECUを取り付けることで、ECUに制御プログラムを書き込んでいる。そして、書き込み装置がECUに制御プログラムを書き込んだ後、書き込み装置からECUを取り外し、制御プログラムの書き込みが完了したECUを次工程が行われる位置まで搬送していた。書き込み装置によるECUへの制御プログラムの書き込みを実行する作業者は、複数の書き込み装置の間で移動することになるので、作業に際して移動する距離が長くなっていた。作業者の移動する距離が延びると、同じ作業をしたとしても要する時間および作業者の労力が大きくなってしまうので、作業者の作業効率が落ちてしまう。
【0005】
本発明は、制御プログラムの書き込み装置による制御プログラムの書き込みを実行する作業者の作業効率をより向上できる制御プログラムの書き込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成しうる制御プログラムの書き込み方法は、制御プログラムに基づいて制御を実行する制御装置に対して、書き込み装置を使用して前記制御プログラムを書き込む制御プログラムの書き込み方法であって、前記書き込み装置は、前記制御装置に接続されることを契機として、前記制御装置に電力を供給するとともに、前記制御装置との間で行われる通信を利用して、搬送経路上で搬送しながら前記制御プログラムを前記制御装置へ書き込むものであり、前記制御プログラムが書き込まれる前の前記制御装置を、前記書き込み装置による制御プログラムの書き込みの開始時の前記搬送経路上の位置である開始位置から、前記書き込み装置による制御プログラムの書き込みの終了時の搬送経路上の位置である終了位置へ搬送しながら、前記制御装置に前記制御プログラムを書き込む書き込み工程を有し、前記書き込み工程では、前記制御装置を、前記開始位置を起点として、前記開始位置から前記終了位置への経路から離れる方向へ向けて搬送した後に方向転換し、前記経路に近接する方向へ向けて搬送することにより、前記終了位置へと搬送する。
【0007】
この方法によれば、制御装置に書き込み装置が接続されることにより、制御装置および書き込み装置を搬送しながら制御プログラムを制御装置に書き込むことが可能である。また、書き込み工程が行われる位置には、書き込みの開始位置から終了位置への経路に対して直交する部分を有していることにより、書き込み工程の開始位置と書き込み工程の終了位置を近接した位置に設けることができる。これにより、書き込み工程の作業者の移動範囲を小さくすることができるので、作業者の移動時間をより短くでき、作業者の作業効率を低下することを抑制できる。
【0008】
上記の制御プログラムの書き込み方法において、前記書き込み工程の開始前に前記書き込み装置を前記制御装置に装着する装着工程と、前記書き込み工程の終了後、前記書き込み装置を前記制御装置から取り外す取り外し工程と、を有することが好ましい。
【0009】
この方法によれば、装着工程において書き込み装置を制御装置に装着することにより、書き込み装置による制御装置への制御プログラムの書き込みが開始可能となる。また、書き込み工程の終了後に、取り外し工程において書き込み装置から制御装置が取り外されることにより、制御プログラムが書き込まれた制御装置を次工程に投入することが可能になる。
【0010】
上記の制御プログラムの書き込み方法において、前記装着工程が行われる位置は、前記取り外し工程が行われる位置と隣接していることが好ましい。
この方法によれば、装着工程が行われる位置が取り外し工程が行われる位置と隣接していることにより、制御装置に制御プログラムを書き込む作業者の移動範囲を小さくすることができる。これにより、作業者の作業効率が低下することを抑制できる。
【0011】
上記の制御プログラムの書き込み方法において、前記書き込み工程の終了後、前記書き込み装置を、前記取り外し工程が行われる位置から前記装着工程が行われる位置へと戻す搬送工程を有し、前記搬送工程では、前記書き込み装置が充電されるとともに、前記書き込み装置からトレーサビリティ情報を取得することが好ましい。
【0012】
この方法によれば、搬送工程が設けられることにより、既に制御装置へ装着された書き込み装置を繰り返し使用することができる。また、搬送工程において、書き込み装置が充電されることにより、より確実に繰り返し使用できる。また、搬送工程において、書き込み装置からトレーサビリティ情報を取得することにより、書き込み装置を生産する各工程が的確になされているかを確認することも可能となる。
【0013】
上記の制御プログラムの書き込み方法において、前記制御プログラムは、前記書き込み装置の外部に設けられる記憶装置に記憶されており、前記書き込み装置は、前記記憶装置から前記制御プログラムを読み込み、読み込まれる前記制御プログラムを前記制御装置に書き込むことが好ましい。
【0014】
この方法によれば、書き込み装置は、外部に設けられる記憶装置から制御プログラムを読み込むことにより、制御装置に書き込む制御プログラムを選択することができる。このため、外部に設けられる記憶装置を交換することにより、容易に制御プログラムを変更することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の制御プログラムの書き込み方法によれば、制御プログラムの書き込み装置による制御プログラムの書き込みを実行する作業者の作業効率をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ECUおよびPREの概略構成を示すブロック図。
【
図3】PREを搬送しながら充電する搬送工程を示す図。
【
図4】ECUの生産ラインにおける各工程の流れを示すシーケンス図。
【
図6】他の実施形態のECUおよびPREの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、書き込み装置による制御装置への制御プログラムの書き込み方法の一実施形態を説明する。
図1に示すように、ポータブルリプログラミング装置(以下、PRE20とする)は、たとえばECU10の生産工程において使用される。PRE20は、たとえば組み立てが完了した後のECU10に接続されることにより、ECU10に制御プログラムCPを書き込む。
【0018】
ECU10は、たとえば車両に搭載されるものである場合、車両の各種の状態量に基づいて、車両の走行性能、安全性、および快適性を向上させるべく、各種の制御を実行する。ECU10には、各種の制御を行うための制御プログラムCPを記憶する記憶部11が設けられている。また、ECU10は、PRE20と接続するためのコネクタ12を有している。
【0019】
PRE20は、ECU10と接続するためのコネクタ21と、CAN通信などの車載ネットワークを介してECU10に制御プログラムCPを書き込むCAN書込部22と、電力の供給源であるバッテリ23と、外部装置との間で入出力を実行する通信部24と、を有している。また、PRE20は、制御プログラムCPの書き込みを実行する作業者による操作を受け付ける操作部25と、制御プログラムCPの書き込み状態を表示する表示部26とを有している。
【0020】
PRE20のコネクタ21がECU10のコネクタ12に接続されたことを契機として、バッテリ23からECU10の各部へ電力が供給される。これにより、生産ラインにおいても、ECU10は動作可能になる。なお、ECU10の生産ラインにおいて、ECU10自身は、電力の供給源を有していないため、PRE20がECU10に接続されていないときには、記憶部11やECU10の演算部分は動作していない。
【0021】
PRE20のコネクタ21がECU10のコネクタ12に接続された場合、作業者が操作部25を操作することにより、コネクタ12,21を介してCAN通信が行われる。すなわち、CAN書込部22は、コネクタ12がコネクタ21に接続されること、かつ作業者による操作部25の操作が行われることを契機として、ECU10へ制御プログラムCPの書き込みを開始する。
【0022】
表示部26は、ECU10への制御プログラムCPの書き込みが完了した場合、その旨を表示する。また、表示部26は、ECU10への制御プログラムCPの書き込みが完了できない場合、書き込みが完了できない原因に対応したエラー情報を表示することにより、書き込みが完了できない旨を表示する。
【0023】
なお、PRE20のコネクタ21がECU10のコネクタ12に接続されたことを契機としているのであれば、コネクタ21がコネクタ12に接続された後、直ちに電力の供給を開始してもよいし、ある程度の時間をおいてから開始してもよい。
【0024】
また、PRE20には、外部メモリ30が接続されている。外部メモリ30は、制御プログラムCPを記憶している。PRE20は、外部メモリ30から制御プログラムCPを読み込むことにより、CAN書込部22を介してECU10に制御プログラムCPを書き込む。
【0025】
また、PRE20は、ECU10に接続されていないとき、すなわちECU10に制御プログラムCPを書き込んでいないとき、充電装置40に接続される。充電装置40は、充電部41および通信部42を有している。PRE20が充電装置40に接続されることにより、通信部24および通信部42を介して、充電部41からバッテリ23へと電力が供給される。これにより、バッテリ23は充電される。また、PRE20が充電装置40に接続されることにより、充電装置40は、通信部24および通信部42を通じて、トレーサビリティ情報Trを取り込む。トレーサビリティ情報Trは、ECU10の製造工程管理および品質検査を行いやすくするための情報である。たとえば充電装置40は、書き込み工程においてPRE20と接続されていたECU10の制御プログラムCPの書き込み状態(たとえばECU10への制御プログラムCPの書き込みが完了したか否か)を、トレーサビリティ情報Trとして取り込む。トレーサビリティ情報Trを確認することにより、ECU10の生産ラインにおいて、ECU10への制御プログラムCPの書き込みが適切に行われたか否かを判別することができるようになる。
【0026】
つぎに、ECU10の生産ラインの一例について説明する。
図2に示すように、ECU10は、生産ラインの複数(6つ)の工程を経ることにより製造される。ECU10の生産ラインの複数の工程は、第1および第2組立工程、第1および第2検査工程、書き込み工程、および出荷検査工程からなる。
【0027】
第1および第2組立工程は、ECU10の外形的な構造を作り上げる工程である。たとえば、ECU10は、マイコンを始めとする各種の電子部品と、電子部品を実装する基板と、電子部品および基板を収容する筐体とを有するところ、第1および第2組立工程ではこれらの各構成要素を組み立てることにより、ECU10の外形的な概略構造を製造する。第1および第2組立工程を経て製造されたECU10には、まだ制御プログラムCPが書き込まれていないため、未完成である。なお、一例としては、第1組立工程は、基板に各種の電子部品を実装する工程であり、第2組立工程は、電子部品が実装された基板を筐体に組み付ける工程である。なお、第1組立工程および第2組立工程は、ともに同程度の時間tでその工程が終了する。
【0028】
第1および第2検査工程は、第1および第2組立工程を経て組み立てられたECU10の外形的な概略構造が、要求される性能を有しているか否かを検査する工程である。一例としては、第1検査工程は、基板に実装された各種の電子部品が要求どおりに実装されているか否かを検査する工程であり、第2検査工程は、ECU10の演算部などが要求される演算性能を有しているか否かを検査する工程である。なお、第1および第2検査工程は、検査に要する時間や設備の規模などを考慮して、検査工程を2つの工程に分けたものである。また、第1検査工程および第2検査工程は、ともに同程度の時間tでその工程が終了する。
【0029】
書き込み工程は、第1および第2検査工程を経て検査されたECU10に制御プログラムCPを書き込む工程である。書き込み工程は、PRE装着工程と、搬送しながら制御プログラムCPを書き込む搬送・書き込み工程と、PRE取り外し工程と、PRE20を搬送する搬送工程とにより構成される。
【0030】
PRE装着工程では、ECU10にPRE20が取り付けられる。PRE装着工程では、作業者は、ECU10のコネクタ12をPRE20のコネクタ21に接続したのち、ECU10とPRE20とが適切に接続できたことを目視で確認したときに、操作部25の操作を行う。
【0031】
搬送・書き込み工程では、ECU10およびPRE20を搬送経路上で搬送しながら、ECU10に制御プログラムCPを書き込む。なお、搬送経路は、PRE装着工程が行われる位置からPRE取り外し工程が行われる位置までの経路を含んでいる。ECU10は、コンベアなどにより出荷検査工程へと搬送される。搬送・書き込み工程では、コネクタ12をコネクタ21に接続すること、および操作部25の操作が行われたことを契機として、ECU10への制御プログラムCPの書き込みを開始する。なお、搬送・書き込み工程は、第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程の進行方向に対して直交する方向に、すなわち生産ラインの進行方向と直交する方向に搬送する工程を含んでいる。すなわち、搬送・書き込み工程では、ECU10およびPRE20を、開始位置であるPRE装着工程が行われる位置から、PRE装着工程とPRE取り外し工程との間の経路から離れる方向に向けて搬送したのち、方向転換し、当該経路へと近接する方向に向けて搬送する。これにより、搬送・書き込み工程では、ECU10に制御プログラムCPを書き込みながら、ECU10を終了位置であるPRE取り外し工程が行われる位置へと搬送する。このため、PRE装着工程の行われる位置とPRE取り外し工程の行われる位置とは隣り合う(正確には搬送工程を介して隣り合う)。
【0032】
PRE取り外し工程では、搬送・書き込み工程において制御プログラムCPが書き込まれたECU10から、PRE20が取り外される。そして、制御プログラムCPの書き込みが完了したECU10は出荷検査工程に投入され、ECU10から取り外されたPRE20は搬送工程に投入される。
【0033】
搬送工程では、PRE取り外し工程においてECU10から取り外されたPRE20を、PRE装着工程が行われる位置まで搬送する。
ここで、
図3を用いて、搬送工程について詳しく説明する。搬送工程では、PRE20がPRE取り外し工程の行われる位置からPRE装着工程の行われる位置へと搬送されるとともに、PRE20が充電装置40に接続されることによりPRE20が充電され、かつ充電装置40にPRE20からECU10のトレーサビリティ情報Trが取り込まれる。搬送工程では、ECU10から取り外されたPRE20が順次充電装置40に接続されることにより、充電およびトレーサビリティ情報Trの送受信が行われ、充電およびトレーサビリティ情報Trの送受信が完了すると、PRE20がPRE装着工程へと投入される。これにより、PRE20は、ECU10への制御プログラムCPの書き込みに繰り返し使用される。
【0034】
なお、制御プログラムCPの書き込み量が増大することに伴って、搬送・書き込み工程は、時間tよりも長い、たとえば時間6tでその工程が終了する。この点、搬送・書き込み工程では、搬送しながら6つのECU10に同時に制御プログラムCPを書き込むことにより、生産ラインを滞りなく継続できる。第1および第2検査工程によって検査された各ECU10を時間tおきにPRE装着工程へと投入し、搬送・書き込み工程に要する時間を時間6tに設定することにより、第1および第2組立工程、ならびに第1および第2検査工程と書き込み工程との間に滞りが生じることが抑制される。なお、滞りとは、一部の工程に時間が掛かりすぎることにより、他の工程で処理されたものが処理されずに貯まってしまうことである。また、時間tは、たとえば第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程に要する時間である。
【0035】
出荷検査工程は、書き込み工程を経て制御プログラムCPが書き込まれたECU10が規定の性能を有しているかどうかを検査する工程である。出荷検査工程では、たとえばECU10に書き込まれた制御プログラムCPが要求通りに動作するか否かが判定され、要求通りに動作する場合にはECU10の出荷が許可される。
【0036】
つぎに、ECU10の生産ラインにおける各工程の流れを説明する。
図4に示すように、まずはECU10の外形的な構造を作り上げる第1および第2組立工程が行われた後(ステップS1)、ECU10の外形的な概略構造が要求される性能を有しているか否かを検査する第1および第2検査工程が行われる(ステップS2)。
【0037】
つぎに、ECU10にPRE20を取り付けるPRE装着工程が行われる(ステップS3)。
ECU10にPRE20が取り付けられると(ステップS3の後)、ECU10およびPRE20を搬送しながら、ECU10に制御プログラムCPを書き込む搬送・書き込み工程が行われる(ステップS4)。
【0038】
ECU10への制御プログラムCPの書き込みが完了すると、すなわちECU10およびPRE20が所定の位置まで搬送し終わると(ステップS4の後)、ECU10からPRE20を取り外す取り外し工程が行われる(ステップS5)。
【0039】
ECU10からPRE20が取り外されると(ステップS5の後)、ECU10から取り外されたPRE20を、PRE装着工程の位置まで搬送する搬送工程を行うとともに(ステップS6)、PRE20が取り外されたECU10を検査する出荷検査工程を行う(ステップS7)。なお、PRE装着工程(ステップS3)、搬送・書き込み工程(ステップS4)、PRE取り外し工程(ステップS5)、および搬送工程(ステップS6)により書き込み工程が構成されている。
【0040】
以上で各工程の流れの説明を終了する。
本実施形態の作用および効果を説明する。
(1)ECU10にPRE20を取り付けた状態で、ECU10およびPRE20を搬送しながら、ECU10に制御プログラムCPを書き込むことができる。このため、ECU10の搬送経路とは別の場所にリプログラミング装置を配置するためのスペースを確保する必要がない分、生産ラインにおけるリプログラミング装置の配置スペースを削減できる。
【0041】
ここで比較例として、
図5に示すように、搬送・書き込み工程が、第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程の進行方向と同じ方向に延びる部分しか有さない場合、作業者の移動範囲は広くなってしまう。たとえば、作業者は、PRE装着工程において、ECU10にPRE20を取り付けること、および操作部25を操作すること、ならびにPRE取り外し工程において、ECU10からPRE20を取り外すことの3つの作業を行う。このため、作業者は、PRE装着工程の行われる位置とPRE取り外し工程の行われる位置との間を往復移動する必要がある。すなわち、作業者は、搬送・書き込み工程が延びる方向の両端に設けられたPRE装着工程の行われる位置およびPRE取り外し工程の行われる位置の間を移動する必要が生じてしまう。
【0042】
ここで、制御プログラムCPの書き込み量が増大することに伴って、搬送・書き込み工程は時間6tの時間を要する。このため、ECU10およびPRE20が搬送・書き込み工程の間搬送され続けているにも関わらず、1人の作業者がPRE装着工程およびPRE取り外し工程を担当すると、作業者の移動時間が長くなるので、作業効率は落ちてしまう。また、作業者の移動時間が長くなりすぎると、PRE装着工程およびPRE取り外し工程でそれぞれ作業者が必要となってしまい、作業効率が落ちてしまう。
【0043】
これに対し、
図2に示すように、搬送・書き込み工程が、第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程の進行方向と直交する方向に延びる部分を有していることにより、PRE装着工程の行われる位置とPRE取り外し工程の行われる位置とをより近接した位置に設けることができる。このため、1人の作業者がPRE装着工程およびPRE取り外し工程を担当したとしても、作業者の移動時間をより短くすることができるので、作業者の作業効率が低下することを抑制できる。
【0044】
(2)PRE20にバッテリ23が設けられることにより、工場の内部でECU10に制御プログラムCPを書き込む場合だけでなく、輸送中の船や車両の中でECU10に制御プログラムCPを書き込むことも可能になる。また、出荷先で制御プログラムCPを書き込むことや、ディーラーおよび整備工場で制御プログラムCPを書き込むことも可能になる。なお、この場合であっても、運搬しながらECU10に制御プログラムCPを書き込む場合、PRE装着工程とPRE取り外し工程とを近接した位置に設けることにより、作業者の作業効率が低下することを抑制できる。
【0045】
(3)搬送工程が設けられることにより、搬送・書き込み工程において、既にECU10への制御プログラムCPの書き込みに使用されたPRE20を繰り返し使用できる。また、PRE20は、搬送工程において、充電装置40により充電されるため、PRE20を繰り返し使用したとしても、PRE20を十分に充電された状態でECU10に取り付けることができる。
【0046】
(4)搬送工程において、充電装置40がPRE20からトレーサビリティ情報Trを読み取ることにより、ECU10が生産ラインにおいてどの状態にあるのかを追跡することが可能になる。また、トレーサビリティ情報Trを用いることによって、たとえば生産ラインにおける各工程が的確になされたのかどうかを判断することも可能である。
【0047】
(5)PRE20は、外部メモリ30から制御プログラムCPを読み込むことにより、ECU10に書き込む制御プログラムCPを選択した。このため、外部メモリ30を交換すれば、容易に制御プログラムCPを変更することが可能である。
【0048】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・本実施形態では、PRE20は、外部メモリ30から制御プログラムCPを読み込むことにより、ECU10に制御プログラムCPを書き込んだが、これに限らない。たとえば、PRE20に制御プログラムCPを記憶する記憶部を設けてもよい。
【0049】
・外部メモリ30には複数のプログラムが記憶されており、当該プログラムのうちの1つを制御プログラムCPとして選択することにより、PRE20は制御プログラムCPをECU10に書き込むようにしてもよい。なお、プログラムのうちの1つを制御プログラムCPとして選択する際には、たとえば制御装置の外面に表示されている標識などに基づいて、制御プログラムCPを選択するようにしてもよい。これにより、作業者が制御プログラムCPを選択する手間を省くことができ、作業者の作業効率を高めることができる。
【0050】
・本実施形態では、PRE20には、操作部25および表示部26を設けたが、たとえば
図6に示すように操作部25および表示部26を設けなくてもよい。PRE20に操作部25および表示部26を設けない場合、たとえば搬送・書き込み工程では、コネクタ12をコネクタ21に接続されたときに、PRE20はECU10への制御プログラムCPの書き込みを開始する。
【0051】
・搬送・書き込み工程では、コネクタ12をコネクタ21に接続すること、および操作部25の操作が行われたことを契機として、ECU10への制御プログラムCPの書き込みを開始したが、これに限らない。すなわち、コネクタ12がコネクタ21に接続されたことを契機としてECU10への制御プログラムCPの書き込みを開始してもよいし、操作部25の操作が行われたことを契機としてECU10への制御プログラムCPの書き込みを開始してもよい。また、ECU10に電力が供給されたことを契機として制御プログラムCPの書き込みを開始してもよい。
【0052】
・本実施形態では、第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程に要する時間を時間tとして、書き込み工程に要する時間を6tとしたが、これに限らない。たとえば、書き込み工程に要する時間を5t以下にしてもよいし、6t以上にしてもよい。すなわち、第5工程に要する時間は、制御プログラムCPの容量やECU10の生産台数などに応じて、どのように設定されてもよい。また、第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程に要する時間もどのように設定されてもよい。また、出荷検査工程に要する時間もどのように設定されてもよい。
【0053】
・本実施形態では、搬送工程を設けることにより、PRE20を繰り返し使用したが、これに限らない。すなわち、搬送工程を設けず、PRE20を使い捨ててもよい。
・本実施形態では、PRE取り外し工程が設けられたが、設けなくてもよい。この場合、たとえばECU10にPRE20が取り付けられたまま、ECU10が出荷される。また、PRE装着工程も設けなくてもよい。たとえば、第1および第2組立工程においてPRE20をECU10に取り付けてもよい。
【0054】
・搬送・書き込み工程において、PRE装着工程とPRE取り外し工程との間の経路から離れるように搬送したのち、第1および第2組立工程ならびに第1および第2検査工程の進行方向に搬送する際、PRE装着工程とPRE取り外し工程との間よりも広がった範囲で搬送してもよい。この場合であっても、PRE装着工程とPRE取り外し工程とが近接した位置に設けられれば、それでよい。
【0055】
・本実施形態では、ECU10およびPRE20を搬送する手段としてコンベアを挙げたが、これに限らない。たとえば自律的(一定の規則にしたがって自動的)に搬送する機械であればどのようなものであってもよい。すなわち、ECU10およびPRE20を搬送できるのであれば、どのような手段であってもよい。
【0056】
・搬送工程では、PRE20がPRE取り外し工程からPRE装着工程まで搬送されたが、これに限らない。PRE取り外し工程およびPRE装着工程が近接した位置に設けられているため、たとえば作業者は、PRE取り外し工程においてECU10からPRE20を取り外し、当該PRE20を充電装置40に取り付け、充電装置40による充電が終了したPRE20を、PRE装着工程においてECU10に装着するようにしてもよい。
【0057】
・
図2では、PRE装着工程とPRE取り外し工程との間に搬送工程が設けられるように図示したが、PRE装着工程とPRE取り外し工程との間に搬送工程を設けず、PRE装着工程とPRE取り外し工程とを隣接した状態で設けてもよい。
【0058】
つぎに、上記実施形態およびその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記制御プログラムは、予め複数種類用意されており、前記書き込み装置は、前記制御装置の外面に表示されている標識に基づいて、前記制御プログラムを選択して、前記制御装置に書き込む制御プログラムの書き込み方法。
【0059】
この方法によれば、書き込み装置は、制御装置の外面に表示されている標識に基づいて、適切な制御プログラムを選択することが可能である。これにより、制御装置に制御プログラムを書き込む作業者が、適切な制御プログラムを選択する手間を省くことができ、作業者の作業効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0060】
10…ECU(制御装置)、11…記憶部、12…コネクタ、20…PRE(書き込み装置)、21…コネクタ、22…CAN書込部、23…バッテリ、24…通信部、25…操作部、26…表示部、30…外部メモリ、40…充電装置、41…充電部、42…通信部、t…時間、CP…制御プログラム、Tr…トレーサビリティ情報。