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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】スタッドレスタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20220119BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220119BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220119BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220119BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20220119BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08L45/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017094884
(22)【出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2018188601
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 洋敏
(72)【発明者】
【氏名】河西 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】西 紀透
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227487(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076048(WO,A1)
【文献】特開2012-121965(JP,A)
【文献】特開2014-227495(JP,A)
【文献】特開2015-199866(JP,A)
【文献】特開2012-031258(JP,A)
【文献】特開2010-285112(JP,A)
【文献】特開2011-099057(JP,A)
【文献】特開2001-302847(JP,A)
【文献】特開2016-145340(JP,A)
【文献】特開2013-010967(JP,A)
【文献】特開2017-031356(JP,A)
【文献】特開2014-009243(JP,A)
【文献】特開2004-027090(JP,A)
【文献】特開2015-127383(JP,A)
【文献】国際公開第2013/093752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、窒素吸着比表面積120m/g以上200m/g未満のシリカ、カーボンブラック、及び卵殻粉を含み、
前記ゴム成分100質量%中、非改質天然ゴムの含有量が10~55質量%リン含有量500ppm以下の高純度化天然ゴムの含有量が10~55質量%合成ポリイソプレンゴムの含有量が20質量%以下、シス含量95質量%以上のハイシスポリブタジエンゴムの含有量が25~60質量%あり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が10~50質量部、前記カーボンブラックの含有量が30質量部以上、前記卵殻粉の含有量が1~20質量部であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
複素弾性率E*(温度0℃、周波数10Hz、初期伸長歪5%、動的伸長歪2%)が15MPa以下、破断強度TB(温度23℃)が15Mpa以上、破断伸びEB(温度23℃)が420%以上である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記高純度化天然ゴムは、窒素含有量が0.30質量%以下であり、
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が120m/g以上であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記非改質天然ゴム、前記高純度化天然ゴム及び前記合成ポリイソプレンゴムの合計含有量が50質量%以上である請求項1又は2記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量部に対して、軟化点120℃以下のテルペン系樹脂を含む請求項1~3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車用・トラックバス用スタッドレスタイヤでは、天然ゴムと低温特性に優れたブタジエンゴムを主体とするポリマーにカーボンブラックやシリカの補強剤を添加した配合ゴムが使用されており、更に氷上摩擦力を確保する手法としてトレッドゴムを発泡させたり、種々異物類(卵殻粉・脱穀粉・胡桃殻粉・マイクロガラスバルーン・ナイロンパウダー等)を混ぜ込む技術が適用されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、より優れた低温性能を付与すべく、発泡率や異物類配合量を増加すると、氷上摩擦力は高まるものの、積雪の無い路面走行時でのトレッドゴムの耐久性が著しく低下し、該路面走行により、早期のトレッドゴムの摩耗や、トラックバスではトレッドの一部が欠落するチャンキング、等のリスクが高くなる。また、ポリブタジエン比率の増加により氷上性能を高める手法も考えられるが、強度特性が天然ゴムに比べて大幅に低いため、同様にチャンキング等の問題がある。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、カーボンブラックに比べて、低温時にゴムが硬くなり難いシリカの配合比率を増加し、低温でのゴムの柔軟性を向上し、氷上性能を改善する技術も提案されている。しかしながら、気温が20℃を超える春季から夏季にかけて、十分な耐久性を確保できず、特にトラックバスタイヤでは、その大きな接地圧の影響からシリカ比率増加による摩耗性能の低下は避けられないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-168427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、氷雪上性能、破壊特性(耐久性)、耐摩耗性をバランス良く改善したスタッドレスタイヤゴム組成物、及びこれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分、窒素吸着比表面積120m/g以上200m/g未満のシリカ、及びカーボンブラックを含み、前記ゴム成分100質量%中、非改質天然ゴムの含有量が10質量%以上、リン含有量500ppm以下の高純度化天然ゴムの含有量が10質量%以上、合成ポリイソプレンゴムの含有量が20質量%以下、シス含量95質量%以上のハイシスポリブタジエンゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が10~50質量部、前記カーボンブラックの含有量が30質量部以上であるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
前記ゴム組成物は、複素弾性率E*(温度0℃、周波数10Hz、初期伸長歪5%、動的伸長歪2%)が15MPa以下、破断強度TB(温度23℃)が15Mpa以上、破断伸びEB(温度23℃)が420%以上であることが好ましい。
【0009】
前記高純度化天然ゴムは、窒素含有量が0.30質量%以下であり、前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が120m/g以上であり、前記ゴム成分100質量%中の前記非改質天然ゴム、前記高純度化天然ゴム及び前記合成ポリイソプレンゴムの合計含有量が50質量%以上であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム成分100質量部に対して、軟化点120℃以下のテルペン系樹脂を含むことが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非改質天然ゴム、所定の高純度化天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム及びハイシスポリブタジエンゴムを含むゴム成分と、所定窒素吸着比表面積のシリカと、カーボンブラックとを所定配合で含有するスタッドレスタイヤ用ゴム組成物であるので、氷雪上性能、破壊特性(耐久性)、耐摩耗性がバランス良く改善される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分、窒素吸着比表面積120m/g以上200m/g未満のシリカ、及びカーボンブラックを含み、前記ゴム成分100質量%中、非改質天然ゴムの含有量が10質量%以上、リン含有量500ppm以下の高純度化天然ゴムの含有量が10質量%以上、合成ポリイソプレンゴムの含有量が20質量%以下、シス含量95質量%以上のハイシスポリブタジエンゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が10~50質量部、前記カーボンブラックの含有量が30質量部以上である。
【0013】
本発明では、前述の課題に対し、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、シリカ、カーボンブラックを含むスタッドレスタイヤ配合において、所定量のハイシスポリブタジエンゴム、高比表面積のシリカ、カーボンブラックを用い、かつ特にゴム成分として、非改質天然ゴム(通常の天然ゴム)、高純度化天然ゴムを所定量で併用することにより、破壊特性(耐久性)、耐摩耗性、氷雪上性能がバランス良く改善されるという知見を見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0014】
高純度化天然ゴムに関し、天然ゴムの不純物として含まれるタンパク質やリン脂質等を減量精製することで、天然ゴムのポリイソプレン成分が直接カーボンブラックと接触できる割合が増加し、カーボンブラックの分散性促進、接触面積増加による補強力向上効果が発揮されることにより、低発熱性、高補強性が得られる。更に、カーボンブラックの分散性向上により、微小変形領域における弾性率が低下し、低温時におけるトレッドゴムの柔軟性も向上する。
【0015】
一方、高純度化天然ゴムへのシリカの適用については、シリカは、表面に極性の高い官能基を有しているので、天然ゴムと比較し、高純度化天然ゴム中のシリカ分散が難しくなる傾向がある。
【0016】
このような特性を踏まえ、本発明は、高比表面積シリカを用いつつ、天然ゴムと高純度化天然ゴムを所定量配合することにより、カーボンブラック、シリカによる補強効果を最大限発揮させ、優れた耐摩耗性、耐久性(破壊特性)を付与しながら、氷上性能を改善したものである。従って、本発明では、氷雪上性能、破壊特性(耐久性)、耐摩耗性の性能バランスを顕著かつ特異的に改善できる。
【0017】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、非改質天然ゴムを10質量%以上含む。下限以上にすることで、高純度化天然ゴム中で良好なシリカ分散が得られ、優れた破壊特性が得られる傾向がある。好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。上限は特に限定されないが、70質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。
【0018】
非改質天然ゴムは、改質や変性が施されていない通常の天然ゴム(NR)である。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0019】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、リン含有量500ppm以下の高純度化天然ゴムを10質量%以上含む。10質量%以上にすることで、良好なフィラーの分散性促進効果や補強増強効果が得られ、優れた破壊特性が得られる傾向がある。好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。上限は特に限定されないが、70質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。
【0020】
前記高純度化天然ゴム中のリン含有量は、好ましくは400ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。なお、リン含有量は、ICP発光分析等、従来の方法で測定できる。
【0021】
前記高純度化天然ゴムは、アセトン中に室温(25℃)下で48時間浸漬した後の窒素含有量が0.50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.30質量%以下、更に好ましくは0.15質量%以下、特に好ましくは0.10質量%以下である。上記窒素含有量は、アセトン抽出によりゴム中の人工の老化防止剤を除去した後の測定値である。窒素含有量は、ケルダール法、微量窒素量計等、従来の方法で測定できる。窒素は、タンパク質やアミノ酸に由来するものである。
【0022】
前記高純度化天然ゴムとしては、例えば、高純度化され、かつpHが2~7に調整されたものを好適に使用できる。該高純度化天然ゴムは、国際公開番号WO2014/125700号に開示されている製法等により調製できる。
【0023】
前記高純度化天然ゴムは、pHが2~7であることが好ましく、より好ましくは3~6、更に好ましくは4~6である。なお、高純度化天然ゴムのpHは、ゴムを各辺2mm角以内の大きさに切って蒸留水に浸漬し、マイクロ波を照射しながら90℃で15分間抽出し、浸漬水をpHメーターを用いて測定された値であり、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定する。
【0024】
前記高純度化天然ゴムは、例えば、天然ゴムラテックスをケン化処理する工程1-1と、ケン化天然ゴムラテックスを洗浄する工程1-2と、酸性化合物で処理する工程1-3とを含む製造方法、等により調製できる。
【0025】
〔製法1〕
(工程1-1)
工程1-1では、天然ゴムラテックスをケン化処理する。ケン化処理は、天然ゴムラテックスに、アルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することで実施でき、必要に応じて撹拌などを行っても良い。
【0026】
(工程1-2)
工程1-2では、前記工程1-1で得られたケン化天然ゴムラテックスを洗浄する。
工程1-2は、例えば、前記工程1-1で得られたケン化天然ゴムラテックスを凝集(凝固)させて凝集ゴム(凝固ゴム)を作製した後、得られた凝集ゴムを塩基性化合物で処理し、更に洗浄することにより実施できる。具体的には、凝集ゴムの作製後に、水で希釈して水溶性成分を水層に移して、水を除去することで非ゴム成分を除去でき、更に凝集後に塩基性化合物で処理することで凝集時にゴム内に閉じ込められた非ゴム成分を再溶解させることができる。これにより、凝集ゴム中に強く付着したタンパク質、脂肪酸などの非ゴム成分等を除去できる。
【0027】
凝集方法(凝固方法)としては、ギ酸、硫酸などの酸を添加してpHを調整し、必要に応じて更に高分子凝集剤を添加する方法などが挙げられる。これにより、大きな凝集塊ではなく、直径数mm~1mm以下から、20mm程度の粒状ゴムが形成され、塩基性化合物処理によりタンパク質などが充分に除去される。上記pHは、好ましくは3.0~5.0、より好ましくは3.5~4.5の範囲に調整される。
【0028】
次いで、得られた凝集ゴム(凝固ゴム)に対して、塩基性化合物による処理が施される。ここで、塩基性化合物としては特に限定されないが、タンパク質、脂肪酸などの除去性能の点から、塩基性無機化合物が好適である。
【0029】
塩基性無機化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの金属水酸化物;アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩などの金属炭酸塩;アルカリ金属炭酸水素塩などの金属炭酸水素塩;アルカリ金属リン酸塩などの金属リン酸塩;アルカリ金属酢酸塩などの金属酢酸塩;アルカリ金属水素化物などの金属水素化物;アンモニアなどが挙げられる。なかでも、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属リン酸塩、アンモニアが好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
【0030】
凝集ゴムを塩基性化合物で処理する方法は、凝集ゴムを上記塩基性化合物に接触させる方法であれば特に限定されず、例えば、凝集ゴムを塩基性化合物の水溶液に浸漬する方法、凝集ゴムに塩基性化合物の水溶液を噴霧する方法などが挙げられる。塩基性化合物の水溶液は、各塩基性化合物を水で希釈、溶解することで調製できる。
【0031】
上記塩基性化合物の水溶液のpHとしては、9~13が好ましく、処理効率の点から、10~12がより好ましい。上記処理温度は、好ましくは10~50℃、処理時間は、通常、1分~48時間である。
【0032】
塩基性化合物の処理後、洗浄処理が行われる。該洗浄処理により、凝集時にゴム内に閉じ込められたタンパク質、脂肪酸などの非ゴム成分を充分除去すると同時に、凝集ゴムの表面だけでなく、内部に存在する塩基性化合物等も充分に除去することが可能となる。特に、当該洗浄工程でゴム全体に残存する塩基性化合物を除去することにより、後述の酸性化合物による処理をゴム全体に充分に施すことが可能となり、ゴムの表面だけでなく、内部のpHも2~7に調整できる。
【0033】
洗浄方法としては、ゴム全体に含まれる非ゴム成分、塩基性化合物等を充分に除去可能な手段を好適に用いることができ、例えば、ゴム分を水で希釈して洗浄後、遠心分離する方法、静置してゴムを浮かせ、水相のみを排出してゴム分を取り出す方法が挙げられる。洗浄回数は、タンパク質、脂肪酸などの非ゴム成分、塩基性化合物を所望量に低減することが可能な任意の回数を採用できるが、乾燥ゴム300gに対して水1000mLを加えて撹拌した後に脱水するという洗浄サイクルを繰り返す手法なら、3回(3サイクル)以上が好ましく、5回(5サイクル)以上がより好ましく、7回(7サイクル)以上が更に好ましい。
【0034】
洗浄処理は、ゴム中のリン含有量が500ppm以下及び/又は窒素含有量が0.50質量%以下になるまで洗浄するものであることが好ましい。
【0035】
(工程1-3)
工程1-3では、工程1-2で得られた洗浄後のゴムに酸性化合物による処理が施される。前記のとおり、当該処理を施すことでゴム全体のpHが2~7に調整され、前記各種性能に優れた高純度化天然ゴムを提供できる。
【0036】
酸性化合物としては特に限定されず、塩酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ほう酸、ボロン酸、スルファニル酸、スルファミン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸などの有機酸などが挙げられる。なかでも、酢酸、ギ酸などが好ましい。
【0037】
凝集ゴムを酸で処理する方法は、凝集ゴムを上記酸性化合物に接触させる方法であれば特に限定されず、例えば、凝集ゴムを酸性化合物の水溶液に浸漬する方法、凝集ゴムに酸性化合物の水溶液を噴霧する方法などが挙げられる。上記処理温度は、好ましくは10~50℃、処理時間は、通常3秒~24時間である。
【0038】
酸性化合物の水溶液への浸漬などの処理では、pHを6以下に調整することが好ましい。該pHの上限は、より好ましくは5以下、更に好ましくは4.5以下である。下限は特に限定されず、浸漬時間にもよるが、酸が強すぎるとゴムが劣化したり、廃水処理が面倒になるため、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。なお、浸漬処理は、酸性化合物の水溶液中に凝集ゴムを放置しておくこと等で実施できる。
【0039】
処理後に、酸性化合物の処理に使用した該化合物を除去した後、処理後の凝集ゴムの洗浄処理を適宜実施してもよい。洗浄処理としては、上記と同様の方法が挙げられ、例えば、洗浄を繰り返すことで非ゴム成分等を更に低減し、所望の含有量に調整すればよい。また、酸性化合物の処理後の凝集ゴムをロール式の絞り機等で絞ってシート状などにしてもよい。凝集ゴムを絞る工程を追加することで、凝集ゴムの表面と内部のpHを均一にすることができ、所望の性能を持つゴムが得られる。必要に応じて、洗浄や絞り工程を実施した後、クレーパーに通して裁断し、乾燥することにより、前記高純度化天然ゴムが得られる。なお、乾燥は、通常の乾燥機を用いて実施できる。
【0040】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の合成ポリイソプレンゴム(IR)の含有量が20質量%以下である。合成ポリイソプレンゴム自体は、天然ゴムよりも破壊特性が低いため、20質量%以下に調整することで、良好な破壊特性が得られる傾向がある。好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0041】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の前記非改質天然ゴム、高純度化天然ゴム及び合成ポリイソプレンゴムの合計含有量が50質量%以上である。下限以上にすることで、良好なフィラーの分散性が得られ、優れた破壊特性が得られる傾向がある。好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。上限は特に限定されないが、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0042】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、シス含量が95質量%以上のハイシスポリブタジエンゴムを25質量%以上含む。下限以上にすることで、低温でのE*が上昇を抑制し、十分な氷上性能が得られる傾向がある。好ましくは28質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。上限は特に限定されないが、60質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
【0043】
ハイシスポリブタジエンゴムのシス含量は、97質量%以上が好ましい。
なお、本明細書において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0044】
ハイシスポリブタジエンゴムとしては、シス含量が95質量%以上のブタジエンゴムであれば特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0045】
ゴム成分として、前記以外に、他のゴム成分を配合してもよい。他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチル系ゴムなどが挙げられる。また、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等の他のイソプレン系ゴムも挙げられる。
【0046】
前記ゴム組成物は、窒素吸着比表面積120m/g以上200m/g未満のシリカ(高比表面積シリカ)を含む。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0047】
高比表面積シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10~50質量部である。下限以上にすることで、十分な低温での柔軟性(E*)を確保できる傾向がある。上限以下にすることで、良好なシリカ分散性が得られ、低温での柔軟性(E*)を確保できる傾向がある。下限は、12質量部以上が好ましい。上限は、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。
【0048】
高比表面積シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、十分な破壊特性が得られる観点から、好ましくは150m/g以上、より好ましくは165m/g以上である。また、該NSAは、シリカ分散性、低温での柔軟性(E*)の確保の観点から、好ましくは195m/g以下、より好ましくは185m/g以下である。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0049】
前記ゴム組成物は、高比表面積シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤の含有量は、高比表面積シリカ100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは3~10質量部である。
【0050】
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましい。
【0051】
前記ゴム組成物は、カーボンブラックを含む。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上である。好ましくは33質量部以上、より好ましくは35質量部以上である。下限以上にすることで、良好な破壊特性、耐久性が得られる傾向がある。また、上限は特に限定されないが、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
【0052】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、120m/g以上が好ましく、130m/g以上がより好ましい。下限以上にすることで、良好な破壊特性、耐久性、耐摩耗性が得られる傾向がある。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、170m/g以下がより好ましく、155m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0053】
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0055】
前記ゴム組成物は、氷雪上性能等の観点から、テルペン系樹脂を含むことが好ましい。
テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、12質量部以下が好ましく、より好ましくは1~10質量部、更に好ましくは3~8質量部である。
【0056】
テルペン系樹脂の軟化点は、氷雪上性能、耐摩耗性及び破断時伸び等の観点から、120℃以下が好ましく、より好ましくは100~120℃、更に好ましくは105~120℃である。
なお、テルペン系樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0057】
テルペン系樹脂の水酸基価(mgKOH/g-gel)は、氷雪上性能、耐摩耗性及び破断時伸び等の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0である。
なお、テルペン系樹脂の水酸基価は、テルペン系樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070:1992)により測定した値である。従って、フェノール系化合物を含まないテルペン系樹脂の場合、通常、水酸基価は0となる。
【0058】
テルペン系樹脂のSP値は、好ましくは8.60以下、より好ましくは8.40以下である。一方、好ましい下限は、8.10以上である。
なお、SP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Prameters”,Solvent and Coatings Materials Research and Development Department,Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
【0059】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0060】
ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0061】
ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。本発明では、β-ピネン樹脂を好適に使用できる。
【0062】
芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用可能である。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0063】
本発明の効果が良好に得られるという点から、テルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂が好ましく、β-ピネン樹脂がより好ましい。
【0064】
前記ゴム組成物は、オイルを配合することが好ましい。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、本発明の効果が良好に得られる点から、好ましくは1~10質量部、より好ましくは3~8質量部である。
【0065】
オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物等が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどが例示される。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が例示される。なかでも、プロセスオイルが好ましい。
【0066】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、等の製品を使用できる。
【0067】
前記ゴム組成物は、氷雪上性能等の観点から、卵殻粉を含有することが好ましい。
卵殻粉の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、良好な氷雪上性能等が得られるという点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。該含有量は、良好な耐摩耗性、破壊特性等が得られるという点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
【0068】
卵殻粉の平均粒子径は、良好な氷雪上性能等が得られるという点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。該平均粒子径は、良好な耐摩耗性、破壊特性等が得られるという点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
なお、卵殻粉の平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて測定される。
【0069】
前記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0070】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0071】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0072】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0073】
前記ゴム組成物には、前記テルペン系樹脂以外の樹脂(クマロンインデン樹脂、α-メチルスチレン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等)、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、シリカ及びカーボンブラック以外の無機充填剤や有機充填剤、オイル以外の軟化剤、硫黄以外の加硫剤(有機架橋剤等)、等を配合してもよい。
【0074】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0075】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練時(ベース練り)は、混練温度が通常50~200℃(好ましくは80~190℃)、混練時間が通常30秒~30分(好ましくは1~30分)である。加硫剤、加硫促進剤の混練時(仕上げ練り)は、混練温度が通常100℃以下(好ましくは室温~80℃)である。得られた混練物(未加硫ゴム組成物)は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度は、通常120~200℃(好ましくは140~180℃)である。
【0076】
前記ゴム組成物(加硫後ゴム組成物)は、温度0℃、周波数10Hz、初期伸長歪5%、動的伸長歪2%の条件下で、複素弾性率E*が15MPa以下であることが好ましい。E*が15Mpa以下であることで、十分な氷雪上性能が得られる傾向がある。E*は、14MPa以下がより好ましい。該E*の下限は特に限定されないが、5MPa以上が好ましく、8MPa以上がより好ましい。
【0077】
前記ゴム組成物(加硫後ゴム組成物)は、温度23℃における破断強度TBが15Mpa以上であることが好ましく、16MPa以上がより好ましい。15Mpa以上であることで、特に、トラックバスタイヤの夏季使用時のトレッドチャンキングが抑制される傾向がある。TBの上限は特に限定されないが、50MPa以下が好ましく、40MPa以下がより好ましい。
【0078】
前記ゴム組成物(加硫後ゴム組成物)は、温度23℃における破断伸びEBが420%以上であることが好ましく、440%以上がより好ましい。420%以上であることで、特に、トラックバスタイヤの夏季使用時のトレッドチャンキングが抑制される傾向がある。EBの上限は特に限定されないが、900%以下が好ましく、800%以下がより好ましい。
【0079】
なお、複素弾性率E*、破断強度TB、破断伸びEBは、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0080】
前記ゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッド(キャップトレッド)に使用される。
【0081】
スタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例
【0082】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0083】
以下に、老化防止剤分散体の調製、高純度化天然ゴムの製造で用いた各種薬品について説明する。
フィールドラテックス:ムヒバラテックス社から入手したフィールドラテックス
エマールE-27C(界面活性剤):花王(株)製のエマールE-27C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効成分27質量%)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
Wingstay L(老化防止剤):ELIOKEM社製のWingstay L(ρ-クレゾールとジシクロペンタジエンとの縮合物をブチル化した化合物)
エマルビンW(界面活性剤):LANXESS社製のエマルビンW(芳香族ポリグリコールエーテル)
タモールNN9104(界面活性剤):BASF社製のタモールNN9104(ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒドのナトリウム塩)
Van gel B(界面活性剤):Vanderbilt社製のVan gel B(マグネシウムアルミニウムシリケートの水和物)
【0084】
(老化防止剤分散体の調製)
水 462.5gにエマルビンW 12.5g、タモールNN9104 12.5g、Van gel B 12.5g、Wingstay L 500g(合計1000g)をボールミルで16時間混合し、老化防止剤分散体を調製した。
【0085】
(高純度化天然ゴムの製造)
フィールドラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、該ラテックス1000gに、10%エマールE-27C水溶液25gと25%NaOH水溶液60gを加え、室温で24時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。次いで、老化防止剤分散体6gを添加し、2時間撹拌した後、更に水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した。次いで、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加してpHを4.0に調整した後、カチオン系高分子凝集剤を添加し、2分間撹拌し、凝集させた。これにより得られた凝集物(凝集ゴム)の直径は0.5~5mm程度であった。得られた凝集物を取り出し、2質量%の炭酸ナトリウム水溶液1000mlに、常温で4時間浸漬した後、ゴムを取出した。これに、水2000mlを加えて2分間撹拌し、極力水を取り除く作業を7回繰り返した。その後、水500mlを添加し、pH4になるまで2質量%ギ酸を添加し、15分間放置した。更に、水を極力取り除き、再度水を添加して2分間撹拌する作業を3回繰返した後、水しぼりロールで水を絞ってシート状にした後、90℃で4時間乾燥して固形ゴムを得た。
【0086】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
高純度化天然ゴム:上記で製造した固形ゴム
IR:JSR(株)製のIR2200
ハイシスBR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量97質量%)
シリカA:ローディア・ジャパン社製のZEOSIL115GR(NSA110m/g)
シリカB:Evonik社製のULTRASIL VN3(NSA175m/g)
シリカC:東ソー・シリカ(株)製のニプシルAQ(NSA200m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラックN134:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN134(NSA148m/g)
老化防止剤6PPD:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX140(アロマオイル)
卵殻粉:キューピー(株)製の卵カルシウム(カルホープ)(平均粒子径:15μm)
テルペン系樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150(軟化点:115℃、Tg:62℃、水酸基価:0、SP値:8.26、β-ピネン樹脂)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0087】
〔実施例及び比較例〕
表2のベース練り工程の項目に記載の材料を、270Lのバンバリーミキサーを用いて混練した(ベース練り:回転数45rpm、排出温度150℃、再練り:回転数45rpm、排出温度140℃)。
オープンロールを用いて、ベース練り工程で得られた混練物と、表2の仕上げ練り工程の項目に記載の材料とを混練し(回転数30rpm)、ゴム温度が105℃になった時点で排出した。
仕上げ練り工程で得られた混練物(未加硫ゴム組成物)をトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃の条件下で44分間加硫し、試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ275/80R22.5)を作製した。
【0088】
得られた固形ゴム(高純度化天然ゴム)、NR(TSR20)、試験用スタッドレスタイヤについて、下記により評価し、結果を表1~2に示した。
【0089】
<pHの測定>
固形ゴム5gを3辺の合計が5mm以下(約1~2×約1~2×約1~2(mm))に切断して100mlビーカーに入れ、常温の蒸留水50mlを加えて2分間で90℃に昇温し、その後90℃に保つように調整しながらマイクロ波(300W)を13分(合計15分)照射した。次いで、浸漬水をアイスバスで冷却して25℃とした後、pHメーターを用いて、浸漬水のpHを測定した。
【0090】
<窒素含有量の測定>
(アセトン抽出(試験片の作製))
固形ゴム又はNRを1mm角に細断したサンプルを約0.5g用意した。サンプルをアセトン50g中に浸漬して、室温(25℃)で48時間後にゴムを取出し、乾燥させ、各試験片(老化防止剤抽出済み)を得た。
(測定)
得られた試験片の窒素含有量を以下の方法で測定した。
窒素含有量は、微量窒素炭素測定装置「SUMIGRAPH NC95A((株)住化分析センター製)」を用いて、上記で得られたアセトン抽出処理済みの各試験片を分解、ガス化し、そのガスをガスクロマトグラフ「GC-8A((株)島津製作所製)」で分析して窒素含有量を定量した。
【0091】
<リン含有量の測定>
固形ゴム又はNRについて、ICP発光分析装置(P-4010、(株)日立製作所製)を使用してリン含有量を求めた。
【0092】
(粘弾性試験)
試験用スタッドレスタイヤのトレッドの表面1mmを切削削除した後、幅4mm、長さ2mm、厚み2mmの試験片を作製(採取)した。岩本製作所製粘弾性試験機を用い、0℃、周波数10Hz、初期伸長歪5%、動的伸長歪1%の条件下で、各試験片の複素弾性率(E*)を測定した。
【0093】
(引張試験)
試験用スタッドレスタイヤのトレッドのショルダーリブ部位の表面1mmを切削削除した後、厚み2mmのゴムシートを作製(採取)し、ダンベル7号型の試験片を得た。(株)エー・アンド・デイ社製引張試験機(RTG-1210)を用いて試験温度23℃、引張試験速度200mm/minの条件下で、引張り試験を実施した。破断強度TB、破断伸びEBが大きいほど、破壊特性(耐久性)、耐摩耗性に優れることを示す。
TB:試験片の最細部(中央に位置するダンベルくびれ部位)の断面積あたりの破断時強度TB(Mpa)を表す。
EB:試験片を試験機にチャック間距離20mmセットし、引張試験を実施した。破断時のチャック間距離を測定し、下記式から算出される値が破断時伸びEB(%)を求めた。
破断時チャック間距離(mm)/初期チャック間距離(20mm)×100
【0094】
(氷雪上性能)
住友ゴム工業(株)の名寄スノーテスト場にて、2-D4(前輪2本、後輪4本)16トントラックを用い、試験用スタッドレスタイヤ4本を後輪に装着した。氷上温度-1℃~+3℃条件下において、停止から発進を開始し、時速10km/hに到達するまでに要した時間(秒)を指数化した。比較例1を基準とし、指数表示した。指数が大きいほど、氷上グリップ性能が良好であることを示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表1、2より、NR、高純度化天然ゴム、IR、ハイシスポリブタジエンゴム、高窒素吸着比表面積シリカ、カーボンブラックを所定配合で含む実施例のゴム組成物は、氷雪上性能が優れていた。また、TB、EBが大きく、破壊特性、耐摩耗性、耐久性にも優れていた。