(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】振動トレーニング装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61H 1/00 20060101AFI20220119BHJP
A63B 23/00 20060101ALI20220119BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20220119BHJP
A63B 21/015 20060101ALI20220119BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61H1/00 311D
A63B23/00 F
A63B24/00
A63B21/015
A63B23/04 A
(21)【出願番号】P 2017169866
(22)【出願日】2017-09-04
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊井 司
(72)【発明者】
【氏名】島井 紀正
(72)【発明者】
【氏名】赤松 典雅
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105997425(CN,A)
【文献】特表2009-502319(JP,A)
【文献】国際公開第2009/081938(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/203664(WO,A1)
【文献】特開2002-177351(JP,A)
【文献】特表2008-531238(JP,A)
【文献】特開2009-219731(JP,A)
【文献】特表2009-506863(JP,A)
【文献】登録実用新案第3144405(JP,U)
【文献】特開2008-061965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/00
A63B 23/00
A63B 24/00
A63B 21/015
A63B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席、及び、前記座席を支持する支持機構を含む椅子ユニットと、
使用者が前記座席に座った状態で足を乗せる振動プレート、及び、前記振動プレートを振動させる振動発生器を含む振動発生ユニットと、
床面上に設置され、前記椅子ユニット及び前記振動発生ユニットが固定された支持ベースと、
前記振動発生ユニット上に立設された支柱と、
前記支柱に支持されたハンドルであって、使用者がトレーニング中に把持するハンドルと、
を備え、
前記支持機構は、前記座席を昇降可能に支持し、
前記座席の昇降方向は、鉛直方向に対して傾斜しており、前記座席は、上方に向かうに連れて前記振動プレートから離れるように昇降
し、
前記ハンドルは、使用者が把持する位置が可変するように前記支柱に支持されており、前記ハンドルの位置で前記座席に座った使用者のトレーニング中の姿勢を前傾姿勢に変えて維持する振動トレーニング装置。
【請求項2】
前記座席の昇降方向の傾斜角度は、20°以上70°以下である請求項1に記載の振動トレーニング装置。
【請求項3】
前記座席は、前記支持機構に鉛直軸周りに回転可能に支持されている請求項1又は2に記載の振動トレーニング装置。
【請求項4】
前記ハンドルは、前記支柱から左右に突き出る一対のU字型の棒状部の先端が連結された形状をなしている請求項1から3のいずれかに記載の振動トレーニング装置。
【請求項5】
前記ハンドルは、前記支柱に水平軸周りに回転可能に支持されている請求項4に記載の振動トレーニング装置。
【請求項6】
前記支柱に設けられた操作部と、
前記支持機構を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、使用者による前記操作部の操作に基づき、前記座席を昇降させる請求項1から5のいずれかに記載の振動トレーニング装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記振動発生器の動作を制御しており、使用者による前記操作部の操作に基づき、前記振動プレートに与える振動の振幅及び周波数を調整する請求項6に記載の振動トレーニング装置。
【請求項8】
前記操作部は、使用者に固有のIDを入力できる入力ボタンを備え、
前記制御部は、前記入力ボタンにより入力された前記IDに関連付けられた使用者情報を取得し、該使用者情報に基づき、前記座席を昇降させて最適位置に調整するとともに、前記振動プレートに所定の振幅及び周波数の振動を発生させる請求項7に記載の振動トレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を与えて筋肉を刺激することにより、身体機能を向上する振動トレーニング装置及その使用方法に関し、特に、高齢者、リハビリ患者等が安全に使用することができる振動トレーニング装置及その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、医学の発展に伴い、健康寿命と平均寿命の差が広がっており、社会生活を快適に営むうえで必要な身体機能の向上は懸案事項となっている。そのような状況下で、アスリート、若年層、健常者を対象としたトレーニング装置は多数存在するものの、高齢者等を対象とした、安全に使用できるトレーニング装置の存在は少ない。
【0003】
例えば、特許文献1には、高齢者等の下肢筋力を向上させ、自立歩行が可能な状態まで回復させる椅子型のトレーニング装置が開示されている。特許文献1のトレーニング装置は、椅子の着座部が前端部を支点として水平状態から後端部が上昇して傾斜状態となり、この傾斜状態で一定時間保持してから着座部が水平状態に戻る。これを1サイクルとした動作を複数サイクル繰り返すことで、使用者の下肢に負荷がかかり、着座したまま筋力強化のトレーニングを行うことができる。しかしながら、特許文献1のトレーニング装置では、着座部の後端部が上昇することで使用者は前傾姿勢となるため、前方に転倒するリスクが高まるが、その対策としては肘掛けしかないため、安全面で課題を有する。
【0004】
また、近年は、振動により身体に刺激を与えることにより、筋力を向上させるトレーニング装置が提案されている。例えば、特許文献2には、使用者が振動プレート上に乗って立った状態で振動プレートにより振動が付与されるトレーニング装置が開示されている。このトレーニング装置は、使用者の要求に合わせて付与される振動周波数と変位量を調整することができる。しかしながら、特許文献2のトレーニング装置は、振動プレート上に立ってトレーニングを行うため、高齢者等は転倒や転落しやすく、たとえハンドルを握っていたとしても危険性が高い。また、立った状態では、振動が脳に伝わりやすく、軽い脳震盪を引き起こす原因になるが、その対策は何ら施されておらず、脳への振動の伝達を抑制するためには、足をうまく曲げてトレーニングを行う必要があるが、高齢者等にとっては難度が高い。このように、特許文献2のトレーニング装置は、安全面で課題を有するうえ、高齢者等には使い難いとの課題も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-215894号公報
【文献】特許第4519844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高齢者等であっても安全にトレーニングを行うことができ、身体機能の向上を図ることができる振動トレーニング装置及びその使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の振動トレーニング装置は、座席、及び、前記座席を支持する支持機構を含む椅子ユニットと、使用者が前記座席に座った状態で足を乗せる振動プレート、及び、前記振動プレートを振動させる振動発生器を含む振動発生ユニットと、床面上に設置され、前記椅子ユニット及び前記振動発生ユニットが固定された支持ベースと、を備える。
【0008】
本発明の好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記支持機構は、前記座席を昇降可能に支持する。より好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記座席の昇降方向は、鉛直方向に対して傾斜しており、前記座席は、上方に向かうに連れて前記振動プレートから離れるように昇降する。さらに好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記座席の昇降方向の傾斜角度は、20°以上70°以下である。
【0009】
また、本発明の好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記座席は、前記支持機構に鉛直軸周りに回転可能に支持されている。
【0010】
また、本発明の好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記振動発生ユニット上に立設された支柱と、前記支柱に支持されたハンドルと、をさらに備える。さらに好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記ハンドルは、前記支柱に水平軸周りに回転可能に支持されている。
【0011】
また、本発明の好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記支柱に設けられた操作部と、前記支持機構を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、使用者による前記操作部の操作に基づき、前記座席を昇降させる。さらに好ましい実施形態の振動トレーニング装置においては、前記制御部は、前記振動発生器の動作を制御しており、使用者による前記操作部の操作に基づき、前記振動プレートに付与する振動の振幅及び周波数を調整する。
【0012】
上記課題を解決する本発明の振動トレーニング装置の使用方法は、使用者が前記座席に座るとともに、前記振動プレート上に足を乗せて体重をかけた状態で前記振動発生器により振動を発生させることにより、身体をトレーニングする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者は、座席に座った状態で足を振動プレート上に乗せて、振動プレートに体重がかかる姿勢を維持することで、下肢に負荷がかかった状態で振動発生器からの振動が振動プレートを介して付与される。これにより、効果的に下肢筋肉等が刺激されるため、身体機能(例えば下肢筋力やバランス能力)の向上を図ることができる。また、座席に座りながらトレーニングを行うことができるので、振動プレート上からの転倒や転落を防止でき、さらに、腰や膝を曲げた状態で使用することにより振動の伝達が緩和されて、脳への振動伝達に伴う脳震盪等の危険性を回避することができるので、高齢者等であっても安全にトレーニングを行うことができる。
【0014】
なお、本発明の振動トレーニング装置では、アスリート、若年層、健常者等も身体機能向上のトレーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる振動トレーニング装置の側面図である。
【
図2】椅子ユニットの支持機構の概略構成を示した振動トレーニング装置の側面図である。
【
図4】振動発生モジュールを拡大して示す斜視図である。
【
図5】振動発生ユニット、支柱、ハンドル及び操作部の斜視図である。
【
図6】振動トレーニング装置の機能を示す機能ブロック図である。
【
図7】振動トレーニング装置の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る振動トレーニング装置1は、
図1に示すように、支持ベース2と、椅子ユニット3と、振動発生ユニット4と、支柱5と、ハンドル6と、操作部7と、制御部8と、を備えている。なお、以下の説明においては、使用者が装置使用時に前を向く方向を前方側、その反対方向を後方側としている。
【0017】
支持ベース2は、椅子ユニット3及び振動発生ユニット4を支持するものであり、支持ベース2の上側に、椅子ユニット3及び振動発生ユニット4が固定されている。支持ベース2の下側には、複数の脚部20が設けられ、脚部20を介して床面上に設置される。脚部20には、周囲に伝わる振動を減衰するためのゴム足を設けてもよい。
【0018】
次に、椅子ユニット3は、
図1及び
図2に示すように、支持ベース2の後方側に一体に設けられている。椅子ユニット3は、トレーニング時に使用者が着座する座席30と、座席30を支持する支持機構9とを含んでいる。
【0019】
座席30は、着座部31と、使用者の後方への傾倒を防止する背もたれ部32とを備えている。着座部31からは軸部33が下方に突き出ており、座席30は軸部33を中心に回転可能である。これにより、座席30を左右に回転できるので、使用者がトレーニング時に座席30を乗り降りし易くなっている。
【0020】
支持機構9は、
図2に示すように、座席30を支持する支持体90と、支持体90を昇降動作させる昇降駆動機構91と、支持体90の昇降動作をガイドするガイドレール92と、ガイドレール92が固定された基台93とを備えている。
【0021】
支持体90は、軸部33を保持し、軸部33を介して座席30を回転可能に支持する。基台93は、支持フレーム2上に固定されている。昇降駆動機構91、ガイドレール92及び基台93等は、支持フレーム2上に取り付けられたハウジング94内に格納されている。
【0022】
昇降駆動機構91は、本実施形態では、ねじ軸910、ナット911及びボール(図示せず)等を備えるボールねじで構成されている。ナット911は、接続板95を介して支持体90に接続されている。このボールねじは、モータ96を駆動源とし、モータ96の正逆回転をねじ軸方向の往復直線運動に変換して支持体90に伝達し、これにより、支持体90を昇降動作させる。モータ96には、エンコーダ97が取り付けられている。
【0023】
ガイドレール92は、基台93に左右方向に間隔をあけて2つ設けられている。ガイドレール92には、ガイドブロック98がレール方向に間隔をあけて2つ、それぞれが摺動可能に取り付けられている。ガイドブロック98は、接続板99を介して支持体90に接続されている。支持体90には、左右一対の接続板99が接続板95を間に挟んで取り付けられている。ガイドレール92は、レール方向に滑らかにガタツキなく支持体90が昇降動作するよう補助する。
【0024】
座席30の昇降方向は、鉛直方向に対して傾斜しており、座席30は、上方に向かうに連れて振動発生ユニット4の振動プレート40から離れるように昇降する。本実施形態では、昇降駆動機構91のボールねじのねじ軸910及びガイドレール92が、上端部が下端部よりも上方かつ後方に位置するように斜め後方に倒れた状態で配置されており、座席30は、ねじ軸910及びガイドレール92の傾斜に沿って、
図1に示すX方向に昇降する。これにより、座席30の振動プレート40からの高さh及び距離lが変化し、この高さh及び距離lに応じて座席30に座った使用者の姿勢を制御することができる。座席30に座って振動プレート40上に配置されたマット43上に足を乗せた使用者は、座席位置(座席30の振動プレート40からの高さh及び距離l)で姿勢が変わり、これに伴い、足で振動プレート40を押し付ける荷重が変わるため、下肢に作用する負荷の程度が調整される。座席30の昇降方向の鉛直方向に対する傾斜角度θは、特に限定されるものではないが、好ましくは20°以上70°以下である。
【0025】
なお、昇降駆動機構91としては、支持体90を昇降動作できるものであれば特に限定されるものではなく、ボールねじの他、ラック・ピニオン、シリンダー等で構成することができる。
【0026】
次に、振動発生ユニット4は、
図1に示すように、支持ベース2の前方側に一体に設けられている。振動発生ユニット4は、使用者が座席30に座った状態で下肢を乗せる振動プレート40と、振動プレート40を振動させる振動発生器41と、振動プレート40を保持する保持部材42とを含んでいる。
【0027】
保持部材42は、下面に凹所を有し、この凹所に振動プレート40が嵌め込まれている。また、保持部材42は、使用者が搭乗できる略矩形状の平坦なステップ面を上面に有しており、ステップ面には滑り止めとしてマット43が配設されている。振動プレート40の直下に振動発生器41が配置され、振動発生器41から発生した振動が振動プレート40に伝わり、振動プレート40上に配置されたマット43を介して、マット43上に乗せられた使用者の足に振動が付与される。
【0028】
振動発生ユニット4には、使用者が座席30に座って振動プレート40に足を乗せて体重をかけた際に、振動プレート40にかかる使用者の足の荷重(重量)を計測する荷重センサ11(
図6に示す)が設けられている。この荷重センサ11は、例えばロードセルを用いることができる。荷重センサ11により振動プレート40にかかる使用者の足の荷重を計測することで、効果的なトレーニングを行うための必要な負荷が下肢に作用しているか否かを判断できる。荷重センサ11は、振動プレート40にかかる使用者の足の荷重を計測すると、後述する制御部8に出力する。
【0029】
振動発生器41は、ハウジング44内に格納されている。ハウジング44は、支持ベース2上に取り付けられ、ハウジング44上に保持部材42が敷設されている。
【0030】
振動発生器41は、
図3及び
図4に示すように、モータ45を駆動源とし、モータ45の回転を高速上下振動に変換するものである。振動発生器41は、支持フレーム2上に固定されたモータ45と、振動プレート40下に固定された振動発生モジュール46と、モータ45のトルクを振動発生モジュール46に伝達する伝達手段47と、振動減衰手段48とを備えたもので構成することができる。
【0031】
振動発生モジュール46は、
図3及び
図4に示すように、振動プレート40に接続された2つの固定板460と、両固定板460に回転可能に支持された1つのプロペラシャフト461及び2つの回転シャフト462と、各回転シャフト462に固定されて一体に回転する第1の錘体463と、各回転シャフト462に回転可能に支持された第2の錘体464と、各回転シャフト462に一体回転可能に固定され第2の錘体464を回転駆動する駆動部材465とを備えている。第1の錘体463は例えば鉄製であり、第2の錘体464は例えばアルミニウム製である。各錘体463,464及び駆動部材465は、両固定板460の間に配置されている。プロペラシャフト461及び各回転シャフト462には、それぞれプーリ470,471が一体回転可能に固定されている。各プーリ470,471は、一方の固定板460の外側に配置され、両面に歯のあるタイミングベルト472で繋がれている。各プーリ470,471及びタイミングベルト472は、伝達手段47を構成する。
【0032】
この振動発生モジュール46は、モータ45の動力がプロペラシャフト461を介してプーリ470に伝えられてプーリ470が回転すると、タイミングベルト472の作用により他の2つのプーリ471が互いに逆方向に同期回転して、それぞれの回転シャフト462に固定された第1の錘体463が互いに逆方向に同期回転する。これにより、各第1の錘体463の横方向の遠心力が互いに打ち消されるため、偏芯モジュール46及び偏芯モジュール46が連結された振動プレート40が主に鉛直方向に振動する。
【0033】
また、振動発生モジュール46は、第1の錘体463とともに、第2の錘体464を備えており、第2の錘体464は、第1の錘体463と異なり、一体回転するように回転シャフト462に固定されておらず、回転シャフト462に対して回転可能である。回転シャフト462の表面には突起状の駆動ピン(図示せず)が設けられ、この駆動ピンが駆動部材465にある凹部に係合することで、駆動部材465が回転シャフト462と一体回転可能となる。駆動部材465には樹脂カラー466がネジ止めで固定されており、駆動部材465の回転に合わせて樹脂カラー466が第2の錘体464に接触し、第2の錘体464を回転シャフト462の周方向に駆動する。これにより、第2の錘体464が回転することになる。ここで、回転シャフト462が一方向(
図4のa方向)に回転するときには、第2の錘体464の回転時の位置は、第1の錘体463とは180°反対側の位置に保持され、第1の錘体463の遠心力が低減されることで、鉛直方向の振動が弱められる。これに対して、回転シャフト462が逆方向(
図4のb方向)に回転するときには、第2の錘体464の回転時の位置は、第1の錘体463と同じ位置に保持され、第1の錘体463の遠心力が増加されることで、鉛直方向の振動が強められる。よって、振動発生モジュール46により、モータ46の回転方向を変えることで、振動の大きさ(振幅)を2段階に調節することができる。
【0034】
振動減衰手段48は、
図3に示すように、振動プレート40及び振動プレート40に固定された振動発生モジュール46を常時、支持している。振動減衰手段48は、振動プレート40に連結された複数(本実施形態では4つ)の第1の弾性部材480と、支持ベース2に連結された複数(本実施形態では4つ)の第2の弾性部材481と、振動プレート40及び支持ベース2の間に平行に配置され、第1の弾性部材480及び第2の弾性部材481がそれぞれ連結される中間部材482とを備えている。各弾性部材480,481は、特定のものに限定されるものではなく、例えば金属バネを用いることができる。中間部材482は、本実施形態では、2枚の直線状の板材で構成され、各板材により1組同士の第1の弾性部材480及び第2の弾性部材481が接続されているが、環状の板材により4つの第1の弾性部材480及び第2の弾性部材481が接続されていてもよい。
【0035】
この振動減衰手段48により、振動発生モジュール46で発生した振動の装置本体への伝達が軽減され、装置全体あるいは床等の建物にダメージを与えることを防止することができる。なお、各弾性部材480,481に減衰性能を向上できる特殊シートを巻くことで、さらに共振現象の抑制を図ることができる。
【0036】
なお、振動発生器41としては、鉛直方向の振動を発生できるものであれば、特に限定されるものではなく、この種の装置に用いられる他の公知の振動発生器で構成することができる。
【0037】
次に、支柱5は、
図1、
図2及び
図5に示すように、保持部材42の上面に立設されている。支柱5には、使用者がトレーニング中に把持可能なハンドル6が設けられている。また、支柱5の上端部には、操作部7が設けられている。
【0038】
次に、ハンドル6は、
図5に示すように、支柱5から左右に突き出る一対のU字型の棒状部の先端が連結された形状をなしており、水平軸H周りに回転可能に支柱5に支持されている。これにより、ハンドル6の角度を変化させることができ、このハンドル6の角度に応じて、座席30に座った使用者の姿勢を制御することができる。座席30に座ってハンドル6を把持した使用者は、ハンドル6の位置で姿勢が変わり、これに伴い、足で振動プレート40を押し付ける荷重が変わるため、下肢に作用する負荷の程度が調整される。また、座席30に座ってハンドル6を把持した状態でトレーニングするため、使用者、特に高齢者等が座席30から転落、転倒することが防止される。なお、ハンドル6は、必ずしも角度が可変である必要はなく、支柱5に回転不能に固定され、使用者の前傾姿勢が維持できる形状であれば、その角度が不変であってもよい。また、ハンドル6の形状は、図示例の形状に限定されるものではなく、例えば支柱5から一対のI字型の棒状部が左右に突き出た形状をなしていてもよい。
【0039】
次に、操作部7は、
図5に示すように、使用者により操作される入力手段70及び使用者に表示する表示手段71を備えている。入力手段70は、例えばボタンやスイッチで構成される。例えば、トレーニング(振動発生)を開始するスタートボタン、トレーニング(振動発生)を停止するストップボタン、座席30を昇降させる昇降ボタン、トレーニングで付与される振動の振動条件(周波数及び振幅)を調節する調節ボタン、トレーニング時間を設定する設定ボタン等を装置に設けることができる。なお、振幅は、高又は低の2段階で調節することができ、周波数は、例えば、30Hz、35Hz又は40Hzの3段階で調節することができる。
【0040】
また、入力手段70として、トレーニングモードを選択する選択ボタンを装置に設けてもよい。トレーニングモードは、例えばバランス感覚や柔軟性等に関するトレーニング目的ごとに、振動条件(周波数及び振幅)、運動態様(間欠運動又は連続運動)、トレーニング時間等のトレーニング内容が予め設定されていて、この設定されたトレーニング内容でトレーニングを行うものである。なお、このトレーニングモードごとのトレーニング内容は、使用者ごとに異なるトレーニングデータを後述する制御部8の記憶部81に記憶させることができる。
【0041】
表示手段71は、例えばLED等のランプや液晶ディスプレイ等の画面で構成され、使用者が調節、設定、選択等した内容が表示される他、トレーニングの残り時間、荷重センサ11により計測される座席30に座った使用者の下肢に作用する負荷の状態(例えば、必要な負荷に対する現状の負荷の割合)等が表示される。使用者の座位姿勢によって必要な負荷が下肢に作用していない場合には、昇降ボタンを操作することで座席30を上昇させて、使用者の姿勢をより前傾姿勢とすることで、使用者の下肢に作用する負荷を大きくすることができる。なお、操作部7の各種ボタン及び表示手段は、タッチパネルやタブレット等で構成してもよい。
【0042】
次に、制御部8は、
図7に示すように、処理部80、記憶部81及び計時部(タイマー)82等を備え、装置全体の動作を制御する。例えば、制御部8は、振動発生器41を制御し、操作部7により使用者が設定した振動条件(周波数及び振幅)の振動を発生させる。また、制御部8は、昇降駆動機構91を制御し、使用者による操作部7の操作に基づき座席30を移動させることで、座席位置を所定位置に調整する。
【0043】
処理部80は、プロセッサ(CPU)により構成される。記憶部81は、処理部80の各種処理の作業領域に使用する読み出し及び書き込み可能メモリ(RAM)、コンピュータプログラム及び各種データを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)等により構成される。計時部82は、装置によるトレーニングを開始したときに計時を開始し、トレーニング時間を計測する。制御部8は、例えば制御基板(図示せず)に実装される等して装置に設けられている。
【0044】
制御部8には、操作部7(入力手段70及び表示手段71)、荷重センサ11、振動用モータドライバ回路12、昇降用モータドライバ回路13等が接続されている。振動用モータドライバ回路12には、モータ45が接続され、昇降用モータドライバ回路13には、モータ96及びエンコーダ97が接続されている。操作部7の入力手段70は、使用者により操作されると、操作信号を制御部8に出力する。制御部8は、受け付けた操作信号に基づいて、振動用モータドライバ回路12及び昇降用モータドライバ回路13を制御するとともに、操作部7の表示手段71の動作を制御する。振動用モータドライバ回路12は、制御部8からの制御信号に従ってモータ45を動作させて、所定の振動条件(周波数及び振幅)の振動を振動発生器41から発生させる。昇降用モータドライバ回路13は、制御部8からの制御信号に従ってモータ96を動作させて、座席30を所定の座席位置に移動させる。
【0045】
次に、上記構成の振動トレーニング装置1の使用方法について説明する。まず、使用者は、
図7に示すように、座席30に座り、足をマット43(振動プレート40)上に乗せる。また、ハンドル6を回転させて前傾姿勢が維持できる角度に調整する。そして、操作部7の表示手段71に表示された使用者の下肢に作用する負荷の状態を参考に、必要な負荷が下肢に作用していない場合には、操作部7の入力手段70(昇降ボタン)を操作して座席30を昇降させて、座席位置を必要な負荷が下肢に作用する位置に調整する。これにより、効果的なトレーニングを行うことが可能となる。そして、使用者は操作部7の入力手段70(調節ボタン、設定ボタン、選択ボタン等)を操作して、振動発生器41により発生させる振動の条件(振幅及び周波数)を設定し、入力手段70(スタートボタン)を操作して振動を発生させる。これにより、使用者に足を通じて振動が付与され、効果的に下肢筋肉等が刺激されることで、身体機能(例えばバランス感覚や柔軟性等)への好影響が期待できる。
【0046】
上記構成の振動トレーニング装置1によれば、座席30に座りながらトレーニングを行うことができるので、振動プレート40上からの転倒や転落、また、脳への振動伝達に伴う脳震盪等の危険性を回避することができる。よって、高齢者等であっても安全にトレーニングを行うことができる。
【0047】
また、使用者の身長や身体の状態に合わせて座席30を昇降させることで、座席位置(座席30の振動プレート40からの高さh及び距離l)を最適な位置に調整することができ、これにより、効果的な負荷を使用者の下肢に作用させた状態でトレーニングを行うことができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、座席30の昇降方向は、鉛直方向に対して傾斜しているが、座席30は鉛直方向に昇降してもよい。また、座席30は、必ずしも昇降する必要はなく、支持機構9に昇降不能に支持されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、操作部7が使用者情報(身長、体重等)を入力できる入力ボタンを備えており、入力された使用者情報に基づいて、制御部8が自動的に座席30を昇降させて、座席位置を必要な負荷が下肢に作用する最適位置に調整してもよい。この場合、制御部8は、入力されたトレーニングモードをさらに参考にして座席位置の調整をしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、操作部7が各使用者に固有のIDを入力できる入力ボタンを備えるとともに、IDごとに身長、体重、トレーニングモード等の使用者情報が関連付けされているデータベースを備える外部コンピュータ(図示せず)に、制御部8をネットワークを介して接続する。そして、操作部7により入力されたIDをもとに制御部8が当該IDに関連付けられた使用者情報を外部コンピュータから取得することで、この使用者情報に基づいて、制御部8が自動的に座席30を昇降させて、座席位置を最適位置に調整するとともに、所定の振動条件(振幅及び周波数)による振動を発生させて、所望のトレーニングを行わせるようにしてもよい。また、使用者情報の特定は、指紋認証や顔認証等の方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 振動トレーニング装置
2 支持ベース
3 椅子ユニット
4 振動発生ユニット
5 支柱
6 ハンドル
7 操作部
8 制御部
9 支持機構
30 座席
40 振動プレート
41 振動発生器