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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】浴室壁部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E04H1/12 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017178796
(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公開番号】P2019052508
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】石間 敦
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095876(JP,A)
【文献】特開平09-004079(JP,A)
【文献】国際公開第2010/030060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E04B 1/68 - 1/686
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面と、前記床面の外縁に沿って設けられた壁載せ凹部と、を有する洗い場床と、
前記壁載せ凹部内に設けられた凹状の壁受け部材と、
前記床面側を向く表面を有し、下端を前記壁受け部材に挿入した状態で前記壁載せ凹部及び前記壁受け部材の上に載置された浴室壁部材と、
を備え、
前記壁載せ凹部は、
前記床面よりも下方に凹んだ内底面と、
前記内底面の前記床面側の一端側に設けられ、前記内底面から前記床面に向かって上方に延びる第1内側面と、
前記内底面の他端側に設けられ、前記内底面から上方に延びる第2内側面と、
を有し、
前記壁受け部材は、
前記内底面の上に設けられた底面部と、
前記底面部の前記床面側の一端側から上方に延びる第1側面部と、
前記底面部の他端側から上方に延びる第2側面部と、
を有し、
前記第1側面部の上端は、前記床面よりも下方に位置し、前記第1内側面と前記浴室壁部材の前記表面とともにコーキング材の塗布を可能とする空間を設け、
前記第1側面部の前記上端の前記コーキング材に対する接着性は、前記第1内側面の前記コーキング材に対する接着性、及び前記浴室壁部材の前記表面の前記コーキング材に対する接着性よりも低く、
前記床面から前記浴室壁部材に向かう幅方向において、前記第1側面部の前記上端の中央部は、前記第1側面部の前記上端の両端部よりも高く、
前記第1側面部は、本体部と、前記本体部の上端に設けられた先端部と、を有し、
前記第1側面部の前記上端は、前記先端部に設けられ、
前記本体部及び前記底面部の前記コーキング材に対する接着性は、前記先端部の前記コーキング材に対する接着性よりも高いことを特徴とする浴室壁部材の取付構造。
【請求項2】
前記床面と前記浴室壁部材の前記表面との間の間隔は、前記床面から前記第1側面部の前記上端の前記中央部までの深さよりも広いことを特徴とする請求項1記載の浴室壁部材の取付構造。
【請求項3】
前記第1側面部の前記上端の前記中央部は、前記両端部に向かって徐々に低くなるアーチ状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室壁部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室壁部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
洗い場床及び浴室壁部材を備えた浴室が知られている。また、浴室壁部材の配置位置を規定するために、洗い場床の上面に壁載せ凹部を設け、この壁載せ凹部に壁受け部材及び浴室壁部材を挿入・配置する浴室壁部材の取付構造も知られている(例えば、特許文献1)。壁受け部材は、凹状に形成され、浴室壁部材は、下端を壁受け部材に挿入した状態で壁載せ凹部の上に載置される。
【0003】
このような浴室壁部材の取付構造において、水が壁載せ凹部を抜けて浴室外、すなわち建築躯体側に漏れてしまうことを抑制するために、壁載せ凹部と浴室壁部材と壁受け部材とで囲まれた空間にシリコーンなどのコーキング材を塗布することが行われている。
【0004】
しかしながら、コーキング材を塗布したとしても、時間の経過や浴室壁部材に加わる予期せぬ外力により、コーキング材が壁載せ凹部や浴室壁部材から剥がれてしまう可能性がある。その結果、水が壁載せ凹部を抜けて浴室外に漏れてしまう可能性があった。従って、出願人は、これまでも壁載せ凹部、浴室壁部材、及び壁受け部材に対する接着性が高い(剥がれ難い)コーキング材の材質や打ち方について検討してきたが、まだまだ検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-166540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、時間の経過や浴室壁部材に加わる外力などによるコーキング材の剥がれを抑制可能な浴室壁部材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、床面と、前記床面の外縁に沿って設けられた壁載せ凹部と、を有する洗い場床と、前記壁載せ凹部内に設けられた凹状の壁受け部材と、前記床面側を向く表面を有し、下端を前記壁受け部材に挿入した状態で前記壁載せ凹部及び前記壁受け部材の上に載置された浴室壁部材と、を備え、前記壁載せ凹部は、前記床面よりも下方に凹んだ内底面と、前記内底面の前記床面側の一端側に設けられ、前記内底面から前記床面に向かって上方に延びる第1内側面と、前記内底面の他端側に設けられ、前記内底面から上方に延びる第2内側面と、を有し、前記壁受け部材は、前記内底面の上に設けられた底面部と、前記底面部の前記床面側の一端側から上方に延びる第1側面部と、前記底面部の他端側から上方に延びる第2側面部と、を有し、前記第1側面部の上端は、前記床面よりも下方に位置し、前記第1内側面と前記浴室壁部材の前記表面とともにコーキング材の塗布を可能とする空間を設け、前記第1側面部の前記上端の前記コーキング材に対する接着性は、前記第1内側面の前記コーキング材に対する接着性、及び前記浴室壁部材の前記表面の前記コーキング材に対する接着性よりも低く、前記床面から前記浴室壁部材に向かう幅方向において、前記第1側面部の前記上端の中央部は、前記第1側面部の前記上端の両端部よりも高いことを特徴とする浴室壁部材の取付構造である。
【0008】
この浴室壁部材の取付構造によれば、コーキング材が塗布される壁受け部材の第1側面部の上端を、壁載せ凹部の第1内側面及び浴室壁部材の表面よりも、あえてコーキング材の接着性の低いものとするとともに、上端の中央部を両端部よりも高くしている。これにより、空間内に塗布されたコーキング材が壁載せ凹部の第1内側面及び浴室壁部材の表面よりも壁受け部材の第1側面部の上端に接着しにくくさせるとともに、空間内に塗布されたコーキング材の中央部分の厚さを、両端部分よりも薄くすることができる。その結果、時間の経過や外力などで第1内側面と浴室壁部材の表面との間の間隔が変化した場合に、コーキング材の幅方向における中央部分を、コーキング材の幅方向における両端部分よりも伸び縮みさせ易くすることができる。これにより、コーキング材と第1内側面との接触界面、及びコーキング材と浴室壁部材の表面との接触界面に大きな応力が加わることを抑制し、第1内側面及び浴室壁部材の表面からコーキング材が剥がれてしまうことを抑制することができる。以上のことより、時間の経過や浴室壁部材に加わる外力などによるコーキング材の剥がれを抑制可能な浴室壁部材の取付構造を提供することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記床面と前記浴室壁部材の前記表面との間の間隔は、前記床面から前記第1側面部の前記上端の前記中央部までの深さよりも広いことを特徴とする浴室壁部材の取付構造である。
【0010】
この浴室壁部材の取付構造によれば、空間内に塗布されたコーキング材の幅方向における中央部分の厚さを、空間内に塗布されたコーキング材の幅方向の長さよりも薄くすることができ、コーキング材の幅方向における中央部分の伸縮性をより向上させることができる。従って、コーキング材の剥がれを、より確実に抑制することができる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第1側面部の前記上端の前記中央部は、前記両端部に向かって徐々に低くなるアーチ状であることを特徴とする浴室壁部材の取付構造である。
【0012】
この浴室壁部材の取付構造によれば、空間内に塗布されたコーキング材が幅方向における中央部分で急激に薄くなってしまうことを抑制することができる。例えば、時間の経過や外力などで第1内側面と浴室壁部材の表面との間の間隔が広くなった場合に、コーキング材の幅方向における中央部分に局所的に応力が加わり、コーキング材の幅方向における中央部分に割れなどが生じてしまうことを抑制することができる。
【0013】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記第1側面部は、本体部と、前記本体部の上端に設けられた先端部と、を有し、前記第1側面部の前記上端は、前記先端部に設けられ、前記本体部及び前記底面部の前記コーキング材に対する接着性は、前記先端部の前記コーキング材に対する接着性よりも高いことを特徴とする浴室壁部材の取付構造である。
【0014】
この浴室壁部材の取付構造によれば、壁受け部材の第1側面部の上端のコーキング材に対する接着性を低くしつつ、本体部及び底面部のコーキング材に対する接着性を高くしている。これにより、例えば、壁受け部材と壁載せ凹部との間にコーキング材を塗布する場合や、壁受け部材と浴室壁部材との間にコーキング材を塗布する場合に、コーキング材を適切に壁受け部材に接着することができ、各部材間における止水性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、時間の経過や浴室壁部材に加わる外力などによるコーキング材の剥がれを抑制可能な浴室壁部材の取付構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態にかかる浴室壁部材の取付構造を備えた浴室ユニットを模式的に表す斜視図である。
図2】本実施形態に係る洗い場床を模式的に表す分解斜視図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る浴室壁部材の取付構造を模式的に表す断面図である。
図4】壁受け部材の一部を拡大して模式的に表す部分断面図である。
図5】実施形態に係る浴室壁部材の取付構造の変形例を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態にかかる浴室壁部材の取付構造を備えた浴室ユニットを模式的に表す斜視図である。
図1に表したように、浴室ユニット10は、洗い場床100と、浴槽200と、浴室壁部材300と、を備えている。
浴槽200の底部裏面における四隅近傍には、支持脚260が設けられ、その支持脚260を介して、浴槽200は浴室設置面(例えば、建物の床)Sの上に設置される。支持脚260は、ボルト部を回転させることで高さ調節可能な構造を有する。
【0018】
洗い場床100は、周縁部が上側に折り曲げられた浅底の器状(パン状)に形成され、浴室外部に水を漏出させない防水性を有する。そして、ボルト部を回転させることで高さ調節可能な構造を有する支持脚111を介して浴室設置面S上に設置されている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0019】
浴室壁部材300は、浴室ユニット10の4面を構成しており、本実施形態の浴室壁部材としての第1~第6の浴室壁部材310~360を有する。浴室壁部材300は、浴室ユニット10の立ち壁面を形成する。隣接する浴室壁部材の間には、隣接する浴室壁部材同士を連接する接続部材305が洗い場床100の外周部100aに立設されている。
【0020】
第1の浴室壁部材310は、洗い場床100の浴槽200とは反対側に配置されており、2枚の浴室壁部材が図示しない接続部材305によって連接されている。第2の浴室壁部材320及び第3の浴室壁部材330は、第1の浴室壁部材310と直交し、互いに対向して配置されている。第4~第6の浴室壁部材340~360は、浴槽200の縁のうち、洗い場床100側を除く3辺の縁の上に配置されている。第4の浴室壁部材340及び第5の浴室壁部材350の下側には、浴槽200と第2の浴室壁部材320及び第3の浴室壁部材330との間をつなぐ小パネル370が設けられている。小パネル370は、本実施形態の浴室壁部材300の一つである。
【0021】
なお、本実施形態における浴室壁部材300の構成は、これだけに限定されず、1枚のパネルが複数パネルに分割されている構成や、隣接する複数枚のパネルが一体化されている構成であってもよい。
【0022】
また、図1に例示した浴室ユニット10では、第3の浴室壁部材330には図示しないドア取付枠を介してドアDRが設けられている。本実施形態では、ドア取付枠を含んだ浴室壁部材330も浴室壁部材300に含まれるものとする。つまり、本実施形態では、浴室壁部材300は、壁パネルおよびドア取付枠を含む。
【0023】
浴槽200と洗い場床100との境界には、浴槽200における洗い場床100側の側面を覆い隠すバスエプロン290が設けられている。なお、浴槽200の構造によっては、バスエプロン290を設けなくてよいものもある。
【0024】
図2は、本実施形態に係る洗い場床を模式的に表す分解斜視図である。
図2に表したように、洗い場床100は、床基材110と、床本体120と、を有する。
【0025】
床基材110は、支持脚111と、支持フレーム113と、受け板115と、を有する。支持フレーム113は、長手方向が第1の方向に配置された例えば4本の第1のフレーム113aと、長手方向が第1の方向と直交する第2の方向に配置された例えば4本の第2のフレーム113bと、を有する。支持脚111は、支持フレーム113の下面の4隅に設けられている。支持脚111は、ボルト部を有し、そのボルト部の回転により高さ調整可能な構造を有する。
【0026】
床基材110は、浴室等の設置場所の限られた空間の中において、洗い場床100の上面にかかる荷重を受け、その位置を保持するものである。そのため、床基材110には、充分な強度が必要とされる。例えば、床基材110は、熱可塑性発泡樹脂の強度よりも高い強度を有する。そこで、この充分な強度が得られる一例として、本実施形態では鋼材が床基材110に用いられる。
【0027】
床基材110は、浴室等の設置面(例えば、建物の床)の上に載置され、支持脚111のボルト部の回転により適宜高さ調整をされる。これにより、洗い場床100の水平面が確保される。そして、支持脚111および支持フレーム113は、受け板115を下方から支持している。言い換えれば、支持脚111および支持フレーム113の上には、受け板115が載置されている。受け板115は、例えばねじ等の締結部材により支持フレーム113に固定されている。
【0028】
床本体120は、床面材130と、クッション材140と、表面材150と、を有する。受け板115の上面は、洗い場床100が備える各部材の垂直方向の基準位置すなわち水平基準面となる。また、受け板115は、床面材130を下方から支持し、受け板115の上に載置される部材から荷重を受ける。そのため、受け板115としては、比較的に高強度で剛性を有する平板状の素材が好適である。その一例として、例えば鋼材製のデッキプレートやサンドイッチパネルなどが挙げられる。床基材110の強度は、後述する熱可塑性発泡樹脂により形成された床面材130の強度よりも高い。
【0029】
床基材110についてさらに説明すると、床基材110は、床本体120の剛性よりも高い剛性を有する材料により形成されている。床基材110の上面(受け板115の上面)は、床本体120を支える平坦な載置面を有する。例えば、受け板115としてデッキプレートが用いられている場合には、波形に形成された部分の上面が平坦な載置面を有する。
【0030】
床基材110の上には、床面材130が載置されている。床面材130は、熱可塑性発泡樹脂により形成され、床基材110により下方から支持されている。熱可塑性発泡樹脂としては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどが挙げられる。本実施形態では、一例として発泡ポリプロピレンが用いられている。熱可塑性発泡樹脂は、リサイクル可能なため、これを用いることで床面材130の製造・廃棄に伴うCO排出量を削減して環境に優しい製品を提供できることになる。また、発泡成形に用いる型は、他の成形法による型よりも安価で製造できるため、洗い場床の製造コストを低く抑えることができる。
【0031】
床面材130の上には、クッション材140を介して表面材150が設けられている。クッション材140および表面材150は、洗い場床100の床面の外観意匠や使用感などの官能的な性能向上や、防水性などの洗い場床100に必然的に求められる機能を向上させるために用いられている。
【0032】
すなわち、クッション材140は、使用者に与える床面の柔らかさを得るものである。クッション材140の材料としては、例えば発泡ポリウレタン等の軟質素材が用いられている。クッション材140の硬さ(柔らかさ)を変えることで、床面の硬さ(柔らかさ)の仕様を変更することができる。
【0033】
表面材150は、床面材130の上面を覆い、洗い場床100の表面を形成するものである。表面材150は、柔軟性を有する。表面材150の材料としては、防水性と可撓性とを有する軟質シート材が用いられている。表面材150の素材は、後述するように床面材130が膨張収縮するのに合わせて膨張収縮することができる。表面材150には、洗い場床100の表面の意匠性や水はけ性を向上させるために、凹凸加工や柄模様を施したりすることも可能である。
【0034】
図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る浴室壁部材の取付構造を模式的に表す断面図である。
図3(a)及び図3(b)は、図1に表した切断面A-Aを模式的に表す断面図である。
図3(a)及び図3(b)に表したように、洗い場床100は、床面150aと、壁載せ凹部160と、を有する。床面150aは、各浴室壁部材300で囲まれた空間内に露出し、使用者に実際に洗い場として使用される部分である。床面150aは、例えば、表面材150の上面である。壁載せ凹部160は、床面150aの外縁に沿って設けられる。壁載せ凹部160は、例えば、床面150aの4つの辺(外縁)のうち、浴槽200と隣接しない3つの辺の全体に沿うように設けられる。壁載せ凹部160は、例えば、床面材130に設けられる。
【0035】
壁載せ凹部160は、第1内側面161と、第2内側面162と、内底面164と、を有する。内底面164は、床面150aよりも下方に凹んでいる。第1内側面161は、内底面164の床面150a側の一端側に設けられている。第1内側面161は、内底面164から床面150aに向かって上方に延びる。換言すれば、第1内側面161は、内底面164の一端と床面150aの一端とを接続する。第1内側面161は、例えば、床面材130の側面と表面材150の側面とによって形成される。第2内側面162は、内底面164の他端側に設けられている。第2内側面162は、内底面164の他端から上方に向かって延びる。
【0036】
浴室ユニット10は、壁受け部材400をさらに備える。壁受け部材400は、壁載せ凹部160内に設けられる。壁受け部材400は、凹状である。また、壁受け部材400は、壁載せ凹部160と同様に、床面150aの外縁に沿って延びる。壁受け部材400は、断面略U字状の長尺な部材である。壁受け部材400は、壁載せ凹部160内において1つ又は隣接する複数の浴室壁部材300の下端を受ける。
【0037】
壁受け部材400は、第1側面部410と、第2側面部420と、底面部440と、を有する。底面部440は、内底面164の上に設けられる。第1側面部410は、底面部440の床面150a側の一端側から上方に延びる。第2側面部420は、底面部440の他端側から上方に延びる。
【0038】
浴室壁部材300は、床面150a側を向く表面300aを有する。浴室壁部材300は、下端300bを凹状の壁受け部材400に挿入した状態で壁載せ凹部160及び壁受け部材400の上に載置される。
【0039】
図3(a)に表したように、壁受け部材400は、第1側面部410を壁載せ凹部160の第1内側面161側に寄せた状態で、壁載せ凹部160内に設けられる。第1側面部410は、例えば、第1内側面161に接触する。そして、浴室壁部材300は、表面300aを第1側面部410側に寄せた状態で、壁受け部材400の上に載置される。表面300aは、例えば、第1側面部410に接触する。これにより、壁受け部材400は、床面150aと表面300aとの間の距離を、第1側面部410の厚さに設定する。壁受け部材400は、例えば、浴室壁部材300の床面150aに対する位置を決め易くする。壁受け部材400は、例えば、ガイドピースと呼ばれる場合もある。
【0040】
浴室壁部材300と壁受け部材400との間には、例えば、パッキン450が設けられる。パッキン450は、ゴムなどの弾性を有する材料からなり、浴室壁部材300と壁受け部材400との間に空く隙間を埋めて水密性を向上させる。
【0041】
第1側面部410の上端410aは、洗い場床100の床面150aよりも下方に位置する。これにより、第1側面部410の上端410aは、第1内側面161と浴室壁部材300の表面300aとともにコーキング材460の塗布を可能とする空間SPを設ける。
【0042】
コーキング材460は、例えば、空間SPを埋めるように塗布される。すなわち、コーキング材460は、第1側面部410の上端410aから床面150aの高さまで塗布される。これにより、コーキング材460は、床面150aから浴室壁部材300の裏側に水が漏れ出てしまうことを抑制する。換言すれば、コーキング材460は、浴室ユニット10の室内側から建築躯体側に水が漏れ出てしまうことを抑制する。コーキング材460には、例えば、シリコーンが用いられる。
【0043】
第1側面部410の上端410aのコーキング材460に対する接着性は、第1内側面161のコーキング材460に対する接着性、及び浴室壁部材300の表面300aのコーキング材460に対する接着性よりも低い。上端410aは、例えば、コーキング材460に実質的に接着しない。コーキング材460は、例えば、第1内側面161及び表面300aに接着して水密性を確保し、上端410aには接着しない。
【0044】
但し、上端410aのコーキング材460に対する接着性は、第1内側面161のコーキング材460に対する接着性、及び表面300aのコーキング材460に対する接着性よりも低ければよい。コーキング材460は、部分的に上端410aと接着されるものや、第1内側面161や表面300aよりも低い接着力で上端410aと接着されるものなどでもよい。
【0045】
第1側面部410は、本体部411と、先端部412と、を有する。先端部412は、本体部411の上端に設けられる。第1側面部410の上端410aは、先端部412に設けられる。換言すれば、第1側面部410の上端410aは、先端部412の上端である。先端部412は、例えば、二色成形によって本体部411の上端に設けられる。
【0046】
本体部411及び底面部440のコーキング材460に対する接着性は、先端部412のコーキング材460に対する接着性よりも高い。この例において、本体部411は、底面部440と一体に形成されている。また、底面部440は、第2側面部420とも一体に形成されている。従って、本体部411及び第2側面部420の材料は、底面部440の材料と実質的に同じである。
【0047】
例えば、コーキング材460にシリコーン系(例えばオルガノポリシロキサン)や変性シリコーン系(例えばシリル基を末端に持つポリエーテル)などの材料が用いられている場合、先端部412(上端410a)には、ポリエチレンやポリプロピレンなどが用いられ、本体部411及び底面部440には、塩化ビニルなどが用いられる。これにより、上記のように、第1側面部410の上端410aのコーキング材460に対する接着性を、第1内側面161のコーキング材460に対する接着性、及び表面300aのコーキング材460に対する接着性よりも低くできるとともに、本体部411及び底面部440のコーキング材460に対する接着性を、先端部412のコーキング材460に対する接着性よりも高くすることができる。
【0048】
なお、本体部411及び第2側面部420は、例えば、それぞれ底面部440と別体に形成した後、底面部440に取り付けてもよい。本体部411及び第2側面部420の材料は、底面部440の材料と異なってもよい。
【0049】
先端部412は、本体部411の上端と、互いに係合することで接続、固定されている。より詳述すると、先端部412は、本体部411の上端に設けられた被係合部411aと係合する係合部412aを有する。先端部412は、例えば、二色成形によって形成されるとともに、被係合部411aと係合部412aとの係合によって、本体部411の上端に設けられる。係合部412aは、例えば、上下方向、及び表面300aに対して垂直な方向(図3における紙面の左右方向)において被係合部411aと係合する。
【0050】
本体部411、先端部412、及びコーキング材460に上記のような材料を用いた場合、本体部411と先端部412との接着性も低下してしまう可能性が生じる。従って、被係合部411aと係合部412aとを設け、先端部412を本体部411に係合させる。これにより、先端部412が、本体部411から外れてしまうことを抑制することができる。
【0051】
図4は、壁受け部材の一部を拡大して模式的に表す部分断面図である。
図4に表したように、床面150aから浴室壁部材300に向かう幅方向において、第1側面部410の上端410aの中央部CPは、第1側面部410の上端410aの両端部EP1、EP2よりも高い。床面150aから浴室壁部材300に向かう幅方向は、換言すれば、表面300aに対して垂直な方向である。
【0052】
床面150aと浴室壁部材300の表面300aとの間の間隔PTは、床面150aから第1側面部410の上端410aの中央部CPまでの深さDNよりも広い。換言すれば、第1内側面161の上端から表面300aまでの水平方向の距離は、第1内側面161の上端から上端410aの中央部CPまでの垂直方向の距離よりも長い。
【0053】
第1側面部410の上端410aの中央部CPは、両端部EP1、EP2に向かって徐々に低くなるアーチ状である。換言すれば、中央部CPは、上凸の曲面状である。この例では、先端部412が、アーチ状に形成されている。なお、中央部CPの形状は、アーチ状に限ることなく、両端部EP1、EP2よりも高くなる任意の形状でよい。中央部CPは、例えば、断面三角形状や断面四角形状の突起状などでもよい。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態に係る浴室壁部材300の取付構造によれば、コーキング材460が塗布される壁受け部材400の第1側面部410の上端410aを、壁載せ凹部160の第1内側面161及び浴室壁部材300の表面300aよりも、あえてコーキング材460の接着性の低いものとするとともに、上端410aの中央部CPを両端部EP1、EP2よりも高くしている。これにより、空間SP内に塗布されたコーキング材460が壁載せ凹部160の第1内側面161及び浴室壁部材300の表面300aよりも壁受け部材400の第1側面部410の上端410aに接着しにくくさせるとともに、空間SP内に塗布されたコーキング材46の幅方向における中央部分の厚さを、幅方向における両端部分よりも薄くすることができる。その結果、時間の経過や外力などで第1内側面161と浴室壁部材300の表面300aとの間の間隔PTが変化した場合に、コーキング材460の幅方向における中央部分を、コーキング材460の幅方向における両端部分よりも伸び縮みさせ易くすることができる。
【0055】
例えば、床面材130に熱可塑性発泡樹脂などを用いた場合、床面材130の熱膨張や熱収縮により、図3(b)に表したように、第1内側面161と表面300aとの間の間隔PTが、意図せず広がってしまう場合がある。このような場合に、コーキング材460の中央部分を、コーキング材460の両端部分よりも伸び縮みさせ易くすることができる。
【0056】
これにより、コーキング材460と第1内側面161との接触界面、及びコーキング材460と浴室壁部材300の表面300aとの接触界面に大きな応力が加わることを抑制し、第1内側面161及び浴室壁部材300の表面300aからコーキング材460が剥がれてしまうことを抑制することができる。以上のことより、時間の経過や浴室壁部材300に加わる外力などによるコーキング材460の剥がれを抑制可能な浴室壁部材300の取付構造を提供することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る浴室壁部材300の取付構造では、床面150aと浴室壁部材300の表面300aとの間の間隔PTが、床面150aから第1側面部410の上端410aの中央部CPまでの深さDNよりも広い。これにより、空間SP内に塗布されたコーキング材460の幅方向に置ける中央部分の厚さを、空間SP内に塗布されたコーキング材460の幅方向の長さよりも薄くすることができ、コーキング材460の幅方向における中央部分の伸縮性をより向上させることができる。従って、コーキング材460の剥がれを、より確実に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る浴室壁部材300の取付構造では、第1側面部410の上端410aの中央部CPが、両端部EP1、EP2に向かって徐々に低くなるアーチ状である。これにより、空間SP内に塗布されたコーキング材460が幅方向における中央部分で急激に薄くなってしまうことを抑制することができる。例えば、時間の経過や外力などで第1内側面161と浴室壁部材300の表面300aとの間の間隔PTが広くなった場合に、コーキング材460の幅方向における中央部分に局所的に応力が加わり、コーキング材460の幅方向における中央部分に割れなどが生じてしまうことを抑制することができる。例えば、中央部CPを断面略三角形状や断面略四角形状の突起状とした場合、コーキング材460が伸びた場合に、中央部CPの角部がコーキング材460の伸びの変位の阻害となり、中央部CPの角部において局所的に応力が加わってしまう可能性がある。中央部CPを角の無いアーチ状とすることにより、こうした応力集中にともなうコーキング材460の割れなどを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る浴室壁部材300の取付構造では、第1側面部410が、本体部411と、本体部411の上端に設けられた先端部412と、を有し、第1側面部410の上端410aは、先端部412に設けられ、本体部411及び底面部440のコーキング材460に対する接着性は、先端部412のコーキング材460に対する接着性よりも高い。
【0060】
このように、壁受け部材400の第1側面部410の上端410aのコーキング材460に対する接着性を低くしつつ、本体部411及び底面部440のコーキング材460に対する接着性を高くしている。これにより、例えば、壁受け部材400と壁載せ凹部160との間にコーキング材460を塗布する場合や、壁受け部材400と浴室壁部材300との間にコーキング材460を塗布する場合に、コーキング材460を適切に壁受け部材400に接着することができ、これらの各部材間における止水性をより向上させることができる。
【0061】
図5は、実施形態に係る浴室壁部材の取付構造の変形例を模式的に表す断面図である。 なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5に表したように、この例においては、本体部411の上端の中央部が、アーチ状に形成され、先端部412は、本体部411の上端の上に膜状に設けられている。先端部412は、例えば、接着によって本体部411の上端の上に設けられる。
【0062】
このように、先端部412は、本体部411の上端の上に接着によって設けてもよい。例えば、本体部411と先端部412との間において十分な接着性が得られる場合などには、本体部411と先端部412とは必ずしも係合していなくてもよい。これにより、例えば、壁受け部材400の成形性を向上させることができる。例えば、壁受け部材400の製造コストを抑えることができる。
【0063】
壁受け部材400の構成は、上記に限ることなく、第1側面部410の上端410aのコーキング材460に対する接着性を、第1内側面161のコーキング材460に対する接着性、及び浴室壁部材300の表面300aのコーキング材460に対する接着性よりも低くすることができる任意の構成でよい。
【0064】
例えば、第1側面部410の全体をコーキング材460に対する接着性の低い材料で形成し、底面部440に取り付けてもよい。あるいは、壁受け部材400の全体をコーキング材460に対する接着性の低い材料で形成してもよい。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴室ユニット10などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
10 浴室ユニット、 100 洗い場床、 100a 外周部、 110 床基材、 111 支持脚、 113 支持フレーム、 115 受け板、 120 床本体、 130 床面材、 140 クッション材、 150 表面材、 160 壁載せ凹部、 161 第1内側面、 162 第2内側面、 164 内底面、 200 浴槽、 260 支持脚、 290 バスエプロン、 300 浴室壁部材、 300a 表面、 305 壁面接続部材、 310 第1の浴室壁部材、 320 第2の浴室壁部材、 330 第3の浴室壁部材、 340 第4の浴室壁部材、 350 第5の浴室壁部材、 360 第6の浴室壁部材、 370 小パネル、 400 壁受け部材、 410 第1側面部、 411 本体部、 412 先端部、 420 第2側面部、 440 底面部、 450 パッキン、 460 コーキング材、 SP 空間
図1
図2
図3
図4
図5