(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置のコンピュータにより実行されるプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220119BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20220119BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220119BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20220119BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 384
G03G15/16 103
G03G15/02 102
G03G15/08 235
(21)【出願番号】P 2017207899
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠人
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-037706(JP,A)
【文献】特開2010-156853(JP,A)
【文献】特開2014-106287(JP,A)
【文献】特開2011-107223(JP,A)
【文献】特開2003-280488(JP,A)
【文献】特開2013-205547(JP,A)
【文献】特開平05-053488(JP,A)
【文献】特開2017-191210(JP,A)
【文献】特開2016-161932(JP,A)
【文献】特開2007-171633(JP,A)
【文献】特開2016-061976(JP,A)
【文献】特開2013-019998(JP,A)
【文献】特開2011-018040(JP,A)
【文献】特開2004-252113(JP,A)
【文献】特開2007-298793(JP,A)
【文献】特開2006-208477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0298828(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 15/16
G03G 21/14
G03G 15/02
G03G 15/04
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式に従う画像形成装置であって、
回転可能に構成され、トナー像を担持搬送するための像担持体と、
前記像担持体に接触または近接して配置される帯電部材と、
前記帯電部材に帯電バイアスを印加することにより、前記像担持体を帯電させるための帯電電源と、
前記帯電された像担持体に潜像を形成するための露光装置と、
前記像担持体に近接して配置される現像部材と、
前記現像部材に現像バイアスを印加することにより、前記潜像を現像して前記像担持体上にトナー像を形成するための現像電源と、
転写バイアスを印加されることにより、前記像担持体上に形成されたトナー像を媒体に転写するための転写部材と、
前記画像形成装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の前記潜像が形成された露光部の電位と前記潜像が形成されていない非露光部の電位とを取得し、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位が均一になるように前記帯電バイアスを決定し、
前記決定された帯電バイアスに基づいて前記現像バイアスを決定するように構成され
、
前記像担持体の回転速度と前記転写バイアスとに基づいて、前記露光部および前記非露光部の電位を取得するように構成される、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記像担持体の使用量、前記像担持体の膜厚、および前記帯電部材に流れる電流の大きさのうち少なくとも1つに基づいて、前記露光部および前記非露光部の電位を取得するように構成される、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
電子写真方式に従う画像形成装置であって、
回転可能に構成され、トナー像を担持搬送するための像担持体と、
前記像担持体に接触または近接して配置される帯電部材と、
前記帯電部材に帯電バイアスを印加することにより、前記像担持体を帯電させるための帯電電源と、
前記帯電された像担持体に潜像を形成するための露光装置と、
前記像担持体に近接して配置される現像部材と、
前記現像部材に現像バイアスを印加することにより、前記潜像を現像して前記像担持体上にトナー像を形成するための現像電源と、
転写バイアスを印加されることにより、前記像担持体上に形成されたトナー像を媒体に転写するための転写部材と、
前記画像形成装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の前記潜像が形成された露光部の電位と前記潜像が形成されていない非露光部の電位とを取得し、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位が均一になるように前記帯電バイアスを決定し、
前記決定された帯電バイアスに基づいて前記現像バイアスを決定するように構成され、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記帯電バイアスの基準値に対する変更量を決定し、
これから画像を形成するために用いられる画像情報、および直前の画像情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記変更量を調節するように構成される
、画像形成装置。
【請求項4】
電子写真方式に従う画像形成装置であって、
回転可能に構成され、トナー像を担持搬送するための像担持体と、
前記像担持体に接触または近接して配置される帯電部材と、
前記帯電部材に帯電バイアスを印加することにより、前記像担持体を帯電させるための帯電電源と、
前記帯電された像担持体に潜像を形成するための露光装置と、
前記像担持体に近接して配置される現像部材と、
前記現像部材に現像バイアスを印加することにより、前記潜像を現像して前記像担持体上にトナー像を形成するための現像電源と、
転写バイアスを印加されることにより、前記像担持体上に形成されたトナー像を媒体に転写するための転写部材と、
前記画像形成装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の前記潜像が形成された露光部の電位と前記潜像が形成されていない非露光部の電位とを取得し、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位が均一になるように前記帯電バイアスを決定し、
前記決定された帯電バイアスに基づいて前記現像バイアスを決定するように構成され、
第1のモードと第2のモードとを切り替え可能に構成され、
前記第1のモードにおいて、前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて前記帯電バイアスを決定する制御を実行し、
前記第2のモードにおいて、前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて前記帯電バイアスを決定する制御を実行しないように構成される
、画像形成装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第2のモードにおける前記露光装置の露光出力を、前記像担持体の前記潜像が形成された部分の電位が前記露光装置の出力に対して略変動しない領域に設定し、
前記第2のモードにおける前記現像バイアスを、前記像担持体の軸方向全体に前記潜像が形成されている場合に当該潜像に予め定められた濃度のトナーを供給するために必要な電位に設定するように構成される、請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記像担持体の膜厚を取得し、
前記第2のモードにおいて前記像担持体の膜厚が予め定められた厚み未満になった場合に、前記像担持体の使用可能期間を満了したと判断するように構成される、請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記決定された現像バイアスに基づいて前記露光装置における露光条件を決定するように構成される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記露光条件として単位面積あたりの露光面積を決定するように構成される、請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記決定された帯電バイアスとの差分が予め定められた値となるように前記現像バイアスを決定するように構成される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記像担持体上に形成されたトナー像を構成するトナーの帯電量と、当該トナーの単位面積あたりの付着量と、前記像担持体の回転速度と、前記像担持体の軸方向において前記トナー像が形成される長さとに基づいて、前記転写バイアスを決定するように構成される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記転写部材に所定の電流を流したときに前記転写部材に印加される電圧の大きさを検出するための電圧センサーをさらに備え、
前記制御装置は、前記電圧センサーの測定結果に基づいて、前記転写バイアスを決定するように構成される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
温度および湿度のうち少なくとも一方を測定するための環境センサーをさらに備え、
前記制御装置は、前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分と、前記環境センサーの測定結果とに基づいて前記帯電バイアスを決定するように構成される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成装置は、トナー像を形成するための作像ユニットを複数備え、
各前記作像ユニットは、前記像担持体、前記帯電部材、前記現像部材を含み、
前記制御装置は、各前記作像ユニットごとに、前記帯電バイアスおよび前記現像バイアスを決定するように構成される、請求項1~
12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記帯電電源が前記決定された帯電バイアスを出力できない場合、または前記現像電源が前記決定された現像バイアスを出力できない場合に、前記像担持体の使用可能期間を満了したと判断するように構成される、請求項1~
13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位を除電することなく、前記帯電電源を制御して前記帯電部材に帯電バイアスを印加するように構成される、請求項1~
14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
電子写真方式に従う画像形成装置のコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記プログラムは前記コンピュータに、
トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の潜像が形成された露光部の電位と、前記潜像が形成されていない非露光部の電位を取得するステップと、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位が均一になるように、前記像担持体を帯電させるための帯電バイアスを決定するステップと、
前記決定された帯電バイアスに基づいて、前記像担持体に形成された潜像を現像するための現像バイアスを決定するステップとを実行させ
、
前記取得するステップは、前記像担持体の回転速度と転写バイアスとに基づいて、前記露光部および前記非露光部の電位を取得することを含む、プログラム。
【請求項17】
電子写真方式に従う画像形成装置のコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記プログラムは前記コンピュータに、
トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の潜像が形成された露光部の電位と、前記潜像が形成されていない非露光部の電位を取得するステップと、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位が均一になるように、前記像担持体を帯電させるための帯電バイアスを決定するステップと、
前記決定された帯電バイアスに基づいて、前記像担持体に形成された潜像を現像するための現像バイアスを決定するステップと
、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記帯電バイアスの基準値に対する変更量を決定するステップと、
これから画像を形成するために用いられる画像情報、および直前の画像情報のうち少なくとも一方に基づいて、前記変更量を調節するステップとを実行させる、プログラム。
【請求項18】
電子写真方式に従う画像形成装置のコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記プログラムは前記コンピュータに、
トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の潜像が形成された露光部の電位と、前記潜像が形成されていない非露光部の電位を取得するステップと、
前記取得された前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて、前記トナー像を前記媒体に転写した後の前記像担持体上の電位が均一になるように、前記像担持体を帯電させるための帯電バイアスを決定するステップと、
前記決定された帯電バイアスに基づいて、前記像担持体に形成された潜像を現像するための現像バイアスを決定するステップと
、
前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて前記帯電バイアスを決定する制御を実行する第1のモードと、前記露光部の電位と前記非露光部の電位との差分に基づいて前記帯電バイアスを決定する制御を実行しない第2のモードとを切り替えるステップとを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、画像形成装置に関し、より特定的には、電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、前回の印字に伴う像担持体の表面電位の不均一性が今回の印字に影響を与える「画像メモリ」が知られている。画像メモリは、画像濃度の均一化を阻害する現象である。
【0003】
この画像メモリを抑制する技術に関し、例えば、特開2006-017909号公報(特許文献1)は、「像担持体の画像部の表面電位が、次の作像サイクルへ移行するまでに、トナー像の転写時に中間転写体からの電荷注入、および前記帯電手段による帯電を受けた後に、当該像担持体の非画像部の表面電位の95%~105%の値となるように、前記中間転写体への印加電圧を設定する」技術を開示している(「要約」参照)。
【0004】
また、特開2008-008991号公報(特許文献2)は、「帯電装置の1次帯電電位と露光装置の画像形成用電位との差を、転写装置の転写出力に応じて予め定められた値に変更して、帯電装置、露光装置および転写装置を駆動制御する」技術を開示している(「要約」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-017909号公報
【文献】特開2008-008991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、「像担持体の非画像部の表面電位の95%~105%の値となるように、中間転写体への印加電圧を設定する」ための手段として、中間転写体の抵抗値を設定するものであるが、製造誤差による中間転写体の抵抗バラつきに対しては、画像メモリを十分に抑制できない可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に開示される技術は、「帯電装置の1次帯電電位と露光装置の画像形成用電位との差を」変更した場合に、1次帯電電位と現像電位との電位差に起因する不具合を生じ得る。したがって、画像メモリを十分に抑制し、かつ、付随する不具合を抑制するための技術が必要とされている。
【0008】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、画像メモリおよび他の不具合を抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施形態に従うと、電子写真方式に従う画像形成装置が提供される。この画像形成装置は、回転可能に構成され、トナー像を担持搬送するための像担持体と、像担持体に接触または近接して配置される帯電部材と、帯電部材に帯電バイアスを印加することにより、像担持体を帯電させるための帯電電源と、帯電された像担持体に潜像を形成するための露光装置と、像担持体に近接して配置される現像部材と、現像部材に現像バイアスを印加することにより、潜像を現像して像担持体上にトナー像を形成するための現像電源と、転写バイアスを印加されることにより、像担持体上に形成されたトナー像を媒体に転写するための転写部材と、画像形成装置を制御するための制御装置とを備える。制御装置は、トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の潜像が形成された露光部の電位と潜像が形成されていない非露光部の電位とを取得し、取得された露光部の電位と非露光部の電位との差分に基づいて、トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の電位が均一になるように帯電バイアスを決定し、決定された帯電バイアスに基づいて現像バイアスを決定するように構成される。
【0010】
好ましくは、制御装置は、像担持体の回転速度と転写バイアスとに基づいて、露光部および非露光部の電位を取得するように構成される。
【0011】
さらに好ましくは、制御装置は、像担持体の使用量、像担持体の膜厚、および帯電部材に流れる電流の大きさのうち少なくとも1つに基づいて、露光部および非露光部の電位を取得するように構成される。
【0012】
好ましくは、制御装置は、決定された現像バイアスに基づいて露光装置における露光条件を決定するように構成される。
【0013】
さらに好ましくは、制御装置は、露光条件として単位面積あたりの露光面積を決定するように構成される。
【0014】
好ましくは、制御装置は、決定された帯電バイアスとの差分が予め定められた値となるように現像バイアスを決定するように構成される。
【0015】
好ましくは、制御装置は、像担持体上に形成されたトナー像を構成するトナーの帯電量と、当該トナーの単位面積あたりの付着量と、像担持体の回転速度と、像担持体の軸方向においてトナー像が形成される長さとに基づいて、転写バイアスを決定するように構成される。
【0016】
好ましくは、画像形成装置は、転写部材に所定の電流を流したときに転写部材に印加される電圧の大きさを検出するための電圧センサーをさらに備える。制御装置は、電圧センサーの測定結果に基づいて、転写バイアスを決定するように構成される。
【0017】
好ましくは、制御装置は、取得された露光部の電位と非露光部の電位との差分に基づいて、帯電バイアスの基準値に対する変更量を決定し、これから画像を形成するために用いられる画像情報、および直前の画像情報のうち少なくとも一方に基づいて、変更量を調節するように構成される。
【0018】
好ましくは、画像形成装置は、温度および湿度のうち少なくとも一方を測定するための環境センサーをさらに備える。制御装置は、取得された露光部の電位と非露光部の電位との差分と、環境センサーの測定結果とに基づいて帯電バイアスを決定するように構成される。
【0019】
好ましくは、画像形成装置は、トナー像を形成するための作像ユニットを複数備える。各作像ユニットは、像担持体、帯電部材、現像部材を含む。制御装置は、各作像ユニットごとに、帯電バイアスおよび現像バイアスを決定するように構成される。
【0020】
好ましくは、制御装置は、第1のモードと第2のモードとを切り替え可能に構成され、第1のモードにおいて、露光部の電位と非露光部の電位との差分に基づいて帯電バイアスを決定する制御を実行し、第2のモードにおいて、露光部の電位と非露光部の電位との差分に基づいて帯電バイアスを決定する制御を実行しないように構成される。
【0021】
さらに好ましくは、制御装置は、第2のモードにおける露光装置の露光出力を、像担持体の潜像が形成された部分の電位が露光装置の出力に対して略変動しない領域に設定し、第2のモードにおける現像バイアスを、像担持体の軸方向全体に潜像が形成されている場合に当該潜像に予め定められた濃度のトナーを供給するために必要な電位に設定するように構成される。
【0022】
さらに好ましくは、制御装置は、像担持体の膜厚を取得し、第2のモードにおいて像担持体の膜厚が予め定められた厚み未満になった場合に、像担持体の使用可能期間を満了したと判断するように構成される。
【0023】
好ましくは、制御装置は、帯電電源が決定された帯電バイアスを出力できない場合、または現像電源が決定された現像バイアスを出力できない場合に、像担持体の使用可能期間を満了したと判断するように構成される。
【0024】
好ましくは、制御装置は、トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の電位を除電することなく、帯電電源を制御して帯電部材に帯電バイアスを印加するように構成される。
【0025】
他の局面に従うと、電子写真方式に従う画像形成装置のコンピュータで実行されるプログラムが提供される。このプログラムはコンピュータに、トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の潜像が形成された露光部の電位と、潜像が形成されていない非露光部の電位を取得するステップと、取得された露光部の電位と非露光部の電位との差分に基づいて、トナー像を媒体に転写した後の像担持体上の電位が均一になるように、像担持体を帯電させるための帯電バイアスを決定するステップと、決定された帯電バイアスに基づいて、像担持体に形成された潜像を現像するための現像バイアスを決定するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0026】
ある実施形態に従う画像形成装置は、画像メモリを抑制でき、当該画像メモリの抑制に伴う不具合を抑制できる。
【0027】
開示された技術的特徴の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】電子写真方式に従う画像形成装置における各作像行程における感光体の表面電位を説明する図である。
【
図2】実施形態に従う技術思想を説明するための図である。
【
図3】ある実施形態に従う画像形成装置の構成例を説明する図である。
【
図4】中間転写ベルトの周囲の構成をより具体的に説明するための図である。
【
図5】CPUに接続される各種デバイスを説明するための図である。
【
図6】帯電バイアスを決定する処理を説明するための図である。
【
図7】感光体と1次転写ローラーとを含む1次転写回路を表す図である。
【
図8】転写前後における感光体の非露光部の電位差の時間依存性を表す図である。
【
図10】感光体の使用量と、感光体の膜厚との関係を表す。
【
図11】帯電電位と、帯電バイアスとの関係を表す。
【
図12】露光電位と、帯電バイアスとの関係を表す。
【
図13】非露光転写電位と露光転写電位との電位差に基づいて作像条件を決定する処理のフローチャートである。
【
図14】高画質モードと通常モードにおける処理を説明するためのフローチャートである。
【
図15】他の実施形態に従う画像形成装置の内部構造の一部を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この技術的思想の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0030】
[技術思想]
図1は、電子写真方式に従う画像形成装置における各作像行程における感光体の表面電位を説明する図である。まず、
図1を参照しながら画像メモリが生じる原理について説明する。電子写真方式に従う画像形成装置は、感光体3Yを有する。感光体3Yの周囲には、帯電ローラー4Yと、露光装置5Yと、現像ローラー6Yと中間転写ベルト1と、1次転写ローラー7Yとが配置されている。
【0031】
感光体3Yは、回転可能に構成され、イエロー(Y)のトナー像を担持搬送するための像担持体として機能する。帯電ローラー4Yは、感光体3Yに接触または近接して配置され、帯電電源63Yにより帯電バイアスVcbを印加されることにより、感光体3Yを帯電させる。これにより、感光体3Yの表面電位は一様に帯電電位Vcになる(状態(a))。
【0032】
露光装置5Yは、帯電後の感光体3Yの表面に光を照射して潜像を形成する。これにより、感光体3Yの潜像が形成された露光部の電位は、接地電位に近づいて露光電位Viになる(状態(a))。
【0033】
現像ローラー6Yは、感光体3Yに近接して配置され、現像電源60Yから現像バイアスVdを印加される。現像バイアスVdは帯電電位Vcと露光電位Viとの間に設定される。これにより、現像バイアスVdと露光電位Viとの電位差に従い、トナーが潜像に供給される。その結果、感光体3Y上に形成された潜像が現像される(状態(b))。
【0034】
次に、1次転写ローラー7Yが中間転写ベルト1を介して感光体3Yに正の転写バイアスVtを印加する。これにより、感光体3Y上のトナー像は中間転写ベルト1に転写される。この転写において、感光体3Yのトナーが付着している部分(露光部)は電流が流れにくく、トナーが付着していない部分(非露光部)に電流が流れやすい。そのため、露光部における転写前後の露光電位Viと露光転写電位Vteとの電位差よりも、非露光部における転写前後の帯電電位Vcと非露光転写電位Vtnとの電位差の方が大きい(状態c)。
【0035】
図1の状態(c)に示されるように、露光転写電位Vteと非露光転写電位Vtnとが等電位でない場合、感光体3Yの表面電位が不均一になる。この現象を画像メモリ(メモリ効果とも言われる)と言う。係る場合、次の作像サイクル時に、当該感光体3Yの表面電位の不均一が反映され、感光体3Y上に形成されるトナー像に濃度ムラが生じる。その結果、画像ムラが生じる。
【0036】
この画像メモリを抑制するための手段として、1次転写後の感光体3Yの表面電位を除電装置によって一様に除電電位Veにする構成が知られている。しかしながら、近年の低コスト化の要求に従い、除電装置を有さない画像形成装置が増えている。そこで、除電装置を有さない画像形成装置においても画像メモリを抑制する構成について、以下
図2を用いて説明する。
【0037】
図2は、実施形態に従う技術思想を説明するための図である。実施形態に従う画像形成装置は、帯電電位Vcを制御することによって、露光転写電位Vteと非露光転写電位Vtnとを等電位にすることにより、画像メモリを抑制する。
【0038】
画像形成装置は、1次転写ローラー7Yにおける1次転写効率を最適化するために、転写バイアスVtを設定する。より具体的には、画像形成装置は、1次転写ローラー7Yに所定の電流を流したときに得られる電圧(ATVC電圧とも言われる)を、1次転写ローラー7Yの抵抗値として代用し、当該ATVC電圧に基づいて1次転写ローラー7Yへ印加する転写バイアスVtを設定する。
【0039】
条件(A)において、転写バイアスVt1、帯電電位Vc1、現像バイアスVd1、露光電位Vi1にそれぞれ設定されたとする。当該条件(A)において、1次転写後の非露光部の電位が非露光転写電位Vtn1に、露光部の電位が露光転写電位Vte1にそれぞれなったとする。
【0040】
実施形態に従う画像形成装置は、この非露光転写電位Vtn1と露光転写電位Vte1とを取得し、転写後の露光部と非露光部との電位差ΔVを算出する。画像形成装置は、電位差ΔVに基づいて帯電電位の補正量を算出し、帯電電位Vc1と補正量とを積算した帯電電位Vc2を算出する。具体的には、画像形成装置は、帯電電位Vc1からVc2に変更することによる、転写前後における非露光部の電位差の変動と、転写前後における露光部の電位差の変動とが、上記算出された電位差ΔVとなるように、補正量(帯電電位Vc2)を算出する。この補正量の算出方法については後述する。画像形成装置は、感光体3Yの表面電位を算出された帯電電位Vc2にするために必要な帯電バイアスVcbを決定する。
【0041】
条件(B)において、画像形成装置は、転写バイアスを条件(A)と同じVt1に設定し、帯電電位を上記算出されたVc2に設定する。これにより、1次転写後の非露光転写電位Vtn2および露光転写電位Vte2が等電位になる。その結果、実施形態に従う画像形成装置は、除電装置を有さなくとも画像メモリを抑制できる。
【0042】
また、帯電電位Vcのみを変更してしまうと、帯電電位Vcと現像バイアスVdとの電位差(以下、「マージン電位ΔVm」とも言う)が変わってしまう。マージン電位ΔVmが大きすぎると、キャリアが感光体3Yに付着してしまうという問題が生じる。一方、マージン電位ΔVmが小さすぎると、感光体3Yの非露光部にもトナーが付着するという問題が生じる。そのため、実施形態に従う画像形成装置は、マージン電位ΔVmを一定に保つように、現像バイアスVd2を決定する。より具体的には、帯電電位Vc2から帯電電位Vc1を差し引いた値を、現像バイアスVd1に加えることにより現像バイアスVd2を算出する。当該構成によれば、画像形成装置は、画像メモリを抑制する制御に付随する不具合が生じることを防ぎ得る。
【0043】
また、現像バイアスVdが変更されると、現像効率が変更される。現像バイアスVdと露光電位Viとの電位差が大きいほど、単位当たりの潜像に供給されるトナー量が多くなる。そのため、実施形態に従う画像形成装置は、現像バイアスVdと露光電位Viとの電位差に応じて、露光条件を変更する。一例として、画像形成装置は、単位面積あたりの露光面積または、露光出力を変更する。画像形成装置は、現像バイアスVdの変更前後における見た目の画像濃度(1画素に供給されるトナー量)を維持するように露光条件を変更する。当該構成によれば、画像形成装置は、画像メモリを抑制する制御に付随する不具合が生じることを防ぎ得る。以下、より具体的な構成および処理について説明する。
【0044】
[実施形態]
(画像形成装置300)
図3は、ある実施形態に従う画像形成装置300の構成例を説明する図である。ある実施形態において、画像形成装置300は、レーザプリンタやLEDプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置である。
図3に示されるように、画像形成装置300は、内部の略中央部にベルト部材として中間転写ベルト1を備えている。中間転写ベルト1の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応する4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kが中間転写ベルト1に沿って並んで配置される。これらの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、トナー像を担持可能に構成される感光体3Y,3M,3C,3Kをそれぞれ有している。
【0045】
像担持体である各感光体3Y,3M,3C,3Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、対応する感光体を帯電するための帯電ローラー4Y,4M,4C,4Kと、露光装置5Y,5M,5C,5Kと、現像ローラー6Y,6M,6C,6Kと、中間転写ベルト1を挟んで各感光体3Y,3M,3C,3Kと対向する1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kと、クリーニングブレード8Y,8M,8C,8Kとがそれぞれ配置されている。なお、他の局面において、帯電ローラー4Y,4M,4C,4Kに替えて、非接触帯電装置(例えば、コロナ放電方式に従う帯電装置)が配置されていてもよい。
【0046】
中間転写ベルト1の中間転写ベルト駆動ローラー10で支持された部分には、2次転写ローラー11が圧接されており、当該領域で2次転写が行なわれる。2次転写領域後方の搬送路Rの下流位置には、定着ローラー21と加圧ローラー22とを含む定着加熱部20が配置されている。
【0047】
画像形成装置300の下部には、給紙カセット30が着脱可能に配置されている。給紙カセット30内に積載収容された用紙Pは、給紙ローラー31の回転によって最上部の用紙から1枚ずつ搬送路Rに送り出されることになる。
【0048】
また、画像形成装置300の上部には、操作パネル80が配置されている。操作パネル80は、一例として、タッチパネルとディスプレイとが互いに重ね合わせられた画面と、物理ボタンとから構成される。
【0049】
なお、上記の例において画像形成装置300は、タンデム式の中間転写方式を採用しているがこれに限定されるものではない。具体的には、サイクル方式を採用する画像形成装置であってもよいし、現像装置から印刷媒体に直接トナーを転写する直接転写方式を採用する画像形成装置であってもよい。
【0050】
(画像形成装置300の概略動作)
次に、以上の構成からなる画像形成装置300の概略動作について説明する。外部装置(たとえば、パソコン等)から画像形成装置300の制御装置として機能するCPU(Central Processing Unit)70に画像信号が入力されると、CPU70ではこの画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成し、入力されたデジタル信号に基づいて、各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの各露光装置5Y,5M,5C,5Kを発光させて露光を行なう。
【0051】
これにより、各感光体3Y,3M,3C,3K上に形成された静電潜像は、各現像ローラー6Y,6M,6C,6Kによりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。各色のトナー画像は、各1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kの作用により、
図1中の矢印A方向に移動する中間転写ベルト1上に順次重ね合わせて1次転写される。
【0052】
このようにして中間転写ベルト1上に形成されたトナー画像は、2次転写ローラー11の作用により、用紙Pに一括して2次転写される。
【0053】
用紙Pに2次転写されたトナー画像は、定着加熱部20に達する。トナー画像は、加熱された定着ローラー21、および加圧ローラー22の作用により用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、排紙ローラー50を介して排紙トレイ55に排出される。
【0054】
(電気的な構成)
次に、
図4および
図5を用いて、CPU70に接続される電気的な構成について説明する。
図4は、中間転写ベルト1の周囲の構成をより具体的に説明するための図である。
図5は、CPU70に接続される各種デバイスを説明するための図である。
【0055】
図4および
図5を参照して、帯電ローラー4Y,4M,4C,4Kには、帯電電源63Y,63M,63C,63Kがそれぞれ接続される。帯電電源63Yと接地電位との間には電流センサー64Yが配置される。
【0056】
現像ローラー6Y,6M,6C,6Kには、現像電源60Y,60M,60C,60Kがそれぞれ接続される。現像電源60Y,60M,60C,60Kは、直流電源61Y,61M,61C,61Kと、交流電源62Y,62M,62C,62Kとをそれぞれ含む。つまり、現像ローラー6Y,6M,6C,6Kには直流電圧と交流電圧とが重畳された電圧が印加される。
【0057】
1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kには、共通する1次転写電源65が接続される。つまり、1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kには、共通する転写バイアスVtが印加される。1次転写電源65と接地電位との間には、電圧センサー66が配置される。なお、他の局面において、画像形成装置300は、1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kごとに独立した1次転写電源を有してもよい。
【0058】
2次転写ローラー11には、2次転写電源67が接続される。
CPU70は、各種電源(帯電電源63Y,63M,63C,63K、現像電源60Y,60M,60C,60K、1次転写電源65、2次転写電源67)と各種センサー(電流センサー64Y、電圧センサー66)とにそれぞれ接続される。CPU70は、各種電源に制御信号を送信し、各種電源の出力を制御する。また、各種センサーは、測定結果をCPU70に送信するように構成される。
【0059】
CPU70は、上述のデバイス以外に、RAM(Random Access Memory)510と、ROM(Read Only Memory)520と、記憶装置530と、操作パネル80と、環境センサー540とにもそれぞれ電気的に接続されている。
【0060】
RAM510は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)により実現される。RAM510は、CPU70がROM520に格納される制御プログラム522を実行するために必要なデータや画像データを一時的に記憶するワーキングメモリーとして機能し得る。
【0061】
記憶装置530は、例えば、ハードディスクドライブにより実現される。記憶装置530は、設定テーブル531と、使用量テーブル532と、環境テーブル533とを記憶している。
【0062】
設定テーブル531は、感光体3Y,3M,3C,3Kの回転速度、帯電電位Vc、帯電バイアスVcb、現像バイアスVd、転写バイアスVtなどの各種作像条件を記憶する。使用量テーブル532は、感光体3Y,3M,3C,3Kの各々の使用量を記憶する。一例として、感光体3Yの使用量は、感光体3Yを用いて印字された累計印字枚数、感光体3Yの回転回数、および感光体3Yの走行距離のいずれかが設定される。CPU70は、感光体3Yを用いた印字を行なうごとに、感光体3Yの使用量を更新する。環境テーブル533の詳細は後述する。
【0063】
操作パネル80は、ユーザの操作内容を表す情報(例えば、タッチパネル上のタッチされた座標)をCPU70に出力する。環境センサー540は、温度および湿度のうち少なくとも一方を測定可能に構成され、測定結果をCPU70に出力する。
【0064】
(帯電バイアスの決定)
次に、
図6を用いてどのように帯電電位Vc(帯電バイアスVcb)を決定するのかについて説明する。
図6(A)は画像メモリを抑制する制御を実行する前の、感光体3Yの表面電位を表す図である。
図6(B)は、画像メモリを抑制する制御を実行した後の、感光体3Yの表面電位を表す図である。
【0065】
ある局面において、CPU70は、転写バイアスVtを決定する。より具体的には、1次転写電源65から1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kのいずれかに定電流を流したときの、当該いずれかのローラーに印加される電圧(ATVC電圧)を電圧センサー66によって測定する。
【0066】
CPU70は、測定されたATVC電圧に従い転写バイアスVtを決定する。
図6に示される例において、CPU70は、転写バイアスVtを1550Vに決定する。また、
図6(A)に示される例において、帯電電位Vcは-450Vに、現像バイアスVdは-350Vに、露光電位Viは-140Vにそれぞれ設定されている。
【0067】
上記の条件において、CPU70は、露光転写電位Vteと、非露光転写電位Vtnとを算出する。
図7~
図10を用いてこの算出方法について説明する。
【0068】
<非露光転写電位Vtnの取得>
図7は、感光体3Yと1次転写ローラー7Yとを含む1次転写回路を表す図である。
図7において、感光体3Yの等価回路をコンデンサーと見なしている。この場合、転写前後における感光体3Yの非露光部の電位差ΔVnは、次の式(1)で表現される。
【0069】
[数1]
ΔVn=ΔQ×C
=ΔQ×(d/(ε×S))・・・(1)
ΔQは1次転写により感光体3Yに流入する電荷量、Cは感光体3Y(の等価回路のコンデンサー)の静電容量、dは感光体3Yの感光層の膜厚、εは誘電率、Sは1次転写回路における感光体3Yの感光層の面積をそれぞれ表す。
【0070】
上記において、誘電率ε、面積Sは定数であるため、電荷量ΔQが一定であれば、電位差ΔVnは膜厚dに依存する。
【0071】
より具体的には、電位差ΔVnは、感光体3Yの回転方向に従う所定位置が中間転写ベルト1を介して1次転写ローラー7Yから転写バイアスVtを印加される時間tに依存する。換言すれば、時間tは、1次転写において感光体3Yの回転方向に従う所定位置と中間転写ベルト1とが接する時間とも言える。
【0072】
図8は、電位差ΔVnの時間tの依存性を表す図である。
図8に示されるように、電位差ΔVnは、時間tが経過するにつれて、印加電圧Eに近づく。印加電圧Eは、
図7における1次転写ローラー7Yおよび中間転写ベルト1を含む転写バイアスVtを印加される経路における抵抗をR1とした場合の、当該抵抗R1に印加される電圧を表す。この印加電圧Eは、転写バイアスVtの絶対値と、感光体3Yの表面電位(つまり、帯電電位Vc)の絶対値との積算値になる。
【0073】
ある時間tにおける電位差ΔVn(t)は、次の式(2)で表すことができる。
[数2]
【0074】
時間tは、感光体3Yの回転速度から算出される。抵抗R1はATVC電圧から算出される。印加電圧Eは、転写バイアスVtと露光電位Viとから算出される。したがって、CPU70は、膜厚dが分かれば電位差ΔVnを算出できる。
【0075】
図9は、帯電電流Icと膜厚dとの関係を表す。帯電電流から感光体の膜厚を推定する技術は公知である。実施形態に従うCPU70は、この公知技術に従い感光体3Yの膜厚dを推定する。より具体的には、CPU70は、電流センサー64Yによって検出された帯電電流の大きさから膜厚dを推定する。
【0076】
なお、他の局面において、CPU70は、使用量テーブル532に格納される感光体3Yの使用量に基づいて、膜厚dを算出してもよい。
【0077】
図10は、感光体3Yの使用量と、感光体3Yの膜厚dとの関係を表す。
図10に示されるように、感光体3Yの使用量が増えるほど、感光体3Yはクリーニングブレード8Yによって表面を削られるため、膜厚dが小さくなる。この感光体3Yの使用量と、膜厚dとは略比例関係が成り立つ。そのため、他の局面において、画像形成装置300は、
図10に示される比例関係(関数またはテーブル)を記憶装置530に格納し、当該比例関係と、使用量テーブル532に格納される感光体3Yの使用量とに基づいて、感光体3Yの膜厚dを算出するように構成されてもよい。
【0078】
CPU70は、算出された膜厚dを用いて式(2)に従い電位差ΔVnを算出する。
図6(A)を再び参照して、CPU70は、電位差ΔVnが400Vであると算出する。CPU70は、帯電電位Vc(-450V)と電位差ΔVn(400V)とを積算して非露光転写電位Vtnが-50Vであると算出する。
【0079】
露光部にはトナーが存在するため、非露光部より電荷が移動しづらい。そのため、転写前後における感光体3Yの露光部の電位差ΔVeは、一例として、露光電位Viと転写バイアスVtとの電位差に所定の係数をかけて算出される。当該所定の係数は、上述の感光体3Yの回転方向に従う所定位置と中間転写ベルト1とが接する時間tに依存する。この所定の係数は、記憶装置530に格納されている。
図6(A)に示される例において、CPU70は、電位差ΔVeが20Vであると算出する。CPU70は、露光電位Vi(-140V)と電位差ΔVe(20V)とを積算して露光転写電位Vteが-120Vであると算出する。
【0080】
上記一連の処理に従い、CPU70は、非露光転写電位Vtn(-50V)と、露光転写電位Vte(-120V)とを取得する。これにより、CPU70は、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとの電位差ΔVが70Vであると算出する。
【0081】
<帯電バイアスの決定>
次に、CPU70は、電位差ΔVに従い、帯電電位Vcの補正量を決定する。
図11および
図12を用いて、当該補正量を決定する処理について説明する。
【0082】
図11は、帯電電位Vcと、帯電バイアスVcbとの関係を表す。
図11に示されるように、帯電電位Vcと帯電バイアスVcbとの間には略比例関係が成り立っている。より具体的には、帯電バイアスVcbが単位量増加した場合の帯電電位Vcの増加率は「100%」であって、帯電バイアスVcbの増加分と帯電電位Vcの増加分とは略同じになる。
【0083】
図12は、露光電位Viと、帯電バイアスVcbとの関係を表す。
図12に示されるように、露光電位Viと帯電バイアスVcbとの間には略比例関係が成り立っている。しかしながら、帯電バイアスVcbが単位量増加した場合の露光電位Viの増加率は「10%」である。
【0084】
上記
図11および
図12に示される関係と、上述の式(2)とを利用して、CPU70は、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとの電位差ΔVが0になるように、帯電電位Vcの補正量ΔVc(つまり、帯電バイアスVcbの補正量)を決定する。
図6(A)に示される条件において、CPU70は、補正量ΔVcを100Vと算出する。
【0085】
図6(B)を参照して、補正後の帯電電位Vcは550V(=450V+ΔVc)になる。これにより式(2)における印加電圧Eは2000V(=450V+1550V)から2100V(=550V+1550V)に変更される。つまり印加電圧Eの変動率は5%(=(2100V-2000V)/2000V)である。そのため、ΔVnも5%増加して400Vから420Vに変更される。その結果、非露光転写電位Vtnは、-130V(=-550V+420V)に変更される。
【0086】
また、
図12に示されるように、帯電電位Vcの絶対値が100V高くなったことに伴い、露光電位Viの絶対値が10V(補正量ΔVcの10%)高くなり、-140Vから-150Vに変更される。また、転写前後における感光体3Yの露光部の電位差ΔVeは略変動しないため、露光転写電位Vteは-120Vから-130V(-150V+ΔVe)に変更される。
【0087】
その結果、非露光転写電位Vtnおよび露光転写電位Vteは、同電位(-130V)になる。
【0088】
上記によれば、実施形態に従う画像形成装置300は、補正前の非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとの電位差ΔVに基づいて、補正後の当該ΔVが0になるように補正前の露光電位Viに対する補正量ΔVcを算出できる(つまり、補正後の帯電バイアスVcbを決定できる)。その結果、実施形態に従う画像形成装置300は、画像メモリを抑制できる。
【0089】
図4に示されるように、1次転写電源65が各1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kに対して共通であるような場合、画像形成装置300は、感光体3Y,3M,3C,3Kの各々に対して、最適な転写バイアスVtを設定できない。このような場合にも、実施形態に従う画像形成装置300は、感光体3Y,3M,3C,3Kの各々に対して最適な帯電バイアスVcbを印加することにより、画像メモリを抑制できる。
【0090】
また、画像形成装置300は、除電装置を有さなくとも、換言すれば、トナー像を中間転写ベルト1に転写した後の感光体の電位を除電することなく、次の作像サイクルにおいて帯電電源63Y,63M,63C,63Kを制御して、帯電ローラー4Y,4M,4C,4Kに各々異なる帯電バイアスVcbを印加することにより、画像メモリを抑制できる。
【0091】
また、近年、画像形成装置に対する低コスト化の要求が強く、中間転写ベルト1および1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kを含む画像形成装置を構成するデバイスの製造精度が低い傾向がある。係る場合、転写バイアスVtが印加される回路における抵抗R1のバラつきが大きくなる。このような場合においても、実施形態に従う画像形成装置300は、帯電ローラー4Y,4M,4C,4Kに各々異なる帯電バイアスVcbを印加することにより画像メモリを抑制できる。
【0092】
また、CPU70は、帯電電源63Y,63M,63C,63Kの各々の帯電電位Vcの変更に伴い、マージン電位ΔVm(帯電電位Vcと現像バイアスVdとの電位差)を一定に保つように、現像電源60Y,60M,60C,60Kを構成する直流電源61Y,61M,61C,61Kの各々の現像バイアスVdを変更する。このように、CPU70は、各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kごとに、帯電バイアスVcbおよび現像バイアスVdを設定する。上記の例では、CPU70は、直流電源61Yの現像バイアスVdを350Vから450V(=350V+ΔVc)に変更する。
【0093】
上記によれば、実施形態に従う画像形成装置300は、帯電電位Vcの変更に伴いマージン電位ΔVmが変更されることにより、キャリア付着および非露光部へのトナー付着の発生を抑制できる。
【0094】
また、CPU70は、現像電源60Yにおける現像バイアスVdの変更に伴い、露光装置5Yにおける露光条件を変更する。
図6(B)に示される例において、現像バイアスVdと露光電位Viとの電位差は
図6(A)の状態よりも大きくなっている。そのため、CPU70は、露光装置5Yの単位面積あたりの露光面積を
図6(A)の状態よりも小さくする。これにより、CPU70は、現像バイアスVdの変更前後における見た目の画像濃度(1画素に供給されるトナー量)を維持する。
【0095】
(制御構造)
図13は、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとの電位差ΔVに基づいて作像条件を決定する処理のフローチャートである。
図13に示される各処理は、CPU70が制御プログラム522を実行することにより実現され得る。
【0096】
ステップS1310にて、CPU70は、所定のタイミングであるか否かを判断する。所定のタイミングは、例えば、画像形成装置300に電源が投入されたタイミング、使用量テーブル532に格納される各使用量が所定量(例えば、1000枚毎)に到達したタイミングなどを含み得る。CPU70は、所定のタイミングであると判断した場合、ステップS1320の処理を実行する。
【0097】
ステップS1320にて、CPU70は、中間転写ベルト1に作像されるトナー像を安定化するために、転写バイアスVtを決定する。一例として、CPU70は、電圧センサー66によって測定された、1次転写ローラーに所定の電流を流したときに当該1次転写ローラーに印加された電圧の大きさ(ATVC電圧)に基づいて、転写バイアスVtを決定する。
【0098】
他の例として、CPU70は、感光体から中間転写ベルト1にトナーが移動するために、最低限必要な電流が確保されるように、転写バイアスVtを決定してもよい。トナーが移動するために最低限必要な電流(つまり、電荷の移動量(μC/s))は、トナー帯電量(μC/g)と、感光体上に形成されたトナー像の単位面積あたりの付着量(g/m^2)と、感光体の回転速度(m/s)と、感光体の軸方向においてトナー像が形成される長さ(m)とを乗じた値になる。したがって、CPU70は、印字条件(画像濃度、用紙サイズなど)から定まる上記のパラメータに基づいて、転写バイアスVtを決定してもよい。
【0099】
ステップS1330にて、CPU70は、上記決定された転写バイアスVtと、設定テーブル531に記憶された(補正前の)帯電電位Vc(帯電バイアスVcb)、露光電位Vi、および現像バイアスVdとに基づいて、非露光転写電位Vtnおよび露光転写電位Vteを取得する。
【0100】
ステップS1340にて、CPU70は、上記取得された非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとの電位差ΔVを算出する。
【0101】
ステップS1350にて、CPU70は、算出された電位差ΔVに基づいてステップS1330で用いられた帯電電位Vcを補正するための補正量ΔVcを算出する。より具体的には、CPU70は、算出された電位差ΔVと、環境テーブル533とに基づいて補正量ΔVcを算出する。
【0102】
上記の例では、
図12において、帯電バイアスVcbが単位量増加した場合の露光電位Viの増加率が約10%程度であると説明した。しかしながら、露光電位Viは、環境(温度および湿度)に応じて変化する。つまり、露光電位Viの増加率は環境に応じて変化する。環境テーブル533は、環境条件(温度および湿度の少なくとも一方)と、露光電位Viの増加率とを複数関連付けて保持している。CPU70は、環境テーブル533を参照して、環境センサー540の測定結果に対応する露光電位Viの増加率を特定し、特定された増加率と、算出された電位差ΔVとに基づいて上記補正量ΔVcを算出する。
【0103】
CPU70は、算出された補正量ΔVcに基づいて設定テーブル531に格納される帯電電位Vcを補正する。換言すれば、CPU70は、補正後の帯電電位Vcを得るために必要な帯電バイアスVcbを決定できる。当該構成によれば、実施形態に従う画像形成装置300は、環境によらず、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとを同電位にするための帯電バイアスVcbを決定できる。
【0104】
ステップS1360にて、CPU70は、上記算出された補正量ΔVcに基づいて、設定テーブル531に格納される現像バイアスVdを補正する。これにより、実施形態に従う画像形成装置300は、帯電バイアスVcdの変更前後におけるマージン電位ΔVmを一定に保つことができる。
【0105】
ステップS1370にて、CPU70は、上記補正後の現像バイアスVdに基づいて、設定テーブル531に格納される露光条件を変更する。より具体的には、CPU70は、現像バイアスVdの変更前後における見た目の画像濃度(1画素に供給されるトナー量)を維持するように露光条件を変更する。
【0106】
CPU70は、印字ジョブの入力に従い、上記決定された帯電バイアスVcb、現像バイアスVd、および露光条件で印字を実行する。係る場合、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとの電位差ΔVが0になるように制御されるため、出力画像において画像メモリに起因する画像ムラが抑制される。
【0107】
(モードの選択)
上記の例では、実施形態に従う画像形成装置300は、所定のタイミングにおいて画像メモリを抑制する制御を必ず実行するように構成されている。他の局面において、画像形成装置300は、高画質モードと通常モードとを切り替え可能に構成され、高画質モードに設定されている場合に画像メモリを抑制する制御を実行し、通常モードに設定されている場合に画像メモリを抑制する制御を実行しないように構成されてもよい。
【0108】
当該構成によれば、ユーザが画像メモリに起因する画像ムラを許容する場合に、画像形成装置300は上記画像メモリを抑制する制御を省略することにより、生産性を向上し得る。
図14を用いて、通常モードにおける処理を具体的に説明する。
【0109】
図14は、高画質モードと通常モードにおける処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図14に示される処理のうち
図13の処理と同じ処理については同じ符号を付している。そのため、その処理についての説明は繰り返さない。
【0110】
ステップS1410にて、CPU70は、高画質モードに設定されているか、通常モードに設定されているかを判断する。CPU70は、高画質モードに設定されていると判断した場合、ステップS1330の処理を実行する。一方、CPU70は、通常モードに設定されていると判断した場合、ステップS1420の処理を実行する。一例として、ユーザは、操作パネル80を操作することにより、いずれか一方のモードを選択し得る。
【0111】
ステップS1420にて、CPU70は、通常モードにおける露光装置の露光出力を、露光電位Viが当該露光出力の変動に対して略変動しない領域に設定する。露光電位Viは、露光出力の上昇に伴い接地電位に近づき、露光出力が所定値以上になると所定電位に収束する。露光電位Viが当該露光出力の変動に対して略変動しない領域は、当該所定値以上の露光出力を表す。これにより、画像形成装置300は通常モードにおいて画像濃度ムラを抑制し得る。
【0112】
ステップS1430にて、CPU70は、感光体の膜厚dを取得する。例えば、CPU70は、電流センサー64Yによって測定された帯電電流Icとから膜厚dを算出してもよいし、使用量テーブル532に格納される感光体の使用量に基づいて膜厚dを算出してもよい。他の局面において、画像形成装置300、膜厚dを光学的に測定するための測定装置を有していてもよい。
【0113】
ステップS1440にて、CPU70は、通常モードにおける現像バイアスVdを、感光体の軸方向全体に潜像が形成されている場合に、予め定められた画像濃度に対応するトナー量を当該潜像に供給するために必要な電位に設定する。より具体的には、CPU70は、露光電位Vi、トナー量、および感光体の膜厚dとに基づいて現像バイアスVdを決定する。
【0114】
ステップS1445にて、CPU70は、決定された現像バイアスVdに基づいて、マージン電位ΔVmが一定値になるように、帯電電位Vcを決定する。CPU70は、決定した帯電電位Vcになるように、帯電バイアスVcbを決定する。CPU70は、ステップS1420~S1445で決定した作像条件を、通常モードにおける作像条件として設定テーブル531に保存する。なお、CPU70は、ステップS1330~S1370で決定した作像条件を、高画質モードにおける作像条件として設定テーブル531に保存する。
【0115】
ステップS1450にて、CPU70は、取得された感光体の膜厚dが所定値未満であるか否かを判断する。CPU70は、膜厚dが所定値未満であると判断した場合(ステップS1450でYES)、当該感光体の使用可能期間を満了したと判断する(ステップS1460)。例えば、CPU70は、操作パネル80上に、感光体の使用可能期間が満了したことを通知する。一方、CPU70は、膜厚dが所定値以上であると判断した場合(ステップS1450でNO)、CPU70は、一連の処理を終了する。
【0116】
上記によれば、CPU70は、通常モードにおいて最適な作像条件を決定できる。高画質モードでは、帯電バイアスVcb、現像バイアスVd、露光条件、の順番で作像条件が決定されたが、通常モードでは、露光条件、現像バイアスVd、帯電バイアスVcbの順番で作像条件が決定される。
【0117】
ところで、帯電バイアスVcbの絶対値が大きくなると感光体の膜厚dの単位時間あたりの減耗量が大きくなる。そのため、実施形態に従う画像形成装置300は、通常モードにおいて帯電バイアスVcbを大きく補正しないことにより、感光体の使用可能期間が短くなることを抑制し得る。
【0118】
[他の構成]
(画像情報に基づく制御)
画像メモリは、直前に印字された画像が均一である場合、今回の印字時において発生しにくい。その理由は、直前の印字において感光体の軸方向に従い均一に露光された場合、転写後の感光体の表面電位はすべて略露光転写電位Vteとなるためである。
【0119】
一方、ユーザは、印字された画像が均一である場合は画像メモリによる画像ムラを視認しやすいが、印字された画像が不均一である場合は画像メモリによる画像ムラを視認しにくい。
【0120】
したがって、ある実施形態に従う画像形成装置300は、直前に印字された画像が均一である場合、および今回印字される画像が不均一である場合は、設定テーブル531に格納される作像条件のうち、通常モードに従う作像条件に従い印字を実行する。一例として、CPU70は、入力された画像情報に基づいて、感光体のある範囲の面内の濃度差(最大濃度と最低濃度との差分)が所定濃度未満であると判断した場合に、画像が均一であると判断する。
【0121】
当該構成によれば、画像形成装置300は、通常モードに従う作像条件で画像を形成したとしても、ユーザによって画像ムラが視認されることを抑制できる。
【0122】
(感光体の使用可能期間を満了したか否かを判断する他の構成)
上述のように、CPU70は、現像電源60Y,60M,60C,60Kの各々の現像バイアスVdと、帯電電源63Y,63M,63C,63Kの各々の帯電バイアスVcdとを変更(補正)するように構成されている。
【0123】
しかしながら、ある局面において、変更後の現像バイアスVdが現像電源の出力範囲外に、または変更後の帯電バイアスVcbが帯電電源の出力範囲外になってしまう場合がある。この場合、現像電源が変更後の現像バイアスVdを出力できない、または帯電電源が変更後の帯電バイアスVcbを出力できない状態になる。CPU70は、このように、変更後の現像バイアスVdを現像電源が出力できない場合、または変更後の帯電バイアスVcbを帯電電源が出力できない場合に、当該現像電源または帯電電源に対応する感光体の使用可能期間を満了したと判断する。
【0124】
一例として、CPU70は、高画質モードに設定されている場合において、現像電源または帯電電源の出力範囲に基づいて感光体の使用可能期間が満了したか否かを判断するように構成されてもよい。さらに他の例として、CPU70は、高画質モードに設定されている場合において、下記のいずれかの条件が満たされた場合に感光体の使用可能期間が満了したと判断するように構成されてもよい。
(条件1)感光体の膜厚dが予め定められた膜厚未満になった
(条件2)変更後の現像バイアスVdを現像電源が出力できなくなった
(条件3)変更後の帯電バイアスVcbを帯電電源が出力できなくなった
(表面電位計)
図15は、他の実施形態に従う画像形成装置1500の内部構造の一部を表す。画像形成装置1500は、各感光体3Y,3M,3C,3Kに対応する表面電位計68Y,68M,68C,68Kを有し、電流センサー64Yを有さない点において、
図3-
図5で説明した画像形成装置300と相違する。
【0125】
表面電位計68Y,68M,68C,68Kは、対応する感光体3Y,3M,3C,3Kの軸方向に従う複数位置における表面電位を非接触に計測可能に構成される。上記複数位置は、露光部および非露光部に対応する。
【0126】
上記の画像形成装置300は、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとを理論的に算出するように構成されていたが、画像形成装置1500は、表面電位計68Y,68M,68C,68Kに従い、非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとを実際に測定してもよい。
【0127】
当該構成によれば、画像形成装置1500は、画像形成装置300よりも正確な非露光転写電位Vtnと露光転写電位Vteとを取得できるため、画像メモリをより抑制し得る。
【0128】
上記説明した各種処理は、1つのCPU70によって実現されるものとしてあるが、これに限られない。これらの各種機能は、少なくとも1つのプロセッサのような半導体集積回路、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのDSP(Digital Signal Processor)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、および/またはその他の演算機能を有する回路によって実装され得る。
【0129】
これらの回路は、有形の読取可能な少なくとも1つの媒体から、1以上の命令を読み出すことにより上記の各種処理を実行しうる。
【0130】
このような媒体は、磁気媒体(たとえば、ハードディスク)、光学媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、DVD)、揮発性メモリ、不揮発性メモリの任意のタイプのメモリなどの形態をとるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0131】
揮発性メモリはDRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)を含み得る。不揮発性メモリは、ROM、NVRAMを含み得る。
【0132】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
1 中間転写ベルト、2C,2K,2M,2Y 作像ユニット、3C,3K,3M,3Y 感光体、4C,4K,4M,4Y 帯電ローラー、5C,5K,5M,5Y 露光装置、6C,6K,6M,6Y 現像ローラー、7C,7K,7M,7Y 1次転写ローラー、8C,8K,8M,8Y クリーニングブレード、11 2次転写ローラー、60C,60K,60M,60Y 現像電源、61C,61K,61M,61Y 直流電源、62C,62K,62M,62Y 交流電源、63C,63K,63M,63Y 帯電電源、64Y 電流センサー、65 1次転写電源、66 電圧センサー、67 2次転写電源、68C,68K,68M,68Y 表面電位計、80 操作パネル、300,1500 画像形成装置、510 RAM、520 ROM、522 制御プログラム、530 記憶装置、531 設定テーブル、532 使用量テーブル、533 環境テーブル、540 環境センサー、Vc,Vc1,Vc2 帯電電位、Vcb 帯電バイアス、Vd,Vd1,Vd2 現像バイアス、Vi,Vi1 露光電位、Vt,Vt1 転写バイアス、Vtn,Vtn1,Vtn2 非露光転写電位、Vte,Vte1,Vte2 露光転写電位。