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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】反転式印判
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/40 20060101AFI20220119BHJP
   B41K 1/50 20060101ALI20220119BHJP
   B41K 1/02 20060101ALI20220119BHJP
   B41K 1/36 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B41K1/40
B41K1/50 J
B41K1/02 J
B41K1/02 T
B41K1/36 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017209943
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019081298
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】安江 明哲
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223747(JP,A)
【文献】特開2008-265112(JP,A)
【文献】特開2017-170712(JP,A)
【文献】特開平06-305231(JP,A)
【文献】実開昭61-148659(JP,U)
【文献】実開昭48-105605(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/40
B41K 1/50
B41K 1/02
B41K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠体と、この外枠体にガイドされて弾性部材の付勢下で上下自在にスライド移動する内枠体と、外枠体に枢着される印字体ホルダーと、前記内枠体内に内蔵されるインキパッドと、前記内枠体のスライド移動により前記印字体ホルダーを反転させる反転機構を備えた反転式印判であって、
印字体ホルダーの前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設け
反転機構は内枠体の内壁面に立設したラックと、このラックに歯合する印字体ホルダーの底面に立設した歯板とからなり、
左右方向ブレ防止機構が、前記ラックに設けられた溝と前記歯板に設けられた突起を係合することにより印字体ホルダーの左右方向のブレを防止するものであることを特徴とする反転式印判。
【請求項2】
外枠体と、この外枠体にガイドされて弾性部材の付勢下で上下自在にスライド移動する内枠体と、外枠体に枢着される印字体ホルダーと、前記内枠体内に内蔵されるインキパッドと、前記内枠体のスライド移動により前記印字体ホルダーを反転させる反転機構を備えた反転式印判であって、
印字体ホルダーの前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右方向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設け、
前後方向ブレ防止機構が、内枠体の側面の軸方向に設けられた一対の縦溝と、印字体ホルダーに設けられた一対の板状突起を係合するものであり、前記縦溝の端部における幅と前記板状突起の幅を同一の長さとすることにより印字体ホルダーの前後方向のブレを防止するものであることを特徴とする反転式印判。
【請求項3】
左右方向ブレ防止機構と前後方向ブレ防止機構が、内枠体の上部と下部にそれぞれ設けられている請求項1または2に記載の反転式印判。
【請求項4】
印字体ホルダーの外周に、インキパッドの収納部を密閉するためのOリングが取り付けられている請求項1~3のいずれかに記載の反転式印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に捺印しても前後方向および左右方向にブレを生じることなく鮮明な捺印を持続することができる反転式印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、印判を下向きに押圧しながら印面を下向きに反転させて捺印を行えるようにした反転式印判が知られている。このような反転式印判は、例えば役所等における書類の受付証明印や工場等における出荷品の品質保証印などとして広く使用に供されているが、使用頻度が高く、かつ手荒な状態で使用されることが多いため印面がガタついて鮮明な捺印ができないという問題があった。
【0003】
そこで本件出願人は、特許文献1に示されるように、内枠体に形成した隆条部と印字体ホルダーに形成した溝とを係合させて前後方向のブレを抑止する機構を付加した反転式印判を考案し、先に特許出願している。
しかしながら、特許文献1に記載の印判は左右方向のブレを防止することができないため、激しい操作で押印した場合には左右方向のブレを防止できず鮮明な捺印を確保することができないという問題があった。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、インキパッドを内蔵して印字体ホルダーが密閉蓋となる気密室を設けて、吸収体に含浸されたインキの揮発を抑制するようにしたスタンプ印字装置や、特許文献3に示されるように、気密室を高気密に保つようにした印判も提案されている。
しかしながら、特許文献2、3に記載のものは、成型品の材料疲労による印字体ホルダーのガタツキや、成型品の寸法誤差などによって印字体ホルダーが気密室をズレなく塞ぐことができず、気密室が高い気密性を保持できずに、インキパッド中のインキが揮発するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-223747号公報
【文献】特開昭49-37727号公報
【文献】特開2017-170712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、連続的に捺印しても前後方向および左右方向にブレを生じることなく鮮明な捺印を持続することができる反転式印判を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の反転式印判は、外枠体と、この外枠体にガイドされて弾性部材の付勢下で上下自在にスライド移動する内枠体と、外枠体に枢着される印字体ホルダーと、前記内枠体内に内蔵されるインキパッドと、前記内枠体のスライド移動により前記印字体ホルダーを反転させる反転機構を備えた反転式印判であって、印字体ホルダーの前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右方向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設け、反転機構は内枠体の内壁面に立設したラックと、このラックに歯合する印字体ホルダーの底面に立設した歯板とからなり、左右方向ブレ防止機構が、前記ラックに設けられた溝と前記歯板に設けられた突起を係合することにより印字体ホルダーの左右方向のブレを防止するものであることを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
また、本発明の反転式印判は、外枠体と、この外枠体にガイドされて弾性部材の付勢下で上下自在にスライド移動する内枠体と、外枠体に枢着される印字体ホルダーと、前記内枠体内に内蔵されるインキパッドと、前記内枠体のスライド移動により前記印字体ホルダーを反転させる反転機構を備えた反転式印判であって、印字体ホルダーの前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右方向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設け、前後方向ブレ防止機構が、内枠体の側面の軸方向に設けられた一対の縦溝と、印字体ホルダーに設けられた一対の板状突起を係合するものであり、前記縦溝の端部における幅と前記板状突起の幅を同一の長さとすることにより印字体ホルダーの前後方向のブレを防止するものであることを特徴とするものであり、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、その他の好ましい実施形態によれば、左右方向ブレ防止機構と前後方向ブレ防止機構が、内枠体の上部と下部にそれぞれ設けられていることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
また、その他の好ましい実施形態によれば、印字体ホルダーの外周に、インキパッドの収納部を密閉するためのOリングが取り付けられていることが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
【0012】
【0013】
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、印字体ホルダーの前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設けたので、前後方向および左右方向のブレを確実に防止することができ、工業用用途等の捺印サイクルが速くて手荒な扱いをする場合であってもブレのない鮮明な捺印を保証することができる。さらに、前記反転機構は内枠体の内壁面に立設したラックと、このラックに歯合する印字体ホルダーの底面に立設した歯板とからなり、左右方向ブレ防止機構が、前記ラックに設けられた溝と前記歯板に設けられた突起を係合することにより印字体ホルダーの左右方向のブレを防止するものとしたので、左右方向ブレ防止機構を反転機構の中に組み込むことができ、極めて簡単な構造にすることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、印字体ホルダーの前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設けたので、前後方向および左右方向のブレを確実に防止することができ、工業用用途等の捺印サイクルが速くて手荒な扱いをする場合であってもブレのない鮮明な捺印を保証することができる。さらに、前後方向ブレ防止機構が、内枠体の側面の軸方向に設けられた一対の縦溝と、印字体ホルダーに設けられた一対の板状突起を係合するものであり、前記縦溝の端部における幅と前記板状突起の幅を同一の長さとすることにより印字体ホルダーの前後方向のブレを防止するものとしたので、捺印時および印盤の収納時において、印字体ホルダーを確実に固定することができ、鮮明な捺印を実現することができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、左右方向ブレ防止機構と前後方向ブレ防止機構が、内枠体の上部と下部にそれぞれ設けられているものとしたので、捺印時および印盤の収納時において、印字体ホルダーを正しい位置で確実に固定することができることから、通常時は、上部のブレ抑止機構で収納部を機密性保持してインキの蒸発を極力防ぎ、捺印時は、下部のブレ抑止機構で印字体ホルダーを確実に固定し、鮮明な捺印を実現することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、前記印字体ホルダーの外周に、インキパッドの収納部を密閉するためのOリングが取り付けられているものとしたので、収納部の気密性を保持してインキの蒸発を極力防止することができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態を示す正面断面図である。
図3】本発明の実施の形態を示す側面断面図である。
図4】外枠体と内枠体を示す斜視図である。
図5】(a)は印字体ホルダーの正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図6】本発明に係る反転式印判の捺印操作の説明図である。
図7】左右方向ブレ防止機構の一例を示す説明図である。
図8】前後方向ブレ防止機構の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明に係る反転式印判の一例を示す分解斜視図である。図において、1は外枠体、2はこの外枠体1にガイドされてコイルスプリングのような弾性部材3の付勢下で上下自在にスライド移動する内枠体である。また、4は前記外枠体1に枢着される印字体ホルダー、5は前記内枠体2内に内蔵されるインキパッド、6は前記内枠体2のスライド移動により前記印字体ホルダー4を反転させる反転機構であり、以上の構成は反転式印判の基本的な構成である。
【0023】
本発明では、反転式印判において、前記印字体ホルダー4の前後方向のブレを防止する前後方向ブレ防止機構と、左右向のブレを防止する左右方向ブレ防止機構を設けた点に特徴を有する。このように、前後方向ブレ防止機構と左右方向ブレ防止機構を設けることにより、前後方向のみならず左右方向のブレも確実に防止することができ、ブレのない鮮明な捺印を可能としている。
【0024】
前記左右方向ブレ防止機構は、図7に示すように、内枠体2および印字体ホルダー4に設けられた突起12aと縦溝12bを係合することにより印字体ホルダーの左右方向のブレを防止する構造とすることができる。また、前後方向ブレ防止機構は、図8に示すように、内枠体2および印字体ホルダー4に設けられた突起12aと縦溝12bを係合する構造とすることができる。
なお、図7および図8に示すものでは、枠体2に突起12aを設け印字体ホルダー4に縦溝12bを設けたものとしたが、この逆であってもよいことは勿論である。
【0025】
以下に、図1に示した本発明の反転式印判について説明する。
図2は反転式印判の正面断面図、図3は側面断面図、図4は外枠体と内枠体の組み付け状態を示す斜視図である。
前記外枠体1の上端は開口されて蓋体1aで閉蓋自在となっており、内部には弾性部材3を介して内枠体2がその付勢下で上下方向にスライド移動可能に挿入されている。また、前記内枠体2の上端には、インキパッド5を収納するパッドホルダー7が取り付けられている。なお、このパッドホルダー7の上面は、前記弾性部材3の下端部の受け面部となっている。
また、パッドホルダー7の外周面上端部には突起7aが設けられており、前記内枠体2の上端縁に設けられた凹部2aと係合することで両者が位置決め固定される構造となっている。
【0026】
前記印字体ホルダー4は、ホルダー本体4aと、その上面に装着される印字体4bとからなる。このホルダー本体4aの両側縁には、軸8を枢支するための軸受部4cが垂設されており、この軸8を中心に回転することで印字体ホルダー4が反転自在な構造となっている。また、印字体ホルダー4の外周には、前記インキパッド5の収納部を密閉するためのOリング9が取り付けられている。
更に、印字体ホルダー4の底面(下面)には、逆V字状の歯板6aを立設した盤材6bが取り付けられている。前記歯板6aは反転機構6を構成する要素である。
【0027】
前記反転機構6は、内枠体2の内壁面に立設したラック6cと、このラック6cに歯合する印字体ホルダー4の底面に立設した歯板6aとからなる。即ち、内枠体2が外枠体1内を上下方向にスライド移動すると、前記印字体ホルダー4も同時に上下方向に移動するが、前記歯板6aがラック6cに歯合しているため印字体ホルダー4は軸8を中心にして回転し、印字体4bが上端位置では上向きであったのが、下端位置では180度反転して下向きとなり捺印可能な状態となる構造である。
【0028】
更に、前記ラック6cの上部凸部と下部凸部の先端には各々縦方向の溝6d、6dが設けられており、一方、図5に示すように、前記歯板6aの先端部には突起6eが設けられていて、前記溝6dと突起6eが係合することにより印字体ホルダー4の横ブレを防止する左右方向ブレ防止機構を構成している。
【0029】
また、図1に示した本発明の反転式印判では、前後方向ブレ防止機構が、内枠体2の側面の軸方向に設けられた一対の縦溝10と、印字体ホルダー4に設けられた一対の板状突起4dを係合するものであり、前記縦溝10の上下の端部における幅と前記板状突起4dの幅を同一の長さとすることにより印字体ホルダー4の前後方向のブレを防止する構造となっている。
即ち、印字体ホルダー4はピン8が縦溝10内を移動することで反転するように構成されているが、図5に示されるように、ピン8の上には板状突起4dが設けられており、この板状突起4dが縦溝10の上下端部では水平状態となって縦溝内にぴったりと収まるように設計されており、印字体ホルダー4の前後方向へのガタつきを防止する構造となっている。なお、縦溝10の上下端部の近辺以外は、ピン8の直径に板状突起4dの厚み分を加えた幅となるように大きくなっており、印字体ホルダー4の反転動作が支障なく行える構造となっている。
【0030】
このように、左右方向ブレ防止機構と前後方向ブレ防止機構が、内枠体2の上部と下部にそれぞれ設けられているので、捺印時および印盤の収納時において、印字体ホルダー4を正しい位置で確実に固定することができ、ブレのない鮮明な捺印と、インキの蒸発を極力防ぐことを実現することが可能となる。また、構造的にもシンプルなものとすることができる。
【0031】
更に、印字体ホルダー5の外周に、インキパッド5の収納部を密閉するためのOリング8が取り付けられているので、収納部の気密性を保持してインキの蒸発を極力防止することができる。また、インキが強い臭いを発する場合であっても、気密性が高いため臭気漏れを防いで作業環境の劣化を防止することができる。
【0032】
以上の各部品は、図2および図3に示されるように組み立てられて反転式印判とされる。即ち、内枠体2の上端にはパッドホルダー7が取り付けられ、またその下部には印字体ホルダー4が取り付けられる。なお、印字体ホルダー4の底面(下面)には、逆V字状の歯板6aを立設した盤材6bが取り付けられている。前記印字体ホルダー4は、軸受部4cに軸8が挿入されたうえ、この軸8両端が内枠体2の縦溝10内に嵌合される。更に、軸8両端は外枠体1の孔1bを貫通して、突出端部をピン止め具11で固定されている。
【0033】
このように構成した本発明の反転式印判は、図6に示されるように、通常ではパッドホルダー7が弾性部材3により下方向へ弾発されているため、内枠体2も下方向へ下降した状態となっている(左図を参照)。内枠体2の縦溝10内には軸8が嵌合しているので、内枠体2は軸8と縦溝10の上端が接するまで下方向へ下降する。この状態では、ラック6cに設けられた溝6dと歯板6aに設けられた突起6eとが係合しているため印字体ホルダー4の左右方向のブレが防止されることとなる。また、縦溝10の端部における幅と板状突起4dの幅が同一の長さとなっているので印字体ホルダーの前後方向のブレも防止されることとなる。
更には、前記印字体ホルダー4の外周には、インキパッド5の収納部を密閉するためのOリング9が取り付けられているので、収納部の気密性を保持してインキの蒸発、および臭気の放出を極力防止することができる。
【0034】
次いで、捺印するために外枠体1を押し下げると、内枠体2が外枠体内へスライド移動する(中央図を参照)。この過程では、内枠体2の内壁面に立設したラック6cと、このラック6cに歯合する印字体ホルダー4の底面に立設した歯板6aとからなる反転機構により、軸8を中心に印字体ホルダー4が反転し、この結果、印字体4bが押印可能な状態になる。
【0035】
次いで、外枠体1を最後まで押し下げると捺印処理が行われる(右図を参照)。内枠体2は軸8と縦溝10の下端が接するまで上方向へ上昇する。この状態では、ラック6cに設けられた溝6dと歯板6aに設けられた突起6eとが係合しているため印字体ホルダー4の左右方向のブレが防止されることとなる。また、縦溝10の端部における幅と板状突起4dの幅が同一の長さとなっているので印字体ホルダーの前後方向のブレも防止されることとなる。
その後は、外枠体1を押し下げるのを止めると、弾性部材3の弾発力により内枠体2が下方向へ下降されて自動的に初期状態に復帰する。
【0036】
なお、前記インキパッド5に含浸させるインキは、顔料系、染料系、水性系を問わず適宜使用可能である。例えば、コート紙、プラスチックフィルム、アルミニウム、鉄等の難吸収紙や非吸収材に押印するための速乾性インキとしては、速乾性溶剤に着色剤や樹脂等を溶解混合した油性インキ(粘度50~5000mps・s、好ましくは100~1000mps・s)を用いることができる。インキ粘度は、液温25℃に調整されたインキをB型粘度計にて60rpmで測定した。なお、測定ローターは、ローターの測定上限値を考慮し、適切なローターを選択した。
【0037】
また、前記インキパッド5としては、例えばトップ層にポリエチレンテレフタレートとポリアミドの混合繊維(85g/m2、厚み0.45mm×1枚)と、ベース層にポリエチレンとポリプロピレンの混合繊維(250g/m2、厚み3.3mm×3枚)の間にPA系接着剤を介して、5.6mmに圧縮成型した不織布の積層体を用いることができる。
【実施例
【0038】
前記した速乾性インキ(粘度500mps・s)を前記の5.6mmに圧縮成型した不織布の積層体に含浸し組み立てした反転式印判を用いて、捺印荷重5Kg、設置時間0.4秒、捺印サイクル45秒/回で100回捺印後、一昼夜放置し、翌日に、再度捺印試験を実施し、この一連の試験サイクルを10日間繰り返し実施し、5日目の捺印印影、10日目の捺印印影の評価を行った。得られた断続捺印試験の結果を[表1]に示す。
参考例及び実施例の[A1]は、左右方向ブレ防止機構が、内枠体および印字体ホルダーに設けられた突起と縦溝を係合することにより印字体ホルダーの左右方向のブレを防止するもの(図7参照)、[A2]は、左右方向ブレ防止機構が、ラックに設けられた溝と歯板に設けられた突起を係合することにより印字体ホルダーの左右方向のブレを防止するもの(図1参照)、[B1]は、前後方向ブレ防止機構が、内枠体および印字体ホルダーに設けられた突起と縦溝を係合することにより印字体ホルダーの前後方向のブレを防止するもの(図8参照)、[B2]は、前後方向ブレ防止機構が、縦溝の端部における幅と板状突起の幅を同一の長さとすることにより印字体ホルダーの前後方向のブレを防止するもの(図1参照)、[C]は、印字体ホルダーの外周に、インキパッドの収納部を密閉するためのOリングが取り付けられているもの(図1参照)を示す。
捺印状態を目視確認して、インキパッド内のインキ溶剤が揮発し、捺印印影が読み取れない場合を×、インキパッド内のインキ溶剤が揮発、捺印印影が読み取りにくい場合を△、インキパッド内のインキ溶剤の揮発がなく、捺印印影が鮮明に完全に読み取れた場合を○と評価した。
[表1]の断続捺印試験結果から、実施例のものは溶剤に揮発が抑えられていずれも印面を読み取ることができることが確認できた。一方、比較例のものはブレが発生して印面が読み取れなかった場合があることが判明した。
また、別途捺印サイクルの影響確認試験を行った。前記の断続捺印試験に使用したインクパッド及び反転式印判を用いて捺印荷重5Kg、設置時間0.4秒で、捺印サイクルを適宜変更して、捺印試験を実施し、初期の捺印印影を評価した。得られた捺印サイクルの影響確認試験の結果を[表2]に示す。
捺印状態を目視検査して、印面ブレにより、捺印印影が読み取れなかった場合を×、印面が多少ブレることにより捺印印影読み取りにくい場合を△、印面のブレがなく捺印印影が鮮明に完全に読み取れた場合を○と評価した。
[表2]の捺印サイクルの影響確認試験結果から、実施例のものはブレの発生が抑えられていずれも印面を読み取ることができることが確認できた。一方、比較例のものはブレが発生して印面が読み取れなかった場合があることが判明した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【符号の説明】
【0041】
1 外枠体
1a 蓋体
1b 孔
2 内枠体
3 弾性部材
4 印字体ホルダー
4a ホルダー本体
4b 印字体
4c 軸受部
4d 板状突起
5 インキパッド
6 反転機構
6a 歯板
6b 盤材
6c ラック
6d 溝
6e 突起
7 パッドホルダー
8 軸
9 Oリング
10 縦溝
11 ピン止め具
12a 突起
12b 縦溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8