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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】塗装装置および塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20220119BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220119BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220119BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220119BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20220119BHJP
   E01D 19/08 20060101ALI20220119BHJP
   E04F 21/08 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B05B13/04
B05D7/00 L
B05D3/00 F
B05D3/00 D
E01D22/00 A
E01D19/10
E01D19/08
E04F21/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018000114
(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公開番号】P2019118875
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518004185
【氏名又は名称】株式会社サーフェステクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】510181909
【氏名又は名称】株式会社久野製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔵治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 明
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敏行
(72)【発明者】
【氏名】深谷 卓央
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 健康
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一広
(72)【発明者】
【氏名】小西 武
(72)【発明者】
【氏名】牧 洋次
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-130597(JP,A)
【文献】特開昭55-165165(JP,A)
【文献】実開昭59-093767(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-17/08
B05D1/00-7/26
E01D1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復回動するアームと、
前記アームの先端において前記アームとは別に往復回動するノズルと、
前記アームが搭載された走行台車と、
第一プーリーと、
前記第一プーリーから離間した位置に配設された第二プーリーと、
前記第一プーリーおよび前記第二プーリーに巻き付けられた無端ベルトと、
前記第一プーリーに回転力を付与する動力源と、を備える塗装装置であって、
前記アームは、前記第一プーリーの回転に伴って往復回動し、
前記ノズルは、前記第二プーリーの回転に伴って往復回動することを特徴とする、塗装装置。
【請求項2】
前記アームは、前記走行台車の進行方向に沿ったアーム用回転軸を中心に往復回動することを特徴とする、請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記アーム用回転軸と平行なノズル用回転軸を中心に往復回動することを特徴とする、請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記アームが1回往復する間に、前記ノズルが1~10回往復することを特徴とする、請求項3に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記走行台車と被塗装面との間に設けられた飛散防止カバーをさらに備えており、
前記飛散防止カバーは、前記アームの先端部および前記ノズルの少なくとも側方および上方を囲っていて、
前記飛散防止カバーには、当該飛散防止カバーの内側空間に連通された吸引手段が接続されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の塗装装置を利用して被塗装物の表面に塗装を行う塗装方法であって、
前記走行台車の移動速度、前記アームの回動数および前記ノズルの回動数を調整することで、塗装厚を設定することを特徴とする、塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式の塗装装置およびこれを利用した塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物に対してコンクリートの劣化の進行を抑制することを目的として、表面に塗装を施す場合がある。コンクリート構造物の表面を塗装すると、水分の浸透を抑制できる。
【0003】
コンクリート構造物の表面を塗装する場合は、塗装剤を被塗装面に吹き付けるのが一般的である。塗装剤の吹き付けは、作業員がノズルを動かすことにより行うが、塗装剤をムラなく均一に吹き付けるためには、熟練した技術が必要であった。また、例えば、高速道路の壁高欄等のように、長スパン(広範囲)にわたって塗装を行う場合には、人力による施工は手間と時間がかかる。
【0004】
そのため、ムラが生じることを抑制するとともに、省力化および施工期間の短縮化を目的として、機械を利用した自動塗装技術が開発されている。従来の自動塗装技術は、先端にノズルが設けられたアームを移動させながらノズルから塗装剤を吐出するものである。
【0005】
また、特許文献1には、昇降マストを搭載した自走式車両と、昇降マストの昇降動作により上下移動する吹付用アタッチメントと、吹付用アタッチメントの先端に設けられた吹付ノズルとを備えた自走式吹付装置が開示されている。特許文献1の自走式吹付装置は、所定の位置にノズルを配置させた状態で、塗装剤を吹き付けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-075074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
機械的に塗装した場合であっても、ムラが生じる場合がある。例えば、アームの可動範囲の中心部分と縁部分とでは、塗装の厚みに差が生じる場合があった。
このような観点から、本発明は、塗装の厚みにムラが生じ難い塗装装置を提案するとともに、この塗装装置を利用した塗装方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の塗装装置は、往復回動するアームと、前記アームの先端において前記アームとは別に往復回動するノズルと、前記アームが搭載された走行台車と、第一プーリーと、前記第一プーリーから離間した位置に配設された第二プーリーと、前記第一プーリーおよび前記第二プーリーに巻き付けられた無端ベルトと、前記第一プーリーに回転力を付与する動力源とを備えるものであって、前記アームは前記第一プーリーの回転に伴って往復回動し、前記ノズルは前記第二プーリーの回転に伴って往復回動することを特徴とする。なお、前記アームは、前記走行台車の進行方向に沿った回転軸(アーム用回転軸)を中心に往復回動してもよいし、走行台車の進行方向と直交する回転軸を中心に往復回動してもよい。また、前記ノズルは、前記アーム用回転軸と平行な回転軸(ノズル用回転軸)を中心に往復回動してもよいし、アーム用回転軸と交差する回転軸を中心に往復回動してもよい。前記塗装装置では、前記アームが1回往復する間に、前記ノズルが1~10回往復するのが望ましい。
【0009】
かかる塗装装置によれば、往復回動するアームの先端において、ノズルが個別に(アームの回動運動とは別に)往復回動するため、塗装剤を均一に吹き付けることができる。すなわち、アームの回動運動によって広範囲に移動するノズルがアームの先端において小刻みに回動するため、人力により塗装を行う際の腕と手首の動きに近い動作による吹き付けが可能となる。
【0010】
また、、前記アームは、前記第一プーリーの回転に伴って往復回動し、前記ノズルは、前記第二プーリーの回転に伴って往復回動するため、1つの動力によりアームとノズルとをそれぞれ往復回動させることができる。
【0011】
また、前記塗装装置は、前記走行台車と被塗装面との間に設けられた飛散防止カバーをさらに備えていてもよい。このとき、前記飛散防止カバーは、前記アームの先端部および前記ノズルの少なくとも側方および上方を囲っていて、前記飛散防止カバーには、当該飛散防止カバーの内側空間に連通された吸引手段が接続されているのが望ましい。かかる塗装装置によれば、塗装剤を吹き付けた際に塗装剤が周囲に飛散することを防止することができる。
【0012】
なお、本発明の塗装方法は、前記塗装装置を利用して被塗装物の表面に塗装を行うものであって、前記走行台車の移動速度、前記アームの回動数および前記ノズルの回動数を調整することで、塗装厚を設定することを特徴とする。かかる塗装方法によれば、塗装厚の管理が容易となる。そのため、簡易に高品質施工を実施することが可能であるとともに、材料の無駄をなくすことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗装装置および塗装方法によれば、塗装の厚みにムラが生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る塗装装置の概要を示す図であって、(a)は平面図、(b)は塗装装置の進行方向背面側から望む側面図、(c)は同進行方向側方から望む側面図である。
図2】(a)は塗装装置の進行方向背面側から望む側面図、(b)は塗装装置の平面図である。
図3】被塗装面とアーム用回転軸との位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態では、供用中の道路における既設の壁高欄(被塗装物)Wに対して塗装剤を吹き付けて補修を行う場合について説明する。壁高欄Wへの塗装剤の吹き付けは、図1(a)に示すように、壁高欄Wの内側(道路側)において壁高欄Wの延長方向に沿って移動する塗装装置1を利用して行う。塗装装置1は、走行台車2、アーム3、ノズル4、駆動手段5、飛散防止カバー6および吸引手段7を備えていて、壁高欄Wに沿って移動しながら壁高欄Wの表面(被塗装面)に塗装を行う。
【0016】
走行台車2は、図2(a)および(b)に示すように、台車本体21と、複数の車輪22,22,…と、アーム3を支持する架台23とを有している。
本実施形態の台車本体21は、板状部材を主体に平面視矩形状に形成されている。なお、台車本体21を構成する材料や、台車本体21の形状は限定されるものではない。例えば、台車本体21は、平面視矩形枠状に組み合わされた鋼材により形成されていてもよいし、格子状に組み合わされた鋼材により形成されていてもよい。
【0017】
走行台車2は、一定の速度に保って壁高欄Wの道路側を走行する。本実施形態の台車本体21は自走式とする。本実施形態の台車本体21の下面前後左右には、車輪22,22,…が設けられている。すなわち、走行台車2は、車輪22,22,…により移動可能である。なお、車輪22の数および配置は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、台車本体21は、手押し式あるいは牽引式であってもよい。また、走行台車2の速度は限定されるものではなく、壁高欄Wの形状や、必要な塗装厚等に応じて適宜決定すればよい。また、走行台車2は、車輪式(タイヤ式)に限定されるものではなく、例えば、クローラ式であってもよい。さらに、走行台車2は、壁高欄Wに沿って敷設されたレール上を走行してもよい。
【0018】
台車本体21には、架台23が上載されている。本実施形態の架台23は、4本(図2(a)では2本のみ表示されている)の脚部24,24と、脚部24,24に支持された天枠25と、天枠25上に形成された軸受26とを備えている。軸受26は、アーム用回転軸31(アーム3)を回転可能に保持している。なお、架台23の構成は、アーム3を支持可能であれば限定されるものではない。また、架台23の台車本体21の取付構造は限定されるものではない。架台23(軸受26)の高さは、被塗装物である壁高欄Wの形状に応じて決定する。すなわち、図3に示すように、壁高欄Wの形状に応じて、アーム用回転軸31(ノズル4)と被塗装面(壁高欄Wの表面)との距離(例えば、図3において符号L~L)が均一なるように(すなわち、距離L~Lに大きな差が生じないように)、アーム3の長さ(回動範囲)およびアーム用回転軸31の位置(架台23の高さ)を設定する。
【0019】
アーム3は、図2(a)および(b)に示すように、架台23を介して走行台車2に搭載されている。本実施形態のアーム3は、走行台車2の進行方向に対して直交する方向に延設された鋼材により構成されている。アーム3は、走行台車2の進行方向に沿ったアーム用回転軸31を中心に往復回動可能に架台23に軸支されている。すなわち、アーム3は、走行台車2の進行方法と直交する上下方向に往復回動する。なお、アーム3は、必ずしも走行台車2の進行方向と直交する必要はなく、走行台車2の進行方向に対して斜め前方または斜め後方に傾斜していてもよい。
アーム3の先端の可動範囲は、アーム用回転軸31の高さおよびアーム用回転軸31からアーム3の先端までの長さを調整することにより、壁高欄Wの高さに応じた大きさに設定されている(図3参照)。なお、アーム3を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、鋼材であってもよいし、往復回動時に撓る材質(例えば、硬質ゴム等)であってもよい。アーム3が回動時に撓ることで、塗装剤の吹き付けがより滑らかになる。
【0020】
ノズル4は、壁高欄Wに向けてミスト状の塗装剤を吹き付けるものであり、アーム3の先端に設けられている。アーム3の先端部には、アーム用回転軸31と平行な(走行台車2の進行方向に沿った)ノズル用回転軸41が設けられている。ノズル4は、ノズル用回転軸41を中心に往復回動可能にアーム3に設けられている。すなわち、ノズル4は、アーム3の先端においてアーム3とは別に往復回動する。なお、ノズル4は、使用する塗装剤に応じて交換可能であってもよい。また、ノズル4は、ノズル用回転軸41を中心に往復回動可能な台座(図示せず)と、台座に交換可能に保持される吹き付けガン(図示せず)とを有していてもよい。
【0021】
アーム3およびノズル4は、駆動手段5から伝達される動力によって往復回動する。本実施形態の駆動手段5は、第一プーリー51、第二プーリー52、無端ベルト53、動力源54を備えている。
第一プーリー51は、動力源54の出力軸に接続されていて、当該出力軸の回転に伴って、出力軸を中心に回転する。すなわち、動力源54は、第一プーリー51に回転力を付与する。本実施形態の動力源54は、走行台車2に上載されている。なお、動力源54の配置は限定されるものではない。本実施形態の第一プーリー51はアーム3よりも低い位置に設けられている。なお、第一プーリー51の配置は限定されるものではなく、例えば、アーム3の上方に設けられていてもよい。
【0022】
第一プーリー51は、第一動力伝達部材55を介してアーム3に連結されている。
本実施形態の第一動力伝達部材55は、棒状部材からなる。第一動力伝達部材55の一端はアーム用回転軸31よりもアーム3の先端側において、アーム3に軸支されていて、第一動力伝達部材55の他端は第一プーリー51の表面に軸支されている。アーム3における第一動力伝達部材55の取付位置は、アーム用回転軸31から離れた位置であれば限定されるものではない。また、第一プーリー51における第一動力伝達部材55の取付位置は、第一プーリー51の中心(出力軸)から離れた位置であれば限定されるものではない。
【0023】
動力源54を起動することにより、第一プーリー51が回転すると、第一動力伝達部材55の他端が第一プーリー51の回転に伴って回転する。第一動力伝達部材55の他端の回転に伴い、第一動力伝達部材55の一端が上下動する。第一動力伝達部材55の一端が上下動すると、アーム3に押し上げ力または引き下げ力が作用するため、アーム3が第一プーリー51の回転に伴ってアーム用回転軸31を中心に往復回動する。
【0024】
第二プーリー52は、第一プーリー51から離間した位置に配設されている。第一プーリー51および第二プーリー52には、無端ベルト53が巻き付けられている。そのため、第二プーリー52は、第一プーリー51の回転に伴って回転する。第二プーリー52は、第一プーリー51よりも小さい半径を有している。そのため、第二プーリー52は、第一プーリー51よりも回転数が大きい。本実施形態の第二プーリー52は、アーム用回転軸31と同軸を中心に回転可能に設けられている。なお、第二プーリー52の半径は限定されるものではない。
【0025】
第二プーリー52は、第二動力伝達部材56を介してノズル4に連結されている。本実施形態の第二動力伝達部材56は、棒状部材からなる。第二動力伝達部材56の一端はノズル4に軸支されていて、第二動力伝達部材56の他端は第二プーリー52の表面に軸支されている。ノズル4における第二動力伝達部材56の取付位置は、ノズル用回転軸41から離れた位置であれば限定されるものではない。また、第二プーリー52における第二動力伝達部材56の取付位置は、第二プーリー52の中心(アーム用回転軸31)から離れた位置であれば限定されるものではない。
【0026】
動力源54を起動させて、第一プーリー51が回転すると、無端ベルト53を介して第二プーリー52に回転力が付与されて、第二プーリー52も回転する。第二プーリー52が回転すると、第二動力伝達部材56の他端が第二プーリー52の回転に伴ってアーム用回転軸31のまわりを回転する。第二動力伝達部材56の他端の回転に伴い、第二動力伝達部材56の一端がアーム3の長手方向に沿って前後に移動する。第二動力伝達部材56の一端が前後に移動すると、ノズル4に押し上げ力または引き下げ力が作用する。すなわち、ノズル4は、第二プーリー52の回転に伴ってノズル用回転軸41を中心に往復回動(上下運動)する。第一プーリー51よりも小さい半径の第二プーリー52は、第一プーリー51が1回転する間に1~10回転する。そのため、ノズル4は、アーム3が1回往復する間に、1~10回往復する。
【0027】
飛散防止カバー6は、図1(a)および(b)に示すように、走行台車2と、被塗装面(壁高欄W)との間に設けられている。飛散防止カバー6は、走行台車2の台車本体21から壁高欄W側に向けて延設されたスペーサー8を介して走行台車2に固定されている。スペーサー8は、壁高欄Wと走行台車2との距離を一定に保つための部材である。本実施形態では、図2(a)および(b)に示すように、スペーサー8の先端に壁高欄Wの表面を走行する車輪81が設けられている。なお、スペーサー8の構成は限定されるものではない。また、スペーサー8は必要に応じて設ければよい。また、飛散防止カバー6の設置方法(走行台車2への固定方法)は限定されるものではない。
【0028】
飛散防止カバー6は、図1(a)~(c)に示すように、アーム3の先端部およびノズル4の側方および上方を囲っている。飛散防止カバー6は、アーム3およびノズル4と接触することが無いように、アーム3およびノズル4の回動範囲よりも大きな内部空間を有している。本実施形態の飛散防止カバー6は、鋼板を門形に加工することにより形成されていて、飛散防止カバー6の前後(壁高欄W側および壁高欄Wと反対側)は開口している。なお、飛散防止カバー6を構成する材料や飛散防止カバー6の形状は限定されるものではない。
【0029】
飛散防止カバー6には、吸引手段7の吸引ホース71が接続されている。吸引手段7は、吸引ホース71と、吸引ブロア72と、吸着フィルター73とを備えている。吸引ホース71は、一端が飛散防止カバー6に接続されていて、他端が吸着フィルター73に接続されている。吸引ホース71は、飛散防止カバー6を貫通して、飛散防止カバー6の内側空間に連通されている。本実施形態では、飛散防止カバー6の側面に吸引ホース71が2本ずつ接続されているが、吸引ホース71の本数および配置は限定されるものではない。吸引ブロア72は、吸着フィルター73に接続されている。本実施形態の吸引ブロア72および吸着フィルター73は、走行台車2を追走する台車の搭載されている。なお、吸引ブロア72および吸着フィルター73は、走行台車2に上載してもよい。
【0030】
吸引手段7は、飛散防止カバー6内の空気は浮遊物(塗装剤のミスト等)を吸引する。すなわち、吸引ブロア72を起動させると、吸引ホース71を介して、飛散防止カバー6内の空気とともに浮遊物が吸引される。空気や浮遊物は、吸引ホース71を介して吸着フィルター73に輸送されたのち、浮遊物が吸着フィルター73に吸着される。
【0031】
塗装装置1を利用した壁高欄Wへの塗装方法は、塗装装置1を壁高欄Wに沿って移動させながら、ノズル4から塗装剤を壁高欄Wに向けて吹き付けることにより行う。このとき、アーム3は、所定の速度により往復回動しているとともに、ノズル4はアーム3の先端において、アーム3よりも多く往復回動している。また、走行台車2は、アーム3の往復回動速度およびノズル4の往復回動速度に応じて、必要な塗装厚が確保できる速度により移動させる。すなわち、本実施形態では、走行台車2の移動速度、アーム3の回動数およびノズル4の回動数を調整することで、壁高欄Wへの塗装厚を設定する。
【0032】
本実施形態の塗装装置1によれば、アーム3の回動運動によって広範囲に移動するノズル4が、往復回動するアーム3の先端において、アーム3の回動運動よりも小刻みに往復回動するため、壁高欄Wの表面に塗装剤を均一に吹き付けることができる。すなわち、アーム3の往復回動により、壁高欄Wの表面(被塗装面)に対して全体的に吹き付けることを可能とし、ノズル4の往復回動によって壁高欄Wの表面(被塗装面)における塗装量(塗装厚)の微調整を行うことで、塗装厚にムラが生じることを抑制することができる。これにより、人力により塗装を行う際の腕の役割をアーム3が果たすとともに、手首の動きと近い動きでノズル4が動作するようになるので、人力による塗装を行う場合と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、走行台車2の移動速度、アーム3の回動数およびノズル4の回動数を調整することにより所定の塗装厚を確保しているため、塗装厚の管理が容易となる。そのため、簡易に高品質施工を実施することが可能であるとともに、材料の無駄をなくすことができる。
塗装装置1を利用しているため、広範囲にわたる塗装作業を簡易かつ短時間に行うことができる。そのため、工期短縮化および人件費の削減を図ることができる。
【0034】
また、1つ動力(動力源54)によってアーム3とノズル4とがそれぞれ往復回動するため、複数の動力源54を用いる場合に比べて経済的であるとともに、塗装装置1のメンテナンスおよび操作が容易である。
また、塗装装置1は、飛散防止カバー6によって、塗装剤が周囲に飛散することを防止されているため、作業後の清掃作業に要する手間を低減することができる。吹き付け時に飛散する塗装剤(ミスト)は、飛散防止カバー6内において吸引手段7によって自動的に吸引回収される。
【0035】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、壁高欄Wに対して塗装する場合について説明したが、被塗装物は壁高欄Wに限定されるものではなく、例えば、トンネル内壁面、橋脚、建築構造物の外壁、側壁等であってもよい。
【0036】
また、前記実施形態では、アーム用回転軸31が走行台車2の進行方向に沿っている場合について説明したが、アーム用回転軸31は、走行台車2の進行方向に対して交差していてもよい。同様に、前記実施形態では、アーム用回転軸31とノズル用回転軸41が平行な場合について説明したが、ノズル用回転軸41は、必ずしもアーム用回転軸31と平行である必要はない。
【0037】
駆動手段5の構成は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。例えば、二つの動力源54を配置して、アーム3およびノズル4がそれぞれ異なる動力源54から伝達された動力により往復回動してもよい。
飛散防止カバー6は、必要に応じて使用すればよく、必ずしも設置する必要はない。
使用する塗装剤は限定されるものではなく、塗装の目的等に応じて適宜決定すればよい。
【符号の説明】
【0038】
1 塗装装置
2 走行台車
3 アーム
31 アーム用回転軸
4 ノズル
41 ノズル用回転軸
5 駆動手段
51 第一プーリー
52 第二プーリー
53 無端ベルト
54 動力源
6 飛散防止カバー
7 吸引手段
71 吸引ホース
W 壁高欄(被塗装物)
図1
図2
図3