(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】医薬品在庫管理システム及び、医薬品在庫管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220119BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
B65G1/137 A
(21)【出願番号】P 2018018713
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2021-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132194
【氏名又は名称】株式会社スズケン
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】安藤 井達
【審査官】岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204200(JP,A)
【文献】特開2002-091540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0132393(US,A1)
【文献】特開2001-202441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準納入元と基準外納入元の複数の納入元により納入先へ医薬品を納入する場合に、該納入先における前記医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムであって、
前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段と、
前記環境維持保管手段における前記環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段と、
前記保管環境検知手段及び前記保管状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発する納入指令手段と、
前記納入指令手段からの納入指令を、前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準納入指令と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準外納入指令と、に振り分ける納入指令振分手段と、
前記納入指令手段による納入指令に係る全ての前記医薬品を前記医薬品の納入先に納入処理する納入処理手段と、
前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記基準納入元の納入処理手段により納入処理された旨の情報を送信する納入情報送信手段と、
を備えることを特徴とする、医薬品在庫管理システム。
【請求項2】
前記保管状態検知手段は、前記医薬品に貼付けられる識別素子を含み、
前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品の各々に取り付けられた前記識別素子のIDと、前記医薬品に関する情報を関連づけて記憶させる識別情報記憶手段をさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載の医薬品在庫管理システム。
【請求項3】
前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入先に確認され納入完了した旨の情報を送信する納入完了情報送信手段を更に備えることを特徴とする、
請求項1または2に記載の医薬品在庫管理システム。
【請求項4】
前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ運搬することが可能な環境維持運搬手段と
前記環境維持運搬手段における前記環境条件に関する情報を取得する運搬環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持運搬手段によって運搬されていることを検知する運搬状態検知手段と、
をさらに備え、
前記納入指令手段は、前記保管環境検知手段、前記運搬環境検知手段、前記保管状態検知手段及び、前記運搬状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬品在庫管理システム。
【請求項5】
医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段と、
前記環境維持保管手段における前記環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段と、を用い、
基準納入元と基準外納入元の複数の納入元により納入先へ医薬品を納入する場合に、該納入先における前記医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理方法であって、
前記保管環境検知手段及び前記保管状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発する納入指令ステップと、
前記納入指令ステップからの納入指令を、前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準納入指令と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準外納入指令と、に振り分ける納入指令振分ステップと、
前記納入指令ステップによる納入指令に係る全ての前記医薬品を前記医薬品の納入先に納入処理する納入処理ステップと、
前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入処理ステップにおいて納入処理された旨の情報を送信する納入情報送信ステップと、
を備えることを特徴とする、医薬品在庫管理方法。
【請求項6】
前記保管状態検知手段は、前記医薬品に貼付けられる識別素子を含み、
前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品の各々に前記識別素子を取り付ける識別素子取り付けステップと、
前記識別素子取り付けステップにおいて各々の前記医薬品に取り付けられた前記識別素子のIDと、該医薬品に関する情報を関連づけて記憶させる識別情報記憶ステップをさらに有することを特徴とする、
請求項5に記載の医薬品在庫管理方法。
【請求項7】
前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入先に確認され納入完了した旨の情報を送信する納入完了情報送信ステップと、
前記納入情報送信ステップにより送信された情報と、前記納入完了情報送信ステップにより送信された情報を照合する納入情報照合ステップと、をさらに有することを特徴とする、
請求項5または6に記載の医薬品在庫管理方法。
【請求項8】
前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ運搬することが可能な環境維持運搬手段と
前記環境維持運搬手段における前記環境条件に関する情報を取得する運搬環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持運搬手段によって運搬されていることを検知する運搬状態検知手段と、
をさらに有し、
前記納入指令ステップにおいては、前記保管環境検知手段、前記運搬環境検知手段、前
記保管状態検知手段及び、前記運搬状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発することを特徴とする、
請求項5から7のいずれか一項に記載の医薬品在庫管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品在庫管理システム及び、医薬品在庫管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗がん剤、血友病治療剤、バイオ製剤、血漿分画製剤、ワクチン製剤、コンパニオン診断薬、希少疾病用製剤、再生医療等製品といった、スペシャリティ領域の医薬品と呼ばれる医薬品の取扱量が増加している。これらのスペシャリティ領域の医薬品は、例えば2~8℃、15~25℃、0℃以下といった厳格な温度管理を含む周囲環境管理や、高度なトレーサビリティが求められる場合が多い。しかしながら、医薬品の流通業者やメーカーにおいては、医療機関、保険薬局、患者の居宅や居住する施設及び移動中における上記のような医薬品の周囲環境をリアルタイムに把握・記録し、その結果を物流・受発注・返品、請求システムと連動させるシステムや方法が確立されていない現状があった。
【0003】
これに関する技術としては、医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段と、環境維持保管手段における環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、医薬品が環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段と、保管環境検知手段及び前記保管状態検知手段による検知情報から、医薬品の返品の可否を判断する返品判定手段と、を備え、返品判定手段は、医薬品がメーカーから出荷された後における、医薬品が前記環境条件から外れた環境に晒された時間および/または、環境条件から外れた程度に基づいて、医薬品の返品の可否を判断する医薬品返品管理システムが公知である(特許文献1を参照。)。
【0004】
上記のようなシステムにより、流通業者、医療機関、保険薬局、患者の居宅や居住する施設及び移動中における医薬品の周囲環境を把握・記録し、その結果を物流・受発注・返品、請求システムと連動させることが可能である。その結果、より明確な根拠に基づいて、医療機関等からの医薬品の返品要求を受入れ、当該医薬品を再販売することが可能となる。
【0005】
ここで、医療機関は様々な流通業者から医薬品を仕入れているが、医薬品のトレーサビリティやセキュリティ、温度の管理を含む品質管理をより厳格に行うためには、一部の流通業者が上述のシステムを有するだけでは効果が限定的であり、上述のシステムにより管理される医薬品とそうでない医薬品を二重管理する必要が生じる不都合がある。一方、医療機関が扱う全ての医薬品を、上述のシステムで管理するためには、全ての流通業者やメーカーが上述のシステムを活用して共通の管理を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、可及的に多くの流通業者が共通の医薬品在庫管理システムを用いることで、医療機関においてより確実な医薬品の品質保証を可能とするとともに、業界全体の流通コストの低減を可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、基準納入元と基準外納入元の複数の納入元により納入先へ医薬品を納入する場合に、該納入先における前記医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムであって、
前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段と、
前記環境維持保管手段における前記環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段と、
前記保管環境検知手段及び前記保管状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発する納入指令手段と、
前記納入指令手段からの納入指令を、前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準納入指令と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準外納入指令と、に振り分ける納入指令振分手段と、
前記納入指令手段による納入指令に係る全ての前記医薬品を前記医薬品の納入先に納入処理する納入処理手段と、
前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入処理手段により納入された旨の情報を送信する納入情報送信手段と、
を備えることを特徴とする、医薬品在庫管理システムである。
【0009】
本発明は、基準納入元と基準外納入元の複数の納入元により納入先へ医薬品を納入する場合を想定した、医薬品在庫管理システムである。そして、医薬品の納入先は、基準納品元から納入されるべき医薬品と、基準外納品元から納入されるべき医薬品の両方に対する納入指令を基準納入元に対して発する。これに対して、基準納品元は、基準納入元が扱う医薬品の他、基準外納入元が扱う医薬品も含めて管理・運搬し、納入先に納入する。そして、基準外納入元には、基準納品元から、基準外納入元により納入されるべき医薬品が基準納品元により納入先に納入処理された旨の情報が送信される。
【0010】
これによれば、複数の納入元から各々、納入先に医薬品が納入されるという、医薬品の流通業界全体の流通コストを低減することができる。また、各納品元により独自の品質管理がなされることで品質や、消費期限を含めた使用可否判断の異なる医薬品が納入先に納入されることにより、納入先の品質管理に係る負担を軽減することができる。ここで、納入元は、基準納入元と一の基準外納入元の二者であってもよいし、基準納入元と複数の基準外納入元を含む三者以上であってもよい。
【0011】
また、本発明においては、医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段を備える。また、環境維持保管手段における環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、医薬品が環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段とを備える。そして、本発明における納入指令手段が、保管環境検知手段及び保管状態検知手段による検知情報によって、前記医薬品がメーカーから出荷された後における、該医薬品が前記環境条件から外れた環境に晒された時間および/または、前記環境条件から外れた程度に基づき、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発する。
【0012】
ここで前述のように、スペシャリティ領域の医薬品においては、厳格な周囲環境管理が求められている。そして、その医薬品について求められる環境条件から外れた環境に晒された医薬品については、品質保証が困難となる場合があった。
【0013】
これに対し、本発明では、医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段に保管することが前提となっている。そして、環境維持保管手段における環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、医薬品が環境維持保管手段によっ
て保管されていることを検知する保管状態検知手段からの情報によって、医薬品が求められる環境条件から外れた環境に晒された時間と、求められる環境条件から外れた程度についての情報を取得し、これらの情報に基づいて、基準納入元に対する医薬品の納入指令が発せられる。これによれば、医薬品の品質の劣化を、明確なデータに基づいて客観的に評価することが可能となり、品質保持の観点からの正確な根拠に基づいて医薬品の使用可否を判断することが可能となる。そして、より正確な納入指令を発することが可能となる。
【0014】
そして、本発明によれば、上記のような高精度の品質管理と納入指令を基準納入元のみならず基準外納入元から納入されるべき医薬品にも適用することが可能となり、医薬品の流通業界全体の流通コスト及び流通品質を向上させることが可能となる。なお、本発明において、環境条件としては、例えば、周囲の温度、湿度、照度、気圧、衝撃、振動などが挙げられる。
【0015】
また、本発明においては、前記保管状態検知手段は、前記医薬品に貼付けられる識別素子を含み、
前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品の各々に取り付けられた前記識別素子のIDと、前記医薬品に関する情報を関連づけて記憶させる識別情報記憶手段をさらに備えることとしてもよい。これによれば、基準外納入元において、前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品の両方について、より確実に、より確実に保管環境の管理を行うことができ、品質を担保することが可能である。また、納入指令手段による納入指令の精度をより高めることが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入先に確認され納入完了した旨の情報を送信する納入完了情報送信手段を更に備えるようにしてもよい。
【0017】
これによれば、基準外納品元には、基準外納入元に基準外納入指令に係る医薬品が納入処理手段により納入処理された旨の情報と、基準外納入指令に係る医薬品が納入先に確認され納入完了した旨の情報の両方が送信される。従って、基準外納品元において、両方の情報を照合し、納入処理された医薬品が実際に納入先に納入され確認されたことを確認することができる。これにより、基準外納品元における運用の精度を高め、システムの信頼性を高めることが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ運搬することが可能な環境維持運搬手段と
前記環境維持運搬手段における前記環境条件に関する情報を取得する運搬環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持運搬手段によって運搬されていることを検知する運搬状態検知手段と、
をさらに備え、
前記納入指令手段は、前記保管環境検知手段、前記運搬環境検知手段、前記保管状態検知手段及び、前記運搬状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発するようにしてもよい。
【0019】
ここで、上記のような医薬品の流通においては、流通業者や医療機関等において医薬品が、求められる環境条件において保管されるだけでなく、メーカーから流通業者、流通業者から医療機関等への移動中においても、医薬品が、求められる環境条件が維持された状態で運搬される必要がある。さらに、医薬品がメーカーから出荷された後における、該医
薬品が求められる環境条件から外れた環境に晒された時間および/または、求められる環境条件から外れた程度を正確に検知するには、流通業者や医療機関等における医薬品の保管状態のみならず、メーカーから流通業者、流通業者から医療機関等への運搬途中における状態についても確認する必要がある。
【0020】
よって、本発明においては、医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ運搬することが可能な環境維持運搬手段と、環境維持運搬手段における前記環境条件に関する情報を取得する運搬環境検知手段と、医薬品が前記環境維持運搬手段によって運搬されていることを検知する運搬状態検知手段と、をさらに備え、前記返品判定手段は、前記保管環境検知手段、前記運搬環境検知手段、前記保管状態検知手段及び、前記運搬状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発することとした。
【0021】
これによれば、医薬品がメーカーから出荷された後における、該医薬品が求められる環境条件から外れた環境に晒された時間および/または、求められる環境条件から外れた程度をより正確に検知することが可能となり、より正確に、前記医薬品の品質の判定及び、納入指令の発行を行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明は、前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段と、
前記環境維持保管手段における前記環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段と、を有し、
基準納入元と基準外納入元の複数の納入元により納入先へ医薬品を納入する場合に、該納入先における前記医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理方法であって、
前記保管環境検知手段及び前記保管状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発する納入指令ステップと、
前記納入指令ステップからの納入指令を、前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準納入指令と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品に対する基準外納入指令と、に振り分ける納入指令振分ステップと、
前記納入指令ステップによる納入指令に係る全ての前記医薬品を前記医薬品の納入先に納入処理する納入処理ステップと、
前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入処理ステップにおいて納入処理された旨の情報を送信する納入情報送信ステップと、
を備えることを特徴とする、医薬品在庫管理方法であってもよい。
【0023】
また、本発明は、前記保管状態検知手段は、前記医薬品に貼付けられる識別素子を含み、
前記基準納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品と、前記基準外納入元から前記医薬品の納入先へ納入すべき医薬品の各々に前記識別素子を取り付ける識別素子取り付けステップと、
前記識別素子取り付けステップにおいて各々の前記医薬品に取り付けられた前記識別素子のIDと、該医薬品に関する情報を関連づけて記憶させる識別情報記憶ステップをさらに有することを特徴とする、上記の医薬品在庫管理システムであってもよい。
【0024】
また、本発明は、前記基準外納入元に前記基準外納入指令に係る前記医薬品が前記納入先に確認され納入完了した旨の情報を送信する納入完了情報送信ステップと、
前記納入情報送信ステップにより送信された情報と、前記納入完了情報送信ステップにより送信された情報を照合する納入情報照合ステップと、をさらに有することを特徴とす
る、上記の医薬品在庫管理方法であってもよい。
【0025】
また、本発明は、前記医薬品を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ運搬することが可能な環境維持運搬手段と
前記環境維持運搬手段における前記環境条件に関する情報を取得する運搬環境検知手段と、
前記医薬品が前記環境維持運搬手段によって運搬されていることを検知する運搬状態検知手段と、
をさらに有し、
前記納入指令工程においては、前記保管環境検知手段、前記運搬環境検知手段、前記保管状態検知手段及び、前記運搬状態検知手段による検知情報に基づいて、前記基準納入元に対して前記医薬品の納入指令を発することを特徴とする、上記の医薬品在庫管理方法であってもよい。
【0026】
なお、本発明においては、できる限り上記の各手段を組合せて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、可及的に多くの流通業者が、共通の信頼性の高い医薬品在庫管理システムを用いることで、医療機関においてより確実な品質保証が可能になるとともに、業界全体の流通コストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のベースとなる医薬品在庫管理システムについて示した図である。
【
図2】本発明の実施例に係る基幹サーバのハードウェア構成の概略を示す図である。
【
図3】複数の流通業者が関わる場合の従来の医薬品の流通及び請求の態様について示した図である。
【
図4】本発明の実施例に係る医薬品在庫管理システムについて示した図である。
【
図5】本発明の実施例に係る医薬品の流通及び請求の管理フローを示す図である。
【
図6】本発明の実施例において基準流通業者から基準外流通業者に送付される請求の請求項目の例である。
【
図7】本発明の実施例に係る医薬品在庫管理システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明のベースとなる医薬品在庫管理システムについて示した図である。
図1においてブロック1は医薬品メーカー、ブロック2は流通業者、ブロック3は病院、診療所または保険薬局といった医療機関等を示す。また、ブロック4は医療機関等3において治療や投薬を受ける患者(及びその居宅)を示す。なお、
図1における流通業者とは、卸業者や運搬業者等、医薬品メーカー1と医療機関等3の間に介入する業者の全てが含まれ得る。なお、医薬品メーカー1や保険薬局が自ら流通業者2としての役割を担うことがあってもよい。
【0030】
医薬品メーカー1が生産したスペシャリティ領域の医薬品5については、厳しい温度管理が求められるため、移動中の温度管理が可能な保冷コンテナ6に収納された状態で流通業者2に仕入れられていた。また、流通業者2によって販売されるまでの期間は、医薬品5は冷蔵保管庫7にて温度管理がなされた状態で、流通業者2において保管される。そして、販売先の医療機関等3が決まれば、医薬品5は冷蔵保管庫7から出庫され、再び保冷コンテナ16に収納された状態で医療機関等3まで運搬される。
【0031】
そして、医療機関等3においては、医薬品5は保冷コンテナ16から取り出されて冷蔵保管庫17に入庫・保管される。さらに、患者に投薬される際には冷蔵保管庫17から出庫されて投薬される。また、医薬品5が患者に渡され、患者の居宅等4において患者自らによって投薬される場合には、医薬品5は医療機関等3の冷蔵保管庫17から出庫され、保冷コンテナ36に収納された状態で患者の居宅等4まで運搬される。そして、患者の居宅等4においては、医薬品5は保冷コンテナ36から取り出されて冷蔵保管庫37に入庫・保管される。その後、必要に応じて患者自身によって医薬品5が冷蔵保管庫37から出庫され投薬される。
【0032】
図1において医薬品5の実際の流通経路は実線矢印で、情報の経路は破線矢印で示されている。本実施例においては、医薬品5(医薬品自体若しくは医薬品の梱包)にその医薬品5のIDが記録された識別素子5aを取り付ける。また、識別素子5aによる医薬品5の識別情報を検知可能な読取センサ6a及び内部の温度履歴情報の取得が可能な温度センサ6bを、環境維持運搬手段としての保冷コンテナ6に取り付ける。そして、読取センサ6a及び温度センサ6bの出力信号は、無線通信により情報管理装置8に送信され、必要に応じ記録される。これにより、所定のIDを有する医薬品5が、保冷コンテナ6内に収納されているか否かの情報と、保冷コンテナ6内の温度履歴情報がリアルタイムに記録可能となっている。
【0033】
その結果、医薬品メーカー1から流通業者2への医薬品5の移動中に医薬品5が保冷コンテナ6内に確実に収納されていることが検知可能となり、また、保冷コンテナ6内の温度履歴が検知可能となっている。同様に、読取センサ16a、36a及び温度センサ16b、36bにより、流通業者2と医療機関等3との間または、医療機関等3と患者の居宅等4との間の医薬品5の移動中に、医薬品5が保冷コンテナ16、36内に確実に収納されていることが検知可能となり、また、保冷コンテナ16、36内の温度履歴が検知可能となっている。
【0034】
また、
図1に示す医薬品在庫管理システムでは、流通業者2、医療機関等3及び患者の居宅等4に備えられている冷蔵保管庫7、17、37にも識別素子5aによる医薬品5の識別情報を検知可能な読取センサ7a、17a,37a及び温度履歴情報の取得が可能な温度センサ7b、17b、37bが取り付けられる。そして、読取センサ7a、17a,37a及び温度センサ7b、17b、37bの出力信号は、無線通信により情報管理装置8にリアルタイムに送信・記録される。これにより、所定のIDを有する医薬品5が、冷蔵保管庫7、17、27内に保管されているか否かの情報と、冷蔵保管庫7、17、37内の温度履歴情報がリアルタイムに記録可能となっている。
【0035】
なお、上記において識別素子5aと読取センサ7a、17a、37aとは、保管状態検知手段を構成する。識別素子5aと読取センサ6a、16a,36aとは、運搬状態検知手段を構成する。また、温度センサ6b、16b、36bは、運搬環境検知手段に相当する。また、温度センサ7b、17b、37bは、保管環境検知手段に相当する。本実施例における冷蔵保管庫7、17、37は、箱型タイプに限定されず、例えば保冷室などの部屋単位もしくはフロア単位とするようにしてもよい。
【0036】
ここで、識別素子5aは、例えばICタグやRFIDタグ(アクティブ方式及びパッシブ方式の双方を含む)であってもよく、この場合には読取センサ6a、16a、36a、7a、17a,37aはRFIDリーダーであってもよい。また、識別素子5a及び、読取センサ6a、16a、36a、7a、17a、37aは、互いにブルートゥース(登録商標)等の近距離ワイヤレス通信が可能な機器で構成してもよい。また、識別素子5aは、医薬品5のIDが識別可能な磁界や光を発信するデバイスであってもよく、この場合には読取センサ6a、16a、36a、7a、17a、37aは磁気センサや光センサであ
ってもよい。さらに、識別素子5aはアクティブに電磁界や光等の信号を発信するものでなくても良く、例えば、バーコードやQRコード(登録商標)が印刷されたラベル等でもよい。この場合には読取センサ6a、16a、36a、7a、17a,37aはバーコードリーダーやQRコード(登録商標)リーダーであってもよい。
【0037】
また、前述のように、読取センサ6a、16a、36a、7a、17a、37a及び温度センサ6b、16b、36b、7b、17b、37bには通信機能を付け、情報管理装置8に医薬品5のID及び所在に関する情報と温度履歴情報とをリアルタイムに送信し、情報管理装置8において各情報を受信、記録してもよいが、読取センサ6a、16a、36a、7a、17a、37a及び温度センサ6b、16b、36b、7b、17b、37b自体、保冷コンテナ6、16、36または冷蔵保管庫7、17、37に記憶機能を備えて各情報を独立に記録、蓄積するようにしてもよい。
【0038】
本実施例においては上記の構成により、医薬品5が医薬品メーカー1により製造、保管、出荷(流通業者2より仕入)された後の、医薬品メーカー1から流通業者2までの流通過程、流通業者2における保管過程、流通業者2から医療機関等3までの流通過程、医療機関等3における保管過程、医療機関等3から患者の居宅等4までの流通過程、患者の居宅等4における保管過程において、医薬品5が確実に、保冷コンテナ6、16、36か冷蔵保管庫7、17、37に保管され、適切な温度管理がなされていたか否かが確認可能となる。
【0039】
なお、上記において、患者が患者の居宅等4において自ら投薬する場合の例としては、がんや自己免疫疾患、血友病、関節リウマチ、骨粗しょう症、成長ホルモン分泌不全性低身長症やその他希少疾病や特定疾患等における自己注射のように、在宅で患者自身またはその家族が直接医薬品5を自ら投与、管理する場合を想定している。この場合には、医薬品5は、後述のように、より小単位に小分けされたものであってもよく、一枚、一錠または一本(バイアル、アンプル、シリンジ等の場合)等、または小分けされた複数種類の医薬品が複数個セットでパッケージになった形態であってもよい。
【0040】
また、この場合、識別素子5aは、例えば小分けされた医薬品毎あるいは、小分けされたケース毎に取り付けられても良い。また、本実施例における保冷コンテナ36は、保冷コンテナ6、16と比較して、より小型のものであってもよい。また、保冷コンテナ36内に、小型ケース(不図示)を収納し、当該ケース内に小分けされた医薬品毎あるいは、小分けされたケースに医薬品5をさらに収納することとし、読取センサ36aは当該小型ケースに設けることとしてもよい。
【0041】
また、患者の居宅等4における冷蔵保管庫37は、冷蔵保管庫7、17と比較してより小型のものであってもよい。また、冷蔵保管庫37内に、小型ケース(不図示)を収納し、当該ケース内に小分けされた薬剤毎あるいは、小分けされたケース毎に医薬品5をさらに収納することとし、読取センサ37aは当該小型ケースに設けることとしてもよい。さらに、読取センサ37aは、小分けされた医薬品5の袋に設けてもよい。
【0042】
ここで、
図1の情報管理装置8には、流通業者2における医薬品5の流通に関する情報を管理するサーバとして基幹サーバ8aと中間サーバ8bが備えられている。基幹サーバ8aは、流通業者2による医療機関等3からの医薬品5の受注から医療機関等3への医薬品5の納品までの処理に関する情報、流通業者2の在庫に関する情報、包装変更やリコールに関する情報、請求処理に関する情報を管理するサーバである。また、医療機関等3からの返品に際する自動補充、払出し請求等に関する情報も管理する。
【0043】
一方、中間サーバ8bは、流通業者2の基幹サーバ8aから得られる情報である販売情
報(販売価格、顧客情報、取引条件等)の他、後述する保冷コンテナサーバ8c、冷蔵保管庫サーバ8dからの情報を管理するサーバである。中間サーバ8bは、保冷コンテナサーバ8c、冷蔵保管庫サーバ8dからの、医薬品5のID、所在または存否(運搬中の位置情報や冷蔵保管庫7における入庫、払出しによる在庫情報も含む)等に関する情報及び温度履歴情報と、本実施例における医薬品5の返品・再販売の処理に関わる情報の処理が行われ、基幹サーバ8aとの間で販売情報等の授受が行われる。
【0044】
さらに、中間サーバ8bは、医薬品メーカー1に対して、必要に応じて情報提供を行う。例えば、保冷コンテナサーバ8c、冷蔵保管庫サーバ8dからの、医薬品5のID、所在または存否(運搬中の位置情報や冷蔵保管庫7における入庫、払出しによる在庫情報も含む)等に関する情報及び温度履歴情報が中間サーバ8bと医薬品メーカー1との間で共有される。従って、医薬品5の使用の可否判断において医薬品メーカー1による判断、助言、追加情報等の提供を受けることが可能となる。その結果、使用可否の判断の精度を向上し、判断に要する期間を短縮化することができる。
【0045】
また、保冷コンテナサーバ8cは、保冷コンテナ6、16、36からの情報を収集するサーバであって、読取センサ6a、16a、36a及び、温度センサ6b、16b、36bからの出力信号をリアルタイムで受信・記憶する。例えば、本実施例の、流通業者2から医療機関等3までの間の医薬品5の流通経路において、より具体的には、保冷コンテナ16から保冷コンテナサーバ8cに対して、コンテナID、商品識別子ID、時刻情報、位置情報、温度履歴情報が送信される。さらに、衝撃、ネットワーク情報等が送信されるようにしてもよい。これらの情報は、保冷コンテナサーバ8cから流通業者2が保有する中間サーバ8bに送信される。
【0046】
一方、冷蔵保管庫サーバ8dは、冷蔵保管庫7、17、37からの情報を収集するサーバであって、読取センサ7a、17a,37a及び、温度センサ7b、17b、37bからの出力信号をリアルタイムで受信・記憶する。例えば、本実施例においては、医療機関等3の冷蔵保管庫17の読取センサ17aから、冷蔵保管庫サーバ8dに対して、保管庫ID、商品識別子ID、時刻情報、位置情報、温度、ネットワーク情報、入庫、消費情報が送信される。そして、冷蔵保管庫サーバ8dから流通業者2が保有する中間サーバ8bには、同様の情報が送信される。
【0047】
なお、情報管理装置8における各サーバが設置される場所については特に限定されない。例えば、全てのサーバ8a~8dが流通業者2の施設内に設置されてもよいし、
図2に示すように、基幹サーバ8a及び中間サーバ8bは流通業者2の施設内に設置され、保冷コンテナサーバ8cは、保冷コンテナ6、16の管理会社の施設内に設置され、冷蔵保管庫サーバ8dは、冷蔵保管庫7、17の管理会社に設置されるようにしてもよい。また、情報管理装置8における各々のサーバは、医療機関等3が使用しているシステム(電子カルテ、オーダリングシステム、レセプト処理システム、電子薬歴、電子お薬手帳等)と同じ回線、もしくは独自回線で接続されてもよいし、その手段はインターネット回線、電話回線で接続されてもよい。また、全てまたは一部のサーバをクラウド上に設置するようにしてもよい。
【0048】
なお、上記の医薬品在庫管理システムにおいては、医薬品メーカー1と流通業者2、流通業者2と医療機関等3の間の医薬品5の移動時には、保冷コンテナ6、16を用いて医薬品5の温度管理を行うこととしたが、本発明における環境維持運搬手段はこれに限られない。例えば、冷蔵車の冷蔵庫、冷凍車の冷凍庫、保冷専用車両または航空機または船舶の荷台等に直接、医薬品5を収納して運搬しても構わない。しかしながら、この場合には、冷蔵車、冷凍車と、冷蔵保管庫7、17の間の医薬品5の移換え時間、温度を管理し、記録可能としておくことが望ましい。また、医療機関等3が購入し、且つ所有権を持つ医
薬品5の流通業者2または医薬品メーカー1への返品、または保険薬局から保険薬局間への医薬品5の移動等における運搬等は、上記の設備やシステムを備える道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づく貨物自動車運送事業者が実施することが望ましい。なお、識別素子5aの医薬品5への取付け場所については、医薬品メーカー1の製造工場や保管施設であってもよく、その国については特に限定されない。
【0049】
図2は、基幹サーバ8aのハードウェア構成を示す概略構成図である。基幹サーバ8aは、
図3に示すように、Central Processing Unit(CPU)80a、Random Access Memory(RAM)80b、Hard Disk Drive(HDD)80c、例えばNetwork Interface Card(NIC)80d等のネットワークインターフェース機器を備える。HDD80cにOS(Operating System)やアプリケーションソフトウェアのプログラムが格納されており、CPU80aがこれらのプログラムを実行することで、本明細書で説明する機能が提供される。なお、基幹サーバ8aは1台のコンピュータによって構成される必要はなく、複数台のコンピュータがネットワークを介して連携することで基幹サーバ8aが実現されてもよい。中間サーバ8b、保冷コンテナサーバ8c、冷蔵保管庫サーバ8dも基本的には同様のハードウェア構成を有する。
【0050】
次に、
図3及び
図4を用いて、本発明のベースとなる医薬品在庫管理システムにおいて、複数の流通業者2が関わる場合の、医薬品5の流通の状況について説明する。
図2において、流通業者2は、
図1及び
図2に示した医薬品在庫管理システムを運営可能な基準流通業者2aと、それ以外の基準外流通業者2bとからなる。この基準外流通業者2bは、1つの業者であってもよいし、複数の業者であってもよい。本実施例においては、簡単のために基準外流通業者2bは1つの業者として説明を進める。
【0051】
このような場合、従来は、
図3に示すように、医療機関等3からは、医薬品5に不足が生じた場合には、基準流通業者2aと基準外流通業者2bとに発注がなされ、基準流通業者2a及び、基準外流通業者2bから、各々医薬品メーカー1に発注がなされていた。そして、医薬品メーカー1から、基準流通業者2a及び、基準外流通業者2bに各々単独で、医薬品5が納入(仕入)されていた。さらに、基準流通業者2a及び、基準外流通業者2bから、医療機関等3に単独で医薬品5が配送され、納入されていた。
【0052】
しかしながら、この場合には、基準流通業者2aは、医薬品5の保管及び配送に関し、上述の医薬品在庫管理システムによって医薬品5の品質保証をすることができた。より具体的には、医薬品メーカー1により製造、保管、出荷(流通業者2より仕入)された後の、医薬品メーカー1から流通業者2までの流通過程、流通業者2における保管過程、流通業者2から医療機関等3までの流通過程において、医薬品5が確実に、保冷コンテナ6、16か冷蔵保管庫7に保管され、適切な温度管理がなされていたことを保証できた。一方、基準外流通業者2bは、そのような保証をすることが困難であった。従って、医療機関等3は、健全な商習慣や安定供給の面などの理由から、複数の流通業者2a、2bから医薬品5の納入を受けることが望ましい一方で、基準流通業者2aから納入された医薬品5と、基準外流通業者2bから納入された医薬品5の間で信頼性に差が生じるという不都合があった。
【0053】
また、基準外流通業者2bが、医薬品5に対して基準流通業者2aと同等の信頼性を確保しようとした場合には、基準外流通業者2bが独自に、同様の医薬品在庫管理システムに設備投資した上で運営せねばならず、業界全体としての流通効率が低下してしまう実情があった。
【0054】
これに対し、本実施例においては
図4に示すように、基準流通業者2aが、基準外流通業者2bが扱う医薬品5についても、保冷コンテナ6、16、冷蔵保管庫7に保管し、適
切な温度管理がなされていたことを保証することとした。すなわち、医療機関等3は、基準流通業者2aが扱う医薬品5に加えて、基準外流通業者2bが扱う医薬品5についても同様に、基準流通業者2aに発注する。基準流通業者2aは、医薬品メーカー1に、自らの発注に加えて、基準外流通業者2bの扱い分の医薬品5についても発注する。医薬品メーカー1は、保冷コンテナ6を用いて、基準流通業者2a及び基準外流通業者2bの両者からの発注に係る医薬品5を共同納入する。
【0055】
基準流通業者2aは、基準流通業者2a分と基準外流通業者2b分の医薬品5に対して識別素子5aを貼り付ける。そして、基準流通業者2aと基準外流通業者2b分の医薬品5に対して、保冷コンテナ6を用いて、基準流通業者2a及び基準外流通業者2bの両者からの発注に係る医薬品5を基準流通業者2aまで共同仕入れする。そして、冷蔵保管庫7を用いて、基準流通業者2a及び基準外流通業者2bの両者の仕入れに係る医薬品5を共同保管する。さらに、保冷コンテナ16を用いて、基準流通業者2a及び基準外流通業者2bの両者からの発注に係る医薬品5を医療機関等3に共同配送する。
【0056】
そして、基準流通業者2aは、基準外流通業者2bに対し、基準外流通業者2bが扱う所定の医薬品5について医療機関等3から発注を受け、納入した旨の情報を送信し、基準外流通業者2bから基準流通業者2aへは、共同管理、共同配送等に係る費用を支払うことになる。
【0057】
次に、
図5を用いて、本実施例における医薬品在庫管理システム10のフローについて説明する。
図5においては、基準流通業者2aに在庫があり、医薬品メーカー1への発注は行わない場合について説明する。
図5に示すフローにおいて、まず、S101では、医療機関等3において、冷蔵保管庫17内の医薬品5が消費され在庫設定値(発注点)以下となったことが読取センサ17aの出力に基づいて検知される。そうすると、S102に進み、医療機関等3における医療機関等サーバ3a(後述)に自動補充入力がなされ、基準流通業者2aに対して不足の医薬品5の発注がなされる。ここで、医療機関等3における医療機関等サーバ3aは納入指令手段に相当する。また、S102のステップは、納入指令ステップに相当する。S102の処理が終了するとS103に進む。
【0058】
S103では、基準流通業者2aにおいて、発注対象の医薬品5のデータについて、該当流通業者の自動振り分けがなされる。すなわち、医療機関等3から発注された医薬品5のデータのうち、基準流通業者2aが扱う医薬品5と、基準外流通業者2bが扱う医薬品5とが、基幹サーバ8aに格納されている扱い品目データに基づいて自動的に峻別される。S103の処理は納入指令振分ステップに相当し、S103の処理が実行される基幹サーバ8aは納入指令振分手段に相当する。
【0059】
S103において自動振り分けされた医薬品5のうち、基準外流通業者2bが扱う医薬品5に関しては、S108において基準外流通業者2bに、当該医薬品5が、今回補充予定である旨の通知が自動メール等にて送信される。そして、医療機関等3によって発注された医薬品5の全てについてS104において識別素子5aが貼り付けられる。S104の処理は識別素子取付けステップに相当する。次に、S105においては、各々の医薬品5の各種情報、例えば、医薬品名、規格、容量、ロット、使用期限等について識別素子5aのIDと関連付けて登録される。その際の登録結果について出荷検品書が発行される。S105の処理は識別情報記憶ステップに相当する。また、S105の処理が実行される基幹サーバ8aは識別情報記憶手段に相当する。さらに、S106において医薬品5が保冷コンテナ6に箱詰めされる。また、その際に保冷コンテナ6毎に出荷検品書が発行される。S106の処理が終了するとS107に進む。
【0060】
S107においては、保冷コンテナ貼付リストが出力される。これは、保冷コンテナ6
に収納された医薬品5について、S103において自動振り分けされた流通業者単位のリストであり、保冷コンテナ6に貼付けるためのものである。ここで、S104~S107の処理は、納入処理ステップに相当する。また、S104~S107の処理が実行される基幹サーバ8aは、納入処理手段に相当する。S107の処理が終了するとS110に進む。S110では、保冷コンテナ貼付リストが貼付けされた保冷コンテナ6が基準流通業者2aの物流センターを出発する。S110の処理が終了するとS111に進む。
【0061】
S111では、医療機関等3において、納入された医薬品5がチェックされる。そして、納入時に準備された基準外流通業者2b分の医薬品5のお届け書と受取書とに受領印が押される。S111の処理が終了するとS112に進む。S112においては、納入された医薬品5が冷蔵保管庫17に入庫される。そうすると、S113において基準流通業者2aの物流センターに基準外流通業者分受取書が返却される。これで今回の自動補充に係る納品は完了となり、その際、基準外流通業者2b分の受取書の内容が基準流通業者2aから自動メールによって基準外流通業者2bに自動的に送信されることで、納品完了通知がなされる。S113において、基準外流通業者2b分の受取書の内容が基準流通業者2aから自動メールによって基準外流通業者2bに自動的に送信される処理は納入完了情報送信ステップに相当する。また、当該処理が実行される基幹サーバ8aは納入完了情報送信手段に相当する。
【0062】
ここで、S106の処理の後の説明に戻る。S106の処理が終了した際には、S107の処理と並行してS109の処理が実行される。S109では、S106において発行された出荷検品書と、納品書及び受取書が自動メール送信により基準外流通業者2bに送信される。S109の処理は納入情報送信ステップに相当する。また、S109の処理が実行される基幹サーバ8aは納入情報送信手段に相当する。そして、基準外流通業者2bでは、S114において、S109で送信された受取書と納品書の内容に基づいて、基準外流通業者2b内の管理システムによって、基準外流通業者2b分の受取書及び基準外流通業者2b分の納品書が発行される。
【0063】
そして、S115においては、S114において基準外流通業者2bによって発行された基準外流通業者2b分の受取書の内容と、S113の処理において基準流通業者2aの物流センターに返却され基準外流通業者2bに送信された基準外流通業者2b分の受取書の内容とが照合される。S115の処理は納入情報照合ステップに相当する。そして、両者の内容が一致した場合には、S116に進み、基準外流通業者2b分の受取書と基準外流通業者2b分の納品書が基準外流通業者2bによって正式に発行される。そして、この基準外流通業者2b分の受取書と基準外流通業者2b分の納品書が医療機関等3に持参、郵送、電子メール等により届けられ、医療機関等3において受領印が押印される。これによって、今回の医薬品5の自動補充は完了する。
【0064】
以上の処理が終了した後、医療機関等3により、基準流通業者2a及び基準外流通業者2bに対して、納入された医薬品5に相当する支払がなされる。一方、基準外流通業者2bから基準流通業者2aに対して、
図6に示すような内容の費用の支払いがなされる。ここで流通加工に係る費用は、基準外流通業者2bの扱う医薬品5に対して、S104~107の処理を行うことに対する費用に相当する。商品保険に係る費用は、商品の配送に関して加入している保険料のうち、基準外流通業者2bの扱う医薬品5に相当する分を分担するための費用である。共同配送に係る費用は、S110~S111において基準流通業者2aの物流センターから、医療機関等3へ保冷コンテナ16を配送する費用のうち、基準外流通業者2bの扱う医薬品5に相当する分を分担するための費用である。システム管理に係る費用は、情報管理装置8の稼働、維持メンテナンスに必要な費用のうち、基準外流通業者2bの扱う医薬品5に相当する分を分担するための費用である。なお、基幹サーバ8aには、これらの費用を自動的に自動算出し、請求書発行を行う機能を含む。
【0065】
図7には、本実施例にかかる医薬品在庫管理システム10の機能ブロック図を示す。医薬品在庫管理システム10は、上述したように、医薬品5を環境条件を維持しつつ保管する環境維持保管手段と、環境維持保管手段における環境条件に関する情報を取得する保管環境検知手段と、医薬品5が環境維持保管手段によって保管されていることを検知する保管状態検知手段と、医薬品5を該医薬品に応じた環境条件を維持しつつ運搬することが可能な環境維持運搬手段と、環境維持運搬手段における環境条件に関する情報を取得する運搬環境検知手段と、医薬品5が前記環境維持運搬手段によって運搬されていることを検知する運搬状態検知手段とを備える。
【0066】
基幹サーバ8aには、納入指令振分手段、納入処理手段、納入情報送信手段、識別情報記憶手段、納入完了情報送信手段が備えられている。前記保管環境検知手段、保管状態検知手段、運搬環境検知手段及び、運搬状態検知手段等からの検知情報は、保冷コンテナサーバ8c、冷蔵保管庫サーバ8dを介して、基幹サーバ8aに伝達される。また、医療機関等3のサーバである医療機関等サーバ3aには、納入指令手段が備えられている。そして、医療機関等サーバ3aは基幹サーバ8aと通信可能に接続されている。
【0067】
そして、前述したように、環境維持保管手段は、一例として冷蔵保管庫7、17、37によって実現される。保管環境検知手段は、一例として温度センサ7b、17b、37bによって実現される。保管状態検知手段は、一例として読取センサ7a、17a、37aと識別素子5aとによって実現される。環境維持運搬手段は、一例として保冷コンテナ6、16、36によって実現される。運搬環境検知手段は、一例として温度センサ6b、16b、36bによって実現される。運搬状態検知手段は、一例として読取センサ6a、16a、36aと識別素子5aとによって実現される。さらに、納入指令振分手段、納入処理手段、納入情報送信手段、識別情報記憶手段、納入完了情報送信手段は、基幹サーバ8aのCPU80a等を含んで実現される。また、納入指令手段は、医療機関等サーバ3aのCPUを含んで実現される。
【0068】
以上、説明したとおり、本実施例によれば、複数の納入元である流通業者2a、2bから別々に、独自の設備を用いて納入先である医療機関等3に医薬品5が納入されるという、医薬品の流通業界全体の流通コストを低減することができる。また、流通業者2a、2bにより医薬品5の独自の品質管理がなされることで、品質や使用可否判断の異なる医薬品5が医療機関等3に納入されることによる、医療機関等3の管理負担を軽減することができる。
【0069】
また、本明細書の説明においては、スペシャリティ領域の医薬品を前提で説明を行ったが、本発明が適用される対象は、それ以外の医薬品、医療材料、医療機器、検査試薬等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1・・・医薬品メーカー
2・・・流通業者
3・・・医療機関等
4・・・患者
5・・・医薬品
5a・・・識別素子
6、16・・・保冷コンテナ
6a、16a・・・読取センサ
6b、16b・・・温度センサ
7、17・・・冷蔵保管庫
7a、17a・・・読取センサ
7b、17b・・・温度センサ
8・・・情報管理装置
8a・・・基幹サーバ
8b・・・中間サーバ
8c・・・保冷コンテナサーバ
8d・・・冷蔵保管庫サーバ
80a・・・CPU
80b・・・RAM
80c・・・HDD
80d・・・NIC