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特許7010056ブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法
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  • 特許-ブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法 図1
  • 特許-ブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法 図2
  • 特許-ブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
F02M59/44 F
F02M59/44 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018031006
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143592
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 健吾
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-062759(JP,A)
【文献】実開平4-112171(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0097366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動により回転可能なギアを有する燃料供給ポンプを、前記エンジンに組み付けるためのブラケットであって、
前記ギアを予め定められた回転位相位置に固定させるように前記ギアに係止する係止部材を保持し、かつ、前記係止部材により前記回転位相位置が調整されるように前記係止部材を保持する保持部を有する、
ブラケット。
【請求項2】
前記係止部材は、雄ねじ部を有し、
前記保持部は、雌ねじ部を有し、当該雌ねじ部に前記雄ねじ部を螺合させることにより、前記係止部材を保持する、
請求項に記載のブラケット。
【請求項3】
前記雌ねじ部は、前記雄ねじ部がねじ軸回りに回転した場合、前記係止部材を前記ギアに対して螺進及び螺退させるように形成され、
前記保持部は、前記雄ねじ部の螺進及び螺退による前記係止部材の変位に連れて前記ギアを回転させるように前記ギアに係止する前記係止部材を保持する、
請求項に記載のブラケット。
【請求項4】
前記ギアの周面部には、前記回転位相位置を示す第1マークが設けられており、
前記ブラケットにおける前記周面部に対向する位置には、回転位相合わせ用の第2マークが設けられる、
請求項1からのいずれか一項に記載のブラケット。
【請求項5】
エンジンの駆動により回転可能なギアを有する燃料供給ポンプを、ブラケットを介して前記エンジンに組み付ける、燃料供給ポンプの組付構造であって、
前記ブラケットは、係止部材を前記ギアに向けて保持可能な保持部を有し、
前記ギアは、被係止部を有し、前記保持部に保持された前記係止部材によって前記被係止部が係止されるとき、予め定められた回転位相位置に固定され、
前記保持部は、前記係止部材により前記回転位相位置が調整されるように前記係止部材を保持する、
燃料供給ポンプの組付構造。
【請求項6】
エンジンの駆動により回転可能であって、被係止部を有するギアを備える燃料供給ポンプを、保持部を有するブラケットを介して、前記エンジンに組み付ける燃料供給ポンプの組付方法であって、
前記保持部に、係止部材を前記ギアに向けて保持し、
前記保持部に保持された前記係止部材で前記被係止部を係止することにより、前記ギアを予め定められた回転位相位置に固定し、かつ、前記回転位相位置を調整する、
燃料供給ポンプの組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ディーゼルエンジン(以下、エンジン)の制御システムとして、燃料供給ポンプと、コモンレールとを備えたものが知られている。燃料供給ポンプは、シャフト、ポンプシリンダ及びプランジャを有し、エンジンのクランク軸の回転動力によってシャフトが回転駆動されることで、ポンプシリンダ内をプランジャが往復方向に摺動し、これにより加圧室内に吸入された燃料を加圧して高圧化し、この高圧化した高圧燃料をコモンレールに圧送する。コモンレールは、燃料供給ポンプより圧送された高圧燃料を蓄圧すると共に、この蓄圧された高圧燃料をディーゼルエンジンの各気筒に搭載されたインジェクタに分配配給する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1に、エンジンのクランク軸の回転動力をシャフトに伝える駆動伝達経路の一例を示す。駆動伝達経路は、エンジン本体1のクランク軸2に設けられるギア3と、燃料供給ポンプ(図示略)のシャフト4に設けられるドライブギア5と、アイドルギア6とを備えている。ドライブギア5は、アイドルギア6を介してクランク軸2のギア3に噛合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-315154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料供給ポンプをエンジン本体1に組み付ける場合、エンジン本体1を、例えば上死点(Top Dead Center:TDC)に予め合わせておく。次に、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に位置決めする。次に、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に位置決めした状態で、燃料供給ポンプをエンジン本体1に組み付ける。
【0006】
しかし、例えば、複数種類の燃料供給ポンプの中には、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に位置決めしても、ドライブギア5をフリーの状態にすると、ドライブギア5が回転位相位置に安定しないものがある。また、ドライブギア5がシャフトから何らかの力を受けて、回転位相位置に対しずれてしまうものがある。ドライブギア5の回転位相位置が合っていない状態で、燃料供給ポンプがエンジン本体1に組み付けられるおそれがある。そのような状態で燃料供給ポンプが組み付けられた場合、例えば、燃料噴射システムに異常をきたす。そのため組み付けのやり直しなどが生じる。
【0007】
本開示の目的は、ギアを予め定められた回転位相位置に固定することができるブラケット、燃料供給ポンプの組付構造および燃料供給ポンプの組付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るブラケットは、
エンジンの駆動により回転可能なギアを有する燃料供給ポンプを、前記エンジンに組み付けるためのブラケットであって、
前記ギアを予め定められた回転位相位置に固定させるように前記ギアに係止する係止部材を保持し、かつ、前記係止部材により前記回転位相位置が調整されるように前記係止部材を保持する保持部を有する。
【0009】
また、本開示の一態様に係る燃料供給ポンプの組付構造は、
エンジンの駆動により回転可能なギアを有する燃料供給ポンプを、ブラケットを介して前記エンジンに組み付ける、燃料供給ポンプの組付構造であって、
前記ブラケットは、係止部材を前記ギアに向けて保持可能な保持部を有し、
前記ギアは、被係止部を有し、前記保持部に保持された前記係止部材によって前記被係止部が係止されるとき、予め定められた回転位相位置に固定され、
前記保持部は、前記係止部材により前記回転位相位置が調整されるように前記係止部材を保持する。
【0010】
また、本開示の一態様に係る燃料供給ポンプの組付方法は、
エンジンの駆動により回転可能であって、被係止部を有するギアを備える燃料供給ポンプを、保持部を有するブラケットを介して、前記エンジンに組み付ける燃料供給ポンプの組付方法であって、
前記保持部に、係止部材を前記ギアに向けて保持し、
前記保持部に保持された前記係止部材で前記被係止部を係止することにより、前記ギアを予め定められた回転位相位置に固定し、かつ、前記回転位相位置を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ギアを予め定められた回転位相位置に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エンジンのクランク軸の回転動力をシャフトに伝える駆動伝達経路の一例を示す図
図2】本開示の一実施の形態に係る燃料供給ポンプの組付構造の一例を示す斜視図
図3図2のA-A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本開示の一実施の形態に係る燃料供給ポンプ7の組付構造の一例を示す斜視図である。図2に示すように、燃料供給ポンプ7は、ブラケット10を介してエンジン本体1(図1参照)に組み付けられる。燃料供給ポンプ7は、カムシャフト4aと、ポンプシリンダ(図示略)と、プランジャ(図示略)と、を備えている。
【0014】
カムシャフト4aの軸方向端部にはドライブギア5が設けられている。カムシャフト4aの軸方向端部にはキー4b(図3参照)が設けられている。ドライブギア5の軸部5aにはキー溝5b(図3参照)が設けられている。キー4bがキー溝5bに嵌め込まれている。これにより、ドライブギア5におけるカムシャフト4aに対する回転方向の位置決めがされている。また、ドライブギア5とカムシャフト4aとは、一体的に回転する。
【0015】
プランジャは、カムシャフト4aの周面に向けて付勢されている。換言すれば、カムシャフト4aの周面は、プランジャから付勢力を受けている。前述したように、ドライブギア5とカムシャフト4aとが一体的に回転するため、プランジャからの付勢力をドライブギア5も受ける。
【0016】
ドライブギア5は、図1を用いて説明したように、例えば、アイドルギア6を介してクランク軸2のギア3に噛合している。これにより、カムシャフト4aは、クランク軸2の回転動力によって、プランジャからの付勢力に抗して回転駆動される。
【0017】
プランジャは、カムシャフト4aが回転駆動されることで、ポンプシリンダ内を往復方向に摺動し、これにより加圧室内に吸入された燃料を加圧して高圧化し、この高圧化した高圧燃料をコモンレール(図示略)を介して各気筒のインジェクタ(図示略)に圧送供給する。
【0018】
以上のように、燃料供給ポンプ7がエンジン本体1に組み付けられている場合、例えば、エンジン本体1の停止時においても、ドライブギア5は、アイドルギア6に噛合しているため、プランジャからの付勢力によって回転しない。
【0019】
ところが、燃料供給ポンプ7の組み付け作業において、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に位置決めした後、燃料供給ポンプ7をエンジン本体1に組み付ける場合、ドライブギア5は、アイドルギア6に噛合していないため、ドライブギア5がプランジャからの付勢力によって回転する場合がある。仮に、ドライブギア5がプランジャからの付勢力によって回転した場合、ドライブギア5の回転位相位置が合っていない状態(フリーの状態)で、燃料供給ポンプ7がエンジン本体1に組み付けられるおそれがある。
【0020】
そこで、本実施の形態では、ブラケット10には保持部16(図3参照)が設けられている。保持部16は、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に固定させるようにドライブギア5に係止する係止部材20を保持する。
【0021】
図3を参照して、保持部16および係止部材20等について具体的に説明する。図3は、図2のA-A線断面図である。図3には、X軸、Y軸及びZ軸が描かれている。以下の説明では、図3における左右方向をX方向といい、左方向を「+X方向」又は左側、右方向を「-X方向」又は右側という。また、図3における上下方向をY方向といい、上方向を「+Y方向」又は上側、下方向を「-Y方向」又は下側という。さらに、図3において紙面に垂直な方向をZ方向といい、手前方向を「+Z方向」又は手前側、奥方向を「-Z方向」又は奥側という。なお、以下の説明では、ドライブギア5が図3に示す予め定められた回転位相位置にある場合、プランジャからの付勢力によって図3における時計回りの方向に回転するものとして説明する。
【0022】
図3には、軸部5aの中心軸に対し直交する方向の断面が示されている。図3に示すように、軸部5aには被係止部5cが設けられている。被係止部5cは、軸部5aの外周面を、中心軸に対し直交する平面(XY平面)において円弧状に切り欠いた溝底5dを有している。溝底5dは、Z方向に所定の幅を有している。
【0023】
燃料供給ポンプ7は、ブラケット10を介してエンジン本体1に組み付けられる。ブラケット10は、軸部5aを径方向から囲むように形成される枠状体11を有している。枠状体11は、軸部5aの位置より上方向、下方向、左方向および右方向にそれぞれ位置する、上側枠部12、下側枠部13、左側枠部14および右側枠部15を有している。上側枠部12には、保持部16が設けられている。保持部16は、ドライブギア5の回転位相位置が係止部材20によって調整されるように係止部材20を保持する。
【0024】
本実施の形態において、保持部16は雌ねじ部17である。雌ねじ部17は、軸部5aの中心軸の位置より右斜め上方向に位置している。雌ねじ部17の中心軸方向の延長線は、軸部5aにおける中心軸より上側領域を右斜め上から左斜め下へ横切るように延ばされている。なお、雌ねじ部17の中心軸方向の延長線上には、ドライブギア5の被係止部5cが位置している(図3参照)。
【0025】
係止部材20は雄ねじ部22を有している。雄ねじ部22は雌ねじ部17に螺合している。係止部材20は、雄ねじ部22が雌ねじ部17に螺合することで、ブラケット10に保持されている。また、係止部材20は、雄ねじ部22が雌ねじ部17に螺合することで、ブラケット10に対して螺進(左斜め下方向へ移動)および螺退(右斜め上方向へ移動)する。その結果、雄ねじ部22の螺進および螺退による係止部材20の変位に連れてドライブギア5が回転される。なお、係止部材20によりドライブギア5を連れ回するために、雌ねじ部17の中心軸方向の延長線は、軸部5aの中心軸から外れた位置と軸部5aの外周面部に接する位置との間の範囲を通る。
【0026】
図3のように、係止部材20の螺進する方向(雌ねじ部17の中心軸方向)の延長線上に被係止部5cが位置する場合、係止部材20がブラケット10に対して螺進することにより、係止部材20の先端部24が被係止部5cの溝底5dに当接する。これにより、ドライブギア5の図3における時計回りの回転が阻止されるため、ドライブギア5が、プランジャからの付勢力によって時計回りの方向に回転しない。その結果、ドライブギア5が回転位相位置に固定される。
【0027】
この状態から、係止部材20がブラケット10に対して螺進することにより、係止部材20の先端部24が溝底5dに対し左斜め下方向に押し込む。係止部材20の先端部24が押し込んだ分だけ、ドライブギア5がプランジャの付勢力に抗して図3における反時計回りの方向に回転する。反対に、係止部材20がブラケット10に対して螺退することにより、係止部材20の先端部24が溝底5dに対し右斜め上方向に後退する。これにより、係止部材20の先端部24が後退した分だけ、ドライブギア5がプランジャの付勢力によって図3における時計回りの方向に回転する。つまり、係止部材20は、ブラケット10に対して螺進または螺退することで、ドライブギア5の回転位相位置を調整する。
【0028】
次に、ドライブギア5の回転位相位置の精度を上げるための構成について説明する。
図3に示すように、ドライブギア5の軸部5aの外周面部には、回転位相位置を示す第1マーク5eが設けられている。第1マーク5eは、回転位相位置を識別できるものであればよい。第1マーク5eは、例えば刻印でもよい。
【0029】
ブラケット10の左側枠部14には、軸部5aの外周面部に対向して第2マーク18が設けられている。第2マーク18は、例えば、左側枠部14から軸部5aの中心軸に向かって突出させた凸部でもよい。
【0030】
次に、エンジン本体1に燃料供給ポンプ7を組み付ける手順の一例について説明する。なお、エンジン本体1を、例えば、上死点(TDC)に予め合わせておく。
【0031】
作業者は、ブラケット10の雌ねじ部17に係止部材20の雄ねじ部22を螺合させる。次に、作業者は、係止部材20をブラケット10に対して螺進させて、係止部材20の先端部24を被係止部5cの溝底5dに当接させる。
【0032】
次に、作業者は、第1マーク5eを第2マーク18に合わせるように、係止部材20をブラケット10に対して螺進および螺退して、ドライブギア5の回転位相位置を調整する。作業者は、第1マーク5eと第2マーク18とが合ったならば、ドライブギア5の回転位相位置の調整を終了する。これにより、ドライブギア5が予め定められた回転位相位置に確実に固定される。
【0033】
次に、作業者は、燃料供給ポンプ7をエンジン本体1に組み付ける。なお、燃料供給ポンプ7を組み付けし辛い場合、係止部材20をブラケット10に対して螺進または螺退して、再度組み付けを実施する。例えば、ドライブギア5やアイドルギア6がヘリカルギアの場合であっても、ドライブギア5が反時計回りの方向に回転可能であるため、燃料供給ポンプ7の組付けが可能となる。
【0034】
作業者は、燃料供給ポンプ7をエンジン本体1に組み付けた後、係止部材20を雄ねじ部22から取り外す。次に、プラグ(図示略)を取り付けて、雌ねじ部17を塞ぐ。なお、プラグを取り付けるためのテーパーねじが、雄ねじ部22に連続して設けられてもよく、雄ねじ部22から分離して設けられてもよい。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係る燃料供給ポンプ7の組付構造によれば、被係止部5cを有するドライブギア5と、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に固定させるように被係止部5cに係止する係止部材20を保持するブラケット10とを備える。これにより、例えば、プランジャの付勢力によって回転位相位置におけるドライブギア5が回転する場合であっても、ドライブギア5を予め定められた回転位相位置に確実に固定することができる。
【0036】
また、上記実施の形態によれば、係止部材20をブラケット10に対して螺進させた場合、ドライブギア5がプランジャからの付勢力に抗して図3における反時計回りに回転する。係止部材20をブラケット10に対して螺退させた場合、ドライブギア5がプランジャからの付勢力により図3における時計回りに回転する。これにより、ドライブギア5の回転位相位置を調整することができる。
【0037】
また、上記実施の形態によれば、ドライブギア5の回転位相位置を調整する場合、ドライブギア5側に設けられた第1マーク5eと、ブラケット10側に設けられた第2マーク18とを目印にして、両方のマーク5e,18が一致するように、係止部材20を螺進又は螺退して、ドライブギア5の回転位相位置を調整するため、回転位相位置の精度を上げることができる。
【0038】
また、上記実施の形態によれば、軸部5aに設けられる被係止部5cが円弧状の溝底5dを有しているため、平坦状の溝底の場合に比べて、ドライブギア5の回転位相位置の調整量(回転量)に対する係止部材20の螺進又は螺退の移動量が少なくて済む。これにより、例えば、回転位相位置の調整がし易くなる。また、被係止部5cを設けるために軸部5aの外周面を切り欠く場合において、円弧状の溝底5dの場合に切り欠く領域が、例えば平坦状の溝底の場合に切り欠く領域に比べて小さくて済むため、ドライブギア5の強度低下を抑えることができる。また、円弧状の溝底5dを加工する場合において、例えば、所定の刃径(円弧の径と同じ径)を有するエンドミル刃を用いることが可能であるため、溝底5dを比較的簡単に加工することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態では、軸部5aに設けられる被係止部5cを、切り欠き部としたが、本発明はこれに限らず、例えば、軸部5aから遠心方向に突出する突起部であってもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、保持部16を雌ねじ部17としたが、本発明はこれに限らず、保持部16は、ドライブギア5の回転位相位置が係止部材20によって調整されるように係止部材20を保持するものであればよい。例えば、保持部16は、係止部材20の先端部24が被係止部5cに向かう方向又はその反対方向に移動するように係止部材20を保持し、かつ、所望の移動位置に係止部材20を固定するものであればよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、係止部材20は、雄ねじ部22が雌ねじ部17に螺合することで、ブラケット10に対して斜め方向に螺進および螺退するようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば、予め定められた回転位相位置における被係止部5cの上方向に保持部16が位置する場合においては、係止部材20を、被係止部5cに向かって上下方向に螺進および螺退するようにしてもよい。このように、保持部16および被係止部5cの一方が設けられる位置は、他方(相手側)が設けられる位置に対応して定められる。その結果、係止部材20の螺進および螺退する方向も保持部16および被係止部5cの各位置に対応して定められる。
【0042】
また、ブラケット10の雌ねじ部17に係止部材20の雄ねじ部22を螺合させることで、ブラケット10が係止部材20を保持したが、本発明はこれに限らず、ブラケット10が、係止部材20を枠状体11側から軸部5aに向かう方向に往復移動可能に保持していればよい。
【0043】
上記実施の形態では、ドライブギア5をフリーの状態にすると、回転位相位置におけるドライブギア5がプランジャからの付勢力により一方向に回転して、回転位相位置に対してずれてしまう場合、ドライブギア5を回転位相位置に固定する構成について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、ドライブギア5をフリーの状態にすると、回転位相位置におけるドライブギア5がどちらの方向にも回転してしまう場合にも、本開示の燃料供給ポンプ7の組付構造を適用してもよい。その場合、例えば、軸部5aの外周面部に凹部を設け、係止部材20を凹部に係止すれば、ドライブギア5を回転位相位置に固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示のブラケットによれば、燃料供給ポンプの交換作業性の向上が要求されるエンジンの制御システムとして有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン本体
2 クランク軸
3 ギア
4 シャフト
4a カムシャフト
4b キー
5 ドライブギア
5a 軸部
5b キー溝
5c 被係止部
5d 溝底
5e 第1マーク
6 アイドルギア
7 燃料供給ポンプ
10 ブラケット
11 枠状体
12 上側枠部
13 下側枠部
14 左側枠部
15 右側枠部
16 保持部
17 雌ねじ部
18 第2マーク
20 係止部材
22 雄ねじ部
24 先端部
図1
図2
図3