(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20220119BHJP
B66C 13/40 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C13/40 D
(21)【出願番号】P 2018043249
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋幸
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175766(JP,A)
【文献】特開2017-75001(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047806(WO,A1)
【文献】特開2014-222795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
E02F 9/24- 9/26
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体によって支持されるブームと、
前記ブームによって支持されるカメラと、を備え、
遠隔操作端末によって前記ブームの旋回動作を指示できる作業車両において、
前記遠隔操作端末に画像表示機が設けられるとともに、
前記ブームによる前記カメラの支持方向と当該カメラに対する前記遠隔操作端末の位置方向のなす角度を認識できる制御装置を具備し、
前記角度に基づいて転回され且つ円形に切り出された画像が前記画像表示機に表示される、ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記カメラが撮影した画像上に前記遠隔操作端末の位置方向を表す標識が表示される、ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記カメラが撮影した画像上に前記走行体の位置方向を表す標識が表示される、ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
方位計を具備し、
前記カメラが撮影した画像上に方位を表す標識が表示される、ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
遠隔操作端末によって前記ブームの伸縮動作を指示できるものとされ、
前記カメラが上昇したときは当該カメラのズーム倍率を上げ、
前記カメラが降下したときは当該カメラのズーム倍率を下げる、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項6】
遠隔操作端末によって前記ブームの起伏動作を指示できるものとされ、
前記カメラが上昇したときは当該カメラのズーム倍率を上げ、
前記カメラが降下したときは当該カメラのズーム倍率を下げる、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。詳しくは、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、代表的な作業車両であるクレーンが知られている。クレーンは、主に走行体と旋回体で構成されている。走行体は、複数の車輪を備え、走行自在に構成されている。旋回体は、ブームのほかにウインチやフックを備え、荷物を運搬自在に構成されている。
【0003】
ところで、遠隔操作端末によってブームの旋回動作を指示できるクレーンが存在している(特許文献1参照)。また、作業現場を上方から撮影するカメラを備え、作業現場の画像を画像表示機に表示できるクレーンも存在している(特許文献2参照)。しかし、持ち運び自在の遠隔操作端末に画像表示機を設けた場合、オペレータの移動に伴ってカメラに対する遠隔操作端末の相対位置が変わるため、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際に方向感覚を失ってしまうという問題があった。これは、作業現場を上方から撮影するその他の作業車両においても同様であると考えられる。そこで、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい作業車両が求められていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-065911号公報
【文献】特開2016-179889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、
走行体と、
前記走行体によって支持されるブームと、
前記ブームによって支持されるカメラと、を備え、
遠隔操作端末によって前記ブームの旋回動作を指示できる作業車両において、
前記遠隔操作端末に画像表示機が設けられるとともに、
前記ブームによる前記カメラの支持方向と当該カメラに対する前記遠隔操作端末の位置方向のなす角度を認識できる制御装置を具備し、
前記角度に基づいて転回され且つ円形に切り出された画像が前記画像表示機に表示される、ものである。
【0007】
第二の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記カメラが撮影した画像上に前記遠隔操作端末の位置方向を表す標識が表示される、ものである。
【0008】
第三の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記カメラが撮影した画像上に前記走行体の位置方向を表す標識が表示される、ものである。
【0009】
第四の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
方位計を具備し、
前記カメラが撮影した画像上に方位を表す標識が表示される、ものである。
【0010】
第五の発明は、第一から第四のいずれかの発明に係るクレーンにおいて、
前記遠隔操作端末によって前記ブームの伸縮動作を指示できるものとされ、
前記カメラが上昇したときは当該カメラのズーム倍率を上げ、
前記カメラが降下したときは当該カメラのズーム倍率を下げる、ものである。
【0011】
第六の発明は、第一から第四のいずれかの発明に係るクレーンにおいて、
前記遠隔操作端末によって前記ブームの起伏動作を指示できるものとされ、
前記カメラが上昇したときは当該カメラのズーム倍率を上げ、
前記カメラが降下したときは当該カメラのズーム倍率を下げる、ものである。
【発明の効果】
【0012】
第一の発明に係る作業車両は、遠隔操作端末に画像表示機が設けられるとともに、ブームによるカメラの支持方向とカメラに対する遠隔操作端末の位置方向のなす角度を認識できる制御装置を具備している。そして、角度に基づいて転回され且つ円形に切り出された画像が画像表示機に表示される。かかる作業車両によれば、オペレータの移動に伴ってカメラに対する遠隔操作端末の相対位置が変わっても、画像表示機には適宜に転回された欠落のない画像が表示される。従って、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0013】
第二の発明に係る作業車両は、カメラが撮影した画像上に遠隔操作端末の位置方向を表す標識が表示される。かかる作業車両によれば、画像上における遠隔操作端末の位置方向がわかるので、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0014】
第三の発明に係る作業車両は、カメラが撮影した画像上に走行体の位置方向を表す標識が表示される。かかる作業車両によれば、画像上における走行体の位置方向がわかるので、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0015】
第四の発明に係る作業車両は、方位計を具備している。そして、カメラが撮影した画像上に方位を表す標識が表示される。かかる作業車両によれば、画像上における方位がわかるので、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0016】
第五の発明に係る作業車両は、遠隔操作端末によってブームの伸縮動作を指示できるものとされる。そして、カメラが上昇したときはカメラのズーム倍率を上げ、カメラが降下したときはカメラのズーム倍率を下げる。かかる作業車両によれば、画像上における地物等の位置も確認しやすくなるので、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0017】
第六の発明に係る作業車両は、遠隔操作端末によってブームの起伏動作を指示できるものとされる。そして、カメラが上昇したときはカメラのズーム倍率を上げ、カメラが降下したときはカメラのズーム倍率を下げる。かかる作業車両によれば、画像上における地物等の位置も確認しやすくなるので、オペレータが遠隔操作端末の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図10】ブームの伸縮動作に応じてズーム倍率を調整している状況を示す図。
【
図11】ブームの起伏動作に応じてズーム倍率を調整している状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願においては、代表的な作業車両であるクレーンを用いて説明する。本願に開示する技術的思想は、以下に説明するクレーン1のほか、他のクレーンにも適用できる。
【0020】
まず、
図1及び
図2を用いて、クレーン1について説明する。
【0021】
クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
【0022】
走行体2は、左右一対のフロントタイヤ4とリヤタイヤ5を備えている。また、走行体2は、荷物Lの運搬作業を行なう際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。なお、走行体2は、アクチュエータによって、その上部に支持する旋回体3を旋回自在としている。
【0023】
旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム7を備えている。そのため、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている(矢印A参照)。また、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(矢印B参照)。更に、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(矢印C参照)。加えて、ブーム7には、ワイヤ8が架け渡されている。ブーム7の基端側には、ワイヤ8を巻き付けたウインチ9が配置され、ブーム7の先端側には、ワイヤ8によってフック10が垂下されている。ウインチ9は、アクチュエータと一体的に構成されており、ワイヤ8の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(矢印D参照)。なお、旋回体3は、ブーム7の側方にキャビン11を備えている。キャビン11の内部には、旋回操作具21や伸縮操作具22、起伏操作具23、巻回操作具24が設けられている。更に、後述する画像表示機63が設けられている。
【0024】
次に、
図3及び
図4を用いて、画像表示システムについて説明する。但し、本画像表示システムは、考え得る構成の一例であり、これに限定するものではない。
【0025】
画像表示システムは、主に制御装置20で構成されている。制御装置20には、各種操作具21~24が接続されている。また、制御装置20には、各種バルブ31~34が接続されている。更に、制御装置20には、各種センサ41~44が接続されている。
【0026】
前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている(
図1における矢印A参照)。本願においては、かかるアクチュエータを旋回用油圧モータ51と定義する。旋回用油圧モータ51は、方向制御弁である旋回用バルブ31によって適宜に稼動される。つまり、旋回用油圧モータ51は、旋回用バルブ31が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、旋回用バルブ31は、オペレータによる旋回操作具21の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の旋回角度や旋回速度は、旋回用センサ41によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の旋回角度や旋回速度を認識することができる。
【0027】
また、前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(
図1における矢印B参照)。本願においては、かかるアクチュエータを伸縮用油圧シリンダ52と定義する。伸縮用油圧シリンダ52は、方向制御弁である伸縮用バルブ32によって適宜に稼動される。つまり、伸縮用油圧シリンダ52は、伸縮用バルブ32が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、伸縮用バルブ32は、オペレータによる伸縮操作具22の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の伸縮長さや伸縮速度は、伸縮用センサ42によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の伸縮長さや伸縮速度を認識することができる。
【0028】
更に、前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(
図1における矢印C参照)。本願においては、かかるアクチュエータを起伏用油圧シリンダ53と定義する。起伏用油圧シリンダ53は、方向制御弁である起伏用バルブ33によって適宜に稼動される。つまり、起伏用油圧シリンダ53は、起伏用バルブ33が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、起伏用バルブ33は、オペレータによる起伏操作具23の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の起伏角度や起伏速度は、起伏用センサ43によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の起伏角度や起伏速度を認識することができる。
【0029】
加えて、前述したように、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(
図1における矢印D参照)。本願においては、かかるアクチュエータを巻回用油圧モータ54と定義する。巻回用油圧モータ54は、方向制御弁である昇降用バルブ34によって適宜に稼動される。つまり、巻回用油圧モータ54は、昇降用バルブ34が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、昇降用バルブ34は、オペレータによる巻回操作具24の操作に基づいて稼動される。また、フック10の吊下長さや昇降速度は、巻回用センサ44によって検出される。そのため、制御装置20は、フック10の吊下長さや昇降速度を認識することができる。
【0030】
更に、本画像表示システムは、カメラ61と情報中継機62と画像表示機63を有している。
【0031】
カメラ61は、画像を撮影するものである。カメラ61は、作業現場を上方から撮影すべく、ブーム7の先端部分に取り付けられている(
図1参照)。なお、カメラ61は、情報中継機62に接続されている。
【0032】
情報中継機62は、電波信号に変換された情報を送受信するものである。情報中継機62は、地物等による電波への影響を低減すべく、少なくともアンテナがブーム7の先端部分に取り付けられている。なお、情報中継機62は、制御装置20のほか、後述する遠隔操作端末70に接続されている。そのため、情報中継機62は、制御装置20から遠隔操作端末70へ情報を伝達することができる。また、情報中継機62は、遠隔操作端末70から制御装置20へ情報を伝達することもできる。更に、カメラ61が撮影した画像を制御装置20と遠隔操作端末70へ伝達することもできる。
【0033】
画像表示機63は、様々な画像を表示するものである。画像表示機63は、オペレータが各種操作具21~24を操作しながら視認できるよう、キャビン11の内部における前方側に取り付けられている(
図2参照)。なお、画像表示機63は、制御装置20に接続されている。そのため、制御装置20は、画像表示機63を通じ、オペレータへ情報を提供することができる。
【0034】
加えて、本画像表示システムは、遠隔操作端末70を有している。遠隔操作端末70は、図示しない送信機と受信機を備えている。なお、本願における遠隔操作端末70は、遠隔操作端末の一例であり、これに限定するものではない。
【0035】
遠隔操作端末70には、水平移動スティック71が設けられている。オペレータが水平移動スティック71を任意の方向へ倒すと(
図4における矢印E参照)、倒れた方向に向かってフック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lが移動する。つまり、オペレータが水平移動スティック71を任意の方向へ倒すと、適宜に旋回用油圧モータ51や伸縮用油圧シリンダ52、起伏用油圧シリンダ53が連関しつつ稼働し、倒れた方向に向かってフック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lが移動するのである。
【0036】
また、遠隔操作端末70には、垂直移動スティック72が設けられている。オペレータが垂直移動スティック72を前方へ倒すと(
図4における矢印F1参照)、上方に向かってフック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lが移動する。また、オペレータが垂直移動スティック72を後方へ倒すと(
図4における矢印F2参照)、下方に向かってフック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lが移動する。つまり、オペレータが垂直移動スティック72を一方へ倒すと、巻回用油圧モータ54が稼働し、上方又は下方に向かってフック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lが移動するのである。
【0037】
このような遠隔操作端末70によれば、オペレータは、ブーム7やウインチ9を対象として操作を行うのではなく、フック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lを対象として操作を行うことができる。従って、フック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lの移動方向を直接的に指示することとなり、その指示を実現するようにブーム7やウインチ9が稼動することとなる。
【0038】
加えて、遠隔操作端末70には、画像表示機73が設けられている。画像表示機73は、オペレータが水平移動スティック71や垂直移動スティック72を操作しながら視認できるよう、遠隔操作端末70の上面における前方側に取り付けられている。なお、画像表示機73は、電波信号を介して制御装置20に接続されている。そのため、制御装置20は、画像表示機73を通じ、オペレータへ情報を提供することができる。
【0039】
ところで、制御装置20は、遠隔操作端末70の位置を認識できるものとしている。これは、情報中継機62のアンテナが指向特性を有することで実現できる。また、前述したように、制御装置20は、ブーム7の旋回角度や伸縮長さ、起伏角度を認識できる。そのため、制御装置20は、カメラ61の位置を認識することもできる。従って、制御装置20は、ブーム7によるカメラ61の支持方向とカメラ61に対する遠隔操作端末70の位置方向のなす角度α(
図6及び
図8参照)を認識できる。なお、「ブーム7によるカメラ61の支持方向」とは、上方から見たときにブーム7の旋回中心Gとカメラ61を結んだ仮想線V1(
図6及び
図8参照)に沿う方向である。また、「カメラ61に対する遠隔操作端末70の位置方向」とは、上方から見たときにカメラ61と遠隔操作端末70を結んだ仮想線V2(
図6及び
図8参照)に沿う方向である。加えて、制御装置20は、図示しない方位計と接続されており、方位を認識できるものとする。本願における方位については、
図6及び
図8に方位記号で示す。
【0040】
次に、
図5から
図9を用いて、画像表示機63・73の表示態様について説明する。ここでは、クレーン1に乗車して操作を行うオペレータを「オペレータX1」とし、クレーン1に乗車せずに操作を行うオペレータを「オペレータX2」として説明する。
【0041】
前述したように、ブーム7は、オペレータX1による旋回操作具21の操作或いはオペレータX2による水平移動スティック71の操作に応じて旋回する。このとき、カメラ61は、ブーム7とともに旋回する。すると、カメラ61の狙点Pもブーム7とともに旋回することとなり(
図5における矢印H参照)、ひいては狙点Pを中心とする画像領域R1・R2も旋回することとなる。
【0042】
ブーム7が旋回する前において、画像領域R1の内側には、地上に置かれた荷物Lpが含まれているものとする(
図6参照)。画像領域R1は、キャビン11の内部に設けられた画像表示機63に表示される(
図7の(A)参照)。画像領域R1は、カメラ61の撮影範囲に内接した矩形状となっている。これは、フック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Lの周囲を広く見渡せるように考慮したものである。
【0043】
同時に、ブーム7が旋回する前において、画像領域R2の内側にも、地上に置かれた荷物Lpが含まれているものとする(
図6参照)。画像領域R2は、遠隔操作端末70の上面に設けられた画像表示機73に表示される(
図7の(B)参照)。画像領域R2は、画像領域R1に内接した円形状となっている。これは、画像を転回させても欠落(画像の部分的な欠け)が生じない点に加え、オペレータX2に画像が転回して表示されている旨を改めて認識させることができる点を考慮したものである。なお、かかる画像は、なす角度αに基づいて転回される。このようにするのは、オペレータX2にとって最も方向を認識しやすい画像となるからである。
【0044】
以上のように、本クレーン1は、遠隔操作端末70に画像表示機73が設けられるとともに、ブーム7によるカメラ61の支持方向とカメラ61に対する遠隔操作端末70の位置方向のなす角度αを認識できる制御装置20を具備している。そして、角度αに基づいて転回され且つ円形に切り出された画像が画像表示機73に表示される。かかるクレーン1によれば、オペレータの移動に伴ってカメラ61に対する遠隔操作端末70の相対位置が変わっても、画像表示機73には適宜に転回された欠落のない画像が表示される。従って、オペレータX2が遠隔操作端末70の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0045】
次に、本クレーン1における他の特徴点について説明する。
【0046】
本クレーン1において、制御装置20は、遠隔操作端末70の位置方向を認識できる(
図6から
図9における仮想線V2参照)。そのため、制御装置20は、画像表示機73の画像上に遠隔操作端末70の位置方向を表す標識M1を表示することができる(
図7の(B)参照)。
【0047】
このように、本クレーン1は、カメラ61が撮影した画像上に遠隔操作端末70の位置方向を表す標識M1が表示される。かかるクレーン1によれば、画像上における遠隔操作端末70の位置方向がわかるので、オペレータX2が遠隔操作端末70の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0048】
この点、画像表示機63の画像上に遠隔操作端末70の位置方向を表す標識M1を表示するとしてもよい(
図7の(A)参照)。この場合においては、オペレータX1が遠隔操作端末70の位置方向を認識することができる。従って、オペレータX1が画像表示機63の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0049】
また、本クレーン1において、制御装置20は、走行体2の位置方向を認識できる(
図6から
図9における仮想線V1参照)。そのため、制御装置20は、画像表示機73の画像上に走行体2の位置方向を表す標識M2を表示することができる(
図7の(B)参照)。
【0050】
このように、本クレーン1は、カメラ61が撮影した画像上に走行体2の位置方向を表す標識M2が表示される。かかるクレーン1によれば、画像上における走行体2の位置方向がわかるので、オペレータX2が遠隔操作端末70の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0051】
この点、画像表示機63の画像上に走行体2の位置方向を表す標識M2を表示するとしてもよい(
図7の(A)参照)。この場合においては、オペレータX1が走行体2の位置方向を認識することができる。従って、オペレータX1が画像表示機63の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0052】
更に、本クレーン1において、制御装置20は、方位を認識できる。そのため、制御装置20は、画像表示機73の画像上に方位を表す標識M3を表示することができる(
図7の(B)参照)。
【0053】
このように、本クレーン1は、方位計を具備している。そして、カメラ61が撮影した画像上に方位を表す標識M3が表示される。かかるクレーン1によれば、画像における方位がわかるので、オペレータX2が遠隔操作端末70の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0054】
この点、画像表示機63の画像上に方位を表す標識M3を表示するとしてもよい(
図7の(A)参照)。この場合においては、オペレータX1が方位を認識することができる。従って、オペレータX1が画像表示機63の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0055】
次に、
図10及び
図11を用いて、他の特徴点について説明する。
【0056】
前述したように、ブーム7は、オペレータX1による伸縮操作具22の操作或いはオペレータX2による水平移動スティック71の操作に応じて伸縮する。このとき、カメラ61は、ブーム7の伸縮動作によって移動する。すると、カメラ61の高さがブーム7の伸縮動作によって変化することとなる(
図10における矢印I参照)。これに対しては、画像領域R1・R2が変わらない若しくはあまり変わらないようにズーム倍率を調整することが可能である。例えば、画像領域R1が正方形であって、その辺の長さがSである場合、この長さSが変わらない若しくはあまり変わらないようにズーム倍率を調整することが可能である。
【0057】
このように、本クレーン1は、遠隔操作端末70によってブーム7の伸縮動作を指示できるものとされる。そして、カメラ61が上昇したときはカメラ61のズーム倍率を上げ、カメラが降下したときはカメラのズーム倍率を下げる。かかるクレーン1によれば、画像上における地物等の位置も確認しやすくなるので、オペレータX2が遠隔操作端末70の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0058】
この点、画像表示機63についても同様である。従って、オペレータX1が画像表示機63の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0059】
また、前述したように、ブーム7は、オペレータX1による起伏操作具23の操作或いはオペレータX2による水平移動スティック71の操作に応じて起伏する。このとき、カメラ61は、ブーム7の起伏動作によって移動する。すると、カメラ61の高さがブーム7の起伏動作によって変化することとなる(
図11における矢印J参照)。これに対しては、画像領域R1・R2が変わらない若しくはあまり変わらないようにズーム倍率を調整することが可能である。例えば、画像領域R1が正方形であって、その辺の長さがSである場合、この長さSが変わらない若しくはあまり変わらないようにズーム倍率を調整することが可能である。
【0060】
このように、本クレーン1は、遠隔操作端末70によってブーム7の起伏動作を指示できるものとされる。そして、カメラ61が上昇したときはカメラ61のズーム倍率を上げ、カメラが降下したときはカメラのズーム倍率を下げる。かかるクレーン1によれば、画像上における地物等の位置も確認しやすくなるので、オペレータX2が遠隔操作端末70の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0061】
この点、画像表示機63についても同様である。従って、オペレータX1が画像表示機63の画像を見ながら操作をする際にも方向感覚を失いにくい。
【0062】
最後に、本願に開示する技術的思想は、作業現場を上方から撮影するその他の作業車両にも適用できる。例えば、高所作業車やコンクリートポンプ車等にも適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 クレーン(作業車両)
2 走行体
3 旋回体
7 ブーム
10 フック
20 制御装置
61 カメラ
70 遠隔操作端末
73 画像表示機
L 荷物
M1 標識
M2 標識
M3 標識
α 角度