(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】放射性物質含有飛灰の保管処理装置および保管処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
G21F9/36 511C
G21F9/36 Z
G21F9/36 501F
G21F9/36 501B
(21)【出願番号】P 2018052818
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】宮越 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】秋田 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】古谷 磨
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-002098(JP,A)
【文献】特開2015-049070(JP,A)
【文献】特開平10-153694(JP,A)
【文献】特開2014-025922(JP,A)
【文献】特表2015-525174(JP,A)
【文献】米国特許第06262328(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出され放射性物質を含有する飛灰を該飛灰の保管に先立ち前処理する飛灰前処理装置と、前処理後の飛灰を保管する飛灰保管装置とを有し、
飛灰前処理装置は、飛灰を貯留する灰貯槽と、該灰貯槽から飛灰の一部を受け、飛灰中の金属アルミニウムと反応する反応剤を該飛灰に添加して水素ガス発生の有無を判定する水素ガス発生判定装置を有し、
飛灰保管装置は、水素ガス発生判定装置で水素ガスの発生がないと判定された飛灰を保管する密閉型保管容器と、水素ガス発生判定装置で水素ガスが発生したと判定された飛灰を保管する通気型保管容器とを備え、
通気型保管容器は、飛灰を収容するプラスチック層をもつ内側収容部と該内側収容部を収める金属製の外側収容部との二重構造となっているとともに、水素ガスの通気を許容する通気口を有している、
ことを特徴とする放射性物質含有飛灰の保管処理装置。
【請求項2】
通気型保管容器は、内側収容部が通気口付きのプラスチック容器で、外側収容部が通気口付の金属容器であることとする請求項1に記載の放射性物質含有飛灰の保管処理装置。
【請求項3】
通気型保管容器は、外側収容部としての金属容器の内面に内側収容部としてのプラスチック塗覆装が施されていることとする請求項1に記載の放射性物質含有飛灰の保管処理装置。
【請求項4】
放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出され放射性物質を含有する飛灰を該飛灰の保管に先立ち前処理する飛灰前処理工程と、前処理工程後の飛灰を保管する飛灰保管工程とを有し、
飛灰前処理工程は、飛灰を灰貯槽に貯留する灰貯留工程と、該灰貯槽から飛灰の一部を受け、飛灰中の金属アルミニウムと反応する反応剤を該飛灰に添加して水素ガス発生の有無を判定する水素ガス発生判定工程を有し、
飛灰保管工程では、水素ガス発生判定工程で水素ガスの発生がないと判定された場合に該飛灰を密閉型保管容器に保管し、水素ガス発生判定工程で水素ガスが発生したと判定された場合に該飛灰を通気型保管容器に保管し、
通気型保管容器は、飛灰を収容するプラスチック層をもつ内側収容部と該内側収容部を収める金属製の外側収容部との二重構造となっているとともに、水素ガスの通気を許容する通気口を有していて、飛灰保管工程では、水素ガスを通気型保管容器の通気口から容器外に放出することを特徴とする放射性物質含有飛灰の保管処理方法。
【請求項5】
添加剤がアルカリ溶液であることとする請求項4に記載の放射性物質含有飛灰の保管処理方法。
【請求項6】
通気型保管容器は、内側収容部が通気口付きのプラスチック容器で、外側収容部が通気口付の金属容器であり、飛灰保管工程で、水素ガスを内側収容部の通気口、外側収容部の
通気口を順次経て容器外に放出することとする請求項4に記載の放射性物質含有飛灰の保管処理方法。
【請求項7】
通気型保管容器は、外側収容部としての金属容器の内面に内側収容部としてのプラスチック塗覆装が施されていることとする請求項4に記載の放射性物質含有飛灰の保管処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出される放射性物質含有飛灰の保管処理装置および保管処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質を含む可燃性廃棄物を、ストーカ炉、キルン炉あるいは流動床炉などの焼却炉を用いて焼却すると、放射性物質を含む主灰と飛灰が発生する。飛灰は主灰にくらべ放射性物質濃度が高いため、保管容器に入れて保管される。
【0003】
放射性物質を含有する廃棄物を保管する容器としては、一般にドラム缶が用いられる。ドラム缶では、放射性廃棄物が放射線分解により有害なガスを発生し、ドラム缶内での内圧が上昇して破損が生ずることがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、放射性廃棄物から発生するガスを放出させて破損を防止するドラム缶を保管容器として提案している。
【0005】
特許文献1のドラム缶は、ドラム缶本体に被せる蓋に開口部を設けるとともに、該蓋の内面に開口部へ向う傾斜部を形成し、かつ開口部にフィルタを取り付けることとしている。このような構造のもとで、ドラム缶内でガスが発生しても該ガスは上記傾斜部で開口部へ向け導かれフィルタを経て外部へ放出される。その際、廃棄物の粉塵などは上記フィルタで捕捉されてガスのみが放出される。
【0006】
一方、金属アルミニウムを含む廃棄物の焼却灰に含まれている金属アルミニウムと水とが反応して水素ガスを生ずることが非特許文献1にて報告されている。保管容器に保管されている飛灰が反応して水素ガスが生ずると、容器内の内圧を上昇させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】第28回廃棄物循環資源学会研究発表会 講演原稿2017 C 2‐2 一般廃棄物焼却灰からの水素ガス発生特性に関する基礎的研究
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出され保管容器で保管されている放射性物質含有飛灰に金属アルミニウムが含まれている場合には、金属アルミニウムと水分が反応して水素ガスが発生することがあるので、保管容器が密閉型であると、保管中に水素ガスが発生して保管容器内の内圧上昇により保管容器が膨張して破損し、放射性物質を含む飛灰が周囲に漏出するという問題が生じる虞れがある。
【0010】
このような問題がある現状において、放射性物質を含む廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を収容する容器について、水素ガス発生の可能性を考慮し、水素ガス発生の有無を把握して適切に保管処理する保管処理技術はいまだ確立されていない。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、放射性物質を含む飛灰を保管する際に、水素ガス発生の虞れの有無を短時間で精度よく判定し、水素ガス発生の有無に対応して適切に保管処理することができる保管処理装置および保管処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題は、本発明によれば、次のように構成される、放射性物質含有飛灰の保管処理装置、保管処理方法、保管容器によって解決される。
【0013】
<保管処理装置>
放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出され放射性物質を含有する飛灰を該飛灰の保管に先立ち前処理する飛灰前処理装置と、前処理後の飛灰を保管する飛灰保管装置とを有し、
飛灰前処理装置は、飛灰を貯留する灰貯槽と、該灰貯槽から飛灰の一部を受け、飛灰中の金属アルミニウムと反応する反応剤を該飛灰に添加して水素ガス発生の有無を判定する水素ガス発生判定装置を有し、
飛灰保管装置は、水素ガス発生判定装置で水素ガスの発生がないと判定された飛灰を保管する密閉型保管容器と、水素ガス発生判定装置で水素ガスが発生したと判定された飛灰を保管する通気型保管容器とを備え、
通気型保管容器は、飛灰を収容するプラスチック層をもつ内側収容部と該内側収容部を収める金属製の外側収容部との二重構造となっているとともに、水素ガスの通気を許容する通気口を有している、
ことを特徴とする放射性物質含有飛灰の保管処理装置。
【0014】
かかる構成の本発明において、通気型保管容器は、内側収容部が通気口付きのプラスチック容器で、外側収容部が通気口付の金属容器であるようにすることができる。
【0015】
また、本発明において、通気型保管容器は、外側収容部としての金属容器の内面に内側収容部としてのプラスチック塗覆装が施されているようにすることもできる。
【0016】
<保管処理方法>
放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出され放射性物質を含有する飛灰を該飛灰の保管に先立ち前処理する飛灰前処理工程と、前処理工程後の飛灰を保管する飛灰保管工程とを有し、
飛灰前処理工程は、飛灰を灰貯槽に貯留する灰貯留工程と、該灰貯槽から飛灰の一部を受け、飛灰中の金属アルミニウムと反応する反応剤を該飛灰に添加して水素ガス発生の有無を判定する水素ガス発生判定工程を有し、
飛灰保管工程では、水素ガス発生判定工程で水素ガスの発生がないと判定された場合に該飛灰を密閉型保管容器に保管し、水素ガス発生判定工程で水素ガスが発生したと判定された場合に該飛灰を通気型保管容器に保管し、
通気型保管容器は、飛灰を収容するプラスチック層をもつ内側収容部と該内側収容部を収める金属製の外側収容部との二重構造となっているとともに、水素ガスの通気を許容する通気口を有していて、飛灰保管工程では、水素ガスを通気型保管容器の通気口から容器外に放出することを特徴とする放射性物質含有飛灰の保管処理方法。
【0017】
本発明において、添加剤をアルカリ溶液とすることができる。
【0018】
本発明において、通気型保管容器は、内側収容部が通気口付きのプラスチック容器で、外側収容部が通気口付の金属容器であり、飛灰保管工程で、水素ガスを内側収容部の通気口、外側収容部の通気口を順次経て容器外に放出することができる。
【0019】
本発明において、通気型保管容器は、外側収容部としての金属容器の内面に内側収容部としてのプラスチック塗覆装が施されているようにすることができる。
【0020】
<保管容器>
放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却炉から排出され放射性物質を含有する飛灰を保管する飛灰保管容器であって、
飛灰保管容器は、飛灰を収容するプラスチック層をもつ内側収容部と該内側収容部を収める金属製の外側収容部との二重構造となっているとともに、水素ガスの通気を許容する通気口を有している通気型保管容器である、
ことを特徴とする放射性物質含有飛灰の保管容器。
【0021】
本発明において、通気型保管容器は、内側収容部が通気口付きのプラスチック容器で、外側収容部が通気口付の金属容器であるようにすることができる。
【0022】
本発明において、通気型保管容器は、外側収容部としての金属容器の内面に内側収容部としてのプラスチック塗覆装が施されているようにすることもできる。
【0023】
<作動原理>
本発明の保管処理装置、保管処理方法においては、灰貯槽の飛灰は、その一部が採取されて水素ガス発生判定装置へもたらされ、該水素ガス発生判定装置で、反応剤が添加されて、水素ガスが発生しているかどうかが判定される。水素ガスの発生がないと判定されたときには、灰貯槽の飛灰は、通常の密閉型保管容器に保管され、水素ガスが発生していると判定されたときには、通気型保管容器に保管される。反応剤としては、例えば、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液又は酸溶液を用いる。
【0024】
かかる通気型保管容器により保管された飛灰は、本発明の保管処理装置、保管処理方法、保管容器において、プラスチック層をもつ内側収容部内に収容されているので飛灰や水分の漏出が防止され、さらに上記内側収容部が金属製の外側収容部により保護されるとともに、飛灰中の金属アルミニウムが該飛灰中の水分と反応して水素ガスが発生すると、該水素ガスは通気型保管容器の通気口から外部へ放出されるので、保管容器内の内圧が上昇することなく、保管容器の破損の危険性がない。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の保管処理装置、保管処理方法では、貯灰槽内の飛灰について、その一部を採取して反応剤を用いて水素ガス発生の有無を判定し、水素ガス発生がない飛灰を通常の密閉型保管容器に保管することとし、水素ガス発生がある飛灰のみを本発明の通気口をもつ通気型保管容器に保管すればよく、保管容器の破損の危険性を回避して保管における安全性を確保できるとともに、通常の密閉型保管容器に対し、高コストとなる通気型保管容器の使用数を抑制できる。
【0026】
本発明の保管処理装置および保管処理方法において、保管容器はプラスチック層をもつ内側収容部と金属製の外側収容部とを有しているので、内側収容部で飛灰や水分の漏出を防止し、外側収容部で内側収容部の破損に対する保護を図れる結果、保管における安全性を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態としての放射性物質含有飛灰の保管処理装置の概要構成図である。
【
図2】
図1保管処理装置に用いられる保管容器を示し、(A)は密閉型保管容器、(B)は通気型保管容器である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0029】
本発明の一実施形態装置として
図1に示される放射性物質含有飛灰の保管処理装置は、飛灰前処理装置Iと飛灰保管装置IIとを有しており、飛灰前処理装置Iは、放射性物質含有の廃棄物を焼却炉1で焼却して排出された排ガスから集塵した飛灰を受け、これを前処理して飛灰保管装置IIへ受け渡すように構成されている。
【0030】
上記焼却炉1には、排ガスを除塵する集塵機2、例えばバグフィルタが接続されており、排ガスが集塵機2へ送られて排ガス中の飛灰が集塵機2で集塵され、除塵後の排ガスが次工程での排ガス無害化処理に向け排出され、一方、集塵された飛灰がフィーダ3により混練機4へ送られるようになっている。
【0031】
混練機4には、飛灰の飛散を防止して混練しやすくするために水が添加されるとともに、飛灰中の重金属の溶出防止のためにキレート剤が添加される。混練機4で混練された飛灰は、飛灰前処理装置Iへ送られる。
【0032】
飛灰前処理装置Iは、飛灰中に含有されている金属アルミニウムと水との反応で水素ガスが発生し、飛灰の保管中に保管容器内の内圧が上昇して保管容器の破損が生ずる危険性がないかどうかを保管前に判定する装置であり、上記混練機4から飛灰を受けこれを貯留する灰貯槽5と水素ガス発生判定装置6とを有している。
【0033】
水素ガス発生判定装置6は、反応装置6Aと水素ガス濃度測定装置6Bとを有している。反応装置6Aは容器内に攪拌部材を有しており、上記灰貯槽5に接続されていて灰貯槽5内の飛灰の一部を試料飛灰として採取するようになっていて、上記容器内でこの試料飛灰に反応剤を添加し攪拌するようになっている。反応剤としては、例えば、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液を用いるようになっている。また、該反応剤は、酸溶液であってもよい。
【0034】
水素ガス濃度測定装置6Bは、反応装置6Aでの飛灰と反応剤との反応により発生した発生ガスを該反応装置6Aから受け、例えば、ガスクロマトグラフタ又は検知管により該発生ガス中の水素ガス濃度を測定するようになっている。
【0035】
飛灰中に金属アルミニウムが含有されていると、該金属アルミニウムは両性金属であるため、アルカリ溶液もしくは酸溶液と反応して水素ガスが発生する。本発明では、水素ガス濃度測定装置6Bによる水素濃度の測定の結果をもって水素ガス発生の有無を測定する。水素濃度測定値が0を超えていれば、水素濃度が低くとも、水素ガス発生が有りと判定する。
【0036】
飛灰保管装置IIは、複数の保管容器を備えることで構成されていて、密閉型保管容器7と通気型保管容器8の二種の容器を有している。密閉型保管容器7は一つ以上の密閉型保管容器7-1,7-2,・・・から成り、通気型保管容器8は、一つ以上の通気型保管容器8-1,8-2,8-3,・・・から成っている。
【0037】
本実施形態では、
図1に見られるように、密閉型保管容器7-1,7-2,・・・はいずれも同一形態であるが、配列待機位置順に符号7-1,7-2と区別して付してあり、同様に、通気型保管容器8-1,8-2,8-3,・・・もいずれもが同一形態であるが配列位置待機位置順に8-1,8-2,8-3,・・・と区別して付してある。
【0038】
図1においては、密閉型保管容器7-1,7-2,・・・そして通気型保管容器8-1,8-2,8-3,・・・のうちの一つ(
図1では通気型保管容器8-1)が上記灰貯槽5の直下に配置され、該灰貯槽5から落下する飛灰の供給を受けるようになっており、他(密閉型保管容器7-1,7-2,・・・そして通気型保管容器8-2,8-3,・・・)は図示の上記灰貯槽5の直下位置から外れた待機位置にある。
【0039】
上記密閉型保管容器7は、
図2(A)に見られるように、ドラム缶等の強度を有する金属容器の外側収容部7A内に、ポリエチレン等のプラスチック製袋であって飛灰からの液の漏洩を防止できる内側収容部7Bが収められている。該内側収容部7Bは袋状でなくとも、ケースあるいはボトル状であってもよく、また、上記外側収容部7Aと一体になっていてもよく、例えば、外側収容部7Aとしての金属容器の内面に施されたプラスチック塗覆装として形成することもできる。
【0040】
一方、通気型保管容器8は、本実施形態の場合、上記密閉型保管容器7の外側収容部7Aと内側収容部7Bと同様の材料そして形態の収容部分をなす外側収容部8Aと内側収容部8Bを有しているが、この通気型保管容器8では、外側収容部8Aと内側収容部8Bともに、通気口8A-1と通気口8B-1をそれぞれ有している。外側収容部8Aはさらに、上記通気口8A-1にフィルタ8A-2をも有している。
【0041】
上記通気口8B-1,8A-1は、内側収容部8B内に収められた飛灰が水分と反応して水素ガスを発生した場合に、この水素ガスを内側収容部8Bそして外側収容部8Aからそれぞれ放出するのに足りる小サイズの孔部が形成され、あるいは多孔材で形成されている。外側収容部8Aの通気口8A-1に取り付けられているフィルタ8A-2は、水素ガスを透過させ、飛灰を透過させないようになっている。フィルタ8A-2としてはHEPAフィルタを用いることが好ましい。
【0042】
次に、このような構成の本実施形態装置による、飛灰の保管の要領について説明する。
【0043】
放射性物質を含有する廃棄物は、焼却炉1で焼却される。焼却灰は該焼却炉1の下部から排出され、排ガスは該焼却炉1の上部から排出されて集塵機2へ送られる。該排ガスには飛灰が含まれていて、集塵機2では飛灰が捕集されて、ガス分だけが次の工程へ送られ排ガス無害化処理される。本実施形態では、飛灰は放射性物質の他に重金属類を含有している場合を想定しており、フィーダ3を経て、混練機4へ送られる。
【0044】
混練機4には、水とキレート剤とが供給されており、飛灰と混練され飛灰中の重金属類がキレート剤により溶出しない状態とされる。
【0045】
混練された飛灰は、飛灰前処理装置Iの灰貯槽5へ送られ、保管容器7,8に保管されるまでの間、該灰貯槽5に貯留される。該灰貯槽5内の飛灰は、その一部が試料飛灰として採取されて、水素ガス発生判定装置6の反応装置6Aに送られる。該反応装置6Aには、飛灰1に対して反応剤が添加される。飛灰中に金属アルミニウムが含有されていると該飛灰中の水分と反応して水素ガスが発生する。しかし、この反応は徐々に進行するので、飛灰を容器内に充填する際にはこの水素ガスの発生の有無を把握できず長期保管したときに水素ガスが発生し保管容器内の内圧が次第に上昇して保管容器の破損を起こしてしまうことがある。そこで、本発明では、水素ガス発生の有無を早期に見い出すために、上記反応剤を試料飛灰に添加して水素ガス発生を促進させて、飛灰の容器への充填前に、水素ガスの発生の有無を判定することとしたのである。反応剤としては、アルカリ溶液(例えば、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液)、または酸溶液を用いるが、アルカリ水溶液が好ましい。その理由は、次の通りである。
【0046】
焼却炉からの排ガスは酸性ガスを含んでいるのでこれを中和処理するために、消石灰(水酸化カルシウム)等のアルカリ薬剤を、煙道内を流送される排ガスに添加しており、集塵機で集塵された飛灰にはアルカリ薬剤が含まれている。したがって、飛灰に水を添加すると、飛灰のpHは10程度以上とアルカリ性を示す。このような飛灰へ、さらに、水酸化カルシウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液を比較的少ない量で添加するだけで、水素ガス発生反応を促進して生じさせ、水素ガスの発生の有無を確認できる。一方、酸溶液で金属アルミニウムを酸化し反応させ水素発生の有無を判定しようとすると多量の酸溶液を必要とする。これに対し、上述したように、アルカリ溶液を添加する場合には比較的少ない添加量で、水素ガスの発生の有無を確認することができることが、本実施形態で、酸溶液でなく、アルカリ溶液を反応剤として用いている理由である。
【0047】
反応装置6Aで飛灰中の金属アルミニウムと反応剤との反応で生じた発生ガスは、水素ガス濃度測定装置6Bに送られ、ここで発生ガス中の水素濃度が測定され発生ガス中に水素ガスが含まれているか確認される。発生ガス中の水素濃度測定はガスクロマトグラフ又は検知管により行う。
【0048】
飛灰から水素が発生するかどうか判定する方法としては、上記の他に飛灰に含まれる金属アルミニウムの定量を行うことが考えられる。定量方法としては、臭素-ハロゲン溶解法、粉末X線回折法、電子顕微鏡法があるが、臭素-ハロゲン溶解法は測定に時間がかかり短時間で定量することができず、粉末X線回折法は検出下限値が数%程度なのでその測定精度が低い。また、電子顕微鏡法は局所的なサンプルしか観察ができないため定量性が乏しい等、問題がある。そこで、本実施形態では、反応装置から抜き出された発生ガスをガスクロマトグラフ又は検知管を水素ガス濃度測定装置6Bとして用いて発生ガスの水素濃度を測定することとした。
【0049】
本実施形態では、水素ガス濃度測定装置6Bで、上記発生ガスから水素ガスが検出されたときには、その濃度の高低にかかわらず、保管容器に飛灰を長期保管したときには水素が発生し容器内圧が上昇し保管容器が破損する可能性があると判定することとした。
【0050】
次に、上記水素ガス発生判定装置6で、水素ガスの発生が検出されたときには、その濃度の高低にかかわらず、上記灰貯槽5から飛灰が飛灰保管装置IIに配置された通気型保管容器8に収容されて保管され、また水素ガスの発生が全く検出されなかったときは、密閉型保管容器7に保管される。上記飛灰保管装置IIでは、複数の密閉型保管容器7(7-1,7-2,・・・)と複数の通気型保管容器8(8-1,8-2,8-3,・・・)がそれぞれ配置されており、上記水素ガス発生判定装置6による判定結果により密閉型保管容器7そして通気型保管容器8のいずれかが選択されて、上記灰貯槽5の直下位置にもたらされ、該灰貯槽5から飛灰を受けるようになる。
【0051】
試料飛灰から水素ガスの発生が全くないと判定されたときには、飛灰は灰貯槽5から密閉型保管容器7に収容され保管され、長期にわたり保管されても保管容器が破損する虞れがないので何ら問題はない。
【0052】
試料飛灰から水素ガスの発生が検出されたときには、水素ガスの濃度にかかわらず、飛灰は灰貯槽5から通気型保管容器8へ収容されて保管される。長期保管の結果、飛灰から水素ガスが発生したときには、水素ガスは、上記通気型保管容器8の内側収容部8Bの通気口8B-1そして外側収容部8Aの通気口8A-1を通って外部へ放出される。
【0053】
このように、保管中に水素ガスの発生が予想される飛灰に対しては、通気型保管容器8に保管することとするので、発生した場合の水素ガスは通気口8A-1,8B-1より容器外へ排出され容器内に残留することがないため容器内圧が上昇し容器が膨張したり破損することがなく、飛灰が容器外へ飛散せず、安全に放射性物質を含有する飛灰を保管することができる。外側収容部8Aの通気口8A-1から水素ガスが放出される際に、水素ガスに随伴される微粉状の飛灰はフィルタ8A-2で濾過するので、飛灰は外部への漏出が確実に防止される。
【符号の説明】
【0054】
5 灰貯槽
6 水素ガス発生判定装置
7 密閉型保管容器
8 通気型保管容器
8A 外側収容部
8B 内側収容部
I 飛灰前処理装置
II 飛灰保管装置