(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】放射線画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20220119BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/00 300W
A61B6/00 300S
(21)【出願番号】P 2018090116
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 順一朗
(72)【発明者】
【氏名】角 誠
(72)【発明者】
【氏名】成田 孝之
(72)【発明者】
【氏名】石本 一
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072808(JP,A)
【文献】特開2004-184679(JP,A)
【文献】特開平11-160439(JP,A)
【文献】特開2010-276687(JP,A)
【文献】特開2011-069992(JP,A)
【文献】特開2012-071105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に照射された放射線を検出するセンサーが上面側に備えられたセンサーパネルと、
前記センサーパネルの下面側に配置される電子部品と、
前記センサーパネルおよび前記電子部品を支持する支持体と、
前記センサーパネル、前記電子部品、および前記支持体を収納する筐体と、
を備え、
前記支持体は、空隙を有
する多孔性部材であり、前記センサーパネルの下面を、厚さ方向および平面方向に隙間なく支持するように構成されている、
放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記支持体は、
前記センサーパネルに対向する一方の面で前記センサーパネルを保持し、前記一方の面と反対側の面で前記電子部品を保持する第1の支持体と、
前記電子部品と前記筐体との間に配置され、前記電子部品を支持する第2の支持体と、
を備える、
請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記第2の支持体は、前記電子部品に含まれる回路基板のうち回路素子が配置されていない領域を支持する、
請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記第2の支持体は、前記電子部品の形状に対応した形状の第1凹部と、前記第1凹部に形成され前記回路基板における前記回路素子の形状に対応した形状の第2凹部と、を備える、
請求項3に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記第2凹部は、前記回路素子の高さに対応した深さを有する、
請求項4に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記第1の支持体の下面において前記電子部品が配置されていない領域には、前記筐体の底面に当接する脚部が形成されている、
請求項2から
5のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記電子部品は、複数設けられ、
前記第2の支持体は、前記電子部品毎に設けられている、
請求項
6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記多孔性部材は、樹脂の発泡体、金属の発泡体、およびセラミックの発泡体の少なくとも1つを含む部材である、
請求項
1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記センサーパネルは、前記筐体の内面に固定されている、
請求項1から
8のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記センサーパネルは、前記筐体の内面の前記放射線が照射される照射面側に固定されている、
請求項
9に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記センサーパネルと前記筐体との間に緩衝材が備えられている、
請求項
10に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記筐体における少なくとも前記照射面側は、発泡材を含む複数の板材が積層されてなる、
請求項
10または
11に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項13】
前記センサーパネルおよび前記電子部品が前記筐体における前記放射線が照射される面と反対側の面で保持されるように、前記反対側の面に前記支持体が固定されている、
請求項
10に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記支持体は、前記筐体に接着されている、
請求項
13に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項15】
前記支持体は、前記筐体の内壁に設けられた凹部または凸部に対応する凸部または凹部を有し、
前記支持体の凸部または凹部と、前記筐体の凹部または凸部とが係合することにより、前記支持体が前記筐体に固定される、
請求項1から
14のいずれかに記載の放射線画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用、また産業用にX線を用いて被写体の内部を撮影し、診断に用いる各種手法がある。従来、フィルムによって画像を得る方法や、輝尽性蛍光体プレートを用いるコンピューティッドラジオグラフ(CR)が用いられていた。近年では、X線の分布をセンサーで受信し、処理回路で画像データ化するデジタルラジオグラフ(DR)がX線画像撮影装置として主流となっている。このDRでは、フラットパネルディテクター(FPD)と称されるX線画像撮影装置が用いられ、撮影時の利便性のため、近年では、可搬型のX線画像撮影装置(以下、FPDともいう)が多く使用されるようになっている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
FPDでは、被写体に照射されたX線を検出し電気信号として出力するセンサー(フォトダイオード等の素子)が多数内蔵されている。これらセンサーは、熱安定性などの観点からガラス基板上に作製され、センサーパネルとして筐体内に収容される。センサーパネルは、検出されたX線を電気信号として出力する。また、センサーパネルの裏面(X線の照射面と反対側の面)側には、出力された電気信号に基づいて画像データを生成するための電子デバイス(素子)が設けられた回路基板やバッテリーなどの種々の電子部品が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-184679号公報
【文献】特開平11-160439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FPDは、人体などの被写体が筐体の上に載ってX線撮影を行う場合があり、この場合に数十Kg~100Kg以上の大きな荷重が掛かることになる。このため、FPDでは、このような加重や衝撃等の外力からセンサーパネル(特に、破損しやすいガラス基板)を保護する構造が必要となる。また、上述した電子部品、特に回路基板および回路基板上の素子も、加重や衝撃等の外力によってダメージが生じるおそれがあるため、保護する必要性が高い。近年のFPDでは、筐体の厚みをJIS規格に準拠したサイズ(例えば16mm以下)とすることが多く、このような薄型のFPDにおいて、センサーパネルや回路基板等を加重や衝撃等から保護する構造を構築することは、非常に重要な課題となる。
【0006】
かかる課題に対して、従来のFPDでは、金属などの剛性の高い支持体でセンサーパネルを支持し、センサーパネルの裏面側と筐体との間にスペーサー等を設けて空間を形成し、この空間に上述した回路基板などの種々の電子部品を収容していた。
【0007】
他方、FPDは、搬送容易化などの更なる利便性の向上のため、装置全体を軽量化することが要求されており、このため、比較的大きな重量を有する上記の支持体を軽量化することが検討されている。しかしながら、支持体を金属よりも剛性が低いもの、例えば樹脂製のものにすると、上述した大きな荷重が掛けられた場合に、センサーパネルおよび支持体の両方が撓み、ガラス基板が歪んで割れるおそれや、回路基板上の素子が破損するおそれがある。
【0008】
なお、特許文献1に記載の技術では、衝撃に対してセンサーパネルを移動しないようにするために、エポキシ等の硬化性の樹脂を筐体内に注入して充填材とすることが記載されているが、このような充填材は重量があるため、軽量化の要求を満たすことができない。また、特許文献2に記載の技術では、装置を軽量化しつつ曲げ剛性を向上させるために、センサーパネルのガラス基板を支持する基台を、壁で仕切られた複数の空間を有する構成としている。しかしながら、特許文献2に記載の技術では、回路基板と筐体間での支持がない構造であり、また回路基板とガラス支持基台間での支持が脆弱であり、人体等の荷重が加えられた場合に、回路基板やセンサーパネル(ガラス基板)の歪みを抑制できないおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、センサーパネルを支持する支持体を軽量化しつつ、荷重等に対する耐性の向上が図られた放射線画像撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る放射線画像撮影装置は、
被写体に照射された放射線を検出するセンサーが上面側に備えられたセンサーパネルと、
前記センサーパネルの下面側に配置される電子部品と、
前記センサーパネルおよび前記電子部品を支持する支持体と、
前記センサーパネル、前記電子部品、および前記支持体を収納する筐体と、
を備え、
前記支持体は、空隙を有し、前記センサーパネルの下面を、厚さ方向および平面方向に隙間なく支持するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像パネルを支持する支持体を軽量化しつつ、荷重等に対する耐性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、本実施の形態における放射線画像撮影システムの概要構成図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、従来のFPDにおける撮像パネルの支持構造の一例を説明する図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、従来のFPDにおける撮像パネルの支持構造の他の一例を説明する図である。
【
図4】本実施の形態におけるFPDの一構成例を説明する断面図である。
【
図5】本実施の形態におけるFPDの他の構成例を説明する断面図である。
【
図6】本実施の形態におけるFPDの他の構成例を説明する断面図である。
【
図7】本実施の形態におけるFPDの他の構成例を説明する断面図である。
【
図8】本実施の形態におけるFPDの他の構成例を説明する断面図である。
【
図9】本実施の形態におけるFPDの他の構成例を説明する断面図である。
【
図10】本実施の形態におけるFPDの他の構成例を説明する断面図である。
【
図11】本実施の形態におけるFPDの耐久性についての実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明に係るX線画像撮影装置(FPD)を説明する前に、かかるFPDが使用されるX線撮影システムの概要を説明する。
【0014】
図1(
図1Aおよび1B)は、放射線画像撮影システムとしてのX線撮影システム100の主要な構成を示す。本実施の形態のX線撮影システム100は、病院内で患者(以下、被写体という)SにX線を照射してX線画像(放射線画像)の撮影を行うシステムである。
【0015】
X線撮影システム100は、被写体Sに照射されたX線(放射線)を検出して放射線画像(撮影画像)として出力する放射線画像撮影装置としてのFPD(フラットパネルディテクター)1、かかる照射用のX線を生成して出力するX線照射装置8を含む。また、X線撮影システム100は、FPD1から出力された撮影画像の表示等を行うコンソール装置3、FPD1内の後述するバッテリーの充電等を行う周辺機器としてのクレードル装置(以下、単にクレードルという)5、上記の装置間で無線通信を行うための基地局7を含む。さらに、X線撮影システム100は、病院内の種々のデータの管理等を行うホストコンピューター4を含む。X線撮影システム100を構成する上記の各装置は、ネットワークNを介して互いに接続されている。
【0016】
図1に示す例では、FPD1、基地局7、およびX線照射装置8は、例えば鉛等で外部への放射線漏洩防止を施された撮影室6内に設置される。他方、コンソール装置3およびクレードル5は、撮影室6の前室9に設置されている。ユーザー(医者等)および被写体Sは、前室9のドア9bを通じて撮影室6および前室9間を行き交うことができ、また、撮影室6のドア6aおよび前室9のドア9aを通じて他の病室等に移動できる。ホストコンピューター4は、病院の図示しないデータ管理室に設置されている。
【0017】
X線照射装置8は、図示しない公知のX線管(真空管)を備え被写体Sに近接して使用されるX線照射部81(
図1B参照)、X線照射部81から出力されるX線を制御する制御部82等を備える。制御部82は、X線照射部81のX線管に電圧を印加する電源部、電源部を制御するプロセッサー等を備える。このうち、電源部は、X線管の陰極に設けられたフィラメントを加熱するフィラメント電源、X線管の陽極表面にあるターゲットに衝突させる電子を加速させるための高圧電源を備える。プロセッサーは、フィラメント電源および高圧電源の電源を制御することによって、X線照射部81のX線管から出力されるX線を制御する。
【0018】
コンソール装置3は、主として、放射線画像撮影(以下、単にX線撮影ともいう)の制御、FPD1から取得されたX線画像の表示、かかるX線画像のデータに関する画像処理内容等の指示を行うコンピューターである。コンソール装置3は、プロセッサー、マウスやキーボードなどの操作入力部、LCD(液晶表示ディスプレイ)などの表示部36を備え、表示部36に表示されるメニュー画面等の各種画面を通じて、上述した制御、表示、指示等を行う。
【0019】
ホストコンピューター4は、院内のX線撮影の予約管理を行い、撮影予約が入るとコンソール装置3に撮影要求(撮影オーダ)の指示を送信し、X線撮影後にコンソール装置3から転送される放射線画像データを記憶する。
【0020】
FPD1は、平面略矩形の板状の外形を有する筐体2内に、X線を検出するセンサーパネルSP(
図1B参照)が収容されている。詳細な図示はしないが、FPD1のセンサーパネルSPは、ガラス基板上に複数の放射線検出素子(フォトダイオード等のセンサー)がn×mの二次元マトリクス状に配列された構成であり、各々の放射線検出素子によって、被写体Sに照射されたX線が検出される。センサーパネルSPの放射線検出素子は、筐体2の曝射面Rを透過したX線を検出する。また、センサーパネルSPのガラス基板上には、TFT層などの複数の層が設けられており、これらは公知の構成であるため詳細な説明を省略する。
図1Bおよび後述する
図2以下では、筐体2の曝射面R側を上にして表している。
【0021】
FPD1は、放射線検出素子で検出されたX線を電気信号に変換する変換部、変換された電気信号をデジタル化するA/D変換部、デジタル化された信号を撮影画像としてコンソール装置3に出力する出力部、これら各部に電力を供給するバッテリーなどを備える。FPD1の他の構成については後述する。
【0022】
クレードル5は、FPD1の周辺機器ないし付属装置としての機能を有し、FPD1のバッテリーを充電する充電装置として機能し、FPD1に電力(充電電流)を供給する電力供給部、かかる電力供給部およびクレードル5全体を制御するプロセッサーなどを備えている。
【0023】
以下、被写体Sの胸部のX線撮影を行う場合を例として、X線撮影システム100の概略的な動作を説明する。
【0024】
このX線撮影に先立って、コンソール装置3の表示部36には不図示のメニュー画面が表示される。本実施の形態では、コンソール装置3のマウス等の操作により、メニュー画面から患者データベースにアクセスし、被写体Sとなる患者(以下、単に被写体Sという。)に関する種々の情報(患者ID、氏名、生年月日、性別、撮影しようとする患部名(この例では胸部)、など)を予め入力して、患者データベースの登録や更新を行う。
【0025】
また、X線撮影に先立って、臥位用テーブル6bに取り付けられるFPD1の位置を、被写体Sの胸部の位置になるように調整する。続いて、被写体Sを臥位用テーブル6b上に仰向けに寝かせ、被写体Sの背中をFPD1に対応する位置になるよう位置調整を行うとともに、X線照射部81を当該患者の胸部正面に対向位置させる。
【0026】
さらに、メニュー画面を通じて、X線撮影を実行するための不図示の操作画面が表示部36に表示され、かかる操作画面を通じて、X線照射部81から出力されるX線の強度等のパラメーターが、コンソール装置3のマウス等の入力操作により入力される。続いて、操作画面に表示された図示しない撮影ボタンを選択すると、X線照射装置8が作動し、設定されたパラメーターに従ってX線照射部81からX線が出力される。
【0027】
かくして出力されたX線は、被写体Sの患部を透過してFPD1のセンサーパネルSPに照射される。FPD1は、被写体Sの患部を透過したX線の強度(強弱の分布)をセンサーパネルSPによって検出し、該検出されたX線を電気信号に変換し、該変換された電気信号をデジタル化して撮影画像を生成する。生成された撮影画像のデータは、この後、FPD1からコンソール装置3に転送され、表示部36にX線画像として表示される。このX線画像は、コンソール装置3により適宜加工等がなされた後に、ホストコンピューター4に転送され、ホストコンピューター4の保有する患者データベース等に保存される。
【0028】
図1BではFPD1の上に被写体Sの背中を載せて胸部のX線撮影を行う例を示したが、他にも例えば、FPD1の上に被写体Sの足を載せてX線撮影を行うなど、様々な撮影態様があり得る。
【0029】
ところで、FPD1は、X線を検出し電気信号として出力するセンサー(フォトダイオード等の素子)がセンサーパネルSPに多数搭載されている。これら多数のセンサーは、熱安定性などの観点からガラス基板上に作製され、センサーパネルSP(撮像パネル)として筐体2内に収容される。
【0030】
また、FPD1は、
図1Bに示すように、人体などの被写体Sが上に載って撮影を行う場合があり、このような場合、例えば数十Kg以上の大きな荷重がかかることから、破損しやすいガラス基板を含むセンサーパネルSPを保護する構造が必要となる。これに対して、従来のFPDでは、金属など剛性の高い支持体で撮像パネルを支持し、筐体との間にスペーサー等で空間を形成し、この空間にデータ処理のためのプロセッサーや各種の素子を搭載した回路基板やバッテリーなどの種々の電子部品を保持していた。他方、このような従来の支持構造では、FPD全体の軽量化の要求に応えるために支持体の材質を変更すると、強度が著しく弱くなる問題があった。
【0031】
以下、かかる従来のFPDにおける筐体の内部構造(センサーパネルSPの支持構造)の例および問題点について、
図2(
図2Aおよび
図2B)および
図3(
図3Aおよび
図3B)を参照して説明する。なお、簡明化のため、これら各図では筐体の上板等の図示を省略している。
【0032】
図2Aは、従来のFPDにおけるセンサーパネルSPの支持構造の一例を示し、図中、センサーパネルSPを収容する筐体2のうち底板2A側だけを示している。かかる従来例では、金属製の板状の支持体121によって、センサーパネルSPを下(裏面側)から支持体121の略全面で支持していた。
【0033】
また、従来例では、筐体2の底板2Aと支持体121との間にスペーサー122が複数配置されることにより、FPDの他の種々の構成部品を収容する空間を設けていた。
図2Aに示す例では、データ処理のための回路素子(以下、単に素子という。)を搭載した回路基板126が、支持体121の下面に、ネジ止めや接着剤等によって固着されている。
【0034】
かかる従来の構造では、人体などの被写体Sが上に載る等の通常の使用状態では特に問題は生じない。他方、装置全体の軽量化の要求からは、装置全体に対する重量比率が高い支持体121を、より軽量な構成にする必要が生じる。
【0035】
しかしながら、支持体121の厚みや材質等に変更を加えて支持体121をより軽量にすると、支持体121の剛性が低くなることから、人体が上に載って使用するような場合の耐久性が保てなくなる虞がある。すなわち、支持体121の剛性が低くなると、
図2Bに誇張して示すように、被写体Sが上に載った際の荷重や衝撃等によって加えられる外力により、センサーパネルSPおよび支持体121の両方が撓み、さらには回路基板126にも撓みが生じる。ここで、加えられる外力(
図2B中の下向き矢印参照)の大きさによっては、センサーパネルSPのガラス基板が歪んで割れに至るおそれや、回路基板126上の素子、さらには回路基板126自体が破損するおそれがある。
【0036】
図3Aは、従来のFPDにおけるセンサーパネルSPの支持構造の他の一例を示しており、
図2Aと同一の部分には同一の符号を付している。
図3Aに示す例では、筐体2の底板2Aと回路基板126との間に追加のスペーサー123を配置した点が、
図2Aの例と異なっている。
【0037】
上述した
図2Aに示す構造では外力によってセンサーパネルSPの図中の中央部分が大きく撓んだことから、
図3Aの例では、かかる撓みを抑制するために、回路基板126と筐体2(底板2A)との間に、支持体としてのスペーサー123を介在させている。他方、
図3Aに示す構造は、支持体121をより軽量してその剛性が低下した場合、
図2Aの構造よりも多少は耐久性の向上が期待できるが、以下のような制約等がある。
【0038】
すなわち、多くのFPDでは、回路基板126の下面に種々の素子が配置される。このため、回路基板126の下に配置されるスペーサー123は、回路基板126の全体(全面)を支持するサイズとすることが出来ない。すなわち、スペーサー123の平面形状を回路基板126の平面形状と同じにすると、上述した加重や衝撃等の外力が加えられた場合に、かかる外力がスペーサー123を通じて素子に作用してしまい、素子が破損しやすくなる。したがって、回路基板126の下に配置されるスペーサー123は、素子が配置されていない回路基板126の一部分を局所的に支持する構成とされていた(
図3A参照)。
【0039】
かくして、
図3Aに示すような従来の支持構造では、図中の上方から荷重が加えられると、
図3Bに誇張して示すように、
図2の構造とは異なる態様でセンサーパネルSPおよび支持体121の両方が撓み、回路基板126にも撓みが生じる。すなわち、
図3に示す従来の支持構造では、スペーサー(122または123)の存在する箇所と存在しない箇所の境界近傍で大きな歪みが発生する。そして、加えられる外力(
図3B中の下向き矢印参照)の大きさによっては、センサーパネルSPのガラス基板が歪んで割れに至るおそれや、回路基板126自体が破損するおそれがある。
【0040】
本発明者らは、上記のような種々の実験を行った結果、FPD内でセンサーパネルSPや回路基板等を支持する支持体としては、センサーパネルSPの裏面(筐体内部側の面)の全面および回路基板の全面を支持する構造が理想であるとの知見を得た。そして、このような支持体の構造とすることで、支持体を軽量な材質に変えた場合でも、センサーパネルSPや回路基板等の部品の破損を有効に抑制できることを見出した。
【0041】
本実施の形態におけるFPD1におけるセンサーパネルSPおよび種々の電子部品を支持する構成例を、
図4以下を参照して説明する。
【0042】
(第1の構成例)
図4は、センサーパネルSP等を支持するための第1の構成例についての概略断面図である。
図4に示すFPD1では、筐体2は、平面略矩形の底板2Aと、底板2Aと略同一の平面形状を有しX線が照射される曝射面Rを有する上板2Bと、底板2Aおよび上板2Bの両側部に介在される側板2C,2Dと、を有している。この内、上板2Bは、X線を透過する材料で成形されており、例えば、放射線を透過するカーボン板(カーボン繊維を樹脂等で板状に固めたもの)である。底板2Aおよび側板2C,2Dは、上板2Bと同じ材料または異なる材料(例えばマグネシウム合金など)で形成することができる。
【0043】
FPD1は、筐体2の各板2A~2Dに囲まれた空間内に、センサーパネルSPおよび各種の電子部品が収容され、かつ、センサーパネルSPおよび種々の部品を底板2A側から支持する支持体20が設けられている。ここで、センサーパネルSPは、上面(X線を検出する側となる面であり、「表面」ともいう。)が上板2Bの内面に当接するように配置され、センサーパネルSP以外の電子部品は、センサーパネルSPの下方の予め定められた位置に配置される。
図4では、センサーパネルSP以外の電子部品として、左側から、FPD1全体に電源を供給する電源部としてのバッテリー25、主回路基板26、およびフレキシブル基板28を介してセンサーパネルSPに接続される回路基板27を示している。
【0044】
バッテリー25は、例えばリチウムイオン電池などの繰り返し充放電が可能な電池であり、筐体2の側面側に設けられた図示しない充電用のコネクタを介して、上述したクレードル5から供給される電力によって充電される。回路基板27は、上述したA/D変換部の機能を有し、センサーパネルSP内の各センサーによって検出されたX線による電荷(照射されたX線の強弱状態)をA/D変換して、変換されたデジタルデータを主回路基板26に供給する。主回路基板26は、デジタルデータを統合して被写体の患部全体のX線画像のデータ(撮影画像データ)を生成し、生成した撮影画像データを、FPD1内に一時記憶する。さらに、主回路基板26は、生成した撮影画像データ(以下、単に画像データという。)を、筐体2の側面側に設けられた図示しない入出力インターフェースを通じて、上述したコンソール装置3などの外部装置に出力する。
【0045】
本実施の形態では、支持体20は、センサーパネルSPの下面を、厚さ方向(
図4中の上下方向)および平面方向に隙間なく支持するように構成されている。支持体20は、筐体2とセンサーパネルSPとの間に形成される空間、および筐体2と上述した電子部品との間の空間を略満たすように配置され、かつ、軽量化のための空隙を有している。ここで「軽量化のための空隙」の態様には、(1)支持体20それ自体に空隙が形成されている場合(すなわち支持体20の材質が発泡体(多孔性部材)である場合)と、(2)支持体20が多数の硬質部材の集合であり、かかる硬質部材同士が間隔を開けて配置される場合と、に大別される。なお、一つの支持体が「発泡体」と「硬質部材の集合」の両方を備える構成としてもよい。
図4に示す構成例は、支持体20の全体が発泡体(多孔性部材)の場合(上記(1)の一例)であり、支持体20の材質等については後述する。また、上記(2)の例については、
図7で後述する。
【0046】
図4に示す例では、支持体20は、センサーパネルSPの平面形状と同じまたは若干大きい平面形状を有し、筐体2の底板2AとセンサーパネルSPの裏面(下面)との間の上下方向の空間を充填する(埋める)ように配置されている。
【0047】
機能的な観点からは、支持体20は、センサーパネルSPの裏面に接触してセンサーパネルSPを支持する第1の支持体21と、筐体2の底板2A上に配置され、筐体2内の電子部品(25,26,27)を支持する第2の支持体22と、に大別される。以下、単に支持体20と言う場合は、第1の支持体21と第2の支持体22の両方が含まれ得る。
【0048】
図4に示す例では、支持体20(第1の支持体21および第2の支持体22)は、軽量化のための多数の空隙を備えた多孔質の部材であって、例えば、アクリル、スチレン等、硬質樹脂の発泡体からなる。このような多孔質の部材は、金属等と比較して比重が大幅に小さいことから、FPD1全体の軽量化に寄与することができる。
【0049】
第1の支持体21は、センサーパネルSPよりも若干大きい平面形状を有し、筐体2内でずれないように、第1の支持体21の側部は側板2C,2Dと接触している。また、センサーパネルSPの下面(裏面)と第1の支持体21の上面との間に接着剤が塗布されることにより、センサーパネルSPは、第1の支持体21に固定されている。他方、この例では、センサーパネルSPは、筐体2の上板2Bには固定されていない。第1の支持体21における図中右側の端側には、上述したフレキシブル基板28を通すための長孔が設けられている。
【0050】
第2の支持体22は、センサーパネルSPと略同一の平面形状を有する。このため、
図4に示す例では、第2の支持体22と筐体2の側板2C,2Dとの間に若干の余剰空間があり、この余剰空間に配線などの図示しない他の電子部品が配置できるようになっている。第2の支持体22の上面には、FPD1内に収容される電子部品(
図4の例では電源部25、主回路基板26および回路基板27)の平面形状に対応した形状の凹部(第1凹部)22aが形成されている。
【0051】
他方、第2の支持体22に対向する主回路基板26および回路基板27の下面には、センサーパネルSPが検出したX線の情報を処理しX線画像を生成するための種々の素子が備えられている。このため、第2の支持体22における主回路基板26および回路基板27に対応する第1凹部22aには、これら基板26,27の下面から突出される種々の素子の外形に対応した形状の更なる凹部(素子保護用の第2凹部)が設けられている。以下、
図5Aおよび
図5Bを参照して、主回路基板26用の第1凹部22aに設けられた素子保護用の第2凹部について説明する。
【0052】
図5Aは、主回路基板26に対応する第2の支持体22の第1凹部22a内に構成された、素子保護用の第2凹部22bの一例を示す断面図である。
図5Aに示すように、第2の支持体22は、主回路基板26から突出する素子261,262が挿入される第2凹部22bを備える。ここで、各々の第2凹部22bの深さは、挿入される素子261,262の高さに対応した深さに形成されている。
【0053】
ここで仮に、第2の支持体22における主回路基板26用の第1凹部22aの深さを均一に構成した場合、主回路基板26から突出する各素子261,262によって第2の支持体22が部分的に圧縮され、これら素子261,262に余計な荷重がかかる問題がある。これに対して、
図5Aに示す例では、挿入される素子261,262の高さに応じて第2の支持体22の対応部分の厚さを変えるように素子保護用の第2凹部22bが追加的に形成されている。かかる構成によれば、筐体2に荷重等が加えられた際に、これら素子261,262に過剰な力がかからず、素子261,262の損傷が防止される。
【0054】
図5Bは、主回路基板26に対応する第2の支持体22の第1凹部22aにおける素子保護用の第2凹部22bの他の一例を示す断面図である。
図5Bに示すように、主回路基板26から突出する素子261,262に対応する各々の第2凹部22bは、貫通孔(すなわち中空)の構成としてもよい。このような構成とすることにより、
図5Aの構成と同様の効果が得られ、かつ、
図5Aの構成よりも軽量化が図られる。加えて、発熱量の大きい素子がある場合、当該素子(例えば素子261)が挿入される第2凹部22b(すなわち貫通孔)における中空の余剰空間を利用して、素子261と筐体2の底板2Aとの間に、図示しない伝熱材を配置してもよい。この場合、素子261と底板2Aとが伝熱材を介して熱的に接続され、素子261から出される熱を筐体2(底板2A)から放熱することができる。
【0055】
図5Aおよび
図5Bに示す素子保護用の第2凹部22bは、回路基板27に対しても同様の構成となっており、図示および説明を省略する。
【0056】
上述した第1凹部22aおよび第2凹部22bを備えた第2の支持体22は、少なくとも回路基板26,27における素子が配置されていない領域と筐体2(底板2A)の双方に密接するので、回路基板26,27を均質に支持することができる。このため、本実施の形態によれば、筐体2に加重や衝撃が加わった場合に、従来のような局所的な支持構造(
図3参照)に起因した回路基板26,27の歪みの発生を防止することができ、また、これら回路基板26,27から突出する素子の保護が図られる。
【0057】
次に、FPD1の組み立て方法の一例を説明する。第1の支持体21の上記の長孔にフレキシブル基板28を通し、センサーパネルSPの裏面と第1の支持体21の上面を接着剤で貼り付ける。また、バッテリー25、主回路基板26、回路基板27は、各々、第2の支持体22の対応した凹部に取り付けられることにより、第2の支持体22の上面と略面一の状態になる(
図4参照)。続いて、各部品が取り付けられた第2の支持体22の上面と、センサーパネルSPが固定された第1の支持体21の下面とを位置合わせして、筐体2内に収納する。第2の支持体22の上面と第1の支持体21の下面とを位置合わせする際には、例えば粘着テープ等で仮止めしてもよい。あるいは、第1の支持体21の下面に、第2の支持体22の上面側を埋め込むための凹部を設ける構成としてもよい。さらに他の例として、第2の支持体22の平面形状を第1の支持体21の平面形状と同一にしてもよい。
【0058】
かくして、筐体2内の空間は、
図4の下側から、第2の支持体22、各種の電子部品、第1の支持体21、およびセンサーパネルSPにより満たされ、これらが互いに密接した状態となる。したがって、筐体2内におけるセンサーパネルSPから下方の空間は、厚さ方向に隙間が無くなるように、支持体20により支持される。
【0059】
このように、FPD1では、センサーパネルSPを第1の支持体21の全面で支持し、かつ、回路基板26,27やバッテリー25などの種々の電子部品を第2の支持体22の全面を用いて均質に支持する構成としている。かかる構成により、筐体2に荷重や衝撃が加えられる際に、この外力(
図2Bや
図3Bの矢印参照)は、発泡材からなる支持体20によって程良く吸収され、この結果、センサーパネルSPのたわみや局所的な歪み、さらには回路基板26,27のたわみが抑制される。したがって、本実施の形態によれば、FPD1全体の軽量化を図りながら、局所的なひずみ等に起因したセンサーパネルSPのガラス基板の割れや回路基板26,27上の素子の破損等を防止できる。
【0060】
図4中に示していないが、センサーパネルSPの上面および裏面に導電層(金属の薄膜やITO膜など)を配置して、FPD1の使用時に所定の電位に接続ないし接地することが好ましい。具体的には、使用時に筐体2の外部から加えられた加重の程度によっては、センサーパネルSPのガラス基板の割れには至らないが、センサーパネルSP全体が一時的に若干たわむ場合があり得る。ここで、センサーパネルSPにたわみが生じると、センサーパネルSP内の素子の状態(例えばTFT層と他の帯電層との距離)が変わり、静電容量が変化することで、センサーパネルSPで生成される画像データにノイズが出るなどの影響が生じやすい。したがって、センサーパネルSPに多少のたわみが生じた場合でもセンサーパネルSPで生成される画像データの品質を担保するために、上述した導電層を配置するとよい。
【0061】
また、
図4中に示さないが、センサーパネルSPと回路基板26,27との間には、高透磁率の材質からなる層を設けるとよい。すなわち、
図4に示す構成例では、センサーパネルSPと基板26,27との間に第1の支持体21が介在することにより、センサーパネルSPと基板26,27との距離がある程度確保されている。他方、第1の支持体21の厚さのサイズ等によっては、センサーパネルSPと基板26,27との距離が小さくなる(後述する
図9等も参照)。ここで、センサーパネルSPは、基板26,27との距離が小さくなるほど、回路基板26,27上の素子が動作した際に生じる磁界(磁界変動)の影響を受けやすくなり、生成される画像データにノイズが出るなどの影響が生じやすい。したがって、第1の支持体21の厚さ等に関わらずセンサーパネルSPで生成される画像データの品質を担保するために、センサーパネルSPと基板26,27との間には、高透磁率の材質からなる層を設けることが望ましい。
【0062】
なお、支持体20は、種々の多孔性の素材が適用でき、例えば、硬質樹脂の発泡体、金属の発泡体、セラミックの発泡体であってもよい。
【0063】
或いは、支持体20は、例えばカーボン等を練り込んだ帯電防止性を有するものでもよい。支持体20をこのような材質とした場合、あるいは、支持体20を金属の発泡体とした場合、支持体20が帯電することに起因したノイズ発生等が防止され、FPD1の電気信号に影響が生じることが防止される。
【0064】
また、本発明者らが種々の実験を行った結果、荷重等に対するセンサーパネルSPの耐久性を担保する観点からは、支持体20は、圧縮弾性率が10MPa以上の材質のものが望ましいことが分かった。かかる実験については後述する。
【0065】
(第2の構成例)
図6は、第2の構成例としてのFPD1Aの概略断面図である。以下、
図4で説明した部分については同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0066】
FPD1Aにおいて、支持体20Aは、センサーパネルSPを支持する第1の支持体21Aと、センサーパネルSPの下方に位置する各々の部品を支持する第2の支持体22Aと、を有する。以下、単に支持体20Aと言う場合は、第1の支持体21Aと第2の支持体22Aの両方が含まれ得る。
【0067】
支持体20Aは、軽量化のための多数の空隙を備えた多孔質の部材であって、例えば、アクリル、スチレン等、硬質樹脂の発泡材からなる。
【0068】
第1の支持体21Aの上面は、
図4で上述した構成と同様に、接着剤等によりセンサーパネルSPの裏面に貼り付けられている。
【0069】
第2の支持体22Aは、上述したバッテリー25、回路基板26,27などの各々の電子部品に対応した領域に区分けして配置され、各々、対応した電子部品と略同一の平面形状を有する。すなわち、第2の支持体22Aは、センサーパネルSPの下側に配置される各々の電子部品毎に設けられている。また、回路基板26,27を支持する第2の支持体22Aは、これら回路基板26,27から突出する素子が挿入される素子保護用の第2凹部22b(
図5A,
図5B参照)を備えている。
【0070】
図6に示すように、第1の支持体21Aの下面において第2の支持体22Aが配置されていない領域(すなわち電子部品が配置されていない領域)には、筐体2の底板2A(低面)に当接するように下方に伸びる脚部21aが形成されている。
【0071】
図6に示す第2の構成例も、上述した第1の構成例と同様に、センサーパネルSPを第1の支持体21Aの全面で支持している。また、回路基板26,27やバッテリー25などの種々の部品は、対応して配置された各々の第2の支持体22Aの全面を用いて均質に支持される。したがって、第2の構成例も、第1の構成例と同様の効果が得られる。
【0072】
(第3の構成例)
図7は、第3の構成例としてのFPD1Bの概略断面図である。
【0073】
第3の構成例におけるFPD1Bは、センサーパネルSPを支持する第1の支持体21Aと、センサーパネルSPの下方に位置する各々の電子部品を支持する第2の支持体22Bと、を有する。このうち、第1の支持体21Aは、
図6で上述したものと同一の構成である。また、第2の支持体22Bは、
図6の例と同様に、電子部品(25,26,27)毎に設けられている。
【0074】
他方、第2の支持体22Bは、上述したバッテリー25、回路基板26,27などの各々の部品に対応した領域に配置された、複数の支持部材220からなる。これら支持部材220は、第1の支持体21Aよりも硬質の部材であり、支持部材220の材質は、例えば樹脂である。また、各々の支持部材220は、第2の支持体22B全体としての軽量化を図るための空隙を有するように、筐体2の底板21A上(すなわち平面方向)に隙間を有するように配置されている。
【0075】
図7に示す例では、各々の支持部材220は、互いに同一の高さを有する柱状の部材であり、予め定められた距離による隙間ないし間隔(ピッチ)で、底板2Aと各々の部品との間に配置されている。かかる支持部材220間の間隔は、予め定められた値以下の間隔であり、具体的には、筐体2に外力が加えられた場合に、対応する部品に局所的な歪みが発生しない程度の間隔、この例では60mm以下の間隔に設定されている。また、第2の支持体22Bの全体の重量を出来るだけ軽くするために、各々の支持部材220は、30mm以上の間隔で配置されている。さらに、回路基板26,27の領域にある各々の支持部材220は、回路基板26,27から突出する素子と干渉しない位置に設けられている。各々の支持部材220の上面は、例えば接着剤により、対応する電子部品(バッテリー25,回路基板26,27)の下面に固定される。或いはこの逆に、各々の支持部材220の下面が筐体2の底板2Aに固定されてもよい。
【0076】
このような構成とされたFPD1Bによれば、回路基板26,27やバッテリー25などの種々の電子部品は、対応して配置された各々の支持部材220によって均質に支持され、
図3で上述したような局所的な支持構造に起因した電子部品の歪みを防止することができる。また、この構成例も、上述した第1および第2の構成例と同様に、センサーパネルSPは第1の支持体21Aの全面で支持される。したがって、第3の構成例も、第1の構成例と同様の効果が得られる。
【0077】
なお、支持部材220の平面形状(柱形状)は特に制限されるものではなく、例えば、円形、矩形、6角形などの種々の形状とすることができ、さらには、中空の筒状体としてもよい。また、各々の支持部材220の配置の態様も任意であり、例えば、格子状に配置することができ、あるいはハニカム状に配置してもよい。
【0078】
図7に示す第3の構成例では、第1の支持体21Aを多孔質の部材(発泡材)で形成し、第2の支持体22Bを構成する各々の支持部材220を、第1の支持体21Aよりも硬質の部材で形成した。この第3の構成例に関しては、種々の変形例があり得る。例えば、第2の支持体22Bの構成につき、バッテリー25または主回路基板26または回路基板27を支持する部材を、
図6に示す構成とする、すなわち多孔質の部材(発泡体)で形成してもよい。さらに、第1の支持体21Aの一部を、多孔質の部材(発泡材)よりも硬質の部材で形成してもよい。
【0079】
或いは、第1の支持体21Aを上下方向に積層された複数の層状とし、各層を、互いに異なる材質の発泡体で構成してもよい。
【0080】
上述した第1から第3の構成例では、筐体2内の種々の部品を、支持体20(20A,20B)に固定させ、筐体2(上板2Bまたは底板2A)に対しては固定させない場合を前提として説明した。他方、第1~第3の構成例において、センサーパネルSPを筐体2の上板2B(内面)に固定してもよい。この場合、例えば両面テープや接着剤等を用いて、センサーパネルSPの上面と筐体2の上板2Bとを接着する。かかる構成により、筐体2に外部からの衝撃が加えられた場合でも、センサーパネルSPが筐体2の側板2Cまたは側板2Dに衝突してダメージを受ける等の問題を防止することができる。
【0081】
以下に説明する構成例は、筐体2内に収容される全ての部品(支持体や緩衝材なども含めた全部品の構築体。以下、「内部モジュール」と総称する。)の移動を抑制するために、内部モジュールの構成部品を上板2B側または底板2A側に固定させる構造としている。
【0082】
(第4の構成例)
図8は、第4の構成例としてのFPD1Cの概略断面図である。第4の構成例では、支持体20は、
図4で上述した第1の構成例と同様の第1の支持体21および第2の支持体22を備える。他方、
図8に示すように、第4の構成例におけるFPD1Cでは、センサーパネルSPの上面と筐体2の上板2Bとの間に、緩衝材30が配置されている。緩衝材30は、放射線を透過する材質のものであれば特に制限されず、例えば発泡シート、気泡緩衝材(エアークッション)、巻き段ボールなど、種々のものを用いることができる。
【0083】
緩衝材30の両面(上面および下面)は、接着剤や両面テープ等の固定層により、筐体2の上板2BおよびセンサーパネルSPの上面に固定されている。すなわち、筐体2の上板2Bと緩衝材30の上面との間には固定層31が設けられ、緩衝材30の下面とセンサーパネルSPの上面との間には固定層32が設けられている。また、上述した第1の構成例と同様に、センサーパネルSPの裏面は、接着剤により第1の支持体21の上面に固定されている。
【0084】
上記のような構成とすることにより、上述した第1~第3の構成例と同様の効果を得られ、さらには、内部モジュールの移動を抑制し、センサーパネルSPに対する保護の強化を図ることができる。
【0085】
具体的には、第4の構成例では、センサーパネルSPの下面(裏面)および上面(被照射面)が支持体20の上面および緩衝材30の下面に固定され、センサーパネルSPが筐体2内で支持体20と緩衝材30との間で挟まれるように保持されている。このため、センサーパネルSPは、筐体2の上板2B、側板2C,2Dのいずれにも直接接触せず、かつ、緩衝材30を介して上板2Bに固定される。
【0086】
かかる構成により、上下方向からの大きな加重や強い衝撃が加えられた場合にも、当該力が緩衝材30で吸収ないし緩和されるため、センサーパネルSPに対する保護の強化が図られる。また、例えばFPD1Cが側板2C(または2D)側から落下するなどして、センサーパネルSPの面と平行方向の衝撃が加えられた場合でも、センサーパネルSPが筐体2内で移動して側板2Cまたは側板2Dに衝突することを防止することができる。
【0087】
なお、第1~第3の構成例において、例えば両面テープを用いて筐体2の上板2BとセンサーパネルSPの上面とを接着する場合、上板2BやセンサーパネルSPに反りやうねりなどがあると、上板2BとセンサーパネルSPの接触面の状態ひいては接着の状態が不均一になる可能性がある。これに対し、第4の構成例では、筐体2の上板2BとセンサーパネルSPの上面との間に緩衝材30を介在させるので、上板2BやセンサーパネルSPに反りやうねりなどがある場合でも、当該反りやうねりなどによる両面間の距離の不均一を緩衝材30によって吸収することができる。したがって、第4の構成例によれば、筐体2の上板2Bと緩衝材30の上面、緩衝材30の下面とセンサーパネルSPの下面と、を固定層31,32により各々均一に接着することができ、かつ、緩衝材30の介在により、荷重や衝撃等に対するセンサーパネルSP(ガラス基板等)の保護強化が図られる。総じて、第4の構成例では、センサーパネルSPに対する保護の強化を図り、かつ、筐体2内の全ての部品(内部モジュール)の移動を抑制することができる。
【0088】
(第5の構成例)
図9は、第5の構成例としてのFPD1Dの概略断面図である。
図8と比較して分かるように、
図9に示す第5の構成例は、
図8で上述した第4の構成例から第1の支持体21を除去した構造である。第5の構成例では、センサーパネルSPの裏面に対して、回路基板26,27やバッテリー25などの電子部品が接触しており、センサーパネルSPを含めた筐体2内の各部品が第2の支持体22により支持される構造となっている。このような構成とすることにより、装置全体のさらなる軽量化を図ることができる。
【0089】
他方、第5の構成例では、センサーパネルSPと他の電子部品との距離が近くなるため、回路基板26,27上の素子が動作した際に生じる磁界(磁界変動)の影響を受けやすくなる。このため、センサーパネルSPと基板26,27との間には、高透磁率の材質からなる層を設けることが望ましい。
【0090】
上述した第4および第5の構成例では、筐体2の上板2BとセンサーパネルSPの上面との間に緩衝材30を介在させる構成とした。他の例として、緩衝材30を使用せず、筐体2の上板2B自体に緩衝材としての機能を持たせる構成としてもよい。このような構成としては、筐体2の上板2Bを、複数の板材が積層された積層構造とし、その内の一つの層、例えば曝射面Rの層を、上述したような発泡材で形成する。さらには、筐体2の底板2Aや側板2C(2D)を、発泡材を使用した同様の積層構造としてもよい。かかる構成とすることにより、外部から筐体2に加えられた加重や衝撃を、筐体2自体で緩和することができ、センサーパネルSPや回路基板26,27等の保護の強化を図ることができる。
【0091】
(第6の構成例)
図10は、第6の構成例としてのFPD1Eの概略断面図である。
図8と比較して分かるように、第6の構成例では、緩衝材30の両面に固定層(31,32)がなく、緩衝材30はセンサーパネルSPおよび筐体2(上板2B)のいずれにも固定(接着)されていない。他方、第6の構成例では、筐体2の底板2Bと第2の支持体22の下面との間に、接着剤や両面テープ等による固定層33が設けられており、第2の支持体22は、筐体2における放射線が照射される面と反対側の面である底板2Bの内壁に固定されている。すなわち、第4および第5の構成例(
図8および
図9参照)は、筐体2内の内部モジュールを曝射面R側の面に固定(保持)させた構造であり、これに対し、
図10に示す第6の構成例は、筐体2内の内部モジュールを、支持体20を通じて曝射面Rの反対側の面に固定(保持)させた構造となっている。かかる第6の構成例によれば、第4の構成例の場合と同様の効果が得られる。
【0092】
また、上記のように、筐体2に収容される各部品を一体化した内部モジュールを構成し、かかる内部モジュールを筐体2内で移動しないように収容する構成とした場合、筐体2の上面2Bの剛性を従来よりも低くしても良いことが分かった。したがって、筐体2の上面2Bの軽量化を図ることにより、さらなる軽量化やコストダウンを図ることができる。
【0093】
第6の構成例では、接着剤や両面テープ等による固定層33を用いて筐体2の底板2Aと支持体20(第2の支持体22)とを固定する構成としたが、他にも種々の変形例が考えられる。例えば、第2の支持体22の下面を
図8に示すような平面形状とせず、下面から一つ以上の凸部が突出する形状とし、筐体2の底板2Aの対応位置に上記凸部が係合する凹部を設けて、これら凸部および凹部の係合による固定構造としてもよい。或いは、第2の支持体22の下面に凹部を設け、筐体2の底板2Aの対応位置に上記凹部が係合する凸部を設けてもよい。
【0094】
上述した各構成例は、目的等に応じて任意に組み合わせることができる。
【0095】
[実施例]
以下、本発明者らが行った効果確認のための実験例について説明する。
【0096】
本発明者らは、
図4に示す第1の構成例に従ったFPD1について、支持体20(第1の支持体21および第2の支持体22)の圧縮弾性率を変えて筐体2に衝撃を加え、センサーパネルSPのガラス基板の割れが発生するか否かについて実験およびシミュレーション(推定)を行った。なお、筐体2の厚みは、JISに準拠して16mm以内とした。かかる検査結果を
図11中に表で示す。
【0097】
図11中の表に示されるように、支持体20の圧縮弾性率を63MPa、29.3MPa、および10MPaとした場合には、センサーパネルSPのガラス基板の割れは発生せず、支持体20の圧縮弾性率を7.4MPa、2MPaとした場合にはガラス基板の割れが発生した。この結果、支持体20の材質(素材)は、圧縮弾性率が10MPa以上のものが望ましいことが分かった。
【0098】
以上のように、本実施の形態によれば、センサーパネルSPおよび種々の電子部品を支持するための支持体20(20A,20B)を、空隙を有する低密度の部材としたので、支持体ひいてはFPD全体の軽量化を実現できる。また、本実施の形態による支持体20(20A,20B)は、センサーパネルSPの下面を、厚さ方向および平面方向に隙間なく支持するように構成されているので、荷重や衝撃等に対するセンサーパネルSPの保護の強化(耐性の向上)が図られる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、センサーパネルSPおよび種々の電子部品を広い面積で均一に支持する構成としているので、筐体2に加えられる加重や衝撃等の負荷に対して、筐体2の内部の部品に局所的な歪みが生じることが防止ないし抑制される。したがって、本実施の形態によれば、加重や衝撃等の負荷に対して、センサーパネルSPのガラス基板の割れや回路基板26,27の破損が有効に防止される。さらに、本実施の形態によれば、第2の支持体22に素子保護用の凹部が設けられているので、加重や衝撃等の負荷に対して、回路基板26,27上の素子のダメージが防止ないし抑制される。
【0100】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
100 X線撮影システム
1,1A~1E FPD(放射線画像撮影装置)
2 筐体
2A 底板
2B 上板
2C,2D 側板
20,20A,20B 支持体
21,21A 第1の支持体
21a 脚部
22,22A,22B 第2の支持体
22a 第1凹部
22b 第2凹部
220 支持部材
25 バッテリー
26,27 回路基板
261,262 素子
30 緩衝材
31,32,33 固定層
SP センサーパネル
S 被写体