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特許7010181コイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機
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  • 特許-コイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】コイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20220119BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H02K3/18 P
H02K3/04 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018168093
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020043656
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】影山 翔
(72)【発明者】
【氏名】村井 和也
(72)【発明者】
【氏名】田崎 一晃
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2756358(US,A)
【文献】実公昭32-001315(JP,Y1)
【文献】実開昭58-063856(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/18
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板形状をなす複数の第一の平角導体が螺旋状をなすように周縁端面を接続されると共に、当該第一の平角導体よりも広幅の板形状をなす複数の第二の平角導体が所定の周回ごとに介在して螺旋状をなすように周縁端面を接続されることにより、当該第一の平角導体よりも螺旋形状外側へ先端面を突出させたフィン部が当該第二の平角導体に設けられるコイルにおいて、
前記第一の平角導体の周縁端面と前記第二の平角導体の前記フィン部の先端面と直交する一方の周縁端面との間が、当該第一の平角導体と同じ幅をなすと共に当該第二の平角導体の当該フィン部の先端面と直交する当該一方の周縁端面の全面にわたって当接する板形状をなす第三の平角導体で接続されている
ことを特徴とするコイル。
【請求項2】
環状をなすヨーク部の周面に径方向へ突出するティース部を周方向へ複数形成したロータコアの当該ティース部に請求項1に記載のコイルが装着されている
ことを特徴とするロータ。
【請求項3】
環状をなすヨーク部の周面に径方向へ突出するティース部を周方向へ複数形成したロータコアの当該ティース部に請求項1に記載のコイルが装着されている回転可能なロータと、
前記ロータと同軸をなして配設された環状をなすステータと
を備えていることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータにおいては、環状をなすヨーク部の外周面に径方向へ突出するティース部を周方向へ複数形成したロータコアに対して、板形状をなす複数の平角導体を螺旋状に接続したコイルを上記ティース部へそれぞれ装着したロータが利用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このようなロータにおいては、コイルの冷却効率を高めるため、広幅の平角導体を途中で介在させることにより、螺旋形状外側へ突出するフィン部をコイルに設けるようにしている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0004】
具体的には、例えば、表面を絶縁処理された標準幅の第一の平角導体11,12をろう付け等で螺旋状に交互に接続していき、所定の周回目になったら、表面を絶縁処理されて第一の平角導体11,12よりも広幅の第二の平角導体13,14を螺旋形状外側へ突出させるようにろう付け等で引き続き螺旋状に交互に接続し、1周したところで標準幅の第一の平角導体11,12をろう付け等で再び螺旋状に交互に接続し、以下、これを所定回数繰り返して広幅の第二の平角導体13,14を所定の周回目ごとに介在させるように当該平角導体11~14の周縁端面を接続することにより、螺旋形状外側へ先端面13aa,14aaを突出させた第二の平角導体13,14のフィン部13a,14aを所定の間隔ごとに設けたコイルを構成している(図5,6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-178052号公報
【文献】実開昭61-185240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような従来のコイルでは、所定の周回目ごとに螺旋形状外側へ先端面14aaを突出させたフィン部14aを構成するように、標準幅の第一の平角導体12の周縁端面(基端面)に対して、広幅の第二の平角導体14の当該フィン部14aの先端面14aaと直交する一方の周縁端面(側端面)14abを接続することから、広幅の第二の平角導体14のフィン部14aと標準幅の第一の平角導体12との間に段差Dを生じている。
【0007】
このため、前記コイルにおいては、標準幅の第一の平角導体12に広幅の第二の平角導体14を接続するときに、前記段差Dを規定通りの大きさに揃えるように専用の治具を使用する必要があるため、製造に手間がかかってしまうものであった。
【0008】
このような問題は、板形状をなす複数の第一の平角導体が螺旋状をなすように周縁端面を接続されると共に、第一の平角導体よりも広幅の板形状をなす複数の第二の平角導体が所定の周回ごとに介在して螺旋状をなすように周縁端面を接続されることにより、第一の平角導体よりも螺旋形状外側へ先端面を突出させたフィン部が第二の平角導体に設けられるコイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機であれば、上述と同様に起こり得ることである。
【0009】
このようなことから、本発明は、製造を容易に行うことができるコイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するための、本発明に係るコイルは、板形状をなす複数の第一の平角導体が螺旋状をなすように周縁端面を接続されると共に、当該第一の平角導体よりも広幅の板形状をなす複数の第二の平角導体が所定の周回ごとに介在して螺旋状をなすように周縁端面を接続されることにより、当該第一の平角導体よりも螺旋形状外側へ先端面を突出させたフィン部が当該第二の平角導体に設けられるコイルにおいて、前記第一の平角導体の周縁端面と前記第二の平角導体の前記フィン部の先端面と直交する一方の周縁端面との間が、当該第一の平角導体と同じ幅をなすと共に当該第二の平角導体の当該フィン部の先端面と直交する当該一方の周縁端面の全面にわたって当接する板形状をなす第三の平角導体で接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係るロータは、環状をなすヨーク部の周面に径方向へ突出するティース部を周方向へ複数形成したロータコアの当該ティース部に本発明に係るコイルが装着されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る回転電機は、環状をなすヨーク部の周面に径方向へ突出するティース部を周方向へ複数形成したロータコアの当該ティース部に本発明に係るコイルが装着されている回転可能なロータと、前記ロータと同軸をなして配設された環状をなすステータとを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコイルによれば、第一の平角導体の周縁端面と第二の平角導体のフィン部の先端面と直交する一方の周縁端面との間が第三の平角導体で接続されていることから、第二の平角導体の先端面と第三の平角導体とを揃えて接合することが、専用の治具がなくても容易にできるので、手間をかけることなく容易に製造することができる。
【0014】
このため、本発明に係るコイルを利用するロータ並びに回転電機においても、手間をかけることなく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るコイルをモータのロータに適用した場合の主な実施形態の要部の抽出拡大図である。
図2図1のコイルの平面図である。
図3図2の矢線 III部の抽出拡大図である。
図4図3の斜視図である。
図5】モータのロータに適用される従来のコイルの一例の要部抽出拡大図である。
図6図5の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るコイルの実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
〈主な実施形態〉
本発明に係るコイルをモータのロータに適用した場合の主な実施形態を図1~4に基づいて説明する。
【0018】
図1において、100はロータ、120はステータである。
【0019】
ステータ120は、環状をなして配設され、回転可能に支持された環状をなすロータ100が内部に同軸をなして配設されている。
【0020】
ロータ100は、環状をなすヨーク部101aの外周面に径方向へ突出するティース部101bを周方向へ沿って複数形成したロータコア101と、ロータコア101のティース部101bの径方向外側端部と内側端部とに鍔形に突出するように対をなして設けられたフランジ部材102と、ロータコア101のティース部101bに装着され、対をなすフランジ部材102の間で挟持されたコイル110とを備えている。
【0021】
コイル110は、図1~4に示すように、表面を絶縁処理された板形状をなす標準幅の短辺用の第一の平角導体111と、表面を絶縁処理された板形状をなす標準幅の長辺用の第一の平角導体112と、表面を絶縁処理されて前記第一の平角導体111と同じ長さを有するものの当該第一の平角導体111よりも幅の広い板形状をなす広幅の短辺用の第二の平角導体113と、表面を絶縁処理されて前記第一の平角導体112と同じ長さを有するものの当該第一の平角導体112よりも幅の広い板形状をなす広幅の長辺用の第二の平角導体114と、表面を絶縁処理されて前記第一の平角導体111,112と同じ幅をなすものの前記標準幅と前記広幅との差分の大きさだけ短辺用の第一の平角導体111の長さよりも長い拡長の短辺用の第三の平角導体115とをろう付け等で規定の順に長方形状で組んで螺旋状に接続したものである。
【0022】
具体的には、例えば、標準幅の短辺用の第一の平角導体111の長さ方向一方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、標準幅の長辺用の第一の平角導体112の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続し、この第一の平角導体112の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、標準幅の短辺用の新たな第一の平角導体111の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続し、この第一の平角導体111の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、標準幅の長辺用の新たな第一の平角導体112の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続し、以下、これを繰り返して標準幅の短辺用の第一の平角導体111と長辺用の第一の平角導体112とを螺旋状に順次接続して長方形状に組み付けていく。
【0023】
そして、所定の周回目(例えば4周回目)を終えると、最後に接続した標準幅の長辺用の第一の平角導体112の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、拡長の短辺用の第三の平角導体115の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続し、この第三の平角導体115の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、広幅の長辺用の第二の平角導体114の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続する。
【0024】
続いて、上記第二の平角導体114の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、広幅の短辺用の第二の平角導体113の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続し、この第二の平角導体113の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、広幅の長辺用の新たな第二の平角導体114の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続し、この第二の平角導体114の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、広幅の短辺用の新たな第二の平角導体113の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続することにより、広幅の短辺用及び長辺用の第二の平角導体113,114を1周回させて螺旋形状外側へ先端面113aa,114aaを突出させたフィン部113a,114aを所定の周回目(例えば5周目)に形成する。
【0025】
このようにして広幅の短辺用及び長辺用の第二の平角導体113,114を1周回させたら、最後に接続した広幅の短辺用の第二の平角導体113の長さ方向他方端側の周縁端面である長辺端面(基端面)に、標準幅の長辺用の第一の平角導体112の長さ方向一方端側の周縁端面である短辺端面(側端面)を接続する。
【0026】
以下、標準幅の第一の平角導体111,112を交互に接続することを所定の周回行った後、拡長の短辺用の第三の平角導体115を接続してから広幅の第二の平角導体113,114を交互に1周回接続することを繰り返し行うことにより、コイル110が構成される。
【0027】
つまり、本実施形態に係るコイル110においては、標準幅の長辺用の第一の平角導体112の基端面(周縁端面)と広幅の長辺用の第二の平角導体114のフィン部114aの先端面114aaと直交する一方の側端面(周縁端面)114abとの間を、標準幅の短辺用の第一の平角導体111と同じ幅(標準幅)をなすと共に広幅の長辺用の第二の平角導体114のフィン部114aの先端面114aaと直交する一方の側端面(周縁端面)114abの全面にわたって当接する周縁端面である基端面(長辺端面)115abを有する板形状をなす拡長の短辺用の第三の平角導体115で接続するようにしたのである。
【0028】
このため、本実施形態に係るコイル110では、拡長の短辺用の第三の平角導体115の長さ方向他端側の周縁端面である側端面(短辺端面)115aaが、広幅の長辺用の第二の平角導体114のフィン部114aの先端面114aaと面一となるように螺旋形状外側へ突出して、第三の平角導体115の長さ方向他端側に上記第二の平角導体114のフィン部114aと一体的に連続するフィン部115aが形成される。
【0029】
したがって、本実施形態に係るコイル110によれば、第二の平角導体114の先端面114aaと第三の平角導体115の側端面115aaとを揃えて接合することが、専用の治具がなくても容易にできるので、手間をかけることなく容易に製造することができる。
【0030】
また、第三の平角導体115の長さ方向他端側にもフィン部115aを形成するようにしたので、冷却面積を増加させることができ、冷却性能を向上させることができる。
【0031】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、短辺用の平角導体111,113,115の基端面(長辺端面)を長辺用の平角導体112,114の側端面(短辺端面)に接続し、長辺用の平角導体112,114の基端面(長辺端面)を短辺用の平角導体111,113,115の基端面(長辺端面)に接続することによりコイル110を構成するようにしたが、他の実施形態として、例えば、短辺用の平角導体の長さ方向両端側の側端面(短辺端面)を長辺用の平角導体の基端面(長辺端面)に接続することや、長辺用の平角導体の長さ方向両端側の側端面(短辺端面)を短辺用の平角導体の基端面(長辺端面)に接続することによりコイルを構成するようにすることも可能である。
【0032】
また、前述した実施形態においては、短辺用の平角導体と長辺用の平角導体とを螺旋状に接続して長方形状に組み付けたコイルの場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、長さが等しい平角導体を螺旋状に接続して正方形状に組み付けたコイルの場合であっても、前述した実施形態の場合と同様に適用することができる。
【0033】
また、前述した実施形態においては、モータに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、発電機等を含めた回転電機であれば、前述した実施形態の場合と同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るコイル及びこれを利用するロータ並びに回転電機は、手間をかけることなく容易に製造することができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100 ロータ
101 ロータコア
101a ヨーク部
101b ティース部
102 フランジ部材
110 コイル
111 第一の平角導体(標準幅・短辺用)
112 第一の平角導体(標準幅・長辺用)
113 第二の平角導体(広幅・短辺用)
113a フィン部
113aa 先端面
114 第二の平角導体(広幅・長辺用)
114a フィン部
114aa 先端面
114ab 側端面
115 第三の平角導体
115a フィン部
115aa 側端面
115ab 基端面
120 ステータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6