(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】車両の電源システムの制御方法、車両の電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20220119BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220119BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20220119BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20220119BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20220119BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
H02J7/00 A
H02J7/14 H
H02J7/14 V
H02H7/18
B60R16/03 A
B60R16/033 P
(21)【出願番号】P 2018181900
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018173446
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-86506(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/36
H02H 7/18
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60R 16/03
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電源システムの制御方法であって、
車両負荷に対して接続された第1蓄電部の電圧を検出するステップと、
前記第1蓄電部に対して並列に接続される第2蓄電部の電圧を検出するステップと、
前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記第1蓄電部の電流を遮断する第1電流遮断装置と前記第2蓄電部の電流を遮断する第2電流遮断装置の双方をCLOSEするステップと、を含む、車両の電源システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の電源システムの制御方法であって、
前記第1蓄電部と前記第2蓄電部のうち一方の蓄電部が過充電である場合、過充電に至った前記一方の前記蓄電部の電流遮断装置はOPENし、過充電に至っていない他方の蓄電部の電流遮断装置はCLOSEに維持するステップを含む、車両の電源システムの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の電源システムの制御方法であって、
前記他方の前記蓄電部が過充電になった場合、前記一方の前記蓄電部の前記電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換え、前記他方の前記蓄電部の前記電流遮断装置はCLOSEを維持するステップを含む、車両の電源システムの制御方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両の電源システムの制御方法であって、
前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記車両に停車を要求する警告ステップを含む、車両の電源システムの制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の電源システムの制御方法であって、
前記車両の停車後、エンジンが停止した場合、前記第1電流遮断装置と前記第2電流遮断装置の双方をOPENして前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の使用を禁止するステップを含む、車両の電源システムの制御方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の車両の電源システムの制御方法であって、
過充電後、前記第1蓄電部又は前記第2蓄電部の充電電気量が限界電気量を超えた場合、対応する電流遮断装置をOPENして限界電気量を超えた蓄電部の電流を遮断するステップを含む、車両の電源システムの制御方法。
【請求項7】
車両の電源システムであって、
車両負荷に対して接続された第1蓄電部と、
前記第1蓄電部の電流を遮断する第1電流遮断装置と、
前記第1蓄電部に対して並列に接続された第2蓄電部と、
前記第2蓄電部の電流を遮断する第2電流遮断装置と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記第1電流遮断装置と前記第2電流遮断装置の双方をCLOSEする、車両の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各自動車メーカーにおいて、自動ブレーキシステムや自動運転技術の開発が盛んに行われている。このような車両の電化の流れは、車両の電源装置の重要性を一段と増加させている。車両の電源としては、鉛バッテリ1個とオルタネータによる電源供給が現在も主流である。バッテリが突然故障したり、外部端子に接続されたハーネスが外れたりすると、車両に対する電力供給が途絶える場合があることから、バッテリを2つ並列に接続して冗長性を持たせることが求められていた。下記文献1には、車両用電源装置を、制御装置と、電気負荷と、メインリレーと、スタータと、オルタネータと、鉛蓄電池と、ニッケル水素充電池などを含んで構成する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリは、安全性を確保するため、過充電時に電流を遮断する電流遮断装置を設けている場合がある。2つのバッテリを並列に接続する電源システムでは、2つのバッテリのうち一方のバッテリが過充電になった場合、一方のバッテリの電流を遮断しても、もう一方のバッテリで、車両への電力供給を継続することが可能である。
しかしながら、一方のバッテリの電流遮断後に充電が継続する場合、もう一方のバッテリの電圧が上昇する。もう一方のバッテリが過充電になった時点で電流を遮断すると、2つのバッテリとも遮断された状態となり、車両への電力供給が途絶える。
2つのバッテリが過充電になった場合でも、車両が安全に停止できるまでの時間を確保することが望ましく、対策が求められていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、並列に接続された2つのバッテリが過充電になった場合、車両が安全に停止できるまでの時間を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
車両の電源システムの制御方法は、車両負荷に対して接続された第1蓄電部の電圧を検出するステップと、前記第1蓄電部に対して並列に接続される第2蓄電部の電圧を検出するステップと、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記第1蓄電部の電流を遮断する第1電流遮断装置と前記第2蓄電部の電流を遮断する第2電流遮断装置の双方をCLOSEするステップと、を含む。
【0007】
車両の電源システムは、車両負荷に対して接続された第1蓄電部と、前記第1蓄電部の電流を遮断する第1電流遮断装置と、前記第1蓄電部に対して並列に接続された第2蓄電部と、前記第2蓄電部の電流を遮断する第2電流遮断装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記第1電流遮断装置と前記第2電流遮断装置の双方をCLOSEする。
【発明の効果】
【0008】
並列に接続された2つの蓄電部が過充電になった場合、車両が安全に停止できるまでの時間を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図8】実施形態2における電源システムの充電制御のシーケンス図
【
図9】実施形態3における電源システムのブロック図
【
図10】実施形態4における充電電気量Qの制限処理のフローチャート
【
図11】他の実施形態における電源システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
車両の電源システムの制御方法は、車両負荷に対して接続された第1蓄電部の電圧を検出するステップと、前記第1蓄電部に対して並列に接続される第2蓄電部の電圧を検出するステップと、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記第1蓄電部の電流を遮断する第1電流遮断装置と前記第2蓄電部の電流を遮断する第2電流遮断装置の双方をCLOSEするステップと、を含む。
【0011】
蓄電部が過充電になると、電流遮断装置をOPENして電流を遮断することで、蓄電部の安全性を確保する考え方が一般的であった。この方法では、電流遮断により蓄電部の安全性を確保する従来の発想を逆にして、第1蓄電部と第2蓄電部の双方が過充電である場合、第1電流遮断装置と第2電流遮断装置をCLOSEする。電流遮断装置をCLOSEすることで、過充電後も、第1蓄電部と第2蓄電部は車両に接続された状態になることから、車両の急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。第1電流遮断装置と第2電流遮断装置の双方をCLOSEすることで、過充電後に充電が継続した場合、充電電流を2つの蓄電部で分担して受け入れることが出来る。充電電流を2つの蓄電部で分担して受け入れることで、一方の蓄電部だけで、充電電流を受ける場合に比べて、第1蓄電部及び第2蓄電部の電圧上昇が遅くなる。そのため、第1蓄電部、第2蓄電部が電池性能を失う電圧に到達するまでの時間が長くなるため、車両が安全に停止できるまでの時間を確保することが出来る。
【0012】
電源システムの制御方法は、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部のうち一方の蓄電部が過充電である場合、過充電に至った前記一方の前記蓄電部の電流遮断装置はOPENし、過充電に至っていない他方の蓄電部の電流遮断装置はCLOSEに維持してもよい。
【0013】
この方法では、一方の蓄電部が遮断された以降も、他方の蓄電部は車両との接続を維持することが出来る。車両との接続を維持することにより、過充電に至っていない他方の蓄電部で、充電を継続することが出来る。
【0014】
電源システムの制御方法は、前記他方の前記蓄電部が過充電になった場合、前記一方の前記蓄電部の前記電流遮断装置をOPENからCLOSEに切り換え、前記他方の前記蓄電部の前記電流遮断装置はCLOSEを維持するステップを含んでいてもよい。
【0015】
この方法では、2つの蓄電部が過充電になった以降も、蓄電部は車両との接続を維持することから、車両の急な負荷変動に対する電源供給に備えることが出来る。2つの蓄電部が過充電になった以降、充電電流は2つの蓄電部が分担して受け入れるため、蓄電部の電圧上昇を抑えることが出来、車両が安全に停止できるまでの時間を確保することが出来る。
【0016】
電源システムの制御方法は、更に、前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記車両に停車を要求する警告ステップを含んでいてもよい。
【0017】
この方法では、2つの蓄電部が過充電になった以降、ドライバーが異常に気付かず走行を続けることを抑制し、ドライバーに車両の停車を促すことが出来る。
【0018】
電源システムの制御方法は、更に、前記車両の停車後、エンジンが停止した場合、前記第1電流遮断装置と前記第2電流遮断装置の双方をOPENして前記第1蓄電部と前記第2蓄電部の使用を禁止するステップを含んでもよい。
【0019】
この方法では、2つの蓄電部が過充電になった以降も、蓄電部と車両の接続を維持することにより車両が安全に停止するまでの時間を確保しつつ、車両停車後、エンジンが停止した以降は、過充電となった第1蓄電部及び第2蓄電部の使用を禁止できる。
【0020】
電源システムの制御方法は、過充電後、前記第1蓄電部又は前記第2蓄電部の充電電気量が限界電気量を超えた場合、対応する電流遮断装置をOPENして限界電気量を超えた蓄電部の電流を遮断するステップを含んでもよい。
【0021】
この方法では、過充電後、充電電気量が限界電気量を超えると、電流を遮断するので、蓄電部が限界電気量を超えて充電されることを抑制できる。限界電気量を、蓄電部が電池性能を維持可能な範囲に定めることで、充電により、蓄電部が電池性能を失うことを抑制できる。
【0022】
<実施形態1>
1.車両の電源システム30の説明
図1に示すように、車両10はエンジン駆動車であり、セルモータ等のエンジン始動装置21、電源システム30を備えている。
図1は省略してあるが、車両1には、エンジン始動装置21以外に、車両発電機であるオルタネータ23、電気負荷25が搭載されている。電気負荷25は、定格12Vであり、エアコン、オーディオ、カーナビゲーションなどを例示することができる。
【0023】
図2は車両の電源システム30の電気的構成を示すブロック図である。
電源システム30は、第1バッテリ50Aと、第2バッテリ50Bと、車両ECU(電子制御装置:Electronic Control Unit)31と、DC-DCコンバータ35を含んで構成されている。車両ECU31は制御部の一例である。
【0024】
第1バッテリ50Aは、第1電流遮断装置53A、第1組電池60A、第1管理装置100Aを含み、第2バッテリ50Bは、第2電流遮断装置53B、第2組電池60B、第2管理装置100Bを含む。第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bは、定格12Vである。第1組電池60Aが第1蓄電部の一例、第2組電池60Bが第2蓄電部の一例である。
【0025】
第1バッテリ50Aは、電力線37に接続されている。第1バッテリ50Aには、電力線37を介して、エンジン始動装置21、オルタネータ23、電気負荷25が接続されている。エンジン始動装置21、電気負荷25は車両負荷の一例である。
【0026】
第2バッテリ50Bは、DC-DCコンバータ35を介して第1バッテリ50Aに対して接続されている。DC-DCコンバータ35は、第2バッテリ50Bに対する充電と放電を制御可能な双方向のDC-DCコンバータである。DC-DCコンバータ35は、第2バッテリ50Bの充放電を制御する調整装置である。調整装置はDC-DCコンバータ以外でもよい。
【0027】
車両ECU31は、第1バッテリ50A、第2バッテリ50B、及びDC-DCコンバータ35と通信可能に接続されている。車両ECU31は、電源システム30の制御部であり、CPU32と、メモリ33を備える。車両ECU31は、各バッテリ50A、50Bから監視データを一定周期で受信する。CPU32は、バッテリ50A、50Bの状態に応じて、DC-DCコンバータ35を制御することで、バッテリ50A、50Bの充放電制御を行う。メモリ33は、充放電制御を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0028】
車両ECU31は、車両10のエンジン(駆動装置)を制御する他の車両ECUから、エンジンの動作状態や車両10の走行状態の情報を得ることが出来る。
【0029】
DC-DCコンバータ35は、負荷側のA点の電圧を制御することで、バッテリ50Bから電気負荷25への電力供給を制御することが出来る。オルタネータ23の出力電圧よりもA点の電圧を高くすることで、電気負荷25に対して電力供給を行い、オルタネータ23の出力電圧よりもA点の電圧を低くすることで、電気負荷25に対する電力供給をストップ出来る(放電制御)。
【0030】
DC-DCコンバータ35は、バッテリ側のB点の電圧を制御することで、バッテリ50Bへの電力供給を制御することが出来る。第2バッテリ50Bの出力電圧よりもB点の電圧を高くすることで、オルタネータ23から電力線37を経由して第2バッテリ50Bに対して電力供給を行い、第2バッテリ50Bの出力電圧よりもB点の電圧を低くすることで、第2バッテリ50Bに対する電力供給をストップ出来る(充電制御)。
【0031】
2つのバッテリ50A、50Bを並列に接続することで、一方のバッテリ(例えば、第1バッテリ50A:メインバッテリ)に異常が起きた場合でも、もう一方のバッテリ(例えば、第2バッテリ50B:サブバッテリ)で、車両10に対する電力供給を継続することが出来、車両10の電源に冗長性を持たせることが出来る。
【0032】
図3は、第1バッテリ50Aの電気的構成を示すブロック図である。第1バッテリ50Aは、第1電流遮断装置53Aと、第1組電池60Aと、電流センサ54と、第1管理装置100Aと、温度センサ115と、コネクタ57を備える。
【0033】
第1電流遮断装置53A、第1組電池60A、及び電流センサ54は、パワーライン55P、55Nを介して、直列に接続されている。パワーライン55Pは、正極の外部端子51と第1組電池60Aの正極とを接続するパワーラインである。パワーライン55Nは、負極の外部端子52と第1組電池60Aの負極とを接続するパワーラインである。第1電流遮断装置53Aは第1組電池60Aの正極側に位置し、正極側のパワーライン55Pに設けられている。電流センサ54は、第1組電池60Aの負極側に位置し、負極のパワーライン55Nに設けられている。
【0034】
第1電流遮断装置53Aは、リレーなどの有接点スイッチ(機械式)やFETやトランジスタなどの半導体スイッチにより構成することが出来る。第1電流遮断装置53AのOPENにより、第1バッテリ50Aは、車両10の電力線37から切り離され、電流が遮断される。第1電流遮断装置53AのCLOSEにより、第1バッテリ50Bは、電力線37に接続され、車両10への電力供給が出来る状態となる。
【0035】
電流センサ54は、第1組電池60Aの電流I[A]を計測する。温度センサ115は、接触式あるいは非接触式で、第1組電池60Aの温度[℃]を計測する。
【0036】
第1管理装置100Aは、回路基板ユニット65に設けられている。第1管理装置100Aは、電圧検出回路110と処理部120とを備える。電圧検出回路110は、信号線によって、各二次電池62の両端にそれぞれ接続され、各二次電池62の電池電圧V[V]及び第1組電池60Aの総電圧VBを計測する。第1組電池60Aの総電圧VB[V]は、直列に接続された4つの二次電池62の合計電圧である。
【0037】
処理部120は、演算機能を有するCPU121と、記憶部であるメモリ123と、通信部125を含む。処理部120は、電流センサ54、電圧検出回路110、温度センサ115の出力から、第1組電池60Aの電流I、各二次電池62の電圧V、第1組電池60Aの総電圧VB及び温度を監視する。
【0038】
メモリ123は、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性の記憶媒体である。メモリ123には、第1組電池60Aの状態を監視するための監視プログラム、及び監視プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。コネクタ57は、第1バッテリ50Aを車両ECU31と接続するために設けられている。
【0039】
第1バッテリ50Aは、
図4に示すように、収容体71を備える。収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は、底面部75と、4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0040】
収容体71は、第1組電池60Aと回路基板ユニット65を収容する。第1組電池60Aは12個の二次電池62を有する。12個の二次電池62は、3並列で4直列に接続されている。回路基板ユニット65は、第1組電池60Aの上部に配置されている。
図3のブロック図は、並列に接続された3つの二次電池62を1つの電池記号で表している。
【0041】
蓋体74は、本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。
【0042】
図5A及び
図5Bに示すように、二次電池62は、直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。二次電池62は一例としてリチウムイオン二次電池である。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0043】
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0044】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0045】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、
図5Aに示すように、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限値を超えた時に、開放して、ケース82の内圧を下げる。
【0046】
第2バッテリ50Bは、第2組電池60Bと、第2電流遮断装置53Bと、電流センサ54と、第2管理装置100Bと、温度センサ115とを含んで構成されており、第1バッテリ50Aと同一構造である。
【0047】
図6は、二次電池62を所定レートで充電した時の充電カーブであり、横軸は時間、縦軸は電圧である。Vaは第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをOPENする閾値電圧(二次電池を安全に使用できる上限電圧)であり、一例として4Vである。Vbは二次電池62が電池性能を失う限界電圧であり、一例として、5.8Vである。Vcは、圧力開放弁95が動作する電圧であり、一例として7Vである。電池性能を失うとは、充電も放電も出来ないことを意味する。(1)式は、Va、Vb、Vcの大小関係を示す。
【0048】
Va<Vb<Vc・・・・・・(1)
【0049】
2.充電制御
第1管理装置100Aは、第1バッテリ50Aの状態を監視し、第1バッテリ50Aに、過充電や過放電などの異常が発生した場合、第1電流遮断装置53AをOPENして電流を遮断する。電流を遮断することで、第1バッテリ50Aの安全性を確保することが出来る。
【0050】
第2管理装置100Bも、第2バッテリ50Bの状態を監視し、第2バッテリ50Bに、過充電や過放電などの異常がある場合、第2電流遮断装置53BをOPENして電流を遮断する。
【0051】
第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bは、並列に接続されているため、いずれか一方のバッテリ50A、50Bが過充電となり電流が遮断されても、もう一方のバッテリ50A、50Bで、車両10の急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。
【0052】
しかし、一方のバッテリ50A、50Bが過充電となり電流が遮断された以降も、オルタネータ等の故障などにより充電が継続した場合、もう一方のバッテリ50A、50Bが過充電になった時点で、もう一方のバッテリ50A、50Bの電流遮断装置53A、53BをOPENする必要がある。これにより、2つのバッテリ50A、50Bとも、電流が遮断され、車両10から切り離されてしまう。車両10の安全性の観点からすると、2つのバッテリ50A、50Bが過充電になった場合でも、車両10との接続を維持して、車両10が安全に停止できるまでの時間を確保することが望ましい。例えば、2分程度の時間は確保することが好ましい。
【0053】
電源システム30は、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bの双方が過充電である場合、第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53Bの双方をCLOSEに制御する。これにより、過充電後も、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bは、車両10に接続された状態になることから、車両10の急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。
【0054】
第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53Bの双方をCLOSEすることで、過充電後に充電が継続した場合、充電電流を2つのバッテリ50A、50Bで分担して受け入れることが出来る。充電電流を2つのバッテリ50A、50Bで分担して受け入れることで、いずれか一方のバッテリ50A、50Bだけで充電電流を受ける場合に比べて、バッテリ50A、50Bの電圧上昇が遅くなる。そのため、例えば、限界電圧Vbまで電池の使用を継続する場合、バッテリ50A、50Bが閾値電圧Vaから限界電圧Vbに到達するまでの時間Tabが長くなる。
【0055】
2つのバッテリ50A、50Bが過充電になった後、バッテリ50A、50Bが車両10に対する接続を維持する時間を確保出来るため、車両10が緊急停止できるまでの時間を確保することが出来る。
【0056】
図7は、電源システム30の充電制御のシーケンス図である。
図7において、A1~A8は、第1バッテリ50Aにて、実行される処理を示している。B1~B7は、第2バッテリ50Bにて、実行される処理、C1~C4は、車両ECU31にて、実行される処理を示している。
【0057】
第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53Bは、過充電や過放電など異常がある場合を除き、第1管理装置100A、第2管理装置100Bにより、それぞれCLOSEに制御される。
【0058】
「Ta」は、第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53Bの双方がCLOSEする期間を示す。「Tb」は、第1電流遮断装置53AはOPENし、第2電流遮断装置53BはCLOSEする期間を示す。「Tc」は、第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53Bの双方がCLOSEする期間を示す。
【0059】
電源システム30は、例えば、イグニッションスイッチがオン又はスタートボタンが押されると、起動する。電源システム30の起動後、第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、電圧検出回路110、電流センサ54、温度センサ115の出力に基づいて、各バッテリ50A、50Bの状態を監視する処理を開始する(A1、B1)。具体的には、各二次電池62の電圧V、組電池60A、60Bの総電圧VB、組電池60A、60Bの電流I、温度が監視される。第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、各二次電池62の電圧Vを閾値電圧Vaと比較することで、過充電の有無を判断する。A1、B1は、第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bの電圧を検出するステップに相当する。
【0060】
第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、各バッテリ50A、50Bの状態を監視する処理を一定周期で実行し、その結果を、車両ECU31に対して送信する(A2、B2)。
【0061】
車両10のエンジンが駆動すると、オルタネータ23が発電を開始する。オルタネータ23の発電量が電気負荷25を下回っている場合、充電電流が2つのバッテリ50A、50Bに流れ、2つのバッテリ50A、50Bは充電される(A3、B3)。
【0062】
充電により、第1バッテリ50Aにて、いずれかの二次電池62の電圧が閾値電圧Vaを上回ると、第1管理装置100Aは、過充電を検出する(A4)。閾値電圧Vaは、一例として4Vである。過充電は組電池60Aの総電圧VBで判断してもよい。
【0063】
第1管理装置100Aは、過充電を検出すると、車両ECU31に対して過充電を通知する(A5)。車両ECU31は、第1バッテリ50Aから過充電の通知を受けると、第1バッテリ50Aに対して、第1電流遮断装置53AのOPEN指令を通知する(C1)。
【0064】
第1管理装置100Aは、車両ECU31からOPEN指令を受けると、第1電流遮断装置53AをOPENする(A6)。第1電流遮断装置53AのOPENにより、第1バッテリ50Aの電流は遮断される。その後、充電電流は、容量に空きがあり、過充電に至っていない第2バッテリ50Bだけに流れ、第2バッテリ50Bは、更に充電される。
【0065】
充電により第2バッテリ50Bの電圧は上昇し、いずれかの二次電池62の電圧が閾値電圧Vaを上回ると、第2管理装置100Bは、過充電を検出する(B4)。第2管理装置100Bは、過充電を検出すると、車両ECU31に対して、過充電を通知する(B5)。第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bの双方が、過充電になる要因として、オルタネータ23の故障を例示することが出来る。
【0066】
車両ECU31は、第1バッテリ50Aに加えて、第2バッテリ50Bから過充電の通知を受けると、第1バッテリ50Aに対して第1電流遮断装置53AをCLOSEするCLOSE指令を送り、第2バッテリ50Bに対して第2電流遮断装置53BをCLOSEのままに維持するCLOSE指令を送る(C2)。
【0067】
第1管理装置100Aは、車両ECU31からのCLOSE指令を受けると、第1電流遮断装置53AをOPENからCLOSEに切り換える(A7)。また、第2管理装置100Bは、車両ECU31からのCLOSE指令を受けると、第2電流遮断装置53BをCLOSEのままに維持する(B6)。
【0068】
これにより、2つのバッテリ50A、50Bが過充電になった以降、車両10の電力線37に対して第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bの双方が接続された状態になるから、車両10の急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。また、過充電になった以降、充電が継続する場合、充電電流を、2つのバッテリ50A、50Bで分担して受け入れる状態になる。
【0069】
車両ECU31は、第1バッテリ50Aに加えて第2バッテリ50Bから過充電の通知を受けると、各バッテリ50A、50BへのCLOSE指令と同時に、警告処理を実行する(C3)。
【0070】
警告処理は、ドライバーに車両10の緊急停車を警告する処理である。例えば、車両ECU31は車両10に搭載された異常報知灯(図略)を点灯させる。異常報知灯の点灯により、ドライバーに車両10の異常を報知し、緊急停車を促すことが出来る。警告音を発してもよい。オルタネータ23の故障など、過充電が発生している場合は、車両10の挙動が異常なことが考えられる。その場合は運転者が異常報知灯に気づきにくいが、音声によっても緊急停車を促すことで、運転者に異常を認識しやすくなる。
【0071】
車両10の緊急停車が完了し、その後、車両10のエンジン(図略)が停止すると、エンジンを制御する車両ECUは、車両ECU31に対して、車両10が緊急停車し、エンジンが停止したことを通知する。車両ECU31は通知を受けると、各バッテリ50A、50Bに対して、第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをOPENするOPEN指令を送る(C4)。
【0072】
第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、車両ECU31からOPEN指令を受信すると、第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをそれぞれOPENして、電流を遮断する(A8、B7)。このようにすることで、車両の緊急停車後、第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bの使用を禁止することが出来る。
【0073】
上記では、第1バッテリ50Aが先に過充電となった例を示した。充電により、2つのバッテリ50A、50Bのどちらが先に過充電になるかは、2つのバッテリ50A、50Bの使用方法により異なる。例えば、冗長性を持たせる第2バッテリ50BのSOCを第1バッテリ50Aよりも高い設定にする場合、第2バッテリ50Bが第1バッテリ50Aよりも先に過充電になり易く、第2バッテリ50BのSOCを第1バッテリ50Aよりも低い設定にする場合、第2バッテリ50Bが第1バッテリ50Aよりも後で過充電になり易い。SOC(state of charge:充電状態)は、バッテリの実容量(available capacity)に対する残存容量の比率である。
【0074】
第2バッテリ50Bが先に過充電となる場合も、その後、第1バッテリ50Aが過充電となった時点で、2つの電流遮断装置53A、53BをCLOSEすることで、車両10との接続を維持することができる。また、2つのバッテリ50A、50Bが同時に過充電になった場合も、同様である。
【0075】
3.効果
この方法では、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bの双方が過充電である場合、第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53BをCLOSEする。これにより、過充電後も、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bは、車両10との接続を維持するから、車両10の急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。
【0076】
第1電流遮断装置53Aと第2電流遮断装置53Bの双方をCLOSEすることで、過充電後に充電が継続した場合、充電電流を2つのバッテリ50A、50Bで分担して受け入れることが出来る。充電電流を2つのバッテリ50A、50Bで分担して受け入れることで、いずれか一方のバッテリ50A、50Bだけで充電電流を受ける場合に比べて、バッテリ50A、50Bの電圧上昇が遅くなる。そのため、二次電池62が電池性能を失う限界電圧Vbに到達するまでの時間を確保出来るため、十分な時間を持って、車両10を緊急停車させることが出来る。
【0077】
<実施形態2>
実施形態1は、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bから車両ECU31に対してバッテリ50A、50Bの状態に関する情報を送った。車両ECU31にて、2つのバッテリ50A、50Bの状態を把握し、第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをOPENするか、CLOSEするかを決定した。
【0078】
実施形態2は、車両ECU31から各バッテリ50A、50Bに対して、もう一方のバッテリ50A、50Bの情報を通知する。各バッテリ50A、50Bは、車両ECU31からもう一方のバッテリ50A、50Bの状態に関する情報を受けて、第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをOPENするか、CLOSEするかを決定する。
【0079】
図8は、電源システム30の充電制御のシーケンス図である。
図8において、A1~A8は、第1バッテリ50Aにて実行される処理を示している。B1~B7は、第2バッテリ50Bにて実行される処理、C5~C8は車両ECU31にて実行される処理を示している。
図8に示す充電制御のシーケンスは、
図7に示す充電制御のシーケンスに対して、C5~C8のステップが相違している。
【0080】
電源システム30の起動後、第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、各バッテリ50A、50Bの状態を監視する処理を開始する(A1、B1)。
【0081】
第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、各バッテリ50A、50Bの状態を監視する処理を一定周期で実行し、その結果を、車両ECU31に対して送信する(A2、B2)。
【0082】
充電により、第1バッテリ50Aにて、二次電池62の電圧が閾値電圧Vaを上回ると、第1管理装置100Aは過充電を検出する(A4)。
【0083】
第1管理装置100Aは、過充電を検出すると、車両ECU31に対して過充電を通知する(A5)。車両ECU31は、第1バッテリ50Aから過充電の通知を受けると、第1バッテリ50Aに対して、第2バッテリ50Bが過充電でないことを通知する(C5)。
【0084】
第1バッテリ50Aは、車両ECU31から第2バッテリ50Bが過充電ないことを受信すると、第1バッテリ50Aは、第1電流遮断装置53AをOPENする(A6)。第1電流遮断装置53AのOPENにより、第1バッテリ50Aの電流は遮断される。その後、充電が継続すると、充電電流は第2バッテリ50Bだけに流れ、第2バッテリ50Bは、更に充電される。
【0085】
第2バッテリ50Bにて、二次電池62の電圧が閾値電圧Vaを上回ると、第2管理装置100Bは、過充電を検出する(B4)。第2管理装置100Bは、過充電を検出すると、車両ECU31に対して過充電を通知する(B5)。
【0086】
車両ECU31は、第1バッテリ50Aに加えて第2バッテリ50Bから過充電の通知を受けると、各バッテリ50A、50Bに対してもう一方のバッテリ50A、50Bの状態を通知する(C6)。この場合、車両ECU31は、第1バッテリ50Aに対して第2バッテリ50Bは過充電であることを通知し、第2バッテリ50Aに対して第1バッテリ50Bは過充電であることを通知する。
【0087】
第1管理装置100Aは、車両ECU31からの第2バッテリ50Bが過充電である情報を受信すると、第1電流遮断装置53AをOPENからCLOSEに切り換える(A7)。また、第2管理装置100Bは、車両ECU31から第1バッテリ50Aが過充電である情報を受信すると、第2電流遮断装置53BをCLOSEに維持する(B6)。
【0088】
これにより、2つのバッテリ50A、50Bが過充電になった以降、車両10の電力線37に対して第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bの双方が接続された状態になるから、車両10の急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。また、充電が継続する場合、充電電流は、2つのバッテリ50A、50Bで分担して受け入れる状態になる。
【0089】
車両ECU31は、第1バッテリ50Aに加えて第2バッテリ50Bから過充電の通知を受けると、各バッテリ50A、50Bに対してもう一方のバッテリ50A、50Bの状態を通知するのと同時に、警告処理を実行する(C7)。警告処理は、ドライバーに車両10の緊急停車を警告する処理である。
【0090】
車両10の緊急停車が完了し、その後、エンジンが停止すると、車両ECU31は、各バッテリ50A、50Bに対して、緊急停車が完了したことを通知する(C8)。
【0091】
第1管理装置100A、第2管理装置100Bは、車両ECU31から緊急停車の完了通知を受信すると、第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをそれぞれOPENして、電流を遮断する(A8、B7)。このようにすることで、車両の緊急停止後、第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bの使用を禁止することを抑制できる。
【0092】
このように、車両ECU31からもう一方のバッテリ50A、50Bの状態を受け取る方法でも、各バッテリ50A、50Bで、2つのバッテリ50A、50Bの状態を把握できる。
【0093】
そのため、各バッテリ50A、50Bにて、2つのバッテリ50A、50Bが過充電になった場合に、各電流遮断装置53A、53BをCLOSEすることで、実施形態1と同様の充電制御を行うことが出来る。つまり、過充電後も、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bを車両10に接続することで、車両10に対する急な負荷変動に伴う電力供給に備えることが出来る。また、過充電後の充電電流を、第1バッテリ50Bと第2バッテリ50Bで分担して受け入れることで、バッテリ50A、50Bの電圧上昇を抑制し、二次電池62が電池性能を失う限界電圧Vbに到達するまでの時間を確保することが出来る。
【0094】
<実施形態3>
実施形態3の電源システム200は、
図9に示すように、第1バッテリ50Aと、第2バッテリ50Bと、車両ECU31と、DC-DCコンバータ35を含んで構成されている。第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bが、車両ECU31と通信機能を有さない点が、実施形態1、2と相違している。
【0095】
第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bは、信号線210によって接続されており、バッテリ間で、過充電の有無などバッテリ50A、50Bの状態に関する情報を通信し、共有する。つまり、第1バッテリ50Aは、第2バッテリ50Bの過充電の有無を把握し、第2バッテリ50Bは、第1バッテリ50Aの過充電の有無を把握する。
【0096】
そのため、各バッテリ50A、50Bにて、2つのバッテリ50A、50Bが過充電になった場合に、各電流遮断装置53A、53BをCLOSEすることで、実施形態1、2と同様の充電制御を行うことが出来る。
【0097】
<実施形態4>
実施形態4は、過充電後に、各バッテリ50A、50Bが充電する充電電気量Q[C]に制限を設けている。充電電気量Q[C]は、充電電流I[A]と充電時間t[S]から求めることが出来る。
【0098】
図10は、充電電気量Qの制限処理のフローチャートである。充電電気量Qの制限処理は、過充電になった後、各バッテリ50A、50Bにて個々に実行される。以下、バッテリ50Aを例にとって説明する。
【0099】
管理装置100Aは、バッテリ50Aが過充電になった後、車両ECU31からの指令を受けて第1電流遮断装置53AをCLOSEに切り換えると、その後の期間(例えば、
図7の期間Tc)、電流センサ54により計測される充電電流Iと充電時間tから、二次電池1つあたりに充電される充電電気量Q1を算出する(S11)。
【0100】
管理装置100Aは、算出した充電電気量Q1を限界電気量Qabと比較する(S13)。限界電気量Qabは、閾値電圧Vaと限界電圧Vbの電圧差ΔVabに相当する電気量(
図6参照)である。
【0101】
管理装置100Aは、充電電気量Q1が限界電気量Qab以下の場合(S13:NO)、第1電流遮断装置53AをCLOSEに維持する(S15)。
【0102】
管理装置100Aは、充電電気量Q1が限界電気量Qabを超える場合(S13:YES)、第1電流遮断装置53AをOPENして、バッテリ50Aの電流を遮断する(S17)。
【0103】
過充電に至った以降、二次電池1つ当たりの充電電気量Q1を限界電気量Qab以下に制限することで、二次電池62が電池性能を維持できる範囲で充電を行うことが可能である。
【0104】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0105】
(1)上記実施形態1では、蓄電部の一例として、組電池60A、60Bを例示した。蓄電部は単セル(1つの二次電池62)でもよい。蓄電部は二次電池62に限らず、キャパシタ等の蓄電素子でもよい。電源システム30に、DC-DCコンバータ35を含めたが、DC-DCコンバータ35は無くてもよい。例えば、第1バッテリ50Aと第2バッテリ50Bの使われ方に差がない場合は、第2バッテリ50Bの充放電を単独で調整する必要性が少なく、DC-DCコンバータ35は無くてもよい。DC-DCコンバータ35などの調整装置がある場合、2つのバッテリ50A、50Bの定格電圧は同一でもいいし、異なっていてもよい。また、第1バッテリ50Aの第1電流遮断装置53AをOPENする閾値電圧Vaと、第2バッテリ50Bの第2電流遮断装置53BをOPENする閾値電圧Vaは異なっていてもよい。
【0106】
(2)上記実施形態1では、第1電流遮断装置53A、第1管理装置100Aを第1バッテリ50Aの内部に設け、第2電流遮断装置53B、第2管理装置100Bを第2バッテリ50Bの内部に設けた。第1バッテリ50A、第2バッテリ50Bは、組電池60A、60Bと計測類を少なくとも有していればよく、第1電流遮断装置53Aや第1管理装置100Aは第1バッテリ50Aの外部に設けられていてもよい。同様、第2電流遮断装置53Bや第2管理装置100Bも第2バッテリ50Bの外部に設けてられていてもよい。
【0107】
(3)上記実施形態1では、車両10の緊急停車が完了し、エンジンが停止したら、第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53BをOPENして、バッテリ50A、50Bの使用を禁止した。バッテリ50A、50Bの使用を禁止するタイミングは、エンジン停止から所定期間経過後でもよい。バッテリ50A、50Bの使用を禁止するタイミングをエンジン停止から所定時間経過後にすることで、ハザードランプ等の点灯により、車両10が緊急停止状態であることを外部に知らせるための時間を確保することが出来る。
【0108】
(4)第1電流遮断装置53A、第2電流遮断装置53Bは、
図11に示すように、放電方向(C方向)を順方向とする寄生ダイオードDを内蔵したFET(電界効果トランジスタ)でもよい。FETを使用することで、充電を禁止しつつ、放電を許容することが出来る。
【0109】
(5)本技術は、車両の電源システムの制御プログラムに適用することが出来る。車両の電源システムの制御プログラムは、コンピュータに、第1蓄電部と第2蓄電部の双方が過充電である場合、前記第1蓄電部の電流を遮断する第1電流遮断装置と前記第2蓄電部の電流を遮断する第2電流遮断装置をCLOSEする処理を実行させるプログラムである。本技術は、車両の電源システムの制御プログラムを記録した記録媒体に適用することが出来る。コンピュータは一例として、車両ECU31である。
【符号の説明】
【0110】
10...車両
21...エンジン始動装置(車両負荷)
23...オルタネータ
25...電気負荷(車両負荷)
30...電源システム
31...車両ECU(制御部)
35...DC-DCコンバータ
50A、50B...第1バッテリ、第2バッテリ
53A、53B...第1電流遮断装置、第2電流遮断装置
60A、60B...第1組電池(第1蓄電部)、第2組電池(第2蓄電部)
100A、100B...第1管理装置、第2管理装置