(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20220119BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20220119BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20220119BHJP
H01M 8/04186 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/2475
H01M8/04029
H01M8/04186
(21)【出願番号】P 2018525620
(86)(22)【出願日】2017-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2017039869
(87)【国際公開番号】W WO2019087377
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】池内 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】林 清明
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-167283(JP,A)
【文献】米国特許第8974940(US,B1)
【文献】柴田俊和,レドックスフロー電池システムの開発と実証,電気学会公開シンポジウム「再生可能エネルギーの活用と系統連系」当日講演資料,2016年,p. 1-44,インターネット:<URL:http://www.iee.jp/wp-content/uploads/honbu/03-conference/data-31/symp_161212/doc03.pdf>
【文献】REDOX FLOW BATTERY,住友電気工業株式会社,2016年,p. 1-14,インターネット:<URL:http://www.sei.co.jp/products/redox/pdf/redox-flow-battery.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に横並びされる複数のセルスタックを含むスタック群と、
前記スタック群の上方に配置され、各セルスタックに供給される電解液を冷却する熱交換部と
、
前記スタック群と、前記熱交換部と、前記電解液を貯留するタンクと、前記各セルスタックと前記タンクとに接続されて前記電解液を流通する配管とを一括して収納するコンテナと、を備え
、
前記コンテナ内において、前記スタック群及び前記熱交換部並びに前記配管を収納するセル室と、前記タンクを収納するタンク室とが前記コンテナの長手方向に横並びされ、
前記タンク室の長さは、前記セル室の長さよりも長く、
前記コンテナの長手方向及び高さ方向の中心をP、前記コンテナの長手方向及び幅方向の中心をQ、前記コンテナの長さをL、前記コンテナの幅をW、前記コンテナの重心をGとし、
前記スタック群、前記熱交換部、前記タンク、及び前記配管を収納した状態の前記コンテナの縦断面において、前記中心Pから前記重心Gまでの距離xは、x≦(1/3)×Lを満たし、前記コンテナの水平断面において、前記中心Qから前記重心Gまでの距離yは、y≦(1/20)×Wを満たす、
レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記配管は、前記各セルスタックから前記タンクに前記電解液を戻す復路の配管を有し、
前記熱交換部は、前記復路の配管に設けられている、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記コンテナにおける前記タンクを囲む領域に配置されている断熱材を備える、請求項1又は請求項2に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記タンクの気相を換気する換気機構を備え、
前記換気機構が前記コンテナ内に収納されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の蓄電池の一つに、レドックスフロー電池(以下、RF電池と呼ぶことがある)がある。RF電池は、特許文献1の
図7に記載されるように、電池セルと、電池セルに供給する正極電解液を貯留する正極タンク及び負極電解液を貯留する負極タンクと、電池セルと各タンクとに接続されて、各極の電解液を流通する配管(導管)とを備える。特許文献1は、複数の電池セルを積層したセルスタックを複数備える形態を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のレドックスフロー電池は、
水平方向に横並びされる複数のセルスタックを含むスタック群と、
前記スタック群の上方に配置され、各セルスタックに供給される電解液を冷却する熱交換部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施形態1のレドックスフロー電池の概略構成を示す模式説明図である。
【
図2】実施形態1のレドックスフロー電池に備えられるセルスタックの一例を示す概略断面図である。
【
図3】実施形態1のレドックスフロー電池に備えられるセルスタックの一例を示す概略構成図である。
【
図4】実施形態2のレドックスフロー電池をコンテナの幅方向に直交する平面で切断した縦断面図である。
【
図5】実施形態2のレドックスフロー電池をコンテナの高さ方向に直交する平面で切断した水平断面図である。
【
図6】実施形態2のレドックスフロー電池において、縦断面における重量バランスを説明する説明図である。
【
図7】実施形態2のレドックスフロー電池において、水平断面における重量バランスを説明する説明図である。
【
図8】コンテナを吊り下げる状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
複数のセルスタックを備えるような大型のレドックスフロー電池(RF電池)に対して、組立作業性に優れる上に、放熱性にも優れることが望まれる。
【0007】
特許文献1に記載されるように、複数のセルスタックを備える場合にセルスタックを上下方向(重力方向)に積み重ねる、いわゆる縦積みすると、縦積みしたセルスタックの設置スペースを小さくし易い。しかし、縦積みすると、重量物であるセルスタックを安定して支持するために強固な架台が必要であり、架台の構成部材が多くなり易く、架台の組立時間の長大化を招き易い。架台の構成部材には鋼材等の重量物が利用されるため、使用数を減らして、作業者の負担を軽減することが望まれる。このように架台の組立を含めたRF電池の組立作業性の改善が望まれる。更なる大出力電池や大容量電池の要求に対応するために、各セルスタックに使用する電池セルの積層数の増加や電極の大型化、電解液量の増大に伴うタンクの大型化等から、各セルスタックやタンク等の重量が増大傾向にあることからも、より組立易いRF電池が望まれる。
【0008】
また、RF電池では、電池反応に伴う発熱によって電解液の温度が上昇し、この温度上昇に起因して、RF電池の構成要素の劣化や電解液の劣化等を招き得る。複数のセルスタックを備える場合には、各セルスタックについて、電解液の温度上昇が生じるため、電解液を冷却することが望まれる。例えば、配管に熱交換機構を設けることが考えられる。しかし、上述のように複数のセルスタックを縦積みすると、各セルスタックに接続される配管も上下に配置される箇所が生じ易くなるため、配管が長大化し易く、配管の設置スペースの増大を招く。配管の設置スペースが大きいことで、熱交換機構の設置スペースが小さくなり易く、放熱効率の低下を招き易い。従って、複数のセルスタックを備えていても、放熱性に優れるRF電池が望まれる。
【0009】
そこで、組立作業性に優れる上に、放熱性にも優れるレドックスフロー電池を提供することを目的の一つとする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示のレドックスフロー電池は、組立作業性に優れる上に、放熱性にも優れる。
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るレドックスフロー電池(RF電池)は、
水平方向に横並びされる複数のセルスタックを含むスタック群と、
前記スタック群の上方に配置され、各セルスタックに供給される電解液を冷却する熱交換部とを備える。
【0012】
上記のRF電池は、複数のセルスタックと熱交換部とを備えるものの、セルスタックが横並びされると共に、スタック群の上に熱交換部を備えるという特定の配置とする。そのため、上記のRF電池は、上述の縦積みの場合に比較して、架台の構成部材の使用数を少なくし易い。大重量であるセルスタックを熱交換部よりも下方に配置することからも、その逆の配置である場合に比較して、架台の補強度合いを緩和させ易く、架台の構成部材の使用数を少なくし易い。従って、上記のRF電池は、架台の組立時間を短縮できる上に、作業者の負担も軽減できる。特に、上記のRF電池では、タンクからの電解液を各セルスタックの下方から上方に向かって流し、タンクに戻す形態(以下、上昇形態と呼ぶことがある)とすると共に、復路の配管に熱交換部を設けると、排気弁を省略できて配管構造を単純にし易く(詳細は後述する)、配管の組立時間も短縮できる。従って、上記のRF電池によれば、複数のセルスタックを備えるものの、組立作業性に優れる。
【0013】
かつ、上記のRF電池は、熱交換部を備えており、この熱交換部によって電解液を効率よく冷却できるため、放熱性にも優れる。特に、上記のRF電池では、横並びされたスタック群の上方空間を熱交換部の配置領域とするため、熱交換部の設置スペースを大きく確保し易い。上述のセルスタックを縦積みする場合に比較して、配管を短くし易いことからも、熱交換部の設置スペースを大きく確保し易い。このような上記のRF電池は大きな熱交換部を配置できて放熱効率を高め易く、放熱性により優れる。また、上記RF電池を上述の上昇形態とし、復路の配管に熱交換部を設けると、電解液を効率よく冷却できて、放熱性により優れる(詳細は後述する)。更に、熱交換部の平面面積をスタック群の仮想の平面面積以下とすれば、熱交換部の具備による設置スペースの増大を招くこともなく、放熱性に優れる。
【0014】
(2)上記のRF電池の一例として、
前記スタック群と、前記熱交換部と、前記電解液を貯留するタンクと、前記各セルスタックと前記タンクとに接続されて前記電解液を流通する配管とを一括して収納するコンテナを備える形態が挙げられる。
【0015】
上記形態は、コンテナといった容器に、セルスタック群、熱交換部、タンク、配管といった構成要素を一括して収納する。そのため、工場といった、作業スペースを確保し易い場所で上記構成要素を予め組み立てられ、組立作業性に優れる。また、上記構成要素を組み立てた状態でRF電池の設置場所に搬送すれば、設置現場での作業を大幅に削減でき、作業者の負担も軽減できる。
【0016】
かつ、上記形態は、コンテナ内に一括してスタック群が収納されるものの、スタック群の上方に熱交換部を備えるため、上述のように放熱性に優れる。複数のセルスタックが横並びされることで、上述の縦積みの場合よりも大気の流動空間を比較的広く確保し易く、大気が流動して、配管が空冷され易いと期待されることからも放熱性に優れる。
【0017】
(3)コンテナを備える上記のRF電池の一例として、
前記コンテナ内において、前記スタック群及び前記熱交換部並びに前記配管を収納するセル室と、前記タンクを収納するタンク室とが前記コンテナの長手方向に横並びされる形態が挙げられる。
【0018】
上記形態は、コンテナ内の長手方向の一端側をセル室とし、他端側をタンク室とし、スタック群、熱交換部、配管をセル室に集約して収納する。そのため、例えばタンクを挟んで、一端側にスタック群、他端側に熱交換部が配置される形態(以下、タンク介在形態と呼ぶことがある)に比較して、配管を短くし易く、かつ単純な配置構造とし易い。従って、上記形態は、配管の組立時間をより短縮し易く、組立作業性により優れる。かつ、上記形態は、配管が短いことで、上述のように熱交換部の設置スペースを大きく確保し易い上に、電解液を熱交換部に速やかに導入し易くなり、効率よく冷却できることからも、放熱性に優れる。特に、上述の上昇形態とし、復路の配管に熱交換部を設けると、タンク介在形態に比較して、高温の電解液を熱交換部に速やかに導入できて、より効率的に冷却できる。
【0019】
(4)コンテナ内にセル室とタンク室とを備える上記のRF電池の一例として、
前記タンク室の長さは、前記セル室の長さよりも長く、
前記コンテナの長手方向及び高さ方向の中心をP、前記コンテナの長手方向及び幅方向の中心をQ、前記コンテナの長さをL、前記コンテナの幅をW、前記コンテナの重心をGとし、
前記スタック群、前記熱交換部、前記タンク、及び前記配管を収納した状態の前記コンテナの縦断面において、前記中心Pから前記重心Gまでの距離xは、x≦(1/3)×Lを満たし、前記コンテナの水平断面において、前記中心Qから前記重心Gまでの距離yは、y≦(1/20)×Wを満たす形態が挙げられる。
【0020】
上記形態は、スタック群等の構成要素が収納されたコンテナをトラック等の車両で陸上搬送する場合に車両が安定して走行できる上に、このコンテナを設置場所に載置するためにクレーン等で吊り上げる際に、上記コンテナを安定して吊り上げられる。従って、上記形態は、搬送作業性、設置作業性にも優れる。
【0021】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本願発明の実施形態に係るレドックスフロー電池(RF電池)を具体的に説明する。図中、同一符号は同一名称物を意味する。
【0022】
[実施形態1]
以下、
図1~
図3を主に参照して、実施形態1のRF電池1Aを説明する。
(基本構成)
実施形態1のRF電池1Aは、複数のセルスタックを含むスタック群100と、各セルスタックに電解液を循環供給する供給機構とを備える。
図1では、スタック群100に二つのセルスタック101,102を備える場合を例示する。セルスタック101,102はいずれも、
図2,
図3に示すように複数の電池セル10Cが積層されてなるものである。以下、代表してセルスタック10と呼ぶことがある。
供給機構は、各セルスタック10に供給する正極電解液を貯留する正極タンク34及び負極電解液を貯留する負極タンク35と、各セルスタック10と各タンク34,35とに接続されて、電解液を流通する配管16,17とを含む。
【0023】
このようなRF電池1Aは、代表的には、交流/直流変換器を介して、発電部と負荷とに接続され、発電部を電力供給源として充電を行い、負荷を電力提供対象として放電を行う(いずれも図示せず)。発電部は、例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他一般の発電所等が挙げられる。負荷は、需要家等が挙げられる。充放電は、酸化還元により価数が変化するイオン(代表的には金属イオン)を活物質として含む正極電解液及び負極電解液を使用し、正負のイオンの酸化還元電位差を利用して行う。
【0024】
特に、実施形態1のRF電池1Aは、スタック群100を構成する複数のセルスタック10が水平方向(
図1では左右方向)に横並びされており、このスタック群100の上方に各セルスタック10に供給される電解液を冷却する熱交換部4を備える。このようなRF電池1Aは、複数のセルスタック10を備えるものの、組立易い上に、放熱性にも優れる。以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0025】
(電池セル)
電池セル10Cは、
図2,
図3に示すように正極電解液が供給される正極電極14と、負極電解液が供給される負極電極15と、正極電極14,負極電極15間に介在される隔膜11とを備える。
【0026】
正極電極14、負極電極15は、正極電解液、負極電解液がそれぞれ供給されて活物質が電池反応を行う反応場であり、炭素材料の繊維集合体といった多孔体等が利用される。
隔膜11は、正極電極14,負極電極15間を分離すると共に所定のイオン(例、水素イオン)を透過する部材であり、イオン交換膜等が利用される。
【0027】
電池セル10Cは、代表的には、
図3に例示するセルフレーム110を用いて構築される。セルフレーム110は、双極板111と、双極板111の周縁部に設けられる枠体112とを含む。
【0028】
双極板111は、代表的には、一面に正極電極14が配置され、他面に負極電極15が配置され、電流を流すが電解液を通さない導電性部材である。双極板111には、黒鉛等と有機材とを含む導電性プラスチック板等が利用される。
枠体112は、枠内に配置される正極電極14,負極電極15に正極電解液、負極電解液をそれぞれ供給する給液孔113及びスリット114と、電池セル10C外に正極電解液、負極電解液をそれぞれ排出する排液孔115及びスリット116とを有する絶縁性部材である。枠体112の構成材料には、電解液と反応せず、電解液に対する耐性を有する樹脂(例、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン)等が利用される。枠体112の外周縁寄りには環状の溝が設けられてシール材118が配置される。シール材118には、Oリングや平パッキン等の弾性材が利用される。
【0029】
セルスタック10は、代表的には、セルフレーム110(双極板111)、正極電極14、隔膜11、負極電極15という順序で複数積層された積層体と、この積層体を挟む一対のエンドプレート130,130と、両エンドプレート130,130間を締め付ける複数の締付部材132とを備える。この積層方向の締付力によって積層状態を保持すると共に、隣り合う枠体112,112間に介在されるシール材118を押し潰して積層体を液密に保持し(
図2も参照)、セルスタック10からの電解液の漏出を防止する。セルスタック10における電池セル10Cの数(セル数)は適宜選択できる。セルスタック10の仕様(電極の大きさ、セル数等)は、所望の特性となるように適宜選択できる。セル数が多いほど、また電極を大型とするほど大出力電池とし易い。
その他、
図3に例示するようにセルスタック10は、所定のセル数の積層体をサブセルスタック120とし、複数のサブセルスタック120が積層された集合体とすることができる。各サブセルスタック120は電解液の給排板122を備えることができる。
【0030】
(循環機構)
循環機構は、正極電極14に循環供給する正極電解液を貯留する正極タンク34(
図1)と、負極電極15に循環供給する負極電解液を貯留する負極タンク35(同)と、正極タンク34と各セルスタック10間を接続する配管164,174(
図1,
図2)と、負極タンク35と各セルスタック10間を接続する配管165,175(同)と、各タンク34,35から各セルスタック10に供給する往路をなす配管164,165に設けられた正極のポンプ184,負極のポンプ185(
図1)とを備える。往路の配管164,165、各セルスタック10から各タンク34,35に電解液を戻す復路をなす配管174,175はそれぞれ、上述の給液孔113や排液孔115がつくる管路に接続され、正極電解液の循環経路、負極電解液の循環経路を構築する。
【0031】
配管16,17の構成材料には、電解液と反応せず、電解液に対する耐性を有する上述の樹脂等が挙げられる。
ポンプ184,185には公知のものを適宜利用できる。
各タンク34,35は、上述の電解液を貯留する箱状の容器であり、適宜な形状のものが利用できる。貯留量は、スタック群100の容量等に応じて適宜選択するとよい。タンク3の構成材料は、電解液と反応せず、電解液に対する耐性を有する上述の樹脂やゴム等が挙げられる。
電解液は、正負の活物質をバナジウムイオンとするもの(特許文献1)、正極活物質をマンガンイオン、負極活物質をチタンイオンとするもの、その他、公知の組成のものが利用できる。
【0032】
正極電解液の循環経路、負極電解液の循環経路の一例として、各タンク34,35からの電解液を各セルスタック10の下方から上方に向かって流し、各タンク34,35に戻す上昇形態とすることが挙げられる。上昇形態は、電解液が電極の全域に亘って拡散し易く、この点から電池特性を高め易く好ましい。
図3に示すセルフレーム110は、給液孔113を下方、排液孔115を上方に備えるため、上昇形態に好適に利用できる。
【0033】
(スタック群)
RF電池1Aでは、上述のセルスタック10を複数備え、これらセルスタック10が水平方向に横並びされる。代表的には、複数のセルスタック10が同一平面上に一列に横並びされる形態、即ちスタック群100が直方体状である形態が挙げられる。複数のセルスタック10が同一平面上に載置されれば一列でなくてもよい。例えば、四つのセルスタック10を含むスタック群100では、2×2のマス目状に並ぶ形態等が挙げられる。
【0034】
スタック群100を構成する各セルスタック10は、電気的な直列接続、及び電気的な並列接続の少なくとも一方の接続がなされる。
【0035】
スタック群100を構成する各セルスタック10は、代表的には、電極の大きさやセル数、その他の仕様が等しい形態が挙げられる。セル数が異なるセルスタック10を含む形態等とすることもできる。
【0036】
(熱交換部)
熱交換部4は、上述の循環機構において、往路の配管16及び復路の配管17の少なくとも一方に設けられて、電解液の温度を変化させる部材、代表的には電解液を冷却する部材である(
図1)。熱交換部4は、温度T
0の電解液が導入され、温度T
0から温度T
1となった電解液を排出する配管集積部40を備える。強制冷却を行う熱交換部4では、更に、冷却機構42を備える。
【0037】
配管集積部40は、代表的には、正極電解液や負極電解液が流通される正極配管や負極配管を、表面積を大きく確保するために、比較的細径の配管を用いたり、蛇行配置したり、螺旋状に巻回配置したりする等して構成される。熱交換部4は、配管集積部40として正極配管及び負極配管の双方を備える形態、正極配管のみを備える形態、負極配管のみを備える形態が挙げられる。RF電池1Aは、上述の正極配管及び負極配管の双方を一括して備える熱交換部4を含む一括形態(
図1)、上述の正極配管のみを備える熱交換部4と負極配管のみを備える熱交換部4とをそれぞれ含む独立形態(図示せず)のいずれも利用できる。
一括形態では、例えば、一つのケースに正極配管及び負極配管を収納して、冷却機構42を共用する構成とすれば、部品点数を少なくでき、熱交換部4の組立作業性に優れる。複数の冷却機構42を備える場合には、冷却能を高められる。
独立形態では、各熱交換部4を異なる仕様(配管長さ、冷却機構42の有無、冷却機構42の仕様等)にし易く、正極電解液と負極電解液とで温度が異なる場合に各温度に応じて冷却機構42を制御できるため、電解液をより適切な温度に冷却し易い。
【0038】
冷却方法は、自然空冷、強制冷却等が挙げられる。強制冷却を行う場合、冷却機構42として、ファン(強制空冷)や、冷却媒体を流通する流通機構(強制水冷)等を備えるとよい。
図1では、上述の一括形態であって、冷却機構42を共用する場合を二点鎖線で仮想的に示す。なお、必要に応じて、流通機構に湯等の加熱媒体を流通させると、電解液を加熱することもできる。
【0039】
熱交換部4は、復路の配管17に設けられることが好ましく、配管17における各セルスタック10との接続箇所近傍に設けられることがより好ましい。電解液の温度は、各セルスタック10から排出された直後が最も高い場合が多い。そのため、復路の配管17のうち、特に各セルスタック10との接続箇所近傍では、外部環境の温度との温度差を大きく確保し易く、上記接続箇所近傍に熱交換部4を設けると、熱交換部4によって電解液を効率よく冷却できるからである。
図1では、復路の配管17において、各セルスタック10との接続箇所に近い箇所(排出近傍箇所170,171)に熱交換部4を備える場合を例示する。
【0040】
熱交換部4は、スタック群100の上方に設けられる。複数のセルスタック10が横並びされているため、スタック群100の上方には、複数のセルスタック10の上面を合計した仮想の平面面積を有する空間がある。この仮想の平面面積は、上述の縦積みの場合よりも、セルスタック10の数だけ大きい。そのため、上述の上方空間を熱交換部4の配置箇所とすると、平面面積が大きな熱交換部4、即ち高い冷却能を有する熱交換部4を備えることができる。複数のセルスタック10を横並びにすることで、接続される配管16,17の長さを上述の縦積みの場合よりも短くし易く、熱交換部4の設置スペースを大きく確保し易いことからも、大きな熱交換部4を備えることができる。また、スタック群100と熱交換部4とをその積層方向(上下方向)に透視して、スタック群100の平面面積内に熱交換部4が収まるように、熱交換部4の平面面積を調整すれば、大型の熱交換部4を備えても、熱交換部4の具備による設置スペースの増大を実質的に招かない。上述の独立形態である場合には、例えば正極用の熱交換部4と負極用の熱交換部4とを横並びしたときの平面面積がスタック群100の平面面積内に収まるように、各熱交換部4,4の平面面積を調整すれば、これら熱交換部4,4の具備による設置スペースの増大を実質的に招かない。
【0041】
図1に例示するように、正負の循環経路を上述の上昇形態とし、熱交換部4を復路の配管17の排出近傍箇所170,171に備えると、復路の配管構造を単純にし易い。上昇形態では、各セルスタック10内の正極電解液、負極電解液が上方に向かって流れるため、各セルスタック10から排出された直後の正極電解液、負極電解液は、上方に向かっている。従って、スタック群100の上方、かつ排出近傍箇所170,171に熱交換部4を備えると、各セルスタック10から排出された正極電解液、負極電解液を、スタック群100の上方に位置する熱交換部4に容易に導入できる。この場合、復路の配管17は、電解液が上向き、又は水平方向に流れるように設けることができるため、復路の配管構造、特に各セルスタック10と熱交換部4間の配管構造を単純にし易い。
図1では、各セルスタック10の最上端や熱交換部4の最上端から、電解液を上向きに流す場合を例示するが電解液を水平方向に流す部分を設けることができる。熱交換部4から排出された正極電解液、負極電解液を各タンク34,35に向かって流す配管について、電解液が上向きから下向きに流れる区間を設ける必要が無い。そのため、電解液が上向きから下向きに流れる場合に必要な排気弁を省略可能なことからも、復路の配管構造を単純にし易い。
【0042】
仮に、上述の上昇形態とし、熱交換部4を復路に設けるものの、スタック群100の上方ではなく、例えば横並びする場合には、復路の配管17も、電解液が上向きから下向きに流れる区間が生じる。そのため、排気弁を設ける必要があり、復路の配管構造が複雑になり易い。
【0043】
(用途)
実施形態1のRF電池1Aは、太陽光発電、風力発電等の自然エネルギーの発電に対して、発電出力の変動の安定化、発電電力の余剰時の蓄電、負荷平準化等を目的とした蓄電池に利用できる。また、実施形態1のRF電池1Aは、一般的な発電所に併設されて、瞬低・停電対策や負荷平準化を目的とした蓄電池として利用できる。
【0044】
(主要な効果)
実施形態1のRF電池1Aは、複数のセルスタック10が横並びされるため、上述の縦積みの場合に比較して、架台の構成部材の使用数を少なくし易い。かつ、重量物であるセルスタック10が下方、熱交換部4がスタック群100の上方に配置されるため、熱交換部4がスタック群100の下方に配置される場合に比較して、架台の補強度合いを緩和させ易いことからも、架台の構成部材の使用数を少なくし易い。従って、RF電池1Aは、架台の組立時間を短縮でき、架台の組立を含めて、組立作業性に優れる。特に、大型の電極を備えるセルスタック10や、セル数が多いセルスタック10を備えて、各セルスタック10の重量がより大きい場合でも、上述の縦積みの場合に比較して、架台の組立時間を短縮し易い上に、作業者の負担を効果的に軽減できる。
【0045】
かつ、実施形態1のRF電池1Aは、熱交換部4を備えて、電解液を効率よく冷却できるため、放熱性にも優れる。また、RF電池1Aでは、スタック群100の上方空間を熱交換部4の配置領域とするため、上述の縦積みの場合に比較して熱交換部4の設置スペースを広く確保し易い。上述の縦積みの場合に比較して配管16,17を短くし易いことからも、熱交換部4の設置スペースを広く確保し易い。そのため、RF電池1Aでは、冷却能が高い大型の熱交換部4を備えられて、放熱性により一層優れる。更に、大型の熱交換部4を備える場合でも、スタック群100と熱交換部4との設置スペースが重複するため、熱交換部4の具備による設置スペースの増大を低減し易い、又は実質的に設置スペースの増大を招かない。
【0046】
この例のように、正負の循環経路を上述の上昇形態とし、復路の配管17の排出近傍箇所170,171に熱交換部4を備える場合には、上述のように復路の配管構造を単純にし易い。また、この場合、上述のように電解液が上向きから下向きに流れる区間を設ける必要がなく、排気弁を省略できることからも、復路の配管構造をより単純にし易い。そのため、配管16,17を組立易く、配管16,17の組立を含めて、組立作業性により優れる。かつ、排出近傍箇所170,171から高温の電解液を熱交換部4に導入して効率よく冷却できるため、放熱性により優れる。
【0047】
[実施形態2]
以下、
図4~
図8を主に参照して、実施形態2のRF電池1Bを説明する。
図4は、コンテナ2をその幅方向に直交する平面で切断した縦断面図であり、内部構造を簡略化して示す。
図5は、コンテナ2をその高さ方向に直交する平面で切断した水平断面図であり、内部構造を簡略化して示す。
図6はコンテナ2の縦断面図、
図7はコンテナ2の水平断面図、
図8はコンテナ2の斜視図であり、内部構造を省略すると共に模式的に示す。
【0048】
実施形態2のRF電池1Bの基本的構成は実施形態1のRF電池1Aと同様である。具体的には、RF電池1Bは、スタック群100と、スタック群100の上方に配置される熱交換部4と、電解液6を貯留するタンク3(正極タンク34、負極タンク35、
図5)と、各セルスタック10(ここではセルスタック101,102)とタンク3とに接続されて電解液を流通する配管16,17とを備える。実施形態2のRF電池1Bは、更に、スタック群100と、熱交換部4と、タンク3と、配管16,17とを一括して収納するコンテナ2を備える。このコンテナ2を備える点が実施形態1との主な相違点である。
以下、実施形態2について、実施形態1との相違点を詳細に説明し、実施形態1と共通する構成及びその効果は詳細な説明を省略する。
【0049】
図4では、説明の便宜上、タンク3、往路の配管16、復路の配管17、ポンプ18をそれぞれ一つずつ示すが、実際には、実施形態1で説明したように、正極用のタンク34及び配管164,174並びにポンプ184、負極用のタンク35及び配管165,175並びにポンプ185をそれぞれ備える。
図5についても同様である。以下、タンク3、配管16,17、ポンプ18とまとめて呼ぶことがある。
【0050】
(コンテナ)
コンテナ2は、代表的には、一般貨物の輸送等に利用されるドライコンテナが挙げられる。コンテナ2の形状は、代表的には直方体状、特に
図4に例示するように設置状態において横長の直方体状が挙げられる(
図4の紙面下側が設置面側)。このようなコンテナ2は、設置箇所をなす長方形状の底部20と、底部20に対向配置される長方形状の天板部21と、底部20の長辺と天板部21の長辺とを繋ぐ一対の側面部22,22(
図5参照。
図4では紙面奥側の側面部22のみ見える)と、底部20の短辺と天板部21の短辺とを繋ぐ一対の端面部23,23とを備えるものが挙げられる。コンテナ2は、端面部23や側面部22等に開閉自在な扉(図示せず)を備えることができる。必要に応じて扉を開けて、RF電池1Bの運転条件を調整したり、RF電池1Bの構成要素を点検したりすること等ができる。ここではコンテナ2の設置状態において、コンテナ2の長手方向に沿った大きさを長さ、長手方向に直交し、底部20から天板部21に向かう方向を高さ方向、高さ方向に沿った大きさを高さ、長手方向に直交し、一方の側面部22から他方の側面部22に向かう方向を幅方向、幅方向に沿った大きさを幅と呼ぶ。
【0051】
コンテナ2のサイズは、収納する構成要素の大きさ等に応じて適宜選択できる。コンテナ2として、例えば、ISO規格(例、ISO 1496-1:2013等)に準拠する国際海上貨物用コンテナ、代表的には20フィートコンテナや40フィートコンテナ、45フィートコンテナ、これらよりも高さが大きい20フィートハイキューブコンテナや40フィートハイキューブコンテナ、45フィートハイキューブコンテナ等が利用できる。コンテナ2のような大型の容器であれば、複数のセルスタック10が横並びされたスタック群100、更には大型のセルスタック10を含むスタック群100等を収納でき、大出力電池とし易い。コンテナ2の構成材料は、鋼(例、一般構造用圧延鋼材 SS400)等の金属が挙げられる。コンテナ2の構成部材を金属製とする場合、電解液が接触する可能性がある領域、少なくともタンク室2T(後述)の内面等には、電解液と反応せず、電解液に対する耐性を有する樹脂(実施形態1参照)や耐酸塗装、めっき(例、貴金属やニッケル、クロム等の金属)等からなる被覆層を備えることが好ましい。コンテナ2の内面全面(後述する仕切部24を含む)に被覆層を備えることがより好ましい。
【0052】
この例のコンテナ2は、その横長の内部空間をコンテナ2の長手方向に二つに分ける仕切部24を備え、一方の端面部23側(
図4では右側)をセル室2Cとし、他方(同、左側)の端面部23側をタンク室2Tとする。即ち、コンテナ2内において、セル室2Cとタンク室2Tとがコンテナの長手方向に横並びされる。セル室2Cは、スタック群100、熱交換部4、ポンプ18を含めて配管16,17を収納する。タンク室2Tは、タンク3を収納する。コンテナ2内の長手方向の一端側にスタック群100、熱交換部4、配管16,17をまとめて収納し、他端側にタンク3を収納する形態(以下、サイド形態と呼ぶ)は、例えばタンク3を挟んで一端側にスタック群100及び配管16,17の一部、他端側にポンプ18及び配管16,17の残部、熱交換部4等が配置されるタンク介在形態に比較して、各セルスタック10とタンク3間の配管16,17の配置構造を単純にし易い上に、配管16,17を短くし易い。そのため、各セルスタック10と配管16,17との接続作業や熱交換部4の取付等を行い易い。また、スタック群100と熱交換部4とを近接配置し易く、電解液を効率的に冷却できる。
【0053】
この例の仕切部24は、底部20から立設され、その上端が天板部21に至る高さと、一方の側面部22から他方の側面部22間に至る幅とを有する長方形状の板材であり、いわば端面部23の仮想の平面面積に近い大きさ及び形状を有する。このような仕切部24は、ゴム等の可撓性材料からなるタンク3であっても保形し易い。この仕切部24にはタンク3に接続される配管16,17が挿通する挿通孔を設ければ、タンク室2Tとセル室2C間で電解液を流通できる。仕切部24の形状、大きさ等は適宜変更できる。仕切部24の少なくとも一部を省略することもできる。仕切部24における底部20の内面からの立設高さを例えばタンク3における配管16,17との接続箇所の位置よりも低くすれば、上述の挿通孔を不要にできる。
【0054】
仕切部24は、セル室2C、タンク室2Tが所望の容積となるように設ければよい。この例では、タンク室2Tの容積がセル室2Cの容積の概ね2倍程度となる位置に仕切部24を設けているが、適宜変更できる。例えば、タンク室2Tの容積とセル室2Cの容積とを実質的に等しくしたり、セル室2Cをより大きく(タンク室2Tをより小さく)したりすることもできる。タンク室2Tが大きいことで、電解液量を増大でき、大容量電池とすることができる。
【0055】
上述のサイド形態では、RF電池1Bを設置する際に、構成要素を収納したコンテナ2をクレーン等で吊り上げると傾くことが有り、所定の設置場所に底部20を載置し難いことが考えられる。従って、吊り上げ時にコンテナ2が傾かないように、好ましくは底部20が水平に維持されるように重量バランスを考慮して、セル室2Cとタンク室2Tとの容積分配割合、セル室2C内の収納物(後述するその他の収納部材も含む)について質量やセル室2C内での配置位置、タンク3の質量等を調整することが好ましい。
【0056】
以下、タンク室2Tの容積がセル室2Cの容積よりも大きく、タンク室2Tの長さL
2Tがセル室2Cの長さL
2Cよりも長い場合を考える。
図6,
図7に示すように、コンテナ2の長手方向及び高さ方向の中心をP(
図6)、コンテナ2の長手方向及び幅方向の中心をQ(
図7)、コンテナ2の長さをL、コンテナ2の幅をW(
図7)、コンテナ2の重心をGとする。また、
図6に示すように、中心Pからコンテナ2の左側の端面部23までの領域をタンク室2Tの大領域t
1とし、中心Pからコンテナ2の右側の端面部23までの領域のうち、仕切部24までの領域をタンク室2Tの小領域t
2とし、その残部をセル室2Cとする。このようなコンテナ2にスタック群100、熱交換部4、タンク3、配管16,17を収納した状態(
図4等)の縦断面において、タンク室2Tの大領域t
1の質量をwt
1とし、中心Pから大領域t
1の重心(点P
1)までの距離をLt
1とする。タンク室2Tの小領域t
2の質量をwt
2とし、中心Pから小領域t
2の重心(点P
2)までの距離をLt
2とする。セル室2Cの質量をwcとし、中心Pからセル室2Cの重心(点Pc)までの距離をLcとする。このとき、上述のスタック群100等を収納した状態のコンテナ2において、中心Pから重心Gまでの距離をxとすると、重心Gの周りのモーメントの式は、wt
1×(Lt
1+x)+wt
2×(x-Lt
2)=wc×(Lc-x)である。従って、x=(wc×Lc-wt
1×Lt
1+wt
2×Lt
2)/(wc+wt
1+wt
2)となる。
【0057】
ここで、直方体状のコンテナ2であって、その重心G
0が直方体の中心(長手方向の中心線と幅方向の中心線と高さ方向の中心線との交点)にあるものを
図8に示すようにコンテナ2の天板部21の四隅にワイヤーを取り付け、重心G
0を通る直線方向に吊り上げる場合を考える。ここでの吊り上げ点Rは、重心G
0を通り、天板部21に垂直な直線と、各ワイヤーに沿った直線であって天板部21に対する角度がθである直線との交点である。この場合、各ワイヤーの張力はいずれも等しく、左側の張力をF
1、右側の張力をF
2とし、コンテナの質量をwとすると、F
1=F
2=(1/4)×(1/sinθ)×w×重力加速度と表される。コンテナ2の重心G
0が片側(
図6では右側)にずれると、張力F
1,F
2のバランスが変化する。このように直方体状のコンテナ2の重力位置がコンテナ2の縦断面における中心から長手方向の一端又は他端に片寄った場合でも、安全に吊り上げられるように、コンテナ2の重量バランスを調整することが望まれる。
【0058】
図6に示すようにコンテナ2の天板部21の長手方向の一端及び他端をそれぞれ力M
1,M
2で吊り上げた場合、重心Gの周りのモーメントの式は、M
1×[(1/2)×L+x]=M
2×[(1/2)×L-x]である。従って、M
1={[(1/2)×L-x]/[(1/2)×L+x]}×M
2となる。x=(1/2)×L~(1/20)×Lを代入して、M
1とM
2との比M
1:M
2から、上述の張力F
1とF
2との比F
1:F
2を求め、この張力の比から重心位置がG
0からGにずれた場合の偏心率は、+100%~+10%となる。例えば、x=(1/3)×Lのとき、M
1:M
2=(1/5):1である。この比率を用いて、2×F
1+2×F
2=1となる分母は12であることから、F
1:F
2=(1/12):(5/12)となる。このとき、Δ(F
2-F
1)×2=2/3であるから、x=(1/3)×Lのときの偏心率は+66.7%である。上記偏心率は、xの値が小さいほど低くなる。ここで、上記偏心率が70%未満であれば、安全な吊り上げが行えるため、x≦(1/3)×Lを満たすように、コンテナ2の重量バランスが調整されていることが好ましい。x≦(1/4)×L(偏心率50%以下)、更にx≦(1/6)×L(偏心率33%以下)を満たすと、重量バランスにより優れ、コンテナ2をより安定して吊り上げられる。
【0059】
なお、RF電池1Bの設置前にはタンク3内に電解液6を貯留せず空の状態で設置現場に搬送し、設置後にタンク3内に電解液6を貯留すれば、RF電池1Aの搬送時の重量を軽減でき、搬送や設置作業を行い易い。この場合、タンク室2T側の質量は、重量物であるスタック群100等の構成要素を収納するセル室2C側の質量に比較して小さくなり易い。従って、上述のようにx≦(1/3)×Lを満たすように、各構成要素の質量や長手方向の配置位置等を調整すると設置作業性に優れて好ましい。
【0060】
上述のタンク介在形態では、例えばタンク3の中心がコンテナ2の長手方向の中心に重複するようにタンク3をコンテナ2内に収納し、このタンク3を挟むように、コンテナ2の一端側にスタック群100、他端側にポンプ18を含む配管16,17及び熱交換部4等を収納すると、縦断面における重量バランスをとり易い傾向にある。
【0061】
上述のサイド形態、タンク介在形態のいずれについても、コンテナ2の重心位置がコンテナ2の水平断面における中心から左側又は右側に片寄っている場合には、コンテナ2の水平断面における重量バランスを調整することが好ましい。この重量バランスの調整は、このコンテナ2をトラック等の車両によって陸上輸送する場合に、道路のカーブでの遠心力によってトラック等が転倒しないように行うことが望まれる。具体的には、片荷重が10%以内となるように重量バランスを調整することが好ましい。
図7に示すようにコンテナ2の水平断面において、中心Qから重心Gまでの距離をyとし、上述の縦断面での偏心率の求め方と同様にして、距離xを距離yに置換し、長さLを幅Wに置換すると、片荷重を10%以下とするには、y≦(1/20)×Wを満たすように、コンテナ2の重量バランスが調整されていることが好ましい。y≦(1/25)×W(片荷重:8%以下)、更にy≦(1/30)×W(片荷重:6.7%以下)を満たすと、重量バランスにより優れ、コンテナ2をより安定して吊り上げられる。
【0062】
その他、コンテナ2においてタンク3を囲む領域には断熱材を配置すると、コンテナ2外の環境に起因するタンク3内の電解液6の温度変化を抑制し易く好ましい。復路の配管17に熱交換部4を設けて、冷却した電解液6をタンク3に戻すように構成すれば、電解液6や配管16,17等の熱劣化を防止し易い。この例では、仕切部24、
図4において左側の端面部23、底部20及び天板部21並びに二つの側面部22,22におけるタンク室2Tの形成領域に断熱材を備えることが挙げられる。
【0063】
(タンク)
タンク3は、コンテナ2に沿った形状、ここでは直方体状とすれば、タンク3の容積を大きくして電解液の貯留量を増大し易い。この例の正極タンク34及び負極タンク35はいずれも横長の直方体状で、同じ大きさである。両タンク34,35を合せると、タンク室2Tの内周形状に沿っており、この合わせた大きさは、タンク室2Tの内寸よりも若干小さい程度である(
図5)。この例では、両タンク34,35はコンテナ2の幅方向に並んで収納される。特に、ゴム等の可撓性材料からなるタンク3であれば、弾性変形可能であるため、大容積のタンク3であってもコンテナ2内に収納し易い上に、タンク3の内部圧力が変動しても、弾性変形によって内部圧力に起因する応力を緩和し易い。
【0064】
上述の上昇形態とする場合には、
図4に示すようにタンク3における往路の配管16との接続箇所をタンク3の下方(
図4ではコンテナ2の底部20寄り)に設け、タンク3における復路の配管17との接続箇所をタンク3の上方(同、天板部21寄り)に設けることが挙げられる。
【0065】
(熱交換部)
熱交換部4は、実施形態1と同様にスタック群100の上方に設ける。
図5では、熱交換部4の下方にスタック群100が位置し、両者が重なった状態を例示する。実施形態1で説明したように、熱交換部4の平面面積をスタック群100の仮想の平面面積に対応させることで、コンテナ2内、特にセル室2C内といった容積が比較的小さい領域内であっても、大型の熱交換部4を収納できる。この例では、正負の循環経路を上述の上昇形態とし、復路の配管17のうち、排出近傍箇所170,171に熱交換部4を設けている。
【0066】
(その他の収納部材)
その他、コンテナ2内には、循環機構においてポンプ18等の電解液の循環に関与する機器等を制御する制御部、以下のタンク3の換気機構(いずれも図示せず)等を収納できる。
【0067】
タンク3の換気機構は、例えば、ガス発生装置、ガス流量調整機構、逆流防止機構、タンク3に接続される配管等を備える。
ガス発生装置は、タンク3の気相を換気するためのフローガスを発生させるものである。ここで、RF電池では、例えば、電池反応の副反応等に起因して負極で水素元素を含有するガスが発生して負極タンクの気相に貯まることがある。フローガスによって例えば負極タンク35の気相を換気すれば、負極タンク35の気相中の水素濃度を低下させて大気中に放出できる。フローガスは不活性ガスを含む、又は実質的に不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、例えば、窒素や希ガス(アルゴン、ネオン、ヘリウム)等が挙げられる。窒素を発生可能なガス発生装置であれば、大気中から窒素を取り出せるため、半永久的にフローガスを供給できる。
【0068】
ガス流量調整機構は、上述のガス発生装置等のガス供給源からタンク3の気相に供給されるフローガスの供給量を調整するものである。ガス流量調整機構は、例えば、流量計とバルブとを備えて、流量計で計測したフローガスの流量に基づいてバルブの開度を調整する。流量に基づく開度の決定やバルブの動作等は、上述の制御部によって行うことが挙げられる。
【0069】
逆流防止機構は、タンク3に接続された排気用の配管に設けられて、排気ガスがタンク3の気相に逆流することを防止する。逆流防止機構は、例えば、公知の水封弁等が利用できる。
【0070】
上述のフローガスによってタンク3の気相を換気する具体的な形態として、両タンク34,35を連続して換気する形態(1),(2)、各タンク34,35を独立して換気する形態(3)が挙げられる。(1)正極タンク34⇒負極タンク35⇒排気という形態では、両タンク34,35の気相を連通管で接続すると共に、正極タンク34の気相に上述のガス発生装置を接続し、負極タンク35の気相に排気用の配管を接続する。そして、正極タンク34の気相にフローガスを導入し、正極タンク34及び連通管を介して負極タンク35の気相にもフローガスを供給すると共に、排気用の配管から排出する。排気用の配管の一端はタンク3に接続し、他端はコンテナ2外に開口させて、コンテナ2外の大気中に排気したり、コンテナ2内に開口させてコンテナ2の側面部22等に設けた換気口から排気したりすることが挙げられる。(2)負極タンク35⇒正極タンク34⇒排気という形態では、上記(1)と同様に連通管を接続すると共に、上記(1)とは逆に、正極タンク34の気相に排気用の配管を接続し、負極タンク35の気相に上述のガス発生装置を接続する。負極タンク35の気相にフローガスを導入し、連通管及び負極タンク35の気相を介して正極タンク34の気相にフローガスを供給すると共に排気する。(3)の形態では、各タンク34,35の気相に上述のガス発生装置と排気用の配管とを接続し、各タンク34,35の気相にフローガスを導入すると共に排気する。
【0071】
(主要な効果)
実施形態2のRF電池1Bは、コンテナ2内に一括してスタック群100、タンク3、熱交換部4、配管16,17を収納するため、工場といった作業スペースを大きく確保し易い場所で組み立てられて、組立作業性により優れる。この例のように、コンテナ2内の長手方向の一端側をセル室2Cとし、スタック群100、熱交換部4、配管16,17をセル室2Cに収納する場合には、上述のタンク介在形態に比較して、配管構造を単純にし易い上に、配管16,17を短くし易い。このことから、配管16,17の組立時間や、熱交換部4の組付時間等も短縮でき、組立作業性により優れる。
【0072】
かつ、実施形態2のRF電池1Bは、コンテナ2内に一括してスタック群100が収納されるものの、スタック群100の上方に熱交換部4を備えるため、実施形態1と同様に放熱性に優れる。配管16,17を短くし易いことからも、熱交換部4の設置スペースを大きく確保し易く、大きな熱交換部4を備えられることからも、放熱性に優れる。この例のようにセル室2Cといった比較的狭いスペースにスタック群100が収納される場合でも、上述の縦積みの場合よりも大気の流動空間を比較的広く確保し易く、大気が流動して配管16,17が空冷され易いと期待されることからも、放熱性に優れる。また、この例のようにスタック群100、熱交換部4、配管16,17をセル室2Cに収納する場合には、上述のように配管16,17が短いと、電解液を熱交換部4に速やかに導入し易く、効率よく冷却できることからも、放熱性に優れる。更に、この例のように、正負の循環経路を上述の上昇形態とし、熱交換部4の配置箇所を排出近傍箇所170,171とすると、高温の電解液を速やかに熱交換部4に導入でき、効率よく冷却できることからも、放熱性に優れる。
【0073】
加えて、上述のように重量バランスを考慮して、スタック群100や配管16,17、タンク3の質量や長手方向の配置位置、更には幅方向の配置位置を調整することで、上述の構成要素を収納したコンテナ2を設置場所に載置する際に、クレーン等でコンテナ2を安定して吊り上げられる。上述の構成要素を収納したコンテナ2をトラック等で搬送する際には、トラック等が安定して走行できる。そのため、設置作業性、搬送作業性にも優れる。
【0074】
その他、RF電池1Bは、以下の効果を奏する。
(1)一つのコンテナ2に、スタック群100、タンク3、配管16,17等の構成要素が一括して収納されているため、搬送し易い、設置し易い、上記構成要素をコンテナ2によって保護できる、といった効果を奏する。
(2)コンテナ2内をセル室2Cとタンク室2Tとに分けることで、各セルスタック10やポンプ18、上述の制御部等の点検等を行い易い。
【0075】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0076】
例えば、
図1,
図4,
図5において、スタック数、循環経路等を変更したり、
図4,
図5においてコンテナ2内の収納物の配置を変更したり、仕切部24を省略したりすること等が挙げられる。
【0077】
スタック群100を主に収納するコンテナと、タンク3を主に収納するコンテナとをそれぞれ独立したコンテナとすることができる。
例えば、スタック群100と、熱交換部4、配管16,17等を収納し、タンク3を収納しない機器用コンテナと、タンク3を収納し、スタック群100を収納しないタンク用コンテナとを備えるRF電池とすることが挙げられる。機器用コンテナとタンク用コンテナとに分けることで、スタック数をより多くし易い。タンク用コンテナは、正負のタンク34,35を一括して収納する形態、正極タンク34を収納する正極コンテナと、負極タンク35を収納する負極コンテナとを備える形態のいずれも利用できる。
【符号の説明】
【0078】
1A,1B レドックスフロー電池(RF電池)
10C 電池セル
11 隔膜
14 正極電極
15 負極電極
16,17,164,165,174,175 配管
170,171 排出近傍箇所
18,184,185 ポンプ
100 スタック群
10,101,102 セルスタック
110 セルフレーム
111 双極板
112 枠体
113 給液孔
114,116 スリット
115 排液孔
118 シール材
120 サブセルスタック
122 給排板
130 エンドプレート
132 締付部材
2 コンテナ
2C セル室
2T タンク室
20 底部
21 天板部
22 側面部
23 端面部
24 仕切部
3 タンク
34 正極タンク
35 負極タンク
4 熱交換部
40 配管集積部
42 冷却機構
6 電解液
t1 大領域
t2 小領域