(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】改善された耐食性を備えた構造用接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20220119BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20220119BHJP
C09J 163/10 20060101ALI20220119BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220119BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220119BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220119BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20220119BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J163/02
C09J163/10
C09J11/04
C09J11/06
C09J7/35
C09J5/06
C08G59/20
B32B27/38
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2018526101
(86)(22)【出願日】2016-11-14
(86)【国際出願番号】 US2016061761
(87)【国際公開番号】W WO2017087295
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-14
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クーラ, エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】エルギミャビ, ソハイブ
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-156226(JP,A)
【文献】国際公開第2014/031838(WO,A1)
【文献】特表2015-501853(JP,A)
【文献】特表2015-529711(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064561(WO,A1)
【文献】特開2014-091789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 59/20
B32B 27/20,27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ化合物と、
(b)熱可塑性化合物と、
(c)エポキシ硬化剤と、
(d)少なくとも1つの無機充填剤と、
(e)少なくとも1つのエポキシ部分及び少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキル基を含む、少なくとも1つの構成成分であって、前記エポキシ化合物(a)とは異なる構成成分(e)、
を含み、前記少なくとも1つの無機充填剤が水を吸収できる、1剤型の熱硬化性構造用接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの無機充填剤(d)が、水と化学的に反応できるか、または金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から選択されるか、または水と化学的に反応できかつ金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載の構造用接着剤組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記少なくとも1つの構成成分(e)を前記組成物の総重量に対して0.1~20重量%の量で含むか、または前記少なくとも1つの無機充填剤(d)を前記組成物の総重量に対して0.5~50重量%の量で含むか、または前記少なくとも1つの構成成分(e)を前記組成物の総重量に対して0.1~20重量%の量で含みかつ前記少なくとも1つの無機充填剤(d)を前記組成物の総重量に対して0.5~50重量%の量で含む、請求項
1又は2に記載の構造用接着剤組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの構成成分(e)が、式(I)
(R
1)
n-A-B-C-(R
2)
m (式(I))
[式中、
R
1は直鎖又は分枝鎖アルキルであり、
R
2はエポキシ部分であり、
A、B、Cは異なる、又は、同一であり、かつ直鎖又は分枝鎖の、アルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、フェニル、フェノキシ、カルボキシであり、かつ任意に、直鎖又は分枝鎖の、アルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、フェニル、フェノキシ及びカルボキシによって置換されており、
nは1、2、又は3であり、
mは1、2、又は3である]による化合物である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の構造用接着剤組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの構成成分(e)が、構成成分
【化1】
【化2】
【化3】
並びにこれらの混合物及び誘導体から選択される、請求項
4に記載の構造用接着剤組成物。
【請求項6】
(a)-40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11MPaの、DIN EN 1465による重なりせん断強度をもたらすか、(b)少なくとも165Nの、ASTM D1876によるT型剥離強度をもたらすか、(c)湿潤状態後に、30%以下の、DIN EN 1465による重なりせん断強度の低下をもたらすか、前記(a)、(b)、(c)の任意の組み合わせを備え、前記湿潤条件とは、試験片を、水を含ませた脱脂綿で包んだ後、ポリエチレン袋中に気密密閉し、70℃及び相対湿度100%で7日間保存し、包んだ試料を開いた後、試験片を23℃で2時間保存した後、-28℃で2時間保存し、続いて標準的な雰囲気下で再コンディショニングした条件である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の構造用接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の構造用接着剤組成物を含む、耐食性構造用接着フィルム。
【請求項8】
部品を結合する方法であって、前記方法が、以下の工程、すなわち、
i.第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
ii.請求項1~
6のいずれか一項に記載の構造用接着剤組成物、又は請求項
7に記載の構造用接着フィルムを、前記第1の部品及び/又は前記第2の部品の少なくとも1つの面に対して提供する工程と、
iii.前記第1の部品と前記第2の部品とを、前記エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い温度で接着することによって、前記第1の部品と前記第2の部品との間に接合部を形成する工程と、
iv.前記熱硬化性組成物を熱硬化させるように、前記接合部を、前記エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
(I)第1の部品及び第2の部品と、
(II)熱硬化された構造用接着フィルムと、を備え、
前記熱硬化された構造用接着フィルムが、前記構造用接着フィルムの第1の末端に近い第1の部分と、前記構造用接着フィルムの前記第1の末端の反対側の第2の末端に近い第2の部分と、を有し、
前記熱硬化された構造用接着フィルムが、前記第1の部品と前記第2の部品との間に提供され、前記第1の部品と前記第2の部品とを共に接着しており、かつ
前記熱硬化された構造用接着フィルムが、請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱硬化性組成物、又は請求項
7に記載の構造用接着フィルムの熱硬化によって得られる、部品アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本開示は、例えば金属部品/基材等の部品の結合に好適な、構造用接着剤組成物と、構造用接着剤組成物を含む構造用接着フィルムと、に関する。本開示は、更に、本開示による構造用接着フィルムの熱硬化によって得られる熱硬化された構造用接着フィルムと、このような熱硬化された接着フィルム及び少なくとも1つの部品を備える部品アセンブリとに関する。別の態様において、本開示は、例えば金属部品/基材等の部品を結合する方法に関する。また、更なる態様において、本開示は、例えば金属部品等の部品を結合するための、このような構造用接着フィルムの使用に関する。
【0002】
(背景)
車両の金属接合部は、接着剤を用いて形成される場合がある。例えば、接着剤を用い、例えば屋根パネル等の金属パネルを、車両の支持構造又はシャーシに結合する場合がある。更に、接着剤を、車両クロージャパネルの2つの金属パネルの接合に用いる場合がある。車両クロージャパネルは、典型的には、外側金属パネル及び内側金属パネルのアセンブリを含み、外側パネルの縁部を内側パネルの縁部の上に折り重ねることによってヘム構造が形成される。典型的には、接着剤がパネルの間にもたらされ、これらを共に結合する。更に、典型的には、シーラントを金属パネルの接合部に適用し、十分な耐食性をもたらす必要がある。例えば、米国特許第6,000,118号は、2つのパネルの対向面の間への流動性シーラントビーズの使用、及び外側パネル上のフランジと内側パネルの露出面との間への未硬化塗料様樹脂の薄いフィルムの使用を開示している。塗料フィルムは、完成したドアパネル上で実施される焼き付け作業により、固体不透過状態に硬化される。米国特許第6,368,008号は、2つの金属パネルを共に固定するための接着剤の使用を開示している。接合部の縁部は、金属コーティングによって更に封止される。国際公開第2009/071269号は、ヘムフランジ用のシーラントとして、膨張性エポキシペースト接着剤を開示している。更なるヘム加工構造が、米国特許第6,528,176号に開示されている。
【0003】
2つの金属パネル、特に車両クロージャパネルの外側パネルと内側パネルとを、接合部を封止するための更なる材料を必要としない接着剤で接合できる、接着剤組成物を開発するための更なる取り組みが行われてきた。このように、十分な結合をもたらす一方でまた、接合部を封止し、かつ耐食性をもたらす接着システムを開発することが望ましくなった。部分的な解決方法が、例えば国際公開第2007/014039号に記載されており、膨張熱硬化されたフィルム強靭化発泡フィルムの、熱膨張性かつ硬化性のエポキシ系前駆体が開示されている。この前駆体は固体及び液体のエポキシ樹脂の混合物を含み、硬化して、好ましいエネルギー吸収特性及び間隙充填特性をもたらすことが主張されている。別の部分的な解決方法が国際公開第2011/141148号に記載されており、熱活性化構造用接着剤が記載されている。この接着剤は周囲温度で固体でかつ指触乾燥状態であり、高温で活性化させて接着性を生じさせることができ、硬化させずに型に入れて成形することができる。
【0004】
更に、構造用接着剤組成物から得られた熱硬化されたフィルムが、腐食及び経時劣化に対して一定の抵抗性を呈することも、非常に望ましい。工業用途で用いられる方法、例えば、接着剤の油面への適用、並びに部品及び接着剤の他の液体組成物への浸漬を含み得る一連の処理工程における部品の結合等、また、結合されたアセンブリの要求事項のため、接着剤は多くの処理条件下で作用しなくてはならず、その一方で、経時劣化後も良好な性能を更にもたらさなくてはならない。
【0005】
当該技術分野において開示されている接着剤組成物及び接着システムに関連する技術的利点に異議を唱えるわけではないが、未硬化状態における一定の取り扱い性と、硬化後、特に、一定の期間にわたり、高温及び湿気等の、経時劣化又は腐食条件に曝露された後に優れた結合性能とを併せ持つ、高性能の構造用接着剤への必要性が依然として存在する。
【0006】
(概要)
第1の態様によると、本開示は、エポキシ化合物と、熱可塑性化合物と、エポキシ硬化剤と、少なくとも1つの無機充填剤と、を含み、少なくとも1つの無機充填剤が水を吸収できる、熱硬化性構造用接着剤組成物を提供する。
【0007】
第2の態様によると、本開示は、本明細書に記載の構造用接着剤組成物を含む耐食性構造用接着フィルムに関する。
【0008】
別の態様において、本開示は、部品を結合する方法であって、方法が、以下の工程、すなわち、
i.第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
ii.本開示による構造用接着剤組成物又は構造用接着フィルムを、第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの面に対して提供する工程と、
iii.第1の部品と第2の部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い活性化温度よりも低い温度で接着することによって、第1の部品と第2の部品との間に接合部を形成する、好ましくは、第1の部品と第2の部品との間に金属接合部を形成する工程と、
iv.熱硬化性組成物を熱硬化させるように、接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0009】
更なる態様によると、本開示は、第1の部品及び第2の部品と、熱硬化された構造用接着フィルムと、を備え、熱硬化された構造用接着フィルムが、構造用接着フィルムの第1の末端に近い第1の部分と、構造用接着フィルムの第1の末端の反対側の第2の末端に近い第2の部分と、を有する、部品アセンブリに関する。熱硬化された構造用接着フィルムは、第1の部品と第2の部品との間に提供され、第1の部品と第2の部品とを共に接着しており、かつ熱硬化された構造用接着フィルムは、本明細書に記載の熱硬化性組成物又は構造用接着フィルムの熱硬化によって得られる。
【0010】
更に別の態様において、本開示は、工業用途において、好ましくはホワイトボディプロセス(body-in-whiteprocesses)において部品を結合するための、本開示による熱硬化性組成物又は構造用接着フィルムの使用に関する。
【0011】
(詳細な説明)
本開示の任意の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示は、その用途において以下の記載に示す構成の詳細及び構成成分の配置に限定されるものではないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な方法で実行又は実施可能である。本明細書で用いる場合、用語「a」、「an」、及び「the」は互換的に用いられ、1つ以上を意味し、「及び/又は」は、一方又は両方の記載された事例が起こり得ることを示すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。また、本明細書において、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等を含む)。また、本明細書において、「少なくとも1」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)を含む。また、本明細書で用いる語法及び専門用語は説明を目的としたものであり、限定するものとみなしてはならないことを理解されたい。限定することを意図する「からなる(consisting)」の使用とは異なり、「含む(including、containing、comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形の使用は、限定することを意図するものではなく、これらの後に列挙される要素並びに追加要素を包含することを意図するものである。
【0012】
組成物の成分量は、別途明記しない限り、重量%(又は「%wt.」若しくは「wt.%」)によって示され得る。全成分の量は、別途明記しない限り、100重量%となる。成分の量がモル%によって特定される場合、全成分の量は、別途明記しない限り、100モル%となる。詳細には、成分の量は、フルオロエラストマー100部当たりの部によって示され得る。
【0013】
別途明示的に記載しない限り、本開示の全ての実施形態は、自由に組み合わせることができる。
【0014】
第1の態様によると、本開示は、
(a)エポキシ化合物と、
(b)熱可塑性化合物と、
(c)エポキシ硬化剤と、
(d)少なくとも1つの無機充填剤と、を含み、少なくとも1つの無機充填剤が水を吸収できる、熱硬化性構造用接着剤組成物を提供する。
【0015】
驚くべきことに、上記の(a)~(d)の組み合わせを含む熱硬化性構造用接着剤組成物は、所望の接着性、例えば、特に湿潤状態(cataplasma conditions)等の経時劣化条件に付された後の高い剥離強度及び高い重なりせん断強度、並びに耐食性等を呈する、熱硬化されたフィルムをもたらし得ることが、見出された。
【0016】
エポキシ化合物
本開示による構造用接着フィルムは、平均エポキシ当量が250g/当量未満であるエポキシ化合物を含む熱硬化性組成物を含む。本明細書で用いるための好適なエポキシ化合物は、本明細書に鑑みて、当業者により容易に特定されるであろう。
【0017】
好ましい態様において、本明細書で用いるためのエポキシ化合物は、平均エポキシ当量が250g/当量未満、好ましくは230g/当量未満、より好ましくは220g/当量未満、更により好ましくは200g/当量未満である。好ましくは、本明細書で用いるためのエポキシ化合物は、平均エポキシ当量が100~200g/当量、好ましくは150~200g/当量、より好ましくは170~200g/当量に含まれる。更に好ましくは、本明細書で用いるためのエポキシ化合物は、重量平均分子量が700g/mol以下、好ましくは500g/mol以下、より好ましくは400g/mol以下である。有利には、本明細書で用いるためのエポキシ化合物は、重量平均分子量が200~400g/mol、好ましくは300~400g/mol、より好ましくは350~400g/molに含まれる。本明細書で用いるためのエポキシ化合物は、好ましくは、平均的なエポキシ官能性を有する、すなわち、1分子当たりの重合可能なエポキシ基の平均数が少なくとも2、より好ましくは2~4であるエポキシ化合物の群から選択される。
【0018】
開環反応によって重合可能なオキシラン環を少なくとも1つ有する任意の有機化合物を、本開示による構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中に、エポキシ化合物として用いることができる。ただし、これらの有機化合物は、平均エポキシ当量が250g/当量未満であることを条件とする。このような材料は、広くエポキシと呼ばれ、モノマーエポキシ化合物及びポリマーエポキシ化合物を含み、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であり得る。有用な材料は、概して、1分子当たり少なくとも2個の重合可能なエポキシ基、より好ましくは1分子当たり2~4個の重合可能なエポキシ基を有する。
【0019】
これらのエポキシ化合物は室温において概して液体又は半液体であり、反応性エポキシシンナー又は反応性エポキシ希釈剤と呼ばれることも多い。これらの化合物は、好ましくは、ジフェノール及びポリフェノール、又は脂肪族若しくは脂環式ヒドロキシル化合物の、任意に置換されたジグリシジルエーテル及びポリグリシジルエーテルの群から選択される。本明細書で用いるための好適なエポキシ化合物は、Momentiveより商標名Epikote(商標)828で、Dow Chemical Co.より商標名DER 331、DER 332及びDER 334で、Resolution Performance Productsより商標名Epon(登録商標)828で、Polysciences,Inc.より商標名Epon(登録商標)825/826/830/834/863/824、Hexionより商標名Bakelite(登録商標)EPR 164で、Huntsmanより商標名Araldite(登録商標)GY 250/260で、又はLeuna Harzeより商標名EPILOX(登録商標)A 1900で市販されている。
【0020】
本開示による構造用接着剤組成物において有用なエポキシ化合物は、好ましくは、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、脂肪族アミン及び芳香族アミン、例えば、メチレンジアニリン及びアミノフェノール等、並びにハロゲン置換ビスフェノール樹脂、ノボラック、脂肪族エポキシ、並びにこれらの組み合わせ及び/又はこれらの中間から誘導される。より好ましくは、有機エポキシは、ビスフェノールA及びビスフェノールF、並びにエポキシノボラックのジグリシジルエーテルを含む群から選択される。
【0021】
熱硬化性構造用接着剤組成物中のエポキシ化合物の量は、好ましくは、熱硬化性構造用接着剤組成物の総重量に基づいて、20~50重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは38~50重量%に含まれる。
【0022】
熱可塑性化合物
本開示による熱硬化性組成物構造用接着剤は、好ましくは軟化点が30℃~140℃に含まれる熱可塑性化合物を更に含む。本明細書で用いるための好適な熱可塑性化合物は、本明細書に鑑みて、当業者により容易に特定されるであろう。好ましくは、熱可塑性化合物は熱可塑性樹脂である。したがって、用語「熱可塑性化合物」及び「熱可塑性樹脂」は、本開示において互換的に用いられる場合がある。熱可塑性化合物及び熱可塑性樹脂は、フィルム形成剤と呼ばれることも多い。
【0023】
好ましい態様において、本明細書で用いるための熱可塑性樹脂は、軟化点が、70℃~120℃、好ましくは80℃~100℃、より好ましくは85℃~95℃に含まれる。本明細書で用いるための好適な熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0024】
本明細書で用いるための好適な熱可塑性樹脂は、有利には、ポリエーテル熱可塑性樹脂、好ましくはポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂の群から選択することができる。好ましい態様において、本明細書で用いるための熱可塑性樹脂は、好ましくは、フェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、特にポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂の群から選択される。本明細書で用いるための好適なポリビニルアセタール樹脂の例としては、Dow Chemicalsより市販されている、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、カルボキシル修飾ビニルコポリマー、及びヒドロキシル修飾ビニルコポリマーが挙げられる。本開示の非常に好ましい態様において、本明細書で用いるための熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂の群から選択される。本明細書で用いるための好適な熱可塑性樹脂は、InChem Corporationより、商標名PKHP、PKHH、PKHA、PKHB、PKHC、PKFE、PKHJ、PKHM-30又はPKHM-301、PKCPで市販されている。
【0025】
構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中の熱可塑性樹脂の量は、典型的には、熱硬化性組成物の総重量に基づいて、7~40重量%、好ましくは10~24重量%、より好ましくは15~24重量%の熱可塑性化合物に含まれる。
【0026】
また、エポキシ化合物と熱可塑性化合物、すなわち熱可塑性樹脂との重量比は、0.5~4、好ましくは1~3、より好ましくは1.5~2.5、更により好ましくは1.8~2.2に含まれることが好ましい。
【0027】
エポキシ硬化剤
本開示による構造用接着フィルムの熱硬化性組成物は、エポキシ硬化剤を更に含む。当該技術分野で周知の任意のエポキシ硬化剤を、本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中に用いることができる。本明細書で用いるための好適なエポキシ硬化剤は、有機エポキシドのオキシラン環と反応し、エポキシドを実質的に架橋させる材料である。これらの材料は、架橋反応を生じさせる、少なくとも1つの求核又は求電子部分(例えば、活性水素原子等)を含む。エポキシド鎖拡張剤は、主として有機エポキシドの鎖の間にとどまり、架橋が存在するとしてもほとんどもたらすことはないが、エポキシ硬化剤は、エポキシド鎖拡張剤とは別個のものである。本明細書で用いられるエポキシ硬化剤は、当該技術分野において、エポキシ硬化剤(epoxy hardeners)、エポキシド硬化剤(epoxide hardeners)、触媒、エポキシ硬化剤(epoxy curatives)、及び硬化剤(curatives)としても知られている。
【0028】
場合により、エポキシ硬化剤と、エポキシド硬化反応の速度を増加させるために用いられる促進剤とは、区別される。促進剤は、典型的には、エポキシ硬化剤として分類される場合もある、多機能材料である。そのため、本明細書では、硬化剤と促進剤とは区別しない。
【0029】
本明細書で用いるためのエポキシ硬化剤としては、エポキシ樹脂組成物を硬化し、架橋ポリマーネットワークを形成するために、従来から用いられているものが挙げられる。好適なエポキシ硬化剤は潜在性硬化剤と呼ばれることもあり、これは、典型的には、適切な処理条件が適用されるまでエポキシ樹脂と反応しないように選択される。このような化合物としてはまた、脂肪族及び芳香族第三級アミン、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン及びピリジン等が挙げられ、これらは触媒として作用し、実質的な架橋を生成させることができる。更に、ホウ素錯体、特にモノエタノールアミンとのホウ素錯体、2-エチル-メチルイミダゾール等のイミダゾール、テトラメチルグアニジン等のグアニジン、ジシアノジアミド(DICYと呼ばれることが多い)、トルエンジイソシアネート尿素等の置換尿素、並びに-メチルテトラヒドロキシフタル酸無水物、3-メチルテトラヒドロキシフタル酸無水物及びメチルノルボルネンフタル酸無水物等の酸無水物を用いることができる。更に他の有用なエポキシ硬化剤としては、ポリアミン、メルカプタン及びフェノールが挙げられる。本明細書で用いるための他のエポキシ硬化剤としては、カプセル化アミン、ルイス酸塩、遷移金属錯体及び分子ふるいが挙げられる。好ましくは、エポキシ硬化剤は、アミン、酸無水物、グアニジン、ジシアンジアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、エポキシ硬化剤はジシアンジアミドを含む。本明細書で用いるための好適なエポキシ硬化剤は、Air Productsより商標名Amicure(登録商標)CG-1200で、CVC Speciality Chemicalsより商標名Omicure(登録商標)U52Mで市販されている。
【0030】
構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中のエポキシ硬化剤の量は、典型的には、熱硬化性組成物の総重量に基づいて、2~15重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは2~4重量%に含まれる。
【0031】
強靭化剤
特定の態様において、構造用接着フィルムの熱硬化性組成物は、1つ以上の強靭化剤を更に含み得る。当該技術分野で周知の任意の強靭化剤を、本開示の構造用接着フィルムの熱硬化性組成物中に用いることができる。強靭化剤は、好ましくは、コア-シェル強靭化剤、CTBN(カルボキシル及び/又はニトリル末端ブタジエン/ニトリルゴム)及び高分子量アミン末端ポリテトラメチレン酸化物からなる群から選択される。
【0032】
特に好ましいコア-シェル強靭化剤は、通常、内側のコア領域及び外側のシェル領域それぞれに、異なる材料を含む。好ましくは、コアはシェルよりも固い場合があるが、これは必須ではない。シェルは、より固い材料を含んでもよい、かつ/又は、シェルは、その構成体内で層状であってもよい。最も好ましくは、内側の硬質コア構成成分は、周期表の第一、第二及び/又は第三遷移系列からの、単一及び/又は複数の有機ポリマー及び無機酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及び/又は天然鉱物、例えば、長石、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ジルコン酸塩、及び/又は他の硬化した材料、例えば、炭化物、窒化物、ケイ化物、アルミナイド、並びに/又はこれらのいくつかの組み合わせ及びその中間から構成される。外側の軟質シェル構成成分は、ゴム、例えば、ジエンゴム、オレフィンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソプレンのコポリマー、エチレンプロピレンモノマーゴム、ジエン-アクリロニトリルコポリマー、ビニル芳香族モノマーのコポリマー、SBRゴムとして知られるスチレン-ブタジエンコポリマー、及び、アクリロニトリル又は不飽和エステルと、スチレン又はビニルトルエンとの、ジエンのターポリマー等から構成され得る。軟質シェルは、好ましくは、前駆体のエポキシ構成成分と反応することができる、カルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、シアネート、イソシアネート、アミノ、及びチオール等の、官能基による修飾を含む。熱硬化性組成物において有用なコア-シェル強靭化剤は、例えば、DOWより商標名Paraloid(商標)、又はKane Ace(商標)MX153でKanekaより、又はClearstrength(商標)製品でArkemaより市販されている。別のコアシェル材料はArkemaのアクリル系耐衝撃改質剤で、商標名Durastrengthによる製品がある。
【0033】
CTBN強靭化剤は、硬化中に、そのカルボキシル官能基及び/又はニトリル官能基を介し、前駆体のエポキシド構成成分と反応することによって、これらのブタジエン/ニトリルゴム部分を、軟質の衝撃吸収セグメントとして、ハードセグメントを形成するエポキシネットワーク中に導入する。本開示において有用なCTBN強靭化剤は、例えば、Hanse Chemie AG(Hamburg,Germany)より商標名Albipox(商標)で市販されている。
【0034】
熱硬化性組成物において有用な高分子量アミン末端ポリテトラメチレン酸化物は、例えば、3M Company(St.Paul/MN,USA)より商標名「3M EPX(商標)Rubber」で市販されている。
【0035】
熱硬化性組成物中に存在する1つ以上の強靭化剤の量は、典型的には、熱硬化性組成物の総重量に基づいて、10~40重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~20重量%に含まれる。
【0036】
本開示による構造用接着剤組成物の特定の態様において、強靭化剤と熱可塑性樹脂との重量比は、有利には、1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1.5~2.5、更により好ましくは1.8~2.2に含まれる。
【0037】
無機充填剤
本開示による構造用接着剤組成物は、水を吸収できる少なくとも1つの無機充填剤を含む。このような無機充填剤をエポキシ化合物、熱可塑性樹脂及びエポキシ硬化剤と組み合わせることにより、本明細書に記載の組成物及びフィルムの耐食性及び/又は耐経時劣化性の増加を確認できる効果を有する。この点に関し、無機充填剤は、水と化学的に反応できることが好ましい。これは、当該技術分野において一般的な意味を有する。すなわち、無機充填剤は、水と化学反応を起こすことによって、未硬化状態又は更により好ましくは硬化された、すなわち、適用されて熱硬化された状態のいずれかである構造用接着剤組成物と接触し得る水を、効果的に吸収する。理論への束縛を望むものではないが、本明細書に記載の無機充填剤のこの特異な性質により、硬化された接着剤に侵入し、除去しないと接着剤内の結合又は接着剤と基材との間の結合を弱める原因となりかねない水を除去するものと考えられる。
【0038】
無機充填剤は、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から選択され、好ましくは、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O、SrO、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。これらの化合物は、特定の良好な水吸収能力を示すことが見出された。これは、恐らく、水と化学的に反応できる能力によるものである。無機充填剤は、他の化合物、特に他の無機充填剤とのブレンドとして有利に用いることができる。これらの化合物は、構造用接着剤組成物の更なる補強材として作用し得る、又は、接着剤に強度を加え得る。したがって、少なくとも1つの無機充填剤は、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O及び/又はNa2Oである、好ましくは、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O及びSiO2を含むブレンド、より好ましくは、MgO、CaO及びSiO2、金属ケイ酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸塩水和物(タルク)、ホウ酸塩、酸化物、水酸化物、チタン酸硫酸塩(sulfates titanates)、ジルコン酸塩を含むブレンド、更により好ましくは、CaO及びSiO2を含むブレンドであることが好ましい。SiO2に関しては、ヒュームドシリカ、石英ガラス、シリカゲル、及び石英から選択される、好ましくはヒュームドシリカ及び石英ガラスから選択される、より好ましくは石英ガラスであることが好ましい。
【0039】
CaOは市販品が入手可能であり、石英ガラス等のSiO2も同様である。例えば、石英ガラスは、Minco Inc.より商標名MinSil 20で入手可能である。疎水性ヒュームドシリカは、Aerosil(商標)としてEvonikより、又はCAB-O-SlL(商標)としてCabotより市販されている。
【0040】
本開示による構造用接着剤組成物は、好ましくは、無機充填剤を、組成物の総重量に対して0.5~50重量%、好ましくは組成物の総重量に対して2~40重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して10~30重量%の量で含む。
【0041】
本開示の更に好ましい実施形態において、構造用接着剤組成物は、無機充填剤構成成分としてシリカ、好ましくは石英ガラスを、組成物の総重量に対して5~30重量%、好ましくは組成物の総重量に対して10~20重量%の量で、かつ酸化カルシウムを、組成物の総重量に対して0.5~20重量%、好ましくは組成物の総重量に対して2~14重量%の量で含む。
【0042】
反応性希釈剤
本開示による構造用接着剤組成物は、少なくとも1つのエポキシ部分及び少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキル基を含む、少なくとも1つの構成成分(e)を更に含むことが好ましい。これらの化合物は、反応性希釈剤として作用し得る。したがって、反応性希釈剤という用語は、少なくとも1つのエポキシ部分及び少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキル基を有する構成成分?という用語と互換的に用いられる場合がある。これらの化合物の使用は、接着が概して改善される一方で、少なくとも部分的に油で覆われている、基材表面、特に金属基材表面への接着もまた改善されるという効果を有し得る。これは、特に、金属基材が他の金属基材に結合される工業用途にとって、特に有用である。油の付いた金属表面における改善された接着性が非常に望ましいこのようなプロセスの例は、自動車工業で一般的に用いられる、いわゆるホワイトボディプロセスである。理論への束縛を望むものではないが、アルキル基の存在により、接着剤と、工業プロセスにおいて基材の金属表面に存在し得る油との間の相溶性が増加するものと考えられる。これは、接着強度が改善するという効果を有し得、また、結合された接合部についてより良好な腐食防止をもたらす。一方、少なくとも1つのエポキシ基の存在により、反応性希釈剤のエポキシマトリックス中への組み込みが確保される。
【0043】
好ましくは、構成成分(e)、すなわち反応性希釈剤は、式(I)
(R1)n-A-B-C-(R2)m (式(I))
[式中、
R1は直鎖又は分枝鎖アルキルであり、
R2はエポキシ部分であり、
A、B、Cは異なる、又は、同一であり、かつ直鎖又は分枝鎖の、アルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、フェニル、フェノキシ、カルボキシであり、かつ任意に、直鎖又は分枝鎖の、アルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、フェニル、フェノキシ及びカルボキシによって置換されており、
nは1、2、又は2であり、
mは1、2、又は3である]による化合物である。
【0044】
更に、少なくとも1つの反応性希釈剤はグリシジルエーテルである。特に、少なくとも1つの反応性希釈剤は、下記の化合物(i)、(ii)及び(iii)から選択されることが好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【0045】
本開示による構造用接着剤組成物に有用な反応性希釈剤は、商標名Cardolite UltraLite 513、Cardura E10P及びAraldite PY 4122の市販品が入手可能である。
【0046】
本開示による構造用接着剤組成物は、少なくとも1つの構成成分(e)(反応性希釈剤)を、組成物の総重量に対して0.1~20重量%、好ましくは組成物の総重量に対して1~15重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して1.5~10重量%、更により好ましくは組成物の総重量に対して2~7重量%の量で含むことが好ましい。
【0047】
更なる充填剤
本開示による構造用接着剤組成物は、好ましくは、カーボンブラック、黒鉛、無機炭素源、ガラスビーズ、ガラスチップ、金属チップ、金属フレーク、ガラスバブル、有機繊維、及び無機繊維、好ましくは、黒鉛、ガラスビーズ、ガラスチップ、より好ましくは黒鉛、更により好ましくは黒鉛フレークの列挙から選択される、更なる充填剤(f)を更に含む。好ましくは、更なる充填剤(f)は、非球状粒子の形態である。非球状粒子を用いることは、本開示による接着剤組成物及び接着フィルムに、改善された破壊モード及び高い機械的強度をもたらす効果を有する。「破壊モード」は、当該技術分野において一般的な意味を有する。すなわち、所望の「凝集破壊モード」は、破壊が接着剤層中にのみ出現し、接着剤層と基材との間には出現しない場合のことを言う。
【0048】
非球状粒子は無機粒子であり、好ましくは、金属、炭素及びガラスから選択される材料からなる。金属は、好ましくは、鉄、鋼、アルミニウム、チタン、マグネシウム、並びにこれらの混合物及び合金から選択される。炭素からなる非球状粒子が好ましい。この点に関し、黒鉛及びカーボンブラック、特に黒鉛、より好ましくは熱膨張性黒鉛が好ましい。
【0049】
粒子は、概して非球状の形状を有する。これは、当該技術分野において用いられる一般的な意味を有し、すなわち、粒子は球状ではない。球状粒子は概して約1:1のアスペクト比を有し、すなわち、粒子の一方の直径が、粒子のこの第1の直径に対してほぼ垂直である、同一の粒子の第2の直径とほぼ同一である。したがって、粒子は、不規則な形状又はフレーク形状のいずれかを有することが好ましい。フレーク形状の粒子は、接着強度及び凝集破壊モードに関して最良の結果をもたらすため、本開示による構造用接着剤組成物においては、フレーク形状の粒が好ましい。好ましくは、本明細書に記載の非球状粒子は、アスペクト比が少なくとも1:2.5、好ましくは1:2.5~1:20の範囲、より好ましくは1:4~1:7の範囲である。
【0050】
上記の効果が、非球状粒子の粒度に関係し得ることが、更に見出された。一定の粒度より大きい粒子は、粒度が200μm以下である非球状粒子が用いられた構造用接着剤組成物の対応する性能に比べ、好ましくない接着強度及び破壊モードをもたらした。したがって、非球状粒子は、粒度が200μm以下であることが好ましい。同様に、非球状粒子は、破壊モードに対して何らかの影響を示すために、少なくとも一定の粒度を有さなくてはならない。したがって、非球状粒子は、粒度が少なくとも30μmであることが好ましい。したがって、非球状粒子、好ましくはフレーク形状の粒子は、粒度が、30μm~200μmの範囲であることが好ましい。本開示の別の好ましい実施形態において、非球状粒子は不規則な形状を有し、かつ粒度が100μm以下、好ましくは80μm以下、好ましくは30μm~100μmの範囲、より好ましくは30μm~80μmの範囲である。
【0051】
この点に関して特定の望ましい効果が、黒鉛フレークを用いた際に確認することができる。したがって、更なる充填剤(f)は、黒鉛、好ましくは熱膨張性黒鉛、より好ましくは熱膨張性黒鉛フレークを含むことが好ましい。
【0052】
本明細書に記載の好適な非球状粒子の例は、ES 100C10、ES 20C200、Expan C-8099 lite、Graphite FP 99.5及びEckart Aluminiumである。
【0053】
本開示による構造用接着剤組成物は、更なる充填剤(f)を、組成物の総重量に対して0.1~10重量%、好ましくは組成物の総重量に対して0.5~7重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して1.0~5重量%の量で含むことが更に好ましい。
【0054】
好ましい実施形態において、本開示による構造用接着剤組成物は、
(a)20~50重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは38~50重量%の、好ましくは、平均エポキシ当量が250g/当量未満、好ましくは230g/当量未満、より好ましくは220g/当量未満、更により好ましくは200g/当量未満であるエポキシ化合物と、
(b)7~40重量%、好ましくは10~24重量%、より好ましくは15~24重量%の、好ましくは軟化点が60℃~140℃の範囲である熱可塑性化合物と、
(c)2~15重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは2~4重量%のエポキシ硬化剤と、
(d)組成物の総重量に対して0.5~50重量%、好ましくは組成物の総重量に対して2~40重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して10~30重量%の無機充填剤と、を含む。
【0055】
発泡剤
特定の態様において、熱硬化性構造用接着剤組成物は、1つ以上の発泡剤を更に含み得る。当該技術分野で周知の任意の発泡剤を、本開示の熱硬化性構造用接着剤組成物中に用いることができる。
【0056】
発泡剤を熱硬化性構造用接着フィルムに含めることにより、構造用接着剤組成物は熱膨張性となり、膨張性構造用接着剤組成物と呼ばれる場合がある。したがって、加熱により、例えば、加熱して接着シートを熱硬化させる間に、構造用接着剤組成物は膨張し、金属接合部中のいずれの空隙の封止も補助する。その結果、耐食性を改善することができる。1つ以上の発泡剤が、好ましくは、非カプセル化発泡剤及びカプセル化発泡剤の群から選択される。
【0057】
非カプセル化発泡剤は化学発泡剤と呼ばれる場合もあり、加熱中、窒素、窒素酸化物、水素又は二酸化炭化物(carboxide dioxide)等の気体化合物を放出する。本開示において有用な化学発泡剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、カルバジド、ヒドラジド、水素化ホウ素ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム/クエン酸をベースとした非アゾ系化学発泡剤、及びジニトロソペンタメチレンテトラミンが挙げられる。1つ以上の化学発泡剤の量は、典型的には、熱硬化性組成物の総重量に基づいて、0.2~2重量%、好ましくは0.5~1.5重量%に含まれる。
【0058】
カプセル化発泡剤は通常、ポリマー熱可塑性シェルに封入された液化ガス、例えば、トリクロロフルオロメタン、又は炭化水素、例えば、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン及び/又はイソブタン等を含む。加熱すると、液化ガスは、「マイクロバルーン」のように熱可塑性シェルを膨張させる、又は、破裂させる。典型的には、1つ以上のカプセル化発泡剤の量は、有利には、熱硬化性組成物の総重量に基づいて、0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは1~2重量%に含まれ得る。熱硬化性組成物において有用なカプセル化発泡剤は、例えば、Pierce&Stevens Chemical Corpより商標名Micropearl(商標)、Matsumotoより商標名Microsphere(商標)又はAkzo Nobelより商標名Expancel(商標)で市販されている。
【0059】
特定の態様において、1つ以上の発泡剤の量は、構造用接着フィルムに、硬化反応の活性化(作用発現)温度よりも高い硬化温度を施した場合、かつ試験方法の項に記載のように測定した場合、硬化して、50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下の自由膨張率を構造用接着剤組成物にもたらすように選択される。より詳細には、1つ以上の発泡剤の量は、硬化して、10~40%、好ましくは10~30%、より好ましくは15~25%の自由膨張率を構造用接着剤組成物にもたらすように選択される。
【0060】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の構造用接着剤組成物を含む耐食性構造用接着フィルムである。
【0061】
構造用接着フィルムを用いることにより、このようなフィルムが、特に高速のロボット装置によって自動化された処理及び適用に特に好適であるという点で、特に工業用途における使用者に対し、いくつかの利点がもたらされる。より詳細には、本開示の構造用接着フィルムにより、金属プレート間に接合部を形成するプロセスの効率的な自動化が可能となり、これは、例えば自動車工業においては特別の関心事である。更に、構造用接着フィルムは、少なくとも部分的に油で覆われた金属表面においてさえ、良好なT型剥離強度及び重なりせん断強度等の良好な接着性をもたらし、湿潤試験後等の経時劣化状態においてさえ、良好な接着性を示す。
【0062】
本開示による構造用接着フィルムは、多くの技術により、容易に調製可能である。例えば、様々な構成成分を、周囲条件下で、Mogulミキサー等の好適な内部混合容器に加えてもよい。混合温度は重要ではなく、第1及び第2のエポキシ構成成分並びに任意に含まれる強靭化剤構成成分の混合は、典型的には80~85℃の温度で実施される。エポキシ硬化剤構成成分及び任意に含まれる発泡剤構成成分を加える際、温度は、好ましくは70℃以下に下げてもよい。構成成分が均質な混合物を形成するまで混合を継続した後、熱硬化性構造用接着剤組成物をミキサーから取り出す。あるいは、混合は、好適な押出機中で混合することにより、連続して実施してもよい。
【0063】
これらの優れた加工性のため、熱硬化性組成物は、押出機又はホットメルトコーター、又はカランダー(calanders)等の、従来の塗布装置によってフィルムとして加工することができる。熱硬化性組成物は、自己支持型フィルムとして加工することができる、又は、代わりに、好適なライナー、例えばシリコーン処理されたライナー上にコーティング/積層することができる。本開示の構造用接着フィルムは、例えば、金属(例えば、Al、Al合金、チタン又はステンレス鋼)、又は、例えば、ガラス、ホウ素、炭素、Kevlar繊維、エポキシ、フェノール、シアン酸エステル及びポリエステルマトリックス等を含む他の基材等の様々な基材に適用することができる。
【0064】
本開示による構造用接着フィルムは、典型的には、柔軟な形状適合性フィルムであり、室温で粘着性であり得る、又は、粘着性ではあり得ない。構造用接着フィルムは、曲面に適用でき、かつ任意の二次元形状を呈することができるように、硬化の前は、好ましくは変形可能かつドレープ成形が可能である。構造用接着フィルムの厚さは、大きく異なる場合がある。有用な厚さは約0.05mm~25mmの範囲であることが見出されている。金属パネルの典型的な接合については、厚さは0.1~5mm、例えば0.1~3mm、又は0.3~1mmの範囲であり得る。
【0065】
構造用接着フィルムは、フィルム材料のロール、テープのロール、すなわち、幅の狭い長い材料、又は最終用途用に所望の寸法若しくは形状に切断されたシートの積み重ねの形態で包装してもよい。接着フィルムが粘着性である場合、隣接するシート又はロールのラップの間に剥離ライナーを挿入してもよい。本開示に関し、驚くべきことに、構造用接着フィルムをフィルム材料のロールの形態で包装した場合、フィルム材料の対応するロールは、保存の際に、漏出(すなわち、フィルムのロールの場合はエポキシ樹脂の拡散)に対し、特に抵抗性であることが見出された。理論による束縛を望むものではないが、熱可塑性樹脂に含まれる長いポリマー鎖が、保存の際に、構造用接着フィルム中へのエポキシ樹脂の保持に関与しているものと考えられる。詳細には、長さが、100m超、好ましくは200m超、より好ましくは300m超、更により好ましくは500m超、更により好ましくは700m超、更により好ましくは800メートル超であり、幅が、典型的には5~40mm、特に10~30mm、とりわけ10~20mmに含まれるフィルム材料のロールの形状で包装される場合、本開示の構造用接着フィルムは耐漏出性のままである。
【0066】
本開示の構造用接着フィルムは、1つ以上の層を含み得る。接着フィルムはまた、ネット又は担体層を含み得る。好適なネット又は担体層としては、ポリマー材料の開放布地(open cloth or fabric)が挙げられる。担体層は、好ましくは、綿、ガラス、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビスコース、炭素繊維、アラミド繊維、金属、並びにこれらの任意の組み合わせ及び混合物を含む。概して、ネットは柔軟であり、かつ伸縮性であり得る。特定の例としては、熱固定した、柔軟かつ伸縮性の開放ナイロンニット布地が挙げられる。ネットは、厚さが1~15g/m2、例えば5~12g/m2であり得る。有用な材料としては、3M Co.より入手可能な3M(商標)Scotch-Weld(商標)3336が挙げられる。構造用接着フィルムはまた、スクリム等の開放不織布層を含み得る。
【0067】
本開示による構造用接着フィルムは、未硬化状態における、形状安定性、可撓性、頑健性、取り扱い性、自動化された処理及び適用に対する適合性、温水での耐洗浄性と、硬化後の優れた結合及び封止性能、高い機械的強度、遮水特性、間隙充填特性、制御された膨張挙動、並びに滑らかな仕上げと、からなる群から選択される、任意の利益をもたらすのに好適である。
【0068】
上記から明らかであるように、構造用接着フィルムはまた、本明細書に記載の構造用接着剤組成物のみからなる場合もある。したがって、組成物に関連して記載した利点及び効果が、フィルムにも当てはまる場合があり、逆もまた同様であり得る。
【0069】
本開示による構造用接着剤組成物及び構造用接着フィルムは、好ましくは、少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、-40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度を、好ましくは、もたらす。
【0070】
同様に、本開示による構造用接着剤組成物及び構造用接着フィルムは、好ましくは、少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、少なくとも165N、好ましくは少なくとも170N、より好ましくは少なくとも175Nの、ASTM D1876によるT型剥離強度を、好ましくは、もたらす。
【0071】
本開示による構造用接着剤組成物及び構造用接着フィルムは、好ましくは、少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、湿潤状態後に、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更により好ましくは15%以下の、DIN EN 1465による重なりせん断強度の低下をもたらす。
【0072】
別の態様によると、本開示は、部品を結合する方法であって、方法が、以下の工程、すなわち、
i.第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
ii.本明細書に記載の構造用接着剤組成物又は構造用接着フィルムを、第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの面に対して提供する工程と、
iii.第1の部品と第2の部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い活性化温度よりも低い温度で接着することによって、第1の部品と第2の部品との間に接合部を形成する、好ましくは、第1の部品と第2の部品との間に金属接合部を形成する工程と、
熱硬化性組成物を熱硬化させるように、接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0073】
好ましい実施形態において、第1の部品の材料は、第2の部品の材料と同一である。別の好ましい実施形態においては、第1の部品の材料は、第2の部品の材料と異なる。好ましくは、第1の部品の材料及び/又は第2の部品の材料は、金属、炭素、ポリマー材料、複合材料、木材及びガラスから選択される。
【0074】
好ましくは、第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つは、金属、好ましくは金属パネルを含む。金属は、好ましくは、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼、クロムめっき鋼、チタン、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金、並びにこれらの任意の組み合わせから選択される。工業プロセス、特に自動車工業における適用に関し、第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの面は、油で覆われている。
【0075】
別の態様によると、本開示は、金属部品を結合する方法であって、方法が、
a)第1の金属部品及び第2の金属部品(ここで、第1の金属部品及び第2の金属部品の1つが金属パネルを含む)を準備することと、
b)上記の構造用接着フィルムをもたらすことと、
c)第1の金属部品と第2の金属部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い温度で接着することによって、金属接合部を形成することと、
d)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物を熱硬化させるように、金属接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱することと、
を含む、方法に関する。
【0076】
更に別の態様によると、本開示は、金属部品アセンブリの製造方法であって、方法が、
a)第1の金属部品及び第2の金属部品(ここで、第1の金属部品及び第2の金属部品の1つが金属パネルを含む)を準備することと、
b)上記の請求項のいずれかに記載の構造用接着フィルムをもたらすことと、
c)第1の金属部品と第2の金属部品とを接着することによって、金属接合部を形成することと、
d)構造用接着フィルムの熱硬化性組成物を熱硬化させるように、金属接合部を加熱することと、
を含む、方法に関する。
【0077】
本開示による方法の好ましい態様において、金属部品は、いわゆるヘム加工構造又はヘムフランジを形成するように縁部で共に接合された、自動車パネルである。
【0078】
典型的には、車両クロージャパネル用の金属パネルの接合部は、製造プロセスにおいて初期に形成され、パネルは、例えばグリース又は油で汚染されていることが多い。本方法に関連して用いられる構造用接着フィルムは、典型的には、金属部品と金属パネルとを十分なレベルで結合させ、その一方でまた、接合部上に良好な封止特性をもたらすことによって、耐食性をもたらす。
【0079】
更に、構造用接着フィルムは、概して、例えば油である程度汚染されていることがある、金属部品及び金属パネルに適用することができ、概して、接着シートの適用前に部品又はパネルを洗浄する必要がない。ロボットヘッド等の自動化装置による構造用接着フィルムの適用もまた、想定され得る。更に、接合部の更なる処理又は例えば塗装等の製造工程の間、並びに熱硬化及び最終的かつ永続的な結合の形成の前に挟持固定を必要とせずに、金属部品を共に保持可能であるように、十分な強度の初期接着結合が形成され得る。
【0080】
最終的な接着結合は、有利なことに、良好な耐衝撃性を有することができ、好ましくは、接合部で生成され得る応力が、結合の破壊を生じることなく吸着可能であるように、良好な破断伸長を有する。更に、本開示による構造用接着フィルムは、洗浄に対して十分に抵抗性であり、したがって、接着シートによって一緒にされた金属部品接合部に、例えば塗装の前に必要な場合がある洗浄操作を施すことができる。
【0081】
更に別の態様において、本開示は、
(I)第1の部品及び第2の部品と、
(II)熱硬化された構造用接着フィルムと、を備え、
熱硬化された構造用接着フィルムが、構造用接着フィルムの第1の末端に近い第1の部分と、構造用接着フィルムの第1の末端の反対側の第2の末端に近い第2の部分と、を有し、
熱硬化された構造用接着フィルムが、第1の部品と第2の部品との間に提供され、第1の部品と第2の部品とを共に接着しており、かつ
熱硬化された構造用接着フィルムが、本開示による熱硬化性構造用接着剤組成物又は構造用接着フィルムの熱硬化によって得られる、部品アセンブリを提供する。
【0082】
好ましくは、部品アセンブリは、本明細書に記載の方法によって得ることができる。したがって、本開示による方法及び好ましい実施形態についての上記の材料及び適用がまた、本明細書に記載の部品アセンブリにも当てはまる。
【0083】
更に、本開示による構造用接着剤組成物及び構造用接着フィルムは、油の付いた基材においてさえ接着性能が高い、また、高耐食性である等の望ましい特性を呈するため、これらは、様々な工業用途において部品を結合する使用に優れて好適である。したがって、本開示は、工業用途において、好ましくはホワイトボディプロセスにおいて部品を結合するための、本明細書に記載の、構造用接着剤組成物の、又は、構造用接着フィルムの使用を提供する。この使用は、熱硬化された構造用接着フィルムが、-40Cで少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度を呈する、結合された金属部品アセンブリを作製することを含むことが好ましい。
【0084】
例示的な実施形態
以下の番号を付けた例示的な実施形態は、本開示を例示するためのものである。
【0085】
実施形態1.
(a)エポキシ化合物と、
(b)熱可塑性化合物と、
(c)エポキシ硬化剤と、
(d)少なくとも1つの無機充填剤と、
を含み、少なくとも1つの無機充填剤が水を吸収できる、熱硬化性構造用接着剤組成物。
【0086】
実施形態2. 少なくとも1つの無機充填剤(d)が、水と化学的に反応できる、実施形態1に記載の構造用接着剤組成物。
【0087】
実施形態3. 無機充填剤(d)が、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から選択される、好ましくは、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O、SrO、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1又は2に記載の構造用接着剤組成物。
【0088】
実施形態4. 少なくとも1つの無機充填剤(d)が、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O及び/又はNa2Oである、好ましくは、MgO、CaO、BaO、K2O、Li2O、Na2O及びSiO2を含むブレンド、より好ましくは、MgO、CaO及びSiO2、金属ケイ酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸塩水和物(タルク)、ホウ酸塩、酸化物、水酸化物、チタン酸硫酸塩、ジルコン酸塩を含むブレンド、更により好ましくは、CaO及びSiO2を含むブレンドである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0089】
実施形態5. SiO2が、ヒュームドシリカ、石英ガラス、シリカゲル、及び石英から選択される、好ましくはヒュームドシリカ及び石英ガラスから選択される、より好ましくは石英ガラスである、実施形態4に記載の構造用接着剤。
【0090】
実施形態6. (e)少なくとも1つのエポキシ部分及び少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖アルキル基を含む、少なくとも1つの構成成分を更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0091】
実施形態7. カーボンブラック、黒鉛、無機炭素源、ガラスビーズ、ガラスチップ、金属チップ、金属フレーク、好ましくは、黒鉛、ガラスビーズ、ガラスチップ、より好ましくは黒鉛、更により好ましくは、黒鉛フレーク、ガラスバブル、有機繊維、無機繊維、顔料、難燃剤、有機リン化合物、化学発泡剤及び/又は物理発泡剤の列挙から選択される、更なる充填剤(f)を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0092】
実施形態8. 組成物が、更なる充填剤(f)を、組成物の総重量に対して0.1~10重量%、好ましくは組成物の総重量に対して0.5~7重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して1.0~5重量%の量で含む、実施形態7に記載の構造用接着剤組成物。
【0093】
実施形態9. 更なる充填剤(f)が、黒鉛、好ましくは熱膨張性黒鉛、より好ましくは熱膨張性黒鉛フレークを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0094】
実施形態10. 更なる充填剤(f)は、粒度が30μm~200μmの範囲である、かつ/又は、アスペクト比が少なくとも1:2.5、好ましくは1:1.25~1:20の範囲、より好ましくは1:4~1:7の範囲である、実施形態9に記載の構造用接着剤。
【0095】
実施形態11. 組成物が、少なくとも1つの構成成分(e)を、組成物の総重量に対して0.1~20重量%、好ましくは組成物の総重量に対して1~15重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して1.5~10重量%、更により好ましくは組成物の総重量に対して2~7重量%の量で含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0096】
実施形態12. 組成物が、少なくとも1つの無機充填剤(d)を、組成物の総重量に対して0.5~50重量%、好ましくは組成物の総重量に対して2~40重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して10~30重量%の量で含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0097】
実施形態13. 組成物が、無機充填剤構成成分(d)としてシリカ、好ましくは石英ガラスを、組成物の総重量に対して5~30重量%、好ましくは組成物の総重量に対して10~20重量%の量で、かつ酸化カルシウムを、組成物の総重量に対して0.5~20重量%、好ましくは組成物の総重量に対して2~14重量%の量で含む、実施形態12に記載の構造用接着剤組成物。
【0098】
実施形態14. エポキシ化合物(a)エポキシ化合物の平均エポキシ当量が250g/当量未満、好ましくは230g/当量未満、より好ましくは220g/当量未満、更により好ましくは200g/当量未満である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0099】
実施形態15. 熱可塑性樹脂の軟化点が30℃~140℃の範囲である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0100】
実施形態16. エポキシ化合物と熱可塑性樹脂との重量比が0.5~4、好ましくは1~3、より好ましくは1.5~2.5に含まれる、実施形態1~15のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0101】
実施形態17.
組成物が、
a.20~50重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは38~50重量%の、好ましくは、平均エポキシ当量が250g/当量未満、好ましくは230g/当量未満、より好ましくは220g/当量未満、更により好ましくは200g/当量未満であるエポキシ化合物と
b.7~40重量%、好ましくは10~24重量%、より好ましくは15~24重量%の、好ましくは軟化点が60℃~140℃である熱可塑性化合物と、
c.2~15重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは2~4重量%のエポキシ硬化剤と、
d.組成物の総重量に対して0.5~50重量%、好ましくは組成物の総重量に対して2~40重量%、より好ましくは組成物の総重量に対して10~30重量%の無機充填剤と、
を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0102】
実施形態18.
少なくとも1つの構成成分(e)が、式(I)
(R1)n-A-B-C-(R2)m (式(I))
[式中、
R1は直鎖又は分枝鎖アルキルであり、
R2はエポキシ部分であり、
A、B、Cは異なる、又は、同一であり、かつ直鎖又は分枝鎖の、アルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、フェニル、フェノキシ、カルボキシであり、かつ任意に、直鎖又は分枝鎖の、アルキル、アルコキシ、アルケン、アルキン、フェニル、フェノキシ及びカルボキシによって置換されており、
nは1、2、又は2であり、
mは1、2、又は3である]による化合物である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0103】
実施形態19. 少なくとも1つの構成成分(e)がグリシジルエーテルである、実施形態18に記載の構造用接着剤組成物。
【0104】
実施形態20.
少なくとも1つの構成成分(e)が、構成成分
【化4】
【化5】
【化6】
並びにこれらの混合物及び誘導体から選択される、実施形態18又は19に記載の構造用接着剤組成物。
【0105】
実施形態21. -40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度をもたらす、実施形態1~20のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0106】
実施形態22. 少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、-40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度をもたらす、実施形態1~21のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0107】
実施形態23. 少なくとも165N、好ましくは少なくとも170N、より好ましくは少なくとも175Nの、ASTM D1876によるT型剥離強度をもたらす、実施形態1~22のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0108】
実施形態24. 少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、少なくとも165N、好ましくは少なくとも170N、より好ましくは少なくとも175Nの、ASTM D1876によるT型剥離強度をもたらす、実施形態23に記載の構造用接着剤組成物。
【0109】
実施形態25. 湿潤状態後に、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更により好ましくは15%以下の、DIN EN 1465による重なりせん断強度の低下をもたらす、実施形態1~24のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。
【0110】
実施形態26. 基材が、鋼を含む、より好ましくはHD鋼及び/又はELO鋼を含む、更により好ましくはHD鋼を含む、実施形態25に記載の構造用接着剤組成物。
【0111】
実施形態27. 実施形態1~26のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物を含む、耐食性構造用接着フィルム。
【0112】
実施形態28. 実施形態1~26のいずれかに記載の構造用接着剤組成物からなる、実施形態27に記載の構造用接着フィルム。
【0113】
実施形態29. -40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度をもたらす、実施形態27又は28に記載の構造用接着フィルム。
【0114】
実施形態30. 少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、-40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度をもたらす、実施形態29に記載の構造用接着フィルム。
【0115】
実施形態31. 少なくとも165N、好ましくは少なくとも170N、より好ましくは少なくとも175Nの、ASTM D1876によるT型剥離強度をもたらす、実施形態27~30のいずれか1つに記載の構造用接着フィルム。
【0116】
実施形態32. 少なくとも部分的に油で覆われた鋼基材において、少なくとも165N、好ましくは少なくとも170N、より好ましくは少なくとも175Nの、ASTM D1876によるT型剥離強度をもたらす、実施形態31に記載の構造用接着フィルム。
【0117】
実施形態33. 湿潤状態後に、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更により好ましくは15%以下の、DIN EN 1465による重なりせん断強度の低下をもたらす、実施形態27~32のいずれか1つに記載の構造用接着フィルム。
【0118】
実施形態34. 基材が、鋼を含む、より好ましくはHD鋼及び/又はELO鋼を含む、更により好ましくはHD鋼を含む、実施形態33に記載の構造用接着フィルム。
【0119】
実施形態35. 少なくとも1つの担体層、好ましくは、織布、編み布地、又は不織布から好ましくは選択される多孔質担体層を更に含む、実施形態27~34のいずれか1つに記載の構造用接着フィルム。
【0120】
実施形態36. 担体層が、綿、ガラス、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビスコース、炭素繊維、アラミド繊維、金属、及びこれらの任意の組み合わせ又はコポリマーを含む、実施形態35に記載の構造用接着フィルム。
【0121】
実施形態37.
部品を結合する方法であって、方法が、以下の工程、すなわち、
i.第1の部品及び第2の部品を準備する工程と、
ii.実施形態1~26のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物、又は実施形態27~36のいずれか1つに記載の構造用接着フィルムを、第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの面に対して提供する工程と、
iii.第1の部品と第2の部品とを、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも低い活性化温度よりも低い温度で接着することによって、第1の部品と第2の部品との間に接合部を形成する、好ましくは、第1の部品と第2の部品との間に金属接合部を形成する工程と、
iv.熱硬化性組成物を熱硬化させるように、接合部を、エポキシ硬化剤の活性化温度よりも高い温度で加熱する工程と、
を含む、方法。
【0122】
実施形態38. 第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つが金属を含む、実施形態37に記載の方法。
【0123】
実施形態39. 第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つがパネルである、実施形態37又は38に記載の方法。
【0124】
実施形態40. 第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つが金属パネルを含む、実施形態37~39のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態41. 第1の部品の材料が第2の部品の材料と同一である、実施形態37~40のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態42. 第1の部品の材料が第2の部品の材料と異なる、実施形態37~41のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態43. 第1の部品の材料及び/又は第2の部品の材料が、金属、炭素、ポリマー材料、複合材料、木材及びガラスから選択される、実施形態37~42のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態44. 第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つの材料が金属を含まない、実施形態37~43のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態45. 金属が、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼、チタン、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金、並びにこれらの組み合わせから選択される、実施形態43に記載の方法。
【0130】
実施形態46. 第1の金属部品の金属が第2の金属部品の金属とは別個のものである、実施形態37~45のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態47. 第1の金属部品の金属が第2の金属部品の金属と同一である、実施形態37~46のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態48. 第1の金属部品の金属が、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼であり、かつ第2の金属部品の金属が、鋼、好ましくはステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼である、実施形態37~47のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態49. 第1の金属部品の金属が、鋼、ステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼であり、かつ第2の金属部品の金属が、アルミニウム、チタン、又はアルミニウム若しくはチタンの1つ若しくは両方を含む合金である、実施形態37~47のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態50. 第1の部品及び/又は第2の部品の少なくとも1つの面が油で覆われている、実施形態37~49のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態51.
(I)第1の部品及び第2の部品と、
(II)熱硬化された構造用接着フィルムと、を備え、
熱硬化された構造用接着フィルムが、構造用接着フィルムの第1の末端に近い第1の部分と、構造用接着フィルムの第1の末端の反対側の第2の末端に近い第2の部分と、を有し、
熱硬化された構造用接着フィルムが、第1の部品と第2の部品との間に提供され、第1の部品と第2の部品とを共に接着しており、かつ
熱硬化された構造用接着フィルムが、実施形態1~26のいずれか1つに記載の熱硬化性組成物、又は実施形態27~36のいずれか1つに記載の構造用接着フィルムの熱硬化によって得られる、部品アセンブリ。
【0136】
実施形態52. 熱硬化された構造用接着フィルムが、-40℃で少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度を呈する、実施形態51に記載の部品アセンブリ。
【0137】
実施形態53. 熱硬化された構造用接着フィルムが、少なくとも165N、好ましくは少なくとも170N、より好ましくは少なくとも175Nの、ASTM D1876によるt型剥離強度を呈する、実施形態51又は52に記載の部品アセンブリ。
【0138】
実施形態54. 第1の部品の材料及び/又は第2の部品の材料が、金属、炭素、ポリマー材料、複合材料、木材及びガラスから選択される、実施形態51~53のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0139】
実施形態55. 第1の部品及び第2の部品の少なくとも1つがパネルである、実施形態51~54のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0140】
実施形態56. 第1の部品の材料が第2の部品の材料と同一である、実施形態51~55のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0141】
実施形態57. 第1の部品の材料が第2の部品の材料と異なる、実施形態51~55のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0142】
実施形態58. 金属が、鋼、好ましくはステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼、チタン、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの合金から選択される、実施形態51~57のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0143】
実施形態59. 第1の金属部品の金属が第2の金属部品の金属とは別個のものである、実施形態51~58のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0144】
実施形態60. 第1の金属部品の金属が第2の金属部品の金属と同一である、実施形態51~58のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0145】
実施形態61. 第1の金属部品の金属が、鋼、好ましくはステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼であり、かつ第2の金属部品の金属が、鋼、好ましくはステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼である、実施形態51~60のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0146】
実施形態62. 第1の金属部品の金属が、鋼、好ましくはステンレス鋼、亜鉛めっき鋼、ニッケルめっき鋼であり、かつ第2の金属部品の金属が、アルミニウム、チタン、又はアルミニウム若しくはチタンの1つ若しくは両方を含む合金である、実施形態51~60のいずれか1つに記載の部品アセンブリ。
【0147】
実施形態63. 第1の部品の材料が金属であり、かつ第2の部品の材料が複合材料又は炭素である、実施形態51~58のいずれかに記載の部品アセンブリ。
【0148】
実施形態64. 工業用途において、好ましくはホワイトボディプロセスにおいて部品を結合するための、実施形態1~26のいずれか1つに規定した熱硬化性構造用接着剤組成物の、又は、実施形態27~36のいずれか1つに規定した熱硬化性構造用接着フィルムの使用。
【0149】
実施形態65. 結合された金属部品アセンブリを作製するための、実施形態27~36のいずれか1つに規定した熱硬化性構造用接着フィルムの実施形態64に規定した熱硬化性構造用接着剤組成物の使用であって、熱硬化された構造用接着フィルムが、-40Cで少なくとも21MPa、かつ/又は23℃で少なくとも17MPa、かつ/又は80℃で少なくとも11の、DIN EN 1465による重なりせん断強度を呈する、使用。
【実施例】
【0150】
本開示を更に説明するが、本開示をこれらに限定することを望むものではない。以下の実施例は、特定の実施形態を説明するために提示するが、いかなる方法によっても限定されることを意図するものではない。その前に、材料及びこれらの特性を特徴付けるために用いられるいくつかの試験方法を説明する。
【0151】
方法
DIN EN 1465(2009年発行)による重なりせん断強度:
重なりせん断強度を、DIN EN 1465に従い、Zwick Z050引張試験機(Zwick GmbH&Co.KG(Ulm,Germany)により市販)を用い、クロスヘッド速度10mm/分で動作させ、3g/m2の油(PL 3802-39S、Fuchs Petrolub AG(Germany)より市販)でコーティングされた、寸法が100mm×25mm×0.8mmの、溶融めっきした亜鉛めっき鋼ストリップ(DX 54D-Z100としてThyssenKrupp Steel(Germany)より市販)について測定する。重なりせん断強度試験アセンブリの調製のため、試験するエポキシフィルム(厚さが0.4mmである)を、第1の鋼ストリップの一端上に適用し、第2の鋼ストリップで覆い、10mmの重なり接合部を形成する。次いで、2つのバインダークリップを用い、重なり接合部を共に挟持固定し、試験アセンブリを、最低焼き付けサイクルが160℃で20分間、最高焼き付けサイクルが200℃で45分間である空気循環炉に入れる。このようにして、3℃/分の勾配を用い、試験アセンブリを加熱し、かつ冷却する。次いで、試験前に、試験アセンブリを、23±2℃及び相対湿度50±%%の周囲条件で、24時間コンディショニングする。重なりせん断強度を測定するための試験温度が-40℃から室温、最大+80℃まで変動するため、試験アセンブリをZwick引張試験機での試験前に環境チャンバー(RS Simulatoren(Oberhausen,Germany)により市販)に入れてから、重なりせん断強度を-40℃、室温(23℃±2℃)及び+80℃で測定する。3つの異なる試験温度における実施例のそれぞれについて3つの試料を測定し、結果を平均化し、MPa単位で報告する。
【0152】
ASTM 1876-08(2008年発行)による接着剥離強度
接着剥離強度を、ASTM 1876に従い、Zwick Z050引張試験機(Zwick GmbH&Co.KG(Ulm,Germany)により市販されている)を用い、3g/m2の油(PL 3802-39s、Fuchs Petrolub AG(Germany)より市販)でコーティングされた、寸法が150mm×25mm×0.8mmの、溶融めっきした亜鉛めっき鋼ストリップ(DX 54D-Z100としてThyssenKrupp Steel(Germany)より市販)について測定する。クロスヘッド速度を全ての測定について100mm/分に設定し、接着剥離強度を23℃±2℃及び相対湿度50±5%で測定した。試験アセンブリの調製のため、マスキングテープ(Scotch(商標)2610 Masking Tape、3M(USA)より市販)を第1の鋼ストリップに適用する。このようにしてマスキングテープを適用し、結合領域を可視化する。結合領域は、寸法が100mm×25mmである。次いで、試験する実施例の材料を、印を付けた結合領域に適用し、第1の鋼ストリップと同じ寸法の第2の鋼ストリップで覆う。この後、試験アセンブリを適所に保持するため、まず手作業で2つのストリップを共に押し付けた後、2つのバインダークリップを用い、結合線に沿って共に挟持固定する。試験アセンブリを、空気循環炉内において、160℃で20分間の最低焼き付けサイクル及び200℃で45分間の最高焼き付けサイクルにより硬化する。このようにして、3℃/分の勾配を用い、試験アセンブリを加熱し、かつ冷却する。次いで、試験前に、試験アセンブリを、23±2℃及び相対湿度50±5%の周囲条件で、24時間コンディショニングする。実施例の材料ごとに、3つの接着剥離強度試験アセンブリを調製し、試験結果を平均化する。結果をN/25mm単位で報告する。
【0153】
湿潤試験:
重なりせん断試験について上記した試験片を調製し、水を含ませた脱脂綿で包んだ後、ポリエチレン袋中に気密密閉した。次いで、これらの試料を、70℃及び相対湿度100%で7日間保存した。包んだ試料を開いた後、試験片を23℃で2時間保存した後、-28℃で2時間保存した。続いて、標準的な雰囲気下で再コンディショニングした後、上記のように、重なりせん断試験を実施する。試験結果を、本明細書に記載の湿潤状態に付さなかった、開始時の標準試料と比較した。
【表1】
【0154】
実施例1~2及び比較例C-1の調製
本開示のエポキシ系組成物を、表1の材料の一覧からの構成成分を高速ミキサー(DAC 150 FVZ Speedmixer、Hauschild Engineeringより)中、3000rpmで撹拌して混合することによって調製する。表2において、全ての濃度は重量%で示す。
【0155】
最初の工程でエポキシ樹脂、熱可塑性フェノキシ樹脂及びコアシェル強靭化剤を2分間共に混合することによって、表2に示した比のマスターバッチ配合物を得る。次いで、このマスターバッチを、温度95℃の空気循環炉中に、約1時間入れる。加熱混合物を高速ミキサー中、3000rpmで2分間再度撹拌し、3つの成分の完全な分散を確保する。次いで、ミキサーの温度を60℃まで下げ、2つの硬化剤を、表3に示した更なる成分と共に混合物に加えた後、減圧下で更に2分間混合する。得られた混合物は、均一な粘稠性を有するペーストである。ナイフコータを用いることにより、ミキサーを熱コーティングし、厚さが0.4mmのフィルムとする。形成されたフィルムは、冷却した際、柔軟かつ均質である。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】