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特許7010225乳房領域検出システム、乳房領域検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】乳房領域検出システム、乳房領域検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220119BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220119BHJP
   G06T 7/12 20170101ALI20220119BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 350D
A61B6/00 350N
G06T7/00 612
G06T7/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018533566
(86)(22)【出願日】2017-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2017029125
(87)【国際公開番号】W WO2018030519
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2016157603
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将勝
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104149(JP,A)
【文献】特開2010-017370(JP,A)
【文献】特開2004-283281(JP,A)
【文献】特開2013-000370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、当該乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出することにより前記デジタルマンモグラフィ画像における乳房領域を検出する乳房領域検出部と、
を備える、乳房領域検出システム。
【請求項2】
前記乳房領域検出部は、前記乳房領域候補画像に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域を乳房領域として検出する、請求項1に記載の乳房領域検出システム。
【請求項3】
前記エッジ強調画像生成部は、
前記乳房領域のスキンラインを強調したスキンライン強調画像を生成するスキンライン強調画像生成部と、
前記乳房領域内の構造物を強調した構造物強調画像を生成する構造物強調画像生成部と、
前記スキンライン強調画像と前記構造物強調画像とを合成することにより前記エッジ強調画像を生成する強調画像合成部と、
を備える、請求項1~2のいずれか1つに記載の乳房領域検出システム。
【請求項4】
前記スキンライン強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してソーベルフィルタ処理を行うことにより前記スキンライン強調画像を生成する、請求項3に記載の乳房領域検出システム。
【請求項5】
前記構造物強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してラプラシアンフィルタ処理を行うことにより前記構造物強調画像を生成する、請求項3又は4に記載の乳房領域検出システム。
【請求項6】
前記基準画像生成部は、前記エッジ強調画像に対してクロージング処理を行うことにより前記基準画像を生成する、請求項1~5のいずれか1つに記載の乳房領域検出システム。
【請求項7】
コンピュータを、
デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、当該乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出することにより前記デジタルマンモグラフィ画像における乳房領域を検出する乳房領域検出部、
として機能させるプログラム。
【請求項8】
前記乳房領域検出部は、前記乳房領域候補画像に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域を乳房領域として検出する、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記エッジ強調画像生成部は、
前記乳房領域のスキンラインを強調したスキンライン強調画像を生成するスキンライン強調画像生成部と、
前記乳房領域内の構造物を強調した構造物強調画像を生成する構造物強調画像生成部と、
前記スキンライン強調画像と前記構造物強調画像とを合成することにより前記エッジ強調画像を生成する強調画像合成部と、
を備える、請求項7~8のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項10】
前記スキンライン強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してソーベルフィルタ処理を行うことにより前記スキンライン強調画像を生成する、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記構造物強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してラプラシアンフィルタ処理を行うことにより前記構造物強調画像を生成する、請求項9又は10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記基準画像生成部は、前記エッジ強調画像に対してクロージング処理を行うことにより前記基準画像を生成する、請求項7~11のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項13】
デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成し、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成し、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、前記乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出することにより前記デジタルマンモグラフィ画像における乳房領域を検出する、
ことを含む、乳房領域検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルマンモグラフィ画像から乳房領域を検出する乳房領域検出システム、乳房領域検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、読影医(放射線診断医)は、デジタルマンモグラフィ画像の読影のために、高輝度の画面を注視することがある。また、読影医は、乳房領域内の病変を見易くするため、画面に表示する画像に対してコントラストの変更や白黒反転などの画像処理を行うことがある。
【0003】
しかしながら、このような画像処理によって乳房領域以外の背景領域の濃度を高く(例えば、白く)した場合には、非常に眩しく、読影医の目の負担が大きくなる。このため、乳房領域よりも背景領域の濃度を低く(例えば、黒く)することが望まれている。
【0004】
背景領域の濃度を低くする画像処理を行うためには、乳房領域をより正確に検出する必要がある。乳房領域を検出する技術として、例えば、以下のような判別分析法を利用した技術が知られている(例えば、特開2011-125363号公報参照)。
【0005】
まず、デジタルマンモグラフィ画像(マンモグラム)を構成する画素の濃度値のヒストグラムを作成する。その後、当該ヒストグラムに基づいて、背景領域(濃度値が高い部分)に対応する分布を除く最大濃度値を求め、当該最大濃度値を閾値としてデジタルマンモグラフィ画像を二値化する。これにより、閾値よりも低濃度の領域を乳房領域として検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-125363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記技術では、乳房の大きさ、撮影装置、撮影条件等によっては、図13に示すように、背景領域と乳房領域との濃度差がなく連続していることがある。このため、前記閾値を適切に設定できず、乳房領域をより正確に検出できない場合がある。
【0008】
また、前記閾値の設定は、システムの管理者が手動で行うことがある。この場合、人為的なミスにより前記閾値を適切に設定できず、乳房領域をより正確に検出できない場合がある。また、例えば、マンモグラフィ装置などをバーションアップした際には、前記閾値の最適値が変わることがある。この場合、その都度、閾値を設定し直す必要があり、人為的なミスが発生する機会が増えることになる。
【0009】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、乳房領域をより正確に検出することができる乳房領域検出システム、乳房領域検出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る乳房領域検出システムは、
デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、当該乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出することにより前記デジタルマンモグラフィ画像における乳房領域を検出する乳房領域検出部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、
デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、当該乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出することにより前記デジタルマンモグラフィ画像における乳房領域を検出する乳房領域検出部、
として機能させるプログラムであることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る乳房領域検出方法は、デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成し、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成し、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、前記乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出することにより前記デジタルマンモグラフィ画像における乳房領域を検出する、
ことを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乳房領域をより正確に検出することができる乳房領域検出システム、乳房領域検出方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムの基本構成を示すブロック図である。
図2】スキンライン強調画像の一例を示す図である。
図3図2のスキンライン強調画像に二値化処理を行って得られたスキンライン強調画像の一例を示す図である。
図4】構造物強調画像の一例を示す図である。
図5】エッジ強調画像の一例を示す図である。
図6】基準画像の一例を示す図である。
図7】乳房領域候補画像の一例を示す図である。
図8】デジタルマンモグラフィ画像の一例を示す図である。
図9図8に示すデジタルマンモグラフィ画像に対して白黒反転を行った状態を示す図である。
図10図9に示す白黒反転後のデジタルマンモグラフィ画像において、図1の乳房領域検出システムによって検出した乳房領域に基づいて背景領域を黒色で表示した状態を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る乳房領域検出方法の一例を示すフローチャートである。
図12】乳房領域が特定の色で完全に埋められていない状態を示す図である。
図13】デジタルマンモグラフィ画像において背景領域と乳房領域との濃度差がなく連続している状態を示す図である。
図14】乳房領域候補画像を求めるために、基準画像に最も近くなる閾値を探索する一例を示すフローチャートである。
図15】検出した乳房領域が所定の基準を満たしているか否かを確認するエラーチェック処理の設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1態様によれば、デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、
前記基準画像に基づいて乳房領域を検出する乳房領域検出部と、
を備える、乳房領域検出システムを提供する。
【0016】
本発明の第2態様によれば、前記乳房領域検出部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、当該乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出する、第1態様に記載の乳房領域検出システムを提供する。
【0017】
本発明の第3態様によれば、前記乳房領域検出部は、前記乳房領域候補画像に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域を乳房領域として検出する、第2態様に記載の乳房領域検出システムを提供する。
【0018】
本発明の第4態様によれば、前記エッジ強調画像生成部は、
前記乳房領域のスキンラインを強調したスキンライン強調画像を生成するスキンライン強調画像生成部と、
前記乳房領域内の構造物を強調した構造物強調画像を生成する構造物強調画像生成部と、
前記スキンライン強調画像と前記構造物強調画像とを合成することにより前記エッジ強調画像を生成する強調画像合成部と、
を備える、第1~3態様のいずれか1つに記載の乳房領域検出システムを提供する。
【0019】
本発明の第5態様によれば、前記スキンライン強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してソーベルフィルタ処理を行うことにより前記スキンライン強調画像を生成する、第4態様に記載の乳房領域検出システムを提供する。
【0020】
本発明の第6態様によれば、前記構造物強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してラプラシアンフィルタ処理を行うことにより前記構造物強調画像を生成する、第4又は5態様に記載の乳房領域検出システムを提供する。
【0021】
本発明の第7態様によれば、前記基準画像生成部は、前記エッジ強調画像に対してクロージング処理を行うことにより前記基準画像を生成する、第1~6態様のいずれか1つに記載の乳房領域検出システムを提供する。
【0022】
本発明の第8態様によれば、コンピュータを、
デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、
前記基準画像に基づいて乳房領域を検出する乳房領域検出部、
として機能させるプログラムを提供する。
【0023】
本発明の第9態様によれば、前記乳房領域検出部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、当該乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出する、第8態様に記載のプログラムを提供する。
【0024】
本発明の第10態様によれば、前記乳房領域検出部は、前記乳房領域候補画像に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域を乳房領域として検出する、第9態様に記載のプログラムを提供する。
【0025】
本発明の第11態様によれば、前記エッジ強調画像生成部は、
前記乳房領域のスキンラインを強調したスキンライン強調画像を生成するスキンライン強調画像生成部と、
前記乳房領域内の構造物を強調した構造物強調画像を生成する構造物強調画像生成部と、
前記スキンライン強調画像と前記構造物強調画像とを合成することにより前記エッジ強調画像を生成する強調画像合成部と、
を備える、第8~10態様のいずれか1つに記載のプログラムを提供する。
【0026】
本発明の第12態様によれば、前記スキンライン強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してソーベルフィルタ処理を行うことにより前記スキンライン強調画像を生成する、第11態様に記載のプログラムを提供する。
【0027】
本発明の第13態様によれば、前記構造物強調画像生成部は、前記デジタルマンモグラフィ画像に対してラプラシアンフィルタ処理を行うことにより前記構造物強調画像を生成する、第11又は12態様に記載のプログラムを提供する。
【0028】
本発明の第14態様によれば、前記基準画像生成部は、前記エッジ強調画像に対してクロージング処理を行うことにより前記基準画像を生成する、第8~13態様のいずれか1つに記載のプログラムを提供する。
【0029】
本発明の第15態様によれば、デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成し、
前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成し、
前記基準画像に基づいて乳房領域を検出する、
ことを含む、乳房領域検出方法を提供する。
【0030】
本発明の第16態様によれば、前記基準画像に基づいて乳房領域を検出することは、
前記デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、前記基準画像に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得し、
前記乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出する、
ことを含む、第15態様に記載の乳房領域検出方法を提供する。
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0032】
《実施形態》
本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムの基本構成を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態に係る乳房領域検出システム1は、マンモグラフィ装置などで撮影されたデジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域を検出するシステムである。
【0034】
図1に示すように、乳房領域検出システム1は、前処理部2と、エッジ強調画像生成部3と、基準画像生成部4と、乳房領域検出部5とを備えている。
【0035】
前処理部2は、乳房領域を検出する対象となるデジタルマンモグラフィ画像に対して、画素数を減少させる縮小処理を行うように構成されている。この縮小処理により、デジタルマンモグラフィ画像中の微細なノイズが除去される。また、この縮小処理により、後続の画像処理の速度を速くすることができる。
【0036】
エッジ強調画像生成部3は、デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するように構成されている。本実施形態において、エッジ強調画像生成部3は、スキンライン強調画像生成部31と、構造物強調画像生成部32と、強調画像合成部33とを備えている。
【0037】
スキンライン強調画像生成部31は、図2に示すように、乳房領域E1のスキンラインSLを強調したスキンライン強調画像を生成するように構成されている。スキンラインSLは、乳房領域E1と背景領域E2との境界となる部分である。本実施形態において、スキンライン強調画像生成部31は、デジタルマンモグラフィ画像に対して1次微分フィルタであるソーベル(Sobel)フィルタ処理を行うことによりスキンライン強調画像(図2)を生成するように構成されている。「ソーベルフィルタ」は、空間1次微分を計算し、輪郭を検出するフィルタである。デジタルマンモグラフィ画像に対してソーベルフィルタを、例えば上下左右の4方向に適用することで、スキンラインSLを強調することができる。
【0038】
また、図2に示すように、スキンライン強調画像生成部31が生成したスキンライン強調画像では、低濃度ではあるものの、乳房領域E1内の構造物(乳腺、脂肪等)のエッジも強調される。このため、本実施形態において、スキンライン強調画像生成部31は、スキンライン強調画像(図2)に対して二値化処理を行うように構成されてもよい。これにより、図3に示すように、スキンラインSLだけではなく、乳房領域E1内の構造物も強調されたスキンライン強調画像を生成することができる。
【0039】
構造物強調画像生成部32は、図4に示すように、乳房領域E1内の構造物を強調した構造物強調画像を生成するように構成されている。本実施形態において、構造物強調画像生成部32は、デジタルマンモグラフィ画像に対して2次微分フィルタであるラプラシアン(Laplacian)フィルタ処理を行うことにより構造物強調画像を生成するように構成されている。「ラプラシアンフィルタ」は、空間2次微分を計算して、輪郭を検出するフィルタであり、濃度の差分の変化量が極端に大きくなっている部分を抽出するフィルタである。
【0040】
なお、ラプラシアンフィルタ処理により生成された構造物強調画像において、乳房領域E1内の構造物のエッジが低濃度である場合、構造物強調画像生成部32は、構造物強調画像に対して二値化処理を行うように構成されてもよい。これにより、乳房領域E1内の構造物がより強調された構造物強調画像を生成することができる。
【0041】
強調画像合成部33は、図5に示すように、スキンライン強調画像(図3)と構造物強調画像(図4)とを合成することによりエッジ強調画像を生成するように構成されている。なお、上述のスキンライン強調画像のみを使って、その胸壁側を乳房領域として確定することは通常は出来ない場合が多い。その理由は、乳房の大きさ、撮影装置、撮影条件等によっては、図13に示すように、背景領域と乳房領域との濃度差がなく連続していることがあり、このために乳房領域を正確に検出できない場合があるからである。
【0042】
基準画像生成部4は、図6に示すように、エッジ強調画像(図5)に対して乳房領域E1を背景領域E2とは異なる色(例えば、白色)で埋める(塗りつぶす)処理を行うことにより基準画像を生成するように構成されている。本実施形態において、基準画像生成部4は、エッジ強調画像(図5)に対してクロージング処理を行うことにより基準画像(図6)を生成するように構成されている。
【0043】
なお、二値化画像内の図形を1画素分膨らませる処理を「膨張」といい、逆に1画素分縮める処理を「収縮」という。このような処理を一般にモフォロジー処理という。「クロージング処理」は、モフォロジー処理の一種であり、「膨張」をN回行った後、「収縮」をN回行う処理をいう。クロージング処理によれば、図形を穴埋めしたり、切断部分を結合したりするなどの効果を得ることができる。
【0044】
乳房領域検出部5は、基準画像(図6)に基づいて乳房領域E1を検出するように構成されている。本実施形態において、乳房領域検出部5は、デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更して、基準画像(図6)に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像として取得するように構成されている。例えば、乳房領域検出部5は、濃度値の閾値を順次増加させ、それにより得られる二値化画像と基準画像とを順次比較して、重複しない画素数が最も少なくなる二値化画像を探索し、当該探索した二値化画像を乳房領域候補画像として取得する。
【0045】
なお、閾値は、二値化画像中において特定の色(例えば、白色)で表示するか否かの基準となる値である。例えば、濃度値が閾値以下である部分は、黒色で表示される一方、濃度値が閾値より大きい部分は、白色で表示される。すなわち、閾値が小さいとき、二値化画像はほとんど黒色で表示され、閾値を大きくしていくと、乳房領域が徐々に白色で表示されることになる。
【0046】
また、乳房領域検出部5は、当該取得した乳房領域候補画像に基づいて乳房領域を検出するように構成されている。なお、乳房領域候補画像には、マンモグラフィ画像中のノイズや識別情報等に起因して、図7に示すように、複数の乳房領域候補E11,E12(白色で表示される部分)が存在することがある。
【0047】
このため、本実施形態において、乳房領域検出部5は、乳房領域候補画像(図7)に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域E11を乳房領域として検出するように構成されている。「ラベリング処理」とは、二値化画像において、背景領域とは異なる色(例えば、白色)の部分が連続した画素に同じ番号を割り振ることで領域を区別する処理をいう。すなわち、乳房領域検出部5は、ラベリング処理により同じ番号を割り振った領域のうち、最も面積の大きい領域を乳房領域として検出するように構成されている。
【0048】
本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムによれば、デジタルマンモグラフィ画像が図13に示すように背景領域と乳房領域との濃度差がなく連続し、乳房領域が不鮮明であっても、エッジ強調画像生成部3を備えているので、乳房領域のエッジ強調画像を得ることができる。また、基準画像生成部4を備えているので、エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋めた基準画像を得ることができる。この基準画像により、乳房領域をより正確に検出することができる。
【0049】
また、本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムによれば、濃度値のヒストグラムを使用せずに乳房領域を検出するようにしているので、撮影条件等による影響を抑えて、乳房領域をより正確に検出することができる。
【0050】
また、本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムによれば、自動的に作成可能な基準画像(図6)に基づいて乳房領域を検出するようにしているので、人為的な検出ミスを抑えることができる。
【0051】
また、本発明の実施形態に係る乳房領域検出システムによれば、乳房領域候補画像に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域E11を乳房領域として検出するようにしている。これにより、背景領域にノイズや識別情報や余計な構造物に起因する領域があっても、乳房領域をより正確に検出することができる。
【0052】
なお、図8は、デジタルマンモグラフィ画像の一例を示す図である。図9は、図8に示すデジタルマンモグラフィ画像に対して白黒反転を行った状態を示す図である。図10は、図9に示す白黒反転後のデジタルマンモグラフィ画像において、本乳房領域検出システムによって検出した乳房領域に基づいて背景領域を黒色で表示した状態を示す図である。図10に示すように、本乳房領域検出システムによれば、読影医の目の負担が少なく、乳房領域内が見易い画像を得ることができる。
【0053】
なお、前処理部2、エッジ強調画像生成部3、基準画像生成部4、及び乳房領域検出部5は、例えば、MPUやメモリ等により実現可能である。また、各部2~5の処理手順は、例えば、ROM等の記憶媒体に記録されているソフトウェアやハードウェア(専用回路)により実現可能である。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る乳房領域検出方法について説明する。図11は、本発明の実施形態に係る乳房領域検出方法の一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、前処理部2が、乳房領域を検出する対象となるデジタルマンモグラフィ画像に対して、画素数を減少させる縮小処理を行う(ステップS1)。この縮小処理により、デジタルマンモグラフィ画像中の微細なノイズが除去される。また、この縮小処理により、後続の画像処理の速度を速くすることができる。デジタルマンモグラフィ画像の元のサイズは、例えば、約2000~10000画素である。デジタルマンモグラフィ画像の縮小処理後のサイズは、例えば、約256~512画素である。
【0056】
次いで、エッジ強調画像生成部3が、縮小処理後のデジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域E1のエッジ強調画像(図3)を生成する(ステップS2~S4)。
【0057】
より具体的には、スキンライン強調画像生成部31が、縮小処理後のデジタルマンモグラフィ画像に対して1次微分フィルタであるソーベルフィルタ処理を行うことにより乳房領域E1のスキンラインSLを強調したスキンライン強調画像(図2)を生成する(ステップS2)。また、このとき、スキンライン強調画像生成部31が、スキンライン強調画像(図2)に対して二値化処理を行い、スキンラインSLだけではなく、乳房領域E1内の構造物も強調されたスキンライン強調画像(図3)を生成する。
【0058】
その後、構造物強調画像生成部32が、縮小処理後のデジタルマンモグラフィ画像に対して2次微分フィルタであるラプラシアンフィルタ処理を行うことにより乳房領域E1内の構造物(乳腺、脂肪等)を強調した構造物強調画像(図4)を生成する(ステップS3)。
【0059】
その後、強調画像合成部33が、スキンライン強調画像(図3)と構造物強調画像(図4)とを合成することによりエッジ強調画像(図5)を生成する(ステップS4)。
【0060】
次いで、基準画像生成部4が、エッジ強調画像(図5)に対してクロージング処理を行うことにより基準画像(図6)を生成する(ステップS5)。
【0061】
次いで、乳房領域検出部5が、基準画像(図6)に基づいて乳房領域を検出する(ステップS6~S8)。
【0062】
より具体的には、乳房領域検出部5が、デジタルマンモグラフィ画像に対して濃度値の閾値を変更し、基準画像(図6)に最も近い二値化画像となる閾値を探索する(ステップS6)。例えば、乳房領域検出部5が、濃度値の閾値を順次増加させ、それにより得られる二値化画像と基準画像とを順次比較して、重複しない画素数が最も少なくなる閾値を探索する。この処理の例として図14にフローチャートを示す。ステップS103において、基準画像であるi1と閾値nにおける二値化画像であるi2を画素毎にXORすると異なる領域にのみビットが立つので、「ビットが立つ領域が多い=基準画像に似ていない」、「ビットが立つ領域が少ない=基準画像に似ている」ということになる。
【0063】
その後、乳房領域検出部5が、探索した閾値に基づく二値化画像を乳房領域候補画像(図7)として取得する(ステップS7)。
【0064】
その後、乳房領域検出部5が、当該取得した乳房領域候補画像(図7)に対してラベリング処理を行い、最も面積の大きい領域E11を乳房領域として検出する(ステップS8)。
【0065】
本発明の実施形態に係る乳房領域検出方法によれば、濃度値のヒストグラムを使用せずに乳房領域を検出するようにしているので、撮影条件等による影響を抑えて、乳房領域E1をより正確に検出することができる。
【0066】
また、本発明の実施形態に係る乳房領域検出方法によれば、自動的に作成可能な基準画像(図6)に基づいて乳房領域を検出するようにしているので、人為的な検出ミスを抑えることができる。
【0067】
なお、前記では、スキンライン強調画像(図3)と構造物強調画像(図4)とを合成することによってエッジ強調画像(図5)を生成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、スキンライン強調画像(図3)において、後続のクロージング工程で乳房領域E1内を特定の色で埋められる程度に、乳房領域E1の構造物が十分に表示されている場合には、当該スキンライン強調画像をエッジ強調画像としてもよい。同様に、構造物強調画像(図4)において、後続の工程で乳房領域E1内を特定の色で埋められる程度に、乳房領域E1の構造物が十分に表示されている場合には、当該構造物強調画像をエッジ強調画像としてもよい。但し、2種類以上の強調画像を合成してエッジ強調画像(図5)を生成するようにすることで、撮影条件等の影響を受けて適切なエッジ強調画像が得られないという事態が発生することをより確実に抑えることができる。
【0068】
また、前記では、ソーベルフィルタ処理及びラプラシアンフィルタ処理を行うことによってエッジ強調画像(図5)を生成するようにしたが、本発明はこれに限定されない。エッジ強調画像は、後続の工程で乳房領域E1内を特定の色で埋められる程度に、乳房領域E1の構造物が十分に表示されている画像であればよい。すなわち、他の1種類以上の画像処理を行うことによって、エッジ強調画像(図5)を生成するようにしてもよい。例えば、ソーベルフィルタ処理に替えて他の1次微分フィルタ処理(例えば、プレヴィット(Prewitt)フィルタ処理等)を行ってもよい。また、ラプラシアンフィルタ処理に替えて他の2次微分フィルタ処理を行ってもよい。
【0069】
また、前記では、図6に示すように、クロージング処理によって乳房領域E1を特定の色で完全に埋めるものとしたが、実際には、図12に示すように、クロージング処理では乳房領域E1を特定の色で完全に埋められないことも想定される。この場合、他の処理によって、又はクロージング処理と他の処理とを併用することによって、乳房領域E1を特定の色で完全に埋めるようにしてもよい。
【0070】
また、前記では、基準画像(図6)に最も近い二値化画像を乳房領域候補画像としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、乳房領域内に図12に示すような穴(特定の色で完全に埋められていない部分)が無いなどの所定の基準(例えば、後述するエラーチェックの内容)を満たせば、基準画像を乳房領域候補画像としてもよい。すなわち、エラーチェックを図11のステップS5の後に行って、所定の基準を満たせば、基準画像から直接的に乳房領域を検出するようにしてもよい。
【0071】
なお、乳房領域内の病変が非常に微細である場合、乳房領域の検出の正確性が十分ではないと、読影医が当該病変を見落としてしまう可能性がある。このため、図11を用いて説明したステップS8の後に、検出した乳房領域が所定の基準を満たしているか否かをチェックするエラーチェックを行うことが好ましい。この処理の例として図15にエラーチェック処理の設定画面を示す。
【0072】
「所定の基準」とは、例えば、乳房領域内の穴の有無(図12参照)、乳房領域のサイズ、乳房領域の垂直位置のずれ、乳房領域の複雑度である。
【0073】
すなわち、乳房領域内に穴がある場合、乳房領域の検出が不正確であるため、エラーと判定する。また、乳房領域の面積が画面の総面積に対して所定の割合以上である場合、乳房領域のサイズが大きすぎるため、エラーと判定する。また、乳房領域は画面の中央側に存在すべきであるので、乳房領域の重心と画面の中心とが垂直方向に離れる距離が所定の距離以上である場合、エラーと判定する。また、乳房領域の複雑度(=輪郭の長さ×輪郭の長さ/乳房領域の面積)が大きい場合、乳房領域の輪郭が滑らかでないので、エラーと判定する。
【0074】
前記エラーチェックによってエラーと判定した場合には、例えば、画面にエラー表示する、或いは、画面に元のデジタルマンモグラフィ画像を表示する。これにより、乳房領域の検出の正確性が十分ではないことを読影医に知らせることができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る乳房領域検出システム1の各部2~5の機能は、ソフトウェアで実現されてもよい。当該ソフトウェアは、ダウンロード等により提供されてもよい。また、このソフトウェアは、CD-ROMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記録されて提供されてもよい。なお、このことは、本明細書における他の実施形態についても該当する。なお、本実施形態に係る乳房領域検出システム1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。すなわち、当該プログラムは、コンピュータを、デジタルマンモグラフィ画像に基づいて乳房領域のエッジ強調画像を生成するエッジ強調画像生成部と、前記エッジ強調画像に対して乳房領域を背景領域とは異なる色で埋める処理を行うことにより基準画像を生成する基準画像生成部と、前記基準画像に基づいて乳房領域を検出する乳房領域検出部として機能させるプログラムである。
【0076】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、乳房領域をより正確に検出することができるので、例えば、デジタルマンモグラフィ画像から乳房領域を検出する乳房領域検出システム、乳房領域検出方法、及びプログラムに有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 乳房領域検出システム
2 前処理部
3 エッジ強調画像生成部
4 基準画像生成部
5 乳房領域検出部
31 スキンライン強調画像生成部
32 構造物強調画像生成部
33 強調画像合成部
SL スキンライン
E1 乳房領域
E2 背景領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15