(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】蛍光染料及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
C09B 23/10 20060101AFI20220119BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220119BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C09B23/10 CSP
C09K11/06
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2019526212
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 CN2018090775
(87)【国際公開番号】W WO2019227524
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201810535588.9
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519170302
【氏名又は名称】蘇州百源基因技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】車 団結
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-513293(JP,A)
【文献】特表2021-523244(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102146215(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1702118(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107955392(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108033907(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102627869(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108840815(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109651835(CN,A)
【文献】国際公開第2017/010852(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
C09K 11/06
G01N 21/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)構造を有することを特徴とする蛍光染料。
【化8】
(式中、
前記Xはハロゲンであり、
前記Rは親水性基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基から選択される1種である。)
【請求項2】
前記親水性基はカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボン酸エステルから選択される1種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光染料。
【請求項3】
前記XはBrであることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光染料。
【請求項4】
下記式(A)-(L)に示される構造から選択されることを特徴とする請求項1-3のいずれか1項に記載の蛍光染料。
【化9】
【請求項5】
前記中間体は下記式(I’)に記載の構造を有することを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載の蛍光染料の中間体。
【化10】
【請求項6】
フェニルヒドラジンを氷酢酸に加え、撹拌させ、3-メチル-2-ブタノンをゆっくりと滴下し、滴下終了後に60-65℃まで加熱して反応させ、反応生成物を抽出、濃縮、精製させ、中間体I-1を得る(1)化合物I-1の製造ステップと、
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンをトルエンに加え、窒素保護下で、加熱還流反応させ、反応生成物を冷却させ、固体を析出させ、中間体I-2を得る(2)中間体I-2の製造ステップと、
乾燥したN,N-ジメチルホルムアミドを乾燥した塩化メチレンに加え、氷浴下でオキシ塩化リンの塩化メチレン溶液を加え、シクロヘキサノンを加え、氷浴を除去し、加熱還流反応させ、反応終了後に反応液を砕いた氷に入れ、一晩静置し、固体を析出させ、中間体I-4を得る(3)中間体I-4の製造ステップと、
中間体I-2と中間体I-4をn-ブチルアルコールとトルエンの混合液に加え、加熱還流反応させ、固体を析出させ、濾過して中間体(I’)を得る(4)中間体I’の製造ステップとを含むことを特徴とする請求項5に記載の中間体の製造方法。
【化11】
【請求項7】
前記ステップ(1)では、前記フェニルヒドラジンと3-メチル-2-ブタノンとのモル比を1:(1.0-1.2)とし、
前記ステップ(2)では、前記中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンとのモル比を1:(1.5-2.0)とし、
前記ステップ(3)では、前記シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンのモル比を1:(1.0-1.1):(1.0-1.05)とすることを特徴とする請求項6に記載の中間体の製造方法。
【請求項8】
前記中間体(I’)をアミノ基置換するステップを含むことを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載の蛍光染料の製造方法。
【請求項9】
請求項1-4のいずれか1項に記載の蛍光染料の蛍光コード化マイクロスフェアの製造における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光機能材料分野に関し、具体的には蛍光染料及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
液相バイオチップ技術はフロー技術、蛍光マイクロスフェア化学合成技術、生体分子ハイブリダイゼーション技術、高効率デジタル信号処理技術を一体とする最先端の生体分子検出技術である。液相バイオチップ技術の核心は、蛍光コード化標識された機能性高分子マイクロスフェア(蛍光コード化マイクロスフェア)であり、従来、蛍光コード化マイクロスフェアのコード化とデコード思想は、Luminex100を例とし、システムが赤色とオレンジ色の2種の蛍光染料で直径が5.5~5.6μmのポリスチレンマイクロスフェアをコード化し、各種の染料を蛍光強度に応じて10等分し、10×10の100種の異なる蛍光コードを形成し、それぞれ100種の異なるプローブ分子にカップリングして生物学的検出に用いることである。検出際に、レーザーで1つずつ蛍光コード化マイクロスフェアを励起し、励起した蛍光信号を一連の二色性ミラーと光学フィルターに通過させ、増倍型光学管(PMT)で収集し、最終的に信号をプロセッサへ送信して処理する。
【0003】
従来の固体チップに比べて、液相バイオチップ技術は下記利点を有する。(1)流量が高く、同時に100または500種のターゲット分子を定性的、且つ定量的に分析し、多成分検出の目的を達成することができ、(2)サンプル使用量が少なく、単一サンプルの多成分検出を達成し、サンプル使用量を大量に節約し、まれなサンプルに対する検出分析を達成し、従来のバイオチップ技術の未満を補うことができ、(3)感度が高く、ハイブリダイゼーション反応を生体系統の内部環境に近い液相環境で行い、蛋白質とDNAの固有立体配座と活性を維持することができ、大きな表面積を有するマイクロスフェアには数千数万のプローブ分子をカップリングすることができ、このような高密度のプローブ分子は被検出分子を最大程度にキャプチャし、ハイブリダイゼーション反応を十分に行うことを維持することができ、それにより検出感度を向上させ、(4)速度が速く、液相反応動力学に基づいてハイブリダイゼーション反応が迅速且つ高効率になり、インキュベート時間を大幅に縮み、そして、フローサイトメトリーにより検出分析時間を大幅に縮む。また、低コストで、検出範囲が広く、精度が高く、操作がシンプル且つ柔軟で、再現性が高い等の利点を有する。
【0004】
現在、商業化されている蛍光染料は多くあり、スペクトル範囲の分布が非常に広く、青色~赤色が含まれ、且つ市場から直接得ることができる。しかしながら、従来の蛍光染料には、例えば漂白しやすく、安定性が低く、水溶性が低く、ストークスシフトが小さく、吸収スペクトルと発光スペクトルが広く及び「残像現象」が深刻である等の多くの問題が存在し、蛍光染料の蛍光コード化マイクロスフェアの製造における応用を制限する。したがって、安定性が高く、水溶性が高く、且つ大きなストークスシフトを有する蛍光染料の開発は十分に重要な意味を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする技術課題は、従来技術における、蛍光染料の光安定性が低く、水溶性が低く、ストークスシフトが小さく、且つ合成ステップが複雑であるという問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術課題を解決するために、本発明の用いる技術案は以下のとおりである。
本発明に記載の蛍光染料は、式(I)構造を有する。
【化1】
(式中、
前記Xはハロゲンであり、
前記Rは親水性基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基から選択される1種である。)
前記親水性基はカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボン酸エステルから選択される1種である。
前記XはBrである。
【0007】
前記蛍光染料は下記式(A)-(L)に示される構造から選択される。
【化2】
【0008】
本発明は、さらに下記式(I’)に記載の構造を有する前記蛍光染料の中間体を開示する。
【化3】
【0009】
本発明は、さらに前記中間体の製造方法を開示し、
フェニルヒドラジンを氷酢酸に加え、撹拌させ、3-メチル-2-ブタノンをゆっくりと滴下し、滴下終了後に60-65℃まで加熱して反応させ、反応生成物を抽出、濃縮、精製させ、中間体I-1を得る(1)化合物I-1の製造ステップと、
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンをトルエンに加え、窒素保護下で、加熱還流反応させ、反応生成物を冷却させ、固体を析出させ、中間体I-2を得る(2)中間体I-2の製造ステップと、
乾燥したN,N-ジメチルホルムアミドを乾燥した塩化メチレンに加え、氷浴下でオキシ塩化リンの塩化メチレン溶液を加え、シクロヘキサノンを加え、氷浴を除去し、加熱還流反応させ、反応終了後に反応液を砕いた氷に入れ、一晩静置し、固体を析出させ、中間体I-4を得る(3)中間体I-4の製造ステップと、
中間体I-2と中間体I-4をn-ブチルアルコールとトルエンの混合液に加え、加熱還流反応させ、固体を析出させ、濾過して中間体(I’)を得る(4)中間体I’の製造ステップとを含む。
【化4】
【0010】
前記ステップ(1)では、前記フェニルヒドラジンと3-メチル-2-ブタノンとのモル比を1:(1.0-1.2)とし、
前記ステップ(2)では、前記中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンとのモル比を1:(1.5-2.0)とし、
前記ステップ(3)では、前記シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンのモル比を1:(1.0-1.1):(1.0-1.05)とする。
【0011】
本発明は、さらに、前記中間体(I’)をアミノ基置換するステップを含む前記蛍光染料の製造方法を開示する。
本発明は、さらに、前記蛍光染料の蛍光コード化マイクロスフェアの製造における応用を開示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記技術案は以下の利点を有する。
【0013】
1、本発明の実施例に係る蛍光染料は、R1ビットに親水性基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基を導入することで、分子の水溶性を高め、R2、R3にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基等の大立体基を導入することで、分子の安定性を高め、R4、R5に五員複素環基を導入することで、分子の電子雲分布を微調整させるともに、分子の平面性を高め、分子に大きなストークスシフトを与える。該構造の蛍光染料は生物高分子と共有結合され、構造が安定し、感度が高く、細胞イメージング、蛍光プローブ、レーザー染料、蛍光センサ等の異なる応用分野に用いることができ、好ましい実用性を示す。
【0014】
2、本発明に係る製造方法は原料コストが低く、汚染がなく、プロセスがシンプルで、収率が高く、好ましい生体適合性、低い毒性、長い蛍光発光及び高い量子収率を有し、背景蛍光を生物体系中の生物高分子例えば核酸または蛋白質の共有結合蛍光標識に用いることを避けることができ、疾病の研究または生物の発育、繁殖、遺伝に対して非常に重要な作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の具体的な実施形態または従来技術における技術案をより明確に説明するため、以下、具体的な実施形態または従来技術の記述において必要な図面について簡単に説明するが、当然ながら、以下に記載する図面は本発明のいくつかの実施形態にすぎず、当業者にとっては、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到しうる。
【
図1】本発明の実施例1における中間体I’を製造する核磁気スペクトルである。
【
図2】本発明の実施例4における化合物(A)を製造する核磁気スペクトルである。
【
図3】本発明に記載の蛍光染料のエタノールにおける励起と発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の技術案について明瞭且つ完全に説明する。無論、説明される実施例は本発明の実施例の一部であり、実施例のすべてではない。本発明における実施例に基づき、当業者が進歩性を有する労働を必要とせずに得られるほかの実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。また、以下、説明した本発明の異なる実施形態に係る技術的特徴は互いに矛盾しない限り、組み合わせることができる。
【0017】
本発明の実施例に用いる試薬等の基礎化学工業原料は、いずれも中国内の化学工業製品市場で購入することができ、または関連する中間体製造工場で製造することができる。
【0018】
(実施例1)
本実施例に係る中間体(I’)の製造方法は以下のとおりである。
【化5】
【0019】
(1)中間体I-1の製造
フェニルヒドラジンを氷酢酸に加え、撹拌させ、3-メチル-2-ブタノンをゆっくりと滴下し、滴下終了後に60℃まで加熱して、3-4時間反応させ、抽出、濃縮、精製させ、中間体I-1を得て、
フェニルヒドラジンと3-メチル-2-ブタノンとのモル比を1:1.0とし、
(2)中間体I-2の製造
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンをトルエンに加え、窒素保護下で、16時間加熱還流反応させ、冷却させ、固体を析出させ、中間体I-2を得て、
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンとのモル比を1:1.5とし、
(3)中間体I-4の製造
乾燥したN,N-ジメチルホルムアミドを乾燥した塩化メチレンに加え、氷浴下でオキシ塩化リンの塩化メチレン溶液を加え、撹拌させ、シクロヘキサノンを加え、氷浴を除去し、2時間加熱還流反応させ、反応液を砕いた氷に入れ、一晩静置し、固体を析出させ、中間体I-4を得て、
シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンのモル比を1:1.0:1.0とし、
(4)中間体I’の製造
中間体I-2と中間体I-4をn-ブチルアルコールとトルエンの混合液に加え、2時間加熱還流させ、固体を析出させ、濾過して中間体I’を得る。
【0020】
本実施例では、中間体I’の核磁気スペクトルは
図1に示され、中間体I’を検出及び特徴付けするデータは以下のとおりである。
元素分析計算値:C
34H
36Br
3N
3
マススペクトル(MS+):723.05(M+)
m/z:725.04(100.0%)、727.04(97.7%)、726.05(37.2%)、728.05(37.0%)、723.05(34.3%)、729.04(31.9%)、724.05(12.7%)、730.04(12.0%)、727.05(6.7%)、729.05(6.5%)、725.05(2.4%)、731.05(2.1%)、726.04(1.1%)、728.04(1.1%)。
元素分析:C、56.22、H、5.00、Br、33.00、N、5.78。
【0021】
(実施例2)
本実施例に係る中間体(I’)の製造方法は以下のとおりである。
【化6】
【0022】
(1)中間体I-1の製造
フェニルヒドラジンを氷酢酸に加え、撹拌させ、3-メチル-2-ブタノンをゆっくりと滴下し、滴下終了後に62.5℃まで加熱して、3-4時間反応させ、抽出、濃縮、精製させ、中間体I-1を得て、
フェニルヒドラジンと3-メチル-2-ブタノンとのモル比を1:1.1とし、
(2)中間体I-2の製造
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンをトルエンに加え、窒素保護下で、17時間加熱還流反応させ、冷却させ、固体を析出させ、中間体I-2を得て、
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンとのモル比を1:1.75とし、
(3)中間体I-4の製造
乾燥したN,N-ジメチルホルムアミドを乾燥した塩化メチレンに加え、氷浴下でオキシ塩化リンの塩化メチレン溶液を加え、撹拌させ、シクロヘキサノンを加え、氷浴を除去し、2.5時間加熱還流反応させ、反応液を砕いた氷に入れ、一晩静置し、固体を析出させ、中間体I-4を得て、
シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンのモル比を1:1.05:1.025とし、
(4)中間体I’の製造
中間体I-2と中間体I-4をn-ブチルアルコールとトルエンの混合液に加え、2.5時間加熱還流させ、固体を析出させ、濾過して中間体I’を得る。
【0023】
(実施例3)
本実施例に係る中間体(I’)の製造方法は以下のとおりである。
【化7】
【0024】
(1)中間体I-1の製造
フェニルヒドラジンを氷酢酸に加え、撹拌させ、3-メチル-2-ブタノンをゆっくりと滴下し、滴下終了後に65℃まで加熱し、4時間反応させ、抽出、濃縮、精製させ、中間体I-1を得て、
フェニルヒドラジンと3-メチル-2-ブタノンとのモル比を1:1.2とし、
(2)中間体I-2の製造
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンをトルエンに加え、窒素保護下で、18時間加熱還流反応させ、冷却させ、固体を析出させ、中間体I-2を得て、
中間体I-1と1,2-ジブロモエチレンとのモル比を1:2.0とし、
(3)中間体I-4の製造
乾燥したN,N-ジメチルホルムアミドを乾燥した塩化メチレンに加え、氷浴下でオキシ塩化リンの塩化メチレン溶液を加え、撹拌させ、シクロヘキサノンを加え、氷浴を除去し、3時間加熱還流反応させ、反応液を砕いた氷に入れ、一晩静置し、固体を析出させ、中間体I-4を得て、
シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンのモル比を1:1.1:1.05とし、
(4)中間体I’の製造
中間体I-2と中間体I-4をn-ブチルアルコールとトルエンの混合液に加え、2-3時間加熱還流させ、固体を析出させ、濾過して中間体I’を得る。
【0025】
(実施例4)
本実施例では化合物(A)を製造し、すなわち実施例1で製造された中間体(I’)を原料として通常のアミノ基置換反応を行う。中間体(I’)にブロモ酢酸を加えて反応させ、NaOHを加え、所要の化合物(A)を製造する。化合物(A)の核磁気スペクトルは
図2に示され、検出により、得られた化合物(A)の構造が正しい。
元素分析計算値:C
36H
38Br
2N
3O
2
+
マススペクトル(MS+):702.13(M+)
m/z:704.13(100.0%)、702.13(51.3%)、706.13(49.0%)、705.13(40.0%)、703.14(20.2%)、707.13(19.6%)、706.14(8.0%)、704.14(4.1%)、708.14(3.8%)、707.14(1.3%)、705.14(1.1%)。
元素分析:C、61.37、H、5.44、Br、22.68、N、5.96、O、4.54。
【0026】
(実施例5)
本実施例では、化合物(B)を製造し、すなわち実施例1で製造された中間体(I’)を原料として通常のアミノ基置換反応を行う。中間体(I’)にブロモメタノールを加えて反応させ、NaOHを加え、所要の化合物(B)を製造する。検出により、得られた化合物(B)の構造が正しい。
元素分析計算値:C35H38Br2N3O+
マススペクトル(MS+):674.14(M+)
m/z:676.14(100.0%)、674.14(49.5%)、678.13(46.8%)、677.14(36.9%)、675.14(19.5%)、679.14(18.1%)、678.14(7.3%)、680.14(3.5%)、677.13(1.1%)。
元素分析:C、62.14、H、5.66、Br、23.62、N、6.21、O、2.37。
【0027】
(実施例6)
本実施例では化合物(C)を製造し、すなわち実施例1で製造された中間体(I’)を原料として通常のアミノ基置換反応を行う。中間体(I’)にモノブロモ-m-トルイル酸を加えて反応させ、NaOHを加え、所要の化合物(C)を製造する。検出により、得られた化合物(C)の構造が正しい。
元素分析計算値:C42H42Br2N3O2
+
マススペクトル(MS+):778.16(M+)
m/z:780.16(100.0%)、778.16(51.3%)、782.16(49.0%)、781.17(46.8%)、779.17(23.6%)、783.16(22.6%)、782.17(10.7%)、780.17(5.5%)、784.17(5.1%)、783.17(2.0%)、781.16(1.1%)。
元素分析:C、64.62、H、5.42、Br、20.47、N、5.38、O、4.10。
【0028】
(実施例7)
本実施例では化合物(D)を製造し、すなわち実施例1で製造された中間体(I’)を原料として通常のアミノ基置換反応を行う。中間体(I’)にブロモメチルホスホン酸を加えて反応させ、NaOHを加え、所要の化合物(D)を製造する。検出により、得られた化合物(D)の構造が正しい。
元素分析計算値:C35H39Br3N3O3P
マススペクトル(MS+):817.03(M+)
m/z:819.03(100.0%)、821.02(94.7%)、820.03(37.4%)、822.03(36.7%)、817.03(33.4%)、823.02(31.1%)、824.03(12.9%)、818.03(12.8%)、821.03(7.8%)、823.03(7.4%)、825.03(2.4%)、820.02(1.1%)、822.02(1.1%)。
元素分析:C、51.24、H、4.79、Br、29.22、N、5.12、O、5.85、P、3.78。
【0029】
(実施例8-15)
本実施例は化合物(E)-(L)を合成することに用いられ、その製造原理及び方法は実施例4-7と同じであり、すなわち適切な原料を選択して中間体(I’)におけるアミノ基に対して通常の置換を行えばよい。
【0030】
(実験例)
本発明に記載の蛍光染料の蛍光性能を検証するために、その蛍光スペクトル及びモル吸光係数、蛍光量子収率を測定する。
【0031】
(実験例1.蛍光染料の吸収スペクトル測定)
実施例1及び実施例4-6で製造された化合物を正確に秤取し、体積分率が50%のエタノールで濃度が1.0×10
-5mol/Lの溶液を調製し、その吸収スペクトルを測定し、
図2に示される。図中、1は実施例1で中間体を製造することを示し、2-4はそれぞれ実施例4-6で化合物を製造することを示す。
【0032】
(実験例2.蛍光染料の蛍光スペクトル測定)
測定した近赤外スペクトルにおける最大吸収波長を、蛍光スペクトルの励起波長として、蛍光スペクトルを測定する。実施例1及び実施例4-6で製造された化合物を正確に秤取し、濃度が1.0×10
-6mol/Lのエタノール:水(50、50、v/v)溶液を調製し、その発光スペクトルを測定し、
図1に示される。図中、1は実施例1で中間体を製造することを示し、2-4はそれぞれ実施例4-6で化合物を製造することを示す。
【0033】
(実験例3.蛍光染料のモル吸光係数測定)
紫外可視吸収スペクトルで化合物のモル吸光係数を測定する。算式は式(1)に示され、
【数1】
式中、Aは紫外吸収値、εはモル吸光係数、cは化合物の濃度、lは検出用の石英セルの厚みである。
【0034】
(実験例4.蛍光染料の蛍光量子収率測定)
20℃下で蛍光染料の蛍光量子収率を測定し、硫酸キニーネ(溶媒が0.1MのH
2SO
4であり、量子収率が0.56である)を参照物とし、蛍光染料と参照物質の希釈溶液が同じ励起条件において得られた蛍光積分強度と該励起波長下の紫外吸収値を測定することで、蛍光量子収率を計算する。生成物を無水エタノールに溶解させる。
算式は式(2)に示され、
【数2】
式中、Φは被検物の量子収率であり、下付き文字Rは参照物を示す。Iは蛍光積分強度、Aは紫外吸収値である。ηは溶媒屈折率である。一般的には吸光度A、A
Rはいずれも0.1より小さく要求されている。
【0035】
【0036】
表1に示されるように、本発明に記載の中間体及び蛍光は必ず最大の吸収波長を有するとともに、最大の発光波長829nm、最大のモル吸光係数9.0及び最大の蛍光量子収率89.86%にも対応するため、更に該当化合物は生物高分子例えば核酸または蛋白質の共有結合蛍光標識に用いる長所を有することを示す。
【産業上の利用可能性】
【0037】
無論、上記実施例は単にリストされた例を明瞭に説明するためのものにすぎず、実施形態を限定するものではない。当業者にとっては、上記説明を基に、他の異なる形態の変化または変更が可能である。ここで、あらゆる実施形態に対して複数の例を挙げることができないし、必要もない。ここで派生した明瞭な変化または変更は本発明創造の保護範囲内に属する。