(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】電子素子
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20220119BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20220119BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H05K9/00 R
H05K9/00 C
H05K1/02 F
H05K1/02 P
H01L23/00 C
(21)【出願番号】P 2020066634
(22)【出願日】2020-04-02
(62)【分割の表示】P 2016142510の分割
【原出願日】2016-07-20
【審査請求日】2020-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早坂 努
(72)【発明者】
【氏名】松戸 和規
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-064266(JP,A)
【文献】特開2015-130484(JP,A)
【文献】特開2015-065342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/02
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を備える配線基板と、該配線基板の前記実装面上に実装された電子部品とを備える電子基板と、
絶縁層および導電層を有し、前記絶縁層を前記電子部品側にして積層され、前記電子部品の表面を覆う電磁波遮蔽層と、
前記電磁波遮蔽層の導電層に接触させて該導電層を接地するグランド部材とを備え
、
前記グランド部材と前記導電層を互いに接触させる突起を、前記グランド部材と前記導電層の対向面の少なくとも一方に備え、
前記突起は、前記導電層または前記グランド部材に一体に形成されていることを特徴とする電子素子
(但し、前記グランド部材がねじである場合を除き、
さらに、前記配線基板の実装面側に、電子部品より高く突出する突出部を少なくとも一つ備え、前記電子部品の表面を覆う前記電磁波遮蔽層の前記突出部に対する当接部を該電子部品より高く突出させて、該電磁波遮蔽層の前記導電層を対向配置されたグランド部材に接触させて該導電層を該グランド部材を介して接地させてなることを特徴とする電子素子を除き、
さらに、前記導電層と前記グランド部材との間に介在させて両者を接続する導電性部材を備え、前記導電層と前記グランド部材との対向面の少なくとも一方に、前記導電性部材の外面端部が嵌合する位置決め用凹部または該導電性部材の端面凹部に嵌合する位置決め用凸部を備えたことを特徴とする電子素子を除く)。
【請求項2】
前記導電層は、硬化性樹脂の硬化物と、該硬化物に分散された導電性粒子とを含むことを特徴とする請求項
1記載の電子素子。
【請求項3】
導電層と、該導電層の前記電子部品側に設けられた絶縁層と、該導電層の前記電子部品側とは反対側に設けられた導電粘着剤層を備えた電磁波遮蔽層を用い、前記電子部品の表面を覆うことを特徴とする請求項1~
2いずれか1項記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の電子機器では、配線基板上に搭載された電子部品を、例えば、電磁波等から保護するために、特許文献1では導電性を有する箱状のシールド缶を、電子部品を覆うように配線基板上に設けることが行われている。また、特許文献2では電子部品を導電性を有するシールド材により覆うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4857927号
【文献】特開2015-65342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたシールド缶は、一般に金属で構成されているため、サイズを小さくする(特に、薄型化する)のに限界がある。したがって、シールド缶を配線基板に設置してなる電子素子、さらには電子素子を組み込んだ電子機器の更なる薄型化への要求に対応することができないという問題がある。
【0005】
また、金属製のシールド缶は、硬質であり、その柔軟性が極めて低い。このため、シールド缶を配線基板に設置(接合)する際、電子部品が破損するのを防止するために、シールド缶と電子部品との間に、一定のサイズを備える間隙を設ける必要があり、電子素子の薄型化への障害となっている。
加えて、かかる電子素子では、前記間隙を設けることにより、電子部品の発熱を効率的に除去し難いという問題もある。
【0006】
また、特許文献2に開示されたシールド材は、配線基板上に設けられたグランド配線に接着、ビス止め、半田付け等の手段により取り付けられている。このため、配線基板にはグランド配線を設ける領域が必要であり、この領域だけ配線基板が大きくなるため電子基板自体も大きくなり、電子素子の小型化に障害となっている。また、上記のように配線基板上にグランド配線を施す作業、このグランド配線にシールド材を取付ける作業を必要とするため電子素子の製作工程が増し、製作が簡単かつ迅速にできないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて、小型化および製作の簡単かつ迅速化を可能とし、また、電子部品からの発熱の除去が容易であり、信頼性が高く十分な電磁波シールド効果を発揮する電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、以下の本発明により達成される。
【0009】
本発明の電子素子は、実装面を備える配線基板と、該配線基板の前記実装面上に実装された電子部品とを備える電子基板と、
絶縁層および導電層を有し、前記絶縁層を前記電子部品側にして積層され、前記電子部品の表面を覆う電磁波遮蔽層と、
前記電磁波遮蔽層の導電層に接触させて該導電層を接地するグランド部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配線基板上にグランド配線を設ける必要がなく、このため、グランド配線の敷設領域分だけ配線基板を小さくして該配線基板を実装する電子基板も小型化でき、その結果、電子素子の小型化を可能とする。また、配線基板上にグランド配線を施す必要がなく、このため、グランド配線に対する導電層の半田付け等の取り付け作業の必要もなく、電子素子の製作作業工程が簡略化される。この結果、電子素子を簡単かつ迅速に制作できるようになり、生産性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明によれば、電子部品の表面を覆う電磁波遮蔽層の導電層と接合するグランド部材を直接接触させるため電子部品を確実に電磁波シールドすることができるとともに、電子部品からの放熱は電磁波遮蔽層の導電層からグランド部材を通じて迅速に行われ、信頼性が高く十分な電磁波シールド効果を発揮する電子素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の電子素子の構成を示す第1実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図2】本発明の電子素子の構成を示す第2実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図3】本発明の電子素子の構成を示す第3実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図4】本発明の電子素子の構成を示す第4実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図5】本発明の電子素子の構成を示す第5実施形態の一部の拡大断面図である。
【
図6】(a),(b)電磁波遮蔽層の構成を示す一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電子素子を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の電子素子は、実装面を備える配線基板と、該配線基板の前記実装面上に実装された電子部品とを備える電子基板と、
絶縁層および導電層を有し、前記絶縁層を前記電子部品側にして積層され、前記電子部品の表面を覆う電磁波遮蔽層と、
前記電磁波遮蔽層の導電層に接触させて該導電層を接地するグランド部材とを備える。
このような構成を有することにより、配線基板上にグランド配線を設ける必要がなく、電磁波遮蔽層の導電層に接触させたグランド部材により、電磁波遮蔽層の電子部品を確実に電磁波シールドすることができる。
【0014】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の電子素子の構成を示す第1実施形態の一部の拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図1中の上側を「上」、下側を「下」とする。
【0015】
本発明の電子素子10は、電子基板100と、電子基板100に搭載された電子部品120と、電子部品120の表面を覆う電磁波遮蔽層1と、グランド部材130とを有する。
【0016】
《電子基板》
まず、電磁波遮蔽層1の説明に先立って、電子基板100について説明する。
電子基板は、実装面を備える配線基板と、該配線基板の前記実装面上に実装された電子部品とを備える。
なお、電子基板100としては、例えば、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板、リジッドフレキシルブル基板等が挙げられる。
【0017】
電子基板100は、実装面101を有する配線基板110と、この配線基板110の実装面101上に実装された複数の半導体チップ(電子部品)120とを備えている。
図示例は2つの半導体チップ120を実装させているが、この半導体チップ120は1つまたは2つ以上を実装させてもよい。この半導体チップ120は、例えば、CPUチップ、メモリチップ、電源チップ、音源チップ等が挙げられる。
【0018】
配線基板110は、基板111と、この基板111上に形成された配線112とで構成されている。配線112の一端部は、電源に接続され、他端部は、半導体チップ120の端子に接続されている。
【0019】
《電磁波遮蔽層》
電磁波遮蔽層は、絶縁層および導電層を有し、前記絶縁層を電子部品側にして積層され、前記電子部品の表面を覆う層である。
【0020】
図6(a)および(b)は、各実施形態で用いる電磁波遮蔽層1の構成を示す一部の拡大断面図である。
図6(a)の電磁波遮蔽層1は、導電性を備えるシート状の導電層2と、導電層2の下面(一方の面)に設けられた絶縁層3とを有している。
図6(b)の電磁波遮蔽層1は、導電性を備えるシート状の導電層2と、導電層2の下面(一方の面)に設けられた絶縁層3と、導電層2の上面(他方の面)に設けられた導電粘着剤層4とを有している。
【0021】
かかる電磁波遮蔽層1は、絶縁層3を半導体チップ120側にして積層され、半導体チップ120の表面を覆うようにして、配線基板110に接合されている
【0022】
[導電層]
導電層2は、導電性を有している。導電層2は金属膜および樹脂の固化物または硬化物と導電性粒子とを含む樹脂膜で構成されているのが好ましい。なお、導電層2は、これらの金属膜と樹脂膜との膜の組み合わせであってもよく、2種以上の異なる樹脂膜の組み合わせであってもよい。また、導電層2を金属膜で構成する場合、この金属膜は、導電性粒子において挙げる金属と同様のものを用いて形成することができる。
【0023】
また、導電層2は、配線基板110の種類(目的)に応じて、その導電性を等方導電性または異方導電性に設定することができる。なお、等方導電性とは、導電層2がその厚さ方向および面方向に導電性を有することを言い、異方導電性とは、導電層2がその厚さ方向のみに導電性を有することを言う。
【0024】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂、反応硬化性樹脂等が挙げられるが、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂のうちの少なくとも一方が好ましい。樹脂として、硬化性樹脂、特に、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂のうちの少なくとも一方を用いることによる効果は、後に説明する。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ジエン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、加熱による架橋反応に利用できる官能基を1分子中に1つ以上
有する樹脂であればよい。この官能基としては、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基等が挙げられる。
【0027】
かかる熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、フェノール系樹脂、クレゾール系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、アミノ系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、オキサゾリン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0028】
また、熱硬化性樹脂を用いる場合、導電層2は、熱硬化性樹脂の他、必要に応じて、上記官能基と反応し化学的架橋を形成する樹脂または低分子化合物のような硬化剤を含むことが好ましい。このような硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、ジシアンジアミド、芳香族ジアミン等のアミン系硬化剤のような比較的高温で硬化反応を進行させ得る硬化剤、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アジリジン系硬化剤、金属キレート系硬化剤等の比較的低温(例えば、120℃以下)で硬化反応を進行させ得る硬化剤が挙げられる。
【0029】
なお、これらの硬化剤のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。硬化剤の種類、それらの組み合わせおよび含有量等を適宜選択することにより、半導体チップ120に積層する前(使用前)の電磁波遮蔽層1における導電層2の硬化の程度(完全硬化状態または半硬化状態)、流動性の程度(固体状態またはゲル状態)および粘着性の程度(高粘着性、低粘着性または非粘着性)のうちの少なくとも1つを制御することができる。
【0030】
一方、光硬化性樹脂としては、光により架橋反応を起こす不飽和結合を1分子中に1つ以上有する樹脂であればよい。光硬化性樹脂の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂、アミノ系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、オキサゾリン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の導電層2では、このような樹脂の固化物または硬化物に導電性粒子が分散されている。かかる構成により、導電層2(電磁波遮蔽層1)は、電磁波シールド効果を発揮する。導電性粒子としては、例えば、金属粒子、炭素粒子、導電性樹脂粒子等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
金属粒子を構成する金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄またはそれらの合金、あるいは、ITO、ATO等が挙げられるが、価格と導電性の面から銅が好ましい。また、金属粒子は、金属で構成された核体と、この核体を被覆し、金属で構成された被覆層とを備える粒子であってもよい。かかる金属粒子としては、例えば、銅で構成された核体を、銀で構成された被覆層で被覆してなる銀コート銅粒子等が挙げられる。
【0033】
また、炭素粒子を構成する炭素としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイト、フラーレン、グラフェン等が挙げられる。また、導電性樹脂粒子を構成する導電
性樹脂としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリチオフェン等が挙げられる。
【0034】
導電性粒子の平均粒径は、1~100μm程度であるのが好ましく、3~75μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。導電性粒子の平均粒径を前記範囲とすることにより、導電層2中の導電性粒子の充填率を向上することができる。このため、導電層2(電磁波遮蔽層1)の電磁波シールド効果をより高めることができる。また、例えば、樹脂と混合して樹脂組成物を調製した際に、その流動性が良好となるため、導電層2への成形性が向上する。
【0035】
また、導電性粒子の形状は、球状、針状、フレーク状、樹枝状等のいかなる形状であってもよい。なお、導電性粒子の平均粒径は、一般的なレーザー回折法、散乱法などにより測定して求めることができ、その微粒子集合体の投影面積に等しい円を仮定したときの直径の平均値を平均粒径とすることができる。
【0036】
導電層2中の、導電性粒子の含有量は、特に限定されないが、樹脂100重量部に対して100~1500重量部であるのが好ましく、100~1000重量部であるのがより好ましい。導電性粒子の導電層2中の含有量を前記範囲とすることにより、導電性粒子の種類によらず、導電層2に必要かつ十分な導電性を付与することができ、導電層2の電磁波シールド効果を十分に高めることができる。また、樹脂と導電性粒子とを含む樹脂組成物の流動性が高まり、導電層2をより形成し易くなることからも好ましい。
【0037】
また、導電層2の平均厚さも、特に限定されないが、2~500μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましい。導電層2の平均厚さを前記範囲とすることにより、導電層2の機械的強度の低下を防止しつつ、導電層2の薄型化を図ることができる。
【0038】
なお、導電層2は、例えば、着色剤(顔料、染料)、難燃剤、充填剤(無機添加剤)、滑剤、ブロッキング防止剤、金属不活性化剤、増粘剤、分散剤、シランカップリング剤、防錆剤、銅害防止剤、還元剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤等を含有してもよい。
【0039】
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、黒鉛等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有難燃剤、りん含有難燃剤、窒素含有難燃剤、無機難燃剤等が挙げられる。充填剤としては、例えば、ガラス繊維、シリカ、タルク、セラミック等が挙げられる。
【0040】
また、滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、金属石鹸、変性シリコーン等が挙げられる。ブロッキング防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ポリメチルシルセスキオサン、ケイ酸アルミニウム塩等が挙げられる。
【0041】
[絶縁層]
このような導電層2の下面(半導体チップ120側の面)には、絶縁層3が設けられている。この絶縁層3は、十分な絶縁性を備えていればよく、硬質樹脂や硬化性樹脂(特に、熱硬化性樹脂)を用いて形成することができる。硬質樹脂の具体例としては、例えば、アクリル、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、エポキシ、エポキシエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。一方、硬化性樹脂としては、樹脂において挙げた硬化性樹脂と同様のものを用いることができる。
【0042】
また、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、絶縁層3は、導電層2で記載したのと同様の硬化剤を含有してもよい。これにより、半導体チップ120に積層する前(使用前)の電磁波遮蔽層1における絶縁層3の硬化の程度(完全硬化状態または半硬化状態)、流動性の程度(固体状態またはゲル状態)および粘着性の程度(高粘着性、低粘着性または非粘着性)のうちの少なくとも1つを制御することができる。
【0043】
また、絶縁層3は、例えば、放熱フィラー、着色剤(顔料、染料)、難燃剤、充填剤(無機添加剤)、滑剤、ブロッキング防止剤、金属不活性化剤、増粘剤、分散剤、シランカップリング剤、防錆剤、銅害防止剤、還元剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤等を含有してもよい。中でも放熱フィラーを含有することで放熱効率が上がるため好ましい。
【0044】
絶縁層3の平均厚さは、特に限定されないが、導電層2の平均厚さを100としたときに50~200程度の割合であるのが好ましく、75~150程度の割合であるのがより好ましい。具体的には、絶縁層3の平均厚さは、1~1000μm程度であるのが好ましく、3~200μm程度であるのがより好ましい。これにより、絶縁層3は、十分な絶縁性を維持しつつ、絶縁層3(電磁波遮蔽層1)に半導体チップ120の表面に対する優れた追従性を付与することができる。
【0045】
[導電粘着剤層]
図6(b)に示すように、導電層2の上面には導電粘着剤層4を積層することができる。上面に導電粘着剤層4を積層することで、後述するようにグランド部材130との接続を強固なものにできる。導電粘着剤層4は導電層2と同様の材料で作ることができる。なお、図示は省略したが、導電粘着剤層4の表面にはグランド部材130を接触配置するまでの間は剥離シートを施している。
【0046】
また、半導体チップ120からの放熱を促進させる観点からは、
図1に示すように、絶縁層3と半導体チップ120の表面とが密着していることが好ましいが、絶縁層3の平均厚さを、導電層2の平均厚さが100としたときに50~200程度の割合とすることにより、絶縁層3の半導体チップ120の表面に対する密着性をより向上することができる。なお、絶縁層3を半導体チップ120の表面に密着させるためには、電磁波遮蔽層1を配線基板110に接合する際に、この操作を減圧下または真空下で行うようにすればよい。
【0047】
また、絶縁層3の下面(半導体チップ120との接触面)は、平滑面で構成されても、粗面で構成されてもよい。絶縁層3の下面を平滑面で構成すると、絶縁層3と半導体チップ120の表面との接触面積を増大させることができ、電磁波遮蔽層1による放熱効果を向上することができる。一方、絶縁層3の下面を粗面で構成すると、絶縁層3と半導体チップ120の表面との接触面積を若干減少させることができ、電子基板100のリサイクル時に、半導体チップ120から絶縁層3(電磁波遮蔽層1)をより容易に除去することができるようになる。
【0048】
[電磁波遮蔽層の製造]
以上のような電磁波遮蔽層1は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、導電層用樹脂組成物を剥離シート上に塗工した後、半硬化、硬化または固化させる。これにより、導電層2を得る。この状態で、導電層2は、粘着性を有していても、有していなくてもよい。
【0049】
次に、絶縁層用樹脂組成物を導電層2上に塗工した後、半硬化、硬化または固化させる
。これにより、絶縁層3を得る。この状態で、絶縁層3は、粘着性を有していても、有していなくてもよい。
【0050】
各樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピコート方式、ディップコート方式等を使用することができる。
【0051】
なお、電磁波遮蔽層1は、各層を個別に形成した後、これらの層を互いに接合して形成するようにしてもよい。
【0052】
このような電磁波遮蔽層1は、次のようにして、半導体チップ120の表面を覆うように形成できる。まず、絶縁層3を半導体チップ120側にして、電磁波遮蔽層1を半導体チップ120に積層した状態とする。次いで、この状態で、電磁波遮蔽層1を半導体チップ120に対して加熱圧着すると、絶縁層3が半導体チップ120の表面に密着して、電磁波遮蔽層1が半導体チップ120に固定(接合)される。次いで、導電層2の表面にグランド部材130を接触配置させて該導電層を該グランド部材を介して接地させる。これにより、電磁波シールド効果を発揮する電子素子10が得られる。
【0053】
なお、加熱圧着を減圧下または真空下で行うことにより、絶縁層3の半導体チップ120の表面への密着度が高まる。その結果、電磁波遮蔽層1による電磁波シールド効果のみならず、良好な放熱効果も発揮される。
絶縁層3が粘着剤層である場合、加熱および加圧の必要がなく、半導体チップ120に載置した後減圧乾燥することで固定することができる。
【0054】
なお、導電層2が熱硬化性樹脂を含有し、かつ半硬化状態である場合、前記加熱加圧により、熱硬化性樹脂が硬化して、導電層2(電磁波遮蔽層1)自体の機械的強度も向上する。
【0055】
《グランド部材》
導電層2の上面(半導体チップ120と反対側の面)には、導電性を有するグランド部材130が接触配置されている。このグランド部材130は、接地機能を有する機器本体、または該機器本体を通じて或は直接接地する機能を有する導電性部材等、電磁波遮蔽層1の導電層2に接触配置することで該導電層を接地し、電位差を0にすることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0056】
このような電子素子10は、配線基板110上にグランド配線を設ける必要がなく、このため、グランド配線の敷設領域分だけ配線基板を小型化でき、その結果、電子素子の小型化を可能とする。また、グランド配線がなくなったため、該グランド配線に対する導電層2の半田付け等の取り付け作業の必要もなくなり、電子素子の製作作業工程が簡略化される。この結果、電子素子を簡単かつ迅速に制作できるようになり、生産性を向上させることができる。
【0057】
また、本発明によれば、電子部品の表面を覆う電磁波遮蔽層1を該電子部品に接触させ、しかも電磁波遮蔽層1の導電層2をグランド部材130に接触させているので、半導体チップ120からの放熱は電磁波遮蔽層1の導電層2からグランド部材130を通じて迅速に行われ、信頼性が高く、十分な電磁波シールド効果を発揮する。
【0058】
このため、例えば、スマートフォンなどの携帯電話、パソコン、タブレット端末、LED照明、有機EL照明、液晶テレビ、有機ELテレビ、デジタルカメラ、デジタルビデオ
カメラ、自動車などの車載部品等に使用することができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の電子素子10の構成を示す第2実施形態の一部の拡大断面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、以下では、説明の都合上、
図2中の上側を「上」、下側を「下」とする。
【0060】
第2実施形態では、グランド部材と導電層を互いに接触させる突起を、グランド部材が備えることを特徴とする。
前記突起は、グランド部材に一体に形成されていることが好ましい。
すなわち、第2実施形態の電子素子10は、グランド部材130の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。すなわち、
図2に示すように、第2実施形態のグランド部材130は、導電層2に対向する面に突起130aを有し、この突起130aが導電層2の表面に密着する。このため、両者の接触が確実となり、導電層2はグランド部材130を通じて確実に接地され、半導体チップ120の電磁波シールドが確実に実行される。
【0061】
以上のような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が発揮されるとともに、第2実施形態においては、グランド部材130は導電層2に当接する突起130aを有し、この突起130aは電磁波遮蔽層1とグランド部材130との加熱加圧時に圧縮されて多少縮まる。
【0062】
この構成により、電磁波遮蔽層1で表面を覆われた半導体チップ120の1つを配線基板110上に実装した場合は特に問題はないが、電磁波遮蔽層1で表面を覆われた半導体チップ120を2つ(2つ以上複数であってもよい)図示例のように配線基板110上に実装した場合、それぞれの半導体チップ120の高さが面一に揃わないことがある。しかし、このような場合であっても、各半導体チップ120に対応する突起130aが圧縮されて突出量を変えることにより、グランド部材130は突起130aを介して、各半導体チップ120の表面を覆う電磁波遮蔽層1の導電層2を確実に接地する。この結果、各半導体チップ120は信頼性の高い電磁波シールド効果を発揮することができる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図3は、本発明の電子素子の構成を示す第3実施形態の一部の拡大断面図である。以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、以下では、説明の都合上、
図3中の上側を「上」、下側を「下」とする。
【0064】
第3実施形態では、グランド部材と導電層を互いに接触させる突起を、導電層が備えることを特徴とする。
前記突起は、導電層に一体に形成されていることが好ましい。
【0065】
すなわち、第3実施形態の電磁波遮蔽層1は、導電層2の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。すなわち、
図3に示すように、第3実施形態の導電層2は、表面に突起2aを有し、この突起2aがグランド部材130の表面に密着する。このため、両者の接触が確実となり、導電層2はグランド部材130を通じて接地され、半導体チップ120の電磁波シールドが確実に実行される。
【0066】
以上のような第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が発揮されるとともに、第3実施形態においては、導電層2は突起2aを有し、この突起2aは電磁波遮蔽層1とグランド部材130との加熱加圧時に圧縮されて多少縮まる。
【0067】
この構成により、電磁波遮蔽層1で表面を覆われた半導体チップ120の1つを配線基板110上に実装した場合は特に問題はないが、電磁波遮蔽層1で表面を覆われた半導体チップ120を2つ(2つ以上複数であってもよい)図示例のように配線基板110上に実装した場合、それぞれの半導体チップ120の高さが面一に揃わないことがある。しかし、このような場合であっても、各半導体チップ120に対応する突起2aが圧縮されて突出量を変えることにより、グランド部材130は突起2aを介して、各半導体チップ120の表面を覆う電磁波遮蔽層1の導電層2を確実に接地する。この結果、各半導体チップ120は信頼性の高い電磁波シールド効果を発揮することができる。
【0068】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図4は、本発明の電子素子の構成を示す第4実施形態の一部の拡大断面図である。以下、第4実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、以下では、説明の都合上、
図4中の上側を「上」、下側を「下」とする。
【0069】
第4実施形態では、導電層とグランド部材との間に介在させて両者を接続する導電性部材を備えることを特徴とする。
すなわち、第4実施形態の電磁波遮蔽層1およびグランド部材130は、前記第1実施形態と同様である。この第4実施形態では、導電層2とグランド部材130との間に導電性部材115を介在させた構成である。
【0070】
この導電性部材115は圧縮方向に伸縮する弾性体であることが好ましく、例えば、導電性粒子を含有する導電性樹脂材により構成されている。導電性部材115は粘着性及び接着性を有していることが好ましい。
【0071】
そして、導電性部材115は金属膜および樹脂の固化物または硬化物と導電性粒子とを含む樹脂膜で構成されているのが好ましい。なお、導電性部材115は、これらの金属膜と樹脂膜との組み合わせであってもよく、2種以上の異なる樹脂膜の組み合わせであってもよい。また、導電性部材115を金属膜で構成する場合、この金属膜は、導電性粒子において挙げる金属と同様のものを用いて形成することができる。
【0072】
また、
図4では図示を省略したが、導電層2とグランド部材130との間に介在させた導電性部材115が該導電層と該グランド部材による加圧時に位置ずれしないように、導電層2とグランド部材130の導電性部材対向面のいずれか一方または双方に、導電性部材115の外面端部が嵌合する位置決め凹部または導電性部材115の端面凹部に嵌合する位置決め凸部を備えていることが好ましい。
【0073】
また、上記の導電性部材115は電磁波遮蔽層1とグランド部材130との加熱加圧時に加圧されて多少縮まる。このため、電磁波遮蔽層1で表面を覆われた半導体チップ120の複数を配線基板110上に実装し、それぞれの半導体チップ120の高さが面一に揃わなくても、各半導体チップ120に対応する導電性部材115が加圧されて高さ寸法を変えることにより、グランド部材130は導電性部材115を介して、各半導体チップ120の表面を覆う電磁波遮蔽層1の導電層2に確実に接触して接地する。この結果、各半導体チップ120は信頼性の高い電磁波シールド効果を発揮することができるもので、前記第2、3実施形態と同様の作用・効果が発揮される。
【0074】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図5は、本発明の電子素子の構成を示す第5実施形態の一部の拡大断面図である。以下、第5実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、以下では、説明の都合上、
図5中の上側を「上」、下側を「下」とする。
【0075】
第5実施形態では、前記配線基板の実装面側に、電子部品より高く突出する突出部を少なくとも一つ備え、前記電子部品の表面を覆う前記電磁波遮蔽層の前記突出部に対する当接部を該電子部品より高く突出させて、該電磁波遮蔽層の前記導電層を対向配置されたグランド部材に接触させて該導電層を該グランド部材を介して接地させてなることを特徴とする。
【0076】
すなわち、電子基板の実装面側に、電子部品より高く突出する突出部を少なくとも一つ備え、前記電子部品と突出部との表面を覆う前記電磁波遮蔽層において、該突出部の表面を覆う電磁波遮蔽層が電子部品より高く突出し、該電磁波遮蔽層の突出した導電層と、対向配置されたグランド部材とが接合している。
このような構成を有することにより、電子部品より高く突出する突出部により、該突出部を覆う導電層と、グランド部材とが接触し、機器本体等の外部に有するアース部と接合することにより、電磁波遮蔽層の電子部品を確実に電磁波シールドすることができる。
【0077】
すなわち、第5実施形態の電子素子10は、配線基板110の上面に該配線基板に実装した半導体チップ120より高く突出する突出部100aを少なくとも1つ備えたもので、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0078】
この突出部100aは、電子基板100の作製時に該電子基板の一部を突出させて一体に構成する他、電磁波遮蔽層1と電子基板100との間に介在させて該電磁波遮蔽層とグランド部材130との加熱加圧時に圧縮されて多少縮まる弾性体、または、線材によりコイルスプリング状に構成した弾性体であってもよい。
【0079】
この第5実施形態では、突出部100aは配線基板110に実装した2つの半導体チップ120の間に1つ設けられているが、半導体チップ120の側方にのみ設けてもよく、半導体チップ120を挟むように、その左右に設けてもよい。つまり、突出部100aは配線基板110に実装した半導体チップ120の実装数、実装位置に応じて任意の数、任意の位置に設ける。
【0080】
この構成により、配線基板110に実装した半導体チップ120の表面を電磁波遮蔽層1で覆い真空にて固定化すると、電磁波遮蔽層1の一部が突出部100aで受け止められて凸状となる。そして、この凸状の頂面2bがグランド部材130に当接し、導電層2はグランド部材130を介して確実に接地され、半導体チップ120は信頼性の高い電磁波シールド効果を発揮するもので、前記第2~4実施形態と同様の作用・効果が発揮される。
【0081】
前述したように、本実施形態の電磁波遮蔽層1は、好ましくは作業者の手作業で半導体チップ120の表面に貼着される。この際、絶縁層3が粘着性を有すれば、電磁波遮蔽層1の半導体チップ120に対する位置決めを容易に行うことができ、電子素子10の生産効率をより向上させることができる。一方、絶縁層3が粘着性を有しなければ、一旦電磁波遮蔽層1を半導体チップ120に貼着しても半導体チップ120から剥離し易く、電磁波遮蔽層1の半導体チップ120に対する位置修正を容易に行うことができる。
【0082】
以上、本発明の電子素子を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、電子素子を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0083】
なお、電子素子は、前記第1~第5実施形態のうちの任意の構成を組み合わせるようにしてもよい。また、前記第2実施形態ではグランド部材130の導電層2との対向面に突起130aを、前記第3実施形態では導電層2のグランド部材130との対向面に突起2aを設けているが、導電層2およびグランド部材130の対向面のそれぞれに突起2aおよび突起130aを設けてもよい。
【0084】
また、
図2、
図3では、突起2a,130aは半導体チップ120に対し1つ設けているが多数設けてもよい。また、その突起の高さは、電磁波遮蔽層1に対向配置されるグランド部材130に確実に密着する高さであればよい。また、グランド部材130は、電磁波遮蔽層1の導電層2を確実に接地することができればよく、その形態や形状は、特に限定されるものではない。
【0085】
また、電磁波遮蔽層1は、配線基板上に実装された複数の半導体チップ120を1つの電磁波遮蔽層で覆うような構成であってもよく、または1つの電磁波遮蔽層1で1つの半導体チップ120を覆うような構成であってもよい。
【0086】
また、電磁波遮蔽層1を構成する各部(各層)には、半導体チップ120を覆って配線基板110に接合(積層)する際に、若干引き伸ばされる箇所も存在するが、各部の厚さを平均値(平均厚さ)として規定した場合、その値は、配線基板110に接合する前後においてほぼ等しい。
【0087】
以上のように、本発明の電子素子10は、機器本体の電子基板100上には、実装面を有する配線基板110と、該配線基板の前記実装面上に実装された半導体チップ120とを備え、絶縁層3と、導電層2とを有し、前記絶縁層3を前記半導体チップ側にして配線基板110に積層され、該半導体チップの表面を覆う電磁波遮蔽層1を備え、前記電磁波遮蔽層1の導電層2に接触して該導電層を接地するグランド部材130を備えた構成である。
【0088】
この構成により、電子基板100の配線基板110にグランド配線を設ける必要がないため、そのグランド配線の敷設領域分だけ配線基板110を小型化でき、この結果、電子基板100全体の小型化が可能となる。しかも、グランド配線がないため該グランド配線に対する半田付け等の取り付け作業を行う必要もなく、電子素子10の製作工程が簡略化され、電子素子10を簡単かつ迅速に製作できるようになり、生産効率を向上させることができる。
【0089】
また、半導体チップ120の表面を覆う電磁波遮蔽層1の導電層2にグランド部材130を接触させて該導電層を接地させるので、半導体チップ120を確実に電磁波シールドすることができるとともに、電磁波遮蔽層1の導電層2とグランド部材130を介して半導体チップ120からの放熱が迅速に行われ、小型で信頼性の高い電子素子を提供することができる。
【0090】
また、
図6(b)に示すように、導電性を有するシート状の導電層2と、該導電層2の前記半導体チップ120側に設けられた絶縁層3と、該導電層2の前記半導体チップ120側とは反対側に設けられた導電粘着剤層4を備え、前記半導体チップ120の表面を覆
う電磁波遮蔽層1を用いた場合には、導電粘着剤層4によって電磁波遮蔽層1に対するグランド部材130を容易かつ確実に接着固定することができる。この結果、電子素子10の使用場所周囲の振動等を受けても、電磁波遮蔽層1とグランド部材130との位置ずれ、あるいは剥離を確実に防止することができ、半導体チップの電磁波シールドを確実に維持することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電磁波遮蔽層
2 導電層
2a・・・・・突起
2b・・・・・凸部
3 絶縁層
4 導電粘着剤層
10 電子素子
100 電子基板
100a・・・突出部
110 配線基板
101 実装面
111 基板
112 配線
115・・・・導電性部材
120 半導体チップ(電子部品)
130・・・・グランド部材
130a・・・突起