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  • 特許-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20220203BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20220203BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B60C9/00 G
B60C9/00 D
B60C9/00 B
B60C9/22 C
B60C9/22 D
B60C9/08
B60C9/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020202640
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 紗葵子
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 隆充
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156070(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179921(WO,A1)
【文献】特開2010-179689(JP,A)
【文献】特開2016-60343(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167937(WO,A1)
【文献】特開2014-108675(JP,A)
【文献】特開2016-79548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0164689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルトカバー層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層はポリエステル繊維からなるカーカスコードで構成され、前記カーカスコードの破断伸びが20%~30%であり、前記カーカスコード1本あたりの正量繊度D〔単位:dtex/本〕と前記カーカスコードの延長方向と直交する方向50mm当たりの前記カーカスコードの打ち込み本数Ec〔単位:本/50mm〕との積A=D×Ecが1.8×105dtex/50mm~3.0×105dtex/50mmであり、
前記ベルトカバー層はアラミド繊維からなる素線と他の有機繊維からなる素線とを撚り合わせた複合コードで構成され、前記複合コードの1本当たりのコード径が0.75mm以下であり、前記複合コードの破断時の幅50mm当たりの引張強度が14kN/50mm以上であり、前記複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が1.7kN/(50mm・%)~2.3kN/(50mm・%)であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
下記式(1)で表される前記カーカスコードの撚り係数Kが2000以上であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(式中、Tは前記カーカスコードの上撚り数[回/10cm]であり、Dは前記カーカスコードの総繊度[dtex]である。)
【請求項3】
タイヤ赤道を中心とした接地幅の70%の領域をセンター領域とし、そのタイヤ幅方向外側の領域をそれぞれショルダー領域としたとき、前記センター領域に配置された前記複合コードのタイヤ内におけるコード張力Ceと前記ショルダー領域に配置された前記複合コードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shが1.0以上2.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複合コードの破断伸びが7%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複合コードが、1本の前記アラミド繊維と1本のナイロン繊維とからなる2本撚り構造を有し、総繊度が2000dtex~3500dtexであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維コードからなるカーカス層と複合コードからなるベルトカバー層とを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高速走行時に優れた走行性能を発揮するタイヤ(所謂、ハイパフォーマンスタイヤ)においては、高速走行時の操縦安定性を確保するために、カーカス層に、剛性の高いレーヨン繊維コードを用いることがある(例えば、特許文献1を参照)。また、空気入りタイヤにおいて高速耐久性を確保するために、ベルトカバー層に、アラミド繊維からなる2本の素線とナイロン繊維からなる1本の素線とを撚り合わせた3本撚りの複合コードを用いることがある(例えば、特許文献2を参照)。一方で、近年、環境負荷を考慮して、タイヤの軽量化や転がり抵抗の低減に対する要求が高まっているが、上述のカーカス層やベルトカバー層では、タイヤ重量を軽減して転がり抵抗を低減することが難しい傾向があった。
【0003】
例えば、ベルトカバー層において、上述の複合コードの替わりに、アラミド繊維からなる1本の素線とナイロン繊維からなる1本の素線とを撚り合わせた2本撚りの複合コードを用いれば、タイヤ重量を軽減し、転がり抵抗の低減を図ることができるが、タフネス(強力と切断伸度の積)を確保できないため、耐ショックバースト性が低下することが懸念される。尚、耐ショックバースト性とは、走行中にタイヤが大きなショックを受けて、カーカスが破壊する損傷(ショックバースト)に対する耐久性であり、例えばプランジャーエネルギー試験(トレッド中央部に所定の大きさのプランジャーを押し付けてタイヤが破壊する際の破壊エネルギーを測定する試験)が指標となる。そのため、有機繊維コードからなるカーカス層と複合コードからなるベルトカバー層とを備えたタイヤにおいて、高速走行時の操縦安定性を向上する一方で、転がり抵抗を低減し、且つ、耐ショックバースト性を良好に確保することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017‐031381号公報
【文献】特開2009‐132329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高速走行時の操縦安定性を向上する一方で、転がり抵抗を低減し、且つ、耐ショックバースト性を確保し、これら性能を高度に両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、前記トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルトカバー層とを有する空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層はポリエステル繊維からなるカーカスコードで構成され、前記カーカスコードの破断伸びが20%~30%であり、前記カーカスコード1本あたりの正量繊度D〔単位:dtex/本〕と前記カーカスコードの延長方向と直交する方向50mm当たりの前記カーカスコードの打ち込み本数Ec〔単位:本/50mm〕との積A=D×Ecが1.8×105dtex/50mm~3.0×105dtex/50mmであり、前記ベルトカバー層はアラミド繊維からなる素線と他の有機繊維からなる素線とを撚り合わせた複合コードで構成され、前記複合コードの1本当たりのコード径が0.75mm以下であり、前記複合コードの破断時の幅50mm当たりの引張強度が14kN/50mm以上であり、前記複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が1.7kN/(50mm・%)~2.3kN/(50mm・%)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、カーカス層を構成するカーカスコードが上述の物性を有するポリエステル繊維コードであるため、レーヨン繊維コードを用いた場合と同程度の良好な高速操縦安定性を確保しながら、耐ショックバースト性を向上することができる。具体的には、カーカスコードの破断伸びが上述の範囲であるため、カーカスコードの剛性を適度に確保することができ、高速操縦安定性を良好に発揮することができる。また、カーカスコードが上述の破断伸びを有するため、カーカスコードが局所変形に追従しやすくなり、プランジャーエネルギー試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を充分に許容することが可能になり、破壊エネルギーを向上することができる。つまり、走行時においてはトレッド部の突起入力に対する破壊耐久性が向上することになるので、耐ショックバースト性を向上することができる。更に、上述の積A、即ち、単位幅当たりのカーカスコードの繊度が上述の範囲であるので、耐久性と制動性能を両立することができ、結果的に、耐ショックバースト性と高速操縦安定性とを向上するには有利になる。
【0008】
一方で、ベルトカバー層が上述の複合コードで構成されるので、高速走行時の操縦安定性を向上する一方で、転がり抵抗を低減し、且つ、耐ショックバースト性を確保することができる。具体的には、複合コードのコード径が十分に小さいため、タイヤ重量を軽減し、転がり抵抗を低減することができる。また、複合コードの破断時の引張強度が十分に大きいので耐ショックバースト性を確保することができる。更に、複合コードの2~5%伸長時の弾性率が適度な範囲にあるので、ベルトカバー層として好適な剛性を確保し、且つ、適切なタガ効果が確保できるので、高速走行時の操縦安定性を向上し、転がり抵抗を低減し、且つ、耐ショックバースト性を確保することができる。
【0009】
このようなカーカス層とベルトカバー層とを併用した本発明の空気入りタイヤは、カーカス層およびベルトカバー層の協働により、上述の複数のタイヤ性能(高速走行時の操縦安定性、低転がり抵抗性能、および、耐ショックバースト性)をバランスよく高度に両立することができる。尚、カーカスコード(ポリエステル繊維コード)の「破断伸び」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して、コード破断時に測定される試料コードの伸び率(%)である。複合コードの「破断時の幅50mm当たりの引張強度」は、タイヤからコード1本(試料コード)を取り出し、取り出した直後に初荷重0.45mN/dtex、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、試料コードが破断した時に測定される強度に、タイヤ中で幅50mm当たりに含まれるコード本数をかけた値である。複合コードの「2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率」は、タイヤからコード1本(試料コード)を取り出し、取り出した直後に初荷重0.45mN/dtex、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、コードの伸び(%)に対する引張応力のグラフを作成し、そのグラフの伸び2~5%の範囲における傾きから求められる弾性率に、タイヤ中で幅50mm当たりに含まれるコード本数をかけた値である。
【0010】
本発明においては、下記式(1)で表されるカーカスコードの撚り係数Kが2000以上であることが好ましい。これにより、コード疲労性を良好にして優れた耐久性を確保することができる。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(式中、Tは前記カーカスコードの上撚り数[回/10cm]であり、Dは前記カーカスコードの総繊度[dtex]である。)
【0011】
本発明においては、タイヤ赤道を中心とした接地幅の70%の領域をセンター領域とし、そのタイヤ幅方向外側の領域をそれぞれショルダー領域としたとき、センター領域に配置された複合コードのタイヤ内におけるコード張力Ceとショルダー領域に配置された複合コードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shが1.0以上2.0以下であることが好ましい。このようにタイヤ幅方向の部位ごとの張力を設定することで、発熱を抑制し、タイヤ耐久性を向上することができる。
【0012】
本発明においては、複合コードの破断伸びが7%以上であることが好ましい。このように複合コードの破断伸びを適度に大きくすることで、耐ショックバースト性を確保するには有利になる。尚、複合コードの「破断伸び」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して、コード破断時に測定される試料コードの伸び率(%)である。
【0013】
本発明においては、複合コードが、1本のアラミド繊維と1本のナイロン繊維とからなる2本撚り構造を有し、総繊度が2000dtex~3500dtexであることが好ましい。これにより、複合コードの構造が良好になり、コードによるタガ効果や耐疲労性を良好に維持しながら軽量化を図ることができる。
【0014】
尚、本発明において、「接地幅」とは、タイヤ幅方向両側の接地端の間の距離である。「接地端」とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに形成される接地領域のタイヤ軸方向の両端部である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0018】
左右一対のビード部3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コード(以下、カーカスコードという)を含むカーカス層4が装架されている。各ビード部には、ビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面略三角形状のビードフィラー6が配置されている。カーカス層4は、ビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。これにより、ビードコア5およびビードフィラー6はカーカス層4の本体部(トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分)と折り返し部(各ビード部3においてビードコア5の廻りに折り返されて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分)とにより包み込まれている。
【0019】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コード(以下、ベルトコードという)を含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7を構成するベルトコードとしては、例えばスチールコードが好ましく使用される。
【0020】
更に、ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、ベルトカバー層8が設けられている。ベルトカバー層8は、タイヤ周方向に配向する補強コード(以下、カバーコードという)を含む。ベルトカバー層8において、カバーコードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。ベルトカバー層8としては、ベルト層7の幅方向の全域を覆うフルカバー層8aや、ベルト層7のタイヤ幅方向の両端部を局所的に覆う一対のエッジカバー層8bをそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて設けることができる(図示の例では、フルカバー層8aおよびエッジカバー層8bの両方が設けられている)。ベルトカバー層8は、例えば、少なくとも1本のカバーコードをコートゴムで被覆したストリップ材をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して構成するとよく、特にジョイントレス構造とすることが望ましい。
【0021】
本発明は、主として、上述のカーカス層4およびベルトカバー層8のそれぞれを構成するコード(カーカスコード、カバーコード)に関するものであるので、タイヤの基本的な構造は他のタイヤ構成部材は、上述のものに限定されない。
【0022】
本発明において、カーカス層4を構成するカーカスコードは、ポリエステル繊維のフィラメント束を撚り合わせたポリエステル繊維コードで構成される。このカーカスコード(ポリエステル繊維コード)の破断伸びは20%~30%、好ましくは22%~28%である。このような物性を有するカーカスコード(ポリエステル繊維コード)をカーカス層4に用いているので、従来のレーヨン繊維コードを用いた場合と同程度の良好な操縦安定性を確保しながら、耐ショックバースト性を向上することができる。即ち、カーカスコードが上述の伸び特性を有するため、カーカスコードの剛性を適度に確保することができ、良好な操縦安定性を発揮することができる。また、カーカスコードが上述の伸び特性を有するため、カーカスコードが局所変形に追従しやすくなり、プランジャーエネルギー試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を充分に許容することが可能になり、破壊エネルギーを向上することができる。つまり、走行時においてはトレッド部の突起入力に対する破壊耐久性が向上することになるので、耐ショックバースト性を向上することができる。カーカスコードの破断伸びが20%未満であると、耐ショックバースト性を向上する効果を得ることができない。カーカスコードの破談伸びが30%を超えると、中間伸度も大きくなる傾向があるため、剛性が低下して操縦安定性が低下する虞がある。
【0023】
また、カーカス層4において、カーカスコード1本あたりの正量繊度D〔単位:dtex/本〕と、カーカスコードの延長方向と直交する方向50mm当たりのカーカスコードの打ち込み本数Ec〔単位:本/50mm〕との積A=D×Ecは1.8×105dtex/50mm~3.0×105dtex/50mm、好ましくは2.2×105dtex/50mm~2.7×105dtex/50mmである。上述の積Aは、カーカス層4における単位幅当たりのカーカスコードの繊度であるので、これが上述の範囲を満たすことで、耐久性と制動性能を向上することができ、結果的に、耐ショックバースト性と高速操縦安定性とを向上するには有利になる。積Aが1.8×105dtex/50mm未満であると、制動性能が悪化する虞がある。積Aが3.0×105dtex/50mmを超えると、カーカスコードの間隔が狭まるため耐久性を維持することが難しくなる。尚、上述の正量繊度Dおよび打ち込み本数Ecの個々の範囲は、積Aが上述の範囲を満たしていれば特に限定されない。
【0024】
更に、カーカスコードのサイドウォール部における1.5cN/dtex負荷時の伸びは好ましくは5.5%~8.0%、より好ましくは6.5%~7.5%であるとよい。尚、カーカスコードの「1.5cN/dtex負荷時の伸び」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して、1.5cN/dtex負荷時に測定される試料コードの伸び率(%)である。このような伸び特性を有することで、従来のレーヨン繊維コードを用いた場合と同程度の良好な操縦安定性を確保しながら、耐ショックバースト性を向上するには有利になる。1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%未満であると、コード剛性が高くなり、接地領域直下でのカーカス層4の巻き上げ端部の圧縮歪みが増大し、コードの破断を招く虞がある(即ち、耐久性が損なわれる虞がある)。1.5cN/dtex負荷時の伸びが8.0%を超えると、剛性を確保することが難しくなり、高速操縦安定性を向上する効果が十分に得られない虞がある。
【0025】
更に、カーカスコードの熱収縮率は好ましくは0.5%~2.5%、より好ましくは1.0%~2.0であるとよい。尚、「熱収縮率」とは、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、試料長さ500mm、加熱条件150℃×30分の条件にて加熱したときに測定される試料コードの乾熱収縮率(%)である。このような熱収縮率を有するコードを用いることで、加硫時にコードにキンク(捩じれ、折れ、よれ、形くずれ等)が発生して耐久性が低下することや、ユニフォミティの低下を抑制することができる。このとき、コードの熱収縮率が0.5%未満であると、加硫時にキンクが発生しやすくなり、耐久性を良好に維持することが難しくなる。コードの熱収縮率が2.5%を超えると、ユニフォミティが悪化する虞がある。
【0026】
更に、下記式(1)で表されるカーカスコードの撚り係数Kが好ましくは2000以上、より好ましくは2000~2500、更に好ましくは2100~2400であるとよい。尚、この撚り係数Kは、ディップ処理後のコードの数値である。このような撚り係数Kを有するコードを用いることで、コード疲労性を良好にして優れた耐久性を確保することができる。このとき、コードの撚り係数Kが2000未満であると、コード疲労性が低下し、耐久性を確保することが難しくなる。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(式中、Tはコードの上撚り数[回/10cm]であり、Dはコードの総繊度[dtex]である。)
【0027】
上記のように、カーカスコードはポリエステル繊維で構成されるが、ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN繊維)、ポリブチレンテレフタレート繊維(PBT)、ポリブチレンナフタレート繊維(PBN)を例示することができ、PET繊維を好適に用いることができる。いずれの繊維を用いた場合も、各繊維の物性によって、高速耐久性と操縦安定性とをバランスよく高度に両立するには有利になる。特に、PET繊維の場合は、PET繊維が安価であることから、空気入りタイヤの低コスト化を図ることができる。また、コードを製造する際の作業性を高めることもできる。
【0028】
本発明では、ベルトカバー層8を構成するカバーコードとして、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)のフィラメント束を撚り合わせた素線と他の有機繊維のフィラメント束を撚り合わせた素線とを撚り合わせた複合コードが使用される。他の有機繊維としては、ナイロン繊維を好適に用いることができる。ナイロン繊維としては、ナイロン66繊維、ナイロン6繊維を例示することができる。複合コードの構造は特に限定されないが、タイヤ重量を軽減する観点から、本発明では、1本当たりのコード径が0.75mm以下、好ましくは0.50mm~0.70mmであるものを用いる。このようにコード径が十分に小さい複合コードを用いることで、タイヤ重量を軽減し、転がり抵抗を低減することができる。複合コードのコード径が0.75mmを超えると、タイヤ重量を軽減することが難しくなる。特に、タイヤ重量を効果的に軽減するために、1本のナイロン繊維と1本のアラミド繊維とからなる2本撚り構造の複合コードを用いることが好ましい。尚、2本撚り構造であっても、弾性率の高いアラミド繊維と耐疲労性に優れるナイロン繊維とで構成されていれば、タガ効果やコード疲労性は十分に確保することができる。
【0029】
また、本発明では、ベルトカバー層8を構成する複合コードとして、破断時の幅50mm当たりの引張強度が14kN/50mm以上、好ましくは14.5kN/50mm~20.0kN/50mmであり、2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が1.7kN/(50mm・%)~2.3kN/(50mm・%)、好ましくは1.7kN/(50mm・%)~2.3kN/(50mm・%)であるものが使用される。また、本発明で使用される複合コードは、破断伸びが好ましくは7%以上、より好ましくは8%~12%であるとよい。このようにベルトカバー層8を構成する複合コードとして、特定の物性を有するものを用いることで、高速走行時の操縦安定性を向上する一方で、転がり抵抗を低減し、且つ、耐ショックバースト性を確保することができる。複合コードの破断時の幅50mm当たりの引張強度が14kN/50mm未満であると、耐ショックバースト性を確保することが難しくなる。複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が1.7kN/(50mm・%)未満であると、ベルトカバー層8としてのタガ効果が十分に確保できず、高速走行時の操縦安定性や転がり抵抗が悪化する虞がある。複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が2.3kN/(50mm・%)を超えると、ベルトカバー層8の剛性が高過ぎるため、耐ショックバースト性を確保することが難しくなる。複合コードの破断伸びが7%未満であると、耐ショックバースト性を確保することが難しくなる。
【0030】
更に、本発明で使用される複合コードは、総繊度が好ましくは2000dtex~3500dtex、より好ましくは2500dtex~3500dtex、更に好ましくは2800dtex~3200dtexであるとよい。このように総繊度を設定することで、ベルトカバー層8によるタイヤ重量の増加を抑制しながら、ベルトカバー層8による効果を効果的に発揮することが可能になる。ハイブリッドコードの総繊度が2500dtex未満であると、ベルトカバー層8によってタイヤの膨径成長を抑制することが難しくなる。ハイブリッドコードの総繊度が3500dtexを超えると、ベルトカバー層8によるタイヤ重量の増加が顕著になる虞がある。尚、このように総繊度を設定するにあたって、ナイロン繊維とアラミド繊維のそれぞれの繊度については特に限定されないが、繊度の比が好ましくはアラミド:ナイロン=50:50~70:30であるとよい。
【0031】
このような複合コードをベルトカバー層8として用いるにあたって、ベルト層7と重複する領域におけるコード張力を好ましくは0.9cN/dtex以上、より好ましくは1.5cN/dtex~2.0cN/dtexに設定するとよい。このようにタイヤ内におけるコード張力を設定することで、発熱を抑制し、タイヤの耐久性を向上することができる。複合コードのベルト層7と重複する領域におけるコード張力が0.9cN/dtex未満であると、tanδのピークが上昇してしまい、タイヤの耐久性を向上する効果が充分に得られない。尚、ベルトカバー層8を構成する複合コードのベルト層7と重複する領域におけるコード張力は、ベルトカバー層8を構成するストリップ材の末端よりも2周以上タイヤ幅方向内側において測定するものとする。
【0032】
本発明で使用される複合コードは、更に、150℃における熱収縮応力が0.24cN/tex以上であることが好ましい。このように150℃における熱収縮応力を設定することで、より効果的に空気入りタイヤの耐久性を良好に維持しながら、ロードノイズを効果的に低減することができる。複合コードの150℃における熱収縮応力が0.24cN/texよりも小さいと走行時のタガ効果を充分に向上することができず、高速耐久性を十分に維持することが難しくなる。複合コードの150℃における熱収縮応力の上限値は特に限定されないが、例えば1.0cN/texにするとよい。尚、本発明において、150℃での熱収縮応力(cN/tex)は、JIS‐L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、試料長さ500mm、加熱条件100℃×5分の条件にて加熱したときに測定される試料コードの熱収縮応力である。
【0033】
上述のような物性を有する複合コードを得るためには、例えばディップ処理を適正化すると良い。つまり、カレンダー工程に先駆けて、複合コードには接着剤のディップ処理が行われるが、2浴処理後のノルマライズ工程において、雰囲気温度を210℃~250℃の範囲内に設定し、コード張力を3.1×10-2N/tex~9.6×10-2N/texの範囲に設定することが好ましい。これにより、複合コードに上述のような所望の物性を付与することができる。ノルマライズ工程におけるコード張力が3.1×10-2N/texよりも小さいとコード弾性率が低くなり、逆に9.6×10-2N/texよりも大きいとコード弾性率が高くなり、コードの耐疲労性が低下する。
【0034】
図1に示すように、タイヤ赤道CLを中心とした接地幅Wの70%の領域をセンター領域Aとし、そのタイヤ幅方向外側の領域をそれぞれショルダー領域Bとしたとき、センター領域Aに配置されたカバーコードのタイヤ内におけるコード張力Ceとショルダー領域Bに配置されたカバーコードのタイヤ内におけるコード張力Shとの比Ce/Shが1.0以上2.0以下であることが好ましい。このようにタイヤ幅方向の部位ごとの張力の関係を設定することで、発熱を抑制し、タイヤ耐久性を向上することができる。比Ce/Shが2.0を超えると、ショルダー領域のコード張力が低すぎる場合にコードの発熱が増加してコードメルトが発生して高速耐久性が低下する。比Ce/Shが1.0未満であると、ショルダー領域のコード張力が高すぎる場合にショルダー部の剛性が上がり過ぎてしまい、接地形状が丸くなり、走行時にベルト層7とベルトカバー層8との間のセパレーションが進行し易く、タイヤ耐久性が低下する。張力Ce,Shは、前述の関係を満たしていれば特に限定されないが、張力Ceは例えば1.2cN/dtex~2.5cN/dtex、張力Shは例えば0.9cN/dtex~2.0cN/dtexに設定することができる。このような張力Ce,Shの関係は、例えば、タイヤ成形時に曲率ドラム(製造するタイヤのセンター部に対応する部位よりも製造するタイヤのショルダー部に対応する部位で周長が小さい曲率をもったドラム)を用いたり、ベルトカバー材の巻き付け張力を制御することで達成することができる。尚、張力Ceは最外側のベルト層7のセンター部に位置する5本のカバーコードにおいて測定した値であり、張力Shはベルトカバー層を構成するストリップ材の末端よりも2周以上タイヤ幅方向内側かつ最外側のベルト層7のショルダー部に位置する5本のカバーコードにおいて測定した値である。
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0036】
タイヤサイズが225/60R18であり、図1に示す基本構造を有し、カーカス層について、カーカスコードの材質、カーカスコード1本あたりの正量繊度D〔単位:dtex/本〕とカーカスコードの延長方向と直交する方向50mm当たりの打ち込み本数E〔単位:本/50mm〕との積A(=D×E)、破断伸び〔単位:%〕を表1~2のように設定し、ベルトカバー層について、複合コードの種類、複合コードの1本当たりのコード径〔単位:mm〕、複合コードの破断時の幅50mm当たりの引張強度〔単位:kN/50mm〕、複合コードの破断伸び〔単位:%〕、複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率〔単位:kN/(50mm・%)〕を表1~2のように設定した従来例1、比較例1~8、実施例1~6の空気入りタイヤ(試験タイヤ)を製作した。
【0037】
表1~2において、カーカスコードの「破断伸び」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して測定した。具体的には、「破断伸び」はコード破断時に測定される試料コードの伸び率(%)である。また、ベルトコードの「破断応力」は、コード破断時の強力をコード断面積で除することで算出した。
【0038】
表1~2のカーカスコードの材質の欄について、レーヨン繊維コードを用いた場合を「レーヨン」、ポリエチレンテレフタレート繊維コードを用いた場合を「PET」と表示した。表1~2の複合コードの種類の欄について、「コード1」は、アラミド繊維からなる2本の素線とナイロン繊維からなる1本の素線とを撚り合わせた3本撚りの複合コード(A1670dtex/2+N1400dtex/1)であり、「コード2」は、アラミド繊維からなる1本の素線とナイロン繊維からなる1本の素線とを撚り合わせた2本撚りの複合コード(A1670dtex/1+N1400dtex/1)である(括弧内の「A」はアラミド、「N」はナイロンを意味する)。
【0039】
表1~2において、複合コードの「破断時の幅50mm当たりの引張強度」は、各試験タイヤからコード1本(試料コード)を取り出し、取り出した直後に初荷重0.45mN/dtex、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、試料コードが破断した時に測定される強度に、タイヤ中で幅50mm当たりに含まれるコード本数をかけて算出した。複合コードの「破断伸び」は、コード破断時に測定される試料コードの伸び率(%)であり、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して測定した。複合コードの「2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率」は、タイヤからコード1本(試料コード)を取り出し、取り出した直後に初荷重0.45mN/dtex、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、コードの伸び(%)に対する引張応力のグラフを作成し、そのグラフの伸び2~5%の範囲における傾きから求められる弾性率に、タイヤ中で幅50mm当たりに含まれるコード本数をかけて算出した。
【0040】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、耐ショックバースト性、低転がり抵抗性、高速操縦安定性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0041】
耐ショックバースト性
各試験タイヤを、リムサイズ18×7Jのホイールに組み付け、空気圧を220kPaとし、JIS K6302に準拠して、プランジャー径19±1.6mmのプランジャーを負荷速度(プランジャーの押し込み速度)50.0±1.5m/minの条件でトレッド中央部に押し付けるタイヤ破壊試験(プランジャー破壊試験)を行い、タイヤ強度(タイヤの破壊エネルギー)を測定した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数にて示した。この値が大きいほど破壊エネルギー(プランジャーエネルギー)が大きく、耐ショックバースト性に優れることを意味する。特に、指数値が「115」以上の場合に、良好な性能が得られたことを意味する。
【0042】
低転がり抵抗性
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付け、空気圧を210kPaとして、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)に装着し、試験荷重4.82kN、速度80km/時の抵抗力(転がり抵抗)を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて従来例1の値を100とする指数として示した。この指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低転がり抵抗性に優れることを意味する。
【0043】
高速操縦安定性
各試験タイヤをリムサイズ18×7Jのホイールに組み付けて、空気圧を200kPaとして排気量2000ccの試験車両に装着し、2名が乗車した状態で乾燥路面からなるテストコースにて、テストドライバーによる高速操縦安定性の官能評価を行った。評価結果は、従来例1を3.0(基準)とする5点法にて評価し、最高点と最低点を除いた5名の平均点で表した。この評価値が大きいほど高速操縦安定性に優れることを意味する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1~2から判るように、実施例1~6のタイヤは、従来例1との対比において、高速走行時の操縦安定性を向上する一方で、転がり抵抗を低減し、且つ、優れた耐ショックバースト性を確保し、これら性能をバランスよく高度に両立することができた。一方、比較例1は、従来のレーヨン繊維からなるカーカスコードを用いたまま、ベルトカバー層を構成する複合コードとして本発明の条件を満たすコード(コード2)を用いているため、切断伸度が確保できず、耐ショックバースト性が低下した。比較例2は、本発明の物性を満たすポリエチレンテレフタレート繊維コードを用いているが、ベルトカバー層を構成する複合コードが従来の3本撚りのコード(コード1)であるため、転がり抵抗を低減できず、また高速操縦安定性が悪化した。比較例3は、複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が小さいため、タガ効果が十分に確保できず、高速操縦安定性や転がり抵抗が悪化した。比較例4は、複合コードの2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率が大きいため、耐ショックバースト性を十分に確保することができなかった。比較例5は、複合コードの破断時の幅50mm当たりの引張強度が小さいため、耐ショックバースト性を十分に確保することができなかった。比較例6は、積Aが小さいため、カーカス層における単位幅当たりのカーカスコードの繊度が十分に確保できず、高速操縦安定性が悪化した。比較例7は、カーカスコードの破断伸びが小さいため、耐ショックバースト性を十分に確保することができなかった。比較例8は、カーカスコードの破談伸びが大きいため、剛性を確保することができず、高速操縦安定性が悪化した。
【符号の説明】
【0047】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
CL タイヤ赤道
【要約】
【課題】高速走行時の操縦安定性を向上する一方で、転がり抵抗を低減し、且つ、耐ショックバースト性を確保し、これら性能を高度に両立することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】カーカス層4とベルトカバー層8とを備えた空気入りタイヤにおいて、カーカス層4をポリエステル繊維からなるカーカスコードで構成し、カーカスコードの破断伸びを20%~30%、正量繊度Dと打ち込み本数Ecとの積Aを1.8×105dtex/50mm~3.0×105dtex/50mmとし、ベルトカバー層8をアラミド繊維と他の有機繊維とを撚り合わせた複合コードで構成し、複合コードのコード径を0.75mm以下、破断時の幅50mm当たりの引張強度を14kN/50mm以上、2~5%伸長時の幅50mm当たりの弾性率を1.7kN/(50mm・%)~2.3kN/(50mm・%)とする。
【選択図】図1
図1