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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】救命具
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/13 20060101AFI20220119BHJP
   B63C 9/15 20060101ALI20220119BHJP
   B63C 11/14 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B63C9/13 200
B63C9/15 100
B63C11/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021130115
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2021-08-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520125494
【氏名又は名称】遠藤 欣秀
(73)【特許権者】
【識別番号】520125508
【氏名又は名称】宮寺 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 欣秀
(72)【発明者】
【氏名】宮寺 和彦
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0341114(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0209621(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/13
B63C 9/15
B63C 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に装着可能に形成され、頭部上部に位置する収納状態から使用者の口部近傍に位置する使用状態へ変形可能なバンド部材と、
前記バンド部材に取り付けられ、空気が供給可能な給気孔を備えると共に、該給気孔を通じて空気が供給されることにより使用者の頭部周辺で膨張する空気袋と、
を有し、
前記空気袋は、使用者の頭部右側で膨張する右側チャンバと、使用者の頭部左側で膨張する左側チャンバとを含んで構成されている救命具。
【請求項2】
前記給気孔は、使用者が前記バンド部材を装着した状態で頭部前側に位置している請求項1に記載の救命具。
【請求項3】
前記バンド部材及び前記空気袋を被覆可能なカバー部材を備えた請求項1又は2に記載の救命具。
【請求項4】
前記カバー部材には、前記給気孔と対応する位置に目印用部材が設けられている請求項3に記載の救命具。
【請求項5】
前記バンド部材には、膨張した前記空気袋の内圧によって変形することで前記空気袋の流路を狭めるバルブ部が設けられている請求項1~4の何れか1項に記載の救命具。
【請求項6】
前記バンド部材は、前記使用状態で使用者の顎部を下方から支持する顎支持部と、使用者の頭頂部を上方から支持する頭頂支持部とを含んで構成されている請求項1~5の何れか1項に記載の救命具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救命具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者の首を挿入して使用する携帯式津波救命具が開示されている。具体的には、首回りと左右胸部に装着するエアバッグを備え、使用者が給排気口からエアバッグへ息を吹き込むことでエアバッグを膨張させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-3711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された救命具では、携帯し易い形状に形成されておらず、災害発生時に備えるためには常に手荷物として所持する必要がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、身に着けることで容易に携帯可能な救命具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の救命具は、使用者の頭部に装着可能に形成され、頭部上部に位置する収納状態から使用者の口部近傍に位置する使用状態へ変形可能なバンド部材と、前記バンド部材に取り付けられ、空気が供給可能な給気孔を備えると共に、該給気孔を通じて空気が供給されることにより使用者の頭部周辺で膨張する空気袋と、を有し、前記空気袋は、使用者の頭部右側で膨張する右側チャンバと、使用者の頭部左側で膨張する左側チャンバとを含んで構成されている
【0007】
請求項1に記載の救命具では、使用者の頭部に装着可能なバンド部材を備えており、このバンド部材は、頭部上部に位置する収納状態から使用者の口部近傍に位置する使用状態へ変形可能に構成されている。また、バンド部材には空気袋が取付けられている。ここで、空気袋は、空気が供給可能な給気孔を備えており、この給気孔を通じて空気袋へ空気が供給されることによって空気袋が使用者の頭部周辺で膨張する。これにより、災害が発生した場合に、使用者がバンド部材を収納状態から使用状態へと変形させ、給気孔を口に当てて空気袋へ空気を供給することで、空気袋を膨張させることができる。この結果、容易に頭部周辺の浮力を発生させることができる。
【0008】
また、日常の生活では、使用者は収納状態のバント部材を頭部に装着することで、持ち運ぶことなく救命具を携帯することができる。特に、収納状態では頭部上部に位置するため、ヘアバンドなどのように使用することができ、日常生活において違和感なく使用することができる。
さらに、右側チャンバ及び左側チャンバによって浮力を発生しつつ、使用者の視界が妨げられるのを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の救命具は、請求項1において、前記給気孔は、使用者が前記バンド部材を装着した状態で頭部前側に位置している。
【0010】
請求項2に記載の救命具では、給気孔が頭部前側に位置しているため、バンド部材を使用状態に変形させた際に、給気孔が口部近傍に移動することとなり、空気袋への給気をスムーズに行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の救命具は、請求項1又は2において、前記バンド部材及び前記空気袋を被覆可能なカバー部材を備えている。
【0012】
請求項3に記載の救命具では、カバー部材によってバンド部材及び空気袋が被覆された状態となるため、バンド部材及び空気袋が露出した構成と比較して、意匠性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の救命具は、請求項1~3の何れか1項において、前記カバー部材には、前記給気孔と対応する位置に目印用部材が設けられている。
【0014】
請求項4に記載の救命具では、カバー部材によって空気袋が目視できない状態であっても、目印用部材を見ることで給気孔の位置を容易に把握することができる。
【0017】
請求項に記載の救命具は、請求項1~の何れか1項において、前記バンド部材には、膨張した前記空気袋の内圧によって変形することで前記空気袋の流路を狭めるバルブ部が設けられている。
【0018】
請求項に記載の救命具では、バルブ部によって空気袋の流路が狭められるため、空気袋内の空気が排出されるのを抑制することができる。すなわち、バルブ部を備えていない構成と比較して、簡易な構造で長時間に亘って浮力を維持することができる。
【0019】
請求項に記載の救命具は、請求項1~の何れか1項において、前記バンド部材は、前記使用状態で使用者の顎部を下方から支持する顎支持部と、使用者の頭頂部を上方から支持する頭頂支持部とを含んで構成されている。
【0020】
請求項に記載の救命具では、顎支持部と頭頂支持部によって使用者の頭部が上下から挟み込まれた状態となるため、バンド部材が外れるのを抑制することができる。また、空気袋から使用者の口部に作用する浮力の一部が顎支持部から顎部へ分散されることにより、使用者の口部に作用する荷重を緩和することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る救命具によれば、身に着けることで容易に携帯が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る救命具の概略正面図であり、使用状態を示す図である。
図2】実施形態に係る救命具の概略側面図であり、収納状態を示す図である。
図3図2の収納状態から使用状態へ移行した状態を示す図である。
図4】実施形態におけるバンド部材を示す概略側面図である。
図5】実施形態におけるバンド部材を示す概略正面図である。
図6】実施形態におけるバンド部材及び空気袋を示す平面図である。
図7】実施形態におけるバンド部材の一部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態に係る救命具10について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態に係る救命具10は、使用者Pの頭部に装着して使用される。ここで、以下の説明では人の顔を模したダミーを使用者Pとして説明する。また、以下の説明において、救命具10の装着状態における使用者Pの頭部左右方向を左右方向とし、頭部上下方向を上下方向とする。
【0025】
本実施形態の救命具10は、バンド部材12、空気袋14及びカバー部材16を含んで構成されている。ここで、救命具10は、図2に示されるように、非使用の状態では、日常生活で身に着けることができる収納状態とされている。また、災害時など救命具10の使用が必要となった場合には、図1に示される使用状態へ移行される。図1に示される使用状態では、空気袋14によって使用者Pの頭部に浮力を発生させ、使用者Pの肺へ水が浸入するのを抑制できる構造である。以下、救命具10を構成するそれぞれの部材について説明する。
【0026】
(バンド部材12)
図6に示されるように、バンド部材12は、主として、前側支持部12A、後側支持部12B、連結部12C、顎支持部12D及び頭頂支持部12Eを含んで構成されており、使用者Pの頭部に装着可能に形成されている。また、バンド部材12は、可撓性及び弾性を備えた部材で形成されており、本実施形態のバンド部材12は一例として、シリコンゴムなどの合成樹脂によって形成されている。
【0027】
前側支持部12Aは、図4に示されるように、使用者Pの口部Mに位置しており、使用者Pがくわえる部分となっている。また、図5に示されるように、前側支持部12Aにおける左右方向の中央部分には、切込部20が形成されている。切込部20は、左右一対形成されており、この切込部20より先端部分が後述する空気袋14の給気部14Cに形成された給気孔28に差し込まれる(図6参照)。そして、切込部20に給気孔28の孔縁が引掛けられることで、前側支持部12Aから空気袋14が脱落するのを抑制している。
【0028】
さらに、前側支持部12Aには、4つの貫通孔18が形成されている。4つの貫通孔18のうちの2つが使用者Pの中心よりも右側に位置しており、残りの2つの貫通孔18が使用者Pの中心よりも左側に位置している。詳細は後述するが、4つの貫通孔18には、空気袋14が挿通される(図6参照)。
【0029】
さらにまた、前側支持部12Aにおいて、右側の2つの関数孔18の間の部分と、左側の2つの貫通孔18の間の部分は、バルブ部19となっている。バルブ部19は、後述する空気袋14が膨張した際に、この空気袋14の内圧によって変形する部分となっている。
【0030】
また、図4に示されるように、前側支持部12Aには、使用状態で使用者Pの口部Mを前方から覆うようにガード部21が形成されている。ガード部21は、災害時に泥などが使用者Pの口に入るのを抑制するために設けられている。
【0031】
後側支持部12Bは、図4に示されるように、使用者Pの後頭部Qを後方から支持するように配置される。すなわち、後側支持部12Bは、使用者Pの後頭部Qに沿って左右方向に延在されている。
【0032】
また、図6に示されるように、後側支持部12Bの左右方向中央部分は、左右方向端部よりも広幅に形成されており、この後側支持部12Bの左右方向中央部分には通し孔22が形成されている。通し孔22には、使用者Pの後ろ髪(不図示)を通すことができるようになっており、使用者Pが後ろ髪を束ねて通し孔22に通すことで、後ろ髪を結うことができるように構成されている。
【0033】
連結部12Cは、左右一対設けられており、前側支持部12Aの左右方向端部と、後側支持部12Bの左右方向端部とを連結している。また、図4に示されるように、連結部12Cは、使用者Pの側頭部を顎部Sから耳部へ向かって斜め上方へ延在されており、連結部12Cの後端部から斜め下方へ後側支持部12Bが延在されている。
【0034】
顎支持部12Dは、使用状態で使用者Pの顎部Sに位置しており、使用者Pの顎部Sを下方から支持している。また、図5に示されるように、顎支持部12Dは、前側支持部12Aの両端部に連結されている。このため、前側支持部12Aと顎支持部12Dとの間に使用者Pの顎部Sが通される。さらに、顎支持部12Dには複数の貫通孔24が形成されている。このため、顎支持部12Dは、バンド部材12の他の部位よりも伸張性が高くなっている。
【0035】
図4に示されるように、頭頂支持部12Eは、使用状態で使用者Pの頭頂部Rを上方から支持するように構成されている。具体的には、頭頂支持部12Eは、使用者Pの側頭部から頭頂部に沿って配設されており、頭頂支持部12Eの一端部が連結部12Cの一方側の後端部に接続されており、頭頂支持部12Eの他端部が連結部12Cの他方側の後端部に接続されている。
【0036】
また、図6に示されるように、頭頂支持部12Eの左右方向中央部分は、左右方向端部よりも広幅に形成されており、この頭頂支持部12Eの左右方向中央部分には孔部26が形成されている。この孔部26によって頭頂支持部12Eの左右中央部分が二分割されることで、頭頂支持部12Eから頭頂部Rへ作用する荷重を分散している。
【0037】
(空気袋14)
次に、本実施形態の救命具10を構成する空気袋14について説明する。空気袋14は、主として、右側チャンバ14A、左側チャンバ14B及び給気部14Cを含んで構成されている。また、空気袋14は、膨張収縮可能な部材によって形成されており、本実施形態では一例として、ナイロン製の袋状部材によって形成されている。
【0038】
右側チャンバ14Aは、使用状態で使用者Pの右側頭部に沿って配置され、使用者Pの頭部右側で膨張する。また、右側チャンバ14Aの一端部は、前側支持部12Aに形成された2つの貫通孔18に挿通されて給気部14Cに接続されている。また、右側チャンバ14Aの他端部は、後側支持部12Bに固定されている。なお、右側チャンバ14Aをバンド部材12へ固定する固定方法は、特に限定されず、縫い付け及びリベットなどの機械的な固定方法を用いてもよく、接着材などによる化学的な固定方法を用いてもよい。さらに、溶着及び圧接などの方法で固定してもよい。
【0039】
左側チャンバ14Bは、使用状態で使用者Pの左側頭部に沿って配置され、使用者Pの頭部左側で膨張する。また、左側チャンバ14Bの一端部は、前側支持部12Aに形成された2つの貫通孔18に挿通されて給気部14Cに接続されている。また、右側チャンバ14Aの他端部は、後側支持部12Bに固定されている。固定方法は、右側チャンバ14Aと同様である。
【0040】
給気部14Cは、右側チャンバ14Aと左側チャンバ14Bとの間に位置しており、右側チャンバ14A及び左側チャンバ14Bを連結している。また、給気部14Cは、前側支持部12Aに位置しており、使用状態で前側支持部12Aと使用者Pの口部Mとの間に配置される。このため、使用者Pが前側支持部12Aをくわえた際に、給気部14Cが使用者Pの口内に配置される構成である。
【0041】
ここで、給気部14Cには給気孔28が形成されている。給気孔28には前側支持部12Aの一部が差し込まれているが、給気孔28には給気可能な隙間が設けられているため、使用者Pが給気部14Cを口内に入れた状態で息を吹き込むことにより、給気孔28から空気袋14の内部へ空気を送り込むことができる。
【0042】
また、空気袋14において、給気部14Cと右側チャンバ14Aとの間の部分、すなわち、2つの貫通孔18の間の部分は、絞り部14Dとなっている。同様に、空気袋14において、給気部14Cと左側チャンバ14Bとの間の部分も絞り部14Dとなっている。
【0043】
左右の絞り部14Dは、前側支持部12Aにおけるバルブ部19の位置と対応している。このため、図7に示されるように、空気袋14が膨張した際には、空気袋14の内圧によってバルブ部19が変形することで、絞り部14Dの流路が絞られる。すなわち、バルブ部19によって空気袋14の流路が狭められるように構成されている。
【0044】
(カバー部材16)
次に、本実施形態の救命具10を構成するカバー部材16について説明する。図2に示されるように、カバー部材16は、主として、カバー本体16Aと、目印用部材としての装飾部材16Bとを含んで構成されている。また、カバー本体16Aは、布材で形成されている。
【0045】
ここで、図2には、収納状態におけるカバー本体16Aが示されている。この収納状態では、バンド部材12が使用者Pの頭部上部に位置する状態でカバー部材16に外側から覆われている。また、空気袋14は、収縮した状態でカバー部材16に外側から覆われている。例えば、カバー本体16Aでバンド部材12及び空気袋14を包んだ状態でカバー本体16Aを折り畳むことで、バンド部材12及び空気袋14が外側から覆われた状態となる。
【0046】
カバー部材16は、収納状態では、略環状となっており、使用者Pの頭部上部に装着されている。また、カバー部材16は、日常的に使用可能な外観となっており、ファッションアイテムの一部として装着することができるように構成されている。
【0047】
カバー部材16における使用者Pの額に位置する部分には、装飾部材16Bが取り付けられている。装飾部材16Bは、リボンなどの飾りでもよく、本実施形態では一例として、球体とされている。
【0048】
ここで、装飾部材16Bは、給気部16Bの給気孔16Bと対応する位置に設けられている。
【0049】
(使用方法)
次に、救命具10の使用方法について説明する。
【0050】
使用者Pは、救命具10を日常的に使用する際には、図2に示されるようにヘアバンドとして頭部に装着する。このとき、バンド部材12の通し孔22に使用者Pの後ろ髪(不図示)を通してもよい(図6参照)。また、使用者Pは、装飾部材16Bが前側に位置する状態で救命具10を装着する。
【0051】
津波などの災害が発生した際には、使用者Pは、救命具10のカバー部材16を展開してバンド部材12及び空気袋14を露出させる。続いて、使用者Pは、図4に示されるように、バンド部材12の前側支持部12Aが口部Mの近傍に位置するように変形させる。このとき、バンド部材12の前側支持部12Aは、装飾部材16の位置に対応しているため、カバー部材16を展開して前側支持部12Aを額の位置から下方へ下ろすだけで前側支持部12Aが口部Mの近傍に配置される。
【0052】
前側支持部12Aが口部Mの近傍に配置されることで、空気袋14の給気部14Cが口元に配置され、給気孔28から空気袋14へ給気が可能な状態となる。また、使用者Pは、バンド部材12を変形させて顎支持部12D及び頭頂支持部12Eを使用位置へ移動させる。
【0053】
図3に示されるように、展開されたカバー本体16Aによって使用者Pの顔の下半分から首までが覆われる。また、カバー本体16Aによって使用者Pの口部Mの前側が覆われ、泥などが口に入り込まない構造となっている。
【0054】
ここで、左側チャンバ14Bは、使用者Pの口部Mから後頭部へ向かって左側頭部に沿って斜め上方へ延在されている。同様に、右側チャンバ14Aは、使用者Pの口部Mから後頭部へ向かって右側頭部に沿って斜め上方へ延在されている。
【0055】
この状態で使用者Pが給気部14Cの給気孔28から空気袋14へ空気を送り込むことで、図1に示されるように右側チャンバ14A及び左側チャンバ14Aが膨張し、使用状態への移行が完了する。
【0056】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0057】
本実施形態に係る救命具10では、上述したように、災害が発生した場合にバンド部材12を収納状態から使用状態へと変形させ、給気孔28を口部Mに当てて空気袋14へ空気を供給することで、空気袋14を膨張させることができる。この結果、容易に頭部周辺の浮力を発生させることができる。
【0058】
また、救命具10は日常的に頭部に装着して使用されるため、使用者Pが災害時に移動しながら(避難しながら)でも使用状態へと移行させることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、収納状態で給気孔28が前側に位置しているため、バンド部材12を使用状態に変形させた際に、給気孔28が口部M近傍に移動することとなり、空気袋14への給気をスムーズに行うことができる。
【0060】
さらにまた、本実施形態では、カバー部材16によってバンド部材12及び空気袋14が被覆された状態となるため、バンド部材12及び空気袋16が露出した構成と比較して、意匠性を向上させることができる。この結果、違和感なく日常的に使用することができる。
【0061】
特に、本実施形態では、カバー部材16における給気孔28と対応する位置に目印用部材としての装飾部材16Bが設けられているため、カバー部材16に覆われた空気袋14が目視できない状態であっても、装飾部材16Bを見ることで給気孔28の位置を容易に把握することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、右側チャンバ14A及び左側チャンバ14Bによって頭部の左右に浮力を発生しつつ、使用者Pの視界が妨げられるのを抑制することができる。これにより、使用者Pが避難しながら空気袋14を膨張させた場合であっても、前が見えなくなることがない。
【0063】
さらにまた、右側チャンバ14A及び左側チャンバ14Bによって頭部を適切に保護することができる。すなわち、使用者Pの頭部に物が接触した場合であっても、右側チャンバ14A及び左側チャンバ14Bによって頭部へ入力される荷重の少なくとも一部を吸収することができる。
【0064】
さらにまた、本実施形態では、図7に示されるように、バンド部材12には、膨張した空気袋14の内圧による変形することで空気袋14の流路を狭めるバルブ部19が設けられている。これにより、空気袋14内の空気が排出されるのを抑制することができる。すなわち、バルブ部19を備えていない構成と比較して、簡易な構造で長時間に亘って浮力を維持することができる。
【0065】
また、本実施形態では、図4に示されるように、顎支持部12Dと頭頂支持部12Eによって使用者Pの頭部が上下から挟み込まれた状態となるため、バンド部材12が外れるのを抑制することができる。また、空気袋14から使用者Pの口部Mに作用する浮力の一部が顎支持部12Dから顎部Sへ分散されることにより、使用者Pの口部Mに作用する荷重を緩和することができる。
【0066】
(補足説明)
以上、実施形態に係る救命具10ついて説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、バンド部材12及び空気袋14を被覆可能なカバー部材16を設けたが、これに限定されない。すなわち、カバー部材16が無い構成としてもよい。この場合、バンド部材12及び空気袋14の意匠面に模様をプリントするなどすれば、バンド部材12及び空気袋14が露出していても違和感なく日常的にヘアバンドとして使用することができる。また、カバー部材16として、ヘアゴムのような伸縮性のある部材を用いてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、空気袋14は、右側チャンバ14A及び左側チャンバ14Bを含んで構成されたが、これに限定されず、空気袋14の形状は特に限定されない。例えば、使用者Pの側頭部から肩部までを覆う大型の空気袋を用いてもよい。この場合、より大きな浮力を得ることができる。また、風などを利用して空気袋に空気を入れることで、空気袋内の空気を用いて使用者Pが一定時間呼吸を行うことが可能となる。
【0068】
さらにまた、本実施形態では、バンド部材12にバルブ部19を設けたが、これに限定されない。例えば、バルブ部19が設けられていない構成であっても、バンド部材12の張力によって使用者Pの口部Mに給気部14Cが押し付けられた状態となるため、空気袋14内の空気が漏れるのを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、カバー部材16は、バンド部材12及び空気袋14を覆う機能を備えた布材としたが、これに加えて、小物を収納するポケットなどを備えた構造としてもよい。この場合、必要最小限の貴重品をカバー部材に収納しておくことが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
10 救命具
12 バンド部材
12D 顎支持部
12E 頭頂支持部
14 空気袋
14A 右側チャンバ
14B 左側チャンバ
16 カバー部材
16B 装飾部材(目印用部材)
19 バルブ部
28 給気孔
【要約】
【課題】身に着けることで容易に携帯可能な救命具を得る。
【解決手段】救命具10は、使用者Pの頭部に装着可能なバンド部材12を備えており、バンド部材12は頭部上部に位置する収納状態から使用者Pの口部M近傍に位置する使用状態へ変形可能に構成されている。また、バンド部材12には空気袋14が取付けられており、空気袋14の給気孔を通じて空気袋14へ空気が供給されることによって空気袋14が使用者Pの頭部周辺で膨張する。日常の生活では、使用者Pは収納状態のバント部材12をヘアバンドとして頭部に装着することで、容易に救命具10を携帯することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7