(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】燃料電池の発電性能の診断システム、補正装置、及び診断装置、並びに燃料電池の発電性能の診断方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220203BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220203BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220203BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2017173591
(22)【出願日】2017-09-09
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2016177184
(32)【優先日】2016-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】泉 政明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄治
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-500689(JP,A)
【文献】特開2010-010049(JP,A)
【文献】特開2013-142551(JP,A)
【文献】特開2008-204691(JP,A)
【文献】特開平09-223512(JP,A)
【文献】特開2005-183039(JP,A)
【文献】特開2007-179901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセルと前記複数のセルを固定する固定部材とを有する燃料電池スタックの周囲に生じる外乱磁界を測定する第1のステップと、
前記燃料電池スタックの発電電流を変化させ
、生じた磁界の磁束密度を測定し、前記第1のステップにて測定された前記外乱磁界の影響を抑制した上で、
該磁束密度から逆問題解析を用いて前記発電電流ごとに前記燃料電池スタック内部の電流密度の分布を推定し、
前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いに基づいて前記燃料電池スタック
を診断する第2のステップと、を含む燃料電池の発電性能の診断方法。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記第1のステップが、前記固定部材に電流を流すステップと、
前記電流により発生する磁界の磁束密度の測定値を求めるステップと、
前記磁束密度の理論値を求めるステップと、
前記測定値と前記理論値とを比較して、当該測定値と当該理論値との不一致度合いを求めるステップと、を含む燃料電池の発電性能の診断方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記第2のステップが、前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いが予め決められた値よりも小さい部分を異常と判断するステップを含む燃料電池の発電性能の診断方法。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記発電電流を変化させる範囲が、該発電電流の変化に対して前記燃料電池スタックが発生する電圧Vが実質的に線形に変化する範囲である燃料電池の発電性能の診断方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記固定部材が、前記複数のセルが積層される方向に延びる締め付けボルトである燃料電池の発電性能の診断方法。
【請求項6】
積層された複数のセルと前記複数のセルを固定する固定部材とを有する
燃料電池スタックを備えた燃料電池の発電性能の診断システムであって、
前記燃料電池スタックの周囲に生じる外乱の影響を抑制するように該燃料電池スタックが発生する磁界の磁束密度の測定値を補正する補正装置と、
前記補正装置によって補正された、発電電流を変更した前記燃料電池スタックが発生す
る前記磁界の磁束密度の測定値に基づいて、変更した前記発電電流ごとに逆問題解析によ
り前記燃料電池スタック内部の電流密度の分布を推定する推定部
と、
前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いに基づいて前記燃料電池スタックの異常部分を特定する異常判断部と、を有する診断装置と、を備えた燃料電池の発電性能の診断システム。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池の発電性能の診断システムにおいて
、
前記異常判断部が、前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いが予め決められた値よりも小さい箇所について異常と判断する燃料電池の発電性能の診断システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載の燃料電池の発電性能の診断システムにおいて、
前記補正装置が、前記燃料電池スタックの周囲に配置され、磁界を検出する磁気センサと、
前記固定部材に流した電流が発生する磁界の磁束密度の測定値を求める測定部と、
前記磁束密度の理論値を求める計算部と、
前記測定値と前記理論値とを比較して、当該測定値と当該理論値との不一致度合いを求める比較部と、
前記比較部が求めた前記不一致度合いに基づいて、前記燃料電池スタックの発電電流により発生する磁界の磁束密度を補正する補正部と、を有する燃料電池の発電性能の診断システム。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の燃料電池の発電性能の診断システムにおいて、
前記固定部材が、前記複数のセルが積層される方向に延びる締め付けボルトである燃料電池の発電性能の診断システム。
【請求項10】
請求項6~9記載のいずれか1項に記載の燃料電池の発電性能の診断システムが備える補正装置。
【請求項11】
請求項6~9記載のいずれか1項に記載の燃料電池の発電性能の診断システムが備える診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の発電性能の診断システム、補正装置、及び診断装置、並びに燃料電池の発電性能の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池の診断方法が記載されている。この燃料電池の診断方法は、燃料電池の異常状態を当該異常に起因して生じるかまたは変化する磁束に基づいて診断することを特徴としている。
【0003】
特許文献2には、燃料電池内の磁界分布を検知する検出装置が記載されている。この検出装置は、電解質膜と電解質膜を挟むアノード電極およびカソード電極とを有する複数のセルが積層された燃料電池に起因した磁界分布を検出する検出装置であり、複数のセルに平行な方向の磁界分布を検出する磁界検出部を具備することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-115512号公報
【文献】特開2011-86476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで従来、燃料電池発電状態の異常箇所の検出方法として、以下の2つの方法が知られている。
第1の方法は、燃料電池の発電時の電圧と電流に基づいて異常部分を検出する方法である。しかし、この方法にて得られる情報は燃料電池全体の平均的な値である。例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)は、発電素子となる膜電極接合体を数十から数百枚積層した構造(スタック)であり、この中でたった1枚の膜電極接合体に不具合が生じても性能が大幅に低下する。燃料電池スタック全体の電圧および電流の情報からでは、どの膜電極接合体に不具合が発生しているかを検出することは不可能である。また、全ての膜電極接合体1枚づつに電圧測定用の端子を接続して電圧を測定することは、多くの手間と時間が必要となる。
【0006】
第2の方法は、燃料電池周囲に発生する磁界から異常部分を検出する方法である。しかし、燃料電池の発電時に発生する磁界は、周囲からの外乱により影響を受けやすく、発電により発生する磁界を正確に測定することができない。正確な磁界が得られなければ異常部分を推定するときの誤差となってしまう。磁界と電流との間には、ビオ・サバールの法則やアンペアの法則が存在するため、これらの法則を適用して上記の磁界データを逆問題解析することにより、燃料電池スタック内部の電流密度分布を推定することが可能である。逆問題解析の有効な手法としては、チホノフの正則化法や各種最適化手法(進化戦略法、焼きなまし法、及び遺伝的アルゴリズム等)が存在する。ところが、これらいずれの手法を用いてもその推定精度に課題が残る。例えば、燃料電池内部に異常部分がある場合、その異常部分の電流は本来ゼロかゼロに近い値となるはずであるが、逆問題解析で得られる電流はこのような値にならないことが多い。すなわち、異常部分と判定できないことがある。
【0007】
本発明は、燃料電池の異常部分を高い精度で特定できる燃料電池の発電性能の診断システム、補正装置、及び診断装置、並びに燃料電池の発電性能の診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る燃料電池の発電性能の診断方法は、積層された複数のセルと前記複数のセルを固定する固定部材とを有する燃料電池スタックの周囲に生じる外乱磁界を測定する第1のステップと、
前記燃料電池スタックの発電電流を変化させ、生じた磁界の磁束密度を測定し、前記第1のステップにて測定された前記外乱磁界の影響を抑制した上で、該磁束密度から逆問題解析を用いて前記発電電流ごとに前記燃料電池スタック内部の電流密度の分布を推定し、前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いに基づいて前記燃料電池スタックを診断する第2のステップと、を含む。
【0009】
第1の発明に係る燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記第1のステップが、前記固定部材に電流を流すステップと、
前記電流により発生する磁界の磁束密度の測定値を求めるステップと、
前記磁束密度の理論値を求めるステップと、
前記測定値と前記理論値とを比較して、当該測定値と当該理論値との不一致度合いを求めるステップと、を含むことが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記第2のステップが、前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いが予め決められた値よりも小さい部分を異常と判断するステップを含むことが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記発電電流を変化させる範囲が、該発電電流の変化に対して前記燃料電池スタックが発生する電圧Vが実質的に線形に変化する範囲であることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る燃料電池の発電性能の診断方法において、
前記固定部材が、前記複数のセルが積層される方向に延びる締め付けボルトであることが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る燃料電池の発電性能の診断システムは、積層された複数のセルと前記複数のセルを固定する固定部材とを有する燃料電池スタックを備えた燃料電池の発電性能の診断システムであって、
前記燃料電池スタックの周囲に生じる外乱の影響を抑制するように該燃料電池スタックが発生する磁界の磁束密度の測定値を補正する補正装置と、
前記補正装置によって補正された、発電電流を変更した前記燃料電池スタックが発生す
る前記磁界の磁束密度の測定値に基づいて、変更した前記発電電流ごとに逆問題解析によ
り前記燃料電池スタック内部の電流密度の分布を推定する推定部と、
前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いに基づいて前記燃料電池スタックの異常部分を特定する異常判断部と、を有する診断装置と、を備える。
【0014】
第2の発明に係る燃料電池の発電性能の診断システムにおいて、
前記異常判断部が、前記発電電流の変化に対する前記電流密度の変化の度合いが予め決められた値よりも小さい箇所について異常と判断することが好ましい。
【0015】
第2の発明に係る燃料電池の発電性能の診断システムにおいて、
前記補正装置が、前記燃料電池スタックの周囲に配置され、磁界を検出する磁気センサと、
前記固定部材に流した電流が発生する磁界の磁束密度の測定値を求める測定部と、
前記磁束密度の理論値を求める計算部と、
前記測定値と前記理論値とを比較して、当該測定値と当該理論値との不一致度合いを求める比較部と、
前記比較部が求めた前記不一致度合いに基づいて、前記燃料電池スタックの発電電流により発生する磁界の磁束密度を補正する補正部と、を有することが好ましい。
【0016】
第2の発明に係る燃料電池の発電性能の診断システムにおいて、
前記固定部材が、前記複数のセルが積層される方向に延びる締め付けボルトであることが好ましい。
【0017】
前記目的に沿う第3の発明に係る補正装置は、第2の発明に係る燃料電池の発電性能の診断システムが備える補正装置である。
【0018】
前記目的に沿う第4の発明に係る診断装置は、第2の発明に係る燃料電池の発電性能の診断システムが備える診断装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃料電池の異常部分を高い精度で特定できる燃料電池の発電性能の診断システム、補正装置、及び診断装置、並びに燃料電池の発電性能の診断方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の一実施の形態に係る燃料電池の発電性能の診断システムの説明図である。
【
図1B】同燃料電池の発電性能の診断システムによって診断される燃料電池スタックの説明図である。
【
図2】締め付けボルトに電流が流された燃料電池スタックの説明図である。
【
図3】燃料電池の発電性能の診断方法を示すフローチャートである。
【
図4】外乱の影響の測定方法を示すフローチャートである。
【
図5】燃料電池スタックの第1のモデルの説明図である。
【
図6A】補正した場合における、燃料電池スタックの第1のモデルの電流密度分布を示すグラフである。
【
図6B】補正しない場合における、燃料電池スタックの第1のモデルの電流密度分布を示すグラフである。
【
図7】発電電流Iを変化させる範囲を示す説明図である。
【
図8】電流スイング法を示すフローチャートである。
【
図9A】発電電流が3[A]の場合における、燃料電池スタックの第1のモデルの電流密度分布を示すグラフである。
【
図9B】発電電流が4[A]の場合における、燃料電池スタックの第1のモデルの電流密度分布を示すグラフである。
【
図9C】発電電流が5[A]の場合における、燃料電池スタックの第1のモデルの電流密度分布を示すグラフである。
【
図10】y=25[mm]の位置にある各位置xにおける、発電電流と電流密度の推定値との関係を示すグラフである。
【
図11】(A)、(B)は、それぞれ、燃料電池スタックの第2のモデルの説明図及び第1層目の膜電極接合体の構造を示す説明図である。
【
図12】(A)、(B)、(C)は、それぞれ、燃料電池スタックの第2のモデルが備える第1層目、第2層目、及び第3層目の膜電極接合体の電流密度分布を示すグラフである。
【
図13】第1層目の膜電極接合体についての発電電流と電流密度の推定値との関係を示すグラフであって、y=5[mm]の位置にある各位置xにおけるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0022】
本発明の一実施の形態に係る燃料電池の発電性能の診断システム10(
図1A参照)は、燃料電池スタック20が発電時に周囲に発生する磁界を磁気センサ301により測定する。燃料電池の発電性能の診断システム10は、得られた磁界分布から逆問題解析により燃料電池内部の電流密度の分布(以下、単に「電流密度分布」という。)を推定し、推定された電流密度分布から燃料電池スタック20の内部の異常部分を特定できる。
【0023】
燃料電池は、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC)である。固体高分子形燃料電池の燃料電池スタック20は、
図1Bに示すように、膜電極接合体202及びセパレータ204によって少なくとも構成されたセル205を有し、このセル205が複数積層されて構成されている。
【0024】
燃料電池スタック20は、
図2に示すように、複数のセル205が積層される方向に延びる複数の締め付けボルト(固定部材の一例)208を有している。これらの締め付けボルト208は、積層された複数のセル205の一方の側及び他方の側にそれぞれ配置された締め付け板(エンドプレート)206を締め付け、各セル205を固定している。
各締め付けボルト208には、燃料電池の発電性能の診断システム10によって発電性能が診断される際に電流が流される。
なお、固定部材は、締め付けボルト208に限定されるものではない。固定部材は、セル205を固定でき、セル205が積層される方向に電流を流すことができる導電性を有する部材であれば任意でよい。
【0025】
燃料電池の発電性能の診断システム10は、
図1Aに示すように、補正装置30及び診断装置40を備えている。
補正装置30は、燃料電池スタック20の周囲に生じる外乱である外乱磁界の影響を抑制するように、燃料電池スタック20が発生する磁界の磁束密度の測定値を補正できる。
【0026】
補正装置30は、磁気センサ301、測定部304、計算部306、比較部308、及び補正部310を有している。
磁気センサ301は、燃料電池スタック20の周囲に配置され、磁界を検出できる。磁気センサ301は、上下方向に間隔を空けて配置された複数の磁気センサ素子群302より構成されている。各磁気センサ素子群302は、複数の磁気センサ素子303によって構成され、各磁気センサ素子303は、直方体状の燃料電池スタック20の外周面に沿って、それぞれ間隔を空けて予め決められた位置に配置されている。
磁気センサ301は、燃料電池スタック20の周囲の磁界を検出できれば任意の構成でよい。磁気センサ301は、例えば、上下方向に移動する1つの磁気センサ素子群302により構成されてもよい。
【0027】
測定部304は、各磁気センサ素子303からの信号が入力され、燃料電池スタック20の周囲に発生する磁界の磁束密度を測定できる。磁束密度の測定値は、比較部308に出力される。
また、測定部304は、
図2に示すように電源PSを内蔵し、この電源PSが締め付けボルト208に接続される。測定部304は、電源PSを用いて締め付けボルト208に電流を流すことができる。
更に、測定部304は、燃料電池スタック20の燃料の供給量を制御し、発電電流を変更できる。
従って、測定部304は、締め付けボルト208に電流を流し、この電流により生じる磁界の磁束密度を測定できる。また、測定部304は、燃料電池スタック20を発電させて、発電電流により生じる磁界の磁束密度を測定できる。
【0028】
計算部306は、測定部304が燃料電池スタック20の各締め付けボルト208に流した電流に基づいて、締め付けボルト208が発生する磁界の磁束密度の理論値を計算できる。
【0029】
比較部308は、測定部304が測定した磁束密度及び計算部306が計算した磁束密度が入力され、これら磁束密度の測定値と理論値とを比較して、その不一致度合いを求めることができる。不一致度合いは、例えば磁束密度の測定値の大きさと理論値の大きさとの比率である。
なお、不一致度合いは、磁束密度の測定値の大きさと理論値の大きさとの比率に限定されるものではない。不一致度合いの他の例として、磁束密度の測定値の大きさと理論値の大きさとの差が挙げられる。
【0030】
補正部310は、比較部308が求めた磁束密度の測定値と理論値との不一致度合いに基づいて、燃料電池スタック20が発電時に発生する磁界の磁束密度を補正できる。
【0031】
診断装置40は、燃料電池スタック20の内部の異常箇所を特定できる。診断装置40は、推定部402及び異常判断部404を有している。
推定部402は、例えば3[A]から1[A]づつ増加するように発電電流を変更した燃料電池スタック20が、変更した発電電流(3、4、5・・・[A])ごとに発生する磁界の磁束密度の測定値が入力される。これらの測定値は、補正装置30によって補正され、外乱磁界の影響が抑制された測定値である。
推定部402は、各磁束密度の測定値に基づいて、変更した発電電流ごとに逆問題解析を用いて燃料電池スタック20の内部の電流密度分布を推定できる。
【0032】
異常判断部404は、推定部402が推定した電流密度分布に基づいて、燃料電池スタック20の異常部分を特定できる。具体的な異常部分の判断方法については、後述する。
【0033】
次に、燃料電池の発電性能の診断システム10の動作(燃料電池の発電性能の診断方法)について説明する。燃料電池の発電性能の診断方法は、
図3に示すように、大きくステップSA(第1のステップの一例)及びステップSB(第2のステップの一例)を含んでいる。
【0034】
(ステップSA)
本ステップSAは、燃料電池スタック20が発生する磁界をより高精度で測定するために、燃料電池スタック20の周囲に生じる外乱磁界を測定するステップである。
本ステップSAにおいては、燃料電池スタック20の発電時と同等の磁束密度が得られる電流を締め付けボルト208に流し、発生した磁界を磁気センサ301を用いて測定する。測定後、締め付けボルト208を流れる電流値と、締め付けボルト208及び磁気センサ301の位置関係とから、ビオ・サバールの法則又はアンペアの法則に基づいて磁束密度を計算する。得られた磁束密度の測定値Dmと理論値Dtとを比較して、測定値Dmと理論値Dtとの不一致度合いを求める。
求められた不一致度合いは、ステップSBにて、燃料電池スタック20の発電電流により発生する磁界の磁束密度の測定値を補正するために用いられる。
【0035】
本ステップSAは、
図4に示す以下のステップSA1~SA5を含む。
(ステップSA1)
燃料電池の発電性能の診断システム10に燃料電池スタック20を接続し、測定部304が磁界の磁束密度を測定する。すなわち、測定部304が地磁気の磁束密度を測定する。以降のステップにおいて、測定部304は、測定した地磁気の影響をキャンセルして(抑制して)磁界の磁束密度を測定する。
【0036】
(ステップSA2)
補正装置30が有する測定部304が、内蔵する電源PS(
図2参照)を用いて、各締め付けボルト208に予め設定された大きさの電圧を印加する。すなわち、各締め付けボルト208には予め決められた大きさの電流が流れる。
【0037】
(ステップSA3)
測定部304が、各締め付けボルト208を流れる電流により発生する磁界の磁束密度の測定値Dmを求める。なお、0[A]から発電時と同等の磁束密度が得られる電流までの範囲で締め付けボルト208に流す電流を変化させ、各電流値について測定値Dmを取得する。
【0038】
(ステップSA4)
計算部306が、複数取得された測定値Dmにそれぞれ対応する磁束密度の理論値Dtを求める。
【0039】
(ステップSA5)
比較部308が、測定値Dmと理論値Dtとを比較して、測定値Dmと理論値Dtとの不一致度合いを求める。
具体的には、比較部308は、得られた複数の組の測定値Dmと理論値Dtとの値を最小二乗法で直線近似し、以下に示す原点を通る一次の線形関係式を求める。
【0040】
Dt=c・Dm 式(1)
【0041】
式(1)中の傾きcが補正係数(不一致度合いの一例)となり、外乱磁界の影響を表す。
なお、不一致度合いは、傾きcに限定されるものではない。
【0042】
求めた補正係数c(傾きc)は、後述するステップSB2にて、燃料電池スタック20が発電する際に発生する磁界の磁束密度の測定値を補正して、外乱磁界の影響を抑制するために用いられる。
具体的には、補正部310が、燃料電池スタック20が発電する際の磁束密度の測定値に補正係数cを掛けて、測定値を補正する。この補正により、外乱となる外乱磁界の影響が抑制され、発電電流により発生する磁界の磁束密度が高い精度で測定される。
このように、本ステップSAにおいては、燃料電池スタックの周囲に生じる外乱磁界の影響が抑制された磁界が測定される。
【0043】
なお、本ステップSAにおいては、ステップSA1にて、事前に地磁気の影響を考慮したが、ステップSA1を実行せずに、ステップSA5にて地磁気の影響を考慮することも可能である。この場合、式(1)に対応する測定値Dmと理論値Dtとの一次の線形関係式は、地磁気の磁束密度dを用いて次式で表される。
【0044】
Dt=c・Dm+d 式(2)
【0045】
ここで、燃料電池スタック20の第1のモデル60を用いた、本ステップSAの実施例について説明する。
燃料電池スタック20の第1のモデル60は、
図5に示すように、1枚の膜電極接合体であり、中央部に正方形状の電極602が形成されている。電極602の寸法は、50[mm]×50[mm]である。
この第1のモデル60について、電極602の一頂点を原点とし、直交するx軸及びy軸からなる2次元の直交座標系を設定した。
【0046】
燃料電池スタック20の第1のモデル60に対して、故意に異常部分Faを設けた。異常部分Faは、電極が除去された発電しない部分であり、正方形状である。異常部分Faの大きさは10×10[mm]であり、その中心位置はx=5[mm]、y=5[mm]である。
そして、外乱磁界の影響を補正した場合(本ステップSAを実施し、補正係数cを掛けた場合)及び補正しない場合(本ステップSAを実施しない場合)について、それぞれ発電電流5[A]時の磁界を測定し、逆問題解析により第1のモデル60の電流密度分布を推定した。
【0047】
補正した場合の結果を
図6Aに示す。
図6Aは表1に示す電流密度のデータのグラフである。
【0048】
【0049】
補正した磁界から推定された電流密度分布では、異常部分Faの電流密度が最も低い値になっている。
【0050】
補正しなかった場合(本ステップSAを実施しない場合)の結果を
図6Bに示す。
図6Bは表2に示す電流密度のデータのグラフである。
【0051】
【0052】
補正しなかった磁界から推定された電流密度分布では、x=5[mm]の異常部分Faよりもx=15mmの位置で最も低い電流密度を示した。
以上示した各結果は、補正により得られた高い精度の磁界を用いて逆問題解析を行うことにより、異常部分の検出精度が向上したことを示している。
【0053】
(ステップSB)
本ステップSB(
図3参照)は、発電時の電流密度分布を推定し、異常部分を特定するためのステップである。なお、以下、本ステップSBを「電流スイング法」と呼ぶ場合がある。
電流スイング法においては、
図1Aに示す燃料電池スタック20の発電電流を変化させて発生する磁界の磁束密度を測定し、その磁束密度から逆問題解析を用いて発電電流ごとの電流密度分布を推定する。燃料電池スタック20の内部の正常部分においては、推定された電流密度i[A/cm
2]は発電電流I[A]にほぼ正比例して増減するが、異常部分においては、推定された電流密度iは余り大きく変化しない。電流スイング法は、この特性を利用して、すなわち、発電電流Iの変化に対する電流密度iの変化の度合いが予め決められた値よりも小さい部分を異常と判断することによって、異常部分を検出する。
【0054】
発電電流Iを変化させる範囲は、発電電流Iと燃料電池スタック20が発生する電圧Vとの関係において、発電電流Iの変化に対して電圧Vが線形に変化する範囲とすることが好ましい。なお、ここに言う「線形」とは、厳密な意味での線形ではなく、多少の誤差が許容された「実質的に線形」という意味である。つまり、発電電流Iが小さい範囲や大きい範囲においては、発電電流Iの変化に対して電圧Vが急激に変化するため、このような範囲を避けて発電電流Iを変化させることが好ましい。具体的には、発電電流Iを変化させる範囲は、例えば
図7に示すように、1枚当たりの膜電極接合体の出力電圧が0.5~0.8Vとなる範囲である。
【0055】
電流スイング法(ステップSB)は、
図8に示す以下のステップSB1~SB6を含む。
(ステップSB1)
補正装置30の測定部304が、燃料電池スタック20の燃料の供給量を制御し、燃料電池スタック20を発電させる。
【0056】
(ステップSB2)
測定部304が、燃料電池スタック20が発生する磁界の磁束密度を測定する。
補正部310が、前述の通り、磁束密度の測定値に補正係数cを掛けて補正し、外乱磁界の影響が抑制された精度が高い測定値を求める。
【0057】
(ステップSB3)
予め決められたサンプリング数のデータ取得が完了していない場合には、ステップSB4が実行される。データ取得が完了した場合には、次のステップSB5が実行される。
【0058】
(ステップSB4)
補正装置30の測定部304が、燃料の供給量を制御し、例えば3[A]から1[A]づつ増加するように発電電流Iを変更する。測定部304は、変更した発電電流I(3、4、5・・・[A])ごとに繰り返し磁束密度を測定する。
【0059】
(ステップSB5)
診断装置40の推定部402が、逆問題解析を用いて、発電電流I(3、4、5・・・[A])ごとに、燃料電池スタック20の内部の電流密度分布を推定する。
【0060】
(ステップSB6)
診断装置40の異常判断部404が、以下に示す各部の推定された電流密度iと発電電流Iの一次の線形関係式を求める。
【0061】
i=aI+b 式(3)
【0062】
その後、異常判断部404が、推定された電流密度分布に基づいて、燃料電池スタック20の異常部分を特定する。詳細には、異常判断部404が以下の条件1又は条件2を満たす場合に、その部分を異常部分と判断する。
【0063】
(条件1)傾きaの値が著しく低い場合
(条件2)切片bの値の絶対値が著しく大きい場合
【0064】
条件1については、例えば、傾きaの閾値s1が電極面積[cm2]の逆数の1/2に設定され、傾きaがこの閾値s1以下の場合、本条件1を満たすものとして異常部分と判断される。
条件2については、切片bの絶対値の閾値s2が発電時の最大電流における平均電流密度[A/cm2]の1/10に設定され、切片bがこの閾値s2以上の場合、本条件2を満たすものとして異常部分と判断される。具体例を挙げると、電極面積25[cm2]の膜電極接合体を用いて最大電流5[A]で発電した場合は、閾値s2は0.02[A/cm2]であり、切片bが0.02[A/cm2]以上の場合に異常部分と判断される。
【0065】
このように、電流スイング法においては、燃料電池スタック20の発電電流Iを変化させ、ステップSAにて外乱磁界の影響が抑制された上で、逆問題解析により発電電流Iごとに燃料電池スタック20の内部の電流密度分布が推定される。そして、推定された電流密度分布に基づいて燃料電池スタック20の異常部分が特定される。
【0066】
ここで、前述の燃料電池スタック20の第1のモデル60(
図5参照)を用いた、本ステップSB(電流スイング法)の実施例について説明する。
異常がない第1のモデル60に対して、故意に異常部分Fbを設けた。異常部分Fbは、前述の異常部分Fa同様、電極が除去された発電しない部分であり、正方形状である。異常部分Fbの大きさは10×10[mm]であり、その中心位置はx=45[mm]、y=25[mm]である。
【0067】
発電電流Iが5[A]の場合において、ステップSAにて補正された磁界を用いて逆問題解析を行った。その結果となる電流密度分布を
図9Cに示す。異常部分Fbの電流密度iは各位置の中で最も低い値となった。しかし、電流密度iはゼロにはなっておらず、異常か否かを判断することは困難となる。
【0068】
そこで、電流スイング法により判断する。
発電電流Iを3~5[A]の範囲で変化させた場合の結果であって、データ例として発電電流Iが3、4、5[A]のときの結果を、それぞれ
図9A~
図9Cに示す。
図9A~
図9Cは、それぞれ表3~表5に示す電流密度のデータのグラフである。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
このうち、特にy=25[mm]の位置にあるx=5、15、25、35、45[mm]の各位置における発電電流Iと電流密度iとの関係を
図10に示す。
異常部分を判断するため、前述の条件1及び条件2について検討すると、同
図10に示す通り、x=45[mm]、y=25[mm]の位置の傾きaの値は0.0133[cm
-2]であり、閾値s
1は、0.02[cm
-2]であった。また、切片bの絶対値は0.0430[A/cm
2]であり、閾値s
2は、0.02[A/cm
2]であった。
従って、傾きaが閾値s
1以下であり、切片bの絶対値が閾値s
2以上であるから、この位置にある部分は異常であると判断できる。
【0073】
他の各位置x=5、15、25、35[mm]については、全ての傾きaの値が閾値0.02[cm-2]を超え、かつ切片bの絶対値が閾値0.02[A/cm2]未満となった。従って、傾きaが閾値を超え、切片bの絶対値が閾値未満であるから、これらの位置にある部分ついては、正常であると判断できる。
このように、磁界から逆問題解析した電流密度の値がゼロにならない場合においても、電流スイング法を用いることにより正常部分と異常部分を判断できる。
【0074】
次に、
図11(A)に示す燃料電池スタック20の第2のモデル70を用いた、本ステップSB(電流スイング法)の実施例について説明する。
第2のモデル70は、3枚の膜電極接合体を積層したモデルであり、膜電極接合体が複数積層されている点で、第1のモデル60(
図5参照)と比較してより実際の燃料電池スタックに近いモデルである。
【0075】
第2のモデル70は、一組の集電板702、複数のセパレータ704、第1層目から第3層目まで上から順にセパレータ704を介して積層された第1の膜電極接合体706a、第2の膜電極接合体706b、及び第3の膜電極接合体706cを有している。第2のモデル70は、集電板702に形成された水素入口708a及び水素出口708b並びに空気入口710a及び空気出口710bを介してそれぞれ水素及び空気を供給することにより、電流取出端子712から電流を取り出すことができる。
【0076】
第1層目にある第1の膜電極接合体706aには、
図11(B)に示すように、中央部に正方形状の電極720が形成されている。電極720の寸法は、50[mm]×50[mm]である。
第2層目にある第2の膜電極接合体706b及び第3層目にある第3の膜電極接合体706cにも、第1の膜電極接合体70aと同様の電極が形成されている。
これら第1~第3の膜電極接合体706a、706b、706cについて、それぞれ、電極720の一頂点を原点Oとし、直交するx軸及びy軸からなる2次元の直交座標系を設定した。なお、各直交座標系の原点Oは、平面視して同じ位置にある。
【0077】
このような第2のモデル70において、第1~第3の膜電極接合体706a、706b、706cのうち、第1の膜電極接合体706aに対してのみ、故意に異常部分Fcを設けた。異常部分Fcは、電極が除去された発電しない部分であり、正方形状である。異常部分Fcの大きさは10×10[mm]であり、その中心位置はx=5[mm]、y=5[mm]である。
【0078】
異常部分Fcが形成された第2のモデル70を用い、ステップSBに従って異常部分を特定した。なお、発電電流は2.2[A]から3.0[A]まで変化させた。その際のデータ例の一部として、発電電流が3[A]のときの結果を
図12A~
図12Cに示す。また、第1の膜電極接合体706aについて、特にy=5[mm]の位置にあるx=5、15、25、35、45[mm]の各位置における発電電流Iと電流密度iとの関係を
図13に示す。
【0079】
第1の膜電極接合体706aについての異常部分を判断するため、前述のステップSB6における条件1及び条件2について検討すると、同
図13に示す通り、x=5[mm]、y=5[mm]の位置の傾きaの値は0.0000[cm
-2]であり、閾値s
1は、0.02[cm
-2]であった。また、切片bの絶対値は0.0260[A/cm
2]であり、閾値s
2は、0.012[A/cm
2]であった。
従って、傾きaが閾値s
1以下であり、切片bの絶対値が閾値s
2以上であるから、条件1及び条件2をそれぞれ満たし、この位置にある部分は異常であると判断された。
【0080】
他の各位置x=15、25、35、45[mm]については、全ての傾きaの値が閾値0.02[cm-2]を超え、かつ切片bの絶対値が閾値0.012[A/cm2]未満となった。従って、傾きaが閾値を超え、切片bの絶対値が閾値未満であるから、これらの位置にある部分ついては条件1及び条件2をいずれも満たさず、正常であると判断された。
第2の膜電極接合体706b及び第3の膜電極接合体706cの各位置についても条件1及び条件2をいずれも満たさず、正常であると判断された。
【0081】
すなわち、第1の膜電極接合体706aのx=5[mm]、y=5[mm]の位置についてのみ条件1及び条件2を共に満たすので、このx=5[mm]、y=5[mm]の位置が、異常部分Fcとして特定された。
【0082】
このように、燃料電池の発電性能の診断システム10によれば、発電電流を変化させた場合の燃料電池スタック20の内部の複数の電流密度分布を比較することにより、異常部分が高い精度で推定され、燃料電池の発電性能を診断できる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
燃料電池は、固体高分子形燃料電池に限定されるものではなく、任意の方式による燃料電池であってもよい。
前述の実施の形態にて説明した燃料電池の発電性能の診断方法においては、各ステップの実行順序は限定されるものではない。可能な場合には、各ステップの順番が入れ替えて実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
また、少なくとも一部のステップが燃料電池の発電性能を診断する診断者によって実行されてもよい。例えば、診断装置40が有する異常判断部404に代わって診断者自身がステップSB7を実行して異常部分を特定してもよい。
【0084】
補正装置が有する測定部は電源を内蔵していなくてもよく、燃料電池の発電性能の診断システムとは別に準備された外部電源を制御して、この外部電源を介して各締め付けボルトに電流を流すこともできる。
【符号の説明】
【0085】
10 燃料電池の発電性能の診断システム
20 燃料電池スタック
30 補正装置
40 診断装置
60 第1のモデル
70 第2のモデル
202 膜電極接合体
204 セパレータ
205 セル
208 締め付けボルト
301 磁気センサ
302 磁気センサ素子群
303 磁気センサ素子
304 測定部
306 計算部
308 比較部
310 補正部
402 推定部
404 異常判断部
602 電極
702 集電板
704 セパレータ
706a 第1の膜電極接合体
706b 第2の膜電極接合体
706c 第3の膜電極接合体
708a 水素入口
708b 水素出口
710a 空気入口
710b 空気出口
712 電流取出端子
720 電極
Fa、Fb、Fc 異常部分