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特許7010438仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム
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  • 特許-仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム 図1
  • 特許-仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/00 20120101AFI20220119BHJP
   G06N 3/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G06Q50/00 300
G06N3/00 140
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019147874
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028792
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2019-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510203809
【氏名又は名称】株式会社エクスプロア
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【合議体】
【審判長】渡邊 聡
【審判官】高瀬 勤
【審判官】松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-174642(JP,A)
【文献】特開2002-230213(JP,A)
【文献】特開平10-319831(JP,A)
【文献】特開2006-109923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
G06N3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想キャラクタの性格モデルを形成することのできる仮想キャラクタ装置と、
前記仮想キャラクタ装置と交信を行うことができる単数あるいは複数のユーザ端末と
を備えて構成され、
前記仮想キャラクタ装置はμCPU及びメモリを含むコンピュータ資源が、
有線接続部及び/もしくは無線接続部を有しネットワークを介して前記ユーザ端末と交信を行うことができる通信部と、
入力処理部と、
仮想キャラクタについての生得的性格付けとしての、特性5因子、及び年齢、性別、出身地に係る情報を内部初期設定する性格表現部と、
として機能するように構成され、
前記入力処理部は、
前記通信部を介して前記ユーザ端末から送信された前記仮想キャラクタの人格もしくは性格を形成するためのキャラクタ形成情報を受け付ける入力受付部と、
バーチャル空間における入力値を検出する仮想センサを通して得られた拍手及び/もしくは歓声の大きさもしくは回数を含むセンサ情報を仮想キャラ経験情報として変換/格納する仮想キャラクタ経験部と、
前記キャラクタ形成情報及び前記仮想キャラ経験情報を前記特性5因子に振り分ける入力振分部と
を備え、
前記性格表現部は、
前記入力振分部によって振り分けられた前記特性5因子を入力層とし、
前記特性5因子間にある相関係数を結合重みとして学習させ、該学習によって変更される学習済相関係数を、初期設定された前記生得的性格付けに対して与えることで前記ユーザ端末に係るファンからの入力情報に基づいて変化された新たな性格形成情報を得る学習手段と
を備えることを特徴とする仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項2】
前記ユーザ端末は、
メモリ部と入出力部とを備え、汎用パーソナルコンピュータと交信することができることを特徴とする請求項1記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項3】
前記ユーザ端末は、
メモリ部と、入力部と、表示部と、無線送受信部とを備えることを特徴とする請求項1もしくは2記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項4】
前記特性5因子として、神経症傾向と、外向性と、経験への開放性と、調和性と、誠実性とすることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項5】
前記学習部は、人工ニューラルネットワークによって学習を行うことを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項6】
前記人工ニューラルネットワークはディープラーニングによることを特徴とする請求項5項記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項7】
前記学習部は、ベイジアンネットワークによって学習を行うことを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【請求項8】
前記学習部は、論理的推論法によって学習を行うことを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項記載の仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえば企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムに係り、特に仮想キャラクタによるイベント企画および商品企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バーチャルアイドル(一種の仮想キャラクタ)がコンサートなどのイベントを行ったり、バーチャルアイドルに関連する商品が売り出されることにより人気を集めている。これらのイベントや商品は、バーチャルアイドルが発想したものではなく、企画者が発想・企画したものである。
【0003】
前記のように、バーチャルアイドルは仮想の人格を有していることにはなっているが、各種のイベントを経験することにより、自らその経験則やデータを基に性格や人格を発展させていくわけではない。
【0004】
また、企画者が発想した企画は、バーチャルアイドルの過去のイベントの反響やファンの要望を考慮して企画者が作成するものであり、どうしても企画者の好みや傾向が混在してしまい、バーチャルアイドルの過去の経験やファンの要望を正しく反映したものとはずれが生じる場合が多い。
【0005】
特許文献1では、コミニュケーションシステムにおいて、仮想キャラクタに略等しい疑似人格を想定し、問い合わせをしてきたユーザに、そのユーザに対応した特定の疑似人格を表現した文体にて応答するシステム発明を開示している。ユーザにとっては、あたかも疑似人格が考えてユーザに話しかけているようではあるが、実際にはユーザからの問い合わせに含まれるキーワードから、あらかじめ決められたユーザ辞書中の言葉を選択して応答するようプログラミングされているだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-54781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述してきたように、これまでのバーチャルアイドルがコンサートなどのイベントを行ったり、バーチャルアイドルに関連する商品が売り出されることに関連する技術では、バーチャルアイドルの名を借りて企画者が企画をするというところに本質が存在し、この殻を破るものではなかった。本願は、こうした点に鑑みて、バーチャルアイドルの名を借りて企画者が企画をするというのではなく、バーチャルアイドルのような仮想キャラクタが自ら各種データを収集し、それらのデータを基にディープラーニングを行い、自らの性格や嗜好を発展させ、自らイベント企画や商品企画を実行させる、仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムを提供することを課題とする。
【0008】
また、仮想キャラクタに関係するファンやユーザからの感想、要望等を収集するための方策を考案することも本願の別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような各課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る仮想キャラクタによる各種企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムは、仮想キャラクタの性格モデルを形成することのできる仮想キャラクタ装置と、前記仮想キャラクタ装置と交信を行うことができる単数あるいは複数のユーザ端末とを備えて構成される。
【0010】
本発明の第2の態様として、上記第1の態様において、前記仮想キャラクタ装置は、通信部と、入力処理部と、仮想キャラクタを内部設定する性格表現部と、ファンを対象にした各種企画出力提案を行う出力処理部とを備えて構成されてもよい。上記ユーザ端末は、インターネットのようなSNSを介して仮想キャラクタ装置と交信し、ユーザの感想や要望を仮想キャラクタ装置に伝える。また、ユーザ端末は、ユーザのプライバシーを保つため暗号化電子キーによって特定ユーザによってのみ使用ができる。
【0011】
本発明の第3の態様として、上記第1もしくは第2の態様において、前記ユーザ端末は、メモリ部と入出力部とを備え、汎用パーソナルコンピュータと交信することができるものであってもよい。
【0012】
本発明の第4の態様として、上記第1もしくは第2の態様において、前記ユーザ端末は、メモリ部と、入力部と、表示部と、無線送受信部とを備えてもよい。
【0013】
本発明の第5の態様として、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記入力処理部は仮想キャラクタに係る様々な入力値を検出する仮想センサを少なくとも備え、前記入力処理部及び前記性格表現部において、ユーザからの入力および仮想センサからの入力を複数の因子に分類して区分けし、性格を表現することとしてもよい。
【0014】
本発明の第6の態様として、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記入力処理部は、 仮想キャラクタの人格や性格を形成するためのユーザからの入力情報を前記通信部を介して受け付ける入力受付部と、 前記仮想キャラクタに係る様々な入力値を検出する仮想センサと、前記仮想センサを通して得られた情報を前記仮想キャラクタに係る経験情報として変換/格納する仮想キャラ経験部と、前記入力受付部にて受け付けたユーザからの入力情報並びに前記仮想センサを介して受け付けた前記仮想キャラクタに係る経験情報を複数の因子に振り分ける入力振り分け部とを少なくとも備えるようにしてもよい。
【0015】
本発明の第7の態様として、上記第5もしくは第6の態様において、前記複数の因子として、神経症傾向と、外向性と、経験への開放性と、調和性と、誠実性の特性5因子としてもよい。
【0016】
本発明の第8の態様として、上記第2の態様において、前記性格表現部において、生得的性格付けを初期設定するようにしてもよい。
【0017】
本発明の第9の態様として、上記第5~第7のいずれかの態様において、前記性格表現部において、ユーザからの入力および前記仮想センサからの入力情報により学習を行い、仮想キャラクタの性格を変更するようにしてもよい。
【0018】
本発明の第10の態様として、上記第2の態様において、前記出力処理部に対して、運営者からの指示或いはユーザからの要望によって企画を作成出力するようにしてもよい。
【0019】
ユーザ端末の一つの態様としては、ユーザがポケットに入れて簡単に持ち運べるよう小型化したものがあり、この態様によれば、ユーザの移動先のパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と略記することもある。)の汎用接続端子に接続し、PCのキーボードの様な入力部によりユーザの感想や要望を、SNSを介して仮想キャラクタ装置に伝えることができる。
【0020】
ユーザ端末の別の態様としては、携帯電話程度に大型化し、小型の表示器と簡単なキーボードあるいは画面表示のタッチキーとSNS接続用無線送受信装置とを有するものがあり、この態様によれば、PCを使用せずユーザがどこでも仮想キャラクタ―にアクセスできるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一の実施態様に係る仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムによれば、従来行われていたバーチャルアイドルの企画の様に運営会社の企画者が企画するものではなく、仮想キャラクタに集まる各種の情報から、ユーザの希望に最も適合した企画をAIによって案出することができる。
【0022】
また、従来の企画者が介在した企画では特定人が介在せざるを得なかったことに起因する企画者の思い込みや勘違いを、上記構成を備える本願の各態様によれば排除でき、企画者が気付かなかったアイデアであってもこれを盛り込むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムの構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムの仮想キャラクタ装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る仮想キャラクタによる企画作成システムを説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムの構成を示す概略図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システムの仮想キャラクタ装置の機能構成図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る仮想キャラクタによる企画作成システム20は、仮想キャラクタ装置1と、インターネットのようなSNS11を介して仮想キャラクタ装置1と交信を行うことができるユーザ端末3,4とを有して構成される。
【0026】
仮想キャラクタ装置1は、通信部5と入力処理部6と性格表現部7と出力処理部8とを有して構成される。性格表現部7は仮想キャラクタを内部設定する。仮想キャラクタ装置1として、さらに出力処理部8を有することで、ファンを対象にした製品の企画やイベントの企画などの各種企画出力(提案)2を行う。通信部5は、有線接続部9と、SNS11に接続可能なる無線接続部10とを有し、インターネットのようなSNS11を介してユーザやユーザ端末3,4と交信を行うことができる。ユーザ端末3,4は、暗号化電子キーによって個人セキュリティが保たれており、所有者以外の他人がその内容を調べたり、仮想キャラクタ装置1へのアクセスを行うことはできない。
【0027】
ユーザ端末3は、持ち歩き(型)アイドルとも称するもので、たとえばUSBメモリースティックのような小型形状をした情報媒体にて実現することができるものであり、大容量メモリ回路及び入出力回路を主体(図示省略)に内蔵している。ユーザ端末3は、SNS11に接続可能な汎用PC12に接続されることで、ユーザ(利用者)がSNS11を介して仮想キャラクタ装置1と交信したり、仮想キャラクタに対するユーザの感想や要望を伝えたりすることができる。またユーザ端末3が内蔵する大容量メモリ回路には、仮想キャラクタに対するユーザの感想や要望を記録できると共にユーザの行動も記録することができる。
【0028】
ユーザ端末4は、携帯電話程度の大きさであり、たとえばユーザ端末3に加えて、キーボード或いはキーパッドのような入力部13と、LCDのような表示部14と、SNS11へ接続できる無線接続部15と、(及び図では有線接続部と)を備えている。
【0029】
仮想キャラクタ装置1を構成する通信部5と入力処理部6と性格表現部7と出力処理部8とは、たとえばμCPU及びメモリを主体とした通常のパーソナルコンピュータシステム或いはこれに相当するものによって実現される。
【0030】
入力処理部6は、図2に示されるように、たとえばバーチャルアイドルのような仮想キャラクタの人格や性格を形成するためのユーザからの情報を通信部5を介して受け付ける入力受付部6a、たとえばバーチャルアイドルがバーチャル空間でコンサートなどを行ったときなどに様々な入力値を検出する仮想センサ(バーチャルセンサ)6b、仮想センサ(バーチャルセンサ)6bを通して得られた拍手やウケ(歓声)の大きさや回数などの情報を仮想キャラの経験情報として変換/格納する仮想キャラの経験部6c、仮想キャラクタ運営者からの指示情報を受け付ける指示受付部6d、入力受付部6aにて受け付けたユーザからの入力並びに仮想センサ6bを介して受け付けた仮想キャラの経験情報を複数の因子に振り分ける入力振り分け部6e、入力(文)の形態素解析などを行いファンの要望をトリガーに変換する要望解析部6fが、たとえば同図のように接続されて構成されている。
【0031】
性格表現部7には、初期状態において、生得的性格付け(例えば仮想キャラクタの年齢、性別、出身地など)に対応した初期設定を行っておくことができる。
【0032】
そして、仮想キャラクタ装置1は、性格表現部7に仮想キャラクタの人格及び性格を規定する後述する特性5因子モデルを構築することにより、仮想キャラクタの性格モデルを形成する。なお、前述した初期状態において、生得的に決定される性格に対応するために特性5因子の初期設定を行う。この初期設定項目には仮想キャラクタの年齢、性別、出身地などを含み、これらの入力をフロントエンドプロセッサに通すことにより、各特性5因子に含まれる要素に変換する。
【0033】
性格表現部7に仮想キャラクタの性格モデルを規定する後述する特性5因子モデルを構築することとしたのは以下の理由による。
【0034】
仮想キャラクタの性格モデルとして、人格と性格(英語では共にpersonality)は古くから研究され(例えばカント、ユンク、フロイトなど)、現在でも心理学者を中心に研究が行われている。これらの中には性格モデルの研究が含まれており、現在ではビッグファイブと呼ばれる特性5因子モデルが最も妥当であるとされる。
【0035】
特性5因子モデルでは、次の5つの要素が定義される。
N:神経症傾向(Neuroticism):落ち込みやすいなど感情面・情緒面で不安定な傾向のことであり、環境刺激やストレッサ―に対する敏感さ、不安や緊張の強さを表す要素である。
E:外向性(Extraversion):興味関心が外界に向けられる傾向のことであり、社交性や活動性、積極性を表す要素である。
O:経験への開放性(Openness to experience):知的、美的、文化的に新しい経験に開放的な傾向のことであり、知的好奇心強さ、創造力、新しいものへの親和性を表す要素である。
A:調和性(Agreeableness):バランスを取り協調的な行動をとる傾向のことであり、利他性や共感性、優しさを表す要素である。協調性(A)とも称される。
C:誠実性(Conscientiousness):責任感があり勤勉で真面目な傾向のことであり、自己統制力や達成への意志、真面目さ、責任感の強さを表す要素である。統制性(C)とも称される。
以上の5つの要素N、E、O、A、Cを、人格と性格を特徴付ける特性5因子として捉える。
ビッグファイブというこの特性5因子モデルは、ゴールドバーグ,L.Rが提唱したパーソナイティの特性論で、人間の持つ様々な性格は5つの要素の組み合わせで構成されるとするものであり、文化差・民族差を超えた普遍性を持つものとされている。
【0036】
仮想キャラクタ装置1は、通信部5から入力されるユーザからの様々な情報(仮想キャラクタに対するユーザの感想や要望、ユーザの行動)を入力処理部6を介して性格表現部7の特性5因子モデルに振り分けることによって、経験で学習する後天的な性格付けに対応するように修正する。
【0037】
仮想キャラクタによる企画作成システム20では、性格表現部7に特性5因子モデルを構築し、AIによる学習を行わせる。これによって、ファンからの入力情報に基づいて、仮想キャラクタの人格及び/もしくは性格を変化させることを基本とする。
【0038】
性格表現部7に形成する仮想キャラクタのイベント企画やファッションの決定などを仮想キャラクタ装置1が自動的に自ら発案して行うことは、実用化されているAIの枠組みを超えてしまう。そこで初期段階では仮想キャラクタ運営者がイベント企画などを作成するためのトリガーを与える。仮想キャラクタ運営者からの指示は、通信部5を介して入力処理部6の運営者からの指示受付部6dを介して出力処理部8のトリガー部8bの出力のタイミングを学習させることによって、AIが自律的に提案するようになるメカニズムとする。
【0039】
性格表現部7は、上記ビッグファイブの考え方に沿って、N:神経症傾向(N)、外向性(E)、開放性(O)、協調性(A)、統制性(C)の特性5因子で性格モデルの中核を成すよう構成される。各因子内にはその因子に含まれる要素(例えばNの神経症傾向であれば、怒りやすい、涙もろい、冷静沈着などのN因子を表現する要素)とその強度が複数表現されている。図2では性格表現部7の特性5因子は、因子間の結合が記されていないが、相互に結合していても良い。その場合には結合重みを学習によって変更させることが考えられる。
【0040】
上記各因子内の要素間には相関係数が保存されており、この相関係数を結合強度とみなして学習によって変更させる。こうすることで、外部情報によって性格が育成され、成長や変化を生むことができる。
【0041】
上記説明では疑似キャラクタの人格や性格の表現方法として特性5因子モデルについて説明したが、仮想キャラクタの性格や人格を表す因子は色々考えられ、疑似キャラクタの性格や人格を表現する性格表現部7を有することが本発明の一実施形態における最も重要な部分である。なお、性格や人格の学習はDeep Learning等のArtificial Neural Network(ANN)で行っても良いが、Bayesianネットワーク、更には伝統的なAI(If~Then~Elseといった論理的推論法)など、他の手法を用いても良い。
【0042】
一方、アイドルファンのようなユーザから通信部5を介して入力されてくる様々な情報(バーチャルアイドルの服装に対する感想や歌の好みなど)を入力処理部6の入力振り分け部6eで事前解析してN,E,O,A,Cの特性5因子に振り分け、性格表現部7へ入力する。入力処理部6と性格表現部7との結合強度は学習等によって変化させる方法もある。さらに、バーチャルアイドルがバーチャル空間でコンサートなどを行ったときには、様々な仮想センサ(バーチャルセンサ)6bを通して、拍手やウケ(歓声)の大きさや回数などの情報を仮想キャラの経験部6cとして入力振り分け部6eに入力し、性格形成に影響を与えるようにする。なお、バーチャルアイドル運用の初期においてはバーチャルアイドル運営者がアイドルコンサートなどを行い、その様子をバーチャルアイドルが上記の様に情報として収集、学習(例えばディープラーニング)を行う。
【0043】
出力処理部8は出力統合部8aと、例えば6個の企画決定処理要素8c~8hから構成される。出力統合部8aは、性格表現部7に記憶されている情報に基づいて企画出力のトリガー内容を参照して企画とすべき内容を出力し、各企画処理要素8c~8hへ送る。企画を出力するトリガーとしては2種類を考える。第1はバーチャルアイドル運営組織、運営者からの指示である。第2はバーチャルアイドル自身によるトリガーである。しかし、これを行うためにはファンからの要望など何らかのトリガー発生のための要素が必要であり、ここでは入力(文)の形態素解析などを行い、ファンの要望をトリガーに変換する(入力処理部6の要望解析部6f)。こうして構成された企画や決定した服装情報等を次の段階へ出力し、具体的な姿(目に見える形)にすることができる。
【0044】
仮想キャラクタ装置1は、例えばバーチャルアイドルのような仮想キャラクタの人格や性格を形成するための情報を通信部5を介して入力処理部6のユーザからの入力受付部6aと仮想センサ6bにおいて受け付ける。バーチャルアイドルのファンのようなユーザから各種情報に基づいて形成する。入力処理部6は、バーチャルアイドルのような仮想キャラクタの人格や性格を形成するためのユーザから各種情報(ユーザからの入力および仮想キャラの経験)を、ユーザからの入力受付部6aにて受け付け、並びに仮想センサ6bを介して仮想キャラの経験部6cにて受け付け、受け付けたユーザからの入力および仮想キャラの経験を入力振り分け部6eを介して性格表現部7に入力して複数の因子に振り分け、これによりバーチャルアイドルのような仮想キャラクタの人格や性格を複数の因子に振り分けた状態に記憶・形成し、さらに性格表現部7で振り分けた人格・性格を形成している複数の因子に基づいて仮想キャラクタの服装・ヘアースタイル・バッグなどのファッションを決定する。
【0045】
上記の説明では、仮想キャラクタとしてバーチャルアイドルを例に挙げて、仮想キャラクタによる企画の前段階としての仮想キャラクタ作成システム20を説明したが、下記に述べる様々な分野への広い応用は全て本発明の発明思想に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の利用・応用について、例えば仮想営業マンに応用すれば、客先の情報や要望、クレーム等の情報をデータとして収集し、次の新製品企画を出力することが可能となり、商業や製造業分野への応用が開ける。
【0047】
さらに、仮想俳優や仮想演出家に応用すれば、演技や演劇の企画を実際の俳優や演出家への指導・育成に利用することができる等、芸能・芸術分野へも応用可能性を広げることが可能となるものと考えられる。この様に、本発明は産業、商業、流通などの広い分野への利用可能性が期待できるものである。
【符号の説明】
【0048】
1…仮想キャラクタ装置、2…企画出力、3、4…ユーザ端末、5…通信部、6…入力処理部、7…性格表現部、8…出力処理部、10…無線接続部、11…SNS、12…汎用PC、13…入力部、14…表示部、15…無線接続部
図1
図2