(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】シリンダ及び昇降装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/16 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
F15B15/16
(21)【出願番号】P 2020050081
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】515244759
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・クリエイト
(73)【特許権者】
【識別番号】399117567
【氏名又は名称】堀内 政晴
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 静夫
(72)【発明者】
【氏名】堀内 政晴
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能なケーシングを備えるシリンダであって、
前記ケーシングは、テレスコープ状に連結された複数の筒体を備え、
前記複数の筒体のうちの最内側の筒体には、該筒体の内部空間を
略塞ぐように塞ぎ体が設けられており、
前記複数の筒体のうちの最外側の筒体には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第1キャップが設けられており、
前記ケーシング内には、前記塞ぎ体と前記第1キャップとで囲まれる容積可変空間が形成されており、
前記容積可変空間に流体を供給することで前記ケーシングが伸長し、前記容積可変空間から流体を排出することで前記ケーシングが短縮することを特徴とするシリンダ。
【請求項2】
伸縮可能なケーシングを備えるシリンダであって、
前記ケーシングは、テレスコープ状に連結された複数の筒体を備え、
前記複数の筒体のうちの最内側の筒体には、該筒体の内部空間を塞ぐように塞ぎ体が設けられており、
前記複数の筒体のうちの最外側の筒体には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第1キャップが設けられており、
前記ケーシング内には、前記塞ぎ体と前記第1キャップとで囲まれる容積可変空間が形成されており、
前記容積可変空間に流体を供給することで前記ケーシングが伸長し、前記容積可変空間から流体を排出することで前記ケーシングが短縮することを特徴とするシリンダ。
【請求項3】
前記塞ぎ体は、前記最内側の筒体において前記第1キャップに近い側の軸端部の内部空間を
略塞ぐように設けられている請求項1に記載のシリンダ。
【請求項4】
前記塞ぎ体は、前記最内側の筒体において前記第1キャップに近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている請求項
2に記載のシリンダ。
【請求項5】
前記流体は、液体であり、
前記塞ぎ体には、前記容積可変空間に液体を供給する際に前記容積可変空間内に溜まる液体に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁が設けられている請求項
2又は
4に記載のシリンダ。
【請求項6】
前記機能弁は、前記塞ぎ体の前記容積可変空間を形成する面側に配置されている請求項
5に記載のシリンダ。
【請求項7】
前記最内側の筒体には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第2キャップが設けられており、
前記ケーシング内には、前記塞ぎ体と前記第2キャップとで囲まれて前記容積可変空間と連通する容積不変空間が形成されており、
前記流体は、液体であり、
前記第2キャップには、前記容積可変空間に液体を供給する際に前記容積不変空間内に溜まる液体に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁が設けられている請求項1又は
3に記載のシリンダ。
【請求項8】
前記機能弁は、前記第2キャップの前記容積不変空間を形成する面側に配置されている請求項
7に記載のシリンダ。
【請求項9】
前記複数の筒体のうちの内外に隣り合う内側及び外側の筒体において、前記内側の筒体の外周面と前記外側の筒体の内周面との間には、シール材により仕切られた空間が形成されており、
前記外側の筒体側には、前記空間を外部に開放する開口部が設けられており、
前記容積可変空間から流体を排出する際に、前記開口部を介して前記空間に流体を流入させる請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のシリンダ。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のシリンダを備えることを特徴とする昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ及び昇降装置に関し、更に詳しくは、伸縮可能なケーシングを備えるシリンダ及びこれを備える昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリンダとして、伸縮可能なケーシングを備えるものが一般に知られている。(例えば、特許文献1~6等を参照)。これら各特許文献1~6には、ケーシングは、テレスコープ状に連結された複数の筒体を備え、ケーシング内に流体を供給することでケーシングが伸長し、ケーシング内から流体を排出することでケーシングが短縮することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4294572号明細書
【文献】特開昭57-047006号公報
【文献】米国特許第6450083号明細書
【文献】実願昭50-071490号(実開昭51-151887号)のマイクロフィルム
【文献】特開2002-235709号公報
【文献】実願昭63-162370号(実開平02-084005号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のシリンダでは、ケーシングを伸長させる際に、比較的大きな容積である最内側の筒体内に流体が満杯に満たされてから最内側の筒体が他の筒体に対して移動し始める。そのため、ケーシングの伸長動作に時間がかかり、また作動のための流体量が多くなる。
さらに、ケーシングを短縮させる際に、最内側の筒体に対して外部から大きな負荷がかからない場合、ケーシングが短縮し難い又はケーシングの短縮動作に時間がかかる。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ケーシングの伸長動作を速めることができるとともに、作動のための流体量を低減できるシリンダ及びこれを備える昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、伸縮可能なケーシングを備えるシリンダであって、前記ケーシングは、テレスコープ状に連結された複数の筒体を備え、前記複数の筒体のうちの最内側の筒体には、該筒体の内部空間を塞ぐように塞ぎ体が設けられており、前記複数の筒体のうちの最外側の筒体には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第1キャップが設けられており、前記ケーシング内には、前記塞ぎ体と前記第1キャップとで囲まれる容積可変空間が形成されており、前記容積可変空間に流体を供給することで前記ケーシングが伸長し、前記容積可変空間から流体を排出することで前記ケーシングが短縮することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記塞ぎ体は、前記最内側の筒体において前記第1キャップに近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記流体は、液体であり、前記塞ぎ体には、前記容積可変空間に液体を供給する際に前記容積可変空間内に溜まる液体に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁が設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記機能弁は、前記塞ぎ体の前記容積可変空間を形成する面側に配置されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記最内側の筒体には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第2キャップが設けられており、前記ケーシング内には、前記塞ぎ体と前記第2キャップとで囲まれて前記容積可変空間と連通する容積不変空間が形成されており、前記流体は、液体であり、前記第2キャップには、前記容積可変空間に液体を供給する際に前記容積不変空間内に溜まる液体に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁が設けられていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記機能弁は、前記第2キャップの前記容積不変空間を形成する面側に配置されていることを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記複数の筒体のうちの内外に隣り合う内側及び外側の筒体において、前記内側の筒体の外周面と前記外側の筒体の内周面との間には、シール材により空間が形成されており、前記外側の筒体側には、前記空間を外部に開放する開口部が設けられており、前記容積可変空間から流体を排出する際に、前記開口部を介して前記空間に流体を流入させることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項8に記載の発明は、昇降装置であって、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシリンダを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシリンダによると、ケーシングは、テレスコープ状に連結された複数の筒体を備え、複数の筒体のうちの最内側の筒体には、該筒体の内部空間を塞ぐように塞ぎ体が設けられており、複数の筒体のうちの最外側の筒体には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第1キャップが設けられている。そして、ケーシング内には、塞ぎ体と第1キャップとで囲まれる容積可変空間が形成されており、容積可変空間に流体を供給することでケーシングが伸長し、容積可変空間から流体を排出することでケーシングが短縮する。これにより、ケーシングを伸長させる際に、短縮状態で比較的小さな容積である容積可変空間に流体が満杯に満たされることで最内側の筒体が他の筒体に対して移動し始める。そのため、ケーシングの伸長動作を速めることができるとともに、作動のための流体量を低減できる。さらに、ケーシングを短縮させる際に、最内側の筒体に対して外部から大きな負荷がかからない場合であっても、材質や大きさ等の設定により塞ぎ体を重くすることで、ケーシングを円滑に且つ速く短縮させることができる。
【0008】
また、前記塞ぎ体が、前記最内側の筒体において前記第1キャップに近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている場合は、ケーシングの伸長動作を更に速めることができるとともに、作動のための流体量を更に低減できる。
【0009】
また、前記流体が、液体であり、前記塞ぎ体に、機能弁が設けられている場合は、ケーシングを伸長させる際に、機能弁により容積可変空間内に溜まる液体に対して空気が分離されて外部へ排気されるため、ほぼ液体のみによる加圧となり、ケーシングの伸長動作が安定的に行われる。また、最内側の筒体内に機能弁を容易に取り付けることができる。さらに、最内側の筒体の軸端開口を塞ぐキャップに機能弁を備えるものに比べて、キャップの厚さをコンパクトにでき、短縮状態のケーシングの高さを低くできる。
【0010】
また、前記機能弁が、前記塞ぎ体の前記容積可変空間を形成する面側に配置されている場合は、機能弁の取付性が更に高められる。
【0011】
さらに、前記最内側の筒体に、第2キャップが設けられており、前記ケーシング内に、容積不変空間が形成されており、前記流体が、液体であり、前記第2キャップに、機能弁が設けられている場合は、ケーシングを伸長させる際に、機能弁により容積不変空間内に溜まる液体に対して空気が分離されて外部へ排気されるため、ほぼ液体のみによる加圧となり、ケーシングの伸長動作が安定的に行われる。さらに、ケーシングの伸長時に、ケーシング内の容積可変空間及び容積不変空間にわたって液体を充満させることができる。
【0012】
さらに、前記機能弁が、前記第2キャップの前記容積不変空間を形成する面側に配置されている場合は、機能弁が第2キャップの外表面に突出せず、第2キャップを有効利用できる。例えば、シリンダを昇降装置として使用する際に、昇降装置を構成するテーブルに対して第2キャップを効果的に連結できる。
【0013】
さらに、前記内側の筒体の外周面と前記外側の筒体の内周面との間に、シール材により仕切られた空間が形成されており、前記外側の筒体側に、前記空間を外部に開放する開口部が設けられており、前記容積可変空間から流体を排出する際に、前記開口部を介して前記空間に流体を流入させる場合は、ケーシングにかかる負荷に関わらず、自重によりケーシングを円滑に且つ速く短縮させることができる。
【0014】
本発明の昇降装置によると、上述のシリンダを備えるので、シリンダの作動により対象物を好適に昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施例1に係る水圧シリンダ(ケーシングの短縮状態)の縦断面図である。
【
図2】上記水圧シリンダ(ケーシングの伸長状態)の縦断面図である。
【
図3】上記水圧シリンダの斜視図であり、(a)はケーシングの短縮状態を示し、(b)はケーシングの伸長状態を示す。
【
図4】上記水圧シリンダの作用(ケーシングの伸長動作)を説明するための説明図である。
【
図5】上記水圧シリンダの作用(ケーシングの伸長動作)を説明するための説明図である。
【
図6】上記水圧シリンダの作用(ケーシングの伸長動作)を説明するための説明図であり、(a)は機能弁によるエア抜き状態を示し、(b)は機能弁によるエア抜きの完了状態を示す。
【
図7】実施例1の変形例1に係る水圧シリンダの縦断面図である。
【
図8】実施例1の変形例2に係る水圧シリンダの要部の縦断面図である。
【
図9】実施例2に係る水圧シリンダ(ケーシングの短縮状態)の縦断面図である。
【
図10】上記水圧シリンダの作用(ケーシングの伸長動作)を説明するための説明図である。
【
図11】上記水圧シリンダの作用(ケーシングの伸長動作)を説明するための説明図である。
【
図12】実施例2の変形例1に係る水圧シリンダの縦断面図である。
【
図13】実施例2の変形例2に係る水圧シリンダの縦断面図であり、(a)はケーシングの短縮状態を示し、(b)はケーシングの伸長状態を示す。
【
図14】上記水圧シリンダの用途(物品昇降装置)を説明するための説明図であり、(a)は物品の下降状態を示し、(b)は物品の上昇状態を示す。
【
図15】上記水圧シリンダの他の用途(物品昇降装置)を説明するための説明図であり、(a)は物品の下降状態を示し、(b)は物品の上昇状態を示す。
【
図16】上記水圧シリンダの更なる他の用途(入浴補助装置)を説明するための説明図である。
【
図17】他の形態に係る水圧シリンダの要部断面図である。
【
図18】上記水圧シリンダを構成する筒体の要部斜視図である。
【
図19】更なる他の形態に係る水圧シリンダの要部断面図であり、(a)はリング部材に開口部を構成する穴が形成された形態を示し、(b)はリング部材に開口部を構成する溝が形成された形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0017】
<シリンダ>
本実施形態に係るシリンダは、例えば、
図1、
図2及び
図9に示すように、伸縮可能なケーシング(2)を備えるシリンダ(1A、1B)であって、ケーシング(2)は、テレスコープ状に連結された複数の筒体(3、4、5)を備え、複数の筒体(3~5)のうちの最内側の筒体(3)には、該筒体の内部空間を塞ぐように塞ぎ体(18、34、35、39)が設けられており、複数の筒体(3~5)のうちの最外側の筒体(5)には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第1キャップ(7)が設けられている。そして、ケーシング(2)内には、塞ぎ体(18、34、35、39)と第1キャップ(7)とで囲まれる容積可変空間(S1)が形成されており、容積可変空間(S1)に流体を供給することでケーシング(2)が伸長し、容積可変空間(S1)から流体を排出することでケーシング(2)が短縮する。
なお、上記流体の種類は特に問わず、液体であっても、気体であってもよい。この流体は、利便性の観点から、水(特に、水道水)であることが好ましい。
【0018】
上記筒体(3~5)の材質、大きさ、形状、個数等は特に問わない。この筒体(3~5)は、例えば、合成樹脂又は金属により形成されていることができる。この合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、繊維強化樹脂等が挙げられる。これらのうち、成形性、剛性、価格等の点でポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂が好ましく、特にポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。また、金属としては、例えば、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。
【0019】
上記第1キャップ(7)の材質、大きさ、形状等は特に問わない。この第1キャップ(7)は、例えば、合成樹脂又は金属により形成されていることができる。この合成樹脂又は金属としては、例えば、筒体(3~5)の材質で例示した種類が挙げられる。さらに、第1キャップ(7)には、例えば、容積可変空間(S1)に対して流体を供給及び排出するためのポート(21)が形成されていることができる。
【0020】
上記塞ぎ体(18、34、35、39)の配置場所、材質、大きさ、形状等は特に問わない。この塞ぎ体(18、34、35、39)は、例えば、全部又は一部が最内側の筒体(3)の内部空間を塞ぐ形状に形成されていることができる。また、塞ぎ体(18、34、35、39)は、例えば、
図1及び
図9等に示すように、最内側の筒体(3)において第1キャップ(7)に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられていることができる。また、塞ぎ体(18、34、35、39)は、例えば、合成樹脂又は金属により形成されていることができる。この合成樹脂又は金属としては、例えば、筒体(3~5)の材質で例示した種類が挙げられる。
【0021】
ここで、ケーシング(2)を短縮させる際に、最内側の筒体(3)に対して外部から大きな負荷がかからない場合、材質や大きさ等の設定により塞ぎ体(18、35)を重くすることで、ケーシング(2)を円滑に且つ速く短縮させることができる。この場合、塞ぎ体(18、35)の軸方向長さは、例えば、
図1等に示すように、最内側の筒体(3)の軸方向長さの60%以上(好ましくは70%以上)であることができる。
一方、ケーシング(2)を短縮させる際に、最内側の筒体(3)に対して外部から大きな負荷がかかる場合、材質や大きさ等の設定により塞ぎ体(34、39)を軽くしてシリンダ(1A、1B)の軽量化を図ることができる。この場合、塞ぎ体(34、39)の軸方向長さは、例えば、
図7等に示すように、最内側の筒体(3)の軸方向長さの50%以下(好ましくは40%以下)であることができる。
【0022】
本実施形態に係るシリンダとしては、例えば、
図9等に示すように、上記流体は、液体であり、塞ぎ体(35、39)には、容積可変空間(S1)に液体を供給する際に容積可変空間(S1)内に溜まる液体に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁(27)が設けられている形態が挙げられる。この機能弁(27)は、例えば、塞ぎ体(35、39)の容積可変空間(S1)を形成する面側に配置されていることができる。また、機能弁(27)は、例えば、容積可変空間(S1)から液体を排出する際に容積可変空間(S1)内に外部の空気を吸気することができる。なお、機能弁(27)の種類等は特に問わず、例えば、フロート式、ベローズ式等が挙げられる。
上述の形態では、例えば、塞ぎ体(35、39)には、機能弁(27)を介して容積可変空間(S1)と容積不変空間(S2)とを連通する連通路(36)が形成されており、ケーシング(2)には、容積不変空間(S2)と外気とを連通する排気路(37)が形成されていることができる。
【0023】
本実施形態に係るシリンダとしては、例えば、
図1等に示すように、上記最内側の筒体(3)には、該筒体の軸端開口を塞ぐように第2キャップ(6)が設けられており、ケーシング(2)内には、塞ぎ体(18、34)と第2キャップ(6)とで囲まれて容積可変空間(S1)と連通する容積不変空間(S2)が形成されており、流体は、液体であり、第2キャップ(6)には、容積可変空間(S1)に液体を供給する際に容積不変空間(S2)内に溜まる液体に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁(27)が設けられている形態が挙げられる。この機能弁(27)は、例えば、第2キャップ(6)の容積不変空間(S2)を形成する面側に配置されていることができる。また、機能弁(27)は、例えば、容積可変空間(S1)から液体を排出する際に容積不変空間(S2)内に外部の空気を吸気することができる。なお、機能弁(27)の種類等は特に問わず、例えば、フロート式、ベローズ式等が挙げられる。
上述の形態では、例えば、第2キャップ(6)には、機能弁(27)を介して容積不変空間(S2)と外気とを連通する排気路(28)が形成されていることができる。
【0024】
上記第2キャップ(6)の材質、大きさ、形状等は特に問わない。この第2キャップ(6)は、例えば、合成樹脂又は金属により形成されていることができる。この合成樹脂又は金属としては、例えば、筒体(3~5)の材質で例示した種類が挙げられる。
【0025】
本実施形態に係るシリンダとしては、例えば、
図9等に示すように、複数の筒体のうちの内外に隣り合う内側及び外側の筒体において、内側の筒体(3(4))の外周面と外側の筒体(4(5))の内周面との間には、シール材(11、13)により仕切られた空間(S3)が形成されており、外側の筒体(4(5))側には、空間(S3)を外部に開放する開口部(16)が設けられており、容積可変空間(S1)から流体を排出する際に、開口部(16)を介して空間(S3)に流体を流入させる形態が挙げられる。この場合、例えば、容積可変空間(S1)に流体を供給する際に、開口部(16)を介して空間(S3)内の流体を外部に流出させることができる。
なお、上記流体の種類は特に問わないが、例えば、容積可変空間(S1)に供給される流体と同じ種類であることができる。
【0026】
なお、上記シリンダ(1A、1B)の用途、設置形態等は特に問わない。このシリンダの用途としては、例えば、家庭用入浴リフト、施設向け入浴補助リフト、昇降式車椅子の動力、食品加工工場・食品施設・給食センター等のリフトや設備、ガソリンスタンド等の昇降機、ペット用昇降テーブル、生鮮食料品を取り扱う店舗や加工場等に利用する昇降装置、果樹園・農家の作業台の昇降リフト機器、キャンプ場・屋外施設等の電源入手の困難な場所での荷物昇降リフト、家庭用簡易作業台の昇降、便座・流台・洗面台等の昇降装置、有料駐車場のフラップ昇降装置、プール床深さの上下駆動装置、屋外・水中で使用する昇降装置、停電時の非常用動力装置、防爆仕様(電気・油が使えない設備・施設・部屋)での動力、災害時のジャッキ(屋外、水中での使用)、津波・洪水時の水圧を利用したジャッキ・昇降装置、住宅・施設での段差解消装置、屋外・屋内での作業台の昇降やパレット昇降装置、自動車用ジャッキ、昇降式洗車台、防爆装置(LP・プロパンガス、石油類)用ダンパー等の駆動、車両止めポール・柵等の昇降装置、テーブル・作業台・カウンター等の昇降装置、駐車場の輪止めフラップ、テーブル・作業台・カウンター等の昇降装置などが挙げられる。
【0027】
上記シリンダ(1A、1B)は、例えば、
図1等に示すように、ケーシング(2)の伸縮方向が鉛直方向に沿うように縦向きで設置されてもよいし、ケーシング(2)の伸縮方向が水平方向に沿うように横向きで設置されてもよいし、ケーシング(2)の伸縮方向が鉛直方向(又は水平方向)に対して傾斜した傾斜方向に沿うように傾斜して設置されてもよい。
【0028】
<昇降装置>
本実施形態に係る昇降装置は、例えば、
図14~
図16等に示すように、上述のシリンダ(1A、1B)を備える昇降装置(41A、41B、46)であって、シリンダ(1A、1B)の作動により対象物(例えば、物品、人、動物等)を昇降させる。
【0029】
なお、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例】
【0030】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「シリンダ」として、ケーシング2の伸縮方向を上下方向Pとした水圧シリンダ1A、1Bを例示する。
【0031】
<実施例1>
(1)水圧シリンダの構成
本実施例に係る水圧シリンダ1Aは、
図1及び
図2に示すように、伸縮可能なケーシング2を備えている。このケーシング2は、テレスコープ状に連結された複数(図中3つ)の筒体3、4、5を備えている。これら複数の筒体3~5は、テレスコピック構造をなしている。
【0032】
上記複数の筒体3~5のうちの最外側の筒体5(すなわち、最下段の筒体5)には、該筒体5の軸端開口(すなわち、ケーシング2の一端開口)を塞ぐように第1キャップ7が設けられている。また、複数の筒体3~5のうちの最内側の筒体3(すなわち、最上段の筒体3)には、該筒体3の軸端開口(すなわち、ケーシング2の他端開口)を塞ぐように第2キャップ6が設けられている。
【0033】
上記各筒体3~5は、合成樹脂により円筒状に形成されている。また、第1キャップ7は、合成樹脂により角板状に形成されている(
図3参照)。この第1キャップ7は、台座として機能する。また、第2キャップ6は、合成樹脂により円板状に形成されている。さらに、各キャップ6、7は、筒体3、5の軸端部に対して、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により取り付けられている。
【0034】
上記複数の筒体3~5のうちの内外に隣り合う内側及び外側の筒体3、4において、内側の筒体3の軸端部には、外側の筒体4の内周面に圧接するシール材11(例えば、Oリング、パッキン等)を備えるリング部材12が設けられている。このリング部材12は、合成樹脂により形成されている。また、リング部材12は、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により筒体3に取り付けられている。また、外側の筒体4の軸端部には、内側の筒体3の外周面に圧接するスクレーパ13(シール材13)を備えるリング部材14が設けられている。このリング部材14は、合成樹脂により形成されている。また、リング部材14は、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により筒体4に取り付けられている。
なお、内外に隣り合う内側及び外側の筒体4、5においても、上述と略同様にして、リング部材12、14が設けられている。
【0035】
上記ケーシング2の伸長状態B(
図2参照)では、内側及び外側の筒体3、4(4、5)のリング部材12、14同士が当接することで筒体3、4(4、5)の相対移動が規制される。
【0036】
上記リング部材14には、シール材11及びスクレーパ13により仕切られる内側の筒体3と外側の筒体5との間の空間を外部に開放する開口部16が設けられている。この開口部16は、一端側が空間に面して開口し且つ他端側が外部に面して開口する通路状に形成されている。そして、ケーシング2が伸長する際に空間の空気が開口部16を介して外部に排気されるため、空間の空気が圧縮されて内気圧が上昇してしまうことが防止される。また、ケーシング2が短縮する際に開口部16を介して空間内に外部の空気が吸引されるため、空間内が負圧とならない。
【0037】
なお、本実施例では、リング部材14に開口部16を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、筒体3~5におけるリング部材14との接合付近に開口部16を設けてもよい。
【0038】
上記最内側の筒体3内には、該筒体3の内部空間を塞ぐように円柱状の塞ぎ体18が設けられている。この塞ぎ体18は、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている。また、塞ぎ体18は、金属製であり、その軸方向長さが最内側の筒体3の軸方向長さの約80%の値に設定されている。よって、塞ぎ体18は、比較的重く重りとして機能する。さらに、塞ぎ体18は、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により筒体3に取り付けられている。
【0039】
上記ケーシング2内には、塞ぎ体18と第1キャップ7とで囲まれる容積可変空間S1が形成されているとともに、塞ぎ体18と第2キャップ6とで囲まれる容積不変空間S2が形成されている。これら両空間S1、S2は、塞ぎ体18の外周面と最内側の筒体3の内周面との間に形成された隙間19を介して連通している。
【0040】
上記第1キャップ7には、容積可変空間S1に対して水を供給及び排出するポート21(すなわち、給排路21)が形成されている。このポート21は、一端側が第1キャップ7の側面に開口しており、他端側が第1キャップ7の容積可変空間S1を形成する面に開口している。また、ポート21には、一端側が水道水の蛇口22に接続されたホース等の接続管23の他端側が接続されている(
図1参照)。この接続管23の途中には、手動により操作可能な切替弁24が備えられている。この切替弁24は、ポート21へ水を給水する状態と、ポート21から水を排水する状態と、ポート21に対する給水及び排水を停止する状態と、に切替可能とされている。
【0041】
上記ポート21を介して、ケーシング2の短縮状態A(
図1参照)で容積可変空間S1に水を供給することでケーシング2が伸長し、ケーシング2の伸長状態B(
図2参照)で容積可変空間S1から水を排出することでケーシング2が短縮する。この容積可変空間S1は、ケーシング2の伸縮動作に応じて伸縮される。
【0042】
上記第2キャップ6には、容積可変空間S1に水を供給する際に容積不変空間S2内に溜まる水に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁27が設けられている。すなわち、機能弁27は、容積可変空間S1に水を供給する際に、容積不変空間S2内に溜まる水の外部への流出を規制しつつ容積不変空間S2内の空気を外部へ排気する。また、機能弁27は、容積可変空間S1から水を排出する際に容積不変空間S2内に外部の空気を吸気する。また、機能弁27は、第2キャップ6の容積不変空間S2を形成する面側に配置されている。さらに、機能弁27は、その一部が容積不変空間S2内に突出している。
【0043】
上記機能弁27は、
図6に示すように、本体27aと、本体27a内に昇降自在に設けられるバルブ体27bと、を備えている。この本体27aは、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により第2キャップ6に取り付けられている。また、本体27aには、第2キャップ6に形成された排気路28と容積不変空間S2とを連絡する第1連絡路31と、本体27a内のバルブ体27bの下側空間と容積不変空間S2とを連絡する第2連絡路32と、が形成されている。
【0044】
上記機能弁27によると、ケーシング2の短縮状態Aで容積可変空間S1内に水が供給される際に、自重(あるいはバネの付勢力)によりバルブ体27bが下降端に位置することで、第1連絡路31及び排気路28を介して容積不変空間S2内の空気が外部に排気される(
図6(a)参照)。一方、隙間19を介して容積不変空間S2内に水が満杯に満たされるときに、バルブ体27bにかかる水圧が自重に勝った時点でバルブ体27bを上昇させ、バルブ体27bが第1連絡路31を閉鎖することで水が外部に漏れることが防止される(
図6(b)参照)。さらに、ケーシング2の伸長状態Bで容積可変空間S1から水が排出される際に、バブル体27bは、水圧が大気圧と同圧になることで自重により下降し、排気路28及び第1連絡路31を介して大気(すなわち、外部の空気)が容積不変空間S2(すなわち、ケーシング2)内に流入される。
【0045】
(2)水圧シリンダの作用
次に、上記構成の水圧シリンダ1Aの作用について説明する。
図1に示すように、ケーシング2の短縮状態Aにおいて、切替弁24を切替えて容積可変空間S1内に水道水を供給する。すると、短縮状態の容積可変空間S1内に水が満杯に満たされて容積可変空間S1が伸長することで最内側の筒体3が他の筒体4、5に対して上昇する(
図4参照)。このとき、容積可変空間S1内の空気及び水が隙間19を通って容積不変空間S2に至り、機能弁27により容積不変空間S2内の空気が外部に排気される(
図6(a)参照)。その後、水の供給により容積可変空間S1が更に伸長することで、最外側の筒体5に対して最内側及び中間側の筒体3、4が一体的に上昇する(
図5参照)。その結果、ケーシング2が伸長状態Bとなる。
【0046】
一方、
図2に示すように、ケーシング2の伸長状態Bにおいて、切替弁24を切替えて容積可変空間S1内の水を排出する。すると、筒体3及び塞ぎ体18の自重により、最外側の筒体5に対して最内側及び中間側の筒体3、4が随時または適宜一体的に下降する。その後、中間側の筒体4が最下降すると、中間側及び最外側の筒体4、5に対して最内側の筒体3が下降する。その結果、ケーシング2が短縮状態Aとなる。
【0047】
(3)実施例の効果
本実施例の水圧シリンダ1Aによると、ケーシング2は、テレスコープ状に連結された複数の筒体3~5を備え、複数の筒体3~5のうちの最内側の筒体3には、該筒体3の内部空間を塞ぐように塞ぎ体18が設けられており、複数の筒体3~5のうちの最外側の筒体5には、該筒体5の軸端開口を塞ぐように第1キャップ7が設けられている。そして、ケーシング2内には、塞ぎ体18と第1キャップ7とで囲まれる容積可変空間S1が形成されており、容積可変空間S1に水を供給することでケーシング2が伸長し、容積可変空間S1から水を排出することでケーシング2が短縮する。これにより、ケーシング2を伸長させる際に、短縮状態で比較的小さな容積である容積可変空間S1に水が満杯に満たされることで最内側の筒体3が他の筒体4、5に対して移動し始める。そのため、ケーシング2の伸長動作を速めることができるとともに、作動のための水量を低減できる。さらに、ケーシング2を短縮させる際に、最内側の筒体3に対して外部から大きな負荷がかからない場合であっても、材質や大きさ等の設定により塞ぎ体18を重くすることで、ケーシング2を円滑に且つ速く短縮させることができる。
【0048】
特に、本実施例の水圧シリンダ1Aでは、水道水を利用して作動されるため、電気・油類が使用できない場所や使用したくない場所での安全・安心なアクチュエータとして利用できる。具体的に、動力源が水道水のみであるため、電源不要で電気代ゼロであり、省エネとなる。また、感電、漏電の心配がなく、安全である。また、振動が少なく、音が静かで昇降時に急激な落下がなく、安心である。また、油漏れ、グリス飛散の心配がなく、CO2の排出量が少なく、環境保全を図り得る。さらに、シンプルな構造で軽量且つコンパクトである。さらに、屋外、水中、防爆施設、クリーンルーム等で利用可能である。
【0049】
また、本実施例では、塞ぎ体18は、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている。これにより、ケーシング2の伸長動作を更に速めることができるとともに、作動のための水量を更に低減できる。すなわち、最内側の筒体3の内側の体積分の水量を節約することができる。
【0050】
さらに、本実施例では、最内側の筒体3には、第2キャップ6が設けられており、ケーシング2内に、容積不変空間S2が形成されており、第2キャップ6には、機能弁27が設けられている。これにより、ケーシング2を伸長させる際に、機能弁27により容積不変空間S2内に溜まる水に対して空気が分離されて外部へ排気されるため、ほぼ水のみによる加圧となり、ケーシング2の伸長動作が安定的に行われる。さらに、ケーシング2の伸長時に、ケーシング2内の容積可変空間S1及び容積不変空間S2にわたって水を充満させることができる。
【0051】
さらに、本実施例では、機能弁27は、第2キャップ6の容積不変空間S2を形成する面側に配置されている。これにより、機能弁27が第2キャップ6の外表面に突出せず、第2キャップ6を有効利用できる。例えば、水圧シリンダ1Aを昇降装置として使用する際に、昇降装置を構成するテーブルに対して第2キャップ6を効果的に連結できる。
【0052】
なお、上記実施例では、筒体3の内周面と塞ぎ体18の外周面との間に隙間19を形成して両空間S1、S2を連通させるようにしたが、これに限定されず、例えば、塞ぎ体18に連通路19’(
図1中に仮想線で示す。)を形成して両空間S1、S2を連通させるようにしてもよい。
【0053】
さらに、上記実施例では、筒体3、第2キャップ6及びリング部材12とは別体である塞ぎ体18を例示したが、これに限定されず、例えば、筒体3、第2キャップ6又はリング部材12に対して一体成形された塞ぎ体18としてもよい。
【0054】
<実施例1の変形例1>
次に、実施例1の変形例1に係る水圧シリンダ1A(
図7参照)について説明する。なお、本変形例1の水圧シリンダ1Aにおいて、上記実施例1の水圧シリンダ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略し、両者の相違点について説明する。
【0055】
本変形例1に係る水圧シリンダ1Aでは、
図7に示すように、最内側の筒体3内には、該筒体3の内部空間を塞ぐように円柱状の塞ぎ体34が設けられている。この塞ぎ体34は、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている。また、塞ぎ体34は、合成樹脂製であり、その軸方向長さが最内側の筒体3の軸方向長さの約30%の値に設定されている。よって、塞ぎ体34は比較的軽い。さらに、塞ぎ体34は、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により筒体3に取り付けられている。
なお、本変形例1の水圧シリンダ1Aは、ケーシング2を短縮させる際に、最内側の筒体3に対して外部から大きな負荷がかかることを前提とする。
【0056】
本変形例1の水圧シリンダ1Aによると、実施例1の水圧シリンダ1Aと略同様の作用効果を奏することに加えて、比較的軽い塞ぎ体34を採用しているので、塞ぎ体34ひいては水圧シリンダの軽量化を図ることができる。
【0057】
なお、本変形例1では、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられる塞ぎ体34を例示したが、これに限定されず、例えば、
図7中に仮想線で示すように、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部から離間した部位の内部空間を塞ぐように設けられる塞ぎ体34としてもよい。
【0058】
<実施例1の変形例2>
次に、実施例1の変形例2に係る水圧シリンダ1A(
図8参照)について説明する。なお、本変形例2の水圧シリンダ1Aにおいて、上記実施例1の水圧シリンダ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略し、両者の相違点について説明する。
【0059】
本変形例2に係る水圧シリンダ1Aでは、
図8に示すように、第2キャップ6の上面側から機能弁27を取り付けている。本変形例2の水圧シリンダ1Aによると、実施例1の水圧シリンダ1Aと略同様の作用効果を奏する。
【0060】
<実施例2>
次に、実施例2に係る水圧シリンダ1Bについて説明する。なお、本実施例2の水圧シリンダ1Bにおいて、上記実施例1の水圧シリンダ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略し、両者の相違点について説明する。
【0061】
(1)水圧シリンダの構成
本実施例に係る水圧シリンダ1Bは、
図9に示すように、伸縮可能なケーシング2を備えている。このケーシング2は、複数(図中3つ)の筒体3~5を備えている。
【0062】
上記複数の筒体3~5のうちの最内側の筒体3内には、該筒体3の内部空間を塞ぐように円柱状の塞ぎ体35が設けられている。この塞ぎ体35は、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている。また、塞ぎ体35は、金属製であり、その軸方向長さが最内側の筒体3の軸方向長さの約80%の値に設定されている。よって、塞ぎ体35は、比較的重く重りとして機能する。さらに、塞ぎ体35は、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により筒体3に取り付けられている。
【0063】
上記ケーシング2内には、塞ぎ体35と第1キャップ7とで囲まれる容積可変空間S1が形成されているとともに、塞ぎ体35と第2キャップ6とで囲まれる容積不変空間S2が形成されている。これら両空間S1、S2は、塞ぎ体35に貫通して形成された連通路36を介して連通している。さらに、第2キャップ6には、容積不変空間S2と外部とを連通する排気路37が形成されている。
【0064】
上記塞ぎ体35の外周面と筒体3の内周面との間には、両者の間をシールするシール材38が設けられている。また、塞ぎ体35には、容積可変空間S1に水を供給する際に容積可変空間S1内に溜まる水に対して空気を分離して外部へ排気する機能弁27が設けられている。すなわち、機能弁27は、容積可変空間S1に水を供給する際に、容積可変空間S1内に溜まる水の外部への流出を規制しつつ容積可変空間S1内の空気を外部へ排気する。また、機能弁27は、容積可変空間S1から水を排出する際に容積可変空間S1内に外部の空気を吸気する。また、機能弁27は、塞ぎ体35の容積可変空間S1を形成する面側に配置されている。さらに、機能弁27は、その一部が容積可変空間S1内に突出している。
【0065】
上記機能弁27は、本体27aと、本体27a内に昇降自在に設けられるバルブ体27bと、を備えている(
図6参照)。この本体27aは、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により塞ぎ体35に取り付けられている。また、本体27aには、連通路36と容積可変空間S1とを連絡する第1連絡路31と、本体27a内のバルブ体27bの下側空間と容積可変空間S1とを連絡する第2連絡路32と、が形成されている。
【0066】
上記機能弁27によると、ケーシング2の短縮状態Aで容積可変空間S1内に水が供給される際に、自重(あるいはバネの付勢力)によりバルブ体27bが下降端に位置することで、第1連絡路31、連通路36及び排気路37を介して容積可変空間S1内の空気が外部に排気される。一方、容積可変空間S1内に水が満杯に満たされるときに、バルブ体27bにかかる水圧が自重に勝った時点でバルブ体27bを上昇させ、バルブ体27bが第1連絡路31を閉鎖することで水が外部に漏れることが防止される。さらに、ケーシング2の伸長状態Bで容積可変空間S1から水が排出される際に、バブル体27bは、水圧が大気圧と同圧になることで自重により下降し、排気路37、容積不変空間S2、連通路36及び第1連絡路31を介して大気(すなわち、外部の空気)が容積可変空間S1(すなわち、ケーシング2)内に流入される。
【0067】
上記複数の筒体のうちの内外に隣り合う内側及び外側の筒体3、4(4、5)において、内側の筒体3(4)の外周面と外側の筒体4(5)の内周面との間には、シール材11、13により仕切られた筒状の空間S3が形成されている。また、外側の筒体4(5)側(具体的に、リング部材14)には、空間S3を外部に開放する通路状の開口部16が設けられている。この開口部16には、水道水の蛇口(図示省略)に連なる配管53が接続されている。この配管53には、5方弁等の切替弁54が備えられている。この切替弁54により、開口部16に水を供給する状態と、開口部16から水を排水する状態と、開口部16に対する給水及び排水を停止する状態と、に切替可能とされている。
なお、本実施例では、リング部材14に開口部16を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、筒体4(5)におけるリング部材14との接合付近に開口部16を設けてもよい。
【0068】
(2)水圧シリンダの作用
次に、上記構成の水圧シリンダ1Bの作用について説明する。
図9に示すように、ケーシング2の短縮状態Aにおいて、切替弁24を切替えて容積可変空間S1内に水道水を供給する。すると、短縮状態の容積可変空間S1内に水が満杯に満たされて容積可変空間S1が伸長することで最内側の筒体3が他の筒体4、5に対して上昇する(
図10参照)。このとき、機能弁27により容積可変空間S1内の空気が外部に排気される。その後、水の供給により容積可変空間S1が更に伸長することで、最外側の筒体5に対して最内側及び中間側の筒体3、4が一体的に上昇する(
図11参照)。その結果、ケーシング2が伸長状態Bとなる。
なお、ケーシング2の伸長動作では、切替弁54により開口部16を介して空間S3内の水が外部に放出されるため、空間S3内の水が圧縮されて水圧が上昇してしまうことが防止される。
【0069】
一方、ケーシング2の伸長状態Bにおいて、切替弁24を切替えて容積可変空間S1内の水を排出する。すると、筒体3及び塞ぎ体35の自重により、最外側の筒体5に対して最内側及び中間側の筒体3、4が随時または適宜一体的に下降する。その後、中間側の筒体4が最下降すると、中間側及び最外側の筒体4、5に対して最内側の筒体3が下降する。その結果、ケーシング2が短縮状態Aとなる。
ここで、ケーシング2の短縮動作では、切替弁54により開口部16を介して空間S3に水が流入される。これにより、空間S3への水の流入により各筒体3、4が下方へ押し下げられつつ、自重によりケーシング2が短縮される。
【0070】
(3)実施例の効果
本実施例2の水圧シリンダ1Bによると、実施例1の水圧シリンダ1Aと略同様の作用効果を奏することに加えて、塞ぎ体35には、機能弁27が設けられている。これにより、ケーシング2を伸長させる際に、機能弁27により容積可変空間S1内に溜まる水に対して空気が分離されて外部へ排気されるため、ほぼ水のみによる加圧となり、ケーシング2の伸長動作が安定的に行われる。また、最内側の筒体3内に機能弁27を容易に取り付けることができる。さらに、第2キャップ6に機能弁27を備える水圧シリンダ1A(
図1参照)に比べて、第2キャップ6の厚さをコンパクトにでき、短縮状態のケーシング2の高さを低くできる。
【0071】
さらに、本実施例では、機能弁27は、塞ぎ体35の容積可変空間S1を形成する面側に配置されている。これにより、機能弁27の取付性が更に高められる。
【0072】
さらに、本実施例では、内側の筒体3(4)の外周面と外側の筒体4(5)の内周面との間には、シール材11、13により仕切られた空間S3が形成されており、外側の筒体4(5)側には、空間S3を外部に開放する開口部16が設けられており、容積可変空間S1から水を排出する際に、開口部16を介して空間S3に水を流入させる。これにより、ケーシング2にかかる負荷に関わらず、自重によりケーシング2を円滑に且つ速く短縮させることができる。
【0073】
なお、上記実施例では、塞ぎ体35の容積可変空間S1を形成する面側に機能弁27を配置する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、塞ぎ体35の容積可変空間S1を形成する面側から上方に離間した部位に機能弁27を配置するようにしてもよい。
【0074】
さらに、上記実施例では、筒体3、第2キャップ6及びリング部材12とは別体である塞ぎ体35を例示したが、これに限定されず、例えば、筒体3、第2キャップ6又はリング部材12に対して一体成形された塞ぎ体35としてもよい。
【0075】
<実施例2の変形例1>
次に、実施例2の変形例1に係る水圧シリンダ1B(
図12参照)について説明する。なお、本変形例1の水圧シリンダ1Bにおいて、上記実施例2の水圧シリンダ1Bと略同じ構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略し、両者の相違点について説明する。
【0076】
本変形例1に係る水圧シリンダ1Bでは、
図12に示すように、最内側の筒体3内には、該筒体3の内部空間を塞ぐように円柱状の塞ぎ体39が設けられている。この塞ぎ体39は、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられている。また、塞ぎ体39は、合成樹脂製であり、その軸方向長さが最内側の筒体3の軸方向長さの約30%の値に設定されている。よって、塞ぎ体39は比較的軽い。さらに、塞ぎ体39は、ネジ止め、接着、溶着、嵌合等により筒体3に取り付けられている。
なお、本変形例1の水圧シリンダ1Bは、ケーシング2を短縮させる際に、最内側の筒体3に対して外部から大きな負荷がかかることを前提とする。
【0077】
本変形例1の水圧シリンダ1Bによると、実施例2の水圧シリンダ1Bと略同様の作用効果を奏することに加えて、比較的軽い塞ぎ体39を採用しているので、塞ぎ体39ひいては水圧シリンダの軽量化を図ることができる。
【0078】
なお、本変形例1では、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部の内部空間を塞ぐように設けられる塞ぎ体39を例示したが、これに限定されず、例えば、
図12中に仮想線で示すように、最内側の筒体3において第1キャップ7に近い側の軸端部から離間した部位の内部空間を塞ぐように設けられる塞ぎ体39としてもよい。
【0079】
さらに、本変形例1では、筒体3、第2キャップ6又はリング部材12とは別体である塞ぎ体39を例示したが、これに限定されず、例えば、筒体3、第2キャップ6又はリング部材12に対して一体成形された塞ぎ体39としてもよい。
【0080】
<実施例2の変形例2>
次に、実施例2の変形例1に係る水圧シリンダ1B(
図13参照)について説明する。なお、本変形例1の水圧シリンダ1Bにおいて、上記実施例2の水圧シリンダ1Bと略同じ構成部位には同じ符号を付けて詳説を省略し、両者の相違点について説明する。
【0081】
本変形例2に係る水圧シリンダ1Bでは、
図13に示すように、最内側の筒体3内には、該筒体3の内部空間を塞ぐように塞ぎ体35が設けられている。この筒体3及び塞ぎ体35は、同種の材質(例えば、合成樹脂又は金属)からなり、一体成形されている。本変形例2の水圧シリンダ1Bによると、実施例2の水圧シリンダ1Bと略同様の作用効果を奏する。
【0082】
<水圧シリンダの用途>
上述の実施例1、2の水圧シリンダ1A、1Bを用いた物品昇降装置41Aについて説明する。この物品昇降装置41Aは、
図14に示すように、走行可能な台車42Aと、台車42Aに対して支持部43Aを介して昇降自在に支持されるテーブル44Aと、台車42A上に立ち上げられて上端がテーブル44Aに連結される水圧シリンダ1A、1Bと、を備えている。この物品昇降装置41Aによると、水圧シリンダ1A、1Bの伸縮によりテーブル44A上の物品が昇降される。
【0083】
次に、上述の実施例1、2の水圧シリンダ1A、1Bを用いた他の物品昇降装置41Bについて説明する。この物品昇降装置41Bは、
図15に示すように、走行可能な台車42Bと、台車42Bに対して支持部43Bを介して昇降自在に支持されるテーブル44Bと、台車42B上に立ち上げられて上端がテーブル44Bに連結される水圧シリンダ1A、1Bと、を備えている。この物品昇降装置41Bによると、水圧シリンダ1A、1Bの伸縮によりテーブル44B上の物品が昇降される。
【0084】
次いで、上述の実施例1、2の水圧シリンダ1A、1Bを用いた入浴補助装置46について説明する。この入浴補助装置46は、
図16に示すように、浴槽の外側の床面上に立ち上げられる水圧シリンダ1A、1Bと、水圧シリンダ1A、1Bの上端に対して支持部47を介して支持される座席48と、を備えている。この入浴補助蔵置46によると、水圧シリンダ1A、1Bの伸縮により座席48に座る使用者が浴槽に対して昇降される。
【0085】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1、2では、3本の筒体3~5を備えるケーシング2を例示したが、これに限定されず、例えば、4本以上の筒体を備えるケーシング2としたり、2本の筒体を備えるケーシング2としたりしてもよい。
【0086】
また、上記実施例1、2では、ケーシング2の容積可変空間S1に対して水道水を供給するようにしたが、これに限定されず、例えば、ケーシング2の容積可変空間S1に対してポンプの圧送により貯留部内の水を供給するようにしてもよい。さらに、水以外の液体で作動するシリンダとしたり、空気等の気体で作動するシリンダとしたりしてもよい。
【0087】
また、上記実施例1、2では、第1キャップ7にポート21を設定するようにしたが、これに限定されず、例えば、最外側の筒体5の軸端部にポート21を設定するようにしてもよい。また、上記実施例1、2では、水の供給及び排出を兼用する一本のポート21を設定するようにしたが、これに限定されず、例えば、水の供給用のポートと水の排出用のポートとをそれぞれ設定するようにしてよい。
【0088】
また、上記実施例では、リング部材14に形成された通路状の開口部16(
図1参照)を例示したが、これに限定されず、例えば、
図17及び
図18に示すように、筒体5(4)の先端部に第1の溝51を形成するとともに、筒体5(4)のリング部材14の接合部に第1の溝51と外気とを連通するための第2の溝52を形成することで開口部16を構成してもよい。
また、例えば、
図19(a)に示すように、筒体5(4)の先端部に第1の溝51を形成するとともに、リング部材14の筒体5(4)との接合部に第1の溝51と外気とを連通するための穴53を形成することで開口部を構成してもよい。
さらに、例えば、
図19(b)に示すように、筒体5(4)の先端部に第1の溝51を形成するとともに、リング部材14の筒体5(4)との接合部に第1の溝51と外気とを連通するための溝54を形成することで開口部16を構成してもよい。
上述の形態であっても、開口部16により、シール材11及びスクレーパ13により仕切られる内側の筒体3(4)と外側の筒体4(5)との間の空間は外気に解放される。
【0089】
さらに、上記実施例1、2において、各シリンダ1A、1Bの特徴的な構成を自由に組み合わせることができる。例えば、実施例2における開口部16への流体の供給構造を実施例1に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、水圧、油圧又は空気圧等を利用してケーシングを伸縮させるシリンダとして広く利用される。特に、物品や人等の対象物を昇降させる昇降装置の動力となるシリンダとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0091】
1A,1B;水圧シリンダ、2;ケーシング、3,4,5;筒体、6;第2キャップ、7;第1キャップ、18,34,35,39;塞ぎ体、27;機能弁、S1;容積可変空間、S2;容積不変空間。