(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】微小核細胞融合法による目的DNAを含む動物細胞の作製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/06 20060101AFI20220119BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20220119BHJP
C12N 5/22 20060101ALI20220119BHJP
C12N 15/07 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C12N15/06
C12N5/071 ZNA
C12N5/22
C12N15/07
(21)【出願番号】P 2020551235
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040091
(87)【国際公開番号】W WO2020075823
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018191994
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516291907
【氏名又は名称】株式会社Trans Chromosomics
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香月 康宏
(72)【発明者】
【氏名】宇野 愛海
(72)【発明者】
【氏名】押村 光雄
【審査官】中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-177145(JP,A)
【文献】特表2012-518016(JP,A)
【文献】国際公開第2009/147695(WO,A1)
【文献】DOHERTY, AMO et al.,Microcell-mediated chromosome transfer(MMCT): small cells with huge potential,Mammalian Genome,2003年,Vol.14,pp.583-592,ISSN 1432-1777, 特にp.584右欄
【文献】LISKOVYKH, M et al.,Moving toward a higher efficiency of microcell-mediated chromosome transfer,Molecular Therapy-Methods & Clinical Development,2016年,Vol.3, Article 16043,ISSN 2329-0501, 特にAbstract, pp.2-4
【文献】SANTAGUIDA, S et al.,Dissecting the role of MPS1 in chromosome biorientation and the spindle checkpoint through the small molecule inhibitor reversine,The Journal of Cell Biology,2010年,Vol.190, No.1,pp.73-87,ISSN 0021-9525, 特にp.75右欄
【文献】JORDAN, MA et al.,Mitotic Block Induced in HeLa Cells by Low Concentrations of Paclitaxel(Taxol) Results in Abnormal M,Cancer Research,1996年,Vol.56,pp.816-825,ISSN 0099-7013, 特にp.816左欄
【文献】Yuji Nakayama, et al,Recurrent Micronucleation through Cell Cycle Progression in the Presence of Microtubule Inhibitors,CELL STRUCTURE AND FUNCTION,2015年,Vol.40, No.1,p.51-59
【文献】MCNEILL, CA et al.,Genetic manipulation by means of microcell-mediated transfer of normal human chromosomes into recipient mouse cells,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1980年,Vol.77, No.9,pp.5394-5398,ISSN: 0027-8424,特にAbstract
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的DNAを含むヒト細胞(但し、癌細胞を除く)からヒト細胞由来微小核細胞を作製するための方法であって、前記ヒト細胞を、
リバーシン、パクリタキセル、又はリバーシンとパクリタキセルの混合物からなる群から選択され
る微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養してヒト細胞由来微小核細胞を生成し、並びに、前記目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞を回収することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記目的DNAが、正常ヒト染色体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的DNAが、目的遺伝子を含むヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
目的DNAを含む非ヒト動物細胞(但し、癌細胞を除く)から非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製するための方法であって、前記非ヒト動物細胞を、リバーシン、パクリタキセル、又はリバーシンとパクリタキセルの混合
物からなる群から選択され
る微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養して非ヒト動物細胞由来微小核細胞を生成し、並びに、前記目的DNAを含む非ヒト動物細胞由来微小核細胞を回収することを含む、前記方法。
【請求項5】
前記非ヒト動物細胞が、齧歯類細胞である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記齧歯類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはマウスA9細胞である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記目的DNAが、正常ヒト染色体である、請求項
4~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記目的DNAが、目的遺伝子を含むヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体である、請求項
4~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を作製するための方法であって、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法によって目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞、又は請求項
4~
8のいずれか1項に記載の方法によって目的DNAを含む非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製する工程、供与細胞としての前記ヒト細胞由来微小核細胞又は前記非ヒト動物細胞由来微小核細胞と、受容細胞としてのそれぞれヒト細胞又は非ヒト動物細胞とを細胞融合する工程、それによって得られた前記目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を回収する工程を含む、前記方法。
【請求項10】
前記非ヒト動物細胞が、齧歯類細胞である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記齧歯類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はマウスA9細胞である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記目的DNAが、正常ヒト染色体である、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記目的DNAが、目的遺伝子を含むヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体である、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的DNAを含むヒト細胞から、目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞を収率よく作製するための方法に関する。
【0002】
本発明はまた、目的DNAを含む非ヒト動物細胞(例えば齧歯類細胞)から、目的DNAを含む非ヒト動物細胞由来微小核細胞を収率よく作製するための方法に関する。
【0003】
本発明はまた、本発明の方法によって作製された、供与細胞としての上記目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞、又は上記目的DNAを含む非ヒト動物細胞(例えば齧歯類細胞)由来微小核細胞と、受容細胞としてのそれぞれヒト細胞又は非ヒト動物細胞とを細胞融合して目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
微小核細胞融合法(MMCT(Microcell-Mediated Chromosome Transfer))は、供与細胞から作製した微小核細胞を受容細胞と融合させる技術である。これによって、供与細胞内の特定の外来DNA(例えば、染色体)を受容細胞に移入させることが可能である。微小核細胞は、通常、供与細胞をコルセミドで処理することによって作製することができる(非特許文献1~3)。
【0005】
従来、ヒト細胞を染色体供与体とするときには、薬剤耐性遺伝子をヒト細胞に導入したのち、微小核形成が可能なマウス由来A9細胞またはハムスター由来CHO細胞と細胞融合してA9ハイブリッド細胞またはCHOハイブリッド細胞を形成し、さらにコルセミドで処理して微小核を形成し、薬剤選択により微小核細胞を精製する手法が行われている。一方、ヒト細胞を供与細胞としてヒト細胞から微小核細胞を精製し、ヒト細胞株(例えばヒトiPS細胞)と細胞融合するとき、通常のMMCT法では、目的の染色体が導入されたヒト細胞株を容易に得ることは難しい。このため、供与細胞としてA9ハイブリッド細胞またはCHOハイブリッド細胞が使用されてきた。
【0006】
MMCT法では染色体を受容細胞に移入することができる。しかし、メガベース(Mb)サイズの染色体(例えばヒト染色体もしくは染色体断片)を細胞に移入するためのベクターには制限がある。例えばプラスミドでは約20kb以下のサイズのポリヌクレオチド、ウイルスベクターでは150kb以下のサイズのポリヌクレオチド、BAC/PACでは300kb以下のサイズのポリヌクレオチド、及びYACでは約1Mb未満のサイズのポリヌクレオチドであり、一方、ヒト人工染色体及びマウス人工染色体などの人工染色体では導入される染色体サイズに特に制限はない(非特許文献4)。このため、このような人工染色体には、目的の遺伝子座を含む染色体断片を搭載することができる。
【0007】
上記ヒト人工染色体及びマウス人工染色体は、本発明者らによって最初に開発されたものであり、染色体の由来により呼称が異なり、例えばヒト染色体由来の場合ヒト人工染色体と称し、一方マウス由来の場合マウス人工染色体と称する(特許文献1、2及び3)。
【0008】
iPS細胞は、山中伸弥博士(京都大学)によって体細胞から人工的に作製された胚性幹(ES)細胞に類似した特徴を有する幹細胞であり、無限増殖性と分化多能性を有している(非特許文献5及び6)。iPS細胞は、種々の組織の体細胞(幹細胞、前駆細胞又は成熟細胞)に分化することができるため、再生医療への応用が進められているし、また、遺伝性疾患の患者の体細胞から誘導されたiPS細胞は疾患モデル細胞を形成することから、医薬品開発のために利用されている(非特許文献7)。
【0009】
もしヒト細胞(供与細胞)からヒト細胞(受容細胞、例えばヒトiPS細胞)に目的DNA(例えば染色体、人工染色体など)を容易に導入することができるならば、上記の再生医療や医薬品開発のために大きく貢献することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】日本国特許第4997544号公報
【文献】日本国特許第5557217号公報
【文献】日本国特許第4895100号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】M. Katoh et al., BMC Biotechnology 2010, 10:37
【文献】N. Uno et al., Cytotechnology 2013, 65:803-809
【文献】M Hiratsuka et al., BMC Biotechnology 2015, 15:58
【文献】P. Osten et al., Handb Exp Pharmacol 2007, 178:177-202
【文献】K. Takahashi and S. Yamanaka, Cell 2006, 126(4):663-676
【文献】K. Takahashi et al., Cell 2007, 131(5):861-872
【文献】V.K. Singh et al., Frontiers in Cell and Developmental Biology 2015, doi:10.3389/fcell.2015.00002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、MMCT法を使用することによってヒト細胞(供与細胞)からヒト細胞(受容細胞、例えばヒトiPS細胞)、或いは非ヒト動物細胞(供与細胞)から非ヒト動物細胞(受容細胞、例えばiPS細胞)に目的DNA(例えば、染色体、人工染色体など)を容易に導入するための方法を提供することである。MMCT法に関連して、従来、ヒト細胞(供与細胞)から直接的にヒト細胞由来微小核細胞を作製する手法がなく、上記の通り、マウス由来A9ハイブリッド細胞又はCHOハイブリッド細胞を作製したのち、ヒト細胞(受容細胞)と細胞融合することが通常行われてきた。このような場合、中間宿主であるCHOハイブリッド細胞やA9ハイブリッド細胞の異種の細胞質の持ち込み及びウイルス等の感染の危険性がある。
【0013】
上記方法を可能にするために、本発明はさらに、目的DNAを含むヒト細胞からヒト細胞由来微小核細胞を収率よく作製するための方法を提供することを目的とする。この方法はまた、目的DNAを含む非ヒト動物細胞から非ヒト動物細胞由来微小核細胞を効率的に作製するために使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の特徴を包含する。
(1)目的DNAを含むヒト細胞(但し、癌細胞を除く)からヒト細胞由来微小核細胞を作製するための方法であって、上記ヒト細胞を、微小管重合阻害剤(但し、コルセミドを除く)、微小管脱重合阻害剤及び紡錘体チェックポイント阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養してヒト細胞由来微小核細胞を生成し、並びに、前記目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞を回収することを含む、上記方法。
(2)上記目的DNAが、正常ヒト染色体である、上記(1)に記載の方法。
(3)上記目的DNAが、目的遺伝子を含むヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体である、上記(1)に記載の方法。
(4)上記微小管重合阻害剤が、コルヒチンとビンクリスチンの混合物である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)上記微小管脱重合阻害剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、又はパクリタキセルとドセタキセルの混合物である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(6)上記紡錘体チェックポイント阻害剤が、リバーシン、ヘスペラジン、又はリバーシンとヘスペラジンの混合物である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(7)目的DNAを含む非ヒト動物細胞(但し、癌細胞を除く)から非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製するための方法であって、上記非ヒト動物細胞を、リバーシン、パクリタキセル、又はリバーシンとパクリタキセルの混合物、及びコルヒチンとビンクリスチンの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養して非ヒト動物細胞由来微小核細胞を生成し、並びに、上記目的DNAを含む非ヒト動物細胞由来微小核細胞を回収することを含む、上記方法。
(8)上記非ヒト動物細胞が、齧歯類細胞である、上記(7)に記載の方法。
(9)上記齧歯類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はマウスA9細胞である、上記(8)に記載の方法。
(10)上記目的DNAが、正常ヒト染色体である、上記(7)~(9)のいずれかに記載の方法。
(11)上記目的DNAが、目的遺伝子を含むヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体である、上記(7)~(9)のいずれかに記載の方法。
(12)目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を作製するための方法であって、上記(1)~(6)のいずれかに記載の方法によって目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞を作製する工程、或いは上記(7)~(11)のいずれかに記載の方法によって目的DNAを含む非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製する工程、供与細胞としての上記ヒト細胞由来微小核細胞又は上記非ヒト動物細胞由来微小核細胞と、受容細胞としてのそれぞれヒト細胞又は非ヒト動物細胞とを細胞融合する工程、それによって得られた上記目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を回収する工程を含む、上記方法。
(13)前記非ヒト動物細胞が、齧歯類細胞である、上記(12)に記載の方法。
(14)前記齧歯類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はマウスA9細胞である、上記(13)に記載の方法。
(15)上記目的DNAが、正常ヒト染色体である、上記(12)に記載の方法。
(16)上記目的DNAが、目的遺伝子を含むヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体である、上記(12)に記載の方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-191994号の開示内容を包含する。
【0015】
本発明により、ヒト細胞又は非ヒト動物細胞(供与細胞)から直接的にヒト細胞由来微小核細胞又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製することができるようになり、MMCT法の変法によりヒト細胞又は非ヒト動物細胞(受容細胞)との細胞融合が可能となる。これによって、人工染色体が例えば疾患原因遺伝子或いは治療用遺伝子を含むときには例えばヒトiPS細胞などのヒト細胞を医薬品開発や再生医療に使用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この図は、供与細胞としての例えばヒト細胞からの微小核細胞融合法(MMCT)による染色体もしくは染色体断片の導入手法の作業手順を示す。図中において示されている目的染色体もしくは染色体断片は薬剤耐性遺伝子を保持している。このヒト細胞に対して化合物処理を行うことにより、微小核形成を誘導し、微小核を遠心分離することにより微小核細胞を作製する。これをさらにフィルターにより精製し、受容細胞としてのヒト細胞と上記微小核細胞との間で微小核細胞融合を行い、目的染色体もしくは染色体断片をヒト細胞内に導入する。目的染色体もしくは染色体断片が導入されたヒト細胞はさらに薬剤選択により薬剤耐性細胞株として選択することができる。また、非ヒト動物細胞についても同様の手順で行うことができる。
【
図2】この図は、化合物処理条件の違いによるヒト不死化間葉系幹細胞の微小核形成能の違いの代表例を示す。上段パネルはコルセミド(Colcemid)0.05μg/mLで処理した際の細胞観察像を示す。下段パネルはパクリタキセル(Paclitaxe)l20nMおよびリバーシン(Reversine)500nMで処理したときの細胞観察像を示す。左パネルに明視野像、右パネルにDAPI像を示す。
【
図3】この図は、化合物処理条件の違いによるヒトiPS細胞の微小核形成能の違いの代表例を示す。上段左パネルはコルセミド(Colcemid)0.25μg/mLで処理したときの細胞観察像を示す。上段右パネルはMAS(コルヒチンおよびビンクリスチンの混合試薬)0.2μg/mLで処理したときの細胞観察像を示す。中段及び下段パネルにおいて各種パクリタキセル(Paclitaxel)処理濃度条件による微小核形成像を示す。円により微小核形成細胞を示す。
【
図4】この図は、化合物処理条件の違いによるCHO細胞の微小核形成能の違いの代表例を示す。リバーシン(Reversine)1536nM処理に加え、パクリタキセル(Paclitaxel)を384nM、24nM、もしくは0nMの濃度で加えた。左パネルに明視野画像、右パネルに赤色蛍光観察画像を示す。赤色蛍光タンパク質は核内局在を示し、核の形態を識別可能である。
【
図5】この図は、化合物処理条件の違いによるCHO細胞の微小核形成能の違いの代表例を示す。パクリタキセル(Paclitaxel)384nM処理に加え、リバーシン(Reversine)を1536nM、24nM、もしくは0nMの濃度で加えた。左パネルに明視野画像、右パネルに赤色蛍光観察画像を示す。赤色蛍光タンパク質は核内局在を示し、核の形態を識別可能である。
【
図6】この図は、各化合物処理条件によるマウス線維芽細胞株A9細胞、マウス胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株、ブタ胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株、ニワトリプレB細胞DT40細胞、ラットES細胞をパクリタキセル(Paclitaxel)4~400nM及びリバーシン(Reversine)0~1500nMで処理したときの微小核形成能の違いの代表例を示す。上段パネルはマウス線維芽細胞株A9細胞、マウス胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株、ブタ胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株の顕微鏡観察による細胞観察像の代表例示す。下段パネルはDAPI染色によるニワトリプレB細胞DT40細胞、ラットES細胞の蛍光顕微鏡観察像を示す。
【
図7】この図は、微小核細胞融合によりヒト不死化間葉系幹細胞からヒト細胞株HT1080(受容細胞)にHACベクターを導入した細胞のFISH解析像を示す。赤色と緑色で共染色されたものがHACベクターである。ヒト13番、および21番染色体に対するセントロメアプローブ、p11-4にて赤色(矢印)に染色している。pCAG-EGFPプラスミドベクターにて、HACベクター上のEGFP遺伝子を緑色(矢頭)に染色している。小窓拡大図はHACベクターを拡大して示している。
【
図8】この図は、微小核細胞融合によりヒトiPS細胞(供与細胞)からヒト細胞株HT1080(受容細胞)にマウス人工染色体(MAC)ベクターを導入した細胞の蛍光顕微鏡像を示す。左パネルは明視野像、右パネルはGFP蛍光観察像をそれぞれ示す。
【
図9】この図は、微小核細胞融合によりヒトiPS細胞(供与細胞)からヒト細胞株HT1080(受容細胞)にMACベクターを導入した細胞のFISH解析像を示す。赤色(矢印)と緑色(矢頭)で共染色されたものがMACベクターである。小窓拡大図はMACベクターを拡大して示している。
【
図10】この図は、パクリタキセル及びリバーシンによる処理とコルセミドによる処理の比較実験での微小核細胞融合によりCHO細胞(供与細胞)からヒト細胞株HT1080(受容細胞)にHACベクターを導入したときの平均薬剤耐性コロニー出現数(平均値と誤差範囲)を示す。
【
図11】この図は、微小核細胞融合によりヒト不死化間葉系幹細胞からヒト細胞株HT1080 HPRT欠損株にX染色体を導入した細胞のFISH解析像を示す。赤色(矢印)で染色されたものがX染色体のセントロメアである。ヒトX染色体特異的アルファサテライトプローブにて赤色に染色している。対照実験として、X染色体を導入していないHT1080 HPRT欠損株を解析したところ、この細胞株は男性由来細胞であるため、1本のX染色体が観察された(左パネル)。一方で、X染色体導入株においては、2本のX染色体が観察された(右パネル)。
【
図12】この図は、微小核細胞融合によりヒトiPS細胞からヒト細胞株HT1080 HPRT欠損株にX染色体を導入した細胞のマルチカラーFISH解析像を示す。各染色体特異的色素プローブを用いて、ヒト1~22番、X、Y染色体を分染し、示している。青色ラベルされたX染色体を3本観察できた(左パネル)。またX以外の染色体は8番、18番、Y染色体以外4本ずつ観察されたことから、四倍体細胞であることがわかった。親株のHT1080細胞 HPRT欠損株は四倍体であるとき、X染色体を二本もつことがわかっている。以上のことから、ヒトiPS細胞由来の外来X染色体がHT1080 HPRT欠損株に導入されたことにより3本のX染色体が観察された、と示された。
【
図13】この図は、ヒトiPS細胞からHT1080 HPRT欠損株に外来X染色体を導入した細胞株のHATおよび6-チオグアニン感受性評価試験の結果を示している。HT1080野生型株、HT1080 HPRT欠損株(中列パネル)、外来X染色体含有HT1080 HPRT欠損株(右列パネル)に対して、HAT選抜(上段パネル)および6-チオグアニンを20μM選抜(下段パネル)行った際の顕微鏡観察像を示している。HT1080野生型株は正常HPRT遺伝子を持つため、HAT耐性であり、6-チオグアニン感受性であった(
図13左パネル)。HT1080欠損株は、内在X染色体上の内在HPRT遺伝子は欠損しているため、HAT感受性であり、6-チオグアニン非感受性であった(中パネル)。外来X染色体含有HT1080 HPRT欠損株は、HPRT遺伝子を再獲得しているため、野生型株と同様に、HAT耐性であり、6-チオグアニン感受性であった(
図13右パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明をさらに詳細に説明する。
1.ヒト細胞由来又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞の作製
本発明は、第1の態様において、目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞(但し、癌細胞を除く)からヒト細胞由来微小核細胞又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製するための方法であって目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を、微小管重合阻害剤(但し、コルセミドを除く)、微小管脱重合阻害剤及び紡錘体チェックポイント阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養してヒト細胞由来微小核細胞又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞を生成する工程、並びに、目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞を回収する工程を含む上記方法を提供する。
【0018】
以下に各工程について説明する。
はじめに、上記目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞について、以下に説明する。
【0019】
上記ヒト細胞又は非ヒト動物細胞は、癌組織由来の細胞株である癌細胞(腫瘍細胞とも称する。)を除く以外は特に制限されないものとし、いずれの細胞も含む。そのようなヒト細胞又は非ヒト動物細胞には、例えば臓器、器官の組織に由来する細胞、幹細胞など、例えばそれらの初代培養細胞、株化細胞、不死化細胞、ATCC寄託細胞、人工多能性幹(iPS)細胞などを含むことができる。ヒト細胞又は非ヒト動物細胞の例は、非限定的に、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、脳細胞、筋細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、心筋細胞、毛乳頭細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞などである。
【0020】
上記ヒト細胞又は非ヒト動物細胞の好ましい例は、非限定的に、iPS細胞または不死化間葉系幹細胞である。
【0021】
本明細書中の「目的DNA」という用語は、使用目的が明確であるDNAであり、MMCT法の使用を考慮すると、例えばヒト由来の染色体もしくは染色体断片、人工染色体などを含む。人工染色体の例はヒト人工染色体及び哺乳類人工染色体(例えばマウス人工染色体、ラット人工染色体など)を含む。目的DNAは、好ましくは正常ヒト染色体であり、或いは目的遺伝子を含む、ヒト人工染色体又は哺乳類人工染色体であってよい。
【0022】
本明細書中の「目的遺伝子」という用語は、使用目的が明確である有用な遺伝子であり、場合により当該遺伝子は遺伝子座もしくは染色体断片に含まれていてもよい。また、目的遺伝子は、外来遺伝子として上記人工染色体に導入されてもよいし、或いは、予め上記人工染色体に含まれていてもよい。
【0023】
目的遺伝子は、非限定的に、例えば、疾患原因遺伝子、治療用遺伝子、それらの遺伝子を含む染色体断片、細胞分化に必要な遺伝子などを包含し、例えば、サイトカイン類、インターフェロン、インターロイキン、ケモカイン(細胞遊走活性をもつ因子)、顆粒球コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、成長因子(例えば血小板由来生長因子、血管内皮成長因子、肝細胞成長因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、等)、栄養因子(例えば神経栄養因子、脳由来神経栄養因子、等)、エリスロポエチン、血液凝固系タンパク質、血小板産生促進因子、ホルモン類、抗体類(例えば、モノクローナル抗体、scFvなどの組換え抗体、等)、酵素類などのタンパク質をコードする遺伝子もしくはDNAを含むことができる。目的遺伝子はさらに、筋ジストロフィー、血友病、神経変性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、遺伝性疾患、腫瘍などの疾患に関連する治療用遺伝子もしくはDNA、T細胞受容体(TCR)、ヒト白血球抗原(HLA)などの免疫系遺伝子又はDNAを含む。
【0024】
本明細書中「人工染色体」という用語は、ヒト及び齧歯類(例えばマウス、ラットなど)を含む哺乳動物(「哺乳類」ともいう。)由来の染色体のセントロメア、長腕及び、もしあれば、短腕のセントロメア近傍の断片(可能なかぎり遺伝子類が除去されている。)、及び天然もしくは人工テロメアを含む、人工的に作製された染色体由来ベクターを指す。従って、本発明の人工染色体は、従来のベクター系であるウイルス、YAC、BAC、PAC、コスミド、プラスミドなどと異なる。
【0025】
人工染色体には、例えば遺伝子、遺伝子座、染色体断片などの所望の核酸、例えばヒト由来の所望の核酸を挿入する部位が含まれており、この部位に所望の核酸が挿入される。
【0026】
マウス人工染色体については、例えば日本国特許第5557217号公報、日本国特許第4997544号公報などに、またヒト人工染色体については、例えば日本国特許第4895100号公報にそれぞれ記載されている。
【0027】
マウス人工染色体の作製に使用するためのマウス染色体は、マウス染色体1~19、X及びYのいずれでもよいが、好ましくは1番~19番染色体のいずれかである。例えばマウス11番染色体断片由来の人工染色体ベクターの場合には、上記長腕断片は、非限定的に例えば、該11番染色体の長腕のAL671968、或いはBX572640(AL671968よりセントロメア側に位置する。)、CR954170(AL671968及びBX572640よりセントロメア側に位置する。)又はAL713875(AL671968よりセントロメア側に位置する。)、よりも遠位の領域が削除された長腕断片からなる。或いは、マウス15番染色体断片由来のマウス人工染色体の場合、上記長腕断片は、例えば、AC121307、AC161799などの位置よりも遠位の領域が削除された長腕断片からなる。或いは、マウス16番染色体断片由来のマウス人工染色体の場合、上記長腕断片は、例えば、AC127687、AC140982などの位置よりも遠位の領域が削除された長腕断片からなる。
【0028】
ヒト人工染色体の作製に使用するためのヒト染色体は、ヒト染色体1~22、X及びYのいずれでもよいが、好ましくは1番~22番染色体のいずれかである。或いは、ヒト染色体として、ヒトiPS細胞由来の染色体を使用することができる。ヒト人工染色体の作製は、例えば特開2010-004887号公報、WO2008/013067などに記載されている方法、マウス人工染色体の作製に関する上記文献に記載される手法などを参照することができる。また、iPS細胞は相同組換え頻度が高いことから、ヒトiPS細胞由来の染色体を利用して、ヒト人工染色体を構築することも可能である。
【0029】
人工染色体には、所望の核酸(例えば遺伝子、遺伝子座、染色体断片など)を挿入するための、loxP(Creリコンビナーゼ認識部位)、FRT(Flpリコンビナーゼ認識部位)、φC31attB及びφC31attP(φC31リコンビナーゼ認識部位)、R4attB及びR4attP(R4リコンビナーゼ認識部位)、TP901-1attB及びTP901-1attP(TP901-1リコンビナーゼ認識部位)、或いはBxb1attB及びBxb1attP(Bxb1リコンビナーゼ認識部位)などのDNA配列挿入部位をさらに含むことができる。また、人工染色体は、所望の核酸配列を挿入するための部位を含むことができるため、この部位に、所望の核酸を組み込むことによって、該人工染色体が任意の細胞に導入されたときに該所望の核酸を発現することが可能となる。
【0030】
所望の核酸は、非限定的に、例えば疾患原因遺伝子、治療用遺伝子、それらの遺伝子を含む染色体断片、レポーター遺伝子、マーカー遺伝子などを包含する。
【0031】
本発明の人工染色体における所望の核酸の挿入部位の近傍又は挿入部位の両側には、少なくとも1つのインスレーター配列を存在させることができる。インスレーター配列は、エンハンサーブロッキング効果(すなわち、隣り合う遺伝子が互いに影響を受けない)又は染色体バウンダリー効果(遺伝子発現を保証する領域と遺伝子発現が抑制される領域を隔て区別する)を有する。このような配列には、例えばヒトβグロビンHS1~HS5、ニワトリβグロビンHS4などが包含されてもよい。
【0032】
上記供与細胞には、上記の所望のDNAが、例えばリポフェクション法などの遺伝子導入技術を用いて供与細胞中のヒト人工染色体、哺乳類人工染色体などの人工染色体上に導入されうる。遺伝子導入後、目的DNAを含む供与細胞は、例えばHAT選択法によって検出し回収することができる。
【0033】
ヒト細胞又は非ヒト動物細胞にはさらに、目的の微小核細胞の選択のために、薬剤耐性遺伝子(例えばブラストサイジン(Blasticidin)耐性遺伝子、ネオマイシン(G418)耐性遺伝子など)及び/又は蛍光タンパク質をコードする遺伝子(例えばGFP、DsRedなど)を導入することができる。
【0034】
次に、微小核形成誘導剤及び微小核形成について説明する(
図1)。
本発明の方法は、目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を、微小管重合阻害剤(但し、コルセミドを除く)、微小管脱重合阻害剤及び紡錘体チェックポイント阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養することを特徴としている。
【0035】
微小管重合阻害剤は、コルセミドを除く以外は、また微小核細胞を形成する限り、特に限定されないものとし、例えば、コルヒチン(Colchicine)とビンクリスチン(Vincristine)の混合物などを含む。
【0036】
微小管脱重合阻害剤は、微小核細胞を形成する限り、特に限定されないものとし、例えば、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドセタキセルとパクリタキセルの混合物などを含む。
【0037】
紡錘体チェックポイント阻害剤は、微小核細胞を形成する限り、特に限定されないものとし、例えば、リバーシン(Reversine)、ヘスペラジン(Hesperadin)、リバーシンとヘスペラジンの混合物などを含む。
【0038】
培地中の微小核形成誘導剤の好適濃度は、微小核形成誘導剤の種類により異なり、例えば、リバーシン0.001nM~1M、パクリタキセル0.001nM~1M、又はコルヒチンとビンクリスチン(0.01:9.99~9.99:0.01(重量))の混合物0.001nM~1Mであるが、微小核細胞が形成される限り、上記の範囲に限定されないものとする。好ましい微小核形成誘導剤は、リバーシン又は、リバーシンとパクリタキセル混合物である。
【0039】
培地は、動物細胞の培養のために使用される培地であれば制限されない。基本培地は、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ハムF-12培地、RPMI-1640培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、それらの混合培地などであり、ヒトiPS細胞用培地は、霊長類ES細胞用培地(リプロセル社、日本)などを使用することができる。
【0040】
微小核形成誘導処理方法は、例えば以下の手順で行うことができる。
目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を供与細胞として、供与細胞を細胞培養フラスコ(例えば底面積25cm2)用いて培養し、約70%コンフルエントになった時点で、上記培養培地を用いて、形成誘導薬剤を加え、20%ウシ胎児血清(FCS)の存在下、37℃、5%CO2の条件下にて12~96時間又はそれ以上培養を行う。
【0041】
最後に、上記培養によって微小核細胞集団を回収し、さらに蛍光陽性や薬剤選択によって目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞を回収する。
【0042】
微小核細胞の回収は、例えば次のように行うことができる。
微小核形成誘導後、フラスコ内の培地をアスピレートし、そのフラスコの9分目までをサイトカラシンBで満たす。フラスコを大型高速遠心機(例えばBECKMAN)専用の容器に挿入し、温湯(34℃)をフラスコが隠れない程度に加え、遠心分離(Rortor ID10.500、8,000rpm、1時間、34℃)する。遠心分離終了後、サイトカラシンBを回収し、フラスコ内のペレットを、2mlの無血清培地DMEMにて15mlチューブに回収する。8μm→5μm→3μmフィルターの順にゆっくりとフィルトレーションした後、それぞれのチューブを遠心分離(1,200rpm、5分、室温)し、上清をアスピレートした後、各チューブのペレットをまとめて5mlの無血清培地DMEMに回収、懸濁し、遠心分離(2000rpm、5分)し、微小核細胞を回収する。
【0043】
本発明の上記方法はまた、上記微小核形成誘導剤を用いて目的DNAを含む非ヒト動物細胞(但し、癌細胞を除く)から非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製するために使用することができる。それゆえ、この方法もまた本発明に包含されるものとする。
具体的には、第2の態様において、目的DNAを含む非ヒト動物細胞(但し、癌細胞を除く)から非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製するための方法であって、上記非ヒト動物細胞を、リバーシン、パクリタキセル、又はリバーシンとパクリタキセルの混合物、及びコルヒチンとビンクリスチンの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの微小核形成誘導剤を含有する培地中で培養して非ヒト動物細胞由来微小核細胞を生成し、並びに、上記目的DNAを含む非ヒト動物細胞由来微小核細胞を回収することを含む方法が提供される。
【0044】
非ヒト動物細胞は、すべての動物細胞を指し、非限定的に、例えば齧歯類細胞、偶蹄類細胞、奇蹄類細胞、霊長類(ヒトを除く)細胞、イヌ科細胞、ネコ科細胞、鳥類細胞、爬虫類細胞、両生類細胞、昆虫細胞などを含む。好ましい非ヒト動物細胞は、齧歯類細胞である。
【0045】
上記齧歯類細胞は、マウス、ラット、ハムスターなどの動物の臓器、器官の組織に由来する細胞など、例えばそれらの初代培養細胞、株化細胞、ATCC寄託細胞などを含むことができる。齧歯類細胞の例は、非限定的に、上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞、肝細胞、筋細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、心筋細胞、毛乳頭細胞、神経細胞、卵巣細胞などである。
上記齧歯類細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはマウス由来A9細胞である。
上記目的DNA、微小核形成誘導剤などについては、上記ヒト細胞又は非ヒト動物細胞の説明をここでも引用する。
【0046】
2.目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞の作製
本発明は、第3の態様において、目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を作製するための方法であって、上記1.に記載の方法によって目的DNAを含むヒト細胞からヒト細胞由来微小核細胞、或いは目的DNAを含む非ヒト動物細胞(但し、癌細胞を除く)から非ヒト動物細胞由来微小核細胞を作製する工程、上記ヒト細胞由来微小核細胞又は非ヒト動物細胞由来微小核細胞と、それぞれヒト細胞又は非ヒト動物細胞とを細胞融合する工程、それによって得られた上記目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を回収する工程を含む、目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を作製するための方法を提供する。
【0047】
以下に、各工程について説明する。
細胞融合の工程は、MMCT(微小核細胞融合)法の変法を用いて、上記1.で作製された目的DNAを含む微小核細胞と、受容細胞としてのヒト細胞株とをフィーダー細胞非存在下で共培養して細胞融合し、目的DNAを含むヒト細胞株を作製することを含む。
【0048】
ヒト細胞又は非ヒト動物細胞は、例えば正常細胞、不死化細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞、(例えばヒトもしくは哺乳類体細胞由来)iPS細胞などを含むが、目的DNAの導入が可能なかぎり限定されないものとする。
【0049】
MMCT(微小核細胞融合)法の変法は、微小核細胞の表面にウイスルエンベロープタンパク質を発現させることを含む。そのために、供与細胞である上記ヒト細胞又は非ヒト動物細胞は予め、ウイルスエンベロープタンパク質をコードするDNAで発現可能なように形質転換しておくことができる。
【0050】
ウイスルエンベロープタンパク質は、例えば麻疹ウイルス、白血病ウイルスなどのウイルス由来のエンベロープタンパク質であり、このエンベロープタンパク質には、麻疹ウイルス由来エンベロープタンパク質の場合、例えばヘマグルチニン(Hemaglutinin;H)タンパク質及びフュージョン(Fusion;F)タンパク質、白血病ウイルス由来エンベロープタンパク質の場合、例えばSUタンパク質及びTMタンパク質を含むことができる。好ましいウイスルエンベロープタンパク質は、麻疹ウイルス由来エンベロープタンパク質、例えばHタンパク質及びFタンパク質である。
【0051】
Hタンパク質を遺伝子工学技術により、Hタンパク質が特定の受容細胞の表面抗原に結合可能にするように改変を加えることができる。例えば、抗体の抗原認識の最小単位single chain Fv(ScFv)、好ましくは抗CD9抗体、抗CD13抗体もしくは抗CD71抗体、或いはこれらの抗体のScFvをHタンパク質に融合することで野生型Hタンパク質では融合できない細胞種に対しても融合可能となる。または融合能を付与するためにレシピエント細胞に染色体受容細胞に対して、Hタンパク質に結合しうるCD46抗原、CD120(SLAM)抗原を一過的に発現させることで、微小核細胞融合を可能とさせることができる。或いは、Hタンパク質にTagペプチド配列を付加することができ、受容細胞に抗His tag抗体もしくは、抗Hタンパク質抗体を発現するよう遺伝子改変を加えることで、融合を引き起こすことができる。
【0052】
上記各エンベロープタンパク質をコードするDNAを含むプラスミド、或いは複数のエンベロープタンパク質をコードするDNAカセットを含むプラスミドを、遺伝子組換え技術によって構築し、これらのプラスミドで供与細胞を形質転換する。上記形質転換細胞を作成する際、自己細胞融合が起きないように、ドナー細胞のCD46抗原、CD120抗原、あるいはHタンパク質に融合された抗体ScFvと結合する表面抗原を欠損させることで、微小核細胞融合を可能とさせることができる。
【0053】
供与細胞であるヒト細胞又は非ヒト動物細胞にはさらに、目的細胞の選択のために、薬剤耐性遺伝子(例えばBlasticidin耐性遺伝子、ネオマイシン(G418)耐性遺伝子など)及び/又は蛍光タンパク質をコードする遺伝子(例えばGFP、DsRedなど)を導入することができる。
【0054】
上記の手法によってウイスルエンベロープタンパク質を細胞表面に発現する、かつ目的DNA(例えば人工染色体)を含む供与細胞を作製することができる。
【0055】
受容細胞がヒト細胞又は非ヒト動物細胞である場合には、フィーダーフリー培養法及び、ウイルスエンベロープを用いるMMCT法を使用することによって、目的DNA(例えばヒト人工染色体、哺乳類人工染色体などの人工染色体)をヒト細胞又は非ヒト動物細胞に導入することができる。
【0056】
iPS細胞は、体細胞(例えば、体性幹細胞、前駆細胞、及び/又は、成熟細胞を含む。)に、ある特定の再プログラム化因子(DNA又はタンパク質)を導入し、適当な培地にて培養、継代培養することによって約3~5週間でコロニーを生成する。再プログラム化因子は、例えばOct3/4、Sox2、Klf4及びc-Mycからなる組み合わせ;Oct3/4、Sox2及びKlf4からなる組み合わせ;Oct4、Sox2、Nanog及びLin28からなる組み合わせ;あるいは、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc、Nanog及びLin28からなる組み合わせなどが知られている(K.Takahashi and S.Yamanaka,Cell;126:663-676(2006);WO2007/069666;M.Nakagawa et al.,Nat.Biotechnol.26:101-106(2008);K.Takahashi et al.,Cell;131:861-872(2007);J.Yu et al.,Science;318:1917-1920(2007);J.Liao et al.,Cell;Res.18,600-603(2008))。培養例は、マイトマイシンC処理したマウス胎仔線維芽細胞株(例えばSTO)をフィーダー細胞とし、このフィーダー細胞層上でES細胞用培地を用いて、再プログラム化因子発現ベクター導入体細胞(約104~105細胞/cm2)を約37℃の温度で培養することを含む。このときフィーダー細胞は必ずしも必要ではない(Takahashi,K.et al.,Cell;131:861-872(2007))。基本培地は、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ハムF-12培地、RPMI-1640培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、それらの混合培地などであり、ヒトiPS細胞用培地は、霊長類ES細胞用培地(リプロセル社)などを使用することができる。
【0057】
フィーダー細胞の非存在下でのiPS細胞の培養培地は、例えばStemFitTM AK02N(リプロセル)、TeSRTM(STEMCELL Technologies)、NutriStem XF/FF Culture Medium(STEM GWNT)などがあげられる。また培養用基質はGeltrrexTM LDEV-Free hESC-qualified(Thermo Fisher Scientific)、iMatrixTM-511(ニッピ)、hES Qualified MatrigelTM(Corning)などがあげられる。
【0058】
フィーダー細胞の非存在下、上記例示の培地にて、上記1.で作製された、目的DNAを含むヒト細胞由来微小核細胞又は目的DNAを含む非ヒト動物(例えば齧歯類)細胞由来微小核細胞と、受容細胞としてのそれぞれヒト細胞又は非ヒト動物細胞とを共培養して細胞融合を行う。その後、例えば薬剤(例えば抗生物質)を含む培地で培養することによって、薬剤耐性(及び蛍光陽性)を指標として目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞を選択することができる。
【0059】
細胞融合のための培養条件は、例えば、培地10%牛胎児血清(FCS)を含むDMEM、温度37℃、期間24時間である。或いは、別の培養条件は、例えば、培地Stemfit、基質iMatrix-511 0.5μg/mLでの培養皿コーティング温度37℃、期間24時間である。
【実施例】
【0060】
以下の実施例を参照しながら、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
<実施例1>
【0061】
動物細胞への微小核形成誘導剤の探索
[A]ヒト不死化間葉系幹細胞への微小核形成誘導剤の探索
微小核形成誘導剤の候補として、細胞分裂阻害剤があげられる。例として、微小管重合阻害剤、微小管脱重合阻害剤(微小管安定化剤)、及びM期チェックポイントタンパク阻害剤である。具体例として、微小管重合阻害剤であるコルセミド(Colcemid)、MAS(コルヒチンおよびビンクリスチンの混合試薬)、微小管脱重合阻害剤であるパクリタキセル(Paclitaxel)を用いて微小核形成効率を比較した。それらに加えてM期チェックポイントタンパクであるオーロラキナーゼ(Aurora kinase)A及びBの阻害剤であるリバーシン(Reversine)の相乗効果を検討した。
【0062】
[A.1.1]検証用細胞の播種と各種阻害剤での処理
ヒト不死化間葉系幹細胞(hiMSC:京都大学・戸口田博士より分与)を6穴プレートの各穴に5×105個ずつを播種し、37℃、5%CO2の条件下にて24時間培養した。微小核形成誘導試験として、コルセミド(Colcemid)(0.05μg/mL、0.1μg/mL、0.2μg/mL)、MAS(0.1μg/mL、0.2μg/mL、0.4μg/mL)、パクリタキセル(Paclitaxel)(0.8nM、4nM、20nM、100nM、400nM)で処理しつつ、リバーシン(Reversine)(添加なし、500nM、1000nM、1500nM)の添加、計26条件を設定し、37℃、5%CO2の条件下にて48時間培養した。
【0063】
[A.1.2]DAPI染色法による微小核形成効率の観察
微小核形成誘導後に生細胞を観察するため、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、DAPI1μg/mLの濃度で15分間染色した。蛍光顕微鏡を用いて観察し微小核誘形成導率を比較した。各細胞に微小核が形成されているかを観察し、結果を図示した(
図2)。この結果から、パクリタキセル(Paclitaxel)20nM、リバーシン(Reversine)500nMで処理した際に最も効率よく微小核が形成されることを見出した。従来のコルセミド(Colcemid)のような微小管重合阻害剤ではなく、Paclitaxelのような微小管脱重合阻害剤が有効であることを見出した。また、M期チェックポイント阻害剤であるリバーシン(Reversine)の併用が有用であると見出した。
【0064】
[B]ヒトiPS細胞への微小核形成誘導剤の探索
[B.1.1]ヒトiPS細胞の培養
ヒトiPS細胞を予め0.5μg/cm2のLamininTM-511(ニッピ)でコートした6穴プレートに対して、5×105個ずつヒトiPS細胞を播種し、10μM Y-27632を添加し、37℃、5%CO2の条件下にて24時間培養した。微小核形成誘導試験として、コルセミド(Colcemid)0.25μg/mL、MAS0.2μg/mLもしくはパクリタキセル(Paclitaxel)(20nM、40nM、60nM、100nM、400nM)で処理しつつ、リバーシン(Reversine)(添加なし、500nM、1000nM、1500nM)の添加の計22条件を設定し、37℃、5%CO2の条件下にて48時間培養した。
【0065】
[B.1.2]顕微鏡による微小核形成効率の観察
微小核形成誘導後に顕微鏡を用いて観察し微小核誘形成導率を比較した。結果として、コルセミド(Colcemid)0.25μg/mLの条件に対してMAS0.2μg/mLの条件において微小核形成誘導が観察された(
図3)。さらにパクリタキセル(Paclitaxel)では濃度依存的に微小核形成率の増加が観察された(
図3)。また、M期チェックポイント阻害剤であるReversineの併用が有用であると見出した。
【0066】
[C]CHO細胞への微小核形成誘導剤の効果の検証
[C.1.1]CHO細胞の培養
核内局在を示す赤色蛍光タンパクを発現するCHO MHG#4aを96穴プレートに対して、1×104個ずつ播種し、パクリタキセル(Paclitaxel)(0nM、96nM、192nM、384nM、768nM、1152nM、1536nM、1920nM)および、リバーシン(Reversine)(0nM、192nM、384nM、768nM、1536nM、3072nM、4608nM、6144nM、7680nM、9216nM、10752nM、12288nM)を組み合わせた96条件を振り分け、37℃、5%CO2の条件下にて72時間培養した。
【0067】
[C.1.2]蛍光顕微鏡による微小核形成効率の観察
微小核形成誘導後に蛍光顕微鏡を用いて観察し微小核誘形成導率を比較した結果の代表例を示す(
図4、
図5)。結果として、パクリタキセル(Paclitaxel)およびリバーシン(Reversine)では濃度依存的に微小核形成率の増加が観察された。
【0068】
[D]非ヒト動物細胞への微小核形成誘導剤の効果の検証
コルセミド(Colcemid)および、パクリタキセル(Paclitaxel)およびリバーシン(Reversine)の非ヒト動物由来細胞への微小核形成誘導について検証した。詳細には、マウス線維芽細胞株A9細胞、マウス胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株、ニワトリプレB細胞DT40細胞、ラットES細胞、ブタ胎仔由来線維芽細胞についてコルセミド(Colcemid)および、パクリタキセル(Paclitaxel)およびリバーシン(Reversine)にて処理し、顕微鏡観察にて、微小核形成の有無を評価した。
[D.1.1]検証用細胞の播種と各種阻害剤での処理
マウス線維芽細胞株A9細胞、マウス胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株、ブタ胎仔由来線維芽細胞、ニワトリプレB細胞DT40細胞、ラットES細胞を24穴プレートの各穴に1×105個ずつを播種し、37℃、5%CO2の条件下にて24時間培養した。微小核形成誘導試験として、パクリタキセル(Paclitaxel)(4nM、25nM、100nM、400nM)で処理しつつ、リバーシン(Reversine)0nM、500nM、1000nM、1500nMの添加の有無についての二群に分け、計20条件を設定し、37℃、5%CO2の条件下にて培養しつつ、24、48、72時間時点で顕微鏡観察を行った。
【0069】
[D.1.2]顕微鏡観察による微小核形成効率の観察
顕微鏡を用いて観察し微小核誘形成導率を比較した。マウス線維芽細胞株A9細胞、マウス胎仔由来線維芽細胞初代培養細胞株、ブタ胎仔由来線維芽細胞、に微小核が形成されているかを観察し、明視野画像を取得した(
図6上段パネル)。また、明視野では微小核形成像の観察が困難なDT40細胞、ラットES細胞については、細胞を回収し、0.075M KClにて室温、15分間懸濁し、その後、カルノア溶液を用いて固定を行い、スライドガラス上に塗布し、DAPI染色を行った。これを蛍光顕微鏡を用いて観察した(
図6下段パネル)。この結果から、パクリタキセル(Paclitaxel)(4nM、25nM、100nM、400nM)で処理しつつ、リバーシン(Reversine)(0nM、500nM、1000nM、1500nM)で処理した際に、広範な非ヒト動物細胞に微小核形成誘導能を示した。
<実施例2>
【0070】
ヒト不死化間葉系幹細胞からヒト細胞株HT1080への人工染色体ベクターの導入
[A]薬剤耐性遺伝子で標識されたHACベクターのHT1080への導入
薬剤耐性遺伝子で標識されたHACベクターを含有するhiMSCから薬剤耐性遺伝子で標識されたHACベクターをヒト細胞であるHT1080へ導入する。この際に上記のヒト細胞に微小核形成誘導が効率可能な薬剤処理条件を使用し、微小核細胞融合法によりHT1080へ導入した。
【0071】
[A.1.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
供与(「ドナー」ともいう)細胞であるHACベクター含有hiMSCを細胞培養フラスコ底面積25cm2×12本を用いて培養し70%コンフルエントになった時点で、微小核形成誘導処理(パクリタキセル(Paclitaxel)1nM~1μMおよびリバーシン(Reversine)1nM~1μM)を37℃、5%CO2の条件下にて48時間行った。微小核形成誘導が終了したら、フラスコ内の培地(medium)をアスピレートし、そのフラスコの9分目までをサイトカラシンBで満たした。フラスコを大型高速遠心機(BECKMAN)専用の容器に挿入し、温湯(34℃)をフラスコが隠れない程度に加え、遠心分離(Rortor ID10.500、8,000rpm、1h、34℃)をした。遠心分離終了後、サイトカラシンBを回収し、各フラスコ内のペレットを、それぞれ2mlの無血清培地DMEMにて15mlチューブに回収した。8μm→5μm→3μmフィルターの順にゆっくりとフィルトレーションした後、それぞれのチューブを遠心分離(1,200rpm、5分、室温(R.T))し、上清をアスピレートした後、各チューブのペレットをまとめて5mlの無血清培地DMEMに回収し、懸濁し、遠心分離(2000rpm、5分)し、微小核細胞を回収した。予め前日に受容(「レシピエント」ともいう)細胞HT1080を6cm直径細胞培養皿に90%コンフルエントになるように播種したものを用意し、これを無血清培地(DMEM)にて洗浄した。精製した微小核をPHA-P(SIGMA)を含む無血清培養液2mlに再度懸濁し、無血清培養液(DMEM)を除去したHT1080上に静かに播種した。培養皿を37℃、5%CO2の条件下にて20分間静置した。上清を除去し、PEG1000(Wako、日本)[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する。]溶液を1mlで正確に90秒間融合した。無血清培養液(DMEM)を5mlで3回洗浄し、通常のHT1080の培養液5mlで37℃、一晩インキュベートした。24時間後10cm直径培養皿6枚に再播種した。更に24時間後、ブラストサイジンSを8μg/mlになるように加え、3~4週間選択培養した。1回の微小核細胞融合で合計3個のGFP蛍光陽性かつ薬剤耐性コロニーが出現した。これらを単離し増殖させ、以降の解析を行った。
【0072】
[A.1.2]FISH解析による薬剤耐性クローンにおけるHACベクター導入の検証 上記で得られたクローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163-1175,2001)に記された方法でアルフォイド配列を赤色プローブ(矢印)に、pCX-EGFPベクターを緑色プローブ(矢頭)としたFISH解析を行ったところ解析した3クローンにおいて、HACベクターの存在が示された(
図7)。
<実施例3>
【0073】
ヒトiPS細胞からヒト細胞株HT1080への人工染色体ベクターの導入
[A]薬剤耐性遺伝子で標識されたMACベクターのHT1080への導入
薬剤耐性遺伝子で標識されたMACベクターを含有するヒトiPS細胞から薬剤耐性遺伝子で標識されたMACベクターをヒト細胞であるHT1080へ導入する。この際に上記のヒト細胞に微小核形成誘導が効率可能な薬剤処理条件を使用し、微小核細胞融合法によりHT1080へ導入する。
【0074】
[A.1.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるヒトiPS細胞を予め0.5μg/cm
2のLaminin-511でコートした細胞培養フラスコ×12に播種し、10μM Y-27632を添加し、37℃、5%CO
2の条件下にて24時間培養した。その後、通常培養のiPS培養培地に交換し増殖させ、90%コンフルエントに到達した際にMAS0.2μg/mLを加え、37℃、5%CO
2の条件下にて48時間培養し、微小核を形成させた。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8000rpm、1時間の遠心を行った。ミクロセルを無血清DMEM培地に懸濁し、8μm、5μm、3μmフィルターにて精製した。精製後、2000rpm、10分間遠心し、無血清DMEM培地5mlに懸濁した。ミクロセルを5mlの無血清DMEM培地に懸濁し、8μm、5μm、3μmフィルターにて精製した。精製後、2000rpm、10分間遠心した。予め前日にレシピエント細胞HT1080を6cm直径細胞培養皿に90%コンフルエントになるように播種したものを用意し、これを無血清培地(DMEM)にて洗浄した。精製した微小核をPHA-P(SIGMA)を含む無血清培養液2mlに再度懸濁し、無血清培養液(DMEM)を除去したHT1080上に静かに播種した。培養皿を37℃、5%CO
2の条件下にて20分間静置した。上清を除去し、PEG1000(Wako)[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1mL添加して濾過滅菌する。]溶液を1mlで正確に90秒間融合した。無血清培養液(DMEM)を5mlで3回洗浄し、通常のHT1080の培養液5mlで37℃、一晩インキュベートした。24時間後10cm直径培養皿6枚に再播種した。更に24時間後、G418を800μg/mlになるように加え、3~4週間選択培養した。1回の微小核細胞融合で合計4個のGFP蛍光陽性かつ薬剤耐性コロニー(
図8)が出現した。これらを単離し増殖させ、以降の解析を行った。
【0075】
[A.1.2]FISH解析による薬剤耐性クローンにおけるMACベクター導入の検証 上記で得られたクローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163-1175,2001)に記された方法でmouse cot-1配列を赤色プローブ(矢印)に、pCX-EGFPベクターを緑色プローブ(矢頭)としたFISH解析を行ったところ、解析した4クローンにおいて、MACベクターの存在が示された(
図9)。
<実施例4>
【0076】
ヒトiPS細胞(男性)からヒトiPS細胞(女性)へのX染色体の導入
[A]実施例3に記載の方法を応用して、ヒトiPS細胞からヒトiPS細胞に微小核細胞融合法を用いて内在のヒト染色体を導入する。
【0077】
[A.1.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるHFL-I由来(RCB0521、RIKEN BRC)から山中因子を用いて誘導した男性由来ヒトiPS細胞(核型:46,XY)を予め0.5μg/cm2のLaminin-511でコートした細胞培養フラスコ×12に播種し、10μMY-27632を添加し、37℃、5%CO2の条件下にて24時間培養する(非ベクター導入群)。または、上記iPS細胞のCD46を欠損させ、抗CD9-ScFv融合MV-H発現プラスミドベクター12μg及びMV-F発現プラスミド12μgをLipofectamine2000を用いて仕様書に従い導入する(ベクター導入群)。その後、非ベクター導入群、ベクター導入群ともに、通常培養のiPS培養培地に交換し増殖させ、90%コンフルエントに到達した際にMAS0.2μg/mLを加え、37℃、5%CO2の条件下にて48時間培養し、微小核を形成させる。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8,000rpm、1時間の遠心を行う。ミクロセルを無血清DMEM培地に懸濁し、8μm、5μm、3μmフィルターにて精製する。精製後、2000rpm、10分間遠心し、無血清DMEM培地5mlに懸濁する。ミクロセルを5mlの無血清DMEM培地に懸濁し、8μm、5μm、3μmフィルターにて精製する。精製後、2000rpm、10分間遠心した。予め前日にレシピエント細胞である201B7(HPS0063、RIKEN BRC)由来のHPRT遺伝子を欠損させたヒトiPS細胞(核型:46,XX)またはレッシュ・ナイハン症候群患者由来のヒトiPS細胞(JCRB0072/KURB1995/KURB1996、JCRBまたはATCCTM CRL-1110TM、ATCCなどの患者由来線維芽細胞から誘導したヒトiPS細胞株)を6cm直径細胞培養皿に90%コンフルエントになるように播種したものを用意し、これを無血清培地(DMEM)にて洗浄する。ドナー細胞にベクターを導入しなかった微小核細胞の群は精製した微小核をPHA-P(SIGMA)を含む無血清培養液2mlに再度懸濁し、無血清培養液(DMEM)を除去したヒトiPS細胞上に静かに播種する。培養皿を37℃、5%CO2の条件下にて20分間静置する。上清を除去し、PEG1000(Wako、日本)[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1mL添加して濾過滅菌する。]溶液を1mlで正確に90秒間融合する。無血清培養液(DMEM)を5mlで3回洗浄し、通常のヒトiPS細胞の培養液5mlで37℃、一晩インキュベートする。ベクターを導入した微小核細胞の群にはヒトiPS細胞培養用培地で懸濁して、レシピエント細胞を培養しているディッシュに添加し、インキュベートする。ベクター導入群、非導入群ともに、24時間後10cm直径培養皿6枚に再播種する。更に24時間後、1xHATになるように加え、3~4週間選択培養する。薬剤耐性コロニーを単離し増殖させ、以降の解析を行う。
【0078】
[A.1.2]キナクリン・ヘキスト二重染色よる核型解析
上記HAT耐性であったクローンについて、キナクリン・ヘキスト二重染色を行う。キナクリン・ヘキスト二重染色したクローンの染色体像を蛍光顕微鏡により観察することで核型:46,XXの細胞にさらにX染色体が導入されていることを確認することができる。
<実施例5>
【0079】
CHO細胞へのパクリタキセル(Paclitaxel)およびリバーシン(Reversine)処理による微小核形成誘導を介した微小核細胞融合法などによる染色体導入法の効率の改善
[A]薬剤耐性遺伝子で標識されたHACベクターのHT1080への導入
薬剤耐性遺伝子で標識されたHACベクターを含有するCHO MHG#4aから薬剤耐性遺伝子で標識されたHACベクターをヒト細胞であるHT1080へ導入する。この際に上記のヒト細胞に微小核形成誘導が効率可能な薬剤処理条件を使用し、微小核細胞融合法によりHT1080へ導入し、出現する薬剤耐性コロニー数を比較する。
【0080】
[A.1.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞であるHACベクター含有CHO細胞を10cm直径培養皿1枚に播種し、90%コンフルエントにまで培養した。これにMV-H発現プラスミドベクターおよびMV-F発現プラスミド12μgをLipofectamine2000を用いて仕様書に従い導入した。24時間後に25cm
2フラスコ3個にパッセージした翌日から、微小核形成誘導薬剤処理としてコルセミド処理(F12/20%FBS/0.1μg/mLコルセミド)を48時間行い、再度培地交換を行い、コルセミド処理(F12/20%FBS/0.1μg/mLコルセミド)を24時間行い、微小核を形成させた。もしくはパクリタキセル(Paclitaxel)およびリバーシン(Riversin)処理(F12/20%FBS/384nMパクリタキセル(Paclitaxel)/1536nMパクリタキセル(Paclitaxel))を48時間行い、微小核を形成させた。微小核形成誘導薬剤処理後、フラスコ内の培地を取り除き、フラスコの9分目までをサイトカラシンBで満たした。フラスコを遠沈管にセットし、温湯(34℃)をフラスコが隠れない程度に加え、JLA-10,500Rotor(BECKMAN)で8,000rpm、1時間、34℃で遠心分離した。遠心分離終了後、サイトカラシンBを回収除去し、各フラスコ内のペレットを2mL無血清DMEM培地にて50mLチューブに回収した。孔径8μm、5μm、3μmフィルターの順にフィルトレーションした後、2,000rpm、10min、室温(RT)で遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し各チューブのペレットをレシピエント細胞培養用培地で懸濁して、レシピエント細胞を培養しているディッシュに添加し、インキュベートした。レシピエント細胞はHT1080細胞を、90%コンフルエントに培養したものを使用した。24時間後、10cm直径培養皿5枚に再播種した。更に24時間後に、3μg/mLブラストサイジンSにより選択培養を行った。3~4週間選択培養した。出現したコロニー数をカウントし、グラフとして記載した(
図10)。結果として、パクリタキセル(Paclitaxel)およびリバーシン(Reversine)にて処理した群は、コルセミド(Colcemid)処理群に対して、18.3倍のHACベクター導入効率を示した(
図10)
<実施例6>
【0081】
ヒト不死化間葉系幹細胞からヒト細胞株HT1080へのヒトX染色体の導入
[A]実施例2に記載された方法を用いて、ヒト不死化間葉系幹細胞からヒトHT1080へ内在のX染色体を導入した。この際に上記のヒト細胞に微小核形成誘導が効率可能な薬剤処理条件を使用し、微小核細胞融合法によりHT1080へ導入した。
【0082】
[A.1.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
供与細胞であるhiMSCを、Poly-L-Lysine(50μg/mL)にて1時間コーティングした細胞培養フラスコ底面積25cm2×12本を用いて培養し、70%コンフルエントになった時点で、微小核形成誘導処理(パクリタキセル(Paclitaxel)1nM~1μMおよびリバーシン(Reversine)1nM~1μM)を37℃、5%CO2の条件下にて48時間行った。微小核形成誘導が終了したら、フラスコ内の培地をアスピレートし、そのフラスコの9分目までをサイトカラシンBで満たした。フラスコを大型高速遠心機(BECKMAN)専用の容器に挿入し、温湯(34℃)をフラスコが隠れない程度に加え、遠心分離(Rortor ID10.500、8,000rpm、1h、34℃)をした。遠心分離終了後、サイトカラシンBを回収し、各フラスコ内のペレットを、それぞれ2mlの無血清培地DMEMにて15mlチューブに回収した。8μm→5μm→3μmフィルターの順にゆっくりとフィルトレーションした後、それぞれのチューブを遠心分離(1,200rpm、5分、室温(R.T))し、上清をアスピレートした後、各チューブのペレットをまとめて5mlの無血清培地DMEMに回収し、懸濁し、遠心分離(2000rpm、5分)し、微小核細胞を回収した。予め前日に受容細胞HT1080 HPRT欠損株を6cm直径細胞培養皿に90%コンフルエントになるように播種したものを用意し、これを無血清培地(DMEM)にて洗浄した。精製した微小核をPHA-P(SIGMA)を含む無血清培養液2mlに再度懸濁し、無血清培養液(DMEM)を除去したHT1080上に静かに播種した。培養皿を37℃、5%CO2の条件下にて20分間静置した。上清を除去し、PEG1000(Wako、日本)[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1ml添加して濾過滅菌する。]溶液を1mlで正確に90秒間融合した。無血清培養液(DMEM)を5mlで3回洗浄し、通常のHT1080の培養液5mlで37℃、一晩インキュベートした。24時間後10cm直径培養皿6枚に再播種した。更に24時間後、50×HATサプリメント(Sigma)を1×HAT濃度になるように加え、3~4週間選択培養した。1回の微小核細胞融合で合計3個のGFP蛍光陽性かつ薬剤耐性コロニーが出現した。これらを単離し増殖させ、以降の解析を行った。
【0083】
[A.1.2]FISH解析による薬剤耐性クローンにおけるX染色体導入の検証
上記で得られた薬剤耐性クローンについてShinoharaらの報告(Human Molecular Genetics,10:1163-1175,2001)に記された方法で、X染色体を検出するプローブとして、下記のプライマーを用いてX染色体特異的alpha-satelliteを増幅し、赤色プローブを作製し、使用した。
DXZ1 ChrX alpha-satellite F:5'-ATAATTTCCCATAACTAAACACA-3'(配列番号1)
DXZ1 ChrX alpha-satellite R:5'-TGTGAAGATAAAGGAAAAGGCTT-3'(配列番号2)
対照実験として、X染色体を導入していない、HT1080 HPRT欠損株および、獲得した薬剤耐性クローンに行った。HT1080 HPRT欠損株は男性由来細胞であるため、X染色体が1本のみが含有されていると示された(
図11、左パネル)。一方で、獲得した薬剤耐性クローンでは、2本のX染色体が含有されていること示された(
図11、右パネル)。
【0084】
<実施例7>
ヒトiPS細胞(女性)からヒト細胞株HT1080HPRT欠損株へのヒトX染色体の導入
【0085】
[A]実施例3に記載の方法を応用して、ヒトiPS細胞からヒト細胞株HT1080 HPRT欠損株に微小核細胞融合法を用いて内在のヒト染色体を導入した。
【0086】
[A.1.1]微小核細胞融合及び薬剤耐性クローンの単離
ドナー細胞である女性由来ヒトiPS細胞株201B7(RCB、HPS0063)(核型:46,XX)を予め0.5μg/cm2のLaminin-511でコートした細胞培養フラスコ×12に播種し、10μM Y-27632を添加し、37℃、5%CO2の条件下にて24時間培養したその後、通常培養のiPS培養培地に交換し増殖させ、90%コンフルエントに到達した際にPaclitaxel20nM、Reversine500nM、37℃、5%CO2の条件下にて48時間培養し、微小核を形成させた。培養液を除去し、予め37℃で保温したサイトカラシンB(10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、34℃、8,000rpm、1時間の遠心を行った。ミクロセルを無血清DMEM培地に懸濁し、8μm、5μm、3μmフィルターにて精製する。精製後、2000rpm、10分間遠心し、無血清DMEM培地5mlに懸濁する。ミクロセルを5mlの無血清DMEM培地に懸濁し、8μm、5μm、3μmフィルターにて精製した。精製後、2000rpm、10分間遠心した。予め前日にレシピエント細胞であるHPRT遺伝子を欠損させた6-チオグアニン耐性HT1080細胞を6cm直径細胞培養皿に90%コンフルエントになるように播種したものを用意し、これを無血清培地(DMEM)にて洗浄する。精製した微小核をPHA-P(SIGMA)を含む無血清培養液2mlに再度懸濁し、無血清培養液(DMEM)を除去したヒトiPS細胞上に静かに播種する。培養皿を37℃、5%CO2の条件下にて20分間静置した。上清を除去し、PEG1000(Wako)[5gのPEG1000を無血清DMEM培地に完全に溶解し、ジメチルスルホキシドを1mL添加して濾過滅菌する。]溶液を1mlで正確に90秒間融合した。無血清培養液(DMEM)を5mlで3回洗浄し、通常の培養液5mlで37℃、一晩インキュベートした。24時間後10cm直径培養皿6枚に再播種した。更に24時間後、1×HATになるように加え、3~4週間選択培養した。薬剤耐性コロニーを単離し増殖させ、以降の解析を行った。
【0087】
[A.1.2]マルチカラーFISH解析
上記HAT耐性であったクローンについて、マルチカラーFISH解析を行った。マルチカラーFISH試薬(MetaSystems)にて染色した染色体像を蛍光顕微鏡により観察した。結果として、HT1080の通常核型では、二倍体の場合、X染色体一本を含有し、四倍体の場合、X染色体二本を含有するが、得られたクローンは四倍体でありながら、X染色体三本を含有していた。このことから、外来X染色体一本が導入されていることを確認できた(
図12)。
【0088】
[B.1.1]外来X染色体導入細胞株のHATおよび6-チオグアニン感受性評価試験
取得したHAT耐性細胞について、1×10
4細胞を6wellプレートの1ウェルに播種し、翌日から6-チオグアニン(6TG)を20μMの濃度で、120時間処理し、6-チオグアニン耐性能を評価した。HT1080野生型株はX染色体上に正常HPRT遺伝子を持つことにより、HAT耐性であり、6-チオグアニンを代謝し、細胞毒性を示した(
図13左パネル)。HT1080 HPRT欠損株については、内在X染色体上の内在HPRT遺伝子を欠損しているため、6-チオグアニンによる細胞障害活性を示さず、6-チオグアニン非感受性であった。一方で、1×HAT処理により細胞増殖が停止し、HAT感受性を示した。(
図13中パネル)HT1080 HPRT欠損株に外来正常X染色体を導入し取得した、外来X染色体含有HT1080 HPRT欠損細胞株においては、HT1080 野生型株と同様に、6-チオグアニンによる細胞障害活性が認められ、一方でHAT耐性であった(
図13右パネル)。これらのことからヒトiPS細胞からHT1080細胞へ正常HPRT遺伝子を保持するヒトiPS細胞由来X染色体を導入できたと示された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、目的DNAを含むヒト細胞又は非ヒト動物細胞(例えば齧歯類細胞)(供与細胞)からヒト細胞又は非ヒト動物細胞(受容細胞)に目的DNAを直接的に導入するための技術を提供するため、例えばヒトiPS細胞などのヒト細胞を利用した再生医療や医薬品開発に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0090】
配列番号1:プライマー
配列番号2:プライマー
【0091】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表】