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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】匂い測定装置及び匂い測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20220119BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20220119BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01N5/02 A
G01N27/12 A
G01N29/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018541761
(86)(22)【出願日】2016-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2016078501
(87)【国際公開番号】W WO2018061092
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】715010521
【氏名又は名称】株式会社アロマビット
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 俊一郎
【合議体】
【審判長】井上 博之
【審判官】蔵田 真彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0201182(US,A1)
【文献】特開2010-25728(JP,A)
【文献】特表2003-526768(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031080(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219608(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192338(US,A1)
【文献】特開2016-90460(JP,A)
【文献】特開2006-177863(JP,A)
【文献】特開平9-862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N5/02, 27/00-27/70, 29/00-29/52, 33/00
H04M1/00-1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
匂いを検出可能な匂いセンサと、
レンズ部を有する撮像装置と、
前記匂いセンサと前記撮像装置とを内部に備える筐体と、
制御プログラムを実行することにより前記匂いセンサ及び前記撮像装置の動作を制御する演算処理装置と、
を備えた匂い測定装置であって、
前記撮像装置による撮像方向と、前記筐体に配設された導入口を介して前記匂いセンサのセンサ面に空気を導く際の前記空気の導入方向と、が実質的に同一方向であり、
前記導入口を開閉可能な開閉装置が配設されており、
前記匂いセンサが匂いセンサチップであり、
前記筐体には、前記匂いセンサチップを挿入可能な穴が形成されており、
前記匂いセンサチップは、前記匂い測定装置に対して、前記穴を通じて装着及び脱着が可能であり、
前記制御プログラムが実行された状態で測定開始ボタンが押下されると、前記演算処理装置による動作制御に基づき前記匂いセンサによるベースライン測定が実行され、
前記ベースライン測定の完了後に再び前記測定開始ボタンが押下されると、前記演算処理装置による動作制御に基づき前記撮像装置による撮像と共に前記開閉装置によるシャッター開放及び前記匂いセンサによる匂い測定が実行される、匂い測定装置。
【請求項2】
前記匂いセンサは、
空気中の匂い物質を吸着する物質吸着膜と、
前記匂い物質の前記物質吸着膜への吸着状態を検出する検出器と、
を有するセンサ素子を複数備え、
前記複数のセンサ素子のそれぞれにおいて、前記匂い物質の前記物質吸着膜への吸着特性が異なる、請求項1に記載の匂い測定装置。
【請求項3】
前記撮像装置の前記レンズ部と、前記導入口と、が前記筐体における同一側の面である所定面に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の匂い測定装置。
【請求項4】
前記筐体における前記所定面とは異なる他の面に、換気口が形成された、請求項3に記載の匂い測定装置。
【請求項5】
前記導入口から前記センサ面への空気の導入を制御可能なファンを備える、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の匂い測定装置。
【請求項6】
GPS装置、温湿度計、気圧計、及び照度計のうち少なくともいずれか1つの属性データ取得装置を更に備える、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の匂い測定装置。
【請求項7】
前記匂いセンサによって測定された匂いのデータである匂いデータ、及び前記撮像装置によって生成された画像のデータである画像データを送信可能な通信装置を更に備える、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の匂い測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の匂い測定装置、及び、
当該匂い測定装置から送信された前記匂いデータ及び前記画像データを受信可能な受信手段と、受信した前記匂いデータ及び前記画像データを相互に関連付けて記憶可能な記憶手段と、を備える匂いデータ管理装置
を有する匂い測定システム
【請求項9】
前記記憶手段に複数の前記匂いデータが記憶された場合において、当該複数の匂いデータの中から特定の匂いデータに近似する匂いデータを抽出可能な抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された匂いデータに関連付けられた画像データを検索結果として返却する返却手段と、を前記匂いデータ管理装置が更に備える、請求項8に記載の匂い測定システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い測定装置、及び匂いデータ管理装置に関する。具体的には、空気の匂いを測定する匂い測定装置、及びその測定結果としての匂いデータを管理する匂いデータ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気の匂いを測定するために、空気中の匂い物質を特異的に吸着する水晶振動子を備えるセンサが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-187986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空気の匂いをセンサで測定し、その測定結果を保存しただけでは、その匂いが、何の匂いを測定したものであったのか(匂いの測定対象)、どこで測定されたものであったのか(測定場所)、どのような環境下で測定されたものであるのか(測定環境)等の匂いの属性情報を把握することができない。また、これら属性情報を収集するためには、測定者自らが、匂いを測定するたびに、匂いの測定対象、測定場所、測定環境等を計測、記録する必要がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、匂いを測定する際に、空気中に含まれる匂い物質をセンサで検出すると共に、匂いの測定対象等の属性情報をも測定可能な匂い測定装置、及びその測定結果を管理する匂い管理装置を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)匂いを検出可能な匂いセンサと、レンズ部を有する撮像装置と、を備えた匂い測定装置であって、前記撮像装置による撮像方向と、導入口を介して前記匂いセンサのセンサ面に空気を導く際の前記空気の導入方向と、が実質的に同一方向である、匂い測定装置。
【0007】
撮像装置による撮像方向と、空気の導入方向と、が実質的に同一方向であるため、匂い測定装置を移動させることなく、匂いの測定対象から空気中に分散した匂いを匂いセンサで検出可能であると共に、匂いの測定対象を撮像装置によって撮像することができる。また、匂いの測定と撮像とを、同時又は一連の動作で行うことができる。
【0008】
本発明において、「匂い」とは、ヒト、又はヒトを含む生物が、嗅覚情報として取得することができるものであり、分子単体、若しくは異なる分子からなる分子群がそれぞれの濃度を持って集合したものを含む概念とする。
【0009】
本発明において、上述の匂いを構成する、分子単体、若しくは異なる分子からなる分子群がそれぞれの濃度を持って集合したものを「匂い物質」と称する。ただし、匂い物質は、広義において、後述する物質吸着膜に吸着可能な物質を広く意味する場合があるものとする。すなわち、「匂い」には原因となる匂い物質が複数含まれることが多く、また、匂い物質として認知されていない物質又は未知の匂い物質も存在し得るため、一般的に匂いの原因物質とされていない物質も含まれ得る。
【0010】
(2)前記匂いセンサは、空気中の匂い物質を吸着する物質吸着膜と、前記匂い物質の前記物質吸着膜への吸着状態を検出する検出器と、を有するセンサ素子を複数備え、前記複数のセンサ素子のそれぞれにおいて、前記匂い物質の前記物質吸着膜への吸着特性が異なることが好ましい。
【0011】
匂いセンサが、物質吸着膜と検出器とを有するセンサ素子を複数備え、各センサ素子において、物質吸着膜への匂い物質の吸着特性が異なるため、匂いセンサによる匂いの測定結果を、物質吸着膜ごとに異なる匂い物質の吸着量の測定データとして得ることができる。これにより、匂いを測定データのセット(パターン)として評価することができる。
【0012】
(3)匂い測定装置は、前記匂いセンサと前記撮像装置とを内部に備える筐体を更に有し、前記撮像装置の前記レンズ部と、前記導入口と、が前記筐体における同一側の面である所定面に配置されていることが好ましい。
【0013】
撮像装置のレンズ部と、導入口と、が筐体における同一側の面である所定面に配置されていることにより、匂い測定装置を移動させることなく、匂いの測定対象から空気中に分散した匂いを匂いセンサで検出可能であると共に、匂いの測定対象を撮像装置によって撮像することができる。また、匂いの測定と撮像とを、同時又は一連の動作で行うことができる。
【0014】
(4)匂い測定装置は、前記筐体における前記所定面とは異なる他の面に、換気口が形成されていることが好ましい。
【0015】
匂い測定装置に、所定面とは異なる他の面に換気口が形成されていることにより、匂いセンサのセンサ面の近傍に位置する空気を換気することができる。これにより、物質吸着膜に吸着していた匂い物質の脱着を促進させることができる。このように、雰囲気中の空気でセンサ面近傍に位置する空気を換気することにより、匂いセンサを初期状態にリセットする、又は、次の測定に備えて雰囲気中の空気の匂いレベルにベースライン(基準)を合わせることができる。
【0016】
(5)匂い測定装置は、前記導入口を開閉可能な開閉装置が配設されていることが好ましい。
【0017】
導入口を開閉可能な開閉装置が配設されていることにより、測定対象の匂いをより際立たせて測定することができる。すなわち、開閉装置を閉じた状態で測定対象の近傍へ匂い測定装置を移動させ、測定準備が整った状態で開閉装置を開いて匂いを測定することで、開閉の前後での匂いの差(匂い物質の組成の差)が大きくなり、より測定対象の匂いの測定データ(匂いデータ)において、測定対象の特徴が際立つことになる。
【0018】
また、開閉装置を閉じた状態で、上述の換気口を用いてセンサ面近傍に位置する空気を換気することにより、導入口からの匂い物質の侵入を防ぐことができ、より良好にベースライン(基準)を合わせることができる。
【0019】
(6)匂い測定装置は、前記導入口から前記センサ面への空気の導入を制御可能なファンを備えることが好ましい。
【0020】
匂い測定装置が、導入口からの空気の導入を制御可能なファンを備えることにより、より積極的に測定対象から分散した匂い物質を匂いセンサのセンサ面へ導入することができる。
【0021】
(7)匂い測定装置は、GPS装置、温湿度計、気圧計、及び照度計のうち少なくともいずれか1つの属性データ取得装置を更に備えることが好ましい。
【0022】
匂い測定装置が、撮像装置に加えて、GPS装置、温湿度計、気圧計、照度計等の属性データ取得装置を更に備えることにより、匂いデータ及び画像データと共に、相互に関連付けられて記憶装置に記憶される、位置情報、気温・湿度情報、気圧情報、照度情報等の属性データを取得することができる。これにより、匂いデータの属性情報が充実し、より詳細に匂いデータを分類、整理し、管理することができる。
【0023】
(8)匂い測定装置は、前記匂いセンサによって測定された匂いデータ、及び前記撮像装置によって生成された画像データを送信可能な通信装置を更に備えることが好ましい。
【0024】
匂い測定装置が、通信装置を更に備えることにより、匂い測定装置から匂いデータ及び画像データをサーバ等に送信することができる。当然、上述の位置情報、気温・湿度情報、気圧情報、照度情報等の属性データもサーバ等に送信することができる。これにより、匂い測定装置だけでなく、サーバ等においても、匂いデータ、画像データ、その他の属性情報を管理することができる。
【0025】
(9)匂い測定装置から送信された前記匂いデータ及び前記画像データを受信可能な受信手段と、受信した前記匂いデータ及び前記画像データを相互に関連付けて記憶可能な記憶手段と、を備える、匂いデータ管理装置。
【0026】
匂いデータ管理装置は、匂いデータ及び画像データを受信する受信手段と、それらを相互に関連付けて記憶可能な記憶手段を備えることにより、匂い測定装置から送信された匂いデータ及び画像データを受信し、記憶、管理することができる。当然、上述の位置情報、気温・湿度情報、気圧情報、照度情報等の属性データも受信し、記憶、管理することができる。
【0027】
(10)匂いデータ管理装置は、前記記憶手段に記憶された複数の前記匂いデータから、特定の匂いデータに近似する匂いデータを抽出可能な抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された匂いデータに関連付けられた画像データを検索結果として返却する返却手段と、を更に備えることが好ましい。
【0028】
匂いデータ管理装置が、記憶手段に記憶された複数の匂いデータの中から、特定の匂いデータに近似する匂いデータを抽出可能な抽出手段と、抽出された匂いデータに関連付けられた画像データを検索結果として返却する返却手段を備えるため、特定の匂いデータについて検索することで、その特定の匂いデータを与える匂いに近い匂いについての画像データを得ることができる。すなわち、特定の匂いについて検索すれば、その特定の匂いに近い匂いに関する画像データを検索結果として得ることができる。これにより、検索した特定の匂いに近い匂いを測定した際の測定対象の画像データを得ることができる。
【0029】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、匂いを測定する際に、空気中に含まれる匂い物質をセンサで検出すると共に、匂いの測定対象等の属性情報をも測定可能な匂い測定装置、及びその測定結果を管理する匂いデータ管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態1に係る匂い測定装置1を模式的に示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る匂い測定装置1を模式的に示す平面図である。
図3図2におけるA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4】実施形態1における匂いセンサ10を模式的に示す平面図である。
図5図4におけるB-B’断面を模式的に示す断面図である。
図6】実施形態1に係る匂い測定装置1の内部構成を模式的に示す説明図である。
図7】各種センサの動作制御について説明するタイミングチャートである。
図8】実施形態2に係る匂いデータ管理装置60を模式的に示す部分断面図である。
図9】実施形態2に係る匂いデータ管理装置60の記憶装置62に記憶される匂い管理データベースを模式的に示すデータベース構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る匂い測定装置1について図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1に係る匂い測定装置1を模式的に示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る匂い測定装置1を模式的に示す平面図である。図3は、図2におけるA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0033】
実施形態1に係る匂い測定装置1は、所定面31を有する筐体30を備えている。筐体30は、内部に匂いセンサ10と撮像装置20とを備えている。図1に示すように、筐体30は、所定面31及びその反対側の面の面積が大きい、板状形状を有している。ここで、所定面31とは、筐体30における同一側の面である。所定面31は、筐体30の同一側に位置する面であればよく、凹凸や段差を有していてもよい。また、所定面31は、必ずしも単一平面である必要はなく、複数の面で形成されていてもよい。図1中、所定面31は単一平面であり、図1の斜視図において上側を向き、図2の平面図では紙面の手前側を向いている。
【0034】
匂い測定装置1は、その内部に、演算処理装置51(CPU)と、記憶装置52(メモリ)と、を備えている。演算処理装置51には、上述の匂いセンサ10及び撮像装置20が接続され、また、後述する各種センサにもそれぞれ接続されている。演算処理装置51は、匂いセンサ10、撮像装置20、その他の各種センサを制御することができる。なお、図中、演算処理装置51と、各種の装置やセンサとの間を接続する配線は、図示を省略している。
【0035】
匂い測定装置1は、筐体30として、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末の筐体30を共有するものであってもよい。すなわち、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末に、匂い測定装置1が内蔵されたものとすることができる。その場合、所定面31は、スマートフォンやタブレット端末の表示部が配設される面とは反対側の面とすることができる。なお、演算処理装置51、記憶装置52、撮像装置20、GPS装置41等、元来携帯情報端末が備えている装置やセンサ等については、携帯情報端末と匂い測定装置1とで共用することができる。
【0036】
所定面31には、匂いセンサ10のセンサ面19に空気を導くための導入口33が形成されている。導入口33には、その辺縁部を周囲するように、筐体30の外側に突出したガイド部34が設けられている。匂いセンサ10は、筐体30の内部に配設されており、図1中、点線で示している。匂いセンサ10の具体的な構成については、後述する。
【0037】
所定面31には、撮像装置20のレンズ部21が配設されている。撮像装置20は、図1中、点線で示している。撮像装置20の具体的な構成については、後述する。
【0038】
導入口33を介して空気が導入される方向(導入方向)と、撮像装置20の撮像方向と、は実質的に同一方向である。空気の導入方向と撮像方向とが実質的に同一方向とは、空気の導入方向が、撮像方向と実質的に同一方向となるように、導入口33が形成されていることを意味する。また、空気の導入方向と撮像方向とが実質的に同一方向とは、レンズ部21を通って撮像装置20へ到達する光のレンズ部21への入射方向が空気の導入方向と実質的に同一方向であることを意味する。なお、撮像装置20へ到達する光のレンズ部21への入射方向は、撮像範囲内において一定の角度範囲を有しており、撮像方向はこの入射方向の角度範囲を含むものとする。そのため、空気の導入方向と撮像方向とは必ずしも厳密に同一方向でない場合も含まれ得ることから、実質的に同一方向と表現する。
【0039】
図2及び図3に示すように、筐体30には、導入口33を開閉可能な開閉装置としてのシャッター35が配設されている。なお、図1では、シャッター35は図示を省略している。シャッター35は対向するように配置された2つの平板を有しており、両平板がスライド移動しつつ接近し合い、接触することで、導入口33を封鎖するよう構成されている。シャッター35としては、導入口33を封鎖し得る大きさを有する1枚の平板がスライド移動するもので構成されるものであってもよい。シャッター35の構成はこれらに限定されず、公知の構成を適宜採用することができる。
【0040】
筐体30には、所定面31とは異なる他の面に、匂いセンサ10のセンサ面19近傍における空気を換気するための換気口37が形成されている。図1の斜視図中、左右の面のそれぞれに1つずつ換気口37が形成されている。
【0041】
匂い測定装置1は、図3に示すように、筐体30の内部に、導入口33から匂いセンサ10のセンサ面19への空気の導入を制御可能なファンを備えている。このファンを回転させることにより、導入口33から測定対象の匂い物質を含む空気を、匂いセンサ10のセンサ面19へより強制的に導入することができる。なお、ファンを逆回転させれば、センサ面19近傍に位置する空気を導入口33又は換気口37から、流出させることもできる。
【0042】
匂い測定装置1には、筐体30の内部に、GPS装置41、温湿度計42、気圧計45、照度計47、通信装置49が配設されている。匂い測定装置1には、これらの装置以外にも、各種の装置が配設されていてもよい。
【0043】
GPS装置41は、全地球測位システム(GPS)を利用して、匂い測定装置1の位置を特定する装置であり、匂い測定の際の匂い測定装置1の緯度データ及び経度データを出力することができる。GPS装置41は、GPS衛星からの電波を受信することができる限り、匂い測定装置1の筐体30の表面において外部に露出していなくてもよい。
【0044】
温湿度計42は、匂い測定の際の、匂い測定装置1近傍の空気の気温及び湿度を計測する装置であり、その気温データ及び湿度データを出力することができる。温湿度計42は、少なくともその計測部が匂い測定装置1の筐体30の表面において外部に露出していることが好ましい。温湿度計42で匂い測定の際の気温及び湿度を計測し、記憶装置52に匂いデータと関連付けて記憶させておくことにより、匂いデータをより有用なものとすることができる。例えば、気温や湿度の影響によって、匂い物質の物質吸着膜13への吸着特性が変化してしまう場合、匂い測定の際の気温及び湿度の状況を把握することで、より適切に匂いデータを評価することができる。
【0045】
気圧計45は、匂い測定の際の、匂い測定装置1近傍の気圧を計測する装置であり、その気圧データを出力することができる。気圧計45で匂い測定の際の気圧を計測し、記憶装置52に匂いデータと関連付けて記憶させておくことにより、匂いデータをより有用なものとすることができる。例えば、気圧の影響によって、匂い物質の物質吸着膜13への吸着特性が変化してしまう場合、匂い測定の際の気圧の状況を把握することで、より適切に匂いデータを評価することができる。
【0046】
照度計47は、匂い測定の際の、匂い測定装置1近傍の照度(光量)を計測する装置であり、その照度(光量)データを出力することができる。照度計47は、少なくともその計測部が匂い測定装置1の筐体30の表面において外部に露出していることが好ましい。特に、照度計47の計測部は、所定面31において外部に露出していることが好ましい。照度計47で匂い測定の際の照度(光量)を計測し、記憶装置52に画像データと関連付けて記憶させておくことにより、画像データをより有用なものとすることができる。照度(光量)の状況を把握することによって、画像データを補正し、より撮像対象物を認識し易くすることができる。
【0047】
通信装置49は、匂い測定装置1が備える各種センサや装置で生成された各種データを送信可能な装置である。例えば、各種データをサーバ端末へ送信し、これらの各種データをサーバ端末の記憶装置52に記憶、管理させておくことができる。
【0048】
各種データとしては、匂いセンサ10が生成する匂いデータ、GPS装置41が生成する緯度データ及び経度データ、温湿度計42が生成する気温データ及び湿度データ、気圧計45が生成する気圧データ、照度計47が生成する照度(光量)データ等が挙げられる。各種データとして、匂いが測定された日時を記録した日時データが含まれていてもよい。日時データは、匂い測定装置1に搭載された日時記録装置等、日時を記録可能な任意の手段によって生成することができる。
【0049】
<匂いセンサ10>
図4は、実施形態1における匂いセンサ10を模式的に示す平面図である。図5は、図4におけるB-B’断面を模式的に示す断面図である。匂いセンサ10は、複数のセンサ素子11を備える。センサ素子11は、それぞれ、匂い物質を吸着する物質吸着膜13と、この物質吸着膜13への匂い物質の吸着状態を検出する検出器15と、を有する。
【0050】
図5に示すように、センサ素子11は、検出器15と、検出器15の表面上に設けられた物質吸着膜13と、で構成されている。物質吸着膜13は、検出器15の表面の全体を覆っていることが好ましい。すなわち、検出器15の大きさは、物質吸着膜13の形成範囲と同じか、又は物質吸着膜13の形成範囲よりも小さいことが好ましい。なお、1つの物質吸着膜13の形成範囲内に複数の検出器15が設けられていてもよい。
【0051】
センサ素子11は、センサ基板17上に、複数配設されており、図4に示すように3行3列の格子状に整列されている。このとき、隣り合うセンサ素子11の物質吸着膜13同士が接触していないか、又は絶縁されている。なお、センサ素子11は、センサ基板17上で、必ずしも整列されている必要はなく、ランダムに配設されていたり、3行3列以外の形態に整列されていたりしてもよい。
【0052】
センサ基板17上に配設される複数のセンサ素子11は、それぞれの物質吸着膜13の性状が互いに異なっている。具体的には、複数のセンサ素子11のすべてがそれぞれ異なる組成の物質吸着膜13で構成されており、同一の性状の物質吸着膜13は存在しないことが好ましい。ここで、物質吸着膜13の性状とは、匂い物質の物質吸着膜13への吸着特性ということもできる。すなわち、同じ匂い物質(又はその集合体)であっても、異なる性状を有する物質吸着膜13には、異なる吸着特性を示すことになる。図4及び図5においては、便宜上、物質吸着膜13をすべて同様に示しているが、実際にはその性状が互いに異なっている。
【0053】
物質吸着膜13の材質としては、π電子共役高分子で形成される薄膜を用いることができる。この薄膜には、ドーパントとして、無機酸、有機酸、又はイオン性液体のうち、少なくとも1種を含有させることができる。ドーパントの種類や含有量を変化させることで、物質吸着膜13の性状を変化させることができる。
【0054】
π電子共役高分子としては、特に限定されないが、ポリピロール及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアズレン及びその誘導体等の、π電子共役高分子を骨格とする高分子が好ましい。
【0055】
π電子共役高分子が酸化状態で骨格高分子自体がカチオンとなる場合、ドーパントとしてアニオンを含有させることによって導電性を発現させることができる。なお、本発明では、ドーパントを含有させていない中性のπ電子共役高分子も物質吸着膜13として採用することができる。
【0056】
ドーパントの具体例としては、塩素イオン、塩素酸化物イオン、臭素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン等の無機イオン、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カルボン酸等の有機酸アニオン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子酸アニオン等を挙げることができる。
【0057】
また、中性のπ電子共役高分子に、食塩のような塩や、イオン性液体のような陽イオン、陰イオン両方を含むイオン性化合物を共存させることで化学平衡的にドーピングを行う方法も用いることができる。
【0058】
π電子共役高分子におけるドーパントの含有量は、π電子共役高分子を構成する2つの繰り返し単位あたり1つのドーパント単位(イオン)が入る状態を1とした場合、0.01~5の範囲、好ましくは0.1~2の範囲に調整されればよい。ドーパントの含有量を、この範囲の最低値以上とすることにより、物質吸着膜13としての特性が消失することを抑制することができる。また、ドーパントの含有量を、この範囲の最大値以下とすることにより、π電子共役高分子自体が持つ吸着特性の効果が低下し、望ましい吸着特性を有する物質吸着膜13を作成するのが困難になることを抑制することができる。また、通常は低分子量物質であるドーパントが優勢な膜となるために、物質吸着膜13の耐久性が大幅に低下することを抑制することができる。よって、ドーパントの含有量を上述の範囲とすることにより、匂い物質の検出感度を好適に維持することが可能である。
【0059】
複数のセンサ素子11において、それぞれ物質吸着膜13の吸着特性を変化させるために、異なる種類のπ電子共役高分子を用いることができる。また、同種のπ電子共役高分子を用いて、ドーパントの種類や含有量を変化させることで、異なる吸着特性を発現させてもよい。例えば、π電子共役高分子の種類や、ドーパントの種類、含有量等を変化させることにより、物質吸着膜13の疎水・親水性能を変化させることができる。
【0060】
物質吸着膜13の厚さは、吸着対象となる匂い物質の特性に応じて適宜選択することが可能である。例えば、物質吸着膜13の厚さは10nm~10μmの範囲とすることができ、50nm~800nmとすることが好ましい。物質吸着膜13の厚さが10nm未満となると、十分な感度が得られない場合がある。また、物質吸着膜13の厚さが10μmを越えると、検出器15が検出できる重量の上限を超えてしまう場合がある。
【0061】
検出器15は、物質吸着膜13の表面に吸着した匂い物質による、物質吸着膜13の物理、化学、又は電気的特性の変化を測定し、その測定データを例えば電気信号として出力する信号変換部(トランスデューサ)としての機能を有する。すなわち、検出器15は、匂い物質の物質吸着膜13の表面への吸着状態を検出する。検出器15が測定データとして出力する信号としては、電気信号、発光、電気抵抗の変化、振動周波数の変化等の物理情報が挙げられる。
【0062】
検出器15としては、物質吸着膜13の物理、化学、又は電気的特性の変化を測定するセンサであれば特に制限されず、種々のセンサを適宜用いることができる。検出器15として、具体的には、水晶振動子センサ(QCM)、表面弾性波センサ、電界効果トランジスタ(FET)センサ、電荷結合素子センサ、MOS電界効果トランジスタセンサ、金属酸化物半導体センサ、有機導電性ポリマーセンサ、電気化学的センサ等を挙げることができる。
【0063】
なお、検出器15として水晶振動子センサを用いる場合には、図示しないが、励振電極として、水晶振動子の両面に電極を設けてもよいし、高いQ値を検出するべく片面に分離電極を設けてもよい。また、励振電極は、水晶振動子のセンサ基板17側に、センサ基板17を挟んで設けられていてもよい。励振電極は、任意の導電性材料で形成することができる。励振電極の材料として、具体的には、金、銀、白金、クロム、チタン、アルミニウム、ニッケル、ニッケル系合金、シリコン、カーボン、カーボンナノチューブ等の無機材料、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等の有機材料を挙げることができる。
【0064】
検出器15の形状は、図5に示すように、平板形状とすることができる。平板形状の平板面の形状は、図5に示すように、四角形や正方形とすることができるが、円形や楕円形等、種々の形状とすることができる。また、検出器15の形状は、平板形上に限られず、その厚さが変動していてもよく、凹状部や凸状部が形成されていてもよい。
【0065】
検出器15が、上述の水晶振動子センサのように振動子を用いるものである場合、複数のセンサ素子11における各振動子の共振周波数を変化させることで、同一のセンサ基板17上に共存する他の振動子から受ける影響(クロストーク)を低減することが可能である。同一のセンサ基板17上の各振動子が、ある振動数に対して異なる感度を示すよう、共振周波数を任意に設計することが可能である。共振周波数は、例えば、振動子や物質吸着膜13の厚さを調節することで変化させることができる。
【0066】
センサ基板17としては、シリコン基板、水晶結晶からなる基板、プリント配線基板、セラミック基板、樹脂基板等を用いることができる。また、基板は、インターポーザ基板等の多層配線基板であり、水晶基板を振動させるための励振電極と実装配線、通電するための電極が任意の位置に配置されている。
【0067】
上述のような構成とすることにより、匂い物質の吸着特性がそれぞれ異なる物質吸着膜13を有するセンサ素子11を複数有する匂いセンサ10を得ることができる。これにより、ある匂い物質又はその組成を含む空気の匂いを匂いセンサ10で測定した場合、各センサ素子11の物質吸着膜13には、同様に匂い物質又はその組成が接触することになるが、各物質吸着膜13には、匂い物質がそれぞれ異なる態様で吸着される。すなわち、各物質吸着膜13において、匂い物質の吸着量が異なる。そのため、各センサ素子11において検出器15の検出結果が異なることになる。したがって、ある匂い物質又はその組成に対して、匂いセンサ10が備えるセンサ素子11(物質吸着膜13)の数だけ、検出器15による測定データが生成される。
【0068】
ある匂い物質又はその組成について測定することにより匂いセンサ10が生成する測定データのセット(以下、匂いデータという)は、通常、特定の匂い物質や匂い物質の組成に対して特異的(ユニーク)である。そのため、匂いセンサ10によって匂いデータを測定することにより、匂いを、匂い物質単独で、又は匂い物質の組成(混合物)として識別することが可能である。
【0069】
次に、匂いセンサ10を用いて匂いデータを取得する匂いデータ取得手段の構成について説明する。図6は、実施形態1に係る匂い測定装置1の内部構成を模式的に示す説明図である。匂い取得手段M1は、プログラムとして記憶装置52に記憶され、そのプログラムを演算処理装置51に実行させることにより、匂いセンサ10を匂い取得手段M1として機能させることができる。なお、匂いデータの取得は、演算処理装置51によらずとも、その他の構成によって実行されてもよい。
【0070】
演算処理装置51は、匂いセンサ10の各検出器15に接続されており、匂い物質が各物質吸着膜13へ吸着した場合に各検出器15が測定した測定データを取得する。このとき、各測定データは、各検出器15の匂いセンサ10上での位置、すなわち検出器15の配列情報と関連付けられて、記憶装置52に記憶される。言い換えると、各測定データは、匂いセンサ10における各検出器15が同様の構成の場合、匂いセンサ10の各物質吸着膜13と1対1に関連付けられて記憶される。具体的には、図6に示すように、各検出器i~ixについて、それぞれ測定データが計測される。そして、各測定データは、例えば、図6に示すレーダーチャートのように表現することができる。図6のレーダーチャートにおいて、各測定データは、各検出器15に対応する9つの頂点を有する九角形の中心から9つの頂点へ向けて延びる軸上に点としてプロットされ、隣接する点が直線で結ばれている。このように、匂いデータとは、匂いセンサ10における各検出器15が同様の構成の場合、ある匂い物質(又はその組成)の物質吸着膜13に対する吸着特性を測定した測定データのセットということができる。
【0071】
匂いセンサ10は、図1図3に示すように、匂い測定装置1の内部に装着・脱着可能なカード状の匂いセンサチップであってもよい。例えば、匂いセンサ10のセンサ基板17がカード状の基材に、少なくとも物質吸着膜13が基材の外部に露出するよう埋め込まれたものであってもよい。すなわち、図1の斜視図において、匂いセンサ10装置の紙面の奥を向く面に穴が形成されており、その穴に匂いセンサチップを挿入することができる。匂いセンサチップは、挿入された状態で、センサ基板17及びセンサ面19が、導入口33から導入される空気が当たる位置に配置されていることが好ましい。このような匂いセンサチップとすることにより、匂いセンサ10を交換することができる。例えば、異なる物質吸着膜13を有する匂いセンサ10や、同種の物質吸着膜13を有するがその配列が異なる匂いセンサ10へと交換することができる。
【0072】
<撮像装置20>
撮像装置20は、撮像対象から発せられた又は反射された、レンズ部21を通って入射してくる光に基づいて、画像データを生成する装置である。撮像装置20としては、画像データを生成可能なものである限り特に制限されず、各種カメラを採用することができる。図1図3に示すように、撮像装置20の本体は、匂い測定装置1の筐体30の内部に配設されており、レンズ部21が筐体30の表面において外部に露出している。
【0073】
レンズ部21は、撮像装置20の光学機構の少なくとも一部を構成する部分であり、レンズを含むものである。レンズ部21には、レンズ以外にも、鏡筒や保護ガラス等が含まれていてもよい。このような撮像対象から発せられた又は反射された光が入射するレンズ部21が、匂い測定装置1の測定対象(撮像対象)側の面である所定面31に配置されている。
【0074】
<匂い測定装置の制御>
匂い測定装置1が備える上述の各種センサの動作は、記憶装置62に記憶された制御プログラムP1を演算処理装置61が実行することによって制御することができる。以下、各種センサの動作の制御について、図7を用いて説明する。図7は、各種センサの動作制御について説明するタイミングチャートである。
【0075】
ここでは、匂い測定装置1として、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末に匂い測定装置1が内蔵されたものである場合について説明する。制御プログラムP1は、携帯情報端末において演算処理装置61によって実行されるアプリケーションとして実行されてもよい。各種センサとしては、匂いセンサ10、撮像装置20、GPS装置41、温湿度計42を備えるものとする。各装置やセンサ等の構成については、図1図3に示すような実施形態1に係る匂い測定装置1の所定面31と反対側の面に表示部が配設されていること以外は、概略実施形態1に係る匂い測定装置1と同様の構成とすることができる。
【0076】
制御プログラムP1に基づき実行される制御アプリケーションをユーザが立ち上げ、初期画面において測定開始ボタンを押下して測定を開始すると、表示部に待機画面が表示され、匂いセンサ10、GPS装置41、及び温湿度計42が起動する。そして、匂いセンサ10によるベースライン測定、GPS装置41による現在位置測定、温湿度計42による気温及び湿度の測定が実行される。ベースライン測定等が完了すると、表示部に測定ボタンが表示される。ユーザが測定開始ボタンを押下すると、撮像装置20が撮像すると共に、シャッター35が開かれて導入口33から空気が導入され、匂いセンサ10による匂い測定が実行される。一定時間経過後、シャッター35が閉じられて匂い測定が終了すると共に、GPS装置41に現在位置測定が終了する。その後、表示部に待機画面が表示され、一定時間匂いセンサ10をリフレッシュさせる。一定時間経過後、リフレッシュ、温湿度計42による気温及び湿度の測定が終了し、表示部に初期画面が表示される。
【0077】
上述の制御において、空気の導入の際にファンが回転し、外部の空気をセンサ面19へ向けて導入させてもよい。また、匂いセンサ10のベースライン測定及びリフレッシュの際には、そのファンを逆回転させて、換気口37から導入された空気でセンサ面19近傍の空気を置換してもよい。なお、ファンを逆回転させる場合、シャッター35は開いたままであることが好ましい。
【0078】
[実施形態2]
<匂いデータ管理装置60>
実施形態2として、上述の実施形態1に係る匂い測定装置1の各種センサによって測定された測定データを受領し、記憶、管理する匂いデータ管理装置60について図面を参照しつつ説明する。
【0079】
図8は、実施形態2に係る匂いデータ管理装置60を模式的に示す部分断面図である。匂いデータ管理装置60は、内部に演算処理装置61(CPU)、記憶装置62(メモリ)を有している。記憶装置62内には、匂いデータ管理プログラムP2及び匂いデータ管理データベースDが格納されている。匂いデータ管理プログラムP2は、匂いデータ管理装置60を、受信手段、記憶手段、抽出手段M3、返却手段M5として機能させる。
【0080】
受信手段は、上述の実施形態1に係る匂い測定装置1から送信された匂いデータや、画像データ等の各種データを受信する機能を有する。各種データとしては、具体的には、匂いセンサ10が生成した匂いデータ、撮像装置20が生成した画像データ、GPS装置41が生成した緯度及び経度のデータ、温湿度計42が生成した気温及び湿度のデータ、気圧計45が生成した気圧データ、照度計47が生成した照度(光量)データ、日時データ等が挙げられる。なお、受信手段は、匂い測定装置1から送信された各種データに限らず、匂い測定装置1で生成された各種データを記憶させたUSB(Universal Serial Bus)メモリ等各種の記憶メディアを介して、匂いデータ管理装置60に複製された各種データを受け付けるものであってもよい。
【0081】
記憶手段は、受信手段によって受信された各種データを、相互に関連付けて、匂いデータ管理データベースDに記憶する機能を有する。匂いデータ管理データベースDは、匂いデータ管理装置60の記憶装置62に格納されている。
【0082】
図9は、実施形態2に係る匂いデータ管理装置60の記憶装置62に記憶される匂い管理データベースを模式的に示すデータベース構成図である。匂いデータ管理データベースDには、少なくとも匂いデータと、画像データと、が相互に関連付けられて記憶されている。匂いデータ及び画像データに加えて、緯度及び経度のデータ、気温及び湿度のデータ、気圧データ、照度(光量)データ、日時データ等も、相互に関連付けられて記憶されていてもよい。
【0083】
図9では、匂いデータと、画像データと、日時データと、経度及び緯度のデータと、が相互に関連付けられて記憶されている。具体的には、図9においては、匂いデータAの各センサ素子11により測定された9個の測定データAi~Aixと、属性データとしての日時データA1と、画像データA2と、経度データA3と、緯度データA4とが相互に関連付けられて記憶されている。同様に匂いデータB、匂いデータCも、測定データと、属性データと、が関連付けられて匂いデータ管理データベースDに記憶されている。
【0084】
抽出手段M3は、記憶手段によって匂いデータ管理データベースDに記憶された複数の匂いデータの中から、特定の匂いデータに近似する匂いデータを抽出する機能を有する。すなわち、ある匂いの匂いデータ(特定の匂いデータ)を有していれば、それに近似する匂いデータを匂いデータ管理データベースDから抽出することができる。
【0085】
2つの匂いデータが近似するとは、匂いデータを構成する測定データを、2つの匂いデータの対応する測定データの間で比較し、比較した2つの測定データの値の差が所定範囲内である場合をいう。ここで、2つの匂いデータの対応する測定データとは、匂いデータを構成する、各センサ素子11による測定データのうち、同種のセンサ素子11による測定データをいう。すなわち、2つの匂いデータが近似するか否かを判断する際、同種の物質吸着膜13及び検出器15を有するセンサ素子11によって測定された2つの測定データ同士を比較することが好ましい。なお、比較する2つの測定データは、同一の物質吸着膜13及び検出器15を有するセンサ素子11によって測定されたものでなくても、互いに近い組成の物質吸着膜13と、同様の構成を有する検出器15を有するセンサ素子11によって測定されたものを用いることができる。また、測定データの値の差が所定範囲内という場合の、所定範囲は、各検出器15における測定データについて任意に設定することができる。
【0086】
例えば、匂いデータAと匂いデータBとを比較する場合、同一の検出器iで測定された測定データAiと測定データBiについて比較することができる。同様に測定データAii~Aixと、測定データBii~Bixについて、それぞれ比較することができる。そして、各センサ素子11における測定データにおいて、測定データの差が所定範囲内であった場合、匂いデータAと匂いデータBとは近似していると判断することができる。匂いデータAと匂いデータCとを比較する場合、同一の検出器iで測定された測定データAiと測定データCiについて比較することができる。同様に測定データAii~ixと、測定データCii~Cixについて、それぞれ比較することができる。そして、各センサ素子11における測定データにおいて、1つでも測定データの差が所定範囲外であった場合、匂いデータAと匂いデータCとは近似していないと判断することができる。
【0087】
返却手段M5は、抽出手段M3によって抽出された匂いデータに関連付けられた、匂いデータ以外の各種データ(以下、属性データという)を検索結果として返却する機能を有する。属性データとしては、具体的には、画像データ、緯度及び経度のデータ、気温及び湿度のデータ、気圧データ、照度(光量)データ、日時データ等を挙げることができる。
【0088】
このような抽出手段M3及び返却手段M5によって、ある匂いの匂いデータ(特定の匂いデータ)を有していれば、匂いデータ管理データベースDから、それに近似する匂いデータに関連付けられた属性データが検索結果として得られることになる。具体的には、ユーザが、好みの匂いについて、その匂いデータを取得し、取得した匂いデータを匂いデータ管理装置60を用いて検索をかけた場合、検索結果として、ユーザの好みの匂いに近似した匂いデータの属性データが得られることになる。例えば、ユーザが好みの香水の匂いデータを取得し、検索をかけた場合、その検索結果として、他のユーザが匂い測定装置1で取得した属性データを検索結果として得られる。そのような属性データとしては、ユーザが好みの香水に似た匂いを、他のユーザが匂い測定装置1で測定した際に取得した、測定対象の画像データや、測定場所の緯度及び経度のデータ等の属性データを得ることができる。その場合の画像データとしては、例えば、香水の瓶やパッケージ、又はその香水を販売している販売店の写真等が挙げられる。したがって、ユーザが興味を持った匂いについて、その匂いデータについて検索をかけることによって、匂いデータ管理データベースDに記憶された情報の中から、ユーザが興味を持った匂いに似た匂いの情報を得ることができる。
【0089】
[実施形態3]
実施形態3として、実施形態1に係る匂い測定装置1を搭載したロボットについて説明する。以下の説明において、上述の実施形態における説明と同様である内容については、その説明を省略する。
【0090】
ロボットは、所定面31に、導入口33と撮像装置20とを有し、導入口33から導入された空気の匂いを匂いセンサ10を用いて測定する。このような構成により、ロボットは、測定対象の匂いデータと画像データとを取得することができる。
【0091】
ロボットは、測定した匂いデータと画像データとを関連付けて、記憶装置62に記憶することができる。記憶装置は、ロボットに搭載されたものであっても、ロボットと通信可能に接続された遠隔のサーバに搭載されたものであってもよい。これにより、測定した測定対象の匂いデータ及び画像データが、既に記憶装置に記憶されたものであるか否かを判断することができる。そして、同一又は近似する匂いデータ及び画像データが記憶装置に記憶されていた場合、その測定対象を既に測定されたものと判断することができる。すなわち、ロボットは、既に記憶装置に記憶された測定対象である場合、その測定対象を識別することができる。ロボットは、画像データだけでなく、画像データに匂いデータを組み合わせて、測定対象を識別することができる。
【0092】
例えば、測定対象がロボットの使用者(人間)である場合、その使用者について測定した画像データと匂いデータにより、使用者とその他の人間を識別することができる。使用者の顔がロボットの撮像装置20で撮像できなかった場合であっても、匂いデータと組み合わせることにより、使用者の識別精度を向上させることができる。
【0093】
一例として、ペット型のロボットにおいて、その顔部分に導入口33と撮像装置20を搭載させた場合、ペット型ロボットは、使用者の画像データ及び匂いデータにより使用者を識別することができる。ペット型ロボットは、使用者が移動すれば、その後を着いていくよう動作させることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:匂い測定装置 10:匂いセンサ
11:センサ素子 13:物質吸着膜
15:検出器 17:センサ基板
19:センサ面 20:撮像装置
21:レンズ部 30:筐体
31:所定面 33:導入口
34:ガイド部 35:シャッター
37:換気口 41:GPS装置
43:温湿度計 44:計測部
45:気圧計 47:照度計
48:計測部 49:通信装置
51:演算処理装置 52:記憶装置
60:匂いデータ管理装置 61:演算処理装置
62:記憶装置 D:匂いデータ管理データベース
M1:匂い取得手段 M2:受信手段
M3:記憶手段 M4:抽出手段
M5:返却手段 P1:制御プログラム
P2:匂いデータ管理プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9