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特許7010455ポリカーボネートジオールを使用して調製された歯科矯正物品、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオールを使用して調製された歯科矯正物品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20220119BHJP
   A61K 6/00 20200101ALI20220119BHJP
   A61K 6/62 20200101ALI20220119BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20220119BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220119BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20220119BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220119BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20220119BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220119BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20220119BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20220119BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20220119BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61C7/08
A61K6/00
A61K6/62
B29C64/124
B33Y10/00
B33Y70/10
B33Y80/00
B29C64/386
B33Y50/00
C08G18/67 010
C08G18/44
C08G18/75 010
C08F290/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020553510
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019033252
(87)【国際公開番号】W WO2020005413
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】62/692,456
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/736,031
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/769,421
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】クラン,トーマス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ゼバ
(72)【発明者】
【氏名】リーゼル,ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ポコルニー,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アンビー,チャド エム.
(72)【発明者】
【氏名】クーンス,ベンジャミン アール.
(72)【発明者】
【氏名】クラウ, ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウー,デンヨ
(72)【発明者】
【氏名】チャクラボーティ,サスワタ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】マック マーレイ,ベンジャミン シー.
(72)【発明者】
【氏名】デイリー,イーアン
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,デイビッド ビー.
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537687(JP,A)
【文献】特開平9-216924(JP,A)
【文献】国際公開第2018/119026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
A61K 6/00
A61K 6/62
B29C 64/124
B33Y 10/00
B33Y 70/10
B33Y 80/00
B29C 64/386
B33Y 50/00
C08G 18/67
C08G 18/44
C08G 18/75
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正物品であって、
a)
i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
ii)光開始剤と、
iii)
1)イソシアネートと、
2)(メタ)アクリレートモノオールと、
3)式(I):
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH (I)
(式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全ての前記R基と前記R基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である)のポリカーボネートジオールと、
4)触媒と、
を含む成分の重合反応生成物と、
を含む光重合性組成物の重合反応生成物を含み、
前記光重合性組成物の前記重合反応生成物が、前記歯科矯正物品の形状を有する、歯科矯正物品。
【請求項2】
前記単官能性(メタ)アクリレートモノマーが、3より大きいオクタノール/水分配係数の対数(logP)値を有する、請求項1に記載の歯科矯正物品。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレートモノオールが、式(II):
HO-Q-(A) (II)
[式中、Qは多価有機連結基であり、Aは、式-XC(=O)C(R)=CH(式中、XはO、S、又はNRであり、Rは、H又は1~4個の炭素原子のアルキルであり、Rは、1~4個の炭素原子の低級アルキル又はHである)の(メタ)アクリル官能基であり、pは1又は2である]
のものである、請求項1又は2に記載の歯科矯正物品。
【請求項4】
前記光重合性組成物が、式(III):
【化1】
(式中、X、Q、p、及びRは、式(II)で定義したとおりであり、Rdiは、ジイソシアネートの残基である)の化合物を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項5】
前記式(III)の化合物が、前記光重合性組成物に添加されている、請求項4に記載の歯科矯正物品。
【請求項6】
前記式(III)の化合物が、式(IV):
【化2】
のものである、請求項4又は5に記載の歯科矯正物品。
【請求項7】
前記単官能性(メタ)アクリレートモノマーが、ジシクロペンタジエニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジメチル-1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、cis-4-tert-ブチル-シクロヘキシルメタクリレート、2-デカヒドロナフチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、73/27trans/cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、trans-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、d,l-イソボルニルメタクリレート、ジメチル-1-アダマンチルメタクリレート、d,l-ボルニルメタクリレート、3-テトラシクロ[4.4.0.1.1]ドデシルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項8】
前記光重合性組成物が、前記光重合性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~5重量%の量の蛍光増白剤を含む紫外線吸収剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項9】
前記蛍光増白剤が、式(V):
【化3】
の化合物を含む、請求項8に記載の歯科矯正物品。
【請求項10】
前記ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーが6,000g/mol~35,000g/molの分子量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項11】
37℃にて2%ひずみで測定して、100メガパスカル(MPa)以上の初期緩和弾性率、70%以下の緩和弾性率のパーセント損失、100MPa以上の30分緩和弾性率、20%以上のプリントされた物品の破断伸び、及び14MPa以上の降伏点引張強度からなる群から選択される少なくとも2つの特性を呈する、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項12】
20℃以下の損失弾性率のピーク及び80℃以上のTanδピークを呈する、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項13】
前記光重合性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1重量%の量の阻害剤を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科矯正物品。
【請求項14】
歯科矯正物品を製造する方法であって、
a)
i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
ii)光開始剤と、
iii)
1)イソシアネートと、
2)(メタ)アクリレートモノオールと、
3)式(I):
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH (I)
(式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全ての前記R基と前記R基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である)のポリカーボネートジオールと、
4)触媒と、
を含む成分の重合反応生成物と、
を含む光重合性組成物を得ることと、
b)前記光重合性組成物を選択的に硬化させることと、
c)工程a)及びb)を繰り返して複数の層を形成し、歯科矯正物品を作製することと、
d)任意に、前記歯科矯正物品を熱処理に供することと、
を含む、方法。
【請求項15】
a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、歯科矯正物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、
b)積層造形プロセスによる前記製造デバイスを用いて、前記デジタルオブジェクトに基づく前記歯科矯正物品を生成することであって、前記歯科矯正物品が、光重合性組成物の反応生成物を含み、前記光重合性組成物が、
i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
ii)光開始剤と、
iii)
1)イソシアネートと、
2)(メタ)アクリレートモノオールと、
3)式(I):
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH (I)
(式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全ての前記R基と前記R基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である)のポリカーボネートジオールと、
4)触媒と、
を含む成分の重合反応生成物と、
のブレンドを含む、生成することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、歯科矯正物品及び歯科矯正物品を製造する方法、例えば積層造形(additive manufacturing)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元物品を製造するための光造形法及びインクジェットプリンティングの使用は比較的長年にわたって知られており、これらのプロセスは概して、いわゆる3Dプリンティング(又は積層造形)方法として知られている。液槽重合技術(光造形は液槽重合技術の1つのタイプである)では、交互に繰り返される連続した2つの工程を用いて液状硬化性組成物から所望の3D物品を作り上げる。第1の工程では、液状硬化性組成物の層であって、層の1つの境界が組成物の表面となる層を、この層の高さにおいて、形成される成形物品の所望の断面エリアに対応する表面領域内で、適切な放射により硬化させ、第2の工程では、硬化した層を液状硬化性組成物の新しい層で覆い、所望の形状のいわゆる素地(すなわち、ゲル化物品)が完成するまで、この一連の工程を繰り返す。この素地は、多くの場合、まだ完全に硬化しておらず、通常、後硬化に供される必要がある。硬化直後の素地の機械的強度は、生強度としても知られ、プリントされた物品のその後の処理に関連する。
【0003】
他の3Dプリンティング技術は、プリントヘッドを通して液体として噴射されるインクを使用して、様々な3次元物品を形成する。運転中、プリントヘッドは硬化性フォトポリマーを1層ずつ堆積させてもよい。いくつかのジェットプリンタは、ポリマーを支持材料又は結合剤と共に堆積させる。いくつかの例では、構築材料は周囲温度で固体であり、噴射温度に上昇すると液体に変化する。他の例では、構築材料は周囲温度で液体である。
【発明の概要】
【0004】
既存のプリント可能/重合可能樹脂は、アライナーなどの弾性口腔装具のためには、脆すぎる傾向がある(例えば、低い伸び率、短鎖架橋結合、熱硬化性組成物、及び/又は高いガラス転移温度)。そのような樹脂を使って作製されたアライナー又は他の装具は、治療中に患者の口内で容易に破断して、露出した組織を摩損若しくは穿刺するか又は飲み込まれるおそれのある材料片を作り出す可能性がある。こうした破壊は、少なくとも治療を中断させ、患者に健康に関する重大な影響を与えるおそれがある。したがって、3Dプリンティング(例えば、積層造形)方法を使用した弾性物品の形成に適合し、かつふさわしい、硬化性液状樹脂組成物の必要性が存在する。好ましくは、液槽重合3Dプリンティングプロセスで使用される硬化性液状樹脂組成物は、最終的な硬化した物品において、低い粘度、適切な硬化速度、及び優れた機械的特性を有する。対照的に、インクジェットプリンティングプロセス用の組成物は、ノズルを通して噴射することができるように、はるかに低い粘度である必要があるが、この点はほとんどの液槽重合樹脂に当てはまらない。
【0005】
第1の態様では、歯科矯正物品が提供される。歯科矯正物品は、a)光重合性組成物の重合反応生成物を含む。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。iii)の成分としては、1)イソシアネート、2)(メタ)アクリレートモノオール、式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)、及び3)触媒を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23(の整数)である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0006】
第2の態様では、歯科矯正物品の製造方法が提供される。方法は、a)第1の態様による光重合性組成物を得ることと、b)光重合性組成物を選択的に硬化させることと、c)工程a)及びb)を繰り返して複数の層を形成し、歯科矯正物品を作製することと、を含む。
【0007】
第3の態様では、非一時的機械可読媒体が提供される。非一時的機械可読媒体は、歯科矯正物品の3次元モデルを表すデータを含み、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされた場合、3Dプリンタに、第1の態様による光重合性組成物の反応生成物を含む歯科矯正物品を作製させる。
【0008】
第4の態様では、方法が提供される。方法は、(a)非一時的機械可読媒体から、物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、(b)1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、(c)製造デバイスによって、歯科矯正物品の物理的オブジェクトを生成することとを含む。歯科矯正物品は、第1の態様による光重合性組成物の反応生成物を含む。
【0009】
第5の態様では、別の方法が提供される。方法は、a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、歯科矯正物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、b)積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、デジタルオブジェクトに基づく歯科矯正物品を生成することとを含む。歯科矯正物品は、第1の態様による光重合性組成物の反応生成物を含む。
【0010】
第6の態様では、システムが提供される。システムは、a)歯科矯正物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、b)ユーザによって選択された3Dモデルに応じて、3Dプリンタに歯科矯正物品の物理的オブジェクトを作製させる、1つ以上のプロセッサと、を含む。歯科矯正物品は、光重合性組成物の反応生成物を含む。
【0011】
第7の態様では、化合物が提供される。化合物は、式(V):
【化1】
のものである。
【0012】
第7の態様の化合物は、第1~第5の態様による歯科矯正物品及び方法における紫外線吸収剤として有利に使用することができる。
【0013】
本開示の少なくとも一定の実施形態に従って製造された透明トレイアライナー及び引張棒は、低い脆性、水に対する良好な耐性、及び良好な靱性を示すことが見出された。
【0014】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通していくつかの箇所において、例を列挙することによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせで使用することができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書で開示される光重合性組成物を使用して物品を構築するプロセスのフロー図である。
図2】光造形装置の一般化された概略図である。
図3】本開示の一実施形態による、プリントされた透明トレイアライナーの等角図である。
図4】本開示による、プリントされた歯科矯正装具を製造するプロセスのフロー図である。
図5】放射線が容器を通過して方向付けられる装置の一般化された概略図である。
図6】物品の積層造形のための一般化されたシステム600のブロック図である。
図7】物品のための一般化された製造プロセスのブロック図である。
図8】例示的な物品製造プロセスの高レベルフロー図である。
図9】例示的な物品積層造形プロセスの高レベルフロー図である。
図10】例示的なコンピューティングデバイス1000の概略正面図である。
【0016】
上記で特定された図は、本開示のいくつかの実施形態を説明するものであるが、本明細書で言及されるとおり、他の実施形態もまた企図される。図は必ずしも原寸に比例して描かれているとは限らない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。当業者によって多数の他の改変及び実施形態が考案され得、それらは、本発明の原理の範囲内及び趣旨内に含まれることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の直鎖、分枝鎖、又は環状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を包含するものとして使用される。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、1~32個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の、環状又は非環状の、飽和一価炭化水素、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、ペンチルなどを意味する。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「アルキレン」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖飽和二価の炭化水素、又は3~12個の炭素原子を有する分枝鎖飽和二価の炭化水素基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレンなどを意味する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する、一価の直鎖又は分枝鎖不飽和脂肪族基、例えば、ビニルを指す。別段の指示がない限り、アルケニル基は、典型的には、1~20個の炭素原子を含有する。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「アリーレン」という用語は、炭素環でありかつ芳香族である二価の基を指す。この基は、接続しているか、縮合しているか、又はこれらの組み合わせである、1~5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、最大5個の環、最大4個の環、最大3個の環、最大2個の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであってもよい。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「アラルキレン」は、アリール基で置換されたアルキレン基又はアリーレン基に結合したアルキレン基である二価の基を指す。「アルカリーレン」という用語は、アルキル基で置換されたアリーレン基である、又はアルキレン基に結合したアリーレン基である二価の基を指す。別段の指示がない限り、どちらの基においても、アルキル部分又はアルキレン部分は、通常、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。別段の指示がない限り、どちらの基においても、アリール部分又はアリーレン部分は、通常、6~20個の炭素原子、6~18個の炭素原子、6~16個の炭素原子、6~12個の炭素原子、又は6~10個の炭素原子を有する。
【0023】
本明細書で使用されるとき、組成物が成分を本質的に含まないという文脈において、「本質的に含まない」という用語は、組成物の総重量に基づいて、1重量%未満(重量%)、0.5重量%以下、0.25重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.001重量%以下、又は0.0001重量%以下の成分を含有する組成物を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、ポリマーの「ガラス転移温度」(T)という用語は、ポリマーのガラス状態からゴム状状態への遷移を指し、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を使用して、例えば窒素流中で1分当たり10℃の加熱速度で測定することができる。モノマーのTが言及される場合、このTは、そのモノマーのホモポリマーのTである。ホモポリマーは、Tが制限値に達するように十分に高分子量でなければならず、一般的に、ホモポリマーのTが分子量を増加させて制限値まで増加することが理解される。ホモポリマーはまた、Tに影響を及ぼし得る水分、残留モノマー、溶媒、及び他の汚染物質を実質的に含まないものと理解される。好適なDSC法及び分析方法は、Matsumoto,A.et.al.,J.Polym.Sci.A.,Polym.Chem.1993,31,2531-2539に記載されているとおりである。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「硬質化可能」という用語は、例えば、加熱して溶媒を除去することや、加熱して重合、化学的架橋、放射線誘起重合又は架橋を生じさせることなどにより、硬化又は凝固され得る材料を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「硬化」とは、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応又はこれらの組み合わせなどの何らかの機構による組成物の硬質化又は部分的硬質化を意味する。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「硬化した」は、硬化によって硬質化又は部分的硬質化されている(例えば、重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「一体型」は、同時に製造されること、又は(一体型)部品のうちの1つ以上を損傷することなく分離することが不可能であることを指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル基を指す省略表現である。「アクリル」は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドなどのアクリル酸の誘導体を指す。「(メタ)アクリル」とは、少なくとも1つのアクリル基若しくはメタクリル基を有するモノマー又はオリゴマーを意味し、2つ以上の基を含有する場合、脂肪族セグメントによって結合されるモノマー又はオリゴマーを意味する。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート官能性化合物」は、とりわけ(メタ)アクリレート部分を含む化合物である。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「重合性組成物」は、開始時(例えば、フリーラジカル重合開始時)に重合化し得る硬化性組成物を意味する。通常、重合(例えば、硬質化)の前に、重合性組成物は、1つ以上の3Dプリンティングシステムの要件及びパラメータと一致する粘度プロファイルを有している。例えば、いくつかの実施形態では、硬質化は、重合又は架橋反応を開始するために十分なエネルギーを有する化学線を照射することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、紫外線(UV)、電子ビーム放射線、又はこれらの両方を使用することができる。化学線を使用することができる場合、重合性組成物は、「光重合性組成物」と呼ばれる。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「樹脂」は、硬化性組成物の中に存在する全ての重合性成分(モノマー、オリゴマー及び/又はポリマー)を含有する。樹脂は、ただ1つの重合性成分化合物又は異なる重合性化合物の混合物を含有してもよい。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「ジイソシアネートの残基」は、-NCO基が除去された後のジイソシアネートの構造である。例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートは、構造OCN-(CH-NCOを有し、イソシアネート基が除去された後のその残基Rdiは-(CH-である。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「ポリカーボネートポリオールの残基」は、-OH基が除去された後のポリカーボネートポリオールの構造である。例えば、構造H(O-R-O-C(=O))-O-R-OHを有するポリカーボネートジオールは、末端-OH基が除去された後、-R-O-C(=O)-(O-R-O-C(=O))m-1-O-R-(式中、各繰り返し単位中の各R及びRは、独立して脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、mは2~23である)である残基RdOHを有する。R及びR基の例としては、-CH-CH-CH(CH)-CH-CH-、-CH-C(CH-CH-、-(CH-、-(CH-、及び-(CH10-が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「熱可塑性」とは、そのガラス転移点を十分に超えて加熱されると流動し、冷却されると固体になるポリマーを指す。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「熱硬化性」とは、硬化時に永久的に設定され、その後の加熱時に流動しないポリマーを指す。熱硬化性ポリマーは、通常、架橋ポリマーである。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「咬合側」は、患者の歯の外側先端に向かう方向を意味し、「顔面」は、患者の唇又は頬に向かう方向を意味し、「舌側」は、患者の舌に向かう方向を意味する。
【0037】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0038】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般分類を含み、その一般分類の具体例は、例示のために使用し得る。「a」、「an」、及び「the」という用語は、「少なくとも1つの」という用語と互換的に使用される。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「又は」という用語は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
【0040】
「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0041】
また、本明細書では、全ての数は「約」という用語で修飾されるものと想定され、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されると想定される。本明細書で使用されるとき、測定した量との関連において、「約」という用語は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0042】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用されるとき、「概して」という用語は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、+/-20%の範囲内)を意味する。「実質的に」という用語は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、+/-10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は計測誤差の範囲内にあるものと理解される。
【0043】
第1の態様では、本開示は、歯科矯正物品を提供する。歯科矯正物品は、
a)
i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
ii)光開始剤と、
iii)
1)イソシアネートと、
2)(メタ)アクリレートモノオールと、
3)式(I):
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)
(式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である)のポリカーボネートジオールと、
4)触媒と、
を含む成分の重合反応生成物を含み、
重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0044】
成分(i)~(iii)(及び1)~4))は、以下で詳細に論じられる。
【0045】
単官能性(メタ)アクリレートモノマー
任意の実施形態では、光重合性組成物は、高いガラス転移温度(T)を有する、すなわち、硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む。いくつかの実施形態では、硬化したホモポリマーが100℃以上、110℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃、140℃以上、145℃以上、150℃以上、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上、180℃以上、185℃以上、190℃以上、又は195℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーが存在する。選択された実施形態では、硬化したホモポリマーが150℃以上、170℃以上、又は180℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーが存在する。単官能性(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーのTは、典型的には約260℃以下である。例えば、1-アダマンチルメタクリレートは、約260℃で分解する。いくつかの実施形態では、単官能性(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーのTは、255℃、250℃、245℃、240℃、235℃、230℃、225℃、220℃、215℃、210℃、205℃又は200℃以下である。光重合性組成物中に硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する1つ以上の単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含むことは、脱イオン水中に浸漬した後に測定される組成物の光重合反応生成物の緩和弾性率を増加させることに寄与する。多くの場合、モノマーのホモポリマーのTは、以下の表1などの文献に見出すことができる。表1には、いくつかの単官能性(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーのT、及び報告されたTの文献ソースが含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、脂環式単官能性(メタ)アクリレートを含む。好適な単官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、限定するものではないが、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジメチル-1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート(例えば、tert-ブチルメタクリレート)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチル-シクロヘキシルメタクリレート(例えば、cis-4-tert-ブチル-シクロヘキシルメタクリレート、73/27trans/cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、又はtrans-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート)、2-デカヒドロナフチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート(例えば、d,l-イソボルニルメタクリレート)、ジメチル-1-アダマンチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート(例えば、d,l-ボルニルメタクリレート)、3-テトラシクロ[4.4.0.1.1]ドデシルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニルメタクリレートを含む。
【0047】
一定の実施形態では、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーに対する単官能性(メタ)アクリレートモノマーの重量比は、60:40~40:60、55:45~45:55、又は50:50である。多くの場合、単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、全光重合性組成物100重量部当たり40重量部以上、45重量部以上、46重量部以上、47重量部以上、48重量部以上、49重量部以上、又は50重量部以上、かつ、全光重合性組成物100重量部当たり65重量部以下、64重量部以下、63重量部以下、62重量部以下、61重量部以下、60重量部以下、59重量部以下、58重量部以下、57重量部以下、56重量部以下、又は55重量部以下の量で存在する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、硬化した材料は、水性環境と接触する。これらの場合、水に対して親和性が低い材料を利用することが有利である。一定の(メタ)アクリレートモノマーの水に対する親和性は、水とオクタノールなどの不混和性溶媒との間の分配係数(P)の計算によって推定することができる。これは、親水性又は親油性の定量的記述子として機能することができる。オクタノール/水分配係数は、ACD ChemSketch(Advanced Chemistry Development,Inc.,Toronto,Canada)などのソフトウェアプログラムにより、オクタノール/水分配係数の対数(logP)モジュールを使用して計算することができる。本発明の実施形態では、計算されたlogP値は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、又は4より大きい。計算されたlogP値は、典型的には12.5以下である。いくつかの実施形態では、計算されたlogP値は、12、11.5、11、10.5、10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、又は5.5以下である。更に、いくつかの実施形態では、光重合性組成物は、3未満、2未満、又は1未満のlogP値を有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーを本質的に含まないことにより、かなりの量の親水性(メタ)アクリレートモノマーの存在を排除する。
【0049】
いくつかの実施形態では、光重合性組成物は、光重合性組成物の総重量に基づいて、親水性成分が、25重量%以下、例えば、23重量%、21重量%、20重量%、19重量%、17重量%、15重量%、13重量%、又は11重量%以下、かつ親水性成分が、光重合性組成物の総重量に基づいて、1重量%以上、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、7重量%、9重量%、又は10重量%以上、例えば、1重量%~25重量%の量であり、logP値が3未満、2未満、又は1未満である、親水性(メタ)アクリレートモノマー又はポリマー(例えば、親水性ウレタン(メタ)アクリレートポリマー)を含む。いくつかの実施形態では、親水性成分と、硬化したホモポリマーが150℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーとの組み合わせは、有利な特性を物品に与えることができ、例えば、それぞれ光重合性組成物の総重量に基づいて、1重量%~25重量%の親水性成分が存在する場合、硬化したホモポリマーが150℃以上のTを有する、20重量%以上、22重量%、25重量%、27重量%、30重量%、32重量%、35重量%、37重量%、40重量%、42重量%、45重量%、47重量%、又は50重量%以上の単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。
【表1】
【0050】
光開始剤
本開示の光重合性組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含む。好適な例示的光開始剤は、IGM Resins(Waalwijk,The Netherlands)から商品名OMNIRADで入手可能なものであり、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(OMNIRAD 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(OMNIRAD 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(OMNIRAD 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(OMNIRAD 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(OMNIRAD 369)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(OMNIRAD 379)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(OMNIRAD 907)、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]ESACURE ONE(Lamberti S.p.A.,Gallarate,Italy)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR 1173)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(OMNIRAD TPO)、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(OMNIRAD TPO-L)が挙げられる。追加の好適な光開始剤としては、例えば、限定するものではないが、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル、芳香族塩化スルホニル、光活性オキシム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、光重合性組成物中の重合性成分の総重量に基づいて、最大約5重量%の量で光重合性組成物中に存在する。場合によっては、光開始剤は、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、1.25重量%以上、又は1.5重量%以上、かつ5重量%以下、4.8重量%以下、4.6重量%以下、4.4重量%以下、4.2重量%以下、4.0重量%以下、3.8重量%以下、3.6重量%以下、3.4重量%以下、3.2重量%以下、3.0重量%以下、2.8重量%以下、2.6重量%以下、2.4重量%以下、2.2重量%以下、2.0重量%以下、1.8重量%以下、又は1.6重量%以下、の量で存在する。換言すれば、光開始剤は、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~5重量%、0.2重量%~5重量%、又は0.5重量%~5重量%の量で存在し得る。
【0052】
更に、熱開始剤は、本明細書に記載の光重合性組成物中に任意に存在し得る。いくつかの実施形態では、熱開始剤は、光重合性組成物中に、又は光重合性組成物中の重合性成分の総重量に基づいて、最大約5重量%の量で存在する。いくつかの事例では、熱開始剤は、光重合性組成物中の重合性成分の総重量に基づいて、約0.1重量%~5重量%の量で存在する。好適な熱開始剤としては、例えば、限定するものではないが、過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2,-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、並びにt-ブチルペルベンゾエートが挙げられる。市販の熱開始剤の例としては、VAZO67(2,2’-アゾ-ビス(2-メチルブチロニトリル))、VAZO64(2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル))、及びVAZO52(2,2’-アゾ-ビス(2,2-ジメチルバレロニトリル))を含む、商品名VAZOとしてDuPont Specialty Chemical(Wilmington,DE)から入手可能な開始剤、並びにLUCIDOL70としてElf AtochemNorth America,Philadelphia,Pa.から入手可能な開始剤が挙げられる。
【0053】
一定の態様では、1種より多い開始剤の使用は、重合性成分の反応生成物に組み込まれるモノマーの百分率を増加させ、そのため、未硬化のままであるモノマーの百分率を減少させるのを助ける。
【0054】
成分
本開示による歯科矯正物品は、成分の重合反応生成物を含む。成分は、少なくとも1つのイソシアネート、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノオール、少なくとも1つのポリカーボネートジオール、及び少なくとも1つの触媒を含む。これらの成分のそれぞれは、以下で詳細に論じる。
【0055】
成分中に存在するイソシアネート、(メタ)アクリレートモノオール、及びポリカーボネートジオールのそれぞれの好適な量は、これらの成分のそれぞれ対他の成分のモル比に基づいている。例えば、イソシアネート(例えば、イソシアネート化合物1モル当たり2つのイソシアネート当量を有するジイソシアネート)対ポリカーボネートジオールの比は、典型的には、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量~イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール3モル当量の範囲である。換言すれば、イソシアネート(例えば、ジイソシアネート)対ポリカーボネートジオールの比は、典型的には、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量~イソシアネート1.3モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量の範囲である。選択された実施形態では、イソシアネート対ポリカーボネートジオールの比は、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール2モル当量であるか、又は換言すれば、イソシアネート2モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量である。イソシアネート対ポリカーボネートジオールの比が、イソシアネート1モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量に近いほど、成分の重合反応生成物中で生成された、得られたポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量が高くなる。
【0056】
イソシアネート(例えば、ジイソシアネート)対(メタ)アクリレートモノオールの比は、典型的には、イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲である。換言すれば、イソシアネート(例えば、ジイソシアネート)対(メタ)アクリレートモノオールの比は、典型的には、イソシアネート1.3モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量~イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲である。選択された実施形態では、イソシアネート対(メタ)アクリレートモノオールの比は、イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール2モル当量であるか、又は換言すれば、イソシアネート2モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量である。
【0057】
ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比は、典型的には、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~ポリカーボネートジオールのアルコール3モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲である。換言すれば、ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比は、典型的には、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール0.3モル当量の範囲である。選択された実施形態では、ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比は、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量である。
【0058】
イソシアネート
成分(例えば、成分の重合反応生成物に含まれる)は、少なくとも1つのイソシアネートを含む。成分に使用することができるポリイソシアネートは、少なくとも2つの遊離イソシアネート基を有する任意の有機イソシアネートであり得る。脂肪族、脂環式、芳香族、及び芳香脂肪族イソシアネートが含まれる。アルキル及びアルキレンポリイソシアネート、シクロアルキル及びシクロアルキレンポリイソシアネートなどの、既知のポリイソシアネートのいずれか、並びにアルキレン及びシクロアルキレンポリイソシアネートなどの組み合わせを用いることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、式Rdi(NCO)を有するジイソシアネートを使用することができ、Rdiは上記で定義されている。
【0060】
好適なジイソシアネートの具体的な例としては、例えば、限定するものではないが、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、2,4-トルエンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシレン-4,4’ジイソシアネート(H12MDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサンと2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン(TMXDI)との混合物、trans-1,4-水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートと2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートとの混合物、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート及び2,4-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ドデシルメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート又は1,4-キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-フェニレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、trans-シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素化二量体酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、メチレンビス6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。選択された実施形態では、ジイソシアネートはIPDIを含む。
【0061】
例えば、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、及び/又はビウレット基を含有する、ポリウレタン化学に由来する既知の高官能性ポリイソシアネート又はその他の変性ポリイソシアネートを使用することも可能である。
【0062】
(メタ)アクリレートモノオール
成分(例えば、成分の重合反応生成物に含まれる)は、(メタ)アクリレートモノオールを含む。典型的には、(メタ)アクリレートモノオールは、式(II):
HO-Q-(A) (II)
[式中、Qは多価有機連結基であり、Aは、式-XC(=O)C(R)=CH(式中、XはO、S、又はNRであり、Rは、H又は1~4個の炭素原子のアルキルであり、Rは、1~4個の炭素原子の低級アルキル又はHである)の(メタ)アクリル官能基であり、pは1又は2である。]、のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートを含む。
【0063】
Qは、直鎖若しくは分枝鎖、又は環含有連結基であり得る。Qは、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレンを含み得る。Qは、O、N、及びS、並びにこれらの組み合わせなどのヘテロ原子を、任意に含み得る。Qは、カルボニル又はスルホニル、及びこれらの組み合わせなどのヘテロ原子含有官能基を、任意に含み得る。いくつかの実施形態では、Qは、アリーレン、アラルキレン、及びアルカリーレンから選択される直鎖、分枝鎖、又は環含有連結基である。更に他の実施形態では、Qは、O、N、及びSなどのヘテロ原子並びに/又はカルボニル及びスルホニルなどのヘテロ原子含有官能基を含有する、直鎖、分枝鎖、又は環含有連結基である。他の実施形態では、Qは、O、N、Sから選択されるヘテロ原子並びに/又はカルボニル及びスルホニルなどのヘテロ原子含有官能基を任意に含有する、分枝鎖又は環含有アルキレン基である。
【0064】
いくつかの実施形態では、式(II)のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートにおいて、Qはアルキレン基であり、pは1であり、(メタ)アクリル官能基A中、XはOであり、Rはメチル又はHである。一定の好ましい実施形態では、式(II)のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートにおいて、Qはアルキレン基であり、pは1であり、(メタ)アクリル官能基A中、XはOであり、Rはメチルである。
【0065】
好適な例(メタ)アクリレートモノオールとしては、例えば、限定するものではないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全ての異性体)、ポリ(e-カプロラクトン)モノ[2-(メタ)アクリルオキシエチル]エステル、例えば、Sartomer USA(Arkema Group)(Exton,PA)から商品名「SR-495」で入手可能なカプロラクトンモノアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノール、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アルキルオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、が挙げられる。
【0066】
ポリカーボネートジオール
成分(例えば、成分の重合反応生成物に含まれる)は、ポリカーボネートジオールを含み、ポリカーボネートジオールは、ポリエーテルなどの別の連結基を有するポリウレタンを含有する歯科矯正物品よりも、水との接触中に吸収される水が少ないことに寄与することが見出された。歯科矯正物品が患者の口腔の水分に富む環境で使用されるとき、吸水の程度は、歯科矯正物品の組成物に関連する。選択された物品は、37℃で7日間脱イオン水中に浸漬したときに、3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、又は1%未満の水を吸収する。ポリカーボネートジオールは、式(I):
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH (I)
[式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及びRは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23(の整数)である。]、のものである。換言すれば、いくつかの繰り返し単位のR及び/又はRは、4未満(例えば、2又は3)の炭素数を有してもよく、これは、繰り返し単位が、式(I)のポリカーボネートジオール中の全ての繰り返し単位のR及びRの炭素数を平均すると、その平均が4~10、又は4~6、4~7、4~8、4~9、5~7、5~8、5~9、5~10、6~8、6~9、6~10、7~9、7~10、又は8~10のいずれかの範囲内に収まる程度に高い炭素数を有するのに十分なものである。選択された実施形態では、R又はRのうちの少なくとも1つは、-CHCHCH(CH)CHCH-、-(CH-、又は-(CH-であり、好ましくは-CHCHCH(CH)CHCH-と-(CH-との組み合わせである。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリカーボネートジオールが、1モル当たり1,000グラム(g/mol)を超える数平均分子量(Mn)を有するか、又は成分中に存在する全てのポリカーボネートジオールの加重平均が、1,000g/molを超えるMnを有するかのいずれかであり、MnはOH値によって決定される。別の言い方をすれば、成分が式(I)の単一のポリカーボネートジオールを含有する場合、ポリカーボネートジオールは、1,000g/molより高いMnを有する。成分が2つ以上のポリカーボネートジオール(例えば、1つ以上が式(I)のもの)を含有する場合、ポリカーボネートジオールのうちの少なくとも1つのMnは、2つ以上のポリカーボネートジオールの全てのMn値の加重平均が1,000g/molよりも高いことを条件として、1,000g/mol以下であってもよい。例えば、2つのポリカーボネートジオールを含む成分は、Mnが約500g/molである第1のポリカーボネートジオール 1対Mnが約1,500g/molである第2のポリカーボネートジオール 2のモル比を含み得、加重平均Mnは1,167g/molとなる。一定の実施形態では、ポリカーボネートジオール(又は成分中に存在する全てのポリカーボネートジオールの加重平均)は、1,500g/mol以上の数平均分子量を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、1モル当たり450グラム(g/mol)以上、500g/mol以上、550g/mol以上、600g/mol以上、650g/mol以上、700g/mol以上、750g/mol以上、800g/mol以上、850g/mol以上、900g/mol以上、950g/mol以上、又は1,000g/mol以上であり、かつ3,200g/mol以下、3,100g/mol以下、3,000g/mol以下、2,900g/mol以下、2,800g/mol以下、2,700g/mol以下、2,600g/mol以下、2,500g/mol以下、2,400g/mol以下、2,300g/mol以下、2,200g/mol以下、2,100g/mol以下、2,000g/mol以下、1,900g/mol以下、1,800g/mol以下、又は1,700g/mol以下であるMnを有する、1つ以上のポリカーボネートジオールが存在する。換言すれば、ポリカーボネートジオールは、450g/mol~3,200g/mol、800g/mol~3,200g/mol、1,000g/mol~3,200g/mol、1,500g/mol~3,200g/mol、1,800g/mol~3,200g/mol、450g/mol~2,200g/mol、800g/mol~2,200g/mol、1,000g/mol~2,200g/mol、1,500g/mol~2,200g/mol、又は1,800g/mol~2,200g/molのMnを有し得る。一方、Mnが3,200g/molを超えるポリカーボネートジオールを含めると、光重合反応生成物のエラストマー特性を高めることにより、光重合組成物の光重合反応生成物の剛性に悪影響を及ぼし得る。選択された実施形態では、光重合性組成物は、成分中に存在する1つ以上のポリカーボネートジオールよりもMnが低い任意のジオールを本質的に含まない。
【0069】
成分に使用するのに好適なポリカーボネートジオールとしては、例えば、限定するものではないが、Kuraray Co.Ltd.(Tokyo,JP)から商品名「KURARAY POLYOL」で市販されているもの、例えば、具体的には、KURARAY POLYOL Cシリーズのそれぞれ、すなわち、C-590、C-1090、C-2050、C-2090、及びC-3090、Covestro LLC(Pittsburgh,PA)から商品名「DESMOPHEN」で市販されているもの、例えば、Desmophen Cシリーズのそれぞれ、すなわち、C-2100、C-2200、及びC XP-2613が挙げられる。
【0070】
触媒
成分(例えば、成分の重合反応生成物に含まれる)は、少なくとも1つのイソシアネート、少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノオール、及び少なくとも1つのポリカーボネートジオールの反応を触媒するための触媒を含む。典型的には、触媒は、重合性成分の総重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の量で含まれる。
【0071】
好適な触媒の例としては、例えば、限定するものではないが、ジオクチルジラウレート(DOTDL)、オクトエートスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレート、ジオクチルスズメルカプチド、ジオクチルスズチオカルボキシレート、鉛2-エチルヘキサノエート、テトラブチルチタネート(TBT)などのテトラアルキルチタネート、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、ベータ-(ジメチルアミノ)プロピオニトリル、N-メチルピロリドン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノ-エトキシエタノール、トリエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジオール-ジアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテル、N’-シクロヘキシル-N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルピペラジン、トリメチルピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N-(N,N’-ジメチルアミノエチル)モルホリン、ビス(モルホリノエチル)エーテル、1,2-ジメチルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、1,4-ジアミジン、ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン(DABCO)、1,4-ジアザビシクロ[3.3.0]-オクタ-4-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)、及びフェノール塩、オクチル酸塩などの塩、N,N,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン、N-シクロヘキシル-N’,N’,N”,N”-テトラメチルグアニジン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチル-プロピル)-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、が挙げられる。
【0072】
任意の実施形態では、触媒は、亜鉛、アミン、スズ、ジルコニウム、又はビスマスを含む。触媒は、ジブチルスズジアクリレートなどのスズを含み得る。しかし、好ましくは、スズ触媒は、患者の口腔と接触する歯科矯正物品に含まれることが望ましくない場合があるため、触媒はスズを含まない。
【0073】
触媒は、2-エチルヘキシルカルボキシレート及び2-エチルヘキサン酸を含まない有機金属亜鉛錯体、例えば、King Industries,Inc(Norwalk,CT)から商品名K-KAT XK-672で市販されている亜鉛触媒、及び/又はKing Industriesから入手可能な他の亜鉛触媒、例えば、K-KAT XK-661及びK-KAT XK-635を含んでもよい。別の好適な触媒は、例えばSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から市販されているビスマスネオデカノエート、並びにKing Industriesから商品名K-KAT XK-651及びK-KAT 348で入手可能なビスマス触媒である。入手可能なアルミニウム系触媒としては、King Industries製のK-KAT 5218が挙げられる。更に、ジルコニウム系触媒としては、King Industriesから入手可能なK-KAT 4205及びK-KAT 6212が挙げられる。
【0074】
成分の重合反応生成物
本開示による歯科矯正物品は、上述した成分の重合反応生成物を含む。成分の重合反応生成物は、少なくとも1種のポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーを含有する。ウレタンは、イソシアネートとアルコールとの反応によって調製され、カルバメート結合を形成する。ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、典型的には、最終歯科矯正物品に靱性(例えば、少なくとも最小引張強度及び/又は弾性率)並びに柔軟性(例えば、少なくとも最小破断伸び)を提供する。ウレタン官能基に加えて、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、ポリカーボネート連結基を更に含む。連結基は、2つ以上のウレタン基を連結する官能基であり、二価、三価、又は四価であってもよく、好ましくは二価である。加えて、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びシロキサン基から選択される1つ以上の官能基を任意に更に含む。これらの官能基は、重合中に光重合性組成物の他の成分と反応することができる。ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、好ましくは、3,000g/mol以上、4,000g/mol以上、5,000g/mol以上、6,000g/mol以上、6,000g/mol以上、7,000g/mol以上、8,000g/mol以上、9,000g/mol以上、10,000g/mol以上、11,000g/mol以上、又は12,000g/mol以上、かつ50,000g/mol以下、45,000g/mol以下、40,000g/mol以下、35,000g/mol以下、32,000g/mol以下、30,000g/mol以下、28,000g/mol以下、25,000g/mol以下、23,000g/mol以下、20,000g/mol以下、又は18,000g/mol以下の重量平均分子量(Mw)を有する。換言すれば、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、3,000g/mol~50,000g/mol、6,000g/mol~40,000g/mol、6,000g/mol~18,000g/mol、6,000g/mol~35,000g/mol、又は8,000g/mol~32,000g/molのMwを有し得る。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)を使用して、例えば、以下の実施例に記載の方法を使用して測定することができる。ポリウレタン(メタ)アクリレートの分子量がより大きいと、同等の組成物及び充填量を有する、より高い粘度の樹脂配合物をもたらすことになり、これにより配合物の流動性が低くなり、ポリウレタン(メタ)アクリレートの分子量がより小さいと、硬化した歯科矯正物品に対する強靭化効果が低下する。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、式(VI):
【化2】
[式中、Aは、式-OC(=O)C(R)=CH(式中、Rは1~4個の炭素原子のアルキル(例えば、メチル)又はHであり、pは1又は2であり、Qは上記の多価有機連結基であり、Rdiはジイソシアネートの残基であり、RdOHはポリカーボネートポリオールの残基であり、rは平均して1から15である]、のものである。いくつかの実施形態では、rは15、14、13、12、11、又は10以下である。いくつかの実施形態では、rは平均して少なくとも2、3、4、又は5である。いくつかの実施形態では、Aはメタクリル官能基、例えばメタクリレートである。
【0076】
いくつかの実施形態では、成分の重合反応生成物は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーに加えて、1つ以上の副反応生成物を更に含む。触媒の選択性及び/又は成分の重量比に応じて、反応物質のオリゴマーを生成することができる。光重合性組成物を調製する際の成分の添加順序は、光重合反応生成物中で生成されるポリマー及びオリゴマーの相対量に影響を及ぼす。例えば、最初にイソシアネートをポリカーボネートジオールに加え、次に単官能性(メタ)アクリレートを加えると、代わりに、最初にイソシアネートに単官能性(メタ)アクリレートを添加し、次にポリカーボネートジオールを添加するよりも、オリゴマーなどの副生成物に対するポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーの比率が高くなる。
【0077】
単官能性(メタ)アクリレートモノマー-イソシアネート-単官能性(メタ)アクリレートモノマーの構造を有するオリゴマーは、一定の実施形態における成分の重合反応の副産物であることが見出された。ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーを精製して、そのような副生成物を除去することが可能である。あるいは、特に特定の反応により少量の1つ以上の副生成物が生成される場合、オリゴマーなどの追加の副生成物を重合反応生成物に加えてもよい。いくつかの副生成物成分は、光重合性組成物が硬化した後の弾性率又は架橋度のうちの少なくとも1つを改善することができることが発見された。
【0078】
例えば、光重合性組成物は、式(III):
【化3】
(式中、X、Q、p、及びRは、式(II)で定義したとおりであり、Rdiは、上記で定義したジイソシアネートの残基である)の化合物を任意に含む。典型的には、式(III)の化合物は、上記のように、成分の重合中に生成される。成分の特定の配合は、成分の重合中に生成される式(III)の化合物の量に影響を及ぼす。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーの形成を触媒することに対する触媒の特異性は、成分の重合中に生成される式(III)の化合物の量に影響を及ぼし得る。一定の実施形態では、特に、所望よりも少量の式(III)の化合物が、成分の重合によって生成される場合、式(III)の化合物を光重合性組成物に添加する。任意の実施形態では、化合物は、光重合反応中の架橋を有利に改善し、弾性率又は光重合反応生成物、又はその両方を増加させ得る。式(III)の化合物が成分の重合中に形成されるか、光重合性組成物に別々に添加されるか、又はその両方が添加されるかにかかわらず、いくつかの実施形態では、式(III)の化合物は、重合性組成物の重量に基づいて、0.05重量パーセント(重量%)以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2.5重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、又は9重量%以上、かつ重合性組成物の重量に基づいて、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、又は10重量%以下の量で存在する。換言すれば、式(III)の化合物は、重合性組成物の重量に基づいて、0.05重量パーセント~20重量パーセント(重量%)、1.5重量%~12重量%、2.5重量%~12重量%、5重量%~15重量%、5重量%~12重量%、7重量%~15重量%、7重量%~12重量%、又は5重量%~20重量%の量で光重合性組成物中に存在してもよい。任意に、式(III)の化合物中のXは、Oである。選択された実施形態では、式(III)の化合物は式(IV):
【化4】
のものである。
【0079】
成分の第2の重合反応生成物:
任意の実施形態では、光重合性組成物は、成分の第2の重合反応生成物を更に含む。第2のポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーの使用は、光重合性組成物において単一のポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーを使用する場合とは幾分異なる機械的特性を歯科矯正物品に提供し得る。第2の重合反応生成物の成分は、
1)式(VII)のイソシアネート官能性(メタ)アクリレート化合物:
(A)-Q-NCO(VII)
(式中、A、p、及びQは、式(II)で定義されたとおりである)と、
2)式(I)のポリカーボネートジオール:
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)
(式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23(の整数)である)と、
3)触媒と、を含む。
【0080】
第2の重合反応生成物は、第1のポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーとは異なるポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーを含む。選択された実施形態では、第2の重合反応生成物は、式(VIII):
【化5】
(式中、Q、p、及びRは、式(II)について定義されたとおりであり、R及びRは式(I)について定義されたとおりである)
の化合物を含む。
【0081】
式(VIII)の化合物は、典型的には、ポリカーボネートジオールを、触媒の存在下でイソシアネート官能性(メタ)アクリレート化合物と反応させることによって得られる。イソシアネート官能性(メタ)アクリレートの例としては、イソシアナトエチルメタクリレート、イソシアナトエトキシエチルメタクリレート、イソシアナトエチルアクリレート、及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられ、これらは、例えばShowa Denko(Tokyo,Japan)から市販されている。一例として、式(VIII)の化合物は、選択された実施形態では、式(IX):
【化6】
の化合物であってもよい。
【0082】
式(IX)において、nは、ヘキサンジオールに基づく1000分子量のポリカーボネートジオールに対して約6.7である。
【0083】
いくつかの実施形態では、第2の重合反応生成物は、式(XII):
【化7】
(式中、Rdiは、上記で定義されたジイソシアネートの残基である)、
の化合物を含む。ジイソシアネートが非対称である実施形態では、重合中に、ジイソシアネートの残基の、カルバメート結合の窒素原子への結合の配向が変化し、したがって、重合反応生成物は、複数のポリウレタンメタクリレート構造を含有する。
【0084】
二官能性成分
本開示の光重合性組成物は、二官能性(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーなどの少なくとも1つの二官能性成分を任意に含む。光重合性組成物中に存在する二官能性成分は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーと共反応することができる(例えば、付加重合化することができる)。
【0085】
二官能性成分(例えば、モノマー)は、光重合性組成物の総重量に基づいて、最大15重量%、光重合性組成物の総重量に基づいて、最大12重量%、最大10重量%、又は最大8重量%の量で存在する。15重量%を超える二官能性成分を含むと、所望よりも多くの架橋が生じ、歯科矯正物品の伸び率が減少することがある。
【0086】
好適な二官能性モノマーとしては、例えば、限定するものではないが、式(X):
【化8】
(式中、Rは式(II)について定義されたとおりであり、Rdiは、ジイソシアネートの残基である)を有する化合物か、又は式(XI):
【化9】
(式中、Q、X、及びRは、式(II)について定義されたとおりであり、R及びRは、式(I)について定義されたとおりである)を有する化合物を含む。更なる好適な二官能性モノマーとしては、テレフタル酸のヒドロキシエチルメタクリレートジエステル、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。更なる好適な二官能性モノマーとしては、上記の各ジアクリレートのジメタクリレートが挙げられる。
【0087】
典型的には、光重合性組成物は、3つのヒドロキシル基を有するアルコールである三価アルコールを本質的に含まない。これは、このようなアルコールが光重合性組成物の親水性を増加させるためであり、このことにより、光重合性組成物から調製された歯科矯正物品の使用中に、望ましくない高い吸水率が生じることがある。
【0088】
添加剤
本明細書に記載の光重合性組成物は、いくつかの例では1つ以上の添加剤、例えば、阻害剤、安定剤、増感剤、吸収調整剤、フィラー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の添加剤を更に含む。
【0089】
加えて、本明細書に記載の光重合性材料の組成物は、同様に存在し得る1つ以上の光開始剤の有効性を増加させ得る、1種以上の増感剤を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(isopropylthioxanthone、ITX)又は2-クロロチオキサントン(chlorothioxanthone、CTX)を含む。他の増感剤もまた使用されてもよい。光重合性組成物中で使用する場合、増感剤は、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%、又は約1重量%の範囲の量で、存在することができる。
【0090】
本明細書に記載の光重合性組成物はまた、任意に1つ以上の重合阻害剤又は安定剤を含む。重合阻害剤は、多くの場合、組成物に追加の熱安定性を加えるために光重合性組成物に含まれる。いくつかの例では、安定剤は1種以上の酸化防止剤を含む。本開示の目的に反しない任意の酸化防止剤が使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、好適な酸化防止剤として様々なアリール化合物が挙げられ、これにはブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)が含まれ、これは、本明細書に記載の実施形態で重合阻害剤としてもまた使用することができる。追加的に又は代替的に、重合阻害剤は、メトキシヒドロキノン(methoxyhydroquinone、MEHQ)を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、重合阻害剤を使用する場合、重合阻害剤は、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~2重量%、0.001重量%~1重量%、又は0.01重量%~1重量%の量で存在する。更に、安定剤を使用する場合、安定剤は、本明細書に記載の光重合性組成物中に、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~5重量%、約0.5重量%~4重量%、又は約1重量%~3重量%の量で存在する。
【0092】
本明細書に記載の光重合性組成物はまた、化学線の透過度を制御するために、1つ以上の紫外線吸収剤、例えば、染料、蛍光増白剤(optical brightener)、顔料、微粒子フィラーなどを含むことができる。1つの特に好適な紫外線吸収剤は、BASF Corporation、Florham Park、NJから入手したTinuvin 326、(2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールである。蛍光増白剤である別の特に好適な紫外線吸収剤は、Tinopal OB、ベンゾオキサゾール、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)]であり、これもBASF Corporationから入手可能である。別の好適な紫外線吸収剤は、式(V)の化合物を含む蛍光増白剤である。
【化10】
【0093】
式Vの化合物は、以下の実施例において詳細に記載されるように合成され得る。
【0094】
紫外線吸収剤を使用する場合、紫外線吸収剤は、光重合性組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~5重量%、約0.01重量%~1重量%、約0.1重量%~3重量%、又は約0.1重量%~1重量%の量で存在し得る。
【0095】
光重合性組成物はフィラーを含んでもよく、これはナノスケールのフィラーを含む。好適なフィラーの例は自然発生又は合成の材料で、これらには、シリカ(SiO(例えば、石英))、アルミナ(Al)、ジルコニア、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、例えばZr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAlから得られたガラス及びフィラー、長石、ホウケイ酸塩ガラス、カオリン(陶土)、タルク、ジルコニア、チタニア、サブミクロンシリカ粒子(例えば、Degussa Corp.,Akron,OHの「OX50」、「130」、「150」及び「200」シリカ、並びにCabot Corp.,Tuscola,ILのCAB-O-SIL M5及びTS-720シリカを含む、商品名AEROSILで入手可能なものなどの発熱性シリカ)が挙げられるが、これらに限定されない。国際公開第09/045752号(Kalgutkarら)に開示されるものなどの、ポリマー材料から製造される有機フィラーもまた可能である。
【0096】
組成物は、繊維強化材並びに染料、顔料及び顔料染料などの着色剤を更に含んでもよい。好適な繊維強化材の例としては、PGAミクロフィブリル、コラーゲンミクロフィブリル、及び米国特許第6,183,593号(Narangら)に記載されるその他の繊維強化材が挙げられる。米国特許第5,981,621号(Clarkら)に記載される好適な着色剤の例としては、1-ヒドロキシ-4-[4-メチルフェニルアミノ]-9,10-アントラセンジオン(FD&C紫色2号)、6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホフェニル)オキソ]-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩(FD&C黄色6号)、9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-2,4,5,7-テトラヨード-3H-キサンテン-3-オン、二ナトリウム塩、一水和物(FD&C赤色3号)などが挙げられる。
【0097】
不連続繊維もまた、炭素、セラミック、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む繊維などの好適なフィラーでもある。好適な不連続繊維は、セラミック繊維などの様々な組成物を有することができる。セラミック繊維は連続長で製造され得、これらが細断又は剪断されて、不連続なセラミック繊維が得られる。セラミック繊維は、様々な市販のセラミックフィラメントから製造され得る。セラミック繊維を形成するのに有用なフィラメントの例としては、商標NEXTEL(3M Company,St.Paul,MN)で販売されているセラミック酸化物繊維が挙げられる。NEXTELは、操作温度では低い伸び率及び収縮率を有する連続フィラメントセラミック酸化物繊維であり、良好な耐化学薬品性、低い熱伝導率、熱ショック耐性、及び低い空隙率をもたらす。NEXTEL繊維の具体的な例としては、NEXTEL 312、NEXTEL 440、NEXTEL 550、NEXTEL 610及びNEXTEL 720が挙げられる。NEXTEL 312及びNEXTEL 440は、Al、SiO、及びBを含む耐熱性アルミノホウケイ酸塩である。NEXTEL 550及びNEXTEL 720は、アルミノシリカであり、NEXTEL 610は、アルミナである。製造の際に、NEXTELフィラメントは、有機サイジング剤又は仕上げ剤でコーティングされ、これが繊維加工の補助剤として機能する。サイジングは、保護及び操作補助のためにフィラメントストランドに適用されるデンプン、油、ワックス、又は他の有機成分の使用を含み得る。サイジングは、フィラメント又はセラミック繊維を700℃の温度で1~4時間熱洗浄することによって、セラミックフィラメントから除去することができる。
【0098】
セラミック繊維は、比較的均一な長さを提供するように切断、粉砕、又は細断することができ、これは、セラミック材料の連続フィラメントを、他の切断操作の中でもとりわけ、機械的剪断操作又はレーザ切断操作で切断することによって達成することができる。一定の切断作業の高度に制御された性質を考慮すると、セラミック繊維のサイズ分布は非常に狭く、複合特性を制御することができる。例えば、CCDカメラ(Olympus DP72,Tokyo,Japan)及び分析ソフトウェア(Olympus Stream Essentials,Tokyo,Japan)を搭載した光学顕微鏡(Olympus MX61,Tokyo,Japan)を使用して、セラミック繊維の長さを測定することができる。セラミック繊維の代表サンプルをガラススライド上に広げ、少なくとも200個のセラミック繊維の長さを10倍で測定することによって、サンプルを調製することができる。
【0099】
好適な繊維としては、例えば、NEXTEL 312、440、610及び720などの、商品名NEXTEL(3M Company,St.Paul,MNから入手可能)で入手可能なセラミック繊維が挙げられる。ここで好ましいセラミック繊維の1つは、多結晶α-Alを含む。好適なアルミナ繊維は、例えば、米国特許第4,954,462号(Woodら)及び米国特許第5,185,299号(Woodら)に記載されている。代表的なアルファアルミナ繊維は、NEXTEL 610(3M Company,St.Paul,MN)の商品名で市販されている。いくつかの実施形態では、アルミナ繊維は、多結晶アルファアルミナ繊維であり、理論上の酸化物ベースで、アルミナ繊維の総重量に基づいて、99重量%超のAl及び0.2重量%~0.5重量%のSiOを含む。他の実施形態では、いくつかの望ましい多結晶アルファアルミナ繊維は、1マイクロメートル未満(又は更には、いくつかの実施形態では、0.5マイクロメートル未満)の平均粒度を有するアルファアルミナを含む。いくつかの実施形態では、多結晶アルファアルミナ繊維は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも2.1GPa、又は更には少なくとも2.8GPa)の平均引張強度を有する。好適なアルミノケイ酸繊維は、例えば、米国特許第4,047,965号(Karstら)に記載されている。例示的なアルミノケイ酸繊維は、3M Company(St.Paul,MN)によりNEXTEL 440、及びNEXTEL 720の商品名で市販されている。アルミノホウケイ酸繊維は、例えば、米国特許第3,795,524号(Sowman)に記載されている。例示的なアルミノホウケイ酸繊維は、3M Companyによって商品名NEXTEL 312で市販されている。窒化ホウ素繊維は、例えば、米国特許第3,429,722号(Economy)及び米国特許第5,780,154号(Okanoら)に記載されているように作製することができる。
【0100】
セラミック繊維はまた、他の好適なセラミック酸化物フィラメントから形成することもできる。そのようなセラミック酸化物フィラメントの例としては、Central Glass Fiber Co.,Ltd.から入手可能なもの(例えば、EFH75-01、EFH150-31)が挙げられる。約2%未満のアルカリを含有するか、又は実質的にアルカリを含まないもの(すなわち、「Eガラス」繊維)である、アルミノホウケイ酸塩ガラス繊維もまた、好ましい。Eガラス繊維は、多数の商業的供給業者から入手可能である。
【0101】
有用な顔料の例としては、限定するものではないが、酸化チタン、リン酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛及びリトポンなどの白色顔料;酸化鉄(栗色、赤色、明るい赤色)、鉄/クロム酸化物、硫セレン化カドミウム及び水銀カドミウム(栗色、赤色、橙色)などの赤色及び赤橙色顔料;ウルトラマリン(青色、ピンク色及び紫色)、クロムスズ(ピンク色)、マンガン(紫色)、コバルト(紫色);チタン酸バリウム、硫化カドミウム(黄色)、クロム(橙色、黄色)、モリブデン酸塩(橙色)、クロム酸亜鉛(黄色)、チタン酸ニッケル(黄色)、酸化鉄(黄色)、ニッケルタングステンチタン、亜鉛フェライト及びチタン酸クロムなどの橙色、黄色及びバフ色の顔料;酸化鉄(バフ色、褐色)、酸化マンガン/酸化アンチモン/酸化チタン、チタン酸マンガン、天然シエナ(アンバー色)、チタンタングステンマンガンなどの褐色顔料;アルミン酸クロム(青色)、クロムコバルトアルミナ(ターコイズ色)、アイアンブルー(青色)、マンガン(青色)、クロム及びクロム酸化物(緑色)及びチタングリーンなどの青緑色顔料;並びに酸化鉄ブラック及びカーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。硬化した組成物で所望の色調を実現するために、一般的に、顔料の組み合わせが使用される。
【0102】
プリントされた組成物を不可視光下で見えるようにするときに、蛍光染料及び顔料の使用が有用な場合もある。特に有用な炭化水素可溶性蛍光染料は、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)1チオフェンである。ローダミンなどの蛍光染料をカチオン性ポリマーに結合させ、樹脂の一部として組み込んでもよい。
【0103】
所望の場合、本開示の組成物は、他の添加剤、例えば、指示薬、促進剤、界面活性剤、湿潤剤、酸化防止剤、酒石酸、キレート化剤、緩衝剤、及び当業者に明らかである他の類似成分を含有してもよい。更に、医薬又は他の治療用物質を、光重合性組成物に任意で添加することができる。例としては、フッ化物供給源、増白剤類、抗カリエス剤類(例えば、キシリトール)、無機成分補給剤類(例えば、リン酸カルシウム化合物、並びにその他のカルシウム供給源及びホスフェート供給源)、酵素類、口臭清涼剤類、麻酔剤類、凝固剤類、酸中和剤類、化学療法剤類、免疫反応調整剤類、チキソトロープ類、ポリオール類、抗炎症剤類、抗菌剤類、抗カビ剤類、口内乾燥処理剤、減感剤類などの、多くの場合、歯科用組成物に使用されるタイプのものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
上記の添加剤のうちの任意のものの組み合わせを用いてもよい。当業者であれば、所望の結果を達成するために、過度な実験を行うことなく、そのような添加剤のいずれか1種を選び、その量を選択することができる。
【0105】
本明細書の光重合性組成物材料はまた、未硬化で、硬化して、及び後硬化の物品として、種々の望ましい特性を示すことができる。光重合性組成物は、未硬化の時点では、1つ以上の積層造形デバイス(例えば、3Dプリンティングシステム)の要求事項及びパラメータに従う粘度プロファイルを有する。有利には、多くの実施形態において、光重合性組成物は、最小量の溶媒を含有する。例えば、組成物は、95%~100%の固形分、好ましくは100%の固形分を含んでもよい。いくつかの事例では、本明細書に記載の光重合性組成物は、40℃及び0.1[1/s]の剪断速度で、40mmコーンプレート測定システムを使用するTA Instruments AR-G2磁気ベアリングレオメータを用いて、未硬化時に、約0.1~1,000Pa・s、約0.1~100Pa・s、又は約1~10Pa・sの動的粘度を呈する。いくつかの事例では、本明細書に記載の光重合性組成物は、未硬化時に、約10Pa・s未満の動的粘度を呈する。
【0106】
歯科矯正物品
上記の開示による光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を含む。本開示の光重合性組成物から製造された硬化した歯科矯正物品の適合性及び耐久性は、標準の引張試験、弾性率試験及び/又は伸び試験によってある程度判断することができる。光重合性組成物は通常、硬質化の後に、下記のパラメータのうちの少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0107】
歯科矯正物品は、好ましくは、少なくとも1つの望ましい物理的特性を呈する。これらの物理的特性としては、以下のもの、すなわち、初期緩和弾性率、破断伸び、引張強度、30分経過時点での緩和弾性率、緩和弾性率のパーセント損失、抽出可能な成分の重量パーセント、並びに温度が大きく乖離した損失弾性率及びtanδのピークを呈すること、及び吸水率の重量パーセント、が挙げられる。好ましくは、歯科矯正物品は、少なくとも2つの異なる所望の物理的特性、より好ましくは少なくとも3つの異なる所望の物理的特性、最も好ましくは少なくとも初期緩和弾性率、破断伸び、及び引張強度を呈する。これらの異なる物理的特性の値について以下説明する。
【0108】
歯科矯正物品は、室温(すなわち、22~25℃)にて48時間脱イオン水中で歯科矯正物品の材料の試料をコンディショニング(つまり浸漬)した(「水コンディショニング」)後の動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)によって測定し、37℃及び2%ひずみで測定して100メガパスカル(MPa)以上の初期緩和弾性率を任意に呈する。DMA手順は、以下の実施例において詳細に記載される。好ましくは、歯科矯正物品は、200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、1,000MPa以上、1,100MPa以上、又は更には1,200MPa以上の初期緩和弾性率を呈する。いくつかの実施形態では、初期緩和弾性率は、約3000、2500、2000、又は1500MPa以下である。
【0109】
歯科矯正物品は、水中に30分間浸漬した後、DMAによって測定され、2%ひずみの下で37℃にて、100MPa以上の(例えば、30分)緩和弾性率を任意に呈する。緩和弾性率のためのDMA手順は、以下の実施例で詳細に説明されており、水コンディショニング及び初期緩和弾性率試験の後に、歯科矯正物品の材料の試料に対して実施する。好ましくは、歯科矯正物品は、200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、又は更に1,000MPa以上の、(例えば、30分)緩和弾性率を呈する。いくつかの実施形態では、(例えば、30分)緩和弾性率は、約1500、1200、1000、又は800MPa以下である。
【0110】
歯科矯正物品は、DMAによって決定される70%以下の緩和弾性率のパーセント損失を任意に呈する。損失は、初期緩和弾性率と、37℃及び2%ひずみにおける(例えば、30分)緩和弾性率と、を比較することによって決定される。本開示の少なくとも一定の実施形態による歯科矯正物品は、異なる材料で作製された物品よりも、水に曝露した後の緩和弾性率の損失が小さいことが発見された。好ましくは、歯科矯正物品は、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、又は更には35%以下の緩和弾性率の喪失を呈する。いくつかの実施形態では、緩和弾性率の損失は、10%、15%、又は20%以上である。
【0111】
歯科矯正物品は、pH7.4のリン酸塩緩衝生理食塩水中で歯科矯正物品の材料の試料を37℃の温度にて24時間コンディショニング(すなわち、浸漬)した(「PBSコンディショニング」)した後、以下の実施例のセクションに従って決定して、20%以上のプリントされた物品の破断伸びを任意に呈する。破断伸びが高いことは、歯科矯正物品があまりに脆性であるため、患者による使用中に、場合により破損することを防止するのに役立つ。好ましくは、歯科矯正物品は、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、100%以上、110%以上、又は更には120%以上の破断伸びを呈する。いくつかの実施形態では、破断伸びは、250%、240%、230%、220%、210%、200%、190%、180%、170%、160%、150%、又は140%以下である。
【0112】
歯科矯正物品は、PBSコンディショニングの後に試験片Vを使用して、ASTM-D638-14に従って決定し、14MPa以上の降伏点(又は最大)引張強度を任意に呈する。降伏点強度(すなわち降伏強度)は、材料が恒久的に変形する前に扱うことができる最大引張応力として定義される。破断引張強度は、材料が破断する応力-ひずみ曲線上の点を指す。本明細書で使用されるとき、降伏する試料は、応力-ひずみ曲線に明確なピークを有する。しかし、脆性材料の応力-ひずみ曲線には降伏点がなく、多くの場合、ひずみの全範囲にわたって線形であり、最終的には、感知できるほどの塑性流動を伴わずに最大引張強度で最終的に破壊する。引張強度が高いことは、歯科矯正物品が患者の口腔内での使用中に弾性であるという程度の強度を有するのに寄与する。好ましくは、歯科矯正物品は、15MPa以上、17MPa以上、20MPa以上、25MPa以上、30MPa以上、35MPa以上、40MPa以上、45MPa以上、50MPa以上、又は更には55MPa以上の引張強度を呈する。いくつかの実施形態では、引張強度は、100MPa、95MPa、90MPa、85MPa、80MPa、75MPa、又は70MPa以下である。
【0113】
選択された実施形態では、歯科矯正物品は、100MPaの初期緩和弾性率、20%以上の破断伸び、及び14MPa以上の引張強度を呈する。同様に、物品は、初期緩和弾性率、破断伸び、及び降伏点引張強度のそれぞれについて、上記の好ましい値の任意の組み合わせを呈し得る。少なくとも一定の実施形態による光重合性組成物は、これらの3つの物理的特性全てを同時に有する物品を形成することができることが予想外に見出された。
【0114】
選択された実施形態では、物品の動的機械分析は、30分経過時点で高い緩和弾性率を伴い高い伸びを与える特定のタイプの応答を示した。1Hzの周波数で、かつ2℃/分の温度加熱ランプ速度で-40℃未満から200℃超まで測定した場合、本開示によるいくつかの実施形態は、20℃未満で、より好ましくは15℃未満で、最も好ましくは10℃未満で、損失弾性率のピークを示す。いくつかの実施形態では、損失弾性率ピーク温度は、少なくとも-70℃、-60℃、又は-50℃である。ピークという用語は、必ずしも損失弾性率の最大値を意味するものではなく、極大値、又はより大きなピーク上のショルダーであり得る。これらの物品は、高レベルの破断伸びを示す傾向がある。他の実施形態では、物品は、>60℃、>80℃、より好ましくは>100℃、最も好ましくは>110℃のTanδピークを示し得る。いくつかの実施形態では、ピークTanδ温度は、150℃、140℃、135℃、又は130℃以下である。高い30分緩和弾性率を示した物品は、>60℃のTanδピークを示した。高い伸びと高い30分緩和弾性率の両方を示した物品は、20℃未満で損失弾性率のピークを示し、60℃超でTanδピークを示した。損失弾性率及びTanδは、例えば、Sepe,M.P.(1998 Dynamic Mechanical Analysis for Plastics Engineering.William Andrew Publishing/Plastics Design Library)において説明されている。
【0115】
本開示の歯科矯正物品の少なくとも一定の実施形態では、物品は、異なる、より親水性の成分から製造された物品よりも染みに対して、有利にはより耐性が高い。例えば、飲料中の染料及び他の着色材料は、典型的には親水性であり、したがって、それらは、疎水性の高い組成物よりも親水性の高い組成物に対する親和性が高い。
【0116】
一定の実施形態では、歯科矯正物品は、物品の総重量に基づいて、2重量%以下の抽出可能な成分、1重量%以下、0.75重量%以下、0.5重量%以下、又は更には0.1%以下の抽出可能な成分を含む。以下の実施例で詳細に説明するように、有機溶媒又は水のいずれかを使用して成分を抽出することができる。低抽出可能な成分含有物品の達成を支援するための歯科矯正物品の後処理について、以下でより詳細に説明する。
【0117】
上記の機械的特性は、適度な摩耗強度及び低吸湿性に加えて弾力性及び柔軟性を必要とする歯科矯正物品に特によく適している。
【0118】
方法
第2の態様では、本開示は歯科矯正物品の製造方法を提供する。方法は、
a)
i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
ii)光開始剤
と、
iii)
1)イソシアネートと、
2)(メタ)アクリレートモノオールと、
3)式(I):
H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)
(式中、各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である)のポリカーボネートジオールと、
4)触媒と、を含む成分の重合反応生成物を得ることと、
b)光重合性組成物を選択的に硬化させることと、
c)工程a)及びb)を繰り返して複数の層を形成し、歯科矯正物品を作製することと、
を含む。
【0119】
本明細書に記載の光重合性組成物は、既知の技術によって混合することができる。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載の光重合性組成物を調製するための方法は、光重合性組成物の全て又は実質的に全ての成分を混合する工程と、混合物を加熱する工程と、任意に加熱した混合物を濾過する工程とを含む。混合物を軟化させることは、いくつかの実施形態では、約50℃の温度又は約50℃~約85℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の光重合性組成物は、組成物の全て又は実質的に全ての成分を反応容器に入れて、生じた混合物を約50℃~約85℃の範囲の温度まで、撹拌しながら加熱することによって製造される。加熱及び撹拌は、混合物が実質的に均質化された状態に達するまで継続される。
【0120】
多くの実施形態では、光重合性組成物は、以下で詳細に論じられるように、液槽重合される。
【0121】
物品の形状は限定されず、典型的には、成形された一体型物品を含み、2つ以上の寸法のバリエーションが、単一の一体型物品によってもたらされる成形一体型物品を含む。例えば、物品は、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔、又はこれらの組み合わせを含み得る。このような特徴は、通常、従来の成形方法を使用して一体型物品において実現することは不可能である。特定の歯科矯正物品について、下記に更に詳細に説明する。
【0122】
光重合性組成物の成分は、上で詳細に論じたとおりである。多くの実施形態では、光重合性組成物は、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの組み合わせを含む化学線を使用して硬化される。更に、方法は、任意に、化学線を使用して歯科矯正物品を後硬化させることを更に含む。
【0123】
ある一定の実施形態では、方法は、光重合性組成物の液槽重合を含む。液槽重合が採用される場合、放射線は、側壁又は底壁などの光重合性組成物を保持する容器(例えば、液槽)の壁を通過して方向付けられてよい。
【0124】
硬化した状態の本明細書に記載の光重合性組成物は、いくつかの実施形態では、1つ以上の所望の特性を示すことができる。「硬化した」状態の光重合性組成物は、少なくとも部分的に重合及び/又は架橋されている重合性成分を含む光重合性組成物を含むことができる。例えば、いくつかの例では、硬化した物品は、少なくとも約10%重合又は架橋されているか、少なくとも約30%重合又は架橋されている。いくつかの事例では、硬化した光重合性組成物は、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%重合又は架橋されている。硬化した光重合性組成物はまた、約10%~約99%重合又は架橋され得る。
【0125】
歯科矯正物品の製作
上記のとおりに調製した後は、本開示の光重合性組成物を多様な積層造形プロセスに使用して、様々な、例えば歯科矯正物品を作製することができる。3次元物品を作製するための一般化された方法100を図1に示す。方法の各工程について、下記に詳細に説明する。まず、工程110では、所望の光重合性組成物(例えば、少なくとも1つのポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーを含む)を提供し、積層造形デバイスによって又は積層造形デバイス内で使用するためのリザーバ、カートリッジ、又は他の好適な容器内に導入する。積層造形デバイスは、工程120でコンピュータ化された設計命令のセットに従って、光重合性組成物を選択的に硬化する。工程130において、工程110及び/又は工程120を繰り返して複数の層を形成し、3次元構造を含む物品(すなわち、歯科矯正物品)を作製する。任意に、工程140において、未硬化光重合性組成物を物品から除去し、更に任意に、工程150において、物品を追加の硬化に供して物品内の残存する未硬化光重合性成分を重合させ、なおも更に任意に、物品を、工程160において熱処理に供する。
【0126】
本明細書に記載の3次元物品又は物体をプリントする方法は、1層ずつ重ねる方式により、本明細書に記載の光重合性組成物の複数の層から物品を形成することを含むことができる。更に、構築される材料組成物の層を、コンピュータ可読形式の3次元物品の画像に従って堆積させることができる。いくつか又は全ての実施形態で、光重合性組成物は、予め選択されたコンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)パラメータに従って堆積される。
【0127】
更に、本明細書に記載の3D物品を製造する方法は、いわゆる「光造形法/液槽重合」3Dプリンティング方法を含むことができることが理解される。3次元製造のための他の技法が知られており、本明細書に記載の用途で使用するために適切に改変されてもよい。より一般的には、3次元製作技法が次々と利用可能になってきている。そのような技法は全て、指定された物品特性にかなう製作粘度及び分解能を提供する限り、本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように改変することができる。製作は、本明細書に記載の製作技術のいずれかを、単独で又は様々な組み合わせで使用し、3次元のオブジェクトを表すデータを使用して行われてもよく、このデータは必要に応じて、特定のプリンティング技術又は他の製作技術に合わせてフォーマットし直すか、あるいは他の方法で改変することができる。
【0128】
本明細書に記載の光重合性組成物から液槽重合(例えば、光造形法)を使用して3D物品を形成することは、完全に可能である。例えば、いくつかの事例では、3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載の光重合性組成物を流体状態で容器内に保持し、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを加えて光重合性組成物の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、それによって、3D物品の断面を画定する硬質化された層を形成することを含む。更に、本明細書に記載の方法は、光重合性組成物の硬質化された層を昇降させて、未硬質化の光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層を容器内の流体の表面に提供し、続いて、容器内の光重合性組成物に再び選択的にエネルギーを加えて、光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、3D物品の第2の断面を画定する第2の凝固された層を形成することを更に含むことができる。更に、光重合性組成物を凝固させるためのエネルギーの印加によって、3D物品の第1及び第2の断面をz方向(つまり、上記の昇降の方向に相当する構築方向)に互いに結合又は接着することができる。更に、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを加えることは、光重合性組成物を硬化させるのに十分なエネルギーを有する、紫外線、可視放射線又は電子ビーム放射線などの化学線を加えることを含むことができる。本明細書に記載の方法はまた、昇降機のプラットフォームを昇降させることによって提供される光重合性組成物の流体の新たな層を平坦化することを含むことができる。このような平坦化は、いくつかの事例では、ワイパー又はローラ又はリコータを利用することにより行うことができる。平坦化では、分注された材料を平らにして余分の材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一かつ滑らかに露出した又は平らな上向きの面を作り出すことによって、1つ以上の層の厚さを、材料を硬化させる前に補正する。
【0129】
3D物品を提供するために前述のプロセスを選択された回数だけ繰り返すことができることが、更に理解される。例えば、いくつかの事例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができる。更に、光重合性組成物の層に選択的にエネルギーを加えるステップなどの、本明細書に記載の方法の1つ以上のステップをコンピュータ可読形式の3D物品の画像に従って行うことができると理解される。好適な光造形プリンタには、3D Systems,Rock Hill,SCから入手可能なViper Pro SLA及び、Asiga USA,Anaheim Hills,CAから入手可能なAsiga PICO PLUS39が含まれる。
【0130】
図2は、本明細書に記載の光重合性組成物及び方法と共に使用されてもよい光造形装置(「SLA」)の例を示す。一般的に、SLA 200は、レーザ202、光学素子204、ステアリングレンズ206、昇降機208、プラットフォーム210、及び、直線状縁部212を、光重合性組成物で満たされた液槽214内に含んでもよい。動作中、レーザ202が光重合性組成物の表面にわたって操縦されて光重合性組成物の断面を硬化させ、その後、昇降機208がプラットフォーム210をわずかに降下させ、別の断面を硬化させる。直線状縁部212が層と層の間の硬化した組成物の表面を掃引して、新しい層を積層する前に表面を平滑化及び正規化してもよい。他の実施形態では、光重合性組成物の上面に1層ずつ物品が描かれる間に、液槽214に、液体の樹脂をゆっくりと満たしてもよい。
【0131】
関連技術である、デジタル光処理(Digital Light Processing、「DLP」)による液槽重合はまた、硬化性ポリマー(例えば、光重合性組成物)の容器を使用する。しかしながら、DLPに基づくシステムでは、硬化性材料の上に2次元の断面を投影して、投影されたビームに直交する平面全体の所望の部分を一度に硬化させる。本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように適合されてもよいこのような硬化性ポリマー系は全て、本明細書で使用するとき「液槽重合系」という用語の範囲内にあることが意図される。一定の実施形態では、例えば、米国特許第9,205,601号及び同第9,360,757号(両方ともDeSimoneら)に記載されているように、連続モードでの使用に適合した装置、例えば、Carbon 3D,Inc.(Redwood City,CA)から市販されている装置が用いられてもよい。
【0132】
図5を参照すると、本明細書に記載の光重合性組成物及び方法と共に使用されてもよい別のSLA装置の概略図が提供されている。一般的に、装置500は、レーザ502、光学素子504、ステアリングレンズ506、昇降機508、及びプラットフォーム510を、光重合性組成物519で満たされた液槽514内に含んでもよい。動作中、レーザ502は、液槽514の壁520(例えば、床)を通って光重合性組成物に導かれ、光重合性組成物519の断面を硬化させて、物品517を形成し、その後、昇降機508がプラットフォーム510をわずかに上昇させ、別の断面が硬化される。
【0133】
より一般的には、光重合性組成物は、通常、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの任意の組み合わせなどの化学線を使用して硬化される。当業者は、過度の実験を行うことなく、特定の用途に好適な放射線源及び波長の範囲を選択することができる。
【0134】
3D物品は、形成された後に、通常、積層造形装置から取り外されて洗浄される(例えば、未硬化光重合性組成物の一部を溶解するが、硬化した固体状態物品(例えば、素地)は溶解しない溶媒中での超音波洗浄、泡沫洗浄又は噴霧洗浄)。また、物品を洗浄し、物品表面の未硬化物を除去するために、任意の他の従来的方法を利用してもよい。この段階で、3次元物品は通常、方法100の残りの任意の工程での取り扱いのための十分な生強度を有する。
【0135】
本開示の一定の実施形態では、工程120で得られる形成物品は収縮し(すなわち、体積が減少し)、(任意の)工程150の後の物品の寸法が予想よりも小さくなることが予想される。例えば、硬化した物品は、体積が5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は更には1%未満収縮することがあり、任意の後硬化時に体積が約6~8%収縮する物品をもたらす他の組成物とは対照的である。体積収縮率の量は、通常、最終的な物体の形状に著しいひずみをもたらすことはない。したがって、硬化された最終的な物品のデジタル表現の中の寸法は、この収縮を補償する全体的な倍率に従って拡大されてもよいことが、特に企図される。例えば、いくつかの実施形態では、デジタルの物品表現の少なくとも一部分は、プリントされた装具の所望のサイズの少なくとも101%、いくつかの実施形態では少なくとも102%、いくつかの実施形態では少なくとも104%、いくつかの実施形態では少なくとも105%、いくつかの実施形態では少なくとも110%であり得る。
【0136】
全体的な倍率は、上記工程110及び120に従って較正用部品を作製することにより、所与の光重合性組成物調合について計算することができる。較正物品の寸法は、後硬化の前に測定することができる。
【0137】
一般的に、工程120の初期積層造形によって形成された3次元物品は、上述したように、完全には硬化しておらず、このことは、洗浄後であっても組成物中の光重合性材料の全てが重合しているわけではないことを意味する。いくつかの未硬化光重合性材料は、通常、洗浄プロセス(例えば、任意の工程140)中に、プリントされた物品の表面から除去される。物品表面、及びバルク物品そのものが、通常、未硬化光重合性材料を依然として保持しており、更なる硬化を示唆している。残留する未硬化光重合性組成物を除去することは、物品が以降に後硬化される場合、好ましくなく物品上で直接硬化することによる未硬化の残留する光重合性組成物を最小限に抑える上で特に有用である。
【0138】
更なる硬化は、化学線の更なる照射、加熱、又はその両方によって行うことができる。化学線への曝露は、約10分~60分超の範囲の時間にわたる、任意の好都合な放射線源、一般的に紫外線、可視放射線及び/又は電子ビーム放射線により行われ得る。加熱は概して、不活性雰囲気下で、約10分~60分超の範囲の時間、約75~150℃の範囲の温度で行われる。紫外線と熱エネルギーとを組み合わせる、いわゆる後硬化オーブンは、工程150及び/又は工程160の後硬化プロセスでの使用に特に好適である。一般的に、後硬化は、後硬化されていない同じ3次元物品に比較して、3次元物品の機械的特性及び安定性を向上させる。
【0139】
3Dプリンティングにとって特に魅力的な好機の1つは、歯科矯正の透明トレイアライナーの直接形成である。これらのトレイは、アライナー又はポリマー若しくはシェル装具としても知られ、一組で提供され、所望の目標配置に向けて、漸増的工程で歯を徐々に動かすために、数ヶ月にわたり、継続的に装着されるように意図されている。透明トレイアライナーのいくつかのタイプは、患者の歯列弓の各歯を受容する歯形受け部の列を有し、この受け部は、ポリマー材料の弾力特性によって各歯を所望の目標位置に向けて漸増的に動かすために、1つの装具から次の装具へとわずかに異なる位置に向けられる。透明トレイアライナー及びその他の弾性装具を製造するために、様々な方法がこれまでに提案されてきた。通常、前述した光造形法などの積層造形方法を使用して、それぞれの歯列弓についてポジ型(positive)の歯列弓モデルを製作する。続いて、各歯列弓モデルの上にポリマー材料のシートを置き、熱、圧力及び/又は負圧を加えて、各モデル歯列弓のモデル歯に適合するように形成する。形成されたシートを洗浄し、必要に応じてトリミングし、得られた歯列弓形状の装具は、所望の数の他の装具と共に治療専門家に発送される。
【0140】
3Dプリンティングによって直接形成されたアライナー又は他の弾性装具は、歯列弓の金型をプリントしてから更に装具を熱形成する必要性を排除していくであろう。更に、新たなアライナー設計が可能となり、治療計画の自由度が増すであろう。透明トレイアライナー及び他の弾性歯科矯正装具を直接プリントする例示的な方法が、PCT公開国際公開第2016/109660号パンフレット(Rabyら)、同第2016/148960号パンフレット(Cinaderら)、及び同第2016/149007号パンフレット(Odaら)、並びに米国特許公開第2011/0091832号(Kimら)及び同第2013/0095446号(Kitching)に記載されている。
【0141】
プリントされた装具300として透明トレイアライナーを作製する一般的な方法を以下に記載する。ただし、類似の技法及び本開示の光重合性組成物を使用して、他の歯科及び歯科矯正物品を作製することができる。代表例としては、国際出願公開第2016/109660号(Rabyら)に記載の咬合窓を有する取り外し可能な装具、米国特許公開第2014/0356799号(Cinaderら)に記載の口蓋床を備えた取り外し可能な装具、及び国際出願第2016/148960号及び同第2016/149007号(Odaら)、並びに米国特許公開第2008/0248442号(Cinaderら)に記載の弾性ポリマー歯列弓部材が挙げられるが、これらに限定されない。更に、光重合性組成物は、国際公開第2015/094842号(Paehlら)及び米国特許出願公開第2011/0091832号(Kimら)に記載のものなどの間接ボンディングトレイの作製、並びに、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー、充填材、及びプロテーゼ(例えば、部分義歯又は総義歯)を非限定的に含む他の歯科用物品に使用することができる。他の歯科矯正装具及びデバイスとしては、歯科矯正ブラケット、頬面管、下側リテーナ、歯科矯正バンド、クラスII及びクラスIII矯正器、睡眠時無呼吸症デバイス、開口器、ボタン、クリート、並びにその他の付属デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
光重合性組成物による歯科矯正装具の製作
物品の特に興味深い1つの実装形態の概要を図3に示す。積層造形物品300は透明トレイアライナーであり、患者の歯の一部又は全部にわたって取り外し可能な態様で配置することができる。いくつかの実施形態では、装具300は複数の段階的調整装具のうちの1つである。装具300は、内部空洞を有するシェルを含んでもよい。内部空洞は、歯を受け入れ、1つの歯の配列から連続する歯の配列に弾性的に再配置するように形成される。内部空洞は複数の受け部を含んでもよく、その各々は、患者の歯列弓のそれぞれの歯と接続し、受け入れるようになっている。隣接する受け部の付近の領域は互いに連通し得るが、受け部は空洞の長さに沿って互いに離隔される。いくつかの実施形態では、シェルは上顎又は下顎に存在する全ての歯に嵌合する。通常、歯のうちの一定の1つのみが再配置され、他の歯は、その歯又は治療対象の歯に対して弾性的な再配置力を加えながら歯科装具を所定の位置に保持する基部又はアンカーの領域を提供することになる。
【0143】
患者の歯の位置合わせを容易にするために、装具300が患者によって装着されたときに、患者の対応する歯に回転力及び/又は並進力を印加するように、受け部のうちの少なくとも1つを整列させて、この歯を新たな所望の位置に最終的に整列させることができる。いくつかの特定の例では、装具300は、圧縮的又は直線的力のみを付与するように構成されてもよい。同じ例又は異なる例では、装具300は、受け部内の歯の1つ以上に並進力を加えるように構成されてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、装具300のシェルは上顎又は下顎に存在する一部又は全ての前方歯にわたって嵌合する。通常、歯のうちの一定の1つのみが再配置され、他の歯は、その歯又は再配置される歯に対して弾性的な再配置力を加えながら装具を所定の位置に保持する基部又はアンカーの領域を提供することになる。したがって、装具300は、いずれの受け部も、歯の現在の位置を維持するために、特定の位置での歯の保定を容易にする形状になるように設計することができる。
【0145】
本開示の光重合性組成物を使用して歯科矯正装具を形成する方法400は、図4に概要を示す全体的な一般的な工程を含み得る。プロセスの個々の態様について、下記で更に詳細に説明する。プロセスは、患者の歯を再配置する治療計画を形成することを含む。簡潔に説明すると、治療計画は、患者の歯の初期配列を表すデータを得ること(工程410)を含むことができ、これは通常、治療開始に先立って患者の歯の圧痕又は走査画像を得ることを含む。治療計画はまた、患者の前方歯及び後方歯の所望の最終配列又は目標配列を特定すること(工程420)、並びに、少なくとも前方歯を初期の配列から治療経路に沿って選択された最終配列又は目標配列に向けて移動させるための、計画された複数の連続的又は中継的な歯の配列を特定すること(工程430)を含む。1つ以上の装具を治療計画に基づいて仮想的に設計し(工程440)、その装具設計を表す画像データを、STLフォーマット又は他の適切なコンピュータ処理可能フォーマットで積層造形デバイス(例えば、3Dプリンタシステム)にエクスポートすることができる(工程450)。積層造形デバイス内に保持された本開示の光重合性組成物を使用して、装具を製造することができる(工程460)。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示の少なくとも一定の態様に従って、(例えば、非一時的)機械可読媒体が、物品の積層造形において用いられる。データは、通常、機械可読媒体に保存される。データは、物品の3次元モデルを表し、このモデルには、積層造形機器(例えば、3Dプリンタ、製造デバイスなど)とインタフェースする少なくとも1つのコンピュータプロセッサによってアクセスできる。データを使用して、積層造形機器に光重合性組成物の反応生成物を含む物品を作製させ、光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、のブレンドを含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)と、3)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23(の整数)である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。光重合性組成物の詳細は、上記のとおりである。
【0147】
物品を表すデータは、コンピュータ支援設計(CAD)データなどのコンピュータモデリングを使用して生成されてもよい。(例えば、ポリマー)物品の設計を表す画像データは、STLフォーマットで、又は任意の他の適切なコンピュータ処理可能なフォーマットで、積層造形機器にエクスポートすることができる。3次元オブジェクトを走査するための走査方法も、物品を表すデータの作成に使用することができる。データを取得するための1つの例示的な技法は、デジタル走査である。X線写真、レーザ走査、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging、MRI)、及び超音波画像診断を含む、任意の他の好適な走査技法を、物品を走査するために使用できる。他の可能な走査方法が、例えば米国特許出願公開第2007/0031791号(Cinader,Jr.ら)に記載されている。走査オペレーションからの生データ、及び生データから導出した物品を表すデータの両方を含み得る初期デジタルデータセットを処理して、任意の周囲構造(例えば、物品用支持具)から物品の設計を分割することができる。選択された実施形態では、走査技術は、例えば、患者の口腔を走査して患者の歯科矯正物品をカスタマイズすることを含んでもよい。
【0148】
多くの場合、機械可読媒体は、コンピューティングデバイスの一部として提供される。コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ、揮発性メモリ(RAM)、機械可読媒体を読み取るためのデバイス、並びに、例えば、ディスプレイ、キーボードなどの入力/出力デバイス、及びポインティングデバイスを有し得る。更に、コンピューティングデバイスは、オペレーティングシステム及び他のアプリケーションソフトウェアなどの他のソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせも含み得る。コンピューティングデバイスは、例えば、ワークステーション、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、サーバ、メインフレーム又は任意の他の汎用若しくは特定用途向けコンピューティングデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、コンピュータ可読媒体(例えば、ハードドライブ、CD-ROM、又はコンピュータメモリなど)から実行可能なソフトウェアの命令を読み出してもよく、又は別のネットワーク化コンピュータなどの、コンピュータに論理的に接続された別のソースからの命令を受信してもよい。図10を参照すると、コンピューティングデバイス1000は、多くの場合、内部プロセッサ1080、ディスプレイ1100(例えば、モニタ)、並びにキーボード1140及びマウス1120などの1つ以上の入力デバイスを含む。図10では、アライナー物品1130が、ディスプレイ1100に表示されている。
【0149】
図6を参照すると、一定の実施形態では、本開示はシステム600を提供する。システム600は、物品(例えば、図10のディスプレイ1100に表示されているようなアライナー1130)の3Dモデル610を表示するディスプレイ620と、ユーザにより選択された3Dモデル610に応じて、物品660の物理的オブジェクトを3Dプリンタ/積層造形デバイス650に作製させる、1つ以上のプロセッサ630と、を含む。多くの場合、入力デバイス640(例えば、キーボード及び/又はマウス)は、特にユーザが3Dモデル610を選択するために、ディスプレイ620及び少なくとも1つのプロセッサ630と共に使用される。物品660は、光重合性組成物の反応生成物を含み、光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、のブレンドを含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)と、3)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。光重合性組成物の詳細は、上記のとおりである。
【0150】
図7を参照すると、プロセッサ720(又は2つ以上のプロセッサ)は、機械可読媒体710(例えば、非一時的媒体)、3Dプリンタ/積層造形デバイス740、及び任意にユーザが見るためのディスプレイ730のそれぞれと通信する。3Dプリンタ/積層造形デバイス740は、機械可読媒体710から、物品750(例えば、図10のディスプレイ1100に示すようなアライナー物品1130)の3Dモデルを表すデータを提供するプロセッサ720からの命令に基づいて、1つ以上の物品750を製造するように構成されている。
【0151】
図8を参照すると、例えば、限定するものではないが、積層造形方法は、(例えば、非一時的)機械可読媒体から、本開示の少なくとも1つの実施形態による物品の3Dモデルを表すデータを取得すること810を含む。方法は、1つ以上のプロセッサによって、データを使用して造形デバイスとインタフェースする積層造形アプリケーションを実行すること820と、造形デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成すること830とを更に含む。積層造形機器は、光重合性組成物を選択的に硬化して物品を形成することができる。物品は、光重合性組成物の反応生成物を含み、光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、のブレンドを含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)と、3)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。光重合性組成物の詳細は、上記のとおりである。1つ以上の様々な任意選択の後処理工程840を実行してもよい。通常、残存する未重合光重合性成分を硬化させることができる。物品は、歯科矯正物品を含む。
【0152】
更に、図9を参照すると、物品の製造方法は、1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信すること910と、積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、このデジタルオブジェクトに基づく物品を生成すること920とを含む。この場合も、物品に後処理930の1つ以上の工程を実施してもよい。
【0153】
本開示の選択された実施形態
実施形態1は、歯科矯正物品である。歯科矯正物品は、光重合性組成物の反応生成物を含む。光重合性組成物は、a)光重合性組成物の重合反応生成物を含む。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)と、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0154】
実施形態2は、(メタ)アクリレートモノオールが、式(II)、すなわちHO-Q-(A)(II)のものである、実施形態1に記載の歯科矯正物品である。Qは多価有機連結基であり、Aは、式-XC(=O)C(R)=CH(式中、XはO、S、又はNRであり、Rは、H又は1~4個の炭素原子のアルキルであり、Rは、1~4個の炭素原子の低級アルキル又はHである)の(メタ)アクリル官能基であり、pは1又は2である。
【0155】
実施形態3は、式(II)のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートにおいて、Qはアルキレン基であり、pは1であり、(メタ)アクリル官能基A中、XはOであり、Rはメチル又はHである、実施形態2に記載の歯科矯正物品である。
【0156】
実施形態4は、式(II)のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートにおいて、Qはアルキレン基であり、pは1であり、(メタ)アクリル官能基A中、XはOであり、Rはメチルである、実施形態2又は実施形態3に記載の歯科矯正物品である。
【0157】
実施形態5は、光重合性組成物が、式(III):
【化11】
の化合物を更に含む、実施形態1~4のいずれかに記載の歯科矯正物品である。X、Q、p、及びRは、式(II)で定義したとおりであり、Rdiは、ジイソシアネートの残基である。
【0158】
実施形態6は、式(III)の化合物が、成分の重合中に生成される、実施形態5に記載の歯科矯正物品である。
【0159】
実施形態7は、式(III)の化合物が、光重合性組成物に添加される、実施形態5又は6に記載の歯科矯正物品である。
【0160】
実施形態8は、式(III)の化合物が、重合性組成物の重量に基づいて、0.05重量パーセント~20重量パーセント(重量%)の量で存在する、実施形態5~7のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0161】
実施形態9は、式(III)の化合物が、重合性組成物の重量に基づいて、1.5重量%~12重量%の量で存在する、実施形態5~8のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0162】
実施形態10は、式(III)の化合物が、重合性組成物の重量に基づいて、5重量%~20重量%の量で存在する、実施形態5~8のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0163】
実施形態11は、式(III)の化合物においてXがOである、実施形態5~10のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0164】
実施形態12は、式(III)の化合物が、式(IV):
【化12】
のものである、実施形態5~11のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0165】
実施形態13は、光重合性組成物が二官能性(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを更に含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0166】
実施形態14は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーが、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチル-1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート(例えば、tert-ブチルメタクリレート)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチル-シクロヘキシルメタクリレート(例えば、cis-4-tert-ブチル-シクロヘキシルメタクリレート、73/27trans/cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、及び/又はtrans-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート)2-デカヒドロナフチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート(例えば、d,l-イソボルニルメタクリレート)、ジメチル-1-アダマンチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート(例えば、d,l-ボルニルメタクリレート)、3-テトラシクロ[4.4.0.1.1]ドデシルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、又はそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0167】
実施形態15は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーに対する単官能性(メタ)アクリレートモノマーの重量比が、60:40~40:60である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0168】
実施形態16は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーに対する単官能性(メタ)アクリレートモノマーの重量比が、55:45~45:55である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0169】
実施形態17は、イソシアネートが、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン及び2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン(TMXDI)の混合物、trans-1,4-水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)又はこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0170】
実施形態18は、イソシアネートがIPDIを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0171】
実施形態19は、ポリカーボネートジオールが、1モル当たり450グラム(g/mol)~3,200g/mol、又は1,800g/mol~3,200g/molの分子量を有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0172】
実施形態20は、ポリカーボネートジオールが、800g/mol~2,200g/mol、又は1,800g/mol~2,200g/molの分子量を有する、実施形態1~19のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0173】
実施形態21は、光重合性組成物が95%~100%固体の固形分含有率を有する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0174】
実施形態22は、光重合性組成物が100%固体の固形分含有率を有する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0175】
実施形態23は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~5重量%の量の蛍光増白剤を含む紫外線吸収剤を更に含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0176】
実施形態24は、実施形態23の歯科矯正物品であり、蛍光増白剤は、式(V):
【化13】
の化合物を含む。
【0177】
実施形態25は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1重量%の量の阻害剤を更に含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0178】
実施形態26は、光開始剤が、光重合性組成物の重量に基づいて、0.2重量%~5重量%の量で存在する、実施形態1~25のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0179】
実施形態27は、触媒が亜鉛を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0180】
実施形態28は、触媒が有機金属亜鉛錯体を含み、2-エチルヘキシルカルボキシレート及び2-エチルヘキサン酸を含まない、実施形態1~27のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0181】
実施形態29は、触媒がスズを含まない、実施形態1~28のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0182】
実施形態30は、触媒がビスマスを含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0183】
実施形態31は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーが6,000g/mol~35,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0184】
実施形態32は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、最大15重量%の量の二官能性モノマーを更に含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0185】
実施形態33は、二官能性モノマーが、式(X):
【化14】
(式中、Rdiは、ジイソシアネートの残基であり、Q、X、及びRは式(II)で定義されたとおりである)の化合物を含む、実施形態32に記載の歯科矯正物品である。
【0186】
実施形態34は、二官能性モノマーが、式(XI):
【化15】
(式中、Q及びRは式(II)について定義されたとおりであり、R及びRは式(I)について定義されたとおりである)の化合物を含む、実施形態32に記載の歯科矯正物品である。
【0187】
実施形態35は、イソシアネート対ポリカーボネートジオールの比が、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量~イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール3モル当量の範囲にある、実施形態1~34のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0188】
実施形態36は、イソシアネート対ポリカーボネートジオールのアルコールの比が、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール2モル当量である、実施形態35に記載の歯科矯正物品である。
【0189】
実施形態37は、イソシアネート対(メタ)アクリレートモノオールの比が、イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲にある、実施形態1~36のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0190】
実施形態38は、イソシアネート対(メタ)アクリレートモノオールの比が、イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール2モル当量である、実施形態1~37のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0191】
実施形態39は、ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比が、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~ポリカーボネートジオールのアルコール3モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲にある、実施形態1~38のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0192】
実施形態40は、ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比が、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量である、実施形態1~39のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0193】
実施形態41は、ポリウレタン(メタ)アクリレートが式(VI):
【化16】
[式中、Aは、式-OC(=O)C(R)=CH(式中、Rは1~4個の炭素原子のアルキル(例えば、メチル)又はHである)であり、pは1又は2であり、Qは上記の多価有機連結基であり、Rdiはジイソシアネートの残基であり、RdOHはポリカーボネートポリオールの残基であり、rは平均して1~15である]、のものである、実施形態1~40のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0194】
実施形態42は、光重合性組成物が成分の第2の重合反応生成物を更に含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の歯科矯正物品である。成分は、1)式(VII)のイソシアネート官能性(メタ)アクリレート化合物:(A)-Q-NCO(VII)(式中、A、p、及びQは、式(II)で定義されたとおりである)と、2)式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)と、3)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。
【0195】
実施形態43は、第2の重合反応生成物が、式(VIII):
【化17】
の化合物を含む、実施形態1~42のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。Q、p、及びRは、式(II)について定義されたとおりであり、R及びRは、式(I)について定義されたとおりである。
【0196】
実施形態44は、式(VIII)の化合物が、式(IX):
【化18】
(式中、nは、ヘキサンジオールに基づく1000分子量のポリカーボネートジオールに対して約6.7である)の化合物である、実施形態43に記載の歯科矯正物品である。
【0197】
実施形態45は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーの硬化したホモポリマーが、100℃以上のTを有する、実施形態1~44のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0198】
実施形態46は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーの硬化したホモポリマーが、170℃以上又は180℃以上のTを有する、実施形態1~45のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0199】
実施形態47は、単官能性アクリレートモノマーが脂環式単官能性(メタ)アクリレートを含む、実施形態1~46のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0200】
実施形態48は、単官能性アクリレートモノマーがイソボルニルメタクリレートを含む、実施形態1~47のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0201】
実施形態49は、37℃にて2%ひずみで測定された初期緩和弾性率が、100メガパスカル(MPa)以上を呈する、実施形態1~48のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0202】
実施形態50は、70%以下の緩和弾性率のパーセント損失を呈する、実施形態1~49のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0203】
実施形態51は、40%以下の緩和弾性率のパーセント損失を呈する、実施形態1~50のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0204】
実施形態52は、100MPa以上の緩和弾性率を呈する、実施形態1~51のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0205】
実施形態53は、20%以上のプリントされた物品の破断伸びを呈する、実施形態1~52のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0206】
実施形態54は、70%以上のプリントされた物品の破断伸びを呈する、実施形態1~53のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0207】
実施形態55は、14MPa以上の降伏点引張強度を呈する、実施形態1~54のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0208】
実施形態56は、25MPa以上の降伏点引張強度を呈する、実施形態1~55のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0209】
実施形態57は、1重量%以下の抽出可能な成分を含む、実施形態1~56のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0210】
実施形態58は、20℃以下の損失弾性率のピークを呈する、実施形態1~57のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0211】
実施形態59は、80℃以上のTanδピークを呈する、実施形態58に記載の歯科矯正物品である。
【0212】
実施形態60は、歯科矯正物品が、歯科用トレイ、リテーナ、又はアライナーを含む、実施形態1~57のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0213】
実施形態61は、歯科矯正物品が、アライナーを含む、実施形態1~58のいずれか1つに記載の歯科矯正物品である。
【0214】
実施形態62は、歯科矯正物品の製造方法である。方法は、a)光重合性組成物を得ることと、b)光重合性組成物を選択的に硬化させることと、c)工程a)及びb)を繰り返して複数の層を形成し、歯科矯正物品を作製することと、を含む。光重合性組成物は、i)その硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I):H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)のポリカーボネートジオールと、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基R基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。
【0215】
実施形態63は、光重合性組成物が、紫外線、電子ビーム放射線、可視放射線、又はこれらの組み合わせを含む化学線を使用して硬化される、実施形態62に記載の方法である。
【0216】
実施形態64は、化学線が、光重合性組成物を保持する容器の壁を通って方向付けられる、実施形態63に記載の方法である。
【0217】
実施形態65は、化学線の90%以上が、光重合性組成物の150マイクロメートルの距離にわたって吸収される、実施形態63又は64に記載の方法である。
【0218】
実施形態66は、光重合性組成物が、光重合性組成物を保持する容器の床を通って硬化される、実施形態62~65のいずれか1つに記載の方法である。
【0219】
実施形態67は、化学線を用いて、歯科矯正物品を後硬化させることを更に含む、実施形態62~66のいずれか1つに記載の方法である。
【0220】
実施形態68は、実施形態62~67のいずれか1つに記載の方法であって、光重合性組成物の液槽重合を含む、方法である。
【0221】
実施形態69は、歯科矯正物品を熱処理に供することを更に含む、実施形態62~68のいずれか1つに記載の方法である。
【0222】
実施形態70は、光重合性組成物が、少なくとも1つのフィラーを更に含む、実施形態62~69のいずれか1つに記載の方法である。
【0223】
実施形態71は、光重合性組成物が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及び不連続繊維から選択される少なくとも1つのフィラーを更に含む、実施形態62~70のいずれか1つに記載の方法である。
【0224】
実施形態72は、不連続繊維が、炭素、セラミック、ガラス、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態71に記載の方法である。
【0225】
実施形態73は、(メタ)アクリレートモノオールが式(II)、すなわちHO-Q-(A)(II)のものである、実施形態62~72のいずれか1つに記載の方法である。Qは多価有機連結基であり、Aは、式-XC(=O)C(R)=CH(式中、XはO、S、又はNRであり、Rは、H又は1~4個の炭素原子のアルキルであり、Rは、1~4個の炭素原子又はHの低級アルキルである)の(メタ)アクリル官能基であり、pは1又は2である。
【0226】
実施形態74は、式(II)のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートにおいて、Qがアルキレン基であり、pが1であり、(メタ)アクリル官能基A中、XがOであり、Rがメチル又はHである、実施形態73に記載の方法である。
【0227】
実施形態75は、式(II)のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートにおいて、Qがアルキレン基であり、pが1であり、(メタ)アクリル官能基A中、XがOであり、Rがメチルである、実施形態73又は74に記載の方法である。
【0228】
実施形態76は、光重合性組成物が式(III):
【化19】
の化合物を更に含む、請求項62~75のいずれか1つに記載の方法である。X、Q、p、及びRは、式(II)で定義したとおりであり、Rdiは、ジイソシアネートの残基である。
【0229】
実施形態77は、式(III)の化合物が、成分の重合中に生成される、実施形態76に記載の方法である。
【0230】
実施形態78は、式(III)の化合物が、光重合性組成物に添加される、実施形態76又は77に記載の方法である。
【0231】
実施形態79は、式(III)の化合物が、重合性組成物の重量に基づいて、0.05重量パーセント~20重量パーセント(重量%)の量で存在する、請求項76~78のいずれか1つに記載の方法である。
【0232】
実施形態80は、式(III)の化合物が、重合性組成物の重量に基づいて、1.5重量%~12重量%の量で存在する、実施形態76~79のいずれか1つに記載の方法である。
【0233】
実施形態81は、式(III)の化合物が、重合性組成物の重量に基づいて、5重量%~20重量%の量で存在する、実施形態76~79のいずれか1つに記載の方法である。
【0234】
実施形態82は、式(III)の化合物においてXがOである、実施形態76~81のいずれか1つに記載の方法である。
【0235】
実施形態83は、式(III)の化合物が式(IV)のものである、実施形態76~82のいずれか1つに記載の方法である。
【化20】
【0236】
実施形態84は、光重合性組成物が、二官能性(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを更に含む、実施形態62~83のいずれか1つに記載の方法である。
【0237】
実施形態85は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーが、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチル-1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート(例えば、tert-ブチルメタクリレート)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチル-シクロヘキシルメタクリレート(例えば、cis-4-tert-ブチル-シクロヘキシルメタクリレート、73/27trans/cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、及び/又はtrans-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート)2-デカヒドロナフチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート(例えば、d,l-イソボルニルメタクリレート)、ジメチル-1-アダマンチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート(例えば、d,l-ボルニルメタクリレート)、3-テトラシクロ[4.4.0.1.1]ドデシルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、又はそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、実施形態62~84のいずれか1つに記載の方法である。
【0238】
実施形態86は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーに対する単官能性(メタ)アクリレートモノマーの重量比が、60:40~40:60である、実施形態62~85のいずれか1つに記載の方法である。
【0239】
実施形態87は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーに対する単官能性(メタ)アクリレートモノマーの重量比が、55:45~45:55である、実施形態62~86のいずれか1つに記載の方法である。
【0240】
実施形態88は、前記ジイソシアネートが、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン及び2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン(TMXDI)の混合物、trans-1,4-水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態62~87のいずれか1つに記載の方法である。
【0241】
実施形態89は、イソシアネートがIPDIを含む、実施形態62~88のいずれか1つに記載の方法である。
【0242】
実施形態90は、ポリカーボネートジオールが、1モル当たり450グラム(g/mol)~3,200g/mol、又は1,800g/mol~3,200g/molの分子量を有する、実施形態62~89のいずれか1つに記載の方法である。
【0243】
実施形態91は、ポリカーボネートジオールが、800g/mol~2,200g/mol、又は1,800g/mol~2,200g/molの分子量を有する、実施形態62~91のいずれか1つに記載の方法である。
【0244】
実施形態92は、光重合性組成物が95%~100%固体の固形分含有率を有する、実施形態62~91のいずれか1つに記載の方法である。
【0245】
実施形態93は、光重合性組成物が100%固体の固形分含有率を有する、実施形態62~92のいずれか1つに記載の方法である。
【0246】
実施形態94は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~5重量%の量の蛍光増白剤を含む紫外線吸収剤を更に含む、実施形態62~93のいずれか1つに記載の方法である。
【0247】
実施形態95は、蛍光増白剤が、式(V):
【化21】
の化合物を含む、実施形態94に記載の方法である。
【0248】
実施形態96は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1重量%の量の阻害剤を更に含む、実施形態62~95のいずれか1つに記載の方法である。
【0249】
実施形態97は、光開始剤が、光重合性組成物の重量に基づいて、0.2重量%~5重量%の量で存在する、実施形態62~96のいずれか1つに記載の方法である。
【0250】
実施形態98は、触媒が亜鉛を含む、実施形態62~97のいずれか1つに記載の方法である。
【0251】
実施形態99は、触媒が有機金属亜鉛錯体を含み、2-エチルヘキシルカルボキシレート及び2-エチルヘキサン酸を含まない、実施形態62~98のいずれか1つに記載の方法である。
【0252】
実施形態100は、触媒がスズを含まない、実施形態62~99のいずれか1つに記載の方法である。
【0253】
実施形態101は、触媒が亜鉛を含む、実施形態62~100のいずれか1つに記載の方法である。
【0254】
実施形態102は、ポリウレタン(メタ)アクリレートポリマーが6,000g/mol~35,000g/molの重量平均分子量を有する、実施形態62~101のいずれか1つに記載の方法である。
【0255】
実施形態103は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、最大15重量%の量の二官能性モノマーを更に含む、実施形態62~102のいずれか1つに記載の方法である。
【0256】
実施形態104は、二官能性モノマーが、式(X)、すなわち、
【化22】
(式中、Rdiは、ジイソシアネートの残基であり、Rは式(II)で定義されたとおりである)の化合物を含む、実施形態103に記載の方法である。
【0257】
実施形態105は、二官能性モノマーが、式(XI)、すなわち、
【化23】
(式中、Q及びRは式(II)について定義されたとおりであり、R及びRは式(I)について定義されたとおりである)の化合物を含む、実施形態103に記載の方法である。
【0258】
実施形態106は、イソシアネート対ポリカーボネートジオールの比が、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量~イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール3モル当量の範囲にある、実施形態62~105のいずれか1つに記載の方法である。
【0259】
実施形態107は、イソシアネート対ポリカーボネートジオールの比が、イソシアネート4モル当量対ポリカーボネートジオールのアルコール2モル当量である、実施形態106に記載の方法である。
【0260】
実施形態108は、イソシアネート対(メタ)アクリレートモノオールの比が、イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲にある、実施形態62~107のいずれか1つに記載の方法である。
【0261】
実施形態109は、イソシアネート対(メタ)アクリレートモノオールの比が、イソシアネート4モル当量対(メタ)アクリレートモノオール2モル当量である、実施形態62~108のいずれか1つに記載の方法である。
【0262】
実施形態110は、ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比が、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール3モル当量~ポリカーボネートジオールのアルコール3モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量の範囲にある、実施形態62~109のいずれか1つに記載の方法である。
【0263】
実施形態111は、ポリカーボネートジオール対(メタ)アクリレートモノオールの比が、ポリカーボネートジオールのアルコール1モル当量対(メタ)アクリレートモノオール1モル当量である、実施形態62~110のいずれか1つに記載の方法である。
【0264】
実施形態112は、ポリウレタン(メタ)アクリレートが式(VI):
【化24】
[式中、Aは、式-OC(=O)C(R)=CH(式中、Rは1~4個の炭素原子のアルキル(例えば、メチル)又はHであり、pは1又は2であり、Qは上記の多価有機連結基であり、Rdiはジイソシアネートの残基であり、RdOHはポリカーボネートポリオールの残基であり、rは平均して1から15である]、のものである、実施形態62~111のいずれか1つに記載の方法である。
【0265】
実施形態113は、光重合性組成物が成分の第2の重合反応生成物を更に含む、実施形態62~112のいずれか1つに記載の方法である。成分は、1)式(VII)のイソシアネート官能性(メタ)アクリレート化合物:(A)-Q-NCO(VII)(式中、A、p、及びQは、式(II)で定義されたとおりである)と、2)式(I)のポリカーボネートジオール:H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)と、3)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。
【0266】
実施形態114は、第2の重合反応生成物が、式(VIII):
【化25】
の化合物を含む、実施形態113の方法である。Q、p、及びRは、式(II)について定義されたとおりであり、R及びRは、式(I)について定義されたとおりである。
【0267】
実施形態115は、式(VIII)の化合物が、式(IX):
【化26】
(式中、nは、ヘキサンジオールに基づく1000分子量のポリカーボネートジオールに対して約6.7である)の化合物である、実施形態114に記載の方法である。
【0268】
実施形態116は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーの硬化したホモポリマーが、100℃以上のTを有する、実施形態62~115のいずれか1つに記載の方法である。
【0269】
実施形態117は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーの硬化したホモポリマーが、170℃以上又は180℃以上のTを有する、実施形態62~116のいずれか1つに記載の方法である。
【0270】
実施形態118は、単官能性アクリレートモノマーが脂環式単官能性(メタ)アクリレートを含む、実施形態62~117のいずれか1つに記載の方法である。
【0271】
実施形態119は、単官能性アクリレートモノマーがイソボルニルメタクリレートを含む、実施形態62~118のいずれか1つに記載の方法である。
【0272】
実施形態120は、歯科矯正物品が、37℃にて2%ひずみで測定して、100メガパスカル(MPa)以上の初期緩和弾性率を呈する、実施形態62~119のいずれか1つに記載の方法である。
【0273】
実施形態121は、歯科矯正物品が70%以下の緩和弾性率のパーセント損失を呈する、実施形態62~120のいずれか1つに記載の方法である。
【0274】
実施形態122は、歯科矯正物品が40%以下の緩和弾性率のパーセント損失を呈する、請求項62~121のいずれか1つに記載の方法である。
【0275】
実施形態123は、歯科矯正物品が、100MPa以上の緩和弾性率を呈する、実施形態62~122のいずれか1つに記載の方法である。
【0276】
実施形態124は、歯科矯正物品が、20%以上のプリントされた物品の破断伸びを呈する、実施形態62~123のいずれか1つに記載の方法である。
【0277】
実施形態125は、歯科矯正物品が、70%以上のプリントされた物品の破断伸びを呈する、実施形態62~124のいずれか1つに記載の方法である。
【0278】
実施形態126は、歯科矯正物品が、14MPa以上の降伏点引張強度を呈する、実施形態62~125のいずれか1つに記載の方法である。
【0279】
実施形態127は、歯科矯正物品が、25MPa以上の降伏点引張強度を呈する、実施形態62~126のいずれか1つに記載の方法である。
【0280】
実施形態128は、歯科矯正物品が、1重量%以下の抽出可能な成分を含む、実施形態62~127のいずれか1つに記載の方法である。
【0281】
実施形態129は、歯科矯正物品が、20℃以下の損失弾性率のピークを呈する、実施形態62~128のいずれか1つに記載の方法である。
【0282】
実施形態130は、(歯科矯正物品が、)80℃以上のTanδピークを呈する、実施形態129に記載の方法である。
【0283】
実施形態131は、歯科矯正物品が、歯科用トレイ、リテーナ、又はアライナーを含む、実施形態62~130のいずれか1つに記載の方法である。
【0284】
実施形態132は、歯科矯正物品が、アライナーを含む、実施形態62~131のいずれか1つに記載の方法である。
【0285】
実施形態133は、式(V)の化合物を含む。
【化27】
【0286】
実施形態134は、光重合性組成物の重合反応生成物を含む歯科矯正物品である。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)式(V)の化合物
【化28】
を含む紫外線吸収剤と、
iv)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I):H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)のポリカーボネートジオールと、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0287】
実施形態135は、歯科矯正物品を作製する方法であって、方法は、a)光重合性組成物を得ることと、b)光重合性組成物を選択的に硬化させることと、c)工程a)及びb)を繰り返して複数の層を形成し、歯科矯正物品を作製することと、を含む。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)式(V)の化合物
【化29】
を含む紫外線吸収剤と、
iv)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I):H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)のポリカーボネートジオールと、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0288】
実施形態136は、歯科矯正物品の3次元モデルを表すデータを含む非一時的機械可読媒体であって、これは、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされた場合、3Dプリンタに、光重合性組成物の反応生成物を含む歯科矯正物品を作製させる。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I):H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)のポリカーボネートジオールと、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0289】
実施形態137は、(a)非一時的機械可読媒体から、物品の3Dモデルを表すデータを取得することと、(b)1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3Dプリンティングアプリケーションを実行することと、(c)製造デバイスによって、歯科矯正物品の物理的オブジェクトを生成することと、を含む、方法である。歯科矯正物品は、光重合性組成物の反応生成物を含む。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I):H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)のポリカーボネートジオールと、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0290】
実施形態138は、a)1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、歯科矯正物品の複数の層を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信することと、b)積層造形プロセスによる製造デバイスを用いて、デジタルオブジェクトに基づく歯科矯正物品を生成することと、を含む、方法である。歯科矯正物品は、光重合性組成物の反応生成物を含む。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネートと、2)(メタ)アクリレートモノオールと、3)式(I):H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I)のポリカーボネートジオールと、4)触媒と、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0291】
実施形態139は、a)歯科矯正物品の3Dモデルを表示するディスプレイと、b)ユーザによって選択された3Dモデルに応じて、3Dプリンタに歯科矯正物品の物理的オブジェクトを作製させる、1つ以上のプロセッサと、を含む、システムである。歯科矯正物品は、光重合性組成物の反応生成物を含む。光重合性組成物は、i)硬化したホモポリマーが90℃以上のTを有する単官能性(メタ)アクリレートモノマーと、ii)光開始剤と、iii)成分の重合反応生成物と、を含む。成分は、1)イソシアネート;2)(メタ)アクリレートモノオール、3)式(I)のポリカーボネートジオール、H(O-R-O-C(=O))-O-R-OH(I);及び4)触媒、を含む。各(O-R-O-C(=O))繰り返し単位中の各R及び各Rは、独立して、脂肪族、脂環式、又は脂肪族/脂環式アルキレン基であり、全てのR基とR基との組み合わせにおける炭素原子の平均数は4~10であり、mは2~23である。光重合性組成物の重合反応生成物は、歯科矯正物品の形状を有する。
【0292】
実施形態140は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、1重量%~25重量%の量で存在し、logPが3未満である少なくとも1つの親水性モノマー又はポリマーを含む、実施形態1~61のいずれか1つに記載の物品である。
【0293】
実施形態141は、光重合性組成物が、ホモポリマーが150℃以上のTを有する少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレートモノマーを、光重合性組成物の総重量に基づいて、20重量%以上の量で含む、実施形態140に記載の物品である。
【0294】
実施形態142は、光重合性組成物が、光重合性組成物の総重量に基づいて、1重量%~25重量%の量で存在し、logPが3未満である少なくとも1つの親水性モノマー又はポリマーを含む、実施形態62~131のいずれか1つに記載の方法である。
【0295】
実施形態143は、光重合性組成物が、ホモポリマーが150℃以上のTを有する少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレートモノマーを、光重合性組成物の総重量に基づいて、20重量%以上の量で含む、実施形態142に記載の方法である。
【0296】
実施例
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びそれらの量並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈してはならない。
【0297】
材料
特に記載のない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。材料表(以下)に、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を一覧で示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0298】
予備実施例
ナフタルイミドアクリレート(NapA)の調製
【化30】
【0299】
1Lの3つ口丸底フラスコに、4-クロロナフタル酸無水物(100.0g、0.4299モル、1.0当量)、エタノールアミン(26.26g、0.4299モル、1.0当量)、及びiPrOH(516.7g)を加えた。フラスコに、温度プローブ、オーバーヘッド撹拌機、及び還流凝縮器を装着した。反応混合物を6時間撹拌しながら80℃に加熱し、次に氷浴で10℃に冷却した。得られた黄色固体を濾過により収集し、水(300g)、iPrOH(300g)、及び濃HCl(10g)の混合物と共に撹拌した。得られた固体を濾過し、水/iPrOH(1:1、500g)で洗浄し、空気乾燥させた。これにより、アルコール2(102g、86%)を得た。
【化31】
【0300】
2Lの3つ口丸底フラスコに、アルコール2(100.0g、0.3627モル、1.0当量)、KOH(40.71g、0.7255モル、2.0当量)、及びメタノール(581g)を加えた。フラスコに、温度プローブ、オーバーヘッド撹拌機、及び還流凝縮器を装着した。反応混合物を36時間撹拌しながら65℃に加熱し、次に氷浴で10℃に冷却した。得られた黄色固体を濾過により収集し、水(300g)、MeOH(300g)、及び濃HCl(10g)の混合物と共に撹拌した。得られた固体を濾過し、水/MeOH(1:1、600g)で洗浄し、空気乾燥させた。これにより、アルコール3(86.5g、88%)を得た。
【化32】
【0301】
1Lの3つ口丸底フラスコに、アルコール3(80.00g、0.2949モル、1.0当量)、クロロホルム(704g)、及びトリエチルアミン(35.81g、0.3539モル、1.2当量)を加えた。フラスコには、クライゼンアダプタ、オーバーヘッド撹拌機、及び均圧添加(pressure-equalizing)漏斗を装着した。クライゼンアダプタには、温度プローブ及び還流凝縮器を装着した。反応混合物を撹拌し、40℃に加熱した。反応温度が45℃を超えないように、塩化アクリロイル(29.36g、0.3244モル、1.1当量)を添加漏斗を介して滴加した。添加が完了した後、反応物を30分間撹拌した。トリエチルアミン(6.00g、0.0593モル、0.2当量)を加え、続いて塩化アクリロイル(5.00g、0.0552モル、0.19当量)を滴加した。反応物を40℃で更に30分間撹拌した。次に、反応フラスコに蒸留ヘッド、凝縮器、及び受けフラスコを装着した。反応混合物を加熱して、クロロホルムの大部分をストリップした。EtOH(500g)を加え、蒸留ヘッド温度が78℃に達するまでストリップを継続した。反応混合物を氷浴で10℃に冷却し、濾過した。得られた固体を、水/HCl(10:1、500mL)、水/NaCO(10:1、500mL)、及び水/EtOH(1:1、500mL)で洗浄した。固体を乾燥させて、生成物4を淡黄色固体(92.5g、96%)として得た。
【0302】
アダマンチル-1-メタクリレート(AdMA)の調製
2Lの3つ口丸底フラスコに、凝縮器、電磁撹拌棒、及び温度計を備えたディーンスタークトラップを取り付けた。1-アダマンタノール(252g 1.650mol)、ヒドロキノン(0.3g)、メタクリル酸(455g、5.28mmol)、及びメチルシクロヘキサン(400g)を加え、混合物を撹拌した。次に、硫酸(10.5g)を混合物に加え、次に、乾燥空気をゆっくりと混合物にバブリングした。混合物を、空気の一定のバブリング下で26時間加熱還流し、その間、反応生成物の水をトラップを使用して除去した。次に、混合物を、室温に冷却し、機械的に撹拌して氷浴冷却した、1000gの脱イオン水及び500gのヘキサン中の350gのKOH(6.2mol)の混合物に、ゆっくりと加えた。添加が完了した後、得られた混合物を分液漏斗を用いて分離し、1×500mLのヘキサンを抽出した。合わせた有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、次に、20mgのフェノチアジンを有機相に加えた。次に、これを無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発により濃縮した。次に、濃縮物を真空下(BP=87~90℃、0.3トル)下で蒸留し、15mgの4-ヒドロキシ-TEMPOを入れた受けフラスコに、320gの液体を得た。次に、BHT(48mg)を加え、乾燥空気を30秒間バブリングして透明な製品にして、保管した。H NMR:5.99(m,1H),5.45(m,1H),2.14(m,9H),1.87(m,3H),1.64(m,6H).13C NMR:168.5,138.1,124.3,80.4,41.3,36.3,30.9,18.4.GCによる純度=98.4%。
【0303】
核磁気共鳴分光法(NMR)による上記材料の特性評価
Bruker(Billerica,MA)製のUltrashield 500 Plus FT NMR機器を使用して、H NMR(500MHz)及び13C NMR(125MHz)スペクトルを得た。化学シフト(δ)は、CDClに対するppmで報告される。分裂パターンの略語は以下のとおりである、すなわち、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、br(幅広線)、app(見かけの線)及びこれらの略語の組み合わせである。
【0304】
4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(cis/trans混合物)(tBuCHMA)の調製
2Lの3つ口丸底フラスコに、250mLの添加漏斗、電磁撹拌棒、及び温度計を取り付けた。4-tertブチルシクロヘキサノール(150g、960mmol)、ジクロロメタン(600g)、トリエチルアミン(178g、1760mmol)及びDMAP(6.4g、52mmol)をフラスコに加え、次に、無水メタクリル酸(263g、1710mmol)を、温度を35℃未満に保ちながら滴加した。この混合物を室温で24時間撹拌した後、次に150mLの水を加えて一晩撹拌した。次に、ジクロロメタン(500g)を加え、有機相を200mLの水、200mLの0.1M HCl、及び200mLの飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、20mgのフェノチアジンを加えた。これを濾過し、回転蒸発により濃縮した。次に、濃縮物を真空下(BP=73~90℃、0.3トル)で蒸留し、7mgの4-ヒドロキシ-TEMPOを入れた受けフラスコに、170gの液体を得た。次に、BHT(26mg)を加え、乾燥空気を30秒間バブリングして透明な製品にして、保管した。H NMRは、Macromolecules,1993,26,1659-1665に記載されている72%のtrans異性体と28%のcis異性体の混合物と一致していた。GC分析では、2つの異性体の合計96%が、73%trans/27%cisの比率で示された。
【0305】
ガスクロマトグラフィー(GC)による上記材料の特性評価
試料の純度及び生成物の比率を、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定し、これを、水素炎イオン化検出器及びHP G1530Aデジタル積分器を備えたHewlett Packard(Palo Alto,CA)6890 Series Plusガスクロマトグラフィーを用いて行った。試料注入は、7683シリーズインジェクタを使用して2マイクロリットルの注入量、250℃の温度の注入ポート、及び20:1のスプリット比を用いて実施した。Restek Corp.(Bellefonte,PA)から商品名「RESTEXRTX-1」で入手した30m×0.53mm×5マイクロメートルのカラムを利用して、キャリアガスとしてHeを12.4mL/分の流量で使用し、15℃/分で50℃~230℃、50℃/分で230℃~280℃の温度プログラムを用い、次に、280℃で2分間保持した。
【0306】
ジオールジアクリレートの調製
C-590ジオールジアクリレートの調製
【化33】
C-590ジオール(50g、90.79mmol)及びアクリル酸(19.8g、275mmol)及びp-トルエンスルホン酸(1.96g、11.3mmol)を、磁気撹拌棒、熱電対、及び凝縮器を備えた250mLの3つ口フラスコに仕込んだ。混合物を85℃で加熱した。真空(15~20トル)を15~20分毎に2分間適用して、任意の形成された水を反応から除去した。これを4時間繰り返し、この時に、フラスコ壁にHOが形成されるか又は凝縮する兆候はなかった。加熱を止めた。室温まで冷却した後、混合物を130mLの酢酸エチル/石油エーテル混合物(10:3比)中に溶解した。混合物を、10%水性NaOH(100mL)、次にHO(200mL)で抽出した。有機層を乾燥させ(NaSO上で)、次に濃縮して、91%の収率で透明な液体を得た。
【0307】
C-590ジオールジメタクリレート(C-590ジオールMA)の調製
【化34】
この材料は、アクリル酸の代わりにメタクリル酸を使用したことを除いて、C-590ジオールジアクリレートの調製についての上記の手順に従って調製した。生成物を、88~93%収率で、低粘度の液体として単離した。
【0308】
C-2050ジオールジメタクリレート(C-2050ジオールMA)の調製
【化35】
この材料は、アクリル酸の代わりにメタクリル酸を使用し、C-590ジオールの代わりにC-2050ジオールを使用したことを除いて、C-590ジオールジアクリレートの調製についての上記の手順に従って調製した。
【0309】
ポリカーボネートジオール系ウレタン(メタ)アクリレートの調製
ウレタンアクリレートは、3つの主なタイプのものである。
1)HEA及びHEMAなどの(メタ)アクリレートモノオールで末端保護されたジイソシアネートと反応したポリカーボネートジオール。以下は、このような材料の理想的な構造であって、ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールで示されている、
【化36】
2)イソシアネート-(メタ)アクリレートで末端保護されたポリカーボネートジオールあって、ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール及びIEMで示されている、
【化37】
3)(メタ)アクリレートモノオールで末端保護されたジイソシアネート、
【化38】
【0310】
タイプ1:4 IPDI/2 C-2050/2 HEMA(PE-1)
1Lの3つ口丸底フラスコに、514.75gのC-2050(0.52285当量、984.5水酸化物当量(OH EW))を仕込み、約45℃に加熱し、次に、116.19gのIPDI(1.0457当量)、0.280gのBHT(400ppm)、及び0.175(g)DBTDL(250ppm)を加えた。反応物を、乾燥空気下で105℃の内部設定値まで加熱した(温度には、約20分で達した)。1時間20分経過時点で、69.06gのHEMA(0.5307当量、130.14MW、1.5%過剰)を、1時間10分にわたって一定速度で添加漏斗を介して加えた。反応物を105℃で約2.5時間加熱した後、フーリエ変換赤外分光法(Fourier transform infrared spectroscopy、FTIR)によってアリコートを確認したところ、2265cm-1に-NCOピークがないことがわかり、生成物を透明で粘性のある材料として単離した。
【0311】
タイプ2:C-2050/2 IEM(PE-2)
1Lの3つ口丸底フラスコに、431.93gのC-2050(0.43873当量、984.5 OH EW)、0.200gのBHT(400ppm)、及び0.125gのDBTDL(250ppm)を仕込み、乾燥空気下で約60℃の内部温度に加熱した。次に、68.07gのIEM(0.43873当量、155.15MW)を、添加漏斗を介して約1時間20分間かけて加えた。1時間30分経過時点で、アリコートをFTIRによって確認すると、2265cm-1における-NCOピークがないことがわかった。1時間38分経過時点で、1.32gのIEMを加え、アリコートをFTIRによって確認すると、2265cm-1における-NCOピークがないことがわかった。反応して4時間経過時点で、反応を停止させ、生成物を透明で粘稠な材料として単離した。
【0312】
タイプ3:IPDI/HEMA(PE-3)
1Lの3つ口丸底フラスコに、319.80gのIPDI(2.878当量)、0.280gのBHT、及び0.175gのネオデカン酸ビスマス(固形分に基づいて250ppm)を仕込み、乾燥空気下で約55℃の内部温度に加熱した。次に、380.20g(2.921当量)のHEMAを1時間45分間かけて加え、内部温度を最大90℃まで上昇させた。2時間25分後にアリコートをFTIRによって確認すると、2265cm-1における-NCOピークがないことがわかった。
【0313】
以下の表2の試料は、表に示されている材料の量及びタイプを使用して、上記のタイプ1~3の方法に従って調製した。
【表3-1】
【表3-2】
【0314】
HEMA-IPDI-HEMAオリゴマー濃度の測定。
HEMA-IPDI-HEMAオリゴマーの濃度の測定は、Agilent1260 Infinityシリーズ液体クロマトグラフィーシステム(Agilent Technologies,Waldbronn,Germany)における液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)によって実施し、Agilent Poroshell 120 SB-C8 2.1mm×50mm 2.7マイクロメートルカラムを使用して、40℃にて、流速0.5mL/分で溶出を行った。2マイクロリットルの試料を注入し、以下に記載の直線勾配で溶出した。水は、Merck KGaAの一部であるEMD Millipore製のOmnisolv HPLCグレードであった。実験間の再平衡時間は5分であった。検出は、エレクトロスプレーイオン化を備えたAgilent 6130 Quadrupole LC/MS検出器を用いた。試料の定量は、500.3m/z(M-NH )で検出されたクロマトグラフィーピークの積分によって行った。質量分析計パラメータは、大気圧イオン化-エレクトロスプレー(API-ES)モード、すなわち、キャピラリー電圧4kV、ネブライザガス圧50psig(345kPaゲージ)、乾燥ガス流量10リットル/分、乾燥ガス温度300℃であった。
【表4】
【0315】
較正試料は、酢酸エチルを使用して、0.1009gの材料ポリウレタンアクリレートPE-33を100mLのメスフラスコに溶解させることによって調製した。次に、この溶液を、アセトニトリルを使用して100mLのメスフラスコ内で1mLに希釈し、希釈液1を生成した。希釈液1を更にアセトニトリル中で約2.02、0.505、0.101、及び0.0121ppmの濃度に希釈し、0.22ミクロンのPTFEシリンジフィルター(Fisher Brand,Thermo Fisher Scientific、Hampton,NH)に通して濾過した。較正曲線は、2.02から0.0121ppmまで直線であった。較正は、分析用試料の直前に実施した。
【0316】
分析用試料は、酢酸エチルを使用して、0.1~0.3gの材料を100mLのメスフラスコに溶解させることによって調製した。次に、この溶液を、アセトニトリルを使用して100mLのメスフラスコで1mLに希釈し、希釈液1を生成した。希釈液1を0.22ミクロンのPTFEシリンジフィルター(Fisher Brand)に通して濾過し、上記のように分析した。各試料の結果を表4に示す。
【表5】
【0317】
配合物調製のための一般的手順
成分(表5~17に示されている)をアンバージャーに秤量し、続いてローラ(商品名「OLDE MIDWAY PRO18」を有し、Olde Midway製である)上で、混合するまで60℃にて転がすことによって配合物を調製した。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【0318】
ポリマー/オリゴマー分子量特性評価方法:
オリゴマー及びポリマーの分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)を使用して特徴付けた。GPC機器は、どちらもWaters Corporation(Milford,MA)製である、e2695分離モジュール及び2414 dRI検出器で構成されていた。溶出液としてテトラヒドロフランを使用して、0.6mL/分の流量で操作した。GPCカラムも、Waters Corporation製のHSPgel HR MB-Mカラムであった。カラム区画及び示差屈折率検出器を35℃に設定した。分子量標準は、Agilent Technologies製のEasiVial PMMAであった(較正曲線で使用したPMMA分子量標準のM値は550D~1,568,000g/molの範囲であった。)。選択されたオリゴマー/ポリマーの相対数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mn)を、以下の表18中にキロダルトン(kD)で表示する。
【表19】
【0319】
配合物のキャスト及び硬化の一般的な手順
表5~17に示された各配合物を、引張試験片を調製するためのシリコーンドッグボーン金型(厚さ1mmのタイプV金型、ASTM D638-14)、及びDMA3点曲げ試験片用の寸法(9.4mm×25.4mm×1mm)の長方形金型に注いだ。2mil(0.05mm)のポリエチレンテレフタレート(PET)剥離ライナー(3M Company(St.Paul,MN))から商品名「SCOTCHPAK」で入手した)を充填金型に巻き付け、ライナーと一緒に充填金型を、バインダークリップで保持された2枚のガラスプレートの間に配置した。配合物をAsiga Pico Flash後硬化チャンバ(Asiga USA,Anaheim Hills,CAから入手)下で30分間硬化させた。試験片を金型から取り出し、続いてAsiga Pico Flash後硬化チャンバを使用して30分間の更なる光曝露を行った。次に、試験片を、100℃に設定されたオーブン内に30分間保持した。ドッグボーン試験片を、37℃で24時間、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、1×、pH=7.4)中でコンディショニングした。DMA 3点曲げ試験片を、脱イオン(DI)水中で室温にて48時間コンディショニングした。
【0320】
動的機械分析を使用して損失弾性率及びtanδを測定するための一般的な手順
動的機械分析(DMA)を、TA InstrumentsモデルQ800動的機械分析装置(TA Instruments(Newcastle,DE))を使用して、制御されたひずみモード、0.2%ひずみ、0.02N予荷重力、125%フォーストラック、1Hzで引張クランプを使用して、長方形の硬化した試料(約25.4mm×9.4mm×1mm)にて実施した。温度を、2℃/分の速度で、-40℃から200℃まで掃引した。試料を37℃の脱イオン水中に少なくとも24時間浸漬し、この時点で、試験前に試料に水を完全にしみ込ませ、水から取り出した直後に試験した。
【表20】
【0321】
配合された樹脂の積層造形
特に記載のない限り、3Dプリントされた実施例は全て、Asiga USA,Anaheim Hills,CAから入手可能な液槽重合3Dプリンタ、Asiga Pico 2 HD又はAsiga Maxのいずれかで製造した。表20~23に列挙した各配合物を、385nmのLED光源を備えたAsiga 3Dプリンタ上で光重合した。ASTM D638-14(2014)に従うタイプVの引張試験棒及びDMA 3点曲げ試験片を製造した。プリンタの樹脂浴を、光重合の前に35~50℃に加熱し、引張試験棒を製造することができるように粘度を低下させた。プリントには以下の設定を使用した、すなわち、スライス厚=50μm、バーンイン層(Burn-In Layers)=1、分離速度=1.5mm/秒、分離距離=10mm、接近速度=1.5mm/秒である。Asiga Pico 2 HDでは、1層当たり1つのスライドを、7mm/分の速度で使用した。更に、表24には、表20~23に示された配合物をプリントするために使用されるプリンタのタイプ、及び曝露時間、定着(burn-in time)時間、及び温度が記載されている。プリントされた部品をプロピレンカーボネートを用いて洗浄し、続いてイソプロパノールを用いて未反応の樹脂を除去した。次に、プリントされた部品を、Asiga Pico Flash後硬化チャンバを使用して各側で90分間後硬化させた後、オーブン内で100℃にて30分間加熱した。ドッグボーン試験片を、37℃で24時間、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、1X、pH=7.4)中でコンディショニングした。DMA 3点曲げ試験片を、DI水中で室温にて48時間コンディショニングした。
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【0322】
引張試験の一般的な手順
PBSコンディショニングドッグボーンを、500Nロードセルを備えたInstron 5944(Instron,Norwood,MA)で試験した。試験速度は5mm/分であり、最初のグリップ間隔は1インチ(2.5cm)であった。ゲージ長を1インチ(2.5cm)に設定した。各配合物について5つの複製試料を試験し、平均値を報告する。降伏点引張強度をASTM D638-14(2014)に従って測定し、以下の表25及び表26に示す。降伏しなかった試験片については、最大引張強度を測定した。破断伸びは、グリップのクロスヘッドの移動から決定した。
【0323】
動的機械分析を使用して緩和弾性率を測定するための一般的な手順
長方形の試験片を、22~25℃の室温で48時間脱イオン水に浸漬することによって水コンディショニングを行い、水没3点曲げクランプを備えたTA Q800 DMAで試験した。水コンディショニングされた長方形の試験片を、水を充填した水没固定具内に入れた。試験片を37℃で10分間平衡化した後、2%のひずみを加えた。緩和弾性率は、TA Advantageソフトウェアを使用して30分間測定し、表25及び26に報告する。
【表26-1】
【表26-2】
【表27】
【0324】
配合樹脂からのアライナー物品の積層造形
EX-57の配合物を、385nmのLED光源を備えたAsigaMaxプリンタで光重合した。アライナーのステレオリソグラフィファイル形式(STLファイル)をAsiga Composerソフトウェアにロードし、支持構造を生成した。プリンタの樹脂浴を、光重合の前に40℃に加熱し、物品を製造することができるように粘度を低下させた。プリントには以下の設定を使用した、すなわち、スライス厚=50μm、バーンイン(定着)層=1、分離速度=1.5mm/秒、バーンイン曝露時間=10秒、曝露時間=3秒である。プリントされた部品をプロピレンカーボネートを用いて洗浄し、続いてイソプロパノールを用いて未反応の樹脂を除去した。次に、プリントされた試験片を、Asiga Pico Flash後硬化チャンバを使用して各側で90分間後硬化させた。光重合アライナーは、積層造形部品の精度を示すモデルに適合する。アライナーは、許容される強度及び柔軟性を有していた。
【0325】
プリントされた物品から抽出可能なものの重量分析の試験手順
EX-57及びEX-58の配合物を使用して連続5歯列(30.4mm×9.24mm×8.17mm)として成形された物品をプリントし、上記の手順に従って後処理した。物品の厚さは0.49mmであった。3×5歯の物品(総表面積45cm)を40mLのガラスバイアルに入れ、秤量した。15mLの溶媒(ヘプタン又は5%エタノール/Milli-Q水のいずれか)をバイアルに加え、各溶媒に1つの15mLブランク(物品を含まないバイアル)を用いた。バイアルをテフロンキャップで覆い、試料を、LabLine Bench top incubated shaker Model 4628内で80RPMで振とうさせながら、37℃にて24時間保持した。試料を冷却してから、抽出溶液を新しい20mLガラスバイアルに移した。5mLのアリコートを、予め秤量した8mLのガラスバイアルに移し、窒素パージ下で蒸発するように設定した。溶媒が乾いて水分がなくなったら、バイアルを、一定の重量に達するまで秤量した。残留物(%)は、下記の式を使用して計算した。試験を3回実行し、すべて同時に行った。示された結果は、3回の繰り返しの平均である。
【数1】
【表28】
【0326】
上記の特許及び特許出願の全てを、参照により本明細書に明示的に援用する。上述の実施形態は本発明を例示するものであり、他の構造もまた可能である。したがって、本発明は、上記に詳細に説明し、添付図面に示した実施形態に限定されるものと見なされるべきではなく、均等物を併せた以下の特許請求の範囲の正当な範囲によってのみ限定されるものである。
図1
図2
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図10