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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20220119BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220119BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E04B9/00 D
E04B1/94 F
E04B1/348 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017160582
(22)【出願日】2017-08-23
(65)【公開番号】P2019039185
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直哉
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-126946(JP,A)
【文献】特開2007-009676(JP,A)
【文献】特開平10-204523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 5/02
E04B 1/94
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井材が野縁を介して取付部材により天井小梁に取付けられた天井部と、該天井小梁に対して高さ方向の上側に配置された床小梁に床材が取り付けられた床部とが、該高さ方向に複数並ぶ多層階建ての建物であって、
前記天井小梁は角形鋼管で構成されると共に、二つの前記天井材が前記野縁を介してそれぞれ各取付部材により前記天井小梁に取付けられ、
前記天井小梁のうち、
準耐火仕様とされる第1小梁は、
記高さ方向と交差する交差方向の第1幅が、前記準耐火仕様とは異なる一般仕様とされる第2小梁の前記交差方向の第2幅よりも広く設定されると共に、前記第1小梁に取り付けられた取付部材から前記野縁の端面までの前記交差方向の第1長さが、前記第2小梁に取り付けられた取付部材から前記野縁の端面までの前記交差方向の第2長さよりも長く設定された建物。
【請求項2】
前記第1小梁は二階天井部に設けられ、前記第2小梁は一階天井部に設けられている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1小梁に取り付けられる野縁の密度は、前記第2小梁に取り付けられる野縁の密度よりも大きく設定されている請求項1又は請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記野縁及び第1小梁の下部の周囲を含み、前記第1小梁に取り付けられた第1天井材には第1断熱材が敷き詰められている請求項3に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の防火床では、床材の裏側又は床材が施工された直下の天井材上側に、熱膨張性シート層が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-54528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
準耐火性能が要求される建物において、下階の天井部及び上階の床部で仕様を制限することで、準耐火性能を確保した建物がある。しかし、床部については、天井部に比べて居室の用途によって望まれる仕様が多く存在するために、仕様が制限されてしまうと、設計の自由度が低くなる。つまり、準耐火性能が要求される建物において、耐火性能を確保すると共に床部の設計の自由度を高めるには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、準耐火性能が要求される建物において、準耐火性能を確保すると共に床部の設計の自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る建物は、天井材が野縁を介して取付部材により取付けられる天井小梁と、該天井小梁に対して高さ方向の上側に配置される床部とが、該高さ方向に複数並ぶ多層階建ての建物であって、一の階に設けられた前記天井小梁としての第1小梁の前記高さ方向と交差する交差方向の第1幅が、他の階に設けられた前記天井小梁としての第2小梁の前記交差方向の第2幅よりも広く、前記一の階における前記取付部材から前記野縁の端面までの前記交差方向の第1長さが、前記他の階における前記取付部材から前記野縁の端面までの前記交差方向の第2長さよりも長い。
【0007】
第1態様に係る建物では、一の階における第1小梁の交差方向の第1幅が、他の階における第2小梁の交差方向の第2幅よりも広い。さらに、一の階における取付部材から野縁の端面までの交差方向の第1長さが、他の階における取付部材から野縁の端面までの交差方向の第2長さよりも長い。つまり、一の階では、他の階に比べて、「端空き」が長いことで取付部材の周辺部での耐力が大きくなっているので、天井材及び野縁が加熱された場合に、天井材を長時間、保持することができる。換言すると、一の階では、天井部の準耐火性能が確保されている。このため、一の階の天井小梁に対する上側の床部では、準耐火性能の制約を受けない設計が可能となる。これにより、準耐火性能が要求される建物において、準耐火性能を確保すると共に床部の設計の自由度を高めることができる。
【0008】
第2態様に係る建物の前記一の階における前記床部を構成する床材は、前記交差方向に複数配置され、隣合う前記床材の目地の少なくとも一部が、前記第1小梁に対して前記交差方向にずれて配置されている。
【0009】
第2態様に係る建物では、床部を構成する複数の床材の目地の少なくとも一部が、第1小梁に対して交差方向にずれた場所に配置される。これにより、第1小梁の配置に合わせて床材を切断して配置する必要がなくなるので、建物の生産性を高めることができる。
【0010】
第3態様に係る建物の前記床部を構成する床材の密度がパーティクルボードの密度よりも大きい。
【0011】
第3態様に係る建物では、床材の密度がパーティクルボードの密度よりも大きいことで、床部の制振性が高められている。これにより、床材の密度がパーティクルボードの密度以下の構成に比べて、床部に設けるダンパーの数を減らすことができる。
【0012】
第4態様に係る建物は、前記第1小梁に対して前記交差方向に並ぶ天井大梁と、前記床部を構成する床材を支持する第3小梁と、前記天井大梁の前記高さ方向の上側に配置され前記第3小梁に対して前記交差方向に並ぶ床大梁と、が設けられている。
【0013】
第4態様に係る建物では、第3小梁が床材を支持する。さらに、下階の天井材と上階の床部との間(階間)に、天井大梁の高さに応じた空間部と、床大梁の高さに応じた空間部とが形成される。このため、1つの大梁の上下に床部及び天井材を設ける構成に比べて、階間の空間部の大きさが大きくなるので、下階から上階に熱が伝わり難くなる。これにより、建物の準耐火性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る建物では、準耐火性能が要求される建物において、準耐火性能を確保すると共に床部の設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る建物の全体構成図である。
図2】(A)第1実施形態に係る2階の天井部及び3階の床部の部分拡大断面図であり、(B)第1実施形態に係る2階の天井部における小梁の周辺部を示す部分拡大断面図である。
図3】第1実施形態に係る1階の天井部及び2階の床部の部分拡大断面図である。
図4】第1実施形態に係る2階の床部の平面図である。
図5】第1実施形態に係る1階の天井部及び2階の床部の縦断面図(図4の5-5線断面)である。
図6】第1実施形態に係る2階の床部における小梁の周辺部を示す部分拡大断面図である。
図7】第2実施形態に係る1階の天井部及び2階の床部の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る建物の一例について説明する。
【0017】
〔全体構成〕
図1には、第1実施形態の建物10が模式的に示されている。なお、以後の説明では、建物10の桁方向をX方向、妻方向をZ方向、上下方向(高さ方向)をY方向と称する。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。X方向は、交差方向の一例である。
【0018】
建物10は、一例として、基礎12上に図示しない複数の下階側の建物ユニットを据え付けた後で、下階側の建物ユニット上に図示しない複数の上階側の建物ユニットを据え付け、この工程を繰返すことで、三階建てのユニット建物として構成されている。建物ユニットは、一例として、長短2組の床大梁と、長短2組の天井大梁と、床大梁と天井大梁とを連結する4本の柱とを含んで構成されている。また、建物10は、シャッター等を含む防火設備14が設けられた外壁16を有する。
【0019】
具体的には、建物10は、一階床部22と、一階天井部24と、二階床部26と、二階天井部28と、三階床部32と、三階天井部34と、屋根部36とを含んで構成されている。一階床部22、二階床部26、三階床部32は、床部の一例である。なお、以後の説明では、耐火時間30分以上の耐火性能を準耐火性能と称する。本実施形態では、建物10において、準耐火性能を有する部位を準耐火仕様の部位と称し、準耐火性能が必要とされていない部位を一般仕様の部位と称して区別する。
【0020】
建物10において、一階床部22、一階天井部24、二階床部26、三階天井部34及び屋根部36は、一般仕様の部位とされている。一方、二階天井部28及び三階床部32は、準耐火仕様であることが必要とされているが、本実施形態では、後述するように、二階天井部28の準耐火仕様を高めることで、三階床部32を一般仕様とすることを可能としている。
【0021】
まず、一般仕様の一階天井部24及び二階床部26について説明する。なお、一階床部22は、二階床部26と同様の構造とされているため、説明を省略する。また、三階天井部34は、一階天井部24と同様の構造とされているため、説明を省略する。屋根部36は、一般的な屋根構造とされているため、説明を省略する。本実施形態では、二階が一の階の一例であり、一階が他の階の一例とされている。
【0022】
<一階天井部>
図2(A)に示すように、一階天井部24は、天井大梁42と、天井小梁の一例としての第2小梁44と、野縁46と、天井材48と、取付部材の一例としてのビス52と、断熱材54とを含んで構成されている。天井大梁42は、一例として、Z方向に延在された溝形鋼で構成されており、図示しない柱に支持されている。また、天井大梁42は、ウェブ42A、下フランジ42B及び上フランジ42Cを有する。第2小梁44は、一例として、Z方向に延在された角形鋼管で構成されており、図示しない桁側の天井大梁に架設されている。
【0023】
野縁46は、一階天井部24に複数設けられている。具体的には、野縁46は、Z方向に延在された木材で構成されており、Z方向から見た場合の断面形状が、X方向を長手方向としY方向を短手方向とする矩形状とされている。複数の野縁46は、下フランジ42Bの下面と、第2小梁44の下面とにそれぞれ固定されている。野縁46のX方向両側の側面を端面46A(図2(B)参照)と称する。
【0024】
天井材48は、一例として、平面視で(Y方向の上側から見て)矩形の板状に形成された石膏ボードで構成されている。また、天井材48は、X方向及びZ方向に沿って複数並べられている。さらに、天井材48は、野縁46にY方向の下側から重ねられ、ビス52を用いて野縁46及び天井大梁42、野縁46及び第2小梁44に取付けられている。なお、図2(A)では、天井大梁42に天井材48を取付けるビスの図示を省略している。断熱材54は、一例として、グラスウールを含んで構成されており、天井材48上に敷き詰められている。
【0025】
図2(B)には、第2小梁44への天井材48の取付部分が示されている。2つの天井材48は、野縁46のY方向の下側に目地51が配置されるように、X方向に並んで配置されている。目地51に対してX方向一方側の天井材48、他方側の天井材48は、それぞれビス52を用いての野縁46及び第2小梁44に取付けられている。目地51には、パテ53が充填されている。ここで、第2小梁44のX方向の幅を第2幅W2とする。また、野縁46における1つの端面46Aから、ビス52の図示しない中心軸までのX方向の長さを第2長さL2とする。換言すると、一階天井部24では、天井材48は、2箇所の端あきがそれぞれL2となるように、第2小梁44に取付けられている。
【0026】
<二階床部>
図2(A)に示すように、二階床部26は、床大梁62と、床小梁64と、根太66と、床材68と、図示しないビスと、ブラケット72と、ダンパー74とを含んで構成されている。床大梁62は、一例として、Z方向に延在された溝形鋼で構成されており、一階の天井大梁42の建物上方側に配置されている。また、床大梁62は、ウェブ62A、下フランジ62B及び上フランジ62Cを有する。床小梁64は、一例として、Z方向に延在された角形鋼管で構成されており、図示しない桁側の床大梁に架設されている。また、床小梁64は、第2小梁44の建物上方側に配置されている。
【0027】
根太66は、Z方向に延在されており、Z方向から見た場合の断面形状が、X方向を長手方向としY方向を短手方向とする矩形状とされている。また、根太66は、上フランジ62Cの上面に固定されている。
【0028】
床材68は、一例として、平面視で(Y方向の上側から見て)、略矩形状に形成された準不燃材料である木質系セメント板で構成されている。また、床材68は、X方向及びZ方向に沿って複数並べられて、二階床部26を構成している。X方向屋外側の端部に配置された床材68は、X方向の一端部が根太66にY方向の上側から重ねられ、X方向の他端部が床小梁64にY方向の上側から重ねられて、図示しないビスを用いて、根太66及び床大梁62と、床小梁64とに取付けられている。X方向屋内側に配置された床材68は、X方向の両端部が床小梁64にY方向の上側から重ねられて、図示しないビスを用いて、床小梁64に取付けられている。床小梁64上には、複数の床材68の目地69が配置されている。
【0029】
ブラケット72は、床小梁64のY方向の下面に固定され、床小梁64に対してX方向の一方側と他方側とに張出されている。ブラケット72における床小梁64に対するX方向の一方側の上面及び他方側の上面には、ダンパー74が取付けられている。ダンパー74によって、二階床部26の制振が行われる。
【0030】
〔要部構成〕
次に、二階天井部28及び三階床部32について説明する。
【0031】
<二階天井部>
図3に示すように、二階天井部28は、天井大梁42と、天井小梁の一例としての第1小梁82と、野縁84と、天井材48と、ビス52と、断熱材54とを含んで構成されている。第1小梁82は、一例として、Z方向に延在された角形鋼管で構成されており、図示しない桁側の天井大梁に架設されている。天井大梁42は、第1小梁82に対してX方向に並んでいる。
【0032】
野縁84は、二階天井部28に複数設けられている。具体的には、野縁84は、Z方向に延在された木材で構成されており、Z方向から見た場合の断面形状が、X方向を長手方向としY方向を短手方向とする矩形状とされている。複数の野縁84は、下フランジ42Bの下面と、第1小梁82の下面とにそれぞれ固定されている。野縁84のX方向両側の側面を端面84Aと称する。
【0033】
天井材48は、X方向及びZ方向に沿って複数並べられている。天井材48のX方向の両端部は、野縁84にY方向の下側から重ねられ、ビス52を用いて野縁84及び天井大梁42、野縁84及び第1小梁82に取付けられている。なお、図3では、天井大梁42に天井材48を取付けるビス52の図示を省略している。断熱材54は、天井材48上に敷き詰められている。
【0034】
図6には、第1小梁82への天井材48の取付部分が示されている。2つの天井材48は、野縁84のY方向の下側に目地85が配置されるように、X方向に並んで配置されている。目地85に対してX方向一方側の天井材48、他方側の天井材48は、それぞれビス52を用いて野縁84及び第1小梁82に取付けられている。目地85には、パテ53が充填されている。
【0035】
ここで、第1小梁82のX方向の幅を第1幅W1とする。また、野縁84におけるX方向の1つの側面である端面84Aから、ビス52の図示しない中心軸までのX方向の長さを第1長さL1とする。換言すると、二階天井部28では、天井材48は、2箇所の端あきがそれぞれL1となるように、野縁84を介して第1小梁82に取付けられている。第1幅W1は、第2幅W2(図2(B)参照)よりも広い。また、第1長さL1は、第2長さL2(図2(B)参照)よりも長い。
【0036】
<三階床部>
図3に示すように、三階床部32は、床大梁62と、第3小梁の一例としての床小梁86と、根太66と、床材88と、図示しないビスと、ブラケット72と、ダンパー92とを含んで構成されている。床大梁62は、二階の天井大梁42の建物上方側に配置されている。床小梁86は、一例として、Z方向に延在された角形鋼管で構成されており、図示しない桁側の床大梁に架設されている。また、床小梁86は、床材88をY方向の下側から支持する。さらに、床小梁86は、第1小梁82の建物上方側に配置されている。床大梁62は、天井大梁42のY方向の上側に配置され、床小梁86に対してX方向に並んでいる。
【0037】
図4に示す床材88は、一例として、平面視で(Y方向の上側から見て)、略矩形状に形成された準不燃材料である木質系セメント板で構成されている。また、床材88は、予め複数のサイズに切断されており、X方向及びZ方向に沿って複数並べられ、三階床部32を構成している。具体的には、床材88は、X方向に複数配置され、隣合う床材88の目地85の少なくとも一部(Z方向に沿った目地85)が、床小梁86に対してX方向にずれて配置されている。目地85は、一例として、隣合う床小梁86のX方向の間のほぼ中央位置(それぞれの床小梁86からのX方向の長さがほぼ等しくなる位置)に配置されている。なお、三階床部32では、複数の床材88のZ方向に並ぶ目地89が、X方向に沿って延びている。
【0038】
図3に示すX方向屋外側端部に配置された床材88において、X方向の一端部は、根太66にY方向の上側から重ねられ、図示しないビスを用いて、根太66及び床大梁62に取付けられている。また、この床材88において、X方向の他端部は、隣合う床小梁86のX方向の間のほぼ中央位置に配置されており、床小梁86には支持されていない。換言すると、目地85は、床小梁86上には配置されていない。
【0039】
図5に示すように、ブラケット72は、床小梁86のY方向の下面に固定され、床小梁86に対してX方向の一方側と他方側とに張出されている。ブラケット72における床小梁86に対するX方向の一方側の上面及び他方側の上面には、ダンパー92が取付けられている。ダンパー92によって、三階床部32の制振が行われる。ブラケット72は、それぞれの床小梁86に固定されている。
【0040】
以上、説明したように、建物10は、第2小梁44及び第2小梁44に対してY方向の上側(建物上方側)に配置される二階床部26と、第1小梁82及び第1小梁82に対してY方向の上側に配置される三階床部32とが、Y方向に並ぶ多層階建てとされている。
【0041】
〔作用〕
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0042】
図6に示す建物10では、二階の第1小梁82の第1幅W1が、一階の第2小梁44の第2幅W2(図2(B)参照)よりも広い。さらに、二階の第1長さL1が、一階の第2長さL2(図2(B)参照)よりも長い。つまり、二階天井部28では、一階天井部24(図2(B)参照)に比べて、「端空き」が長いことでビス52の周辺部での耐力が大きくなっている。このため、天井材48及び野縁84が加熱された場合に、パテ53が目地85から脱落することがあっても、一般仕様の構成に比べて、天井材48を長時間、保持することができる。
【0043】
換言すると、二階天井部28では、準耐火性能が確保されると共に高められている。このため、図3に示す二階天井部28の第1小梁82に対する上側の三階床部32では、準耐火性能の制約を受けない設計が可能となる。これにより、準耐火性能が要求される建物10において、準耐火性能を確保すると共に三階床部32の設計の自由度を高めることができる。
【0044】
また、建物10では、目地85が、第1小梁82に対してX方向にずれた場所に配置される。これにより、第1小梁82の配置に合わせて床材88を切断して配置する必要がなくなるので、建物10の生産性を高めることができる。
【0045】
さらに、建物10では、床小梁86が床材88を支持する。さらに、二階の天井材48と三階床部32との間(階間)に、天井大梁42のY方向の高さに応じた空間部K1と、床大梁62のY方向の高さに応じた空間部K2とが形成される。このため、1つの大梁の上下に床部及び天井材を設ける構成に比べて、階間の空間部の大きさが大きくなるので、二階から三階に熱が伝わり難くなる。これにより、建物10の準耐火性能を高めることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る建物の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材、部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0047】
図7には、第2実施形態に係る建物100が示されている。建物100は、第1実施形態の建物10(図3参照)において、三階床部32を構成する床材88(図3参照)が床材102に換えられた構成とされている。建物100における床材102以外の構成及び構造は、建物10と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
床材102は、一例として、平面視で(Y方向の上側から見て)略矩形状に形成された、準不燃材料である硬質木毛セメント板で構成されている。床材102の密度は、パーティクルボードの密度(JIS A5908に記載の密度0.40g/cm以上0.90g/cm以下)よりも大きく、一例として、1.0g/cmとされている。なお、床材102の密度は、床材68(図2(A)参照)の密度よりも大きい。
【0049】
また、床材102は、予め複数のサイズに切断されており、X方向及びZ方向に沿って複数並べられ、三階床部32を構成している。具体的には、床材102は、X方向に複数配置され、隣合う床材102の目地104の少なくとも一部(Z方向に沿った目地104)が、床小梁86に対してX方向にずれて配置されている。目地104は、一例として、隣合う床小梁86のX方向の間のほぼ中央位置(それぞれの床小梁86からのX方向の長さがほぼ等しくなる位置)に配置されている。
【0050】
X方向屋外側端部に配置された床材102において、X方向の一端部は、根太66にY方向の上側から重ねられ、図示しないビスを用いて、根太66及び床大梁62に取付けられている。また、この床材102において、X方向の他端部は、隣合う床小梁86のX方向の間のほぼ中央位置に配置されており、床小梁86には支持されていない。換言すると、目地104は、床小梁86上には配置されていない。
【0051】
〔作用〕
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0052】
建物100では、床材102の密度がパーティクルボードの密度よりも大きいことで、三階床部32の制振性が高められている。これにより、床材の密度がパーティクルボードの密度以下の構成に比べて、制振が必要とされる箇所が少なくなるので、三階床部32に設けるダンパーの数を減らすことができる。図7では、床小梁86にダンパーが設けられていない箇所が示されている。建物100において、床材102以外の構成における作用は、第1実施形態の建物10(図3参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0054】
建物10、100は、三階建てに限らず、四階建て以上の多層階建ての建物であってもよい。一の階は、二階に限らず、三階以上の階であってもよい。他の階は、一階に限らず、三階以上の階であってもよい。
【0055】
建物10において、目地85が第1小梁82の上側(床小梁86上)に配置されていてもよい。また、複数の目地85の全体が、第1小梁82に対してX方向にずれて配置されていてもよい。さらに、建物10において、床大梁62及び床小梁86を取除いて、天井大梁42の上側に床材88を配置してもよい。つまり、1つの大梁(小梁含む)の上下に天井材と床材を配置してもよい。
【0056】
建物100において、目地104が第1小梁82の上側(床小梁86上)に配置されていてもよい。また、複数の目地104の全体が、第1小梁82に対してX方向にずれて配置されていてもよい。さらに、建物100において、床材102の密度をパーティクルボードの密度以下として、床小梁86にダンパーを設けてもよい。加えて、建物100において、床大梁62及び床小梁86を取除いて、天井大梁42の上側に床材88を配置してもよい。つまり、1つの大梁(小梁含む)の上下に天井材と床材を配置してもよい。
【0057】
第1小梁82、第2小梁44、床小梁86は、角形鋼管に限らず、溝形鋼で構成されていてもよい。
【0058】
床材88は、木質系セメント板に限らず、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード、合板など、他の材質の板材で構成されていてもよい。床材102は、硬質木毛セメント板に限らず、木質系セメント板、MDF、パーティクルボード、合板など、他の材質の板材で構成されていてもよい。また、床材88、床材102は、準耐火仕様のものに限らず、一般仕様のものであってもよい。
【0059】
野縁84の密度を野縁46の密度よりも大きくしてもよい。これにより、野縁84の燃え代が大きくなり、二階天井部28の準耐火性能を高めることができる。また、パテ53の充填量を増したり、断熱材54の密度を大きくするなどして、準耐火性能を高めてもよい。
【0060】
取付部材は、ビス52に限らず、ネイル、ボルト及びナットなど、他の部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 建物
22 一階床部(床部の一例)
26 二階床部(床部の一例)
32 三階床部(床部の一例)
42 天井大梁
44 第2小梁(天井小梁の一例)
46 野縁
46A 端面
48 天井材
52 ビス(取付部材の一例)
62 床大梁
82 第1小梁(天井小梁の一例)
84 野縁
84A 端面
85 目地
86 床小梁(第3小梁の一例)
88 床材
100 建物
102 床材
L1 第1長さ
L2 第2長さ
W1 第1幅
W2 第2幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7