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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】合成樹脂製水路
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/02 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
E02B5/02 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019164144
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021042552
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-08-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.2019年4月11日、株式会社トーセンにおいて公開 2.2019年4月25日、株式会社北陽において公開 3.2019年5月10日、花巻技術設計において公開 4.2019年5月16日、東北農政局北上土地改良調査管理事務所において公開 5.2019年5月16日、東北エンジニアリング株式会社において公開 6.2019年5月16日、株式会社チェリーコンサルタント九州支社において公開 7.2019年5月23日、東北農政局川南二期農業水利事業建設所において公開 8.2019年5月23日、宮城県東部地方振興事務所農業農村整備部において公開 9.2019年5月23日、東北農政局中津山農業水利事業所において公開 10.2019年5月24日、宮城県気仙沼地方振興事務所農業農村整備部において公開 11.2019年5月24日、岩手県県南広域振興局農政部一関農村整備センターにおいて公開 12.2019年5月28日、東北農政局和賀中央農業水利事業所において公開 13.2019年6月14日、大潟土地改良区において公開 14.2019年6月20日、岩手山麓土地改良区において公開 15.2019年6月21日、西和賀土地改良区において公開 16.2019年6月21日、岩手中部土地改良区において公開 17.2019年6月25日、若鈴コンサルタンツ株式会社東北支店において公開 18.2019年7月4日、日化エンジニアリング株式会社東北事務所において公開 19.2019年7月5日、株式会社ジルコ東北支社において公開 20.2019年7月9日、岩手県県南広域振興局農政部農村整備室において公開 21.2019年7月9日、NTCコンサルタンツ株式会社北東北事務所において公開 22.2019年7月10日、岩手県県南広域振興局農政部北上農村整備センターにおいて公開 23.2019年7月10日、岩手県土地改良事業団連合会において公開 24.2019年7月17日、内外エンジニアリング株式会社東北支店において公開 25.2019年7月19日、東北農政局北上土地改良調査管理事務所須川支所において公開 26.2019年7月24日~26日の間、メンテナンス・レジリデンスTOKYO2019第11回インフラ検査・維持管理展において公開 27.2019年9月5日、大潟土地改良区事務所において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】390034795
【氏名又は名称】鳥居化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 源太郎
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316856(JP,A)
【文献】実開昭60-165578(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、
前記底面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、
前記筒状体が前記流水方向に沿って配設された前記底面パネルおよび前記側面パネルの少なくとも一方には、原地盤の水を前記筒状体の内部空間に取り込む取水部が形成されていて、前記流水方向に沿って配設された前記筒状体の前記内部空間が第2の排水路に形成されていることを特徴とする合成樹脂製水路。
【請求項2】
合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、
少なくとも一方の前記側面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、
前記筒状体が前記流水方向に沿って配設された前記底面パネルおよび前記側面パネルの少なくとも一方には、原地盤の水を前記筒状体の内部空間に取り込む取水部が形成されていて、前記流水方向に沿って配設された前記筒状体の前記内部空間が第2の排水路に形成されていることを特徴とする合成樹脂製水路。
【請求項3】
合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、
前記底面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、
少なくとも一方の前記側面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、
前記筒状体が前記流水方向に沿って配設された前記底面パネルおよび前記側面パネルの少なくとも一方には、原地盤の水を前記筒状体の内部空間に取り込む取水部が形成されていて、前記流水方向に沿って配設された前記筒状体の前記内部空間が第2の排水路に形成されていることを特徴とする合成樹脂製水路。
【請求項4】
前記側面パネルの上端のそれぞれには流水方向に沿って配設される第1フレームと、前記第1フレームどうしを連結する第2フレームとからなる補剛材を備えていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の合成樹脂製水路。
【請求項5】
合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、
前記側面パネルの上端のそれぞれには流水方向に沿って配設される第1フレームと、前記第1フレームどうしを連結する第2フレームとからなる補剛材を備えていることを特徴とする合成樹脂製水路。
【請求項6】
前記第1フレームはコの字形状に形成され前記側面パネルを厚さ方向に挟み込むようにして前記側面パネルに装着されていると共に、前記側面パネルの流水面側に当接する流水面側当接片が前記側面パネルの外側面に当接する外面側当接片よりも下側に長く延設されていて、
前記第1フレームは、前記流水面側当接片と前記側面パネルとをそれぞれ貫通する締結部材により前記側面パネルに取り付けられていることを特徴とする請求項4または5記載の合成樹脂製水路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製水路に関する。より詳細には、合成樹脂製の筒状体を筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本並列させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成されたパネルを用いて形成された合成樹脂製水路に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン等に代表される合成樹脂により形成された角型U字溝の構成としては、非特許文献1(http://www.kuripoly.jp/product/kurimoto_kaku_flume/)に開示されているような構成が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】クリモトポリマー株式会社、”ポリエチレン角型水路 クリモト角型フリューム-特長|クリモトポリマー株式会社”、 [online]、クマモトポリマー株式会社、[令和1年9月2日検索]、インターネット<(http://www.kuripoly.jp/product/kurimoto_kaku_flume/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されている合成樹脂製角型U字溝は、酸やアルカリに強いポリエチレン樹脂によって軽量に形成されている。このため山間部や改修対象の既設水路等への運搬や設置が容易であって、酸やアルカリに対する耐久性が高く広く好適に用いられている。しかしながら、軽量化の影響により底面や側面の強度が不足することがあり、特に側面の高さが増すと、土圧により側面の高さ方向における中間部分が内側(流路側)に倒れ込んでしまうことがあるといった課題を有している。
【0005】
また、上述の合成樹脂製角型U字溝は金型により製造されているので、合成樹脂製角型U字溝はいわゆる規格物としての提供に限定されてしまう。このため、流水方向の長さ(施工延長)や排水路の幅および深さを調整する際には、製造金型を変更しなければならず、水路設計の自由度や改修可能な水路に制約が生じてしまうといった課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、側面の高さが増したとしても、側面が土圧によって内側(流路側)に倒れ込んでしまうことがない高強度な合成樹脂製水路の提供を第1の目的としている。また、製造時には金型が不要であって、流水方向における長さや水路の幅および深さの調整が容易な合成樹脂製水路の提供を第2の目的としている。
【0007】
すなわち、本願発明は、合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、前記底面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、前記筒状体が前記流水方向に沿って配設された前記底面パネルおよび前記側面パネルの少なくとも一方には、原地盤の水を前記筒状体の内部空間に取り込む取水部が形成されていて、前記流水方向に沿って配設された前記筒状体の前記内部空間が第2の排水路に形成されていることを特徴とする合成樹脂製水路である。
【0008】
また、合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、少なくとも一方の前記側面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、前記筒状体が前記流水方向に沿って配設された前記底面パネルおよび前記側面パネルの少なくとも一方には、原地盤の水を前記筒状体の内部空間に取り込む取水部が形成されていて、前記流水方向に沿って配設された前記筒状体の前記内部空間が第2の排水路に形成されていることを特徴とする合成樹脂製水路である。
【0009】
また、合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、前記底面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、少なくとも一方の前記側面パネルは、前記筒状体の前記延伸方向が流水方向に沿っていて、前記筒状体が前記流水方向に沿って配設された前記底面パネルおよび前記側面パネルの少なくとも一方には、原地盤の水を前記筒状体の内部空間に取り込む取水部が形成されていて、前記流水方向に沿って配設された前記筒状体の前記内部空間が第2の排水路に形成されていることを特徴とする合成樹脂製水路である。
【0010】
これらにより、底面パネルおよび側面パネルが複数本の筒状体を一体化させることにより形成されているので、底面パネルおよび側面パネルの機械的強度を向上させることができるので、軽量な合成樹脂製の水路でありながらも、側面パネルの高さが増したとしても、側面パネルが内側(流路側)に倒れ込むことがない。また、製造時に金型が不要になり、底面パネルおよび側面パネルの流水方向における長さや水路の幅および深さを任意に設定することができる。また、底面パネルおよび側面パネルを構成する筒状体の内部空間を利用した暗渠機能が加わり、排水性能をさらに向上させることができる。
【0011】
また、前記側面パネルの上端のそれぞれには流水方向に沿って配設される第1フレームと、前記第1フレームどうしを連結する第2フレームとからなる補剛材を備えていることが好ましい。
【0012】
これにより、側面パネルの倒れ込みをさらに確実に防止することができる。
【0013】
また、合成樹脂製の筒状体を前記筒状体の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ、隣接する前記筒状体どうしを溶着することにより形成された底面パネルおよび側面パネルを用い、前記底面パネルの幅方向両端部に前記側面パネルをそれぞれ起立させた状態にすると共に、前記底面パネルと前記側面パネルとの当接部どうしが溶着され、倒コの字型に形成されており、前記側面パネルの上端のそれぞれには流水方向に沿って配設される第1フレームと、前記第1フレームどうしを連結する第2フレームとからなる補剛材を備えていることを特徴とする合成樹脂製水路の発明もある。
【0014】
これにより、底面パネルおよび側面パネルが複数本の筒状体を一体化させることにより形成されているので、底面パネルおよび側面パネルの機械的強度を向上させることができる。また、側面パネルの上端どうしが補剛材により連結されているので、軽量な合成樹脂製の水路でありながらも、側面パネルの高さが増したとしても、側面パネルが内側(流路側)に倒れ込むことがない。また、製造時に金型が不要になり、底面パネルおよび側面パネルの流水方向における長さや水路の幅および深さを任意に設定することができる。
【0015】
また、前記第1フレームはコの字形状に形成され前記側面パネルを厚さ方向に挟み込むようにして前記側面パネルに装着されていると共に、前記側面パネルの流水面側に当接する流水面側当接片が前記側面パネルの外側面に当接する外面側当接片よりも下側に長く延設されていて、前記第1フレームは、前記流水面側当接片と前記側面パネルとをそれぞれ貫通する締結部材により前記側面パネルに取り付けられていることが好ましい。
【0016】
これにより、補剛材による側面パネルの補強を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のように複数本の筒状体を一体化させることにより底面パネルおよび側面パネルを形成することにより、底面パネルおよび側面パネルの機械的強度を向上させることができる。また、軽量な合成樹脂製水路でありながらも、従来技術においては土圧により側面パネルが倒れ込んでしまうような高さであっても、当初の倒コの字形状を維持することができ、内側(流路側)への側面パネルの倒れ込みによる排水性能の低下を防止することができる。
【0018】
また、製品を製造するための金型が不要になり、底面パネルおよび側面パネルの流水方向における長さ寸法や水路の幅および深さ寸法を任意に設定することができるため、水路設計の自由度が大幅に向上する。また、改修対象となる水路の数も大幅に増加すると共に、施工場所において合成樹脂製水路の切断処理が不要になり、流水方向における水路どうしの連結部の加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】合成樹脂製の筒状体を連続させてなるパネルの斜視図である。
図2図1に示すパネルを組み立てて形成した第1実施形態における合成樹脂製水路の斜視図である。
図3図2に示す合成樹脂製水路に補剛材を取り付けた状態を示す斜視図である。
図4図3中のIV-IV線における断面図である。
図5】第2実施形態における合成樹脂製水路の斜視図である。
図6】第3実施形態における合成樹脂製水路の斜視図である。
図7】第4実施形態における合成樹脂製水路の斜視図である。
図8】第5実施形態における合成樹脂製水路の斜視図である。
図9】第6実施形態における合成樹脂製水路の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる合成樹脂製水路の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態における合成樹脂製水路100は、図1図3に示すように、本体部50と本体部50に装着した補剛材60とを有している。本体部50は、底面パネル30と底面パネル30の幅方向両端部に取り付けられた側面パネル40とにより倒コの字型(略U字型)に形成されている。底面パネル30と側面パネル40は、いずれも複数本の筒状体10を筒状体10の延伸方向と直交する方向に複数本連続させ(並列させ)、隣接する筒状体10を溶着させてなるパネル20からなっている。
【0022】
本実施形態における筒状体10は、ポリエチレン樹脂に代表される合成樹脂により形成され、図1に示すような長方形断面を有する形状に形成されている。筒状体10は、隣接する筒状体10の短辺どうしを密着させた状態で溶接機により溶着させることによって一体化されることでパネル20を形成している。なお、本実施形態においては筒状体10として図1に示すような長方形断面を有する形態について説明しているが、筒状体10の断面形状は長方形断面に限定されるものではなく、公知の断面形状に形成された形態を採用することもできる。
【0023】
複数本の筒状体10を互いに溶接して任意の大きさのパネル20を適宜枚数形成した後、それぞれのパネル20を底面パネル30および側面パネル40とする。そして図2に示すように、底面パネル30の幅方向両端部に側面パネル40を当接させると共に底面パネル30の幅方向両端部から上側に向けて起立させた状態にして、底面パネル30と側面パネル40の当接部を溶接機によって溶着し、倒コの字型をなす本体部50が形成される。図2からも明らかなとおり、本実施形態における底面パネル30と側面パネル40における筒状体10は、内部空間12を本体部50の流水方向に対して直交方向に向けて開口させた配置となっている。
【0024】
このような形態を採用することにより、本体部50の意匠的効果を向上させることができる。また、本実施形態における側面パネル40のように筒状体10の内部空間12を高さ方向に向けて開口させた配置を採用することにより、土圧に対する側面パネル40の耐力を高めることができる点においても好都合である。さらに、本体部50の流水方向(図3中の矢印Aの方向)における長さ寸法や側面パネル40の深さ寸法も細かく設定することができる点において好都合である。
【0025】
また、底面パネル30と側面パネル40における筒状体10の短辺を流水方向においてすべて貫通させる図示しない連通孔を設けると共に、底面パネル30および側面パネル40における筒状体10の外側(原地盤側)の長辺を板厚方向に貫通する図示しない水取込部を設けることもできる。これらによれば、筒状体10の内部空間12を第2排水路として用いることができ、本体部50の外側の水(原地盤の水)を排出することが可能になる。
【0026】
また、図3に示すように、本実施形態における合成樹脂製水路100の本体部50の上端部には補剛材60が取り付けられている。上述のように内部空間12が長方形断面に形成された複数本の筒状体10を互いに溶着させてなる側面パネル40の形態を採用したことにより、従来技術に比較して本体部50(特に側面パネル40)の土圧への耐力を大幅に向上させているが、補剛材60を取り付けることにより更なる土圧への耐力向上が期待できる。
【0027】
本実施形態における補剛材60は、図4に示すように側面パネル40の上端部42に(流水方向に沿って)配設される第1フレーム62と、第1フレーム62どうしを連結する第2フレーム64とを備えている。第1フレームは、側面パネル40の上端部42に載置される載置部62Aと、流水面側当接片62Bおよび外面側当接片62Cとを有する略コの字形状に形成されている。流水面側当接片62Bは、載置部62Aの側面パネル40の流水面(内側面)の位置において下側(底面パネル30の側)に向けて曲折されることにより形成され、側面パネル40の流水面に当接している。外面側当接片62Cは、載置部62Aの側面パネル40の外側面の位置において下側(底面パネル30の側)に向けて曲折されることにより形成され、側面パネル40の外側面に当接している。このようにして形成された第1フレーム62は、側面パネル40を板厚方向に挟み込むようにして側面パネル40に装着されている。
【0028】
第2フレーム64は、第1フレーム62の流水面側当接片62Bに両端部がそれぞれ当接する突張部64Aと、第1フレーム62の載置部62Aに固定される固定部64Bを有している。固定部64Bには、側面パネル40の筒状体10の内部空間12の位置に合わせて載置部62Aの下側面に溶接等によって取り付けられたナット66に締結可能な図示しないボルト孔が形成されていて、ボルト孔にボルト70を挿入し上記のナット66に螺合させることで第2フレーム64を第1フレーム62に取り付けている。
【0029】
このようにして形成された補剛材60の本体部50への取り付け構造について説明する。第1フレーム62の流水面側当接片62Bは、外面側当接片62Cよりも下側(底面パネル30の側)に長く延設されている。また、流水面側当接片62Bには、外面側当接片62Cの下端部位置よりも下側(底面パネル30の側)の位置に流水面側当接片62Bの板厚方向に貫通するボルト用貫通孔68が穿設されている。このボルト用貫通孔68と同じ高さ位置には側面パネル40の内側(流路側)と外側とを貫通する貫通孔44が穿設されていて、ボルト用貫通孔68と貫通孔44とにボルト80(締結部材)を挿通させ、側面パネル40の外側面においてナット69(締結部材)を用いて締結することにより本体部50と補剛材60とが一体化されている。
【0030】
本体部50に補剛材60を取り付けした後、必要に応じて本体部50の流水面(底面パネル30および側面パネル40の内側面)における溶接部分の平滑化処理を行うことで本実施形態における合成樹脂製水路100を得ることができる。このようにして形成された合成樹脂製水路100を流水方向(図3中の矢印Aの方向)に適宜連続させることにより排水路の新設または既設排水路の改修をすることができる。既設排水路の改修の際には、既設排水路の流路に合成樹脂製水路100を適宜配設するだけで良い。
【0031】
本実施形態における合成樹脂製水路100によれば、ポリエチレン樹脂に代表される合成樹脂製の複数の筒状体10により底面パネル30および側面パネル40が形成されているから、軽量かつ高剛性であると共に耐酸性や耐アルカリ性に優れているため、長期にわたって初期性能を維持した状態で供用することができる点において好都合である。また、合成樹脂製水路100の長さ、幅および深さを容易に変更することができるため、水路設計の自由度や改修対象にすることができる既設水路の数が大幅に向上する。さらに、工場で生産した所定長さの合成樹脂製水路100を施工現場に運搬し、施工現場において流水方向において隣接する合成樹脂製水路100どうしを溶接して連結するだけで敷設が完了するため、施工性にも優れている。
【0032】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態における合成樹脂製水路100の斜視図である。本実施形態においては第1実施形態と同様の構成部分については、明細書および図5に第1実施形態と同符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略している。
【0033】
本実施形態における底面パネル30および側面パネル40はいずれも筒状体10の内部空間12が流水方向に向けて開口した状態になっている(筒状体10の延伸方向が流水方向に沿っている)形態が特徴的である。本実施形態における底面パネル30および側面パネル40には、外側面(原地盤側の面)に取水部14が配設されていて、取水部14により筒状体10の内部空間12が原地盤と連通させることができる。また、上述のとおり、内部空間12は流水方向(図5中の矢印Aの方向)において連続しているため、内部空間12を第2の排水路(暗渠)として機能させることができる点において好都合である。また、流水方向における長さ寸法の調整は、第1実施形態よりもさらに細かく調整することができる点において好都合である。
【0034】
本実施形態における側面パネル40への補剛材60の取り付けは、側面パネル40の上端部の一部(第1実施形態で説明した第1フレーム62のナット66の位置に対応する部分)をくりぬいて、第1実施形態と同様にして第1フレーム62を側面パネル40に取り付ければよい。第1フレーム62への第2フレーム64の取り付け方法は第1実施形態と同様にして行うことができる。
【0035】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態における合成樹脂製水路100の斜視図である。本実施形態においては第1,第2実施形態と同様の構成部分については、明細書および図6に第1,第2実施形態と同符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略している。
【0036】
本実施形態における合成樹脂製水路100は、底面パネル30における筒状体10の内部空間12を流水方向(図6中の矢印Aの方向)に向けて開口させ(筒状体10の延伸方向を流水方向に沿わせ)、側面パネル40における筒状体10の内部空間12を高さ方向に開口させている形態が特徴的である。底面パネル30の外側面に第2実施形態と同様に取水部(図示はせず)を設けることにより、底面パネル30の筒状体10の内部空間12を第2の排水路として利用することができる点において好都合である。また、側面パネル40の土圧に対する耐力を第1実施形態と同程度にすることができる。
【0037】
(第4実施形態)
図7は第4実施形態における合成樹脂製水路100の斜視図である。本実施形態においては第1~第3実施形態と同様の構成部分については、明細書および図7に第1~第3実施形態と同符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略している。
【0038】
本実施形態における合成樹脂製水路100は、底面パネル30における筒状体10の内部空間12を流水方向(図7中の矢印Aの方向)と直交方向に開口させ、側面パネル40における筒状体10の内部空間12を流水方向に向けて開口させた(筒状体10の延伸方向を流水方向に沿わせた)形態が特徴的である。側面パネル40の外側面に取水部14を適宜間隔で設けることにより、側面パネル40の筒状体10の内部空間12を第2の排水路として利用することができる点において好都合である。
【0039】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態における合成樹脂製水路100の斜視図である。本実施形態においては第1~第4実施形態と同様の構成部分については、明細書および図8に第1~第4実施形態と同符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略している。
【0040】
本実施形態における合成樹脂製水路100は、底面パネル30および側面パネル40の流水方向(図8中の矢印Aの方向)の両端部における筒状体10の内部空間12をそれぞれ流水方向と直交する方向に開口させていると共に、底面パネル30および側面パネル40の流水方向の中間部分における筒状体10の内部空間12を流水方向に向けて開口させた(筒状体10の延伸方向を流水方向に沿わせた)形態としている点が特徴的である。
【0041】
また、底面パネル30と側面パネル40とを一体化した際の角度が直角になるように、底面パネル30の両端部および側面パネル40の下端部はいずれもスラッシュカットされ、スラッシュカット面どうしを当接させた状態で溶接している。このような底面パネル30および側面パネル40の形態によれば、流水方向における合成樹脂製水路100どうしの連結部分における溶接作業が容易になる点で好都合である。
【0042】
(第6実施形態)
図9は第6実施形態における合成樹脂製水路100の斜視図である。本実施形態においては第1~第5実施形態と同様の構成部分については、明細書および図9に第1~第5実施形態と同符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略している。
【0043】
本実施形態における合成樹脂製水路100は、底面パネル30における筒状体10の内部空間12を流水方向(図9中の矢印Aの方向)に向けて開口させ(筒状体10の延伸方向を流水方向に沿わせ)、一方の側面パネル40における筒状体10の内部空間12を流水方向に向けて開口させ、他方の側面パネル40における筒状体10の内部空間12を高さ方向に開口させた形態としている点が特徴的である。
【0044】
底面パネル30および一方の側面パネル40の外側面に取水部(図示はせず)を適宜間隔で配設することにより、底面パネル30と一方の側面パネル40の筒状体10の内部空間12を第2の排水路として使用することができる点で好都合である。また、他方の側面パネル40の形態によれば、土圧への耐力を向上させることができると共に流水方向における合成樹脂製水路100どうしの連結部分における溶接作業が容易になる点においても好都合である。
【0045】
以上に本発明について実施形態に基づいて説明をしたが、本発明の技術的範囲は以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば以上の実施形態においては、補剛材60を本体部50の流水方向の全範囲にわたって装着した形態について説明しているが、本体部50の流水方向における所定長さに形成した補剛材60を複数箇所に連続または所要間隔をあけた状態で配設する形態を採用してもよい。また、補剛材60の配設は省略することもできる。
【0046】
また、以上の実施形態においては、底面パネル30および側面パネル40の外側面に取水部14を配設した形態について説明しているが、取水部14の配設は省略することもできる。
【0047】
また、以上の実施形態においては、施工現場において流水方向に隣接する合成樹脂製水路100どうしの連結を溶接により行っているが、接着剤や両面テープを用いて連結させる形態を採用することもできる。
【0048】
そして、以上に示した実施形態において説明した各種の変形例を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0049】
10 筒状体,
12 内部空間,14 取水部,
20 パネル,
30 底面パネル,
40 側面パネル,
42 上端部,44 貫通孔,
50 本体部,
60 補剛材,
62 第1フレーム,
62A 載置部,62B 流水面側当接片,62C 外面側当接片,
64 第2フレーム,
64A 突張部,64B 固定部,
66 ナット,68 ボルト用貫通孔,69 ナット,
70 ボルト,80 ボルト,
100 合成樹脂製水路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9