(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】水道メーター
(51)【国際特許分類】
G01F 1/075 20060101AFI20220119BHJP
G01F 15/075 20060101ALI20220119BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20220119BHJP
【FI】
G01F1/075
G01F15/075
G01F1/00 T
(21)【出願番号】P 2019200851
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】598050432
【氏名又は名称】柏原計器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【氏名又は名称】谷 昌樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】三浦 幸治
(72)【発明者】
【氏名】小川 義典
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-248363(JP,A)
【文献】特開2008-224320(JP,A)
【文献】特開2008-268081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用した水量を測定して表示する水道メーターであって、
前記使用した水量を表示する表示盤を有する銘板と、
当該水道メーター内の流路を流れる水量に応じて回転する羽根車と、
前記銘板上に配置され、前記羽根車と連動して回転するパイロットと、
前記パイロットの裏面に対向するように固設され、N極とS極とを有する磁石と、
前記パイロットを介して、前記磁石によって形成される磁場を検知する磁気センサー手段とを備え、
前記パイロットのうち一部領域には、前記磁石から発生される磁界を遮蔽する遮蔽部を有することを特徴とする、水道メーター。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記パイロットの裏面に設けられ、当該裏面のうち略半分の領域であることを特徴とする、請求項1に記載の水道メーター。
【請求項3】
前記遮蔽部は、所定の中心角で形成された扇形である複数のシールドシートで構成され、
前記パイロットのうち、前記遮蔽部と、当該遮蔽部以外の非遮蔽部とは、交互に形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の水道メーター。
【請求項4】
前記磁石は、前記パイロットが回転する軸を中心に、N極とS極とが交互に配置されることによって構成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水道メーター。
【請求項5】
前記磁石は、前記銘板中に埋設されるように固設されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の水道メーター。
【請求項6】
前記磁気センサー手段は、前記磁石によって形成される磁場を検知して、当該検知に応じたパルス信号を出力する2つの磁気センサーにより構成されており、
前記2つの磁気センサーは、当該2つの磁気センサーが出力するパルス信号が所定の位相差を有するように配置されることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の水道メーター。
【請求項7】
前記磁石によって形成される磁場以外の外的磁場を検知する磁気妨害検知センサーを、さらに備えることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の水道メーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道メーターに関し、より特定的には、磁気センサーを利用した水道メーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水道メーター内の流路を流れる水量に応じて回転する羽根車の回転数に基づいて使用した水量を表示する水道メーターがある。水道メーターには、直読式や円読式のものがあり、いずれも表示盤には、羽根車の回転に連動するパイロット、使用した水量を表示するカウンタ、およびリットル針(1リットルおよび10リットル等)を備えている。
【0003】
近年は、電子式水道メーターが普及している。電子式水道メーターは、当該電子式水道メーター内の流路を流れる水量に応じて回転する羽根車と、当該羽根車の回転数を検出する検出器と、当該検出器で検出されたデジタル(パルス)信号に基づいて使用した水量を算出する制御部とで構成されており、非常に高価なものとして知られている。さらに、電子式水道メーターは、当該電子式水道メーター内の流路を流れる水量を正確に高精度で算出できるため、これらの情報を外部のサーバー等に送信し、使用した水量に基づいて利用者の生活リズムを管理および監視することにも利用されている。
【0004】
しかし、電子式水道メーターは、既存の直読式や円読式の水道メーターとは構造的に大きく異なり、新たにデジタル化に伴う専用の電子部品を用いなければならず、広い範囲において導入するためには、非常に高コストとなってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、既存の直読式や円読式の水道メーターの構造を受け継ぎつつ、水道メーター内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得することが可能なハイブリッド水道メーターに関する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
具体的には、特許文献1に記載のハイブリッド水道メーターは、リットル針に2つの磁石を配置し、当該リットル針の上方に2つの磁気センサーを備えている。当該リットル針に配置される磁石と磁気センサーとの位置関係によって、当該リットル針の回転に伴って、2つの磁気センサーは、それぞれ90°位相がずれた信号を出力するような構成となっている。その結果、水道メーター内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得し、使用した水量を把握でき、これらの情報を外部のサーバー等に送信することも可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド水道メーターでは、リットル針の回転に伴って、水道メーター内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得している。具体的には、リットル針が1回転すると10リットルであるため、当該デジタル(パルス)信号では、5リットル単位でしか使用した水量を把握できない。一方で、より細かい単位で使用した水量を把握できることが望まれている。
【0009】
それ故に、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の1つは、簡単な構造かつ低コストで、水道メーター内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得することによって、より細かい単位で使用した水量を把握することが可能な水道メーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。なお、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために図面に示されている符号等を付記する場合があるが、本発明の各構成要素は、図面に示されているものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0011】
本発明の一局面に係る水道メーターは、使用した水量を測定して表示する水道メーターであって、前記使用した水量を表示する表示盤を有する銘板と、当該水道メーター内の流路を流れる水量に応じて回転する羽根車と、前記銘板上に配置され、前記羽根車と連動して回転するパイロットと、前記パイロットの裏面に対向するように固設され、N極とS極とを有する磁石と、前記パイロットを介して、前記磁石によって形成される磁場を検知する磁気センサー手段とを備え、前記パイロットのうち一部領域には、前記磁石から発生される磁界を遮蔽する遮蔽部を有することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、前記パイロットの裏面に対向するように固設される磁石と、当該磁石によって形成される磁場を検知する磁気センサー手段を備えるため、簡単な構造かつ低コストで、水道メーター内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得し、より細かい単位で使用した水量を把握することが可能となる。
【0012】
また、好ましくは、前記遮蔽部は、前記パイロットの裏面に設けられ、当該裏面のうち略半分の領域であることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、前記パイロットの回転に応じて変化する磁場を正確に検知するため、より細かい単位で使用した水量を把握することが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、前記遮蔽部は、所定の中心角で形成された扇形である複数のシールドシートで構成され、前記パイロットのうち、前記遮蔽部と、当該遮蔽部以外の非遮蔽部とは、交互に形成されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、前記パイロットの回転に応じて変化する磁場を正確に、かつより細かい単位で検知することができる。
【0014】
また、好ましくは、前記磁石は、前記パイロットが回転する軸を中心に、N極とS極とが交互に配置されることによって構成されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、前記パイロットの回転に応じて変化する磁場を正確に、かつより細かい単位で検知することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記磁石は、前記銘板中に埋設されるように固設されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、前記磁石が埋設されるように固設されるため、前記パイロットの回転が阻害され難く、安定して、前記パイロットの回転に応じて変化する磁場を正確に、かつより細かい単位で検知することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記磁気センサー手段は、前記磁石によって形成される磁場を検知して、当該検知に応じたパルス信号を出力する2つの磁気センサーにより構成されており、前記2つの磁気センサーは、当該2つの磁気センサーが出力するパルス信号が所定の位相差を有するように配置されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、前記パイロットの正回転および逆回転を検知することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記磁石によって形成される磁場以外の外的磁場を検知する磁気妨害検知センサーを、さらに備えることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る水道メーターは、外的磁場の影響がないように管理し、簡単な構造かつ低コストで、確実に、より細かい単位で使用した水量を把握することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、簡単な構造かつ低コストで、水道メーター内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得することによって、より細かい単位で使用した水量を把握することが可能な水道メーターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水道メーター100を示す外観概略図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る水道メーター100における第1の磁気センサー181(第2の磁気センサー182)、パイロット132、および磁石190の位置関係を示す模式図である。
【
図2B】パイロット132および磁石190の詳細を示す図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る水道メーター100において、磁気センサー手段180を構成する第1の磁気センサー181と第2の磁気センサー182との位置関係を示す模式図である。
【
図3B】第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力されるパルス信号の様子を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る水道メーター100における第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって出力されるパルス信号に基づいて、使用した水の積算量を算出する様子を示す図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る水道メーター100の全体的な処理の流れであるメイン処理フロー500を示すフローチャートである。
【
図5B】タイマ処理ルーチン540の詳細を示すフローチャートである。
【
図5C】通信処理ルーチン560の詳細を示すフローチャートである。
【
図5D】受信処理ルーチン561の詳細を示すフローチャートである。
【
図5E】送信処理ルーチン564の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る水道メーター100に用いられる他の磁石の構成例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る水道メーター100に用いられる他のパイロットの構成例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る水道メーター100における磁石190が銘板130に埋設される様子を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る水道メーター100において磁気妨害検知センサー183をさらに備える様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る水道メーター100を示す外観概略図である。
図1において、水道メーター100は、筐体110と、管路(ノズル)120と、銘板130と、ガラス140と、蓋150と、リングカバー160と、磁気センサー保持部170と、磁気センサー手段180とを備える。
【0022】
筐体110は、管路(ノズル)120を流れる水量に応じて回転する羽根車(図示せず)を内部に備えている。
【0023】
銘板130は、使用した水量を表示する表示盤を有しており、具体的には、カウンタ131と、パイロット132と、1リットル針133と、10リットル針134とを含む。パイロット132は、銘板130上に配置されており、筐体110内部の羽根車と連動して回転する。
【0024】
通常、パイロット132は、水漏れなどの少量の水の流れを検知するものであって、表面は、単なる円錐や円錐台形の形状に留まらず、わずかな動きも視認し易くするために、8つの扇形を組み合わせて8面体を構成するように形成されている。パイロット132と羽根車とは、直接接続して連動させても構わないし、間にギア等を設けて連動させるようにしていても構わない。
【0025】
ここで、銘板130における1リットル針133は、使用した水量を1リットル単位で表示し(当該針が1周すると10リットル)、10リットル針134は、使用した水量を10リットル単位で表示し(当該針が1周すると100リットル)、カウンタ131は、使用した水の積算量を表示する。つまり、銘板130は、使用した水量を表示する表示盤である。
【0026】
ガラス140は、上述した銘板130を覆うように配置されており、さらに、それらを保護するために開閉可能な蓋150が設けられている。
【0027】
リングカバー160は、上述した筐体110の上部に配置され、銘板130およびガラス140の周囲を保護するように取り付けられており、さらに、ヒンジ機構を介して蓋150と連結されている。
【0028】
磁気センサー保持部170は、リングカバー160に設けられており、後述する磁気センサー手段180を保持する。具体的には、磁気センサー保持部170は、磁気センサー手段180がガラス140を介してパイロット132の上方に位置するように構成されている。
【0029】
なお、磁気センサー手段180は、第1の磁気センサー181と第2の磁気センサー182とを含み、パイロット132の下方に配置される磁石(図示せず)によって形成される磁場を、当該パイロット132を介して検知する。例えば、第1の磁気センサー181と第2の磁気センサー182は、MRセンサーやホールセンサーで構成される。
【0030】
このように、リングカバー160は、筐体110および蓋150と連結して固定するとともに、磁気センサー保持部170を設けることによって磁気センサー手段180をパイロット132および磁石(図示せず)に対して適切な位置に配置して固定するように構成されている。
【0031】
次に、磁気センサー手段180、パイロット132、および磁石の位置関係について詳細に説明する。
図2Aは、本発明の一実施形態に係る水道メーター100における第1の磁気センサー181(第2の磁気センサー182)、パイロット132、および磁石190の位置関係を示す模式図であり、
図2Bは、パイロット132および磁石190の詳細を示す図である。
【0032】
第1の磁気センサー181(第2の磁気センサー182)は、ガラス140を介してパイロット132の上方に位置している。磁石190は、N極とS極とを有する2極の磁石であって、パイロット132の裏面に対向するように固設されている。
【0033】
さらに、パイロット132のうち一部領域には、磁石190から発生される磁界を遮蔽する遮蔽部132Aを有しており、例えば、パイロット132の裏面のうち略半分を磁界を遮蔽する機能を有するシールドシートを備える構成としている。
【0034】
筐体110内部において流れる水量に応じて回転する羽根車に連動してパイロット132が回転するが、当該パイロット132の遮蔽部132Aにより磁石190から発生される磁界を遮断する。つまり、第1の磁気センサー181(第2の磁気センサー182)は、磁石190から発生される磁界を検知するが、パイロット132の遮蔽部132Aにより、当該パイロット132の回転に応じて当該磁界の変化を検知する。
【0035】
より具体的には、第1の磁気センサー181(第2の磁気センサー182)は、パイロット132を介して磁石190によって形成される磁場を検知するが、パイロット132の回転に基づく当該磁界の変化を検知し、当該検知に応じたパルス信号を出力する。そして、マイクロコンピューターを主とする処理回路で構成される演算手段(図示せず)は、出力されたパルス信号に基づいて、パイロット132の回転数(1回転未満を含む)を把握し、使用した水量を算出する。
【0036】
さらに、磁気センサー手段180は、第1の磁気センサー181と第2の磁気センサー182とを含んでいることから、パイロット132の正回転と逆回転とを判別できるように構成されている。
【0037】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る水道メーター100において、磁気センサー手段180を構成する第1の磁気センサー181と第2の磁気センサー182との位置関係を示す模式図であり、
図3Bは、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力されるパルス信号の様子を示す図である。
図3Aに示すように、パイロット132の回転方向に沿って、ずらして第1の磁気センサー181と第2の磁気センサー182とを配置しておけば、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力される各パルス信号は、所定の位相差を有するようになり、パイロット132の正回転および逆回転を把握することができる。典型的には、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力される各パルス信号が、90°の位相差を有するように、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182が配置されると、より明確にパイロット132の正回転および逆回転を把握することができる。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態に係る水道メーター100における第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって出力されるパルス信号に基づいて、使用した水の積算量を算出する様子を示す図である。
【0039】
第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182の出力は、マイクロコンピューターを主とする処理回路で構成された演算手段に入力される。例えば、(a)のように、第1の磁気センサー181から出力されたパルス信号の立ち上がりエッジと立ち下りエッジとの間に、第2の磁気センサー182から出力されたパルス信号の立ち上がりエッジ「ア」を検出すると、メーターが正回転していると判断し、第2の磁気センサー182の立ち下がりエッジ「イ」で流量の加算をする。
【0040】
一方、(b)のように、第1の磁気センサー181から出力されたパルス信号の立ち上がりエッジと立ち下りエッジとの間に、第2の磁気センサー182から出力されたパルス信号の立ち下がりエッジ「ウ」を検出すると、メーターが逆回転していると判断し、第2の磁気センサー182の立ち上がりエッジ「エ」で流量の減算をする。
【0041】
このように流量の加減算を行い、水の積算量を算出することにより、1リットル針133および10リットル針134等で示される積算量と、デジタル変換した積算量とが同じ値を示すことができる。当該積算量は、銘板130における表示盤に表示される(例えば、カウンタ131)とともに、後述するように通信手段を用いて外部端末に送信される。
【0042】
次に、水道メーター100において使用された水量を測定し、当該第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力される各パルス信号と、当該パルス信号に基づいて算出された使用した水量を通知する、全体的な処理の流れについて説明する。
【0043】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る水道メーター100の全体的な処理の流れであるメイン処理フロー500を示すフローチャートである。
図5Aにおいて、メイン処理フロー500は、初期設定510、ループ処理520、タイマ割り込み530、タイマ処理ルーチン540、通信割り込み550、および通信処理ルーチン560を含む。なお、
図5Bは、タイマ処理ルーチン540の詳細を示すフローチャートであり、
図5Cは、通信処理ルーチン560の詳細を示すフローチャートである。
【0044】
水道メーター100は、演算手段が起動されると、先ず、メイン処理フロー500の初期設定510において、積算データをクリアし、識別用データをメモリから作業エリアへ読み込ませる。そして、マイクロコンピューターのタイマから年月日および日時を読み込んで処理を開始する。
【0045】
ここで、水道を使用すると、水道メーター100の筐体110内部に備えられている羽根車が回転し、当該羽根車の回転と連動してパイロット132が回転する。この際、パイロット132の回転に応じて第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182が、
図4に示したようにパルス信号を出力する。
【0046】
また、メイン処理フロー500では、ループ処理520により所定時間毎にタイマ割り込みを発生させて(ステップ530のYes)、タイマ処理ルーチン540を繰り返し実行している。一方、タイマ割り込みが発生しない場合(ステップ530のNo)には、タイマ処理ルーチン540をスキップして、通信割り込み550を実行する。
【0047】
タイマ処理ルーチン540では、
図5Bに示すように、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力されるパルス信号に基づいて(ステップ541)、羽根車が回転中かどうか(ステップ542)、羽根車が回転中であれば(ステップ542のYes)、正回転かどうか(ステップ543)を判定する。そして、羽根車が正回転の場合(ステップ543のYes)は、1パルス当たりの流量を加算し(ステップ544)、逆回転の場合(ステップ543のNo)は、1パルス当たりの流量を減算する(ステップ545)。正回転か逆回転かは、上述したように、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182から出力されるパルス信号の位相差に基づいて判定する。
【0048】
このように、加減算した値を表示盤に表示して(ステップ546)、メイン処理フロー500へリターンし(ステップ547)、次の通信割り込み550を実行する。
【0049】
一方、羽根車が回転中でなければ(ステップ542のNo)、メイン処理フロー500へそのままリターンし(ステップ548)、次の通信割り込み550を実行する。
【0050】
タイマ処理ルーチン540が実行された後、メイン処理フロー500は、所定時間毎に、外部端末と通信を行うために通信割り込み550を実行する。典型的には、水道メーター100は、外部端末からの送信リクエストを受信した場合(ステップ550のYes)は、通信処理ルーチン560において、通信を確立した上で、使用した水量の情報等を含むデータを当該外部端末へ送信する。一方、外部端末からの送信リクエストを受信しない場合(ステップ550のNo)は、ループ処理520へ戻る。
【0051】
図5Cに示すように、通信処理ルーチン560では、受信処理ルーチン561、パリティエラーチェック562、電文エラーチェック563、および送信処理ルーチン564が実行される。なお、
図5Dは、受信処理ルーチン561の詳細を示すフローチャートであり、
図5Eは、送信処理ルーチン564の詳細を示すフローチャートである。
【0052】
図5Dに示すように、外部端末からの送信リクエストを受信した際に、水道メーター100が受信した受信データの識別符号が予めセットされたものと一致するかを判別する(ステップ5611)。識別符号と予めセットされたものとが一致(通信認証成功、ステップ5611のYes)すれば、呼び出し信号の有無や呼び出し信号の正当性を認証したことになるため、当該受信データを取得して、通信処理ルーチン560へリターンする(ステップ5612)。一方、識別符号と予めセットされたものとが一致(通信認証成功)しなければ(ステップ5611のNo)、当該受信データを破棄してスリープ状態に移行し、次のタイマ割り込みの発生に備える(ステップ5613)。
【0053】
上記通信認証が成功した場合には、受信データ本体のパリティエラーチェック562および電文エラーチェック563を実行し、いずれもエラーがない場合には(ステップ562のNo、かつステップ563のNo)、送信処理ルーチン564を実行する。一方、いずれかがエラーの場合(ステップ562のYes、またはステップ563のYes)、適切な受信データを受信できていないと判断して、そのままメイン処理フロー500にリターンし、ループ処理520へ戻る(ステップ566)。
【0054】
送信処理ルーチン564では、
図5Eに示すように、キャリアセンス5641において、複数のキャリアが送出されていないか、電波の状況を確認する。ここで、同一周波数のキャリアがなければ(ステップ5641のNo)、通信処理ルーチン560へ戻り(ステップ5642)、使用した水量の情報等を含むデータ(例えば、積算データ等)をキャリアに乗せて送信する。送信終了後(ステップ565)は、メイン処理フロー500のループ処理520へ戻ってステップ520~ステップ560を繰り返す。
【0055】
一方、同一周波数で通信中のキャリアがあれば(ステップ5641のYes)、一定時間経過してから(ステップ5643のNo)、繰り返しキャリアセンス5641を行って、使用した水量の情報等を含むデータ(例えば、積算データ等)をキャリアに乗せて送信する(ステップ5642)。また、繰り返しの時間がタイムアウトした場合(ステップ5643のYes)は、スリープ(省電力待機モード)状態に移行して、必要最小限の電力状態で次回の通信割り込みが発生するまで待機する(ステップ5644)。
【0056】
上述のように、パイロット132の回転に応じて積算量を加減算し、使用した水量の情報等を含むデータを外部端末に送信するため、より細かい単位で使用した水量を把握することができる。
【0057】
なお、水道メーター100と外部端末との通信手段については、例えば、無線通信機を用いた無線通信方式であっても構わないし、ピックアップコイルと共振コンデンサとで構成される共振回路を用いた誘導方式であっても構わない。また、水道メーター100から、使用した水量の情報等を含むデータを外部端末に通知できる手段であれば、これらに限定されるものでなく、他の手段であっても構わない。
【0058】
以上のように、本発明の一実施形態に係る水道メーター100によれば、パイロット132の裏面に対向するように固設される磁石190と、当該磁石190によって形成される磁場を検知する第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182を備えるため、簡単な構造かつ低コストで、水道メーター100内の流路を流れる水量に応じたデジタル(パルス)信号を取得し、より細かい単位で使用した水量を把握することができる。
【0059】
本実施形態では、例えば、管路(ノズル)120の口径が20mmであり、この場合、パイロット132が1回転すれば、流路を流れて使用した水量は、概ね145ccとなる。
図2Aおよび
図2Bに示したように、磁石190は、N極とS極とで構成される2極の磁石であり、パイロット132の裏面のうち、略半分をシールドシートによって構成されているため(遮蔽部132A)、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって出力されるパルス信号に基づけば、72.5cc単位で使用した水量を把握することができる。
【0060】
このように、パイロット132の回転に基づいて、72.5cc単位等、より細かい単位で使用した水量を把握すれば、少量の水漏れ管理のみならず、使用者の生活リズム(周期)も把握することができるようになる。例えば、一人暮らしの高齢者について、通常の生活リズムと異なるような水の使用状況または不使用状況を察知し、異常状態に早期に気付くこともできる。
【0061】
なお、本実施形態では、磁石190をN極とS極とで構成される2極の磁石とし、パイロット132の裏面のうち略半分を略遮蔽部132Aとしたが、これらに限定されるものではなく、より細かい単位で使用した水量を把握するために分解能を高くする磁石およびパイロットを用いても構わない。
【0062】
図6は、本発明の一実施形態に係る水道メーター100に用いられる他の磁石の構成例を示す図である。
図6において、(a)では、パイロットが回転する軸を中心に、N極、S極、N極、S極が配置され、4極の磁石を構成している。この場合、2極の磁石を用いた場合に比べると、パイロット132が1回転すれば、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって出力されるパルス信号も2倍検出される。つまり、36.25cc単位で使用した水量を把握することができる。同様に、(b)6極の磁石、(c)8極の磁石、(d)複数極の磁石にすれば、さらに、細かい単位で使用した水量を把握することができる。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態に係る水道メーター100に用いられる他のパイロットの構成例を示す図である。
図7において、パイロットの裏面のうち、遮蔽部と当該遮蔽部以外の非遮蔽部とは交互に形成されている。ここでは、8等分されており、遮蔽部と非遮蔽部とは、それぞれ1つずつが中心角45°の略扇形状に基づいて形成されているものであり、遮蔽部は、パイロットの裏面にシールドシートを取り付けることによって構成されている。この場合、パイロットの裏面のうち略半分を遮蔽部とした場合に比べると、パイロット132が1回転すれば、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって出力されるパルス信号も4倍検出される。つまり、18.125cc単位で使用した水量を把握することができる。
【0064】
また、シールドシートは、パイロットの外周よりも大きく、段差を設けるように形成されており、パイロットの裏面に対向するように配置された磁石から発生する磁界を、より確実に遮蔽するように構成されている。換言すれば、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって検知される磁界のオンオフの変化をより明確に検知できるようにしている。
【0065】
図8は、本発明の一実施形態に係る水道メーター100における磁石190が銘板130に埋設される様子を示す模式図である。
図8において、磁石190は、銘板130中に埋設されるように固設されている。上述したように、磁石190は、パイロット132の裏面に対向するように配置されるが、銘板130に取り付けられる。
【0066】
磁石190から発生する磁場について、パイロット132を介して第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182が検知する。より具体的には、パイロット132の回転に応じて、当該パイロット132の裏面に配置された遮蔽部が回転することによって、当該パイロット132を介して磁界の変化を検知する。
【0067】
ここで、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182は、パイロット132の回転に応じてわずかに変化する磁界を正確に検知する必要があり、仮に、磁石の取り付けが不安定であると、正確な検知ができない可能性がある。そのため、磁石190は、銘板130上に取り付けても良いが、ここでは、銘板130中に埋設されるように固設し、より安定して取り付けられている。磁石190は、必ずしも全部を銘板130中に埋設させる必要はなく、その一部を埋没させるようにしても構わないし、安定して取り付けられる構造であれば、その他の構造であっても構わない。
【0068】
さらに、磁石190を銘板130中に埋設されるように固設されていれば、パイロット132が回転する際に、引っ掛かったりする可能性も軽減される。
【0069】
また、本発明の一実施形態に係る水道メーター100は、磁界の変化を利用して使用した水量を測定しているところ、別の外部の磁界の影響を受けることによって、正確に、水量を測定できない可能性がある。
図9は、本発明の一実施形態に係る水道メーター100において磁気妨害検知センサー183をさらに備える様子を示す模式図である。
図9において、水道メーター100は、各種処理を制御するMCU(microcontroller unit)基板上に磁気妨害検知センサー183を備えている。
【0070】
磁気妨害検知センサー183は、磁石190によって形成される磁場とは別の外的磁場を検知する。その結果、第1の磁気センサー181および第2の磁気センサー182によって検出される磁界の変化に影響を及ぼすような場合、異常状態であると判断し、警告音を発したり、異常状態または緊急事態である旨を、例えば、管理センター等へ通知したりすればよい。
【0071】
外部端末にデータを送信するとしていたが、例えば、無線基地局を介して管理センター等のサーバーに送信されても構わない。そうすれば、管理センター等で一元管理が可能となり、緊急時があっても即時に早急に対応が可能となる。
【0072】
以上、本発明の各実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、水道メーター等に利用可能であって、特に、磁場の変化を検知するメーター等に有用である。
【符号の説明】
【0074】
100 水道メーター
110 筐体
120 管路(ノズル)
130 銘板(表示盤)
131 カウンタ
132 パイロット
132A 遮蔽部
133 1リットル針
134 10リットル針
140 ガラス
150 蓋
160 リングカバー
170 磁気センサー保持部
180 磁気センサー手段
181 第1の磁気センサー
182 第2の磁気センサー
183 磁気妨害検知センサー
190 磁石
500 メイン処理フロー
510 初期設定
520 ループ処理
530 タイマ割り込み
540 タイマ処理ルーチン
541~548 タイマ処理ルーチン540の各ステップ
550 通信割り込み
560 通信処理ルーチン
561 受信処理ルーチン
5611~5613 受信処理ルーチン561の各ステップ
562 パリティエラーチェック
563 電文エラーチェック
564 送信処理ルーチン
5641~5644 送信処理ルーチン564の各ステップ