(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】遺伝子検査方法および遺伝子検査キットならびに遺伝子検査装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20220119BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220119BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2019565606
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 CN2018090026
(87)【国際公開番号】W WO2018223973
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2019-08-19
(31)【優先権主張番号】201710429121.1
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519300596
【氏名又は名称】杭州遂真生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU LIFEREAL BIOTECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 440 Building C, No.525, Xixi Road, Xihu District Hangzhou, Zhejiang 310007, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】宋 倩
(72)【発明者】
【氏名】徐 文飛
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲きん▼
(72)【発明者】
【氏名】鄭 祥▲しょう▼
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105349530(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1767897(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104673625(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108796038(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12M 1/00
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子検査キットにおける遺伝子検査方法であって、
1つのキット内において複数の分離キャビティを設け、隣接する分離キャビティ同士の間をプランジャにより仕切りし、分離キャビティのそれぞれには溶解液、清浄液および反応液が収容されていることと、
サンプルを検査する際、各プランジャを付勢してプランジャのプランジャ穴を分離キャビティに位置合わせさせることにより、各分離キャビティを導通させることと、
続いて、検査対象サンプルが順に各分離キャビティを通過し、かつ順に溶解、清浄および反応を行うように、電磁制御方式によりキットにおける磁性ビーズを制御することと、
最後に、外部から反応液中の遺伝子について光学的検査を行うことと、
を含み、
前記遺伝子検査キットは、頂部にフリップカバー(1)を有するキット本体(2)を含み、キット本体(2)内には上から下へそれぞれプランジャ(3)により仕切りされている溶解領域(4)および洗浄領域(5)が設けられており、洗浄領域(5)の下方には反応領域(6)が設けられており、洗浄領域(5)の数は1つまたは複数であり、前記プランジャ(3)は水平に設けられており、プランジャ(3)には垂直方向のプランジャ穴(301)が設けられており、前記溶解領域(4)には溶解液が収容され、溶解液内にはプランジャ穴(301)を通過可能な磁性ビーズが設けられており、前記洗浄領域(5)には洗浄液が収容され、前記反応領域(6)には反応液が収容され、
前記プランジャ(3)の一端にはばね(7)が設けられ、他端にはキット本体(2)の外に突き出した突出ロッド(8)が設けられており、前記突出ロッド(8)の外端の下側には斜面が設けられている、
ことを特徴とする遺伝子検査方法。
【請求項2】
前記反応はPCRまたは等温増幅反応であり、かつ、反応に必要な酵素はプランジャのプランジャ穴に設けられ、プランジャのプランジャ穴が分離キャビティに位置合わせられた際に自身の重力により自動的に反応液中に落ちる、ことを特徴とする請求項1に記載の遺伝子検査方法。
【請求項3】
前記光学的検査の検査箇所は反応液が収容されている分離キャビティの底部に位置されており、かつ、反応液が収容されている分離キャビティの底部にはキットの外部方向への凹部が設けられ、検査する際、キットは傾斜状態であり、反応液が収容されている分離キャビティの凹部箇所は下へ向け、反応液中の磁性ビーズは自動的に凹部箇所に隠され、光学的検査に対する干渉を回避する、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の遺伝子検査方法。
【請求項4】
遺伝子検査キットであって、
頂部にフリップカバー(1)を有するキット本体(2)を含み、キット本体(2)内には上から下へそれぞれプランジャ(3)により仕切りされている溶解領域(4)および洗浄領域(5)が設けられており、洗浄領域(5)の下方には反応領域(6)が設けられており、洗浄領域(5)の数は1つまたは複数であり、前記プランジャ(3)は水平に設けられており、プランジャ(3)には垂直方向のプランジャ穴(301)が設けられており、前記溶解領域(4)には溶解液が収容され、溶解液内にはプランジャ穴(301)を通過可能な磁性ビーズが設けられており、前記洗浄領域(5)には洗浄液が収容され、前記反応領域(6)には反応液が収容され、
前記プランジャ(3)の一端にはばね(7)が設けられ、他端にはキット本体(2)の外に突き出した突出ロッド(8)が設けられており、前記突出ロッド(8)の外端の下側には斜面が設けられている、ことを特徴とする遺伝子検査キット。
【請求項5】
前記洗浄領域(5)と反応領域(6)との間のプランジャ(3)のプランジャ穴(301)内には、酵素成分が包まれている鋼管が設けられている、ことを特徴とする
請求項4に記載の遺伝子検査キット。
【請求項6】
前記反応領域(6)はキット本体(2)内に位置されており、反応領域(6)の底部にはキット本体(2)の外部方向へ凹んだ隠し領域(601)が設けられている、ことを特徴とする請求項4または5に記載の遺伝子検査キット。
【請求項7】
前記プランジャ穴(301)は3~5°のテーパがつけられており、中心部の直径は3~5mmであり、前記溶解領域(4)の底端は上が広く下が狭いカフであり、各カフの辺は垂直方向と25°~35°の角度をなす、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の遺伝子検査キット。
【請求項8】
前記洗浄領域(5)はキット本体(2)の外部に設けられており、かつ洗浄領域は薄肉透明テーパ管である、ことを特徴とする請求項4~7のいずれか一項に記載の遺伝子検査キット。
【請求項9】
請求項
4~
8のいずれか一項に記載の遺伝子検査
キットを使用する遺伝子検査装置であって、
前記キット本体(2)を挿入可能なキット収容溝(9)を含み、前記キット収容溝(9)の一側には複数の電磁コイルからなる電磁コイルアレイ(10)が設けられ、他側にはキット収容溝(9)に密着する複数の加熱アルミブロック(16)が設けられており、加熱アルミブロック(16)のそれぞれにはさらに冷却シート(11)が設けられており、前記キット収容溝(9)の溝底には、頂端が該溝底に対向する光学検査モジュールに接続された検査用光ファイバー(12)が設けられている、ことを特徴とする、遺伝子検査装置。
【請求項10】
前記キット収容溝(9)内部には溝の深度方向に沿うバッフルバー(13)が設けられており、キットをキット収容溝(9)に挿入する過程において、バッフルバー(13)は順にキットにおける各プランジャが移動できるように付勢し、キットの各分離キャビティを連通させる、ことを特徴とする請求項9に記載の遺伝子検査装置。
【請求項11】
前記キット収容溝(9)は斜めに設けられ、傾斜角度は垂直方向と30°~60°角をなす、ことを特徴とする請求項9または10に記載の遺伝子検査装置。
【請求項12】
前記電磁コイルアレイ(10)は、収容溝(9)のノッチ位置に近接し、環状に配置された複数の電磁コイルを含む均一混合用アレイ(101)と、均一混合用アレイ(101)から収容溝(9)の溝底まで直線状に配列された複数の電磁コイルを含むドラッグ用アレイ(102)を含む、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の遺伝子検査装置。
【請求項13】
前記ドラッグ用アレイ(102)の電磁コイルは左右2列に分けられ、そのうちの1列におけるいずれかの電磁コイルは他の1つの列における隣接する2つの電磁コイル同士の間に対向する、ことを特徴とする請求項12に記載の遺伝子検査装置。
【請求項14】
前記電磁コイルアレイ(10)には放熱アルミブロック(14)が設けられ、冷却シート(11)には放熱シート(15)が設けられている、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか一項に記載の遺伝子検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査方法および遺伝子検査キットならびに遺伝子検査装置に関し、医学検査の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子検査は、血液、その他の体液または細胞を介してDNAについて検査を行う技術であり、被検者から剥脱した口腔粘膜細胞またはその他の組織細胞を取り、その遺伝子情報を増幅させた後、特定の装置により被検者の細胞中のDNA分子情報を検査する。そこで、予め身体の病気にかかるリスクを知っておき、含有された様々な遺伝子状況を分析する。このため、人々は自分の遺伝子情報を把握でき、自分の生活環境および生活習慣を改善することで病気の発生を回避または遅延できる。
【0003】
遺伝子検査は、病気の診断に利用でき、病気にかかるリスクの予測にも利用できる。病気の診断では、遺伝子検査技術を利用して遺伝性疾患を発生させる突然変異遺伝子を検査する。現在、最も幅広く利用されている遺伝子検査は、新生児の遺伝性疾患に対する検査、遺伝性疾患の診断および一部通常疾患の補助診断である。現在、1000種類以上の遺伝性疾患は遺伝子検査技術により診断することができる。
【0004】
遺伝子検査の場合、通常使用されているサンプルが生物組織細胞であるため、遺伝子を検査する際には、細胞に対して溶解、洗浄、増幅などのステップを行った後に光学的検査の方式を利用して遺伝子を検査しなければならない。各ステップにおいて異なる処理が関わっているため、通常、サンプルに対しては、複数の装置によりそれぞれ異なるステップの処理を行わなければならず、検査が面倒である。また、異なるステップを行う際、サンプルを異なる担体に移動させなければならないこともあり、この過程において汚染されやすく、検査精度に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遺伝子検査方法および遺伝子検査キットならびに遺伝子検査装置を提供することを目的とする。本発明によれば、遺伝子検査の工程を簡略化でき、1つの装置において全てのステップを完成させることができる。このため、遺伝子検査は大量の装置に対する依存がなくなり、検査効率を向上できる。さらに、検査過程における汚染を回避でき、検査精度を向上できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る遺伝子検査方法は、
1つのキット内において複数の分離キャビティを設け、隣接する分離キャビティ同士の間をプランジャにより仕切りし、分離キャビティのそれぞれには溶解液、清浄液および反応液が収容されていることと、
サンプルを検査する際、各プランジャを付勢してプランジャのプランジャ穴を分離キャビティに位置合わせさせることにより、各分離キャビティを導通させることと、
続いて、検査対象サンプルが順に各分離キャビティを通過し、かつ順に溶解、清浄および反応を行うように、電磁制御方式によりキットにおける磁性ビーズを制御することと、
最後に、外部から反応液中の遺伝子について光学的検査を行う。
【0007】
前記反応はPCRまたは等温増幅反応であり、かつ、反応に必要な酵素はプランジャのプランジャ穴に設けられ、プランジャのプランジャ穴が分離キャビティに位置合わせられた際に自身の重力により自動的に反応液中に落ちる
【0008】
前記光学的検査の検査箇所は反応液が収容されている分離キャビティの底部に位置されており、かつ、反応液が収容されている分離キャビティの底部にはキットの外部方向への凹部が設けられ、検査する際、キットは傾斜状態であり、反応液が収容されている分離キャビティの凹部箇所は下へ向け、反応液中の磁性ビーズは自動的に凹部箇所に隠され、光学的検査に対する干渉を回避する
【0009】
前記遺伝子検査方法を実現する遺伝子検査キットは、頂部にフリップカバーを有するキット本体を含み、キット本体内には上から下へそれぞれプランジャにより仕切りされている溶解領域および洗浄領域が設けられており、洗浄領域の下方には反応領域が設けられており、洗浄領域の数は1つまたは複数であり、前記プランジャは水平に設けられており、プランジャには垂直方向のプランジャ穴が設けられており、前記溶解領域には溶解液が収容され、溶解液内には強磁性の均一混合用ボールおよびプランジャ穴を通過可能な磁性ビーズが設けられており、前記洗浄領域には洗浄液が収容され、前記反応領域には反応液が収容されている。
【0010】
前記洗浄領域と反応領域との間のプランジャのプランジャ穴内には、酵素成分が包まれている鋼管が設けられている。
【0011】
前記プランジャの一端にはばねが設けられ、他端にはキット本体の外に突き出した突出ロッドが設けられており、前記突出ロッドの外端の下側には斜面が設けられている。
【0012】
前記反応領域はキット本体内に位置されており、反応領域の底部にはキット本体の外部方向へ凹んだ隠し領域が設けられている。
【0013】
前記プランジャ穴は3~5°のテーパがつけられており、中心部の直径は3~5mmである。したがって、磁性ビーズが便利に通過でき、かつ、毛細管作用により各領域の液体が自由に通過することも遮断できる。
【0014】
前記溶解領域の底端は上が広く下が狭いカフであり、各カフの辺は垂直方向と25°~35°の角度をなす。したがって、十分に溶解できるとともに磁性ビーズがプランジャ穴に順調に入られる。
【0015】
前記洗浄領域はキット本体の外部に設けられており、かつ洗浄領域は薄肉透明テーパ管である。
【0016】
前記遺伝子検査方法を実現する遺伝子検査装置は、キット収容溝を含み、前記キット収容溝の一側には複数の電磁コイルからなる電磁コイルアレイが設けられ、他側にはキット収容溝に密着する複数の加熱アルミブロックが設けられており、加熱アルミブロックのそれぞれにはさらに冷却シートが設けられており、前記キット収容溝の溝底には、頂端が該溝底に対向する光学検査モジュールに接続された検査用光ファイバーが設けられている。
【0017】
前記キット収容溝内部には溝の深度方向に沿うバッフルバーが設けられており、キットをキット収容溝に挿入する過程において、バッフルバーは順にキットにおける各プランジャが移動できるように付勢し、キットの各分離キャビティを連通させる。
【0018】
前記キット収容溝は斜めに設けられ、傾斜角度は垂直方向と30°~60°角をなす。
【0019】
前記電磁コイルアレイは、収容溝のノッチ位置に近接し、環状に配置された複数の電磁コイルを含む均一混合用アレイと、均一混合用アレイから収容溝の溝底まで直線状に配列された複数の電磁コイルを含むドラッグ用アレイを含む。
【0020】
前記ドラッグ用アレイの電磁コイルは左右2列に分けられ、そのうちの1列におけるいずれかの電磁コイルは他の1つの列における隣接する2つの電磁コイル同士の間に対向する。
【0021】
前記電磁コイルアレイには放熱アルミブロックが設けられ、冷却シートには放熱シートが設けられている。
【発明の効果】
【0022】
従来技術に比べて、本発明ではプランジャを利用して同一のキット内を複数の領域(キャビティ)に仕切り、各領域のそれぞれには溶解液、清浄液および反応液が収容されるため、遺伝子検査の複数のステップを同一のキット内(1台の装置を使用する)において行うことができ、二次汚染が発生しにくく、作業効率を大幅に向上でき、検査精度も大きく向上され、遺伝子検査に多くの装置が必要となる問題を解決できる。本発明によれば、プランジャを利用して仕切りを行っているため、簡単な機械的動作だけで各領域間を導通でき、その他の処理(たとえば、パラフィンなどの物質を利用して隔離、導通および組立てを行う場合は加熱しなければならないが、加熱すると、キット内部の試薬およびサンプルに影響を与え、検査精度に影響を与える)を必要とせず、操作がさらに便利であり、プランジャの組立てもさらに簡単で、各領域内における試薬の組立てが便利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】本発明に係る検査装置の構造を示す図である。
【
図6】単列の電磁コイルアレイ構造を示す図である。
【
図7】2列の電磁コイルアレイ構造を示す図である。
【
図8】洗浄領域において薄肉透明テーパー管形式のキットを使用した場合の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら実施例を介して本発明について詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0025】
(実施例)
遺伝子検査方法であって、1つのキット内において複数の分離キャビティを設け、隣接する分離キャビティ同士の間をプランジャによって仕切りし、分離キャビティのそれぞれには溶解液、清浄液および反応液が収容されている。サンプルを検査する際、各プランジャを付勢してプランジャのプランジャ穴を分離キャビティに位置合わせさせることにより各分離キャビティを導通させる。続いて、検査対象サンプルが順に各分離キャビティを通過し、かつ順に溶解、清浄および反応を行うように、電磁制御方式によりキットにおける磁性ビースを制御する。最後に、外部から反応液中の遺伝子について光学的検査を行う。ここで、上記反応は、PCRまたは等温増幅反応である。また、反応に必要な酵素は、プランジャのプランジャ穴に設けられ、プランジャのプランジャ穴が分離キャビティに位置合わせられた際に自身の重力により自動的に反応液中に落ちる。上記光学的検査の検査箇所は反応液が収容されている分離キャビティの底部に位置されており、かつ、反応液が収容されている分離キャビティの底部にはキットの外部方向への凹部が設けられている。検査する際、キットは傾斜状態であり、反応液が収容されている分離キャビティの凹部箇所は下へ向け、反応液中の磁性ビーズは自動的に凹部箇所に隠され、光学的検査に対する干渉を回避する。
【0026】
上記検査方法を実現するための遺伝子検査キットは、
図1~
図3に示すように、頂部にフリップカバー1を有するキット本体2を含み、キット本体2内には上から下へそれぞれプランジャ3により仕切りされている溶解領域4、洗浄領域5および反応領域6が設けられている。ここで、プランジャ3は水平に設けられ、プランジャ3には垂直方向のプランジャ穴301が設けられている。溶解領域4には溶解液が収容され、溶解液内には強磁性の均一混合用ボールおよびプランジャ穴301を通過可能な磁性ビーズが設けられている。洗浄領域5には洗浄液が収容され、反応領域6には反応液が収容されている。洗浄領域5と反応領域6との間のプランジャ3のプランジャ穴301内には、酵素成分が包まれている鋼管が設けられている。プランジャ3の一端にはばね7が設けられ、他端にはキット本体2の外に突き出した突出ロッド8が設けられている。突出ロッド8の外端(キット本体2の外に突き出した一端)の下側には斜面が設けられている。反応領域6の底部にはキット本体2の外部方向へ凹んだ隠し領域601が設けられている。プランジャ穴301は3~5°のテーパがつけられ(好ましくは4°である)、中心部の直径は3~5mmである(好ましくは4mmである)。溶解領域4の底端は上が広く下が狭いカフであり、各カフの辺は垂直方向と25°~35°の角度をなす(好ましくは30°である)。
【0027】
また、洗浄領域5は、最後の光学的検査が便利であるように、さらに薄肉透明テーパ管の形式でキット本体2の外部(たとえば、
図8に示すように)に設けられてもよい。検査する際は、光プローブを使用して薄肉透明テーパ管の底部または側壁に位置合わせをすればよく、電磁コイルを用いて磁性ビーズをその他の箇所に吸引すればよい。
【0028】
上記検査方法を実現するための遺伝子検査装置は、
図4に示すように、キット収容溝9を含み、キット収容溝9の一側には複数の電磁コイルからなる電磁コイルアレイ10が設けられ、他側にはキット収容溝9に密着する複数の加熱アルミブロック16が設けられ、加熱アルミブロック16のそれぞれにはさらに冷却シート11が設けられている。キット収容溝9の溝底には、頂端が該溝底に対向する検査用光ファイバー12が設けられ、検査用光ファイバー12は光学検査モジュールに接続されている。
【0029】
キット収容溝9の内部には溝の深度方向に沿うバッフルバー13が設けられ、キットをキット収容溝9に挿入する過程において、バッフルバー13は順にキットにおける各プランジャが移動できるように付勢し、キットの各分離キャビティを連通させる。キット収容溝9内の構造は、たとえば、
図5に示されるとおりである。
【0030】
キット収容溝9は斜めに設けられ、傾斜角度は垂直方向と30°~60°角をなす(好ましくは50°である)。
【0031】
電磁コイルアレイ10は、均一混合用アレイ101とドラッグ用アレイ102とを含み、均一混合用アレイ101は、収容溝9のノッチ溝位置に近接し、環状に配置された複数の電磁コイルを含み、ドラッグ用アレイ102は、均一混合用アレイ101から収容溝9の溝底まで直線状に配列された複数の電磁コイルを含む。
図6に示すように、ドラッグ用アレイ102は単列のアレイであってもよいが、
図7に示すように、2列のアレイであってもよく、ドラッグ用アレイ102の電磁コイルは左右2列に分けられ、そのうちの1列におけるいずれかの電磁コイルは他の1つの列における隣接する2つの電磁コイル同士の間に対向する、電磁コイルアレイ10には放熱アルミブロック14が設けられ、冷却シート11には放熱シート15が設けられている。
【0032】
均一混合用アレイ101における各電磁コイル1は、時計回り方向または反時計回り方向に順にオンオフ過程を完了し、複数回サイクルを繰り返す。または、均一混合用アレイ101における各電磁コイル1は「8」字形にしたがって順にオンオフ過程を完了し、複数回サイクルを繰り返してもよく、さらに均一混合の効果が優れ、試験によれば、この方式をサンプルの溶解に用いられる場合、溶解効率が最も高いことが明らかになっている。
【0033】
ドラッグ用アレイ102が単列のアレイである場合、ドラッグ用アレイ102における各電磁コイル1は、均一混合用アレイ101が動作を完了した後、1つずつオンオフする方式で動作でき、例えば、Aを起動し、続いて、Aを停止してBを起動し、続いて、Bを停止してCを起動し、続いて、Cを停止し、その後もこのように類推する。
【0034】
また、2箇所を1セットにする制御方式で動作してもよく、たとえば、ABを同時に起動し、続いて、ABを停止してBCを起動し、その後もこのように類推する。さらに、Aを一定の時間起動した後にBを起動し、ABを同時に一定の時間オンした後にAを停止し、Bを単独でオンし、一定の時間の後にCを起動し、BCを同時に一定の時間オンし、Bをオフし、その後もこのように類推する。実験によれば、このような方式はナノメートルサイズの磁性ビーズをドラッグする際、よりスムーズにドラッグでき、磁性ビーズをドラッグする成功率は95%を超える。
【0035】
ドラッグ用アレイ102が2列のアレイである場合、ドラッグ用アレイ102における各電磁コイル1は、均一混合用アレイ101が動作を完了した後、2箇所を1セットにする制御方式で動作してもよく、たとえば、ABを同時に起動し、続いて、ABを停止してBCを起動し、その後はこのように類推する。
【0036】
なお、3箇所を1セットにする制御方式で動作してもよく、たとえば、ABCを同時に起動し、続いて、ABCを停止してBCDを起動し、続いて、BCDを停止してCDEを起動し、その後はこのように類推する。
【0037】
均一混合用アレイにおいて、電磁コイルの磁心は3つの0.65mm*4mm*60mmのケイ素鋼シートが密接に配列されることにより構成され、磁心の外面には6層の線径が0.25mmのエナメル線(約1200巻のコイル)が巻き取られている。ドラッグアレイの磁心は、3シートの0.65mm*6mm*60mmのケイ素鋼シートが密接に配列されることにより構成され、磁心の外面には6層の線径が0.25mmのエナメル線(約1200巻のコイル)が巻き取られている。15Vの電圧を入れてガウスメーターを用いてその磁場強度を測定すると、均一混合用アレイ101は約2000Gsであり、ドラッグ用アレイ102は約2200Gsである。電磁コイルと磁性ビーズとの距離が1.3mmである場合、ドラッグの効果が最もよく、電磁コイルの過熱状況も発生しない。均一混合用アレイ101における電磁コイルのオンオフの間隔は調整でき、15msから500msに制御する。均一混合用アレイ101における電磁コイルのオンオフの間隔を35msから65msに制御する場合、均一混合の効果が最もよい。
【0038】
本発明に係るキットおよび検査装置の具体的な使用方法は以下のとおりである。
(1)まず、サンプルをキット本体2に入れ、カバー1で蓋閉めてからキット本体2を遺伝子検査装置のキット収容溝9に挿入する。挿入過程において、各プランジャ3の突出ロッド8は順にバッフルバー13により付勢され、各プランジャ3はばね7の弾力を克服して移動し、プランジャ穴301を分離キャビティに位置合わせさせ、溶解領域4、洗浄領域5および反応領域6を導通させる。
【0039】
(2)続いて、電磁コイルアレイ10の均一混合用アレイ101を動作させ、均一混合用アレイ101の電磁コイルが環状に従って順に起動および停止することにより、強磁性の均一混合用ボールが磁力の駆動のもとで溶解液およびサンプルを激しく攪拌させるとともに溶解領域に近接する冷却シート11を動作させ、溶解温度を制御する。
【0040】
(3)続いて、電磁コイルアレイ10のドラッグ用アレイ102を動作させ、ドラッグ用アレイ102の電磁コイルが上から下へ順に起動および停止することにより、溶解されたサンプル付きの磁性ビーズが洗浄液により洗浄された後、最後的に反応液に入るようにさせるとともにプランジャ内に酵素成分付きの鋼管も反応液に入るようにさせ、反応領域に近接する冷却シート11を動作させ、反応温度を制御する。
【0041】
(4)続いて、電磁コイルアレイ10をオフにする。そうすると、磁性ビーズは自重により隠し領域601に落ちる。
【0042】
(5)続いて、検査用光ファイバー12によりキット本体の底部から光信号を検出する。
【0043】
(6)続いて、光学検査モジュールは、光信号に基づいてサンプルの遺伝子を分析する。
【0044】
キットの具体的な応用例について説明する。B群連鎖球菌の酵素免疫測定キットであって、プランジャにより仕切りされているサンプル処理領域、2つの第1洗浄領域、検査抗体結合領域、2つの第2洗浄領域、発光基質結合領域、2つの第3洗浄領域および停止領域を含む。プランジャには、プランジャ穴が設けられている。サンプル処理領域にはサンプル処理液が設けられ、サンプル処理液には金属攪拌子およびGBS抗体で覆われているサブミクロンサイズの超常磁性免疫磁性ビーズが設けられている。検査抗体結合領域内にはビオチンで標識したGBS抗体を含有する結合液が設けられ、発光基質結合領域内にはSA-PEを含有する基質発色液が設けられている。停止領域内には停止液が設けられ、停止領域はさらに1つの予備領域に接続されることができる。
【0045】
上記サンプル処理液の成分は以下のとおりである。
【表1】
【0046】
上記サブミクロンサイズの超常磁性免疫磁性ビーズの直径は0.5~10μMであり、サンプル処理液中の濃度は50~200mg/mlである。
【0047】
上記第1洗浄領域、第2洗浄領域および第3洗浄領域内には洗浄液が設けられ、洗浄液の成分は以下のとおりである。
【表2】
【0048】
【0049】
上記基質発色液の成分は以下のとおりである。
【表4】
【0050】
【0051】
上記GBSキットの動作原理は、以下のとおりである。
【0052】
(1)まず、サンプルをキット本体に入れ、カバーで蓋閉めてからキット本体を検査装置のキット収容溝に挿入し、該キット収容溝にはバッフルバーが設けられている。挿入過程において、各プランジャの突出ロードは順にバッフルバーにより付勢され、各プランジャ3はばね7の弾力を克服して移動し、プランジャ穴を分離キャビティに位置合わせさせ、各領域を導通させる。
【0053】
(2)続いて、電磁コイルアレイにより金属攪拌子を駆動し、サンプルを均一に攪拌し、サンプル中のGBS抗原とサブミクロンサイズの超常磁性免疫磁性ビーズ(以下担体を略称する)におけるGBS抗体とを結合させる。
【0054】
(3)続いて、担体は第1洗浄領域を通過し、不純物が溶出される。
【0055】
(4)続いて、担体は検査結合領域に入り、ビオチンで標識したGBS抗体は担体におけるGBS抗原と結合する。
【0056】
(5)続いて、担体は第2洗浄領域を通過し、未結合のビオチンで標識したGBS抗体が溶出される。
【0057】
(6)続いて、担体は発光基質結合領域に入り、発光基質(SA-PE)のストレプトアビジンは抗体におけるビオチンと特異的に結合する。
【0058】
(7)続いて、担体は第3洗浄領域を通過し、未結合の発光基質が溶出される。
【0059】
(8)続いて、担体は停止液に入り、抗体における発光基質であるフィコエリトリンは計器励起光の作用のもとで安定した励起された光を発生する。
【0060】
(9)続いて、外部装置は光学検査プローブを使用して停止領域の透明ウィンドウから蛍光強度信号を取得し、該信号によりサンプル中のGBS抗原に対して定性的または定量的検出を行う。
【符号の説明】
【0061】
1 フリップカバー、
2 キット本体、
3 プランジャ、
301 プランジャ穴、
4 溶解領域、
5 洗浄領域、
6 反応領域、
7 ばね、
8 突出ロッド、
9 キット収容溝、
10 電磁コイルアレイ、
11 冷却シート、
12 検査用光ファイバー、
13 バッフルバー、
14 放熱アルミブロック、
15 放熱シート、
16 加熱アルミブロック、
101 均一混合用アレイ、
102 ドラッグ用アレイ、
601 隠し領域。