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特許7010527連結式電動粉挽き機及びそれを用いた粉体製造システム
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  • 特許-連結式電動粉挽き機及びそれを用いた粉体製造システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】連結式電動粉挽き機及びそれを用いた粉体製造システム
(51)【国際特許分類】
   B02C 7/08 20060101AFI20220119BHJP
   B02C 7/11 20060101ALI20220119BHJP
   B02C 7/18 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B02C7/08
B02C7/11 Z
B02C7/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021132623
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2021-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521362760
【氏名又は名称】荒川 ▲禎▼友
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】荒川 ▲禎▼友
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-33168(JP,A)
【文献】実開昭53-83600(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104858014(CN,A)
【文献】特開2001-314775(JP,A)
【文献】特開2007-111593(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235445(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019986(WO,A1)
【文献】特開2020-179324(JP,A)
【文献】実公昭12-10662(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上臼と下臼とで構成され、所定の駆動源によって一方の臼が他方の臼に対して相対的に回転運動する石臼が、複数連結された連結式電動粉挽き機であって、
前記石臼は、
前記上臼と前記下臼とが擦り合わさることで粉砕された粉体であって、該上臼と該下臼との接触部分の外周に送り出された粉体を、受けるように構成されたリング形状の粉受部材と、
前記駆動源によって回転駆動される臼である回転臼と共に回転運動する集粉部材であって、前記粉受部材で受けた前記粉体を掻き集めるように構成された集粉部材と、
を備え、
2つの前記石臼が隣接する隣接部において各石臼の前記粉受部材が重なり合うように、複数の前記石臼が連結されるとともに、
前記隣接部において、一方の前記石臼の前記粉受部材の底面が他方の前記石臼の前記粉受部材の底面よりも凹に形成されることで、各石臼の前記粉受部材の底面が段差を構成するように、複数の前記石臼が連結される、
連結式電動粉挽き機。
【請求項2】
前記集粉部材は、前記粉受部材の底面に沿って回転運動することで前記粉体を集粉し、
前記隣接部において、各石臼の前記集粉部材は、前記粉受部材のリング形状の一部を構成する前記段差を通過するように回転運動を行う、
請求項1に記載の連結式電動粉挽き機。
【請求項3】
連結される複数の前記石臼において、一方の前記石臼の前記集粉部材が他方の前記石臼の前記集粉部材に対して所定の回転位相差を有するように配置される、
請求項2に記載の連結式電動粉挽き機。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の連結式電動粉挽き機を用いた粉体製造システムであって、
前記連結式電動粉挽き機から取り出された前記粉体を搬送する粉体搬送装置を備え、
前記連結式電動粉挽き機において、
連結された複数の前記石臼のうち少なくとも一つの石臼が、該石臼の前記粉受部材から前記粉体搬送装置に前記粉体を導くための取出し部を更に備える。
【請求項5】
請求項4に記載の粉体製造システムにおいて、
前記連結式電動粉挽き機が、前記粉体搬送装置に沿って複数配置され、
前記連結式電動粉挽き機において、
複数の前記石臼が、前記粉体搬送装置の長手方向と略直交する方向に連結される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そば、米、茶葉、小麦、大豆等の材料を粉体にする電動粉挽き機に関するものであって、複数の石臼が連結された連結式電動粉挽き機、及びそれを用いた粉体製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
古くは日本の多くの家庭において、そば、米、雑穀等の粉挽きに石臼が重用されてきたが、手動で石臼を回して粉を挽くことは大変な重労働であった。一方で、現代においては、そば、米、雑穀等の粉は、工業的に生産され市販されるようになっている。そして、このような工業的な生産では、高速に回転するグラインダー等を用いて粉が挽かれる場合が多い。しかしながら、高速に回転するグラインダー等を用いた粉挽きでは、石臼を用いた手動での粉挽きで得られる風味や粘りを再現することができない傾向にある。
【0003】
ここで、石臼をモータなどの駆動源により自動的に駆動し製粉する電動粉挽き機であっても、その回転速度を遅くすることで、石臼を用いた手動での粉挽きで得られる風味や粘りを再現できることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、上石臼と下石臼間の間隔を調整する手段を備え、かつ下石臼の下面の中心部以外の複数箇所に弾性的に上方向の圧力を掛ける弾性支持手段を備えた電動粉挽き機において、下石臼の回転数を50RPM~70RPMとする技術が開示されている。この電動粉挽き機では、回転速度が低速にされることで、石臼特有の効果によって、風味の良い、昔ながらの手動式の石臼と同様の粉が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-239518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術によれば、電動粉挽き機ながらも石臼特有の効果によって、風味の良い、昔ながらの手動式の石臼と同様の粉が得られるため、風味等を損なうことなく工業的に粉挽きできるようにも思われる。しかしながら、この技術では、製粉された粉の粒径を在来の石臼同様にするために、石臼の回転速度が遅くされている。そのため、一度に大量に粉を挽くことができない。
【0007】
ここで、石臼の直径を大きくして臼の面積を大きくすることで、一度に大量に粉を挽こうとすることが考えられる。しかしながら、石臼の直径を大きくすると、適切な粉の粒径を得るために行われる石面の調整が困難となる。このように、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くための技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くことができる電動粉挽き機及びそれを用いた粉体製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の連結式電動粉挽き機は、上臼と下臼とで構成され、所定の駆動源によって一方の臼が他方の臼に対して相対的に回転運動する石臼が、複数連結された連結式電動粉挽き機である。この連結式電動粉挽き機において、前記石臼は、前記上臼と前記下臼とが擦り合わさることで粉砕された粉体であって、該上臼と該下臼との接触部分の外周に送り出された粉体を、受けるように構成されたリング形状の粉受部材と、前記駆動源によって回転駆動される臼である回転臼と共に回転運動する集粉部材であって、前記粉受部材で受けた前記粉体を掻き集めるように構成された集粉部材と、を備える。そして、この連結式電動粉挽き機では、2つの前記石臼が隣接する隣接部において各石臼の前記粉受部材が重なり合うように、複数の前記石臼が連結されるとともに、前記隣接部において、一方の前記石臼の前記粉受部材の底面が他方の前記石臼の前記粉受部材の底面よりも凹に形成されることで、各石臼の前記粉受部材の底面が段差を構成するように、複数の前記石臼が連結される。
【0010】
上記の連結式電動粉挽き機では、隣接部において各石臼の粉受部材が重なり合うように2つの石臼が連結されることで、複数の石臼を設置するためのスペース効率が高められる。更に、石臼特有の効果により粉砕された粉体が粘りを有していたとしても、連結された2つの石臼間(粉受部材間)で上記の段差を落下することで粉体が移動せしめられるため、複数の石臼間で粉体を好適に移動させることができる。これによれば、複数の石臼を用いて一度に粉を挽くことができるとともに、これら石臼で挽かれた粉体を好適に取り出すことができるため、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく粉を挽くときの生産効率を高めることができる。このように、本開示の連結式電動粉挽き機によれば、スペース効率と生産効率とを同時に高めることができ、以て、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くことができる。
【0011】
ここで、本開示の連結式電動粉挽き機では、上記の構成において、前記集粉部材は、前記粉受部材の底面に沿って回転運動することで前記粉体を集粉し、前記隣接部において、各石臼の前記集粉部材は、前記粉受部材のリング形状の一部を構成する前記段差を通過するように回転運動を行ってもよい。これによれば、複数の石臼間で粉体を段差から好適に落下させることができるとともに、この落下により移動せしめられた粉体を好適に掻き集めることができる。また、この場合、連結される複数の前記石臼において、一方の前記石臼の前記集粉部材が他方の前記石臼の前記集粉部材に対して所定の回転位相差を有するように配置されてもよい。これによれば、各石臼の集粉部材同士が干渉してしまう事態を抑制することができる。
【0012】
また、本開示は、上述した連結式電動粉挽き機を用いた粉体製造システムの側面から捉えることもできる。すなわち、本開示の粉体製造システムは、上記の連結式電動粉挽き機を用いた粉体製造システムであって、前記連結式電動粉挽き機から取り出された前記粉体を搬送する粉体搬送装置を備える。そして、前記連結式電動粉挽き機において、連結された複数の前記石臼のうち少なくとも一つの石臼が、該石臼の前記粉受部材から前記粉体搬送装置に前記粉体を導くための取出し部を更に備える。この場合、前記連結式電動粉挽き機が、前記粉体搬送装置に沿って複数配置され、前記連結式電動粉挽き機において、複数の前記石臼が、前記粉体搬送装置の長手方向と略直交する方向に連結されてもよい。これによれば、粉体搬送装置の長手方向と略直交する方向に連結された石臼で挽かれた粉体を集めて1つの粉体搬送装置に導くことができるため、粉体搬送装置のためのスペースを削減することができる。その結果、製粉所に可及的多くの石臼を配置することが可能となり、以て、粉体の生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における連結式電動粉挽き機の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態において、スペース効率と生産効率とを同時に高める連結式電動粉挽き機を説明するための図である。
図3】連結された2つの石臼について、各石臼の集粉部材が通過する範囲を表す図である。
図4】各石臼の集粉部材の回転位相差について、その他の態様を表す図である。
図5】第2実施形態における粉体製造システムの概略構成を示す図である。
図6】複数の連結式電動粉挽き機において、各石臼が、粉体搬送装置の長手方向と略直交する方向に連結される態様を示す図である。
図7】第2実施形態の変形例における粉体製造システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態における連結式電動粉挽き機の概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における連結式電動粉挽き機の概略構成を示す図であって、図1(a)は連結式電動粉挽き機の正面からの斜視図を、図1(b)は連結式電動粉挽き機の正面図を表す図である。本実施形態に係る連結式電動粉挽き機1は、石臼が複数連結された連結式電動粉挽き機である。
【0017】
ここで、本実施形態の石臼10は、上臼11と下臼12とで構成される。この石臼10は、筐体100の上面に配置される。そして、筐体100内には、連結式電動粉挽き機1の駆動源であるモータ110が内蔵され、このモータ110によって上臼11が回転駆動されるとともに、下臼12が回転不能に筐体100に固定されることで、一方の臼である上臼11が他方の臼である下臼12に対して相対的に回転運動することになる。なお、この場合、上臼11が本開示の回転臼である。
【0018】
そして、上臼11と下臼12は、例えば花崗岩等の天然石で円盤状に形成され、下臼12よりも厚く形成される上臼11が一定の重量を有する。そうすると、上臼11と下臼12との接触部分において、そば粉が挽かれることになる。詳しくは、上臼11の下面と下臼12の上面には、そば粉を挽くための凹凸の筋が内側から外側に伸びるように刻まれており、上臼11と下臼12とが擦り合わさることで粉砕されたそば粉が、臼の外周に送り出されることになる。なお、石臼10によって挽かれる粉体の原料は、供給ホッパー40を介して石臼10に供給される。
【0019】
更に、石臼10は、上臼11と下臼12とが擦り合わさることで粉砕されて臼の外周に送り出されたそば粉を受ける粉受部材20と、粉受部材20で受けたそば粉を掻き集める集粉部材30と、を備える。
【0020】
粉受部材20は、図1(a)に示すように、臼の外周を取り囲むリング形状に構成される。そして、上臼11と下臼12とが擦り合わさることで粉砕されて臼の外周に送り出されたそば粉が、粉受部材の底面20aに貯められることになる。なお、図1(a)に示すように、粉受部材の底面20aは、筐体100の上面から円筒状に突出するように形成された粉受部材の側面壁20bと、下臼12の外周面と、によって画定される。
【0021】
集粉部材30は、本実施形態における回転臼である上臼11に固定され、該上臼11と共に回転運動する。この集粉部材30では、柔軟性を有する樹脂板(例えば、アクリル樹脂板)や刷毛状のブラシ等が粉受部材の底面20aに接触する。そうすると、集粉部材30が粉受部材の底面20aに接触しながら回転運動することになり、粉受部材20で受けたそば粉が掻き集められる。そして、集粉部材30によって掻き集められたそば粉は、粉受部材20に形成された開口である取出し部50を介して取り出される。
【0022】
連結式電動粉挽き機1では、このような石臼10が複数連結される。本実施形態に係る連結式電動粉挽き機1では、2つの石臼10が連結されている。この場合、一方の石臼10が、ベルトやチェーン、ギヤを介してモータ110に接続され、モータ110からこの石臼10に伝達された駆動力が、更に他方の石臼10に伝達される。詳しくは、図1(b)に示すように、一方の石臼10の駆動軸が、ベルト120を介してモータ110に接続される。ここで、この駆動軸には、上臼11とドライブギヤ130とが固定されていて、モータ110から伝達された駆動力によってこれらが回転する。そして、ドライブギヤ130は、アイドラーギヤ140を介して、他方の石臼10の駆動軸に固定されたドリブンギヤ150と接続されている。そうすると、ドライブギヤ130の回転とあわせてドリブンギヤ150が駆動され、他方の石臼10の上臼11が回転することになる。このように、2つの石臼10がモータ110の駆動力により自動的に駆動することで、複数の石臼を用いた電動での粉挽きが可能となる。なお、このような一方の石臼10の駆動軸からギヤを介して他方の石臼10の駆動軸が駆動される態様によれば、該一方の石臼10に対する該他方の石臼10の回転位相を正確に定めることができる。ただし、このような態様に限定する意図はなく、一方の石臼10の駆動軸からベルトやチェーンを介して他方の石臼10の駆動軸が駆動されてもよい。
【0023】
ここで、石臼の回転速度を遅くすることで、電動粉挽き機であっても石臼特有の効果によって、風味の良い、昔ながらの手動式の石臼と同様の粉が得られる。そのため、風味等を損なうことなく工業的に粉挽きできる。しかしながら、石臼の回転速度が遅くなると、一度に大量に粉を挽くことができない。この場合、石臼の直径を大きくして臼の面積を大きくすることで、一度に大量に粉を挽こうとすることが考えられる。しかしながら、石臼の直径を大きくすると、適切な粉の粒径を得るために行われる石面の調整、例えば、所望の粒径の粉が得られるように上臼と下臼との接触部分を適切に機械加工することが困難となる。一方で、上述した粉受部材および集粉部材を備える石臼を単に複数並べて、一度に大量に粉を挽こうとすることも考えられる。しかしながら、この場合には、複数の石臼を並べて設置するために比較的大きなスペースが必要となることが課題となっていた。
【0024】
そこで、本開示人は鋭意検討を行った結果、複数の石臼を設置するためのスペース効率と、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく粉を挽くときの生産効率と、を高めることができる技術を見出した。
【0025】
詳しくは、本開示の連結式電動粉挽き機1は、2つの石臼10が隣接する隣接部21において各石臼10の粉受部材20が重なり合うように、複数の石臼10が連結されるとともに、隣接部21において、一方の石臼10の粉受部材の底面20aが他方の石臼10の粉受部材の底面20aよりも凹に形成されることで、各石臼10の粉受部材の底面20aが段差22を構成するように、複数の石臼10が連結される。これについて、図2に基づいて説明する。
【0026】
図2は、本実施形態において、スペース効率と生産効率とを同時に高める連結式電動粉挽き機1を説明するための図であって、図2(a)は連結式電動粉挽き機1の平面図を、図2(b)は連結式電動粉挽き機1の断面図を表す図である。図2に示す連結式電動粉挽き機1でも、2つの石臼10が連結されている。
【0027】
隣接する2つの石臼10は、図2(a)に示すように、臼の外周を取り囲むリング形状の粉受部材20が隣接部21において重なり合っている。そうすると、隣接部21においては、一方の石臼10と他方の石臼10とで粉受部材の底面20aが共有されることになる。
【0028】
このとき、図2(b)に示すように、隣接部21において、一方の石臼10の粉受部材の底面20aが他方の石臼10の粉受部材の底面20aよりも凹に形成される。なお、図2(b)は、図2(a)に示すA-A間の断面図(説明のため、集粉部材30や供給ホッパー40等の図示を省略している。)である。そして、凹に形成された一方の石臼10の粉受部材の底面20aが、他方の石臼10と共有される。
【0029】
ここで、仮に、隣接部21において粉受部材20を単に並べて2つの石臼10を連結したとすると、該隣接部21では、2つ分の粉受部材20のスペースが必要となる。また、一方の石臼10の粉受部材20に取出し部50が形成されているため、他方の石臼10で挽かれたそば粉をそこまで導く必要があるが、このように粉受部材20を単に並べて2つの石臼10を連結する場合には、石臼10間(粉受部材20間)にそば粉の連絡通路を別途設ける必要がある。しかしながら、石臼特有の効果を発揮するように挽かれたそば粉は粘りを有するため、この場合、上記のそば粉の通路が閉塞し易くなるという課題が生じ得る。
【0030】
これに対して、隣接部21において各石臼10の粉受部材20が重なり合うように2つの石臼10を連結することで、複数の石臼10を設置するためのスペース効率を高めることができる。更に、各石臼10の粉受部材20が重なり合う部分が段差22を構成するように連結されることで、他方の石臼10で挽かれたそば粉を取出し部50まで導く際に、石臼10間(粉受部材20間)で好適にそば粉を連絡させることができる。詳しくは、他方の石臼10で挽かれて該石臼10の粉受部材20に貯められたそば粉は、該石臼10の集粉部材30によって掻き集められる過程で、段差22を介して、取出し部50が設けられた側の石臼10の粉受部材20に移動せしめられる。このとき、石臼特有の効果によりそば粉が粘りを有していたとしても、他方の石臼10の粉受部材20のそば粉は、重力によって段差22を落下することになるため、取出し部50が設けられた側の石臼10の粉受部材20に好適に移動せしめられる。これによれば、石臼10間(粉受部材20間)におけるそば粉の連絡において、その連絡部が閉塞してしまうといった事態が生じ得ないため、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく粉を挽くときの生産効率を高めることができる。つまり、本開示の連結式電動粉挽き機1によれば、スペース効率と生産効率とを同時に高めることができ、以て、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くことができる。
【0031】
なお、粉受部材の底面20aに沿って回転運動することでそば粉を集粉する集粉部材30は、隣接部21において、粉受部材20のリング形状の一部を構成する段差22を通過するように回転運動を行ってもよい。これについて、図3に基づいて説明する。
【0032】
図3は、連結された2つの石臼10について、各石臼10の集粉部材30が通過する範囲を表す図である。ここで、図3は、連結式電動粉挽き機1の平面図(説明のため、供給ホッパー40の図示を省略している。)であって、各石臼10の集粉部材30の通過範囲が斜線30a、斜線30bで表される。そして、図3に示すように、一方の石臼10の集粉部材30が段差22の下部を通過し(これは、斜線30aで表される通過範囲に含まれる)、他方の石臼10の集粉部材30が段差22の上部を通過する(これは、斜線30bで表される通過範囲に含まれる)ことで、各石臼10の集粉部材30が、粉受部材20のリング形状の一部を構成する段差22を通過することになる。これによれば、他方の石臼10の粉受部材20のそば粉を段差22から好適に落下させることができるとともに、この落下により取出し部50が設けられた側の石臼10の粉受部材20に移動せしめられたそば粉を、好適に掻き集めることができる。
【0033】
また、上述したように、本実施形態の連結式電動粉挽き機1では、一方の石臼10の駆動軸がベルト120を介してモータ110に接続され、該駆動軸に対して、ドライブギヤ130、アイドラーギヤ140、およびドリブンギヤ150を介して他方の石臼10の駆動軸が接続されることで、2つの石臼10がモータ110の駆動力により自動的に駆動することになる。このとき、各石臼10同士で、回転臼である上臼11と共に回転運動する集粉部材30が干渉することがないように、連結される複数の石臼10において、一方の石臼10の集粉部材30が他方の石臼10の集粉部材30に対して所定の回転位相差を有するように配置されてもよい。このように、一方の石臼10の駆動軸からギヤを介して他方の石臼10の駆動軸が駆動されるとともに、上記の如く各石臼10の集粉部材30が所定の回転位相差を有するように配置されることによれば、各石臼10の集粉部材30同士が干渉してしまう事態を好適に抑制することができる。
【0034】
ここで、例えば、上記の図1および図2に示した連結式電動粉挽き機1では、一方の石臼10の集粉部材30が他方の石臼10の集粉部材30に対して180°の回転位相差を有する。なお、各石臼10の粉受部材20が重なり合う部分は、そのリング形状の全周のうちの約60°~90°の範囲であるため、この範囲において、各石臼10の集粉部材30同士が干渉しないように上記の回転位相差が設定されてもよい。図4は、各石臼10の集粉部材30の回転位相差について、その他の態様を表す図である。図4に示すように、一方の石臼10の集粉部材30が他方の石臼10の集粉部材30に対して90°の回転位相差を有してもよい。
【0035】
以上に述べた連結式電動粉挽き機1によれば、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くことができる。
【0036】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態の説明で述べた連結式電動粉挽き機を用いた粉体製造システムについて説明する。
【0037】
ここで、第2実施形態における粉体製造システムの概要について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態における粉体製造システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る粉体製造システムは、連結式電動粉挽き機1から取り出されたそば粉を搬送する粉体搬送装置60を備える。
【0038】
ここで、粉体搬送装置60は、例えば、チューブ内を回転するスパイラルスクリュにより粉体を搬送するコンベヤによって構成されるスクリュー型粉体搬送装置である。ただし、これに限定する意図はなく、粉体搬送装置60には周知の構成(例えば、ベルトコンベヤ)を用いることができる。
【0039】
そして、図5に示すように、連結式電動粉挽き機1において、連結された複数の石臼10のうち少なくとも一つの石臼が、該石臼の粉受部材20から粉体搬送装置60にそば粉を導くための取出し部50を更に備える。
【0040】
このような粉体製造システムでは、石臼特有の効果によりそば粉が粘りを有していたとしても、石臼10間(粉受部材20間)におけるそば粉の連絡において、そば粉は、重力によって段差22を落下することになるため、取出し部50が設けられた側の石臼10の粉受部材20に好適に移動せしめられる。そして、このようにして取出し部50が設けられた側の石臼10の粉受部材20に集められたそば粉が、取出し部50を介して粉体搬送装置60に導かれる。これにより、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく粉を挽くときの生産効率を高めることができる。
【0041】
そして、上記の粉体製造システムにおいて、連結式電動粉挽き機1が、粉体搬送装置60に沿って複数配置され、この連結式電動粉挽き機1において、複数の石臼10が、粉体搬送装置60の長手方向と略直交する方向に連結されてもよい。これについて、図6に基づいて説明する。
【0042】
図6は、複数の連結式電動粉挽き機1において、各石臼10が、粉体搬送装置60の長手方向と略直交する方向に連結される態様を示す図である。図6に例示する粉体製造システムは、2つの連結式電動粉挽き機1(4つの石臼10)を含んで構成され、このシステムでは、粉体搬送装置60の長手方向と略平行に石臼10が2列配置されていると捉えることもできる。そして、各連結式電動粉挽き機1では、石臼10が粉体搬送装置60の長手方向と略直交する方向に連結されているため、粉体搬送装置60からみて奥側の列の石臼10で挽かれたそば粉が、粉体搬送装置60からみて手前側の列の石臼10の粉受部材20に移動せしめられることになる。そうすると、各連結式電動粉挽き機1において、そば粉が、粉体搬送装置60からみて手前側の列の石臼10が備える取出し部50を介して粉体搬送装置60に導かれる。
【0043】
ここで、上記の粉体製造システムにおいて、仮に各石臼10が連結されていなかったとすると、上記の石臼10の列のそれぞれに対して粉体搬送装置60を配置する、つまり、2つの粉体搬送装置60を配置する必要がある。そうすると、粉体搬送装置60を配置するために比較的大きなスペースが必要となり、製粉所に配置可能な石臼10の数が減少してしまう。その結果、一度に挽くことができるそば粉の量が減少してしまう。これに対して、本実施形態の粉体製造システムによれば、粉体搬送装置60の長手方向と略直交する方向に連結された石臼10で挽かれたそば粉を集めて1つの粉体搬送装置60に導くことができるため、粉体搬送装置60のためのスペースを削減することができる。その結果、製粉所に可及的多くの石臼10を配置することが可能となり、以て、そば粉の生産性を高めることができる。
【0044】
以上に述べた粉体製造システムによれば、石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽くことができる。
【0045】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態の変形例について、図7に基づいて説明する。図7は、本変形例における粉体製造システムの概略構成を示す図である。本変形例に係る粉体製造システムでは、1つの連結式電動粉挽き機1において、4つの石臼10が連結される。
【0046】
そして、本変形例に係る連結式電動粉挽き機1においても、図7(a)に示すように、各石臼10の粉受部材20が重なり合うように複数の石臼10が連結される。また、4つの石臼10のうち取出し部50を備える石臼は1つであって、この石臼の粉受部材20にそば粉が集められる。これについて、以下に詳しく説明する。
【0047】
図7(b)に示すように、各石臼10の粉受部材20が重なり合う部分が段差22を構成するように連結されるが、本変形例では、4つの石臼10のうち、石臼Aの粉受部材の底面20aが最も低く、石臼B、Cの粉受部材の底面20aが石臼Aの粉受部材の底面20aよりも高く、石臼Dの粉受部材の底面20aが石臼B、Cの粉受部材の底面20aよりも高くなるように構成される。そうすると、石臼Dの粉受部材20のそば粉は、重力によって、石臼Bとの間の段差22および石臼Cとの間の段差22を落下することになり、石臼B、Cの粉受部材20のそば粉は、重力によって、石臼Aとの間の段差22を落下することになる。これにより、連結式電動粉挽き機1のそば粉が、取出し部50が設けられた石臼Aの粉受部材20に好適に移動せしめられる。そして、石臼Aの粉受部材20に集められたそば粉は、該石臼Aの取出し部50を介して粉体搬送装置60に導かれる。
【0048】
このように、本変形例に係る粉体製造システムにおいても、各石臼10で挽かれたそば粉を集めて1つの粉体搬送装置60に導くことができる。その結果、上記の第2実施形態の説明で述べたように、粉体搬送装置60のためのスペースを削減することができる。更に、本変形例に係る粉体製造システムによれば、粉体搬送装置60の長手方向と略直交する方向だけでなく略平行の方向においても、各石臼10の粉受部材20が重なり合うように連結される。そのため、複数の石臼10を設置するためのスペース効率を更に高めることができる。これによれば、製粉所に可及的多くの石臼10を配置することが可能となり、以て、そば粉の生産性を高めることができる。
【0049】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。上記の実施形態では、石臼10によってそば粉が挽かれる例について説明したが、本開示の連結式電動粉挽き機1では、米、茶葉、小麦、大豆等の材料が石臼10によって粉体にされてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・・連結式電動粉挽き機
10・・・・石臼
11・・・・上臼
12・・・・下臼
20・・・・粉受部材
20a・・・粉受部材の底面
21・・・・隣接部
22・・・・段差
30・・・・集粉部材
110・・・モータ
【要約】
【課題】石臼特有の効果によって得られる風味等を損なうことなく一度に大量に粉を挽く。
【解決手段】本開示の連結式電動粉挽き機1では、上臼11と下臼12とで構成されモータ110によって回転運動する石臼10が複数連結される。この連結式電動粉挽き機1において、石臼10は、上臼11と下臼12との接触部分の外周に送り出された粉体を受けるリング形状の粉受部材20と、粉受部材20で受けた粉体を掻き集める集粉部材30と、を備える。そして、この連結式電動粉挽き機1では、2つの石臼10が隣接する隣接部21において各石臼10の粉受部材20が重なり合うように、複数の石臼10が連結されるとともに、隣接部21において、一方の石臼10の粉受部材の底面20aが他方の石臼10の粉受部材の底面20aよりも凹に形成されることで、各石臼10の粉受部材の底面20aが段差22を構成するように、複数の石臼10が連結される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7