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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20220119BHJP
   H01T 13/39 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01T13/20 E
H01T13/39
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021531996
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2021014842
【審査請求日】2021-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221889
【氏名又は名称】東邦金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩隈 和夫
(72)【発明者】
【氏名】成重 雅夫
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011225(JP,A)
【文献】特開平05-082235(JP,A)
【文献】特開2006-233270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00-13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末を加圧及び焼結した焼結体を、金型の孔部に配置した状態で、前記焼結体を加圧することで、電極を得る電極の製造方法(前記金型が、ダイと、前記ダイの成形穴に挿入されるコアロッドとを備え、且つ、前記ダイと前記コアロッドのそれぞれのアプローチ部開始点に高低差がつくように前記ダイと前記コアロッドが設置される場合を除く。)
【請求項2】
前記孔部の横断面は、円環状を呈する請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記孔部の横断面は、円形を呈する請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記原料粉末は、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する請求項2又は3に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記原料粉末を粉末用第一金型の第一孔部に供給した状態で前記原料粉末を加圧することで、成形体を得る第一加圧工程と、
前記成形体を焼結することで、前記焼結体を得る焼結工程と、
前記孔部に相当する焼結体用第二金型の第二孔部に前記焼結体を配置した状態で、前記焼結体を加圧することで、前記電極を得る第二加圧工程と、を備え、
前記第一孔部の横断面の形状は、前記第二孔部の横断面の形状に対して、相似比が1.09~1.13:1となる相似形を呈する請求項4に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記第二金型は、前記焼結体を前記第二孔部に押し込むための第三孔部を備え、前記第三孔部の横断面の面積が、前記第二孔部の反対側に向かうにつれて、前記第二孔部の横断面の面積から、徐々に大きくなる請求項5に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法、特にスパークプラグ用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジン等の内燃機関で、Ni系合金材を材料とするスパークプラグ用電極が広く使用されていたが、近年、長寿命化或いは高性能化の目的で、イリジウムなどの白金族金属を材料とする貴金属系のスパークプラグ用電極(以下、貴金属系電極と略す)が使用されている(特許文献1)。
【0003】
貴金属系電極の製造方法として、特許文献2に開示されるように、構成金属を溶解してインゴットを作製した後、鍛造、伸線、切断の工程を順次行なう方法が、一般的に行なわれている。しかしながら、この製造方法は、工程が長い問題がある。
【0004】
そこで、貴金属系電極を少ない工程で製造可能な方法として、原料粉末をプレス成形した成形体を形成して、当該成形体を焼結することで電極を得る方法が行なわれている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-007733号公報
【文献】特開2000-331770号公報
【文献】特開平3-001475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の原料粉末をプレス成形及び焼結する方法では、金型への原料粉末の投入量や成形圧力のばらつきによって、焼結体の寸法に大きなばらつきが生じる。このため焼結体を、電極の設計寸法よりも大きく形成し、この後、焼結体の不要部分を切削することで、電極を形成することが行なわれており、その結果、焼結体の切削代が生じて材料歩留まりが悪く、電極の製造コストが高くなる問題が生じていた。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、寸法精度の高い電極を、安価に製造可能な電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1.原料粉末を加圧及び焼結した焼結体を、金型の孔部に配置した状態で、前記焼結体を加圧することで、電極を得る電極の製造方法。
【0010】
項2.前記孔部の横断面は、円環状を呈する項1に記載の電極の製造方法。
【0011】
項3.前記孔部の横断面は、円形を呈する項1に記載の電極の製造方法。
【0012】
項4.前記原料粉末は、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する項2又は3に記載の電極の製造方法。
【0013】
項5.前記原料粉末を粉末用第一金型の第一孔部に供給した状態で前記原料粉末を加圧することで、成形体を得る第一加圧工程と、
前記成形体を焼結することで、前記焼結体を得る焼結工程と、
前記孔部に相当する焼結体用第二金型の第二孔部に前記焼結体を配置した状態で、前記焼結体を加圧することで、前記電極を得る第二加圧工程と、を備え、
前記第一孔部の横断面の形状は、前記第二孔部の横断面の形状に対して、相似比が1.09~1.13:1となる相似形を呈する項4に記載の電極の製造方法。
【0014】
項6.前記第二金型は、前記焼結体を前記第二孔部に押し込むための第三孔部を備え、前記第三孔部の横断面の面積が、前記第二孔部の反対側に向かうにつれて、前記第二孔部の横断面の面積から、徐々に大きくなる項5に記載の電極の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電極の製造方法によれば、金型の孔部によって焼結体がサイジングされることで、機械加工を要せず、所望の寸法の電極を得ることができる。したがって本発明に係る電極の製造方法によれば、寸法精度の高い電極を、機械加工による切削代を生じさせずに、安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る製造方法で製造された接地電極及び中心電極を備えたスパークプラグを示す斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】接地電極の製造方法の第一加圧工程における金型の動作を示す概略断面図である。
図4】接地電極の製造方法の第二加圧工程における金型の動作を示す概略断面図である。
図5】接地電極の製造方法の第二加圧工程における金型の動作を示す概略断面図である。
図6】中心電極の製造方法の第一加圧工程における金型の動作を示す概略断面図である。
図7】中心電極の製造方法の第二加圧工程における金型の動作を示す概略断面図である。
図8】中心電極の製造方法の第二加圧工程における金型の動作を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る製造方法で製造された接地電極PA及び中心電極PBを備えたスパークプラグ1を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。
【0019】
スパークプラグ1は、内燃機関の燃焼室に取り付けられて、燃焼室に供給された混合気の点火に用いられる。スパークプラグ1は、円環状の接地電極PAと、接地電極PAの内側に配置される円柱状の中心電極PBとを備えており、これら2つの電極PA,PBの間の火花ギャップGに高電圧が印加されることで、火花放電を発生させる。燃焼室では、スパークプラグ1の火花放電をきっかけとして、火花ギャップGの近傍の領域で火炎核と呼ばれる火種が生じ、その火種が成長することにより、混合気が燃焼する。
【0020】
上記のスパークプラグ1では、火花ギャップGで安定した火花放電を生じさせるために、火花ギャップGの間隔を一定にする必要があり、これを実現すべく電極PA,PBの寸法精度を高める必要がある。
【0021】
本実施形態に係る電極PA,PBの製造方法は、原料粉末Nを加圧及び焼結した焼結体Sを金型Dの孔部Hに配置した状態で、焼結体Sを加圧することで、寸法精度が高い電極PA,PBを得るものである(図4図5に示す第二金型DAや、図7図8に示す第二金型DBは、上記の金型Dに相当する。図4図5に示す第二孔部HAや、図7図8に示す第二孔部HBは、上記の孔部Hに相当する。図4図5に示す焼結体SAや、図7図8に示す焼結体SBは、上記の焼結体Sに相当する)。
【0022】
まず接地電極PAの製造方法の詳細について説明する。
【0023】
接地電極PAの製造方法は、原料粉末Nを加圧及び焼結した焼結体SAを横断面が円環状の孔部HAに配置した状態で、焼結体SAを加圧することで、接地電極PAを得るものである。上記の原料粉末Nとして、例えば、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する粉末を使用できる。
【0024】
接地電極PAの製造方法では、例えば、図3に示す第一金型CAが原料粉末Nを加圧するために使用され、図4に示す第二金型DAが焼結体SAを加圧するために使用される。
【0025】
第一金型CA(図3)は、貫通孔10を有するダイ11と、上パンチ12と、下パンチ13と、コアロッド14とを有する。貫通孔10の横断面は円形を呈する。上パンチ12及び下パンチ13の横断面は円環状を呈する。コアロッド14の横断面は円形を呈する。
【0026】
第一金型CAは、ダイ11の下側から下パンチ13を貫通孔10に挿入し、下パンチ13の下側からコアロッド14を下パンチ13の空洞に挿入して、貫通孔10内でコアロッド14を下パンチ13の上側に伸び出させることで、貫通孔10内に第一孔部EAを構成する。第一孔部EAの横断面は円環状を呈しており、第一孔部EAの内周面はコアロッド14の外面から構成され、第一孔部EAの外周面は貫通孔10の内面から構成され、第一孔部EAの底面は下パンチ13の上面から構成される。
【0027】
上記の第一金型CAによれば、第一孔部EAに原料粉末Nを供給した状態で、ダイ11の上側から上パンチ12を第一孔部EAに挿入することで、上パンチ12及び下パンチ13によって原料粉末Nを加圧して、成形体KAを得ることができる(図3は、第一金型CAの(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)の動作によって、成形体KAが得られることを示す)。そして成形体KAを焼結することで、焼結体SA(図4)が得られる。
【0028】
なお第一金型CAでは、下パンチ13を貫通孔10に円滑に挿入し、上パンチ12を第一孔部EA(下パンチ13の上側にある貫通孔10の範囲)に円滑に挿入することを目的として、下パンチ13及び上パンチ12の外面と貫通孔10の内面との間に所定のクリアランスが生じるように、下パンチ13の外径、上パンチ12の外径、及び貫通孔10の直径が調整されることが好ましい。またコアロッド14を下パンチ13の空洞に円滑に挿入することを目的として、コアロッド14の外面と下パンチ13の空洞の内面との間に所定のクリアランスが生じるように、コアロッド14の外径と下パンチ13の空洞の直径とが調整されることが好ましい。
【0029】
第二金型DA(図4)は、第一金型CAと類似した構造を有しており、貫通孔20を有するダイ21と、上パンチ22と、下パンチ23と、コアロッド24とを有する。貫通孔20の横断面は円形を呈する。上パンチ22及び下パンチ23の横断面は円環状を呈する。コアロッド24の横断面は円形を呈する。
【0030】
第二金型DAは、ダイ21の下側から下パンチ23を貫通孔20に挿入し、下パンチ23の下側からコアロッド24を下パンチ23の空洞に挿入して、貫通孔20内でコアロッド24を下パンチ23の上側に伸び出させることで、貫通孔20内に第二孔部HAを構成する。第二孔部HAの横断面は円環状を呈しており、第二孔部HAの内周面はコアロッド24の外面から構成され、第二孔部HAの外周面は貫通孔20の内面から構成され、第二孔部HAの底面は下パンチ23の上面から構成される。
【0031】
上記の第二金型DAによれば、焼結体SAを第二孔部HAに配置した状態で、ダイ21の上側から上パンチ22を第二孔部HAに挿入することで、上パンチ22及び下パンチ23によって焼結体SAを加圧して、接地電極PAを得ることができる(図4は、第二金型DAの(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)の動作で、接地電極PAが得られることを示す)。
【0032】
なお第二金型DAでは、下パンチ23を貫通孔20に円滑に挿入し、上パンチ22を第二孔部HA(下パンチ23の上側にある貫通孔20の範囲)に円滑に挿入することを目的として、下パンチ23及び上パンチ22の外面と貫通孔20の内面との間に所定のクリアランスが生じるように、下パンチ23の外径、上パンチ22の外径、及び貫通孔20の直径が調整されることが好ましい。またコアロッド24を下パンチ23の空洞に円滑に挿入することを目的として、コアロッド24の外面と下パンチ23の空洞の内面との間に所定のクリアランスが生じるように、コアロッド24の外径と下パンチ23の空洞の直径とが調整されることが好ましい。
【0033】
接地電極PAを製造する際には、以下の第一加圧工程、焼結工程、及び第二加圧工程が順次実施される。
【0034】
・第一加圧工程:原料粉末Nを第一金型CAの第一孔部EAに供給した状態で原料粉末Nを加圧することで、成形体KAを得る(図3)。
・焼結工程:成形体KAを焼結することで、焼結体SAを得る。
・第二加圧工程:焼結体SAを第二金型DAの第二孔部HAに配置した状態で、焼結体SAを加圧することで、接地電極PAを得る(図4)。
【0035】
上記の接地電極PAの製造方法によれば、焼結体SAが第二孔部HAによってサイジングされることで、機械加工を要せず、寸法精度の高い接地電極PAを得ることができる(具体的には、内径及び外径が第二孔部HAと一致する接地電極PAを得ることができる)。したがって上記の製造方法によれば、寸法精度の高い設置電極PAを、機械加工による切削代を生じさせずに、安価に製造できる。
【0036】
なお原料粉末Nとして、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する粉末が使用される場合には、成形体KAの焼結によって、成形体KAに対して9%~11%程度収縮した焼結体SAが得られる。したがって上記の場合には、第二孔部HA(図4)の横断面の形状と、第一孔部EA(図3)の横断面の形状とを、相似比が1:1.09~1.13となる相似形にすることが好ましい(つまり第一孔部EA(図3)の横断面を、第二孔部HA(図4)の横断面に対して1.09~1.13ほど相似拡大させた形状にすることが好ましい)。このようにすれば焼結体SAを円滑に第二孔部HAに配置できる。
【0037】
また接地電極PAの製造方法では、図5に示すように、第二金型DAが、焼結体SAを第二孔部HAに押し込むための横断面円環状の第三孔部FAを備え、第三孔部FAの横断面の面積が、第二孔部HAの反対側に向かうにつれて、第二孔部HAの横断面の面積から、徐々に大きくなるようにしてもよい(より具体的には、第二孔部HAの反対側に向かうにつれて、第三孔部FAの外径が徐々に大きくなり、第三孔部FAの内径が徐々に小さくなるようにしてよい)。このようにすれば焼結体SAの横断面が第二孔部HAの横断面よりも大きい場合でも、上パンチ22によって焼結体SAを第三孔部FAに押し込むことで、焼結体SAの横断面を徐々に小さくして、焼結体SAを第二孔部HAに配置できる(図5は、上記の変更を行なった第二金型DAの(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)の動作で、接地電極PAが得られることを示す)。
【0038】
次に中心電極PBの製造方法の詳細について説明する。
【0039】
中心電極PBの製造方法は、原料粉末Nを加圧及び焼結した焼結体SBを横断面が円形の孔部HBに配置した状態で、焼結体SBを加圧することで、中心電極PBを得るものである。上記の原料粉末Nとして、例えば、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する粉末を使用できる。
【0040】
中心電極PBの製造方法では、例えば、図6に示す第一金型CBが原料粉末Nを加圧するために使用され、図7に示す第二金型DBが焼結体SBを加圧するために使用される。
【0041】
第一金型CB(図6)は、貫通孔30を有するダイ31と、上パンチ32と、下パンチ33とを有する。貫通孔30の横断面は円形を呈する。上パンチ32及び下パンチ33の横断面も円形を呈する。
【0042】
第一金型CBは、ダイ31の下側から下パンチ33を貫通孔30に挿入することで、第一孔部EBを貫通孔30内に構成する。第一孔部EBの横断面は円形を呈しており、第一孔部EBの外周面は貫通孔30の内面から構成され、第一孔部EBの底面は下パンチ33の上面から構成される。上記の第一金型CBによれば、第一孔部EBに原料粉末Nを供給した状態で、ダイ31の上側から上パンチ32を第一孔部EBに挿入することで、上パンチ32及び下パンチ33によって原料粉末Nを加圧して、成形体KBを得ることができる(図6は、第一金型CBの(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)の動作によって、成形体KBが得られることを示す)。そして成形体KBを焼結することで、焼結体SB(図7)が得られる。
【0043】
なお第一金型CBでは、下パンチ33を貫通孔30に円滑に挿入し、上パンチ32を第一孔部EB(下パンチ33の上側にある貫通孔30の範囲)に円滑に挿入することを目的として、下パンチ33及び上パンチ32の外面と貫通孔30の内面との間に所定のクリアランスが生じるように、下パンチ33の外径、上パンチ32の外径、及び貫通孔30の直径が調整されることが好ましい。
【0044】
第二金型DB(図7)は、第一金型CBと類似した構造を有しており、貫通孔40を有するダイ41と、上パンチ42と、下パンチ43とを有する。貫通孔40の横断面は円形を呈する。上パンチ42及び下パンチ43の横断面も円形を呈する。
【0045】
第二金型DBは、ダイ41の下側から下パンチ43を貫通孔40に挿入することで、第二孔部HBを貫通孔40内に構成する。第二孔部HBの横断面は円形を呈しており、第二孔部HBの外周面は貫通孔40の内面から構成され、第二孔部HBの底面は下パンチ43の上面から構成される。上記の第二金型DBによれば、焼結体SBを第二孔部HBに配置した状態で、ダイ41の上側から上パンチ42を第二孔部HBに挿入することで、上パンチ42及び下パンチ43によって焼結体SBを加圧して、中心電極PBを得ることができる(図7は、第二金型DBの(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)の動作で、中心電極PBが得られることを示す)。
【0046】
なお第二金型DBでは、下パンチ43を貫通孔40に円滑に挿入し、上パンチ42を第二孔部HB(下パンチ43の上側にある貫通孔40の範囲)に円滑に挿入することを目的として、下パンチ43及び上パンチ42の外面と貫通孔40の内面との間に所定のクリアランスが生じるように、下パンチ43の外径、上パンチ42の外径、及び貫通孔40の直径が調整されることが好ましい。
【0047】
中心電極PBを製造する際には、以下の第一加圧工程、焼結工程、及び第二加圧工程が順次実施される。
【0048】
・第一加圧工程:原料粉末Nを第一金型CBの第一孔部EBに供給した状態で、原料粉末Nを加圧することで、成形体KBを得る(図6)。
・焼結工程:成形体KBを焼結することで、焼結体SBを得る。
・第二加圧工程:焼結体SBを第二金型DBの第二孔部HBに配置した状態で、焼結体SBを加圧することで、中心電極PBを得る(図7)。
【0049】
上記の中心電極PBの製造方法によれば、第二金型DBの第二孔部HBによって焼結体SBがサイジングされることで、機械加工を要せず、寸法精度の高い中心電極PBを得ることができる(具体的には、外径が第二孔部HBと一致する中心電極PBを得ることができる)。したがって上記の製造方法によれば、寸法精度の高い中心電極PBを、機械加工による切削代を生じさせずに、安価に製造できる。
【0050】
なお原料粉末Nとして、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する粉末が使用される場合には、成形体KBの焼結によって、成形体KBに対して9%~11%の割合で収縮した焼結体SBが得られる。したがって上記の場合には、第二孔部HBの横断面の形状と、第一孔部EBの横断面の形状とを、相似比が1:1.09~1.13となる相似形にすることが好ましい(第一孔部EBの横断面を、第二孔部HBの横断面に対して1.09~1.13ほど相似拡大させた形状にすることが好ましい)。このようにすれば上記の割合で収縮した焼結体SBを円滑に第二孔部HAに配置できる。
【0051】
また中心電極PBの製造方法では、図8に示すように、第二金型DBが、焼結体SBを第二孔部HBに押し込むための横断面円形状の第三孔部FBを備え、第三孔部FBの横断面の面積が、第二孔部HBの反対側に向かうにつれて、第二孔部HBの横断面の面積から、徐々に大きくなるようにしてもよい(より具体的には、第二孔部HBの反対側に向かうにつれて、第三孔部FBの外径が徐々に大きくなるようにしてよい)。このようにすれば焼結体SBの横断面が第二孔部HBの横断面よりも大きい場合でも、第三孔部FBによって焼結体SBの横断面を徐々に小さくすることができるので、焼結体SBを第二孔部HBに配置できる。
【0052】
本実施形態に係る電極PA,PBの製造方法によれば、上述したように、内径及び外径が第二孔部HAと一致する接地電極PAを得ることができ、外径が第二孔部HBと一致する中心電極PBを得ることができる。このため孔部HA,HBの寸法を適宜調整して電極PA,PBを製造することで、電極PA,PBの間の火花ギャップGの間隔を一定にすることができる。したがって火花ギャップGで安定した火花放電を生じさせることができる。
【0053】
また本実施形態に係る電極PA,PBの製造方法によれば、上述したように電極PA,PBを、機械加工による切削代を生じさせることなく安価に製造できるため、スパークプラグ1の製造コストを安価に抑える上で有利である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0055】
例えば、接地電極PAの製造方法では、第二加圧工程において、潤滑剤を第二孔部HAの表面に塗布した状態で第二孔部HAに焼結体SAを配置してもよい。また中心電極PBの製造方法では、第二加圧工程において、潤滑剤を第二孔部HBの表面に塗布した状態で第二孔部HBに焼結体SBを配置してもよい。上記潤滑剤として、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ほう素、ふっ化カルシウム、珪酸マグネシウム脂肪酸、金属石鹸、ポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛、或いは、ステアリン酸カルシウムを使用できる。また、潤滑剤は焼結体SA,SBの表面に塗布してもよい。
【0056】
また接地電極PAの製造方法で使用する金型は金型CA,DA(図3図5)に限定されず、成形体KAや電極PAを得るために、横断面が円環状である孔部を形成可能な任意の金型を使用できる。
【0057】
また中心電極PBの製造方法で使用する金型は金型CB,DB(図6図8)に限定されず、成形体KBや電極PBを得るために、横断面が円形である孔部を形成可能な任意の金型を使用できる。
【0058】
また本発明の製造方法によって製造される電極は、円環状の接地電極PAや円柱状の中心電極PBに限定されない。金型の孔部の形状を変更することで、上記電極PA,PBと形状が異なる電極を製造できる。
【0059】
また上記実施形態では、原料粉末Nは、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有するものに限定されない。原料粉末Nを構成する金属や、原料粉末Nの配合は、電極の種類等に応じて、適宜調整され得る。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0061】
本実施例は、本願発明の製造方法により接地電極PAを複数製造して、これら接地電極PAの設計寸法に対する実測寸法のバラつき等を確認したものである。接地電極PAの設計値は、外径が4mmであり、内径が3.5mmであり、高さが2mmである。
【0062】
本実施例では、原料粉末Nを得るために、イリジウム粉末とルテニウム粉末を重量比でそれぞれ85%、15%の割合で配合し、ボールミル中でアルコールを溶媒として20時間以上湿式混合した。そして得られた混合粉末のスラリーに造粒剤としてPVP(Polyvinylpyrrolidone:ポリビニルピロリドン)を1.5%添加して造粒した。これにより、50~100ミクロンの原料粉末Nを得た。
【0063】
次いで、原料粉末Nを第一金型CAの第一孔部EAに供給した状態で、3トン/cmの圧力で原料粉末Nを加圧することで、環状の成形体KAを得た。
【0064】
次いで、成形体KAを、2000℃の水素雰囲気下で30分間焼結することで環状の焼結体SAを得た。
【0065】
次いで、焼結体SAを第二金型DAの第二孔部HAに配置した状態で、5MPaの圧力で焼結体SAを加圧することで、接地電極PAを得た。以下の表1に焼結体SAの設計寸法に対する実測寸法のバラつき等を示し、以下の表2に接地電極PAの設計寸法に対する実測寸法のバラつき等を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
接地電極PAは、外径、内径、同心度、高さのいずれの寸法においても、設計寸法に対するバラつきが、焼結体SAに比して小さくなった。このことから本願発明によれば、焼結体SAの寸法のバラつきを小さくして、寸法精度の高い電極が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
CA,CB 第一金型
DA,DB 第二金型
EA,EB 第一孔部
FA,FB 第三孔部
HA,HB 第二孔部
KA,KB 成形体
N 原料粉末
SA,SB 焼結体
PA 接地電極
PB 中心電極
【要約】
寸法精度の高い電極を、安価に製造可能な電極の製造方法を提供する。
本発明の電極の製造方法は、イリジウム粉末及び/又はルテニウム粉末を80重量%以上含有する原料粉末を加圧及び焼結した焼結体SAを、金型DAの孔部HAに配置した状態で、焼結体SAを加圧することで、電極PAを得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8